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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 009
管理番号 1262917 
審判番号 取消2011-300642 
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-07-06 
確定日 2012-08-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第4118429号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4118429号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「ExRon」の欧文字を横書きしてなり、平成8年11月11日に登録出願、第9類「コンピュータプログラム記録済磁気ディスク,コンピュータプログラム記録済磁気カード,コンピュータプログラム記録済磁気テープ,コンピュータプログラム記録済磁気ドラム,コンピュータプログラム記録済光学ディスク」を指定商品として、同10年2月27日に設定登録され、その後、同20年3月4日に商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。
そして、本件審判請求の登録日は、平成23年7月26日である。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標をその指定商品中「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」に使用しているとして、乙第1号証(新聞)及び乙第2号証(ホームページのハードコピー)を提出しているが、これらから、本件商標を付した商品が市場で実際に販売されているか不明であり、使用の有無を判断することは出来ない。
(2)乙第1号証の新聞広告については、その内容から、被請求人が組込み製品の開発をサポートする一方で、組込みマルチタスクというOS(オペレーティングシステム)を提供していることが窺えるものの、これから本件商標が「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」に使用されているとはいえない。何故なら、「組込みマルチタスクOS」は、産業機器や家電製品などに内蔵されるマイクロコンピュータを制御する為のシステム(いくつかの要素によって構成されるもの:集合体)であり、これと「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」(単体)とは商品を異にし、前者システムについて使用していることがシステムを構成するすべての機器等についても使用していると認定されるとは到底考えられないからである。
なお、「使用」には広告も含まれるが、3年に1回、新聞や雑誌等に広告を出すことにより形式的には不使用による取消の規定の適用を免れるとはいえ、単に広告のみによる使用の立証は商標法の趣旨から名目的なものと断ぜざるを得ず、実際に使用しているとは認められない。
(3)被請求人は、乙第2号証をもって本件商標を付した「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」について広告している旨主張しているが、使用に係る商品については、上記(2)と同様であり、また、広告の手段であるホームページは私的なもので、乙第1号証(新聞)と違い客観性がなく正当な立証手段としては認められない。
(4)したがって、乙各号証の広告により、本件商標を使用しているとする「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」が市場において独立して商取引の対象として流通に供されているとは認められない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 商標法上の「使用」には、「商品に関する広告に標章を付して頒布」することも含まれる(商標法第2条第3項第8号前段)。
被請求人は、平成22年9月2日発刊の日刊工業新聞の31面に、マルチタスクOS「ExRon」の広告を掲載しており(乙第1号証)、これは、「μITRON仕様準拠の組込みマルチタスクOSです」と書いてあるとおり、本件商標の指定商品である「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」に関する広告であって、この新聞広告に本件商標「ExRon」を付しているので、これが「使用」にあたることは明らかである。
2 商標法上の「使用」には、商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為も含まれる(商標法第2条第3項第8号後段)。
被請求人は、そのホームページ上でも、「ExRon」の広告をしており(乙第2号証)、これは、本件商標の指定商品である「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」に関する広告であり、この広告に本件商標「ExRon」を付して電磁的方法により提供しているので、これも本件商標の「使用」にあたることは明らかである。なお、ホームページ上での広告は、遅くともホームページの最終更新日である平成22年8月17日以降現在まで継続的に掲載されている。
3 以上のとおり、被請求人は、本件商標を使用しているので、請求人の主張には理由がない。

第4 当審の判断
被請求人は、本件商標を取消請求に係る指定商品中の「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」について使用している旨主張して、証拠として乙第1号証及び乙第2号証を提出している。
1 被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
乙第1号証は、平成22年9月2日付けの日刊工業新聞であり、その31面に、「開発環境や実行環境など/組込み製品開発をサポートします!」の見出しのもとに、「Exella(右肩に丸付き“R”、以下同じ) & ExRon(右肩に丸付き“R”、以下同じ)」とあり、その「ExRon」の下には「μITRON仕様準拠の組込みマルチタスクOSです/ExRon製品をベースとしてカスタムOSマルチタスクアプリ、ドライバー開発も実績あり」と記載されており、下欄には、被請求人の会社名や住所、電話番号等が記載されていることを認めることができる。
乙第2号証は、被請求人のホームページと認められるものであり、同号証2枚目の「製品及びカスタム製品」の欄には、「マルチタスクOS ExRonシリーズ」として、「エンベデッドやモバイルの分野でも注目は、ソフトウェアのプラットホームとなるOSです。当社では日本独自のRTOS μITRON仕様に準拠したマルチタスクOS ExRonシリーズをご提供しています。また、ご要望により、カスタム仕様のシステムコール対応も承っております。」と記載されており、また、製品一覧には、「μITRON3.0仕様準拠」のもとに「ARM7TDMI版」、「ARM9TDMI版」、「ARM940T版」等と記載されている。
そして、同号証4枚目の「携帯情報機器向マルチタスクOSExRon/エクスロン」の項には、その特徴として「μITRON3.0使用準拠」、「最小構成品から携帯情報機器に最適なシステムコールをサポートした当社推奨構成品-A、当社推奨構成品-B、当社推奨構成品-C、をご用意。」と記載されており、また、製品一覧には、「ARM7TDMI版」、「ARM9TDMI版」、「ARM940T版」等と記載され、ホームページの更新履歴として、「更新:2010年8月17日」と記載されていることが認められる。
2 上記1において認定した事実によれば、商標権者は、本件審判の請求の登録(平成23年7月26日)前3年以内である平成22年9月2日付けの日刊工業新聞に広告を掲載しており、該広告には、「μITRON仕様準拠の組込みマルチタスクOSです」なる記載の上部に、別掲のとおりの構成態様からなる本件商標と構成態様を同じくする「ExRon」が表示されていることを認めることができる。
ところで、商標権者が本件商標を表示して広告宣伝している「組込みマルチタスクOS」(以下「使用商品」という。)とは、請求人の主張にもあるとおり、「産業機器や家電製品などに内蔵されるマイクロコンピュータに組み込まれて動作し、それらを制御するために複数のタスク(プロセス)を切り替えて実行することができるオペレーティングシステム(OS)」と解される。
そして、オペレーティングシステム(OS)とは、基本ソフトとも呼ばれ、コンピュータシステムをできるだけ効率的に使うように設計されたソフトウェア(株式会社技術評論社発行「2009-’10最新パソコン・IT用語辞典」)であることが認められる。
そうとすると、使用商品は、産業機器や家電製品などに内蔵されたマイクロコンピュータ上で動作するために、標準化されたμITRON仕様に準拠するソフトウェアということができる。
一方、被請求人が本件商標の使用を主張する「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」は、有体物である光学ディスクにコンピュータプログラム、すなわち、ソフトウェアを記録した物といえる。
してみれば、当該コンピュータプログラム記録済光学ディスクと被請求人が使用商品と主張する前記商品とは、コンピュータプログラム(ソフトウェア)を無体物にとらえるか、有体物として扱うかによる表示形態は異なるものの、ともに実質的にはコンピュータプログラム(ソフトウェア)であるといえるから、使用商品と「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」とは、実質的に同一の商品とみて差し支えないものというべきである。
ところで、本件商標は、平成8年11月11日の出願日であるところ、商標法施行規則別表のおけるソフトウェア(コンピュータプログラム)関連商品の取扱いをみると、平成13年経済産業省令第202号による商標法施行規則別表の一部改正(平成14年1月1日施行)により、「電子応用機械器具及びその部品」の概念下に、「電子計算機用プログラム」が明記されるまでは、ソフトウェア(コンピュータプログラム)は、電子計算機の一部として、「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器を含む。)」として例示され、審査実務上も、「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」などとして、何等かの電子媒体に記録された表示のみを指定商品として容認してきた経緯がある。
してみれば、本件商標の指定商品の表示(「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」等)は、上記の例示及び審査実務上の取扱いに倣い、ソフトウェア(コンピュータプログラム)を意図して出願されたものと解されるところである。
したがって、使用商品は、その記録媒体が明示されていないとしても、「ソフトウェア」ないし「電子計算機用プログラム」のひとつであって、電子媒体に記録されたコンピュータプログラムと実質的に同一の商品ということができるから、請求に係る指定商品「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」等と同等の商品とみて差し支えない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、使用商品は、産業機器や家電製品などに内蔵されるマイクロコンピュータを制御するためのシステム(集合体)であり、取消請求に係る指定商品「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」(単体)とは相違する商品である旨主張する。
確かに、使用商品は、集合体を意味するシステムの文字を有するが、コンピュータ上で使用するコンピュータプログラムであることに変わりはない。
(2)請求人は、3年に1回、新聞や雑誌等に広告を出すことのみによる使用の立証は、名目的なもので実際に使用しているとは認められない。また商標権者のホームページによる広告は客観性がなく正当な立証手段としては認められない旨主張する。
しかしながら、特許庁編工業所有権法逐条解説(第18版第1379頁)にも記載されているように、商標法第50条第1項にいう「使用」とは、「3年間のうち1度でも使用の事実があれば本項の適用はない。」と解されることから、本件商標の使用事実の証明が3年間のうち1度のものであるとしても本件商標の使用として当然に認められるものである。
また、商標権者のホームページには、商標権者の商号、本件商標「ExRon」、広告の対象商品(組込みマルチタスクOS)、商品の特徴などが記載されているから、これを該商品の広告に該当しないとする合理的な理由は見いだせない。
(3)したがって、請求人の上記(1)ないし(2)の主張はいずれも理由がない。
4 以上のとおりであるから、商標権者は、「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」と実質同一の使用商品について本件商標を表示して広告をしていたのであるから、「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」について本件商標を表示して広告をしていたものと認められる。
5 まとめ
してみれば、商標権者は、本件審判についての要証期間内に、「コンピュータプログラム記録済光学ディスク」に本件商標を付して広告、宣伝したものと認められるところであり、これは、商標法第2条第3項第8号に規定されている商標の使用行為ということができる。
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件商標を本件審判の請求に係る指定商品について使用をしていたことを証明したものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(本件商標)


審理終結日 2012-03-05 
結審通知日 2012-03-15 
審決日 2012-04-06 
出願番号 商願平8-127301 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (009)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 静子 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 1998-02-27 
登録番号 商標登録第4118429号(T4118429) 
商標の称呼 イクスロン、エクスロン 
代理人 伊藤 甲治 
代理人 藤木 久 
代理人 山崎 和香子 
代理人 市場 健吾 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 加藤 義明 

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