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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X01 |
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管理番号 | 1261551 |
審判番号 | 不服2010-26028 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-17 |
確定日 | 2012-07-31 |
事件の表示 | 商願2008- 53820拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、「TA CLONING」の欧文字を横書きしてなり、第1類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成20年7月3日に登録出願されたものである。そして、指定商品については、平成22年2月8日付け手続補正書により、「増幅された核酸のクローニング用の試薬キット及び試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。),核酸の検出及び定量化用アッセイ試薬及び試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。)」と補正されたものである。 2 当審で通知した拒絶の理由 (1)商標法第3条第1項第3号該当性について 本願商標は、「TA CLONING」の文字(語)を書してなるものであり、本願の指定商品については、「増幅された核酸のクローニング用の試薬キット及び試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。),核酸の検出及び定量化用アッセイ試薬及び試薬(医療用及び獣医科用のものを除く。)」である。 ところで、「TA クローニング」とは、PCR産物のプラスミドベクターのクローニングにおいて、TAベクターを用いたクローニングを「TAクローニング」と称し、以下のウェブサイトのように、この種分野における業界において、一般に使用されている事実が認められる。 ア 佐賀大学農学部生物生産学科 畜産学実験実習 講義テキスト 科目ホームページによれば、TAクローニングとは、「Taqポリメレイスを用いたPCR産物は、その両端にAのオーバーハングを形成します。 Vector側の切断端にTのオーバーハングを作っておけば、PCR産物を容易にクローニングすることができます。このようなベクターをTAベクターと呼び、TAベクターを用いたPCR産物のサブクローニングをTAクローニングと言います。 」の記載がある(http://genome.ag.saga-u.ac.jp/textbook/textbook6-b3.html)。 イ 東洋紡ライフサイエンスの情報誌「UPLOAD VOL.89」の「TAクローニング効率向上の検討」と題するウェブページに「TAクローニングには、Taq DNA polymeraseなどで増幅したPCR産物を用います。一般的に、通常使用しているPCRプライマーの5'末端はリン酸化されていないため、PCR産物をTベクターとライゲーションした後も、2本鎖DNAの片側のみが連結されるだけで、片側にはニックが残ります(図3)。このニックは、形質転換後に大腸菌内で修復を受けますが、両鎖が連結されたものに比べ効率が低下する可能性があります。そこで本稿では、T4 Polynucleotide Kinaseを用いてリン酸化したプライマーを用いて増幅したPCR産物を用い、TAクローニングの効率が向上する否かを検討した結果をご報告いたします。」の記載がある(http://www.toyobo.co.jp/seihin/xr/lifescience/tech/upload/upld89/technical/ta89tr02.pdf)。 ウ [BioWiki]と称するウェブサイトの「TAクローニング」の見出しの下、「オーバーハングがアデニンの断片とチミンの断片をリガーゼでライゲーションする、クローニング手法。TdT活性を持つポリメラーゼで作成したPCR産物のT-ベクターへライゲーションすることを示すことが多い。」の記載がある(http://biowiki.edu-wiki.org/ta%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0)。 エ 「株式会社バイオダイナミクス研究所」のホームページの「DynaExpress TA PCR Cloning Kit」の見出しの下、「発売以来、御好評を頂いております、バイオダイナミクスのTAクローニングキットのラインナップに、新たに2つのベクターが、加わりました。pTAC-1を搭載したTAクローニングキットは、迅速性とクローニング効率の高さから大変好評を頂いております。今回新たに、2種のベクターpTAC-2とpTAKN-2が加わり、さらに強力なラインナップになりました。ぜひお試しください。」の記載がある(http://www.biodynamics.co.jp/prd_ds120.htm)。 オ 「フナコシ株式会社」のホームページの「迅速,高効率な TA クローニングキット DynaExpress TA Cloning Kit 」の見出しの下、「迅速・高効率な TA クローニングが可能な TA クローニングキットです。キットに含まれる T ベクターが異なる3種類の製品があります。また,Jet Competent E. coli Cell( # DS225 )がセットになった製品もあります。」の記載がある(http://www.funakoshi.co.jp/shiyaku/entry/103.php)。 カ 東洋紡ライフサイエンスの情報誌「UPLOAD VOL.80」の「SLO/SLR TA Cloning Kitを用いたプロモーター解析方法のご紹介」と題するウェブページに「TAクローニングは特別なプライマーを用いることなく、制限酵素等の処理も必要としませんので、PCR産物を効率的にクローニングする方法として広く普及しております。弊社では、このTAクローニング技術をプロモーター解析にもご利用いただくべく、MultiReporter Assay System -Tripluc- SLO/SLR TACloning Kitとしてご提供しております。・・・さらにTAクローニングを可能にするように工夫されたキットです。」の記載がある(http://www.toyobo.co.jp/seihin/xr/lifescience/tech/upload/upld80/technical/slo_slr80tr01.pdf)。 キ 「ニッポン・ジーン/遺伝子工学研究試薬」と称するウェブサイトの「TA-Blunt Ligation Kit 」の見出しの下、「本品は、TベクターへのPCR産物のライゲーション(TAクローニング)、平滑末端DNAのライゲーション専用のライゲーションキットです。従来のライゲーションキットと比較して、TベクターへのPCR産物のライゲーション(TAクローニング)、平滑末端DNAのライゲーションを高効率に行うことができます。」の記載がある(http://nippongene.com/pages/products/clomod/mod_e/ta-blunt_lig/index.html)。 ク 「タカラバイオ株式会社」と称するウェブサイトの「Mighty TA-cloning Kit」の見出しの下、「Mighty TA-cloning Kitは、TAクローニング法*によりPCR産物を短時間で簡便にクローニングするためのキットであり、ライゲーション反応にDNA Ligation Kit<Mighty Mix>を使用しているので、簡便な操作で短時間に高効率なライゲーション反応を行うことができる。また、キットにはpUCベースのpMD20T-Vectorを含む。 * TAクローニング: Taq DNA ポリメラーゼなどをベースとするPCR酵素を用いて得られた増幅産物のほとんどは、その3’末端にデオキシリボアデノシン(dA)が一塩基付加されている。これらのPCR増幅産物をクローニングする方法として、3’末端にデオキシリボチミジン(dT)を一塩基付加したTベクターを使用し、PCR増幅産物のdA一塩基突出部分と相補的となることを利用してクローニングを行う。」の記載がある(http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.asp?unitid=U100005120)。 ケ 「PCRクローニング」と称するウェブサイトの「TAクローニング」の見出しの下、「3'A突出を持つTaq-増幅PCR産物を用いて、効率の良いライゲーション、クローニングが可能です。」の記載がある(http://productsja.invitrogen.com/site/jp/ja/home/Applications/Cloning/PCR-cloning.html)。 (2)以上によれば、本願商標は、これに接する取引者、需要者が「TAベクターを用いたクローニング」の意味合いを理解、認識するにすぎないものと認められる。 そうとすれば、本願商標をその指定商品に使用しても、「TAクローニングに用いる試薬キット及び試薬」の意味合いをもって商品の用途、品質を表示するにすぎず、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を有しないというのが相当である。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 3 当審の判断 (1)本願商標は、上記2のとおり、商標法第3条第1項第3号に該当するものと判断する。 (2)請求人は、本願商標を付したクローニング用の試薬キットを長年にわたり米国及び日本国において販売しており、その結果、本願商標を付したクローニング用試薬キットは、請求人が製造・販売するクローニング用の試薬キットであることは周知・著名になっており、これにより、本願商標は自他商品識別力を獲得している旨主張し、その証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。 ところで、商標登録出願された商標が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、実際に使用している商標及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきものである。 ア 請求人提出の甲各号証 (ア)甲第1号証及び甲第2号証は、インビトロジェン株式会社が増幅PCR産物のクローニング用の「TAクローニングキット」の紹介、販売のためのウェブサイトであり、甲第3号証は、「life technologies」のウェブサイトの「Invitron Protocols」として、「TAクローニング」が紹介され、「注文のご案内」のページとリンクしているものである。 (イ)甲第4号証は、平成9年9月11日出願の特許出願の公開特許公報であり、甲第5号証は、平成11年11月19日出願の特許出願の公開特許公報であり、甲第6号証は、平成18年12月25日分割出願(原出願は平成12年1月5日出願)の特許出願の公開特許公報であり、甲第7号証ないし甲第9号証は、いずれも研究論文(いずれも発表日等は不明である)であり、これらの出願、研究論文には、当該発明の実施例や上記研究に際して「TAクローニング」を使用したことは記載されているが、いずれもインビトロジェン社製のものであることが明示されている。なお、甲第8号証には、「6-2 PCR増幅DNAのTAクローニング」の見出しの下にインビトロジェン社製のものを使用したことが記載されている。 (ウ)甲第10号証ないし甲第12号証は、「バイオの価格.comと題する「類似比較できる横断的カタログ」であり、メーカーウェブサイトから転載してインビトロジェン社製の「TAクローニング」の情報が掲載されている。 (エ)以上のほか、当該商品の売上高、広告宣伝の事実等を示す証拠の提出はない。 イ 以上によれば、平成9年9月以前から、インビトロジェン社が「TAクローニング(キット)」を販売し、インターネット等で紹介していることは認められるものの、当該商品の生産又は販売の数量や上記以外の広告宣伝方法等は明らかでなく、上記提出された甲各号証によって、「TAクローニング(キット)」が請求人の業務に係る商品として広く需要者の間で知られているということはできない。 加えて、上記2(1)のとおり、この種業界において、「TAクローニング」が「TAベクターを用いたクローニング」を表すものとして普通に使用されているものである。 そうとすると、本願商標が、使用された結果、需要者がインビトロジェン社(若しくは請求人)の業務に係る商品であることを認識することができるものとは認めることはでない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 (3)以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-08 |
結審通知日 | 2012-03-09 |
審決日 | 2012-03-21 |
出願番号 | 商願2008-53820(T2008-53820) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(X01)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古森 美和、石戸 円、堀内 真一、蛭川 一治 |
特許庁審判長 |
内山 進 |
特許庁審判官 |
瀧本 佐代子 大島 康浩 |
商標の称呼 | テイエイクローニング、タクローニング |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 山本 秀策 |