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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X1935
管理番号 1262980 
審判番号 不服2011-28010 
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-27 
確定日 2012-08-23 
事件の表示 商願2010-58530拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「カーボンオフセットサイディング」の文字を標準文字で表してなり、第19類及び第35類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成22年7月26日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、原審における平成23年3月29日付け手続補正書により、第19類「カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁用の石灰製仕上げ板材,カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁用の石こう製仕上げ板材,カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁用のセメント製仕上げ板材,カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁用の木製仕上げ板材」及び第35類「カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁用の仕上げ板材の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『カーボンオフセットサイディング』の文字を標準文字で書してなるところ、構成中の『カーボンオフセット』の文字は、『市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせること[環境省定義]』を表すものであり、『サイディング』の文字は、『建物の外壁に張る仕上げ板材のこと』を表すものである。そして、近時、環境保護の観点から、『カーボンオフセットはがき』等の『カーボンオフセット商品』の販売がみられ、様々な分野において、『カーボンオフセット』の仕組みを取り入れた商品の販売や役務の提供が行われており、本願の指定商品・役務を取り扱う分野においても、同様である。そうすると、本願商標全体からは、『カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁用の仕上げ板材』程の意味合いが容易に認識されるというべきであるから、出願人がこれを補正後の指定商品・役務について使用しても、これに接する需要者等は、当該商品が『カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁用の仕上げ板材』であること、また、当該役務が『カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁用の仕上げ板材』を取り扱う役務であると理解するにとどまり、自他商品・役務の識別標識としては認識しないものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
本願商標は、「カーボンオフセットサイディング」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「サイディング」の文字は、本願の指定商品との関係において、「建物の外壁に張る仕上げ板材のこと」(「広辞苑 第六版」、株式会社岩波書店発行)を意味するものであるから、本願商標は、「カーボンオフセット」の文字と「サイディング」の文字とを結合したものと容易に認識されるものである。
ところで、その構成中の「カーボンオフセット」の文字は、「クリーン開発メカニズム(CDM)の1.排出した二酸化炭素などの量を算出して,その分を植林などにより相殺すること」(「コンサイスカタカナ語辞典第4版」、株式会社三省堂発行)を意味するものであるところ、現在、地球温暖化に対する世界レベルでの取組が求められており、環境省の説明(http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset.html)によれば、「カーボン・オフセット」とは、「日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です。」とされている。
また、2008年2月に環境省が取りまとめた「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset/guideline/guideline080207.pdf)に基づいて、適切かつ透明性の高いカーボン・オフセットを普及するため、カーボン・オフセットフォーラム(J-COF)が設立され、カーボン・オフセットの先進的な取組をモデル事業として支援するとともに、カーボン・オフセットに用いる温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、信頼性のあるものとするため、国内の排出削減活動や森林整備によって生じた排出削減・吸収量を認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」が2008年11月に創設されている。
さらに、このカーボンオフセットの仕組みを取り入れたり、認証を受けたりしている各種商品・サービスは、「カーボン(・)オフセット」の文字と「各種商品・サービス名」を組み合わせて、原審が拒絶理由通知において提示した「カーボンオフセットはがき」のように称されており、ほかにも「カーボンオフセットカーペット」、「カーボンオフセットカクテル」、「カーボン・オフセットトマト」といった例が見受けられる。
そして、本願の指定商品及び指定役務と関係が深い建材や建築の業界においても、「カーボンオフセット」の取組みが行われていること及びその仕組みを取り入れた商品が流通している事実が別掲に示す内容から裏付けられるものである。
一方、本願商標の構成中の「サイディング」の文字は、本願の指定商品及び指定役務を取り扱う業界において、機能や材質を表す語と結びついて、例えば、「親水性サイディング」、「光触媒サイディング」、「防火サイディング」、「ウッドサイディング」及び「樹脂サイディング」のように表示され、商品の品質を表すものとして使用されている。
してみれば、「カーボンオフセットサイディング」の文字よりなる本願商標は、「カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁に張る仕上げ板材」程の意味合いを容易に認識させるものである。
そうとすると、本願商標は、これをその指定商品又は指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者は、該文字を「カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁に張る仕上げ板材」、「カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁に張る仕上げ板材を取り扱う役務」であることを表示したもの、すなわち商品の品質又は役務の質を表示したものと認識するにとどまるというのが相当であるから、自他商品・自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないというべきである。
なお、請求人は、本願商標が、その指定商品、指定役務について、商品の品質、役務の質を表すものとして、その業界において、取引上普通に使用されておらず、そのような語であっても自他商品・自他役務の識別標識として機能を果たすものと認められて登録されている商標が多数あることから、本願商標も同様に登録すべきであると主張する。
しかしながら、商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号の品質表示に該当するというためには、取引者、需要者が品質を表示するものとして認識するものであれば足りるといえるのであって、実際に商品の品質を表示するものとして使用されていることまでは必ずしも必要としないと判示されている(平成13年(行ケ)第207号 東京高裁平成13年12月26日判決言渡参照)。
そうすると、たとえ、「カーボンオフセットサイディング」の文字が商品の品質等を表すものとして実際に使用されていないとしても、これに接する取引者、需要者は、商品の品質等を表示するものとして認識し得るものであることは上記のとおりである。
そして、建材や建築の業界において、別掲のとおり、カーボンオフセットの取組みが行われていることから、本願商標に接する取引者、需要者は、「カーボンオフセットサイディング」の文字より「カーボンオフセットの仕組みを取り入れた建物の外壁に張る仕上げ板材」程の意味合いを認識するものである。
また、本願の指定商品及び指定役務が、前記1のとおりに補正されていることからすれば、請求人は、本願商標を「カーボンオフセットの仕組みを取り入れた商品」とそれを取り扱う役務に使用することを想定していることは明らかである。
さらに、商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するかどうかは、当該商標の構成態様と指定商品又は指定役務の取引の実情等に基づいて、個別具体的に判断されるべきものであって、かつ、その判断時期は、査定時又は審決時と解されるべきものであるから、請求人の挙げた登録例は、いずれも、本願商標とはその商標の構成又は指定商品、指定役務が相違し、本願とは事案を異にするものといわざるを得ないものであり、それら登録例の存在によって、前記判断は何ら左右されないというべきである。
以上のとおりであるから、請求人の上記主張は、採用することができない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)2009年(平成21年)1月4日、日本経済新聞(朝刊、9頁)に、「国産木材に復権の兆し?-CO2相殺に企業注目(エコノ探偵団)」の見出しの下、「住宅の床や壁、家具などに使われる合板は、以前は間伐材のような細い丸太からつくることはできず、外国産の太い丸太を使っていた。しかし、外国産は森林保護のための輸出制限や中国など新興国の消費拡大で価格が上昇。『間伐材なら半値程度で入手可能なこともあり、製材業者などが研究した結果、利用できるようになりました』と専務理事の川喜多進さん(58)。現在、合板の原木の五二%は国産材が占める。・・・環境省の調べによると○八年十月までに確認されたカーボンオフセットは三百六件。まだ省エネ技術などで生み出された排出枠を海外から購入する手法が多いが、国内森林の吸収量を活用する例も増加傾向にある。」の記載がある。
(2)有限会社鈴木建材店のウェブサイト中の「施工例:木造建築」の項目中に、「自然素材、環境負荷を考え、カーボンオフセットの国産桧の集成柱を使用し、2部屋ある和室は真壁を可能に。」の記載がある(http://www.skenzai.jp/quality/305-8.html)。
(3)中村産業株式会社のウェブサイト中の「漆喰建材部門」の項目中に、「漆喰シートがウイルスを不活性化する脅威のメカニズム。・・・国産材と漆喰のカーボンオフセット効果・・・木材に張り合わせる事で用途が広がり、住宅用建材としての付加価値アップ!」の記載がある(http://www.nakamura-industry.com/plaster/material.html)。
(4)住友スリーエム株式会社のウェブサイト中の「ニュースリリース」の項目中に、2010年(平成22年)10月1日付け発表の情報として、「建材で初めてカーボン・オフセット認証を取得したウインドウフィルム」の見出しの下、「ウインドウフィルムの最大手である住友スリーエムは、ウインドウフィルムの一部製品にカーボン・オフセット(注1)を適用し、10月1日より販売を開始します。建築材料としては初めて気候変動対策認証センター(注2)による認証を取得した製品です。」の記載がある(http://www.mmm.co.jp/news/2010/info/20101001.html)。
(5)株式会社SEDCが運営する「ecool.jp」のウェブサイト中の「建設・建材環境配慮型建材・機器」の項目中に、「商品名: カーボンオフセットクレジット付 再生プラスチック材 角材・平板材」の見出しの下、「商品概要: 企業から排出されましたプラスチックの屑を使ったリサイクル商品です。カーボンオフセット商品(J-verクレジット)です。」の記載がある(http://www.ecool.jp/pr/2010/04/post-82.html)。

審理終結日 2012-06-14 
結審通知日 2012-06-19 
審決日 2012-07-10 
出願番号 商願2010-58530(T2010-58530) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X1935)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨澤 美加 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 堀内 仁子
山田 和彦
商標の称呼 カーボンオフセットサイディング、カーボンオフセット 
代理人 安田 徹夫 
代理人 平木 康男 
代理人 高野 清 
代理人 平木 祐輔 

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