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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) X2425
管理番号 1263141 
異議申立番号 異議2011-900218 
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-06-17 
確定日 2012-08-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第5398579号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5398579号商標の指定商品中、第24類「敷布,布製身の回り品,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服,仮装用衣服」についての商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5398579号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成21年11月2日に登録出願され、第24類「敷布,布製身の回り品,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,織物製トイレットシートカバー,カーテン,テーブル掛け,布製ラベル」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成23年2月4日に登録査定、同年3月18日に設定登録されたものである。

2 引用商標
(1)登録第2353908号(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 別掲2のとおり
登録出願日 平成元年1月24日
設定登録日 平成3年11月29日
指定商品(平成16年1月21日指定商品の書換登録後)
第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第21類「家事用手袋」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」、第25類「被服」
なお、平成23年7月19日に存続期間の更新登録がなされ、その指定商品の区分は、第20類、第24類及び第25類に減じられている。
(2)登録第4871727号(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 別掲3のとおり
登録出願日 平成13年2月2日
設定登録日 平成17年6月17日
指定商品 第24類「布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」、第25類「被服,仮装用衣服」
以上、引用商標1及び2(以下「引用商標」という。)は、いずれも現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
本件商標と引用商標は、ともに円輪郭内の上部に、目と認識される二個の黒塗りの縦長楕円形の点を描き、その下部に、口と認識される両端上がりの弧線を円図形一杯に描いてなる。係る基本的構成の共通性から、本件商標と引用商標は、ともに笑顔を簡潔に表した図形であると、取引者、需要者に認識されるため、出所の混同を生じさせるおそれが大きい類似の商標である。
また、本件商標と引用商標は、その指定商品においても類似する関係にある。
よって、本件商標は、その指定商品中、第24類「敷布,布製身の回り品,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服,仮装用衣服」について、商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 本件商標に対する取消理由
当審において、商標権者に対して、平成23年11月1日付けで通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。
ア 本件商標は、上記のとおり、黄色に着色され左上部分に光が当たり反射しているようにして球面のように表した円図形の上部に目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、この2つの黒塗りの縦長楕円形の下に口と思しき両端上がりの弧線を円図形の下方から中央付近にかけて円図形一杯に描いたものから成り、その各構成から、人の笑顔を簡潔、かつ、象徴的に表現したもので看者にほのぼのとした幸福感等を与える商標であると認識されるものと認められる。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1は、黒線により描いた円図形内の中央よりやや上部に、目と思しき小さい黒塗り縦長楕円形を2つ並べ、その下部に、口と思しき両端上がりの弧線をその両端の位置が中央よりやや下部にして円図形一杯に描いたものから成り、その各構成から、人の笑顔を簡潔、かつ、象徴的に表現したもので看者にほのぼのとした幸福感等を与える商標であると認識されるものと認められる。
(イ)引用商標2は、黒線により描いた円図形内の中央よりやや上部に、目と思しき小さい黒塗り縦長楕円形を2つ並べ、その下部に、口と思しき両端上がりの弧線をその両端の位置が中央よりやや上部にして円図形一杯に描いたものから成り、その各構成から、人の笑顔を簡潔、かつ、象徴的に表現したもので看者にほのぼのとした幸福感等を与える商標であると認識されるものと認められる。
ウ そこで、本件商標と引用商標の類否について検討するに、本件商標と引用商標をそれぞれ子細に対比観察するならば、円図形内の黄色の着色の有無の違いに加え、目に当たる部分の配置や大きさ、口に当たる部分の線の太さや弧を描く角度及び位置などの細部において多少相違するところはあるものの、その構成は、看者に与える印象の骨格を決定付ける図形としての基本的構成は同一であるのに対し、着色の有無以外の相違点は両者を対比観察して始めて認識し得る程度の微差に過ぎず、また、円図形部分が黄色の着色がされ、やや立体感のある描出方法により表されているとしても、全体が単一色であって、左程個性的とはいえず、その有無によって格別異なる印象を与えるものとも言い難いから、両者は、図形全体として看者に極めて似通った印象を与えるものと認められる。
加えて、本件商標と引用商標の各指定商品は、共に布製身の回り品、敷布、布団、被服等の日用品であり、いずれも、当該商品の性質上、その需要者は、多くの場合、これに付された商標の一見した印象によって商品の出所を識別することが多い実情にあることは経験則上容易に推認し得るものであることを併せ考慮すれば、本件商標と引用商標をいずれも時と場所を異にして離隔的に観察した場合、需要者が両者を区別することは困難であると認められるから、本件商標と引用商標は、外観において類似するものというべきである。
エ 本件商標と引用商標1の指定商品について検討するに、前者の指定商品中、第24類「敷布,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布」は、後者の指定商品中、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」及び第24類「かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」と同一又は類似の商品であり、前者の指定商品中、第24類「布製身の回り品」及び第25類「被服」は、後者の指定商品と同一の商品である。
また、本件商標と引用商標2の指定商品について検討するに、前者の指定商品中、第24類「敷布,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布」は、後者の指定商品中,第24類「かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」と同一または類似の商品であり、前者の指定商品中、第24類「布製身の回り品」及び第25類「被服,仮装用衣服」は、後者の指定商品と同一である。
オ してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
カ むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、その指定商品中、第24類「敷布,布製身の回り品,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服,仮装用衣服」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

5 商標権者の意見
(1)商標の類似性について
ア 外観
(ア)本件事件の判断
本件商標と引用商標について、「上部に目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、この2つの黒塗りの縦長楕円形の下に口と思しき両端上がりの弧線を円図形の・・・人の笑顔を簡潔、かつ象徴的に表現したもの」と短絡的に判断しているが「スマイル・マーク」の特殊な商標としての判断としては適切でない。
(イ)「スマイル・マーク」の特殊性
本件商標は、「目と口」を組み合わせた単純な図形である。そもそもその図形は、人類発生以来あらゆる民族、あらゆる国、あらゆる場所、あらゆる時期、に誰でも使用されたもので、本来その特徴は少なく、そもそも差別化することが不可能なものである。
そのような「商標」である、例えば、「熊の絵柄」、「鷲の絵柄」、「犬の絵柄」については、それぞれに明確な区別がなく、多数の商標が共存している(乙44ないし乙46)。
(ウ)本件商標権者は、第25類の分野で「スマイル商標」を252件登録しており(乙6)、それぞれが引用商標と類似関係にあると考えられる。それらと引用商標とを比較した場合、本件事件の判断基準に照らし、元々登録にならなかったはずである。しかし、このように多数の登録がなされたということは、「スマイル」の特殊性が認識され、類似範囲が限定されたものとの考えから登録になったものと考えられる。
そのような流れは、後述する平成13年の大阪地裁の判決から始まったものであろう。
(エ)「スマイル商標」の現在の登録状況を見ても上記商標権者所有の商標以外にも、他人のものが第25類で計97件確認でき(乙47)、それぞれが全く非類似といえないものである。
これを見ても、現在では「スマイル商標」の類似関係は同一商標以外は拒絶理由の対象とならないはずであり、このような状況を考えると、本件商標と引用商標とは明らかに非類似である。
イ 本件商標は元々、商標権者のものであった
本件商標の基本は「目と口」であり、本件商標の「目と口」は、「目と口」からなる商標権者の登録第4661137号と同一に描かれているにすぎず、当然に権利範囲の同一商標である。
ウ カラーによる差別化について
上記の事実に、カラー化が加わることによって、本件商標と引用商標は別商標であると判断すべきである。
また、カラーも原色ではなく、ほとんど白色に近い黄色であることから、識別性は弱く、カラー部分が商標に占める割合は大変小さいものと考えられる。
立体商標について
本件商標と引用商標を比較した場合、1)黄色である、2)円錐形立体である、の2点で大きな違いがあり、消費者が市場で本件商標と引用商標とを混同するとは考えられない。
カラー商標については昔から、また、立体商標について平成9年からその制度が認められているのにかかわらず、今回の判断は、それを全く無視しそこに描かれた「目と口」だけについて判断することは適切でない。
オ 平成23年12月13日付け日本経済新聞に、2013年の国会で「音や動き」等も商標を識別して保護されるよう法改正を行うと報じられているが、本件事件の判断はあまりにも逆行するものである。
カ 本件商標と引用商標の外観については、前述のとおりであり、称呼については、本件商標は図形であるので、引用商標との比較は困難である。
観念については、取消理由において何ら触れられていないが、「観念」については、最近は日本では海外との関係が重要視され、それを含めた多方面での審査条件が考慮されるのが一般化されている。
例えば、地名である「LE MANS」、「ST ANDREWS」が登録されている(乙48、乙49)。また、同じく「ST ANDREWS」が海外の著名性によって拒絶理由とされ(乙50)、「FRANCK OLIVER」は、日本国内では無名であるが、商標法第4条第1項第8号に該当すると判断され、テディベアの図形を含む商標がドイツの企業のブランドマークを含むものとして商標法第4条第1項第15号に該当するとされている(乙52)。
以上のように、最近は海外の「著名商標」について誕生の経緯、歴史、コンセプト等も登録条件として加味されている。
これらを考えると、「スマイリーフェイス」(本件商標や引用商標)は、故ハーベイ・ボールの1963年末の創作・著作であるため、引用商標の登録自体が後述する「大阪地裁判決」(乙4)で指摘されたと同様に誤りだった可能性が大きく、本件商標を引用商標の存在をもってその登録を取り消すというのは合理性がない。
また、外観以外を考慮せず、本件商標を取り消すというのは承服できない。
キ 平成13年「大阪地裁判決」で新しい判断が
「スマイル」が「熊」「鷲」「犬」等と沿うように特殊な商標であり、差別化が困難であることは明らかである。
大阪地裁の「平成12年(ワ)第5986号」判決(平成13年10月25日言渡し)は、大阪のメーカーがスマイルの商標を使用したことに対する損害賠償等請求の理由で争った事件であるが、判決は、「スマイルマークの範ちゅうに属する本件商標権については、禁止権の範囲が限定されると解するのが相当である」と判断されている。
上記の論理から判断すると、「権利が主張できない」とは商標登録時での第三者の登録商標」(同一商標でない。)をもって、他人の出願商標の「拒絶理由」にならないはずである。
以上を考えると、本件商標と引用商標とは全く別の商標であるといわざるを得ない。
ク 申立人は、平成9年ころに「スマイル商標」に関して「あんな単純なマークが著作物なら人間の顔も描けなくなる」と主張している(乙1)。「著作権が無い」ということは「権利が無い」ということであり、権利が無いということは「商標登録できない」という意味であるはずである。
これらの主張は、今回の申立人の主張と全く矛盾するものである。
ケ 引用商標は、それぞれ平成3年11月29日、平成17年6月17日に登録となっている。
前述「大阪地裁判決」によると、「スマイルマーク」の称呼及び観念を生ずる標章からなる商標は、昭和46年10月28日(第1次ブーム開始から1年後)の時点では、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標(商標法第3条第1項第6号)として、商標登録を受けることができないものとなっていた可能性が高い、と判示されている。そして、上記判決の「禁止権の範囲が限定されると解するのが相当である」の判断を加味すると、引用商標は、本来登録されるべきではなかったものである。
しかし、その後も「スマイル商標」の多くが現在まで登録になっていることを考えると、上記判決にしたがうと、それぞれの権利は同一商標のみに限られるものであり、その判断からすると、本件商標と引用商標は全く別商標であるといえるはずである。
コ 商標権者は、後述するように関連する財団で「スマイルを世界平和の礎にする」目的で各種ボランティア活動やイベントを行い、「スマイル商品化事業」を「ジャス・インターナショナル株式会社」をとおして行っている(乙9)。上記活動を遂行するために本件商標の登録をする必要性がある。
サ 申立人が引用する引用商標1について、現在ではその使用がされている事実がない。申立人が上記商標の登録出願した平成元年ころには、多数の「登録商標」が存在し、それらとの類似を指摘されることを避けるために実際に使用しない変形した商標を登録出願したにすぎず、その出願は、不正な目的で行われた。
また、「スマイル・マーク」は商標権者関連の米国人「ハーベイ・ボール」によって1963年末に創作・著作され、その後アメリカで大流行し、我が国でも1970年に流行したものであり、申立人は、商標権者関係が作った流行に便乗して金もうけだけを考えたものであり、自身としては全く登録する理由もなく、明らかに上記不正な目的で行われたものである。
(2)スマイルは、商標権者関連の「ハーベイ・ボール」によって創作・著作された
ア ハーベイ・ボール氏について
(ア)「スマイリー・フェイス」は、1963年末、故ハーベイ・ボール氏によって、創作・著作された(乙11ないし乙21)。
(イ)日本での「スマイリーフェイス」の登場は、1970年(昭和45年)に起こった「ニコニコ・マーク」、「ラブ・ピース」の大流行であり、それをリードしたのは、サンスター文具やリリック等の文具メーカーである(乙22ないし乙23)。そして、上記文具メーカーの担当者は、アメリカの大流行をまねたものだと証言している。
(ウ)「SMILEY FACE」の国際的ボランティア活動の実情
a ハーベイ・ボール氏は、「スマイリーフェイスを世界平和の礎にする」ことを希望し、1999年及び2000年に地元米国ウスター市と共催で「ワールド・スマイル・ディ」を開催し、同氏の死後、「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」が設立され、その活動等を引き継いでいる(乙43)。
商標権者関連の財団の日本国内での2011年の主な活動として東日本大震災支援として「スマイルで日本を元気に」活動を行った(乙54)。
b アメリカの「スマイリー・フェイス」とハーベイ・ボール氏の存在と活動は、全世界の人に知られており、特に著名人の支持を得ている。全世界で約500人が「名誉スマイル大使」として活動している(乙25)。
日本では、日本支部が結成され、会長に舛添要一氏が就任しているほか、副会長に愛川欽也氏らが就任し、「スマイルを家庭から職場から社会に広げよう」と活動している(乙26ないし乙31、乙33、乙34、乙36)。
c 財団は、機関紙「SMILEY NEWS」を年数回20,000部発行し、マスコミ、著名人、文化人、小売店、メーカー等に配布して啓蒙活動を行っている。
d ハーベイ・ボール氏は著作権登録を、カナダ、メキシコ、インドで行い、商標権者の名義でベルヌ条約に基づき日本の文化庁に126件の著作権登録をして、世界各国をカバーしている(乙32)。
e 財団は、米国で登録商標229件を所有し(乙37)、その他最終的に200件の「スマイル商標」の登録が認められるはずである。
また、財団は、現在、日本で商標登録876件を所有し、「スマイル」は財団の商標権であるといえる。
イ 日本での「スマイル商品化事業」について
(ア)日本で最近も「スマイル」の流行があった。平成20年度には、「渋谷109」等の売場では「スマイルTシャツ」等がはん濫していたが、それらの商品はほとんど「ニコちゃん」の愛称で呼ばれていた(乙40)。「ニコちゃん」の愛称は、昭和45年当時の「ニコニコ・マーク」の呼び方の略称である。そのことを考えると、それは、ハーベイ・ボール氏の貴重な財産といえる。
日本の消費者が「スマイル」を受け入れるとしたら、ハーベイ・ボールに始まった過去の流行、その後財団等が設立され、ボランティア活動を行い、広告、宣伝を繰り返した結果である。
(イ)財団は、「繊研新聞」等の業界紙で2年前より、「スマイリーフェイス」の正当性を宣伝している(乙42)。

6 当審の判断
(1)本件商標についてした前記4の取消理由は妥当なものであって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標権者の主張について
ア 商標権者は、「スマイル・マーク」は、本来その特徴は少なく差別化することが不可能なものであり、熊等の絵柄の商標登録が共存していることや「スマイル商標」の登録の状況を見ても、その類似関係は同一の商標以外は拒絶理由にならないのであり、このような状況を考えると、本件商標と引用商標とは明らかに非類似であると主張している。
しかしながら、商標権者のいう、「スマイル商標」の登録状況(乙47)をみると、その構成態様は、多種多様であって、「スマイル商標」の類否について同一のもの以外は類似しない(混同を生ずるおそれがない)とはいうことができない。
そして、本件商標と引用商標を離隔的に観察した場合に、需要者において両者を区別することが困難であることは、前記4の取消理由通知において説示したとおりである。
なお、商標権者は、上記主張の根拠として大阪地裁判決(平成12年(ワ)第5986号)を引用し主張しているが、同判決は、商標権侵害の成否を争点とする訴訟の判決であり、商標の登録要件(他人の先願登録商標と同一又はこれに類似する商標)についての判断に関する本件とは、事案を異にするものである。
したがって、商標権者の上記主張は採用することができない。
イ 本件商標と引用商標を比較した場合、1)黄色である、2)円錐形立体である、の2点で大きな違いがあり、消費者が混同するとは考えられない、旨主張している。
また、商標権者は、本件商標と引用商標とは称呼については比較が困難であるものの、取消理由では、外観以外、観念については触れられていない、外観以外を考慮せず、本件商標を取り消すというのは承服できない、旨主張している。
しかしながら、本件商標は、黄色に着色され、かつ、やや中央部が盛り上がった球面状の印象を与える描出方法により表されているものであり、本件商標と引用商標とは、その表現方法が異なるが、いずれも円図形内に目と思しき小さい黒塗り縦長楕円形を2つ並べ、その下部に、口と思しき両端上がりの弧線をその両端の位置が中央よりやや上部にして円図形一杯に描いたものからなり、その各構成から、人の笑顔を簡潔、かつ、象徴的に表現したものと認識されるものであるから、看者に与える影響に大差はなく上記の表現方法の相違があるとしても、これをもって、本件商標と引用商標とが外観において類似するとした前記判断を左右するものとはいえない。
そして、本件商標と引用商標とは、いずれも笑顔を簡潔、かつ、象徴的に表現したものと認識されるとしても、笑顔をモチーフとした図柄は多種多様にあり、「笑顔」を表したものであることが、商取引上、識別力を発揮する観念とはいうことができないから、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものというべきである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、前記4の取消理由のとおり、外観上類似するものであって、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、両者は類似の商標といえるものである。
なお、商標権者は、商標を保護する対象を「音や動き」などにも拡大するとする新聞報道を元に、本件商標と引用商標が類似するとした取消理由の判断が逆行するものであると主張しているが、そのような改正が実際に行われるか否かはともかく、上記報道は、商標を保護する対象に係るものであって、本件に当てはまるところはない。
したがって、商標権者の上記主張を採用することはできない。
ウ 商標権者は、「引用商標は、本来登録されるべきではなかった。」と主張している。また、「スマイルは、商標権者関連の『ハーベイ・ボール』によって創作・著作された」と主張し、財団の活動等についてるる述べている。
しかしながら、そのような事情が事実、存在したかどうかはともかく、本件引用商標が現に登録されている以上、本件商標がこれと類似するものと認められれば、商標法第4条第1項第11号の該当性を否定することはできないから、商標権者の主張は失当である。
(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その指定商品中「結論掲記の指定商品」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1 本件商標

(色彩は原本参照)

2 引用商標1


3 引用商標3


異議決定日 2012-01-16 
出願番号 商願2009-86351(T2009-86351) 
審決分類 T 1 652・ 261- Z (X2425)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小林 薫平松 和雄 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 大島 康浩
瀧本 佐代子
登録日 2011-03-18 
登録番号 商標登録第5398579号(T5398579) 
権利者 有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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