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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 110 |
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管理番号 | 1266037 |
審判番号 | 取消2011-300858 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2011-09-13 |
確定日 | 2012-10-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2028702号の2商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2028702号の2商標(以下「本件商標」という。)は、「ユニティ」の片仮名を書してなり、昭和60年3月18日に登録出願、同63年3月30日に設定登録され、第10類「人工血管」を指定商品とし、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 商標法第50条第1項の規定により、本件商標についての登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品である第10類「人工血管」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって使用された事実が存在しないものであるから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取消されるべきである。 2 弁駁 (1)被請求人は、平成24年2月3日付け審判事件答弁書において、本件商標の使用を示す証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証を提出したが、これらの証拠方法によって、本件商標をその指定商品について使用していることを証明したとはいえない。 ア 乙第1号証ないし乙第3号証について 乙第1号証ないし乙第3号証は、被請求人がテルモ株式会社(以下「テルモ」という。)によって買収され、テルモの連結子会社となった事実を示すものに過ぎない。商標登録原簿に記載された本件商標にかかる商標権者は、被請求人であり、買収後もテルモ社に権利が移転された形跡はない。その他に、例えば商標の使用に関する契約書などの、テルモ社が本件商標について通常使用権を有することを示す証拠は見当たらない。したがって、乙第1号証ないし乙第3号証は、a)被請求人又はその専用使用権者又は通常使用権者がb)本件商標を使用していることを示す証拠方法であるとはいえない。 イ 乙第4号証について (ア)本件商標の使用について 乙第4号証において被請求人が主張する本件商標の使用は、a)第2頁下部の「MAXIFLO Wrap Ultrathinシリーズ人工血管は、MAXIFLO Wrap Ultrathinとunity構造を付加した外部強化型グラフトで構成されています。」の説明文、b)第3頁の左肩のマーク表示、c)第4頁のスペック表における「MAXIFLO Wrap with Unity construction (外部サポート付き)」及び「MAXIFLO Wrap Ultrathin with Unity construction(外部サポート付き)」の表示、及び、d)第4頁右下に見られる「Unityはバスクテックリミテッドの登録商標です。」なる表示、の4か所であると見受けられる。 a 第2頁下部の説明文について 「MAXIFLO Wrap Ultrathinシリーズ人工血管は、MAXIFLO Wrap Ultrathinとunity構造を付加した外部強化型グラフトで構成されています。」は、使用態様において、需要者・取引者が「Unity」を「人工血管」の商標であると認識するものではなく、単に「外部強化型グラフト」に「Unity構造」が採用されていることを示すのみである。「Unity」が英語で「一体性、結合」を意味することは通常の日本人であれば理解できることから、需要者・取引者によって、このグラフトが一体的構造であることが認識される程度であって、「人工血管」の出所を表示するものでないことは明らかである。 b 第3頁の左肩のマーク表示について 乙第4号証の第3頁左肩に示される「Unity Construction」の文字は高度に図案化されており、本件商標には見られない赤と青の円形の図形を含むものである。この図形は他の商標「MAXIFLO」とも組み合わせて用いられ、非常に識別力の高い特徴的な図形である。このマーク表示は、上記特徴的な図形とロゴ化された「unity」の文字、及び小さく表された「Construction」の文字が一体不可分に組合わされて1つのまとまりのあるデザインを構成しており、高い識別力を有している。特に特徴のない片仮名文字「ユニティ」の標準文字からなる本件商標とは一見して著しく異なり、社会通念上同一であるとは到底いえない。 c 第4頁のスペック表における表示について 第2頁の説明文「MAXIFLO Wrap Ultrathinシリーズ人工血管は、MAXIFLO Wrap Ultrathinとunity構造を付加した外部強化型グラフトで構成されています。」と第3頁の上部の説明文「MAXIFLO Wrap UltrathinとMAXIFLO Wrapに外部サポート付きを加えたバージョンを追加しました。」とをみると、人工血管の商品名称がMAXIFLO Wrap Ultrathin及びMAXIFLO Wrapであること、及び、それらに「外部サポート付き」と「外部サポートなし」があることがわかる。すなわち、このリーフレットに掲載される人工血管のうち、「外部サポート付き」のシリーズを明確に示す必要があったと推察される。 そこで、第4頁のスペック表においては、「外部サポート付き」シリーズの人工血管を表現するために、英語で「付き」を表す「With」の語を挟み、さらにこの「外部サポート」が一体型構成であることを説明するために、「一体性、結合」を意味する英単語「Unity」と「構成、構造」を意味する英単語「Construction」とが使用されているものである。したがって、需要者・取引者は単にこの表示を商品の性質・機能を説明している文であると認識するに止まる。 すなわち、このスペック表における「Unity Construction」の文字は、第2頁下部の説明文と同様、本件商標を人工血管の識別商標として使用したものであるとは認められない。なお、乙第4号証の第1頁上部及び第4頁右肩に示される「図形+MAXIFLO]がこの商品の商標であることは明らかである。 d 第4頁右下の登録商標表示について 「Unityはバスクテックリミテッドの登録商標です。」なる表示についても、被請求人は商標の使用と主張しているように見受けられるが、これは単に「Unity」が被請求人の登録商標である事実の表示にすぎず、当然のことながら、本件商標の使用には該当しない。 (イ)使用の時期について 乙第4号証の第4頁右下には「テルモ株式会社2008年08月」と印字されており、このリーフレットが2008年8月に印刷されたものであることがわかる。被請求人は、このリーフレットが2008年8月頃から現在に至るまで医療機関などに頒布されたとしているが、乙第4号証のみによっては、現在もこのリーフレットが頒布されているかどうかは不明である。 以上より、乙第4号証は、a)被請求人またはその専用使用権者又は通常使用権者が、b)本件商標を、c)本件不使用取消審判の請求にかかる商品「人工血管」について、d)本件審判請求の登録前3年以内に、日本において使用していることを示すとはいえない。 ウ 乙第5号証及び乙第6号証について (ア)本件商標の使用について 乙第5号証及び乙第6号証は、商品「バスクテックePTFE人工血管wrap ped」の包装容器の写真であると認められ、「Unity」の文字が見られるものの、それらは製品の商標である「MAXIFLO+図形」と組合せて印字された「Wrap with Unity Consutruction」、「ePTFE WITH ePTFE WRAP with Unity Consutruction」、または「STANDARD WALL WRAP UNITY」の一部としての表示であり、乙第4号証におけるものと同じく、この人工血管「MAXIFLO」の「ePTFE製の外部サポート」が本体と一体型の構成であることを示すにすぎない。すなわち、製品の性質の説明であって、商品の出所を表す商標的な使用とは認められない。 なお、これらの容器には、「Twillweave,VP1200K,MAXIFLO&Unity are Trademarks of Vascutek Ltd.」などの表示があるが、これらは単に「Unity」が被請求人の登録商標である事実を表示するにすぎず、前述のように、当然のことながら本件商標の使用には該当しない。 (イ)使用の時期について 乙第5号証及び乙第6号証に示される包装容器には製造年月日として「2007/10」、使用期限として「2012/10」と印字されているところ、乙第5号証及び乙第6号証のみによっては、この商品がいつ譲渡されたかは不明である。例えば、2007年10月に製造された後、2008年1月に譲渡されたとすれば、本件審判請求の登録前3年以内の使用証拠とはならない。 以上より、乙第5号証及び乙第6号証は、a)被請求人またはその専用使用権者又は通常使用権者が、b)本件商標を、c)本件不使用取消審判の請求にかかる商品「人工血管」について、d)本件審判請求の登録前3年以内に、日本において使用していることを示すとはいえない。 エ 乙第7号証について (ア)本件商標の使用について 乙第7号証は、被請求人の人工血管には外部サポートがあるものとないものとがあることを示すところ、外部サポートがあるもののうち、補強部が本体と一体になっているものについては一部取り扱いが異なることを説明している。すなわち、「但し補強一体型ePTFE(Unity)人工血管については透析用としても使用できることが実証されています。」、「但し補強一体型ePTFE(Unity)人工血管については補強部分にも穿刺できることが実証されています。」というように、補強一体型ではない人工血管との比較において、その性質の相違を説明するためにのみ用いられているにすぎない。したがって、特定の商品の出所表示として需要者・取引者が認識するものとはいえない。 以上のように、乙第7号証は、被請求人がa)本件商標をb)本件不使用取消審判の請求にかかる商品について使用していることを示す証拠とはいえない。 (イ)使用の時期について 乙第7号証には制作年月日の記載がないため、乙第7号証がいつ頒布されたものかは不明である。 オ 乙第8号証及び乙第9号証について 被請求人は、乙第8号証及び乙第9号証によって、乙第4号証に掲載された商品(カタログ番号「S5008E」)1個について2011年6月29日に売上が計上されたことが証明されると主張する。 しかしながら、上述のように、カタログ番号「S5008E」の商品に商標が付してあるとは認められないことから、仮に乙第8号証及び乙第9号証によって該当商品の譲渡の事実が証明されるとしても、そのことをもって本件商標の使用の証拠とすることはできない。また、乙第8号証及び乙第9号証では1個の商品のみが「長期貸出」対象となっており、その後医療機関に納品されたとされるところ、その数量からみると試験的に譲渡したものとも思われ、本件審判請求にかかる指定商品「人工血管」が継続的に販売されているかは不明である。 なお、乙第8号証及び乙第9号証には本件商標の表示はなく、取引書類に商標を付して頒布する行為は認められない。 (2)まとめ 上述のとおり、被請求人は、本件商標を本件不使用取消審判の請求にかかる商品について使用していることにつき証明をしたとはいえない。 したがって、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品「人工血管」について、その登録を取り消すべきである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。 <答弁の理由> 1 被請求人の親会社で本件商標の通常使用権者であるテルモは、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を商品「人工血管」について使用しているものである。 2 通常使用権者について 被請求人は、人工血管の製造・販売を事業内容とする企業であって、平成14年(2002年)11月にテルモの子会社となり、現在に至るものである(乙1ないし乙3)。そして、テルモは、被請求人が製造する人工血管を日本国内に輸入し、販売しているところであり、これにあたっては本件商標を含む被請求人の保有する登録商標について通常使用権を有するものというべきである。 3 本件商標の使用について (1)乙第4号証は、テルモが日本国内において発行した商品「人工血管」についてのリーフレットである。そして、乙第4号証はこれが作成された平成20年(2008年)8月ごろから現在に至るまで、テルモと取引のある販売代理店及びエンドユーザーである医療機関に頒布されており、そこには本件商標と社会通念上同一と認められる「unity」及び「Unity」の文字が付されているものである。 (2)乙第5号証は、乙第4号証に記載されているカタログ番号「S5008E」に該当する商品(以下「本件商品」という。)の外箱の写真である。外箱には本件商標と社会通念上同一と認められる「Unity」の文字が付されている。 また、乙第6号証は、本件商品の収納容器の写真である。収納容器には本件商標と社会通念上同一と認められる「UNITY」及び「Unity」の文字が付されている。 さらにまた、乙第7号証は、本件商品に同梱されている取扱説明書である。 36頁ないし39頁が日本語による取扱説明書であって、37頁及び38頁には本件商標と社会通念上同一と認められる「Unity」の文字が付されている。 (3)乙第4号証に記載されている商品「人工血管」については、予め商品を販売代理店に「預ける(貸し出す)」ビジネス形態をとっており、販売代理店からエンドユーザーである医療機関に納められて初めて売上げとなるものである。 ここで、乙第8号証は、テルモが本件商品等を販売代理店である株式会社エムシーの栃木支店に納品する(貸し出す)ことを指示した伝票(長期貸出票)である。これによれば、本件商品は平成23年(2011年)5月6日に出荷されたことがわかる。 そして、乙第9号証は、先に株式会社エムシーの栃木支店に納品された本件商品が自治医科大学附属病院に納められ、売上げがあったことを示す伝票(仕切書控)である。これによれば、平成23年(2011年)6月29日に売上げが計上されたことがわかる。 なお、乙第8号証の「ロット番号」欄と乙第9号証「摘要」欄とが、「001315358」で一致していることは商品の同一性を示すものである。 3 まとめ してみれば、本件商標の通常使用権者が、本件商標を商品「人工血管」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用していることは明らかである。 第4 当審の判断 1 被請求人の提出した証拠によれば以下の事実が認められる。 (1)通常使用権について 乙第1号証は、テルモのウェブサイトの2002年10月4日プレスリリースに係るページであり、乙第2号証は、2002年11月18日付けのテルモの「バステック社買収に関する手続き完了のお知らせ」と題する文書であり、乙第3号証は、テルモのウェブサイトの海外事業所に係るページであり、これらによれば、被請求人会社は、2002年11月15日にテルモの連結子会社となり、現在も子会社であることが認められる。 (2)本件商標の使用について ア 乙第4号証は、テルモの「MAXIFLO Ultrathin Wrap」と題する人工血管に係るカタログであり、作成日に関して「C(注:○の中に「C」)テルモ株式会社2008年8月」と記載されているものである。 そして、2頁目の「MAXIFLO Ultrathin」の項にはその説明として、「MAXIFLO Wrap(壁厚0.5mm)に、MAXIFLO Wrap Ultrathin(壁厚0.35mm)のバリエーションを加えました。」、「MAXIFLO Wrap Ultrathinシリーズ人工血管は、MAXIFLO Wrap Ultrathinとunity構造を付加した外部強化型グラフトで構成されています。」の記載がある。 3頁目には、別掲のとおりの見出しが記載され、「MAXIFLO Wrap UltrathinとMAXIFLO Wrapに、外部サポート付きを加えたバージョンを追加しました。外部サポートは本体と同じePTFEでできており、吻合の際に外すことはもちろん、外さずにそのまま吻合することも可能です。」の説明と外部サポートのある人工血管の図などが記載されている。 4頁目の表には「MAXIFLO Wrap」、「MAXIFLO Wrap Ultrathin」、「MAXIFLO Wrap with Unity construction(外部サポート付き)」、「MAXIFLO Wrap Ultrathin with Unity construction(外部サポート付き)」の各商品についてその形状等を記載した表があり、「MAXIFLO Wrap with Unity constcrution(外部サポート付き)」の直径8mmで使用可能長が50cmの商品がカタログナンバー「S5008E」として記載されている。 なお、カタログの末尾部分に「…Unityは、バスクテックリミテッドの登録商標です。」の記載がある。 イ 乙第5号証は、「バスクテックePTFE人工血管wrapped」のカタログ番号「S5008E」の外箱(写真。以下同じ) であり、上面及び左側面には「MAXIFLO」(注:当該文字の右上に「TM」の小さな表示がある。以下当該表示を示すときは「(TM表示)」と記載し、この表示を「TM表示」という。)の文字の右に上段に「Wrap with Unity(TM表示)」と記載され、下段に「constrution」が記載されている。 また底面には「Material of Manufacture:」として、「ePTFE WITH ePTFE WRAP with Unity Construction」の記載があり、製造年月日欄には「2007/10」、使用期限欄には「2012/10」の記載がある。 なお、当該外箱には、「…Unity(TM表示) are Trademarks of Vascutek Ltd.」の記載がある。 ウ 乙第6号証は、本件商品の収納容器(写真)であり、貼付されているラベルの上部に「MAXIFLO(TM表示)及びその右側にやや小さな文字で「Wrap with Unity(TM表示) constcrution」の文字が記載され、商品説明には「Standard Wall」の文字、カタログ番号に「S5008E」のほか、直径、使用可能長、製造年月日、使用期限等が記載されている。また、当該ラベルの右に貼付されているラベルには「Type」として「STANDARD WALL WRAP UNITY」の記載がある。 エ 乙第7号証は、「Expanded ePTFE Vascular Prostheses」と題する各国の言葉で記載されている取扱説明書(instructions for Use)であり、その日本語のページ中、「適応」の項には商品の構成として「ストレート Standard Wall」、「ストレート Thin Wall」の文字が記載され、それぞれについて「グラフトの特徴」、「典型的な応用例」が記載されている。また、「警告」及び「「注意」の項には、それぞれの警告(注意)事項に関して「但し補強一体型e-PTFE(Unity)人工血管については・・・」などとし「補強一体型e-PTFE(Unity)人工血管について、特記し記載されている。 オ 乙第8号証は、テルモの2011年5月6日を出荷日として(株)エムシー栃木支店に自治医科大学附属病院用に長期貸出しをした「長期貸出票」であり、商品として「MX-S5008E S5008E」(ロット番号:001315358 数量:1)が記載されている。 カ 乙第9号証は、2011年6月29日発行のテルモから株式会社エムシー 栃木支店」(以下「エムシー」という。)に宛てた「仕切書控」であり、品名「S5008E」、数量「1」等が記載され、さらに、備考欄に「ジチイカダイガクフゾクHPサマ」と記載されている。 2 上記認定の事実によれば、以下の事実が認められる。 (1)通常使用権者について 被請求人(商標権者)は、テルモの子会社であるから、通常使用権に関する契約が存在しないとしても、テルモは、被請求人から黙示に通常使用権の許諾を受けていた者と推認できるから、テルモを本件商標に係る通常使用権者とみることができる。 (2)本件商標の使用について テルモは、人工血管(本件商品 カタログ番号S5008E)を自治医科大学附属病院に長期貸出しのために、2011年(平成23年)5月6日に株式会社エムシーに貸出し、当該商品をエムシーに同年6月29日に販売(譲渡)したことが認められる。そして、本件商品の外箱には、「MAXIFLO(TM表示)」及びその右に「Wrap with Unity(TM表示)」及び下段に「constrution」と表示されているものであり、また、本件商品の包装容器には、「MAXIFLO(TM表示)」及びその右に「Wrap with Unity(TM表示) constrution」と表示されているものである。そして、これらの表示中、「Unity」の部分(以下「使用商標」という。)と他の部分を一体としてのみ認識すべき特段の事情は認められず、該部分は、TM表示がなされていることも相まって、独立した表示として認識されるものということができる。 そして、本件商標は、「ユニティ」の文字からなるものであり、使用商標「Unity」の読みを片仮名表記したものと認められ、両者は、文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。 3 請求人の主張について (1)請求人は、「unity」は、「一体性、結合」を意味する語であり、乙第5号証及び乙第6号証の包装容器には、「Unity」の文字が見られるものの、それらは製品の商標である「MAXIFLO+図形」と組合せて印字された「Wrap with Unity Consutruction」、「ePTFE WITH ePTFE WRAP with Unity Consutruction」、又は「STANDARD WALL WRAP UNITY」の一部としての表示であり、この人工血管「MAXIFLO」の「ePTFE製の外部サポート」が本体と一体型の構成であることを示すにすぎない。すなわち、製品の性質の説明であって、商品の出所を表す商標的な使用とは認められない旨主張している。 しかしながら、「unity」は、「単一(であること)。統一。結束」等(株式会社研究社 新英和中辞典第6版)、「一致。統一。」(広辞苑第6版)を意味するものであるものの、「一体型」を示すものとして一般に使用されているという事情は認められず(なお、「ユニティ型」「ユニティ構造」などが普通に使用されている事実も認められない。)から、「unity」の語が「一体型」というような意味合いを暗示させるものであるとしても、商品の品質を直接的かつ具体的に認識させるものとまではいえないし、加えて、使用商標「unity」は、前記のとおり、TM表示を付記して使用されているものであり、また、使用商品に係るカタログ(乙4)及び外箱には、使用商標が被請求人の登録商標である旨を明記して使用されていることからすると、使用商標が単にテルモの商品(人工血管)が「unity」という商品の構造、形状によって、製造されているという事実を示すにとどまらず、使用商品の特徴を強調するものであり、合わせて他の商品と識別するものであるといえるから、商品の出所識別標識としても機能を果たすものというのが相当である。 (2)請求人は、乙第8号証及び乙第9号証では1個の商品のみが長期貸出しの対象となっており、その後医療機関に納品されたとしているが、その数量からみると試験的に「譲渡」したものと思われ、本件審判請求に係る「人工血管」が継続的に販売しているか不明である旨主張している。 しかしながら、提出された取引書類が、1回の取引であり、その取引個数が1個であるとしても、それが試験的に譲渡したものとする事情は認められないし、むしろ、2008年(平成20年)8月に乙第4号証のカタログが制作されたことが認められ、その後該カタログを継続的に使用したことが推認できることからすれば、乙第8号証及び乙第9号証の取引をもって、優に本件商品に係る使用商標の使用の事実を認定できるというべきである。 したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が請求に係る指定商品ついて、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したというべきである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 カタログ3ページの見出し |
審理終結日 | 2012-05-30 |
結審通知日 | 2012-06-01 |
審決日 | 2012-06-20 |
出願番号 | 商願昭60-26563 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(110)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
内山 進 |
特許庁審判官 |
堀内 仁子 豊瀬 京太郎 |
登録日 | 1988-03-30 |
登録番号 | 商標登録第2028702号の2(T2028702-2) |
商標の称呼 | ユニティ |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 竹内 耕三 |
代理人 | 向口 浩二 |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 高田 修治 |