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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y42
管理番号 1259805 
審判番号 取消2010-300779 
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-07-13 
確定日 2012-07-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4657563号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4657563号商標(以下「本件商標」という。)は、「NTTデータ」の文字を標準文字で表してなり、平成14年3月18日に登録出願、第42類「コンピュータネットワークを介して行うオンラインショッピングによる購買履歴・帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供及びこれらに関する情報の提供」ほか、第35類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同15年3月28日に設定登録されたものである。

第2 参加の申請及び参加許否の決定
本件審判に関し、平成22年9月13日付けで「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」から被請求人を補助するための参加申請書の提出があったところ、これについて、当審は、同23年1月11日付けで、本件参加の申請を許可する旨の決定を行った。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定役務中、第42類「コンピュータネットワークを介して行うオンラインショッピングによる購買履歴・帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供及びこれらに関する情報の提供」の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもがその指定役務中、第42類「コンピュータネットワークを介して行うオンラインショッピングによる購買履歴・帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供及びこれらに関する情報の提供」について継続して3年以上日本全国において登録商標の使用をした事実が存在しないから、商標法第50条の規定により、その登録は、取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)商標的使用態様による使用ではないこと
被請求人は、答弁書において、「乙第3号証は、補助参加人のBlueGateサービスに関するパンフレットである。同パンフレットの2頁上部には、大きく目立つ態様で『NTTデータのBlueGate』と表示されている。これは、補助参加人の統一ブランド名である『NTTデータ』の下で個別サービス名である『BlueGate』を表示しているものである。」及び「乙第6号証には、補助参加人のSmarPサービスのパンフレットである。同パンフレットの表紙には、『SmarP』の文字を図案化したロゴマークが表示されており、その直下には、『NTTのデータの販促ソリューション』と表示されている。・・・同表示中の『NTTデータ』の部分が、本件商標の表示であり」と主張している。
上記のように、被請求人は、「NTTデータが、ITでお手伝いします」や「NTTデータの販促ソリューション」等の記載が商標の使用であること主張する。すなわち、「NTTデータが、ITでお手伝いします」等の記載中の「NTTデータ」が、商標的使用態様において使用されていると主張している。
しかし、上記記載のいずれも、役務を示すものではなく、単に、役務を提供する主体を示すものにすぎないから、商標的使用態様において使用されているものではない。
(2)別件における被請求人の主張によれば、商標的使用態様ではないこと
被請求人は、本件と同一の商標権についての別件の審判である取消2009-300343号事件(以下「別件審判」という)において、本件の答弁書と反する主張をしている。
甲第1号証は、別件審判において請求人が提出した弁駁書である。
甲第2号証の1及び2は、当該弁駁書とともに提出された証拠である。
甲第3号証は、別件審判において上記弁駁書に対して被請求人(本件の被請求人と同一である。)が提出した上申書である。
甲第3号証の4頁?5頁において、被請求人は、「次に、審判請求人は、新たな主張として、補助参加人2が、ウェブサイト及び名刺上に次頁の表示をしていることをもって、本件登録商標の使用であると主張している(請求人注:「弁駁書」は本件の甲第1号証である。)。・・・しかし、上記の各表示は、補助参加人2が補助参加人1のグループの一員であることを示しているものにすぎず、これが直ちに商標としての使用であるとはいえない。」と主張した。
上記の被請求人の主張は、甲第2号証の1及び2の左上の商標、すなわち、二段書きの「NTT/Data」の文字及び「10個の白点を三角形状に配した図形」からなる商標(以下「結合標章」という。)についての主張である。
甲第2号証の1には、結合商標とともに、「『ものづくり改革支援サービス』」等のサービスの記載がある。甲第2号証の2には、結合商標とともに、「基幹系ASPサービス」、「卸売業種向けパッケージ」等のサービスの記載がある。すなわち、結合商標は、上記サービスとの具体的関係において使用されている。それにもかかわらず、被請求人自身が、「上記の各表示は、補助参加人2が補助参加人1のグループの一員であることを示しているものにすぎず」というのであるから、本件の乙第3号証及び乙第6号証に記載の「NTTデータ」は、なおさら「グループの一員であることを示しているものにすぎず」というべきである。
本件の答弁書において、被請求人自身、「補助参加人の統一ブランド名である『NTTデータ』の下で」と主張しており、乙第3号証及び乙第6号証中の「NTTデータ」なる記載が、「統一ブランド名」、すなわち、「グループの一員であることを示しているもの」にすぎないことを認めている。
このため、別件審判における被請求人の主張によれば、乙第3号証及び乙第6号証に記載の「NTTデータ」なる記載は、商標的使用態様による使用ではない。
また、本件審判における被請求人の主張は、別件審判における被請求人の上記主張によって、被請求人自身が作り出した外観と相反するという点においても認められない(民法上の外観法理)。
以上により、被請求人が提出した証拠は、本件商標の使用を示すものではない。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
1 本件商標の使用事実
(1)使用者
被請求人は、本件商標にかかる商標権について、補助参加人に通常使用権を許諾している。
補助参加人は、被請求人の一事業部であったデータ通信事業本部をその前身とし、昭和63年に被請求人から分離独立したものであって、両者は親子会社の関係にある(乙第1号証)。
そして、本件商標「NTTデータ」は、補助参加人の商号「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」から「株式会社」の文字部分を除いたうえで、「エヌ・ティ・ティ」の文字部分をアルファベットの「NTT」で表記してなるものであり、補助参加人の略称そのものといえる。
このようなことから、被請求人と補助参加人との間では、格別文書による通常使用権の許諾はなされていないものの、本件商標権の通常使用権の許諾がなされているものである。
(2)使用役務、使用商標
補助参加人は、本件取消請求に係る指定役務「コンピュータネットワークを介して行うオンラインショッピングによる購買履歴・帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供及びこれらに関する情報の提供」につき、顧客に対し、以下の「BlueGateサービス」及び「SmarPサービス」の2件のサービスを提供しており、当該サービスの広告のために、それぞれ本件商標が表示されたパンフレット、販売促進用の資料(以下「販促資料」という。)を作成し、顧客に対し頒布してきている。
なお、補助参加人は、同人の統一ブランド名である「NTTデータ」に関して、これまで新聞・雑誌に頻繁に広告を出してきており、その一例を示すと、乙第2号証の1ないし12のとおりである。
ア 「BlueGateサービス」について
乙第3号証は、補助参加人のBlueGateサービスに関するパンフレットである。同パンフレットの2頁上部には、大きく日立つ態様で「NTTデータのBlueGate」と表示されている。これは、補助参加人の統一ブランド名である「NTTデータ」の下で個別サービス名である「BlueGate」を表示しているものである。
補助参加人は、補助参加人の統一ブランド名である「NTTデータ」に関して、これまで新聞・雑誌に頻繁に広告を出してきており、これらの活動も手伝い、「NTTデータ」は、本件審判請求の登録前3年間より以前の時期に、既に周知性を獲得しており、以後これが維持されてきている。
これらの広告につき、その一例を示すと、乙第2号証の1ないし12のとおりである。これらの広告は、平成17年から同22年にかけての広告であるが、これらの広告上では、「NTTデータ」(乙第2号証の1ないし9)、「NTT DATAグループ」(乙第2号証の10ないし12)、「NTTデータが、ITでお手伝いします」(乙第2号証の12)等と表示されており、これらの広告を通じて、「NTTデータ」を広く周知化させ、かつその周知性を維持してきている。なお、これらのうちで「NTT DATAグループ」(乙第2号証の10ないし12)の「DATA」は、「データ」を英語表記したものであり、本件商標と実質的に同一である。また、これらの広告では、補助参加人がITや情報システムを顧客に提供することが強調されているが、ITや情報システムの提供は、本件指定役務の上位概念に属する役務でもある。
次に、乙第3号証のパンフレットが広告するサービスは、インターネット上でオンラインショッピングを提供するネットショップ向けのサービスである。同サービスは、補助参加人が運用するBlueGateサーバ上に搭載されている電子計算機用プログラムにより、インターネットを介してネットショップ等に対し提供されている(乙第3号証3頁「BlueGateのサービス概要」の部分)。
そして、同サービス中には、ネットショップの担当者が、補助参加人のBlueGateサーバにアクセスしたうえで、同サーバ上で検索条件を指定して、オンラインショッピングによる顧客の購買履歴、すなわち取引履歴を照会し、集計することができるデータ処理サービスが含まれている(乙第3号証6頁「管理機能」の部分、乙第4号証55頁ないし64頁、乙第11号証2頁下から6行ないし3頁12行)。
以上のとおりであるから、補助参加人のBlueGateサービスにおいては、「オンラインショッピングによる購買履歴のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供」にかかる役務が提供されている。
次に、同サービスには、顧客からの個別の注文に関する情報および当該注文を処理した結果を、一定のフォーマットで整理したうえで、帳票として表示するサービスが含まれている(乙第3号証6頁「管理機能」の部分、乙第4号証24頁および25頁、乙第11号証3頁13行ないし4頁5行)。
以上のとおりであるから、補助参加人のBlueGateサービスにおいては、「オンラインショッピングによる帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供」にかかる役務が提供されている。
したがって、本件商標が、本件指定役務につき使用されていることは明らかである(以上、乙第11号証3、4項)。
イ 「SmarPサービス」について
(ア)乙第6号証は、補助参加人のSmarPサービスのパンフレットである。同パンフレット表紙には、「SmarP」の文字を図案化したロゴマークが表示されており、その直下には、「NTTデータの販促ソリューション」と表示されている。なお、同表示は、同パンフレットの表紙のみならず、ほぼすべての頁に表示されている。
同表示中の「NTTデータ」の部分が、本件商標の表示であり、ここでは「NTTデータ」と表示することにより、補助参加人の統一ブランド名である「NTTデータ」の下で個別サービス名である「SmarP」を表示しているものである。
また、乙第7号証は、補助参加人の営業担当者が、顧客を訪問した際にSmarPサービスを広告宣伝するための販促資料であるところ、同資料の表紙には、大きく目立つ態様で「NTTデータの販促ソリューション」と表示されており、前述の乙第6号証のパンフレットと同様に、同表示中の「NTTデータ」の部分が、本件商標の表示であり、「NTTデータ」と表示することにより、補助参加人の統一ブランド名である「NTTデータ」の下で個別サービス名である「SmarP」を表示しているものである。
(イ)乙第6号証及び乙第7号証が広告しているサービスは、インターネット上でオンラインショッピングを提供するネットショップ等が利用できるサービスであり、補助参加人が運用するSmarPサーバ上に搭載されている電子計算機用プログラムにより、インターネットを介してネットショップ等に提供されている(乙第6号証「SmarP」の全体概要」の部分)。なお、同サービスが利用されている一例を示すと、(株)紀伊國屋書店のネットショップ上で実際に利用されており、同書店の紹介欄には「リアル店舗・インターネット共通でのポイントサービス」と記載されている(乙第9号証)。
同サービス中には、ネットショップ等で買い物をすることで顧客に付与・還元されるポイント(ネットショップ等でのショッピングに使用できる)を管理する機能が含まれているところ、補助参加人のSmarPサーバは、ネットショップでの顧客の購買情報を蓄積しており(乙第6号証表紙の裏面の「3.分析機能」中の「キャンペーン連動機能」の部分に、SmarPサーバが顧客の購買履歴データを保有していることが記載されている。)、このためネットショップの担当者は、これを利用することにより、SmarPサーバの店舗管理機能を用いて、店舗(ネットショップ)ごとのポイント付与履歴を検索・参照したり(乙第8号証「3-4.店舗ポイント履歴を参照する(2)」の部分)、SmarPサーバの会員管理機能を用いて、会員(ネットショップの客)ごとのポイント付与・還元履歴を検索・参照することが可能である(乙第8号証「4-7.会員のポイント履歴情報を表示する」の部分)。
また、同サービスにおいては、ネットショップ等の販売促進戦略立案のための購買履歴分析機能が含まれており、顧客の購買履歴に基づいて、店舗別ポイント利用状況分析(乙第7号証17頁)、RFM分析(顧客の購買行動・購買履歴から、優良顧客の区分けなどを行う顧客分析手法?乙第7号証18頁)、ポイント利用状況条件に合致する顧客の抽出(乙第7号証19頁)といったデータ処理サービスを受けることが可能となっている。
これらのサービスは、いずれもSmarPサーバに、ネットショップにおける顧客の購買履歴データが保持されていることから、当該データをデータ処理することにより提供が可能となるサービスである。
上記のとおり、SmarPサービスにおいては、「オンラインショッピングによる購買履歴のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供」に係る役務が提供されている。
(ウ)そして、同サービスには、会員ないしその家族が、複数のカード番号(ID)を保有している場合に、これらの複数のカード番号により取得したポイントを、帳票形式で表示した上で合算処理を行い、新たな帳票を形成することを内容とする帳票のデータ処理サービスも含まれている(乙第6号証「管理機能」の部分、乙第8号証「4-10.会員のポイントを合算する(1)」ないし「4-10.会員のポイントを合算する(3)」の部分)。
上記のとおり、補助参加人のSmarPサービスにおいては、「オンラインショッピングによる帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供」に係る役務が、提供されている。
よって、補助参加人が、乙第6号証のパンフレット及び乙第7号証の資料によって広告宣伝しているSmarPサービスの内容には、本件指定役務が含まれている。
(3)使用時期
本件商標が本件審判の請求登録前3年以内の時期に使用されていたことは、以下の書証により裏付けられる。
SmarPサービスにおいての本件商標の使用時期に関しては、乙第6号証のパンフレットの最終頁右下部に「このパンフレットの内容は、2009年3月現在のものです。」及び「2009.3」と記載されており、補助参加人が同パンフレットを同時期及びそれ以後に顧客に頒布してきた。
ちなみに、乙第10号証の補助参加人宛の2009年(平成21年)3月19日付納品書からも、補助参加人が乙第6号証のパンフレットを2009年3月以後、広告のために頒布していたことは明らかである。
また、乙第7号証の販促資料は、各頁最下部のCopyright表示にあるとおり、2009年(平成21年)に作成され、同年中に補助参加人の各顧客に頒布された。
2 結論
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者である補助参加人により、指定役務である「コンピュータネットワークを介して行うオンラインショッピングによる購買履歴・帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供及びこれらに関する情報の提供」(第42類)について使用されている。

第5 当審の判断
1 通常使用権者について
補助参加人「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」は、同人の「有価証券報告書」(乙第1号証)によれば、被請求人の一事業部の営業を譲り受けた子会社であって、両者は、親子会社の関係にあることが認められる。
そして、本件商標に関する使用許諾契約が、商標権者(被請求人)と補助参加人との間において、具体的な書面でなされていないとしても、両者の間には黙示の使用許諾があったとみても何ら不自然ではない。
そうすると、補助参加人は、本件商標に係る通常使用権者ということができる。
2 被請求人提出の乙第6号証及び乙第7号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第6号証のパンフレットには、表紙の上段部に、図案化した「SmarP」の文字及びその下に「NTTデータの販促ソリューション」の文字を上下二段にした表示、及び最下段に「株式会社NTTデータ」の文字などが表示されている。
また、同パンフレットの見開き左頁上部には、同様に当該上下二段にした表示の下に「・・・SaaS型による『SmarP』は、集客・ポイントサービス・データ解析などを支援し、貴社のFSP環境を拡大するNTTデータの販促ソリューションです。」や、中段に「3/分析機能/統計データ分析、各種管理・積算処理/お客さまの購買金額・来店頻度などの情報から購買動向を把握し分析。・・・/機能・・・顧客動向分析機能/●お客さまの動向をリアルタイムに提供・・・」などの記載がされている。
そして、その裏表紙の下段には、「株式会社NTTデータ」の表示、及び「・・・●このパンフレットの内容は、2009年3月現在のものです。」の表示や、欄外に「2009.3」の記載がされている。
(2)乙第7号証の販促資料には、「NTTデータの販売ソリューション/『SmarP(エスマープ)』について/?Solutions for marketing & sales Promotion?」の見出しのもと、「株式会社NTTデータ/ビジネスソリューション事業本部・・・」及び「・・・Coryright:2009 NTT DATA Corporation・・・」などの記載がされている。
3 以上よりすると、以下の(1)ないし(4)のとおりである。
(1)使用者
補助参加人「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」は、本件商標に係る通常使用権者であり、また、乙第6号証のパンフレットには、その表紙及び裏表紙に「株式会社NTTデータ」の表示がされている。乙第7号証の販促資料には、その表紙に「株式会社NTTデータ」の表示がされている。そして、両者の表示は、片仮名の「エヌ・ティ・ティ」の部分と欧文字の「NTT」の部分の表記において相違するとしても、被請求人の主張及び乙各号証を総合勘案すれば、「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」と「株式会社NTTデータ」とは、同一人ということできる。
してみれば、通常使用権者である「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」が、乙第6号証のパンフレット及び乙第7号証の販促資料を作成したものということできる。
(2)使用役務
通常使用権者が提供する役務は、乙第6号証のパンフレットによれば、「・・・SaaS型による『SmarP』は、集客・ポイントサービス・データ解析などを支援し、貴社のFSP環境を拡大するNTTデータの販促ソリューションです。」の記載があり、また、「お客さまの購買金額・来店頻度などの情報から購買動向を把握し分析。・・・●お客さまの動向をリアルタイムに提供・・・」の記載があることから、通常使用権者は、アプリケーションソフトウェアの機能をネットワーク経由で提供するSaaS型の役務において、顧客の購買金額・来店頻度などの情報から購買動向を把握し、顧客の動向をリアルタイムに提供する役務を行っていたものとみるのが相当である。
そうすると、通常使用権者が提供する役務は、本件商標の指定役務中、第42類「コンピュータネットワークを介して行うオンラインショッピングによる購買履歴・帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供及びこれらに関する情報の提供」に属するものとみるのが相当である。
(3)使用商標
乙第6号証における、図案化した「SmarP」に併記された「NTTデータの販促ソリューション」の表示中、格助詞「の」を介した後半の「販促ソリューション」の文字部分は、「各種商品の販売促進のための問題などの解決策」程の意味合いを想起させ、使用されている役務について、自他役務の識別標識としての機能を果たさないか又は極めて弱い文字部分であるから、かかる構成にあっては、「NTTデータ」の文字部分が、自他役務の識別標識としての機能を果たす部分である。
また、本件商標と使用商標中の「NTTデータ」の文字部分とは、社会通念上同一の商標の使用ということができる。
そうとすると、該「NTTデータ」の文字部分は、使用役務に係る提供者を表すとともに、自他役務の識別標識としての機能を果たす部分であるから、商標的使用であるということができる。
なお、該文字部分が、通常使用権者の商号の略称であり、役務を提供する主体を示すものであることをもって、商標的使用であることを妨げるものではない。
(4)使用時期
乙第6号証の裏表紙には、「・・・●このパンフレットの内容は、2009年3月現在のものです。」の記載があり、欄外には「2009.3」の記載がされており、その記載からして、当該パンフレットは、本件審判の請求の登録日である平成22年8月2日前3年以内の2009年3月に発行されたものである。また、乙第7号証の販促資料には、「Coryright:2009 NTT DATA Corporation」の記載があることからしても、通常使用権者は、本件審判の請求の登録日前3年以内に日本国内において、請求に係る役務について、乙第6号証及び乙第7号証のパンフレットにより、広告として、これらに商標を付して頒布していたものと推認できる。
そして、通常使用権者の上記行為は、「商品若しくは役務に関する広告」(商標法第2条第3項第8号)に該当するものである。
(5)以上からすれば、通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定役務について使用をしていたというべきである。
4 請求人の主張について
請求人は、「被請求人が、本件商標権についての別件審判(取消2009-300343号事件)において、本件審判の答弁書と反する主張をしている。別件審判における被請求人の主張によれば、乙第3号証及び乙第6号証中の『NTTデータ』なる記載は、商標的使用態様による使用ではなく、また、本件審判における被請求人の主張は、別件審判における被請求人の上記主張によって、被請求人自身が作り出した外観と相反するという点においても認められない(民法上の外観法理)から、被請求人が提出した証拠は、本件商標の使用を示すものではない。」旨主張する。
しかしながら、本件審判と別件審判とは、本件商標権が取消請求の対象とされている点において共通しているとしても、本件審判が、商標法第50条第1項の規定による不使用取消審判であるのに対し、別件審判が、同法53条の規定による不正使用取消審判であって、その取消の要件が異なるものであること、本件審判と別件審判の請求人及び参加人(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・セキスイシステムズ)が異なるため、当事者も異なっていることからすれば、全く事案を異にする案件というべきものであり、また、民法上の外観法理を適用しなければならない事情も認められない。
したがって、かかる請求人の主張は、採用できない。
5 結論
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者が、請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その請求に係る指定役務、第42類「コンピュータネットワークを介して行うオンラインショッピングによる購買履歴・帳票等のデータ処理を行う電子計算機用プログラムの提供及びこれらに関する情報の提供」についての登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-09-08 
結審通知日 2011-09-12 
審決日 2011-09-29 
出願番号 商願2002-21196(T2002-21196) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y42)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 2003-03-28 
登録番号 商標登録第4657563号(T4657563) 
商標の称呼 エヌテイテイデータ 
代理人 曽我部 高志 
代理人 曽我部 高志 
代理人 水谷 直樹 
代理人 水谷 直樹 

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