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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X01
管理番号 1259734 
審判番号 取消2011-300377 
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-04-15 
確定日 2012-06-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5106969号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5106969号商標の指定商品中、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5106969号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成19年4月19日に登録出願、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」及び第6類「すずを主原料とするはんだ合金」を指定商品として、同20年1月25日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成23年5月9日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品のうち、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれもが使用した事実がないので、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙号証の検討
ア 乙第1号証
乙第1号証には、本件商標が「SN100C(030)」「SN100C(040)」「SN100C(510)」を品番とする商品「やに入りはんだ」に使用されていることが示されている。しかし、本件商標が第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」に使用されている事実は、何ら示されていない。
イ 乙第2号証
乙第2号証の2及び乙第2号証の3に記載の品番は、「SN100C(020)」である。そうすると、当該品番の商品については、乙第1号証によって使用商品の特定をすることができず、本件商標が使用されている事実を示す証拠にはならない。しかも、本件商標が第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」に使用されている事実は、何ら示されていない。
ウ 乙第3号証ないし乙第10号証
これら号証の成立については争わず、いずれもが本件商標の指定商品中、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」についての不使用を立証するものである。
(2)使用商品の検討
ア 商品「やに入りはんだ」
乙第3号証ないし乙第6号証及び乙第10号証には、「やに入りはんだ」、「はんだ」、「鉛フリーはんだ」、「フラックス」、「ソルダペースト」等についての定義付けが示されている。乙第1号証で示された本件商標の使用商品「やに入りはんだ」とは、「フラックスを心とした線状のはんだ。」である。そして、特許電子図書館(IPDL)の「商品・役務名リスト」によると、第6類の類似群コード06A02「非鉄金属及びその合金」に「はんだ」、「はんだ合金」、「はんだ付け用合金製ワイヤ」、「すずを主原料とするはんだ合金」、「無鉛はんだ」が属しているので、当該商品「やに入りはんだ」が第6類「非鉄金属及びその合金」に含まれる商品であることは明らかである。そうすると、本件商標は、指定商品第6類「すずを主原料とするはんだ合金」について使用されていることが示されている。
被請求人は、「商品『やに入りはんだ』の主材料が『フラックス』であるので、『やに入りはんだ』は、第1類の化学品としても認められるべきである。」と主張している。しかし、「やに入りはんだ」へのフラックスの含有量は、一般的には1.4?6%であり、被請求人の製品でも3%の含有量であるから、このように微量の含有量のものを特殊な例を除き主材料とはいわない。しかも、商品の用途、販売、機能、材料等の角度から検討しても、商品「やに入りはんだ」の「フラックス」は、あくまで効率良く綺麗にはんだ付けできるようにするはんだ付けのための補助的材料にすぎない。
したがって、商品「やに入りはんだ」が第6類以外の例えば第1類「化学剤」に含まれる商品とは、乙第9号証に照らしても、到底いえるものではない。
イ 商品「ソルダペースト」
被請求人は、本件商標は、商品「ソルダペースト」について使用していると主張し、「商品『ソルダペースト』は、第1類の『化学剤としてのはんだ付け用ペースト』に属する。」旨を述べている。
しかし、被請求人は、「ソルダペースト」と「はんだ付け用ペースト」を認識混同しており、かつ、本件商標の商品「ソルダペースト」についての使用の事実も見いだすことができない。「ソルダペースト」は、「はんだ」の範ちゅうに属する商品であるので、第1類に属すべき商品ではなく第6類に含まれる商品である。また、本件商標が商品「ソルダペースト」に使用されていないことは明らかである。
すなわち、被請求人が提出した乙第1号証には、商品「ソルダーペースト(ソルダペーストとも表記。)の掲載があり、乙第6号証には「ソルダペースト」の定義付けがなされている。これらの定義からも乙第1号証の商品説明及び製品一覧表の記載からも明らかなように「ソルダペースト」は、「ペースト状のはんだ」であり、決して「化学剤」ではない。
なお、被請求人は、甲第2号証を援用して本件商標が商品「ソルダペースト」に使用されている旨を主張しているが、「ソルダペースト」が第6類に含まれる商品であること、甲第2号証が使用証明にもならないこと明白であるから、全く意味の無い主張であるといわざるを得ない。
ちなみに、被請求人は乙第1号証のとおり、商品「ソルダペースト」には、「ePaste」の商標を使用している。
その他、本件商標が第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」に使用されている事実は、何ら示されていない。
ウ 商品「はんだ付け用フラックス」と商品「はんだ付け用ペースト」
乙第8号証で示されるように、第1類の「化学剤」には、商品「はんだ付け用ペースト」が含まれるが、第1類に含まれる商品「はんだ付け用ペースト」とは、IPDLの「商品・役務名リスト」でも明らかなように、英語表記では、「Soldering fluxes」であり、「はんだ付け用フラックス」のことにほかならない。乙第6号証及び乙第10号証で示される事実のとおりである。乙第1号証にも「はんだ付用フラックス」の掲載があり、併記されている英語表記では「Soldering flux」となっている。全くの同一商品であること明瞭である。
なお、被請求人は乙第1号証のとおり、商品「はんだ付用フラックス」には、「eFlux」の商標を使用している。
「はんだ付け用フラックス」と「はんだ付け用ペースト」とは、はんだ付けの際に酸化膜を溶かしたり、表面の浄化工程に用いられる融剤であり、被溶着物の相違等により使い分けされている。また、用途及び機能が同一なところから混同して呼び習わしている場合もある。類似商品審査基準の記載もこれらの事情を踏襲しているものと思われ、「ソルダペースト」の意味で類似商品審査基準に「はんだ付け用ペースト」が記載されているものではない。したがって、「はんだ付け用フラックス」は、第1類の商品「はんだ付け用ペースト」と同一又は類似する商品であるから、第1類に属すべき商品である。
したがって、本件商標が第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」に使用されている事実は、何ら示されていない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は、被請求人が提出した答弁書及び乙号証を検討しても、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれもが使用した事実がないので、本件商標は、商標法第50条の規定により、指定商品のうち、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」についての登録を取り消すべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 第1答弁
(1)使用事実1
ア 乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人が発行する鉛フリーはんだ及びその関連材料の「総合カタログ」である。
表紙面には「RoHS対応!NSe-SOLDER/LEAD FREE 鉛フリーソルダリング/LEAD FREE SOLDERING」の記載があり、裏表紙には、被請求人の名称及び住所と共に発行日として「(注)このカタログは2010年5月現在のものです。」の記載もある。
当該号証の見開きの最右面には「eCore」が「やに入りはんだ」に使用されている事実が掲載されている。
使用商品は、「SN100C」を共通番号として、これにフラックスの種類を示す番号を連記して品番とした「SN100C(030)」「SN100C(510)」「SN100C(040)」及び極細タイプの「SN100C(030)」の合計4種類が掲載されている。品番の「SN100C」は、はんだの種類、(030)(510)(040)は、フラックスの種類を示している。
イ 乙第2号証について
乙第2号証の1ないし3は、乙第1号証に掲載された「やに入りはんだ」を販売した事実を示す納品書(控)の写しである。これら納品書(控)は、販売先への納品書とは別に、被請求人が販売実績の管理のため保管する取引書類であって、被請求人の社名及び住所と販売先の社名及び住所と受注年月日と販売商品の品名及び数量等が明記されている。
乙第2号証の1には、受注年月日の欄に「2010/3/1」、品名の欄に「SN100C(30)」(審決注:「SN100C(030)」の誤記と認める。)と記載され、同号証の2には、受注年月日の欄に「2010/4/14」、品名の欄に「SN100C(20)」(審決注:「SN100C(020)」の誤記と認める。以下同じ。)と記載され、同号証の3には、受注年月日の欄に「2010/5/11」、品名の欄に「SN100C(20)」と記載されている。
ウ 使用商標について
乙第1号証の当該使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標である。
エ 使用商品について
「やに入りはんだ」とは、はんだの一種であり、日本工業規格の「JIS Z3283」に定義されるとおり「フラックスを心として、はんだを線状にした」ものである(乙第3号証)。
日本工業規格では、これ以外のはんだとして、「はんだ-化学成分及び形状」と「ソルダペースト」をそれぞれ独立して規定している(乙第4号証)。
特許庁の類似商品・役務審査基準によれば、フラックスを含まない「はんだ」が第6類の「非鉄金属及びその合金」に(乙第7号証)、また「ソルダペースト」が第1類の「化学品(化学剤としてのはんだ付け用ペースト)」に(乙第8号証)、それぞれ属する。
つまり、商標法上、フラックスを含まない「はんだ」とフラックスを含むはんだである「ソルダペースト」は、別の区分に分類されている事実が存在する。
この点、本件使用商品の「やに入りはんだ」は、原則として、第6類の「非鉄金属及びその合金」に属するが、以下の観点に基づけば、本件に関しては、第1類の化学品としての使用も認められるべきである。
ニース協定第1条に規定する商品・サービス国際分類表(第9版)の一般的注釈を参照すると、「ある商品を類別表、注釈及びアルファベット順の一覧表によって分類することができない場合には、次の(a)から(f)までに示すところの基準を適用して分類する。」とあり、その基準(e)には「ある商品(完成品であるかないかを問わない。)がその材料に従って分類され、かつ、当該商品が異なる複数の材料から成る場合には、原則として、当該商品は主たる材料に従って分類する。」とある(乙第9号証)。
「やに入りはんだ」の材料は「フラックス」及び「はんだ」であり、「フラックス」は、「溶接のとき、母材及び溶加材の酸化物などの有害物質を除去し、母材表面を保護し、又は溶接金属の精錬を行う目的で用いる」ものである(乙第10号証)。
そして、乙第1号証の「SN100C(030)」「SN100C(510)」「SN100C(040)」は、採用するフラックスの種類によって、「焦げ付き対策」「飛散対策」「完全ハロゲンフリー」といった異なる特質が得られることから、「やに入りはんだ」においては「フラックス」が極めて重要な役割を果たしている。
よって、「やに入りはんだ」は、その主たる材料が「フラックス」であるから、乙第8号証に明示された「はんだ付け用フラックス」に即して、本件に関しては、第1類の化学品としての使用にも該当するのである。
オ 使用事実1のむすび
本件の使用商品「やに入りはんだ」は、本件審判の請求に係る指定商品「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」にも含まれるものとして、被請求人である商標権者は、本件商標を過去3年以内に日本国内で使用している。
(2)使用事実2
請求人は、「本件商標の商標権者のインターネットウェブサイトでも、該当する本件商標の本件審判請求に係る商品の使用が確認できない。今日におけるインターネットの状況から判断すると、インターネット上に情報を公開していない商標については、不使用であるとの推定が成り立つものであると思料する。」と主張し、甲第2号証として請求人自らがインターネット検索サイト「Google日本」で「eCore」を検索した結果を提出している。
しかしながら、甲第2号証の「2/10ページ」には、「eCoreシリーズ|鉛フリーソルダリング|鉛フリーはんだ(ハンダ)の...」のタイトルと共に、被請求人がインターネット上に開設する自社ホームページ中、「eCore」製品を紹介したコンテンツのURLがリンク先として示された検索結果が存在する。
そして、そのタイトル部分をクリックすると、乙第1号証と同じ使用商標が掲載されたページにアクセスすることができる。
さらに、当該検索結果のスニペット(リンク先のウェブページの説明もしくは引用)には「HOME>製品情報>鉛フリーソルダリング>eCoreシリーズ.eCore・製品一覧.焦げ付き対策SN100C(030);特長・お客様の声;ハロゲンフリー...eCoreシリーズ.eCoreソルダペースト,サンプル申込.製品一覧.焦げ付き対策SN100C(030)(Sn-Cu-Ni+Ge)...」と記載され、この中に「eCoreシリーズ.eCoreソルダペースト」と明記されている。
そして、甲第2号証の日付は、フッター部分から「2011/4/13」である。
よって、被請求人は、自己のホームページにおいて、本件商標と社会通念上同一の使用商標を日本国内で過去3年以内に「ソルダペースト」に使用していたという使用事実1とは別の使用事実2も存在する。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により指定商品中「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」について使用していることが明らかである。
2 第2答弁
(1)使用事実1について
使用事実1は、乙第1号証及び乙第2号証の1によって証明されている。
請求人が弁駁書において指摘した乙第2号証の2及び同号証の3に記載された品番「SN100C(020)」の商品については、乙第11号証を補充して「やに入りはんだ」であることを明らかにする。なお、乙第11号証は使用の事実を立証する趣旨ではなく、先に提出した証拠を補足するものである。
(2)使用事実2について
使用事実2は、甲第2号証に示されている。
甲第2号証は、「今日におけるインターネットの状況から判断すると、インターネット上に情報を公開してない商標については、不使用であるとの推定が成り立つ」として、請求人自ら提出したものである。
しかしながら、この甲第2号証には、比較的掲載順位の早い「2/10ページ」に、被請求人の「eCore」製品のリンクURLと共に、「eCoreシリーズ.eCoreソルダペースト」と明記されている。よって、請求人の推定は失当である。
これを被請求人が先の答弁書において指摘すると、今度は、その弁駁書において、請求人は、甲第2号証が使用証明にもならないこと明白であると、自ら提出した証拠を否定する主張を行っている。
この点、商標法はインターネットを通じた商標の広告的使用を認めているから(同法第2条第3項第8号)、甲第2号証は使用事実2の使用証明たり得るのである。
(3)「ソルダペースト」が第1類に属すること
請求人は「商品『ソルダペースト』は、『はんだ』の範ちゅうに属する商品であるので、第1類に属すべき商品ではなく第6類に含まれる商品である。」と主張する。
しかしながら、「ソルダペースト」は、第1類に属するものとして商標登録を受けている(乙第12号証)。この登録例では「ソルダペースト」が「パンダ用フラックス」とともに第1類に書換登録されている。
なお、「ソルダペースト」は、「はんだ粉末とフラックスとを(又はこれらにビヒクルを加えて)混練したペースト状のはんだ。はんだペーストともいう。」であり(乙第6号証)、性状の全く異なる物質を混ぜ合わせることにより得た、両者性質を合わせ持った別の商品であることを前提に、いずれの商品区分に属するかを判断すべきである。
いずれにしても、乙第12号証の事実がある限り、使用事実2の使用商品である「ソルダペースト」は、本件商標の指定商品中、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」に含まれることは明らかである。
(4)「やに入りはんだ」が第1類に属すること
「やに入りはんだ」もまた、「ソルダペースト」と同様に、主たる原料は「はんだ」と「フラックス」であり、しかも、「やに入りはんだ」の場合は「フラックス」を心(core)としている(乙第3号証)。
すなわち、「やに入りはんだ」は、「フラックス」を心としたことに商品価値がある。
また、「やに入りはんだ」では、通常、メーカが製造日から6ヶ月程度の品質保証期間(消費期限)を設けている。これは「フラックス」の経時的劣化を考慮したものである。対して、「はんだ」単独の製品の場合、保証期間は設けられておらず、半永久的に使用可能である。
このように「やに入りはんだ」の製品特徴は「フラックス」に依拠するところが大きく、化学品と同等の取扱いを受けるものである。
請求人は、「やに入りはんだ」が第6類以外の例えば第1類「化学剤」に含まれる商品ではない理由として、「やに入りはんだ」へのフラックスの含有量の小ささを挙げる。
しかし、請求人が例示する含有量は何れも重量比(mass%あるいはwt%)であり、はんだとフラックスの比重差を考慮すれば、とりわけ線径が0.1mmような極細の「やに入りはんだ」については、請求人例示のフラックス含有量が直ちに微量と言い切れるものではない。ちなみに、被請求人の製品において、フラックスの比重は約0.8(20℃)であるのに対して、はんだ(合金)は約7.4である。
また、請求人は「商品『やに入りはんだ』の『フラックス』は、あくまでも効率良く綺麗にはんだ付けできるようにするはんだ付けのための補助的材料に過ぎません。」と主張するが、はんだ付けにはフラックスが不可欠であり、「やに入りはんだ」は「フラックス」を心としたことに製品価値が見出されるものである。
以上を総合すれば、使用事実1の使用商品である「やに入りはんだ」は、本件商標の指定商品「第1類:はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」に含まれるのである。
(5)むすび
以上、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により指定商品中「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」について使用していることが明らかである。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について
(1)被請求人から提出された証拠について
ア 乙第1号証は、商標権者発行の「鉛フリーはんだ製品に関する総合カタログ」とするものであるところ、その表紙面には、「RoHS対応!/NSe(eの右下には○の中にRが記載されている。)-SOLDER/LEAD FREE/-鉛フリーソルダリング-/LEAD FREE SOLDERING」等の記載があり、裏表紙面には、商標権者の名称及び住所(吹田市・・・)と共に発行日として「(注)このカタログは2010年5月現在のものです。」等の記載がある。
そして、見開きの最左面の上方に、「SN100C(Cの右下には○の中にRが記載されている。)シリーズ」「鉛フリーはんだ」「High Reliability Lead-Free Solder」の記載があり、下方に、「eFlux(eFの文字は、本件商標と同様に緑色で表され、かつ、Fの文字にはレタリングが施されている。)」「はんだ付用フラックス」「Soldering Flux」等の記載がある。
その右頁には、「ePaste(ePの文字は、本件商標と同様に緑色で表され、かつ、Pの文字にはレタリングが施されている。以下同じ。)」「ソルダーペースト」「Lead-Free Solder Paste」の記載があり、「SN96CI PF-33 FMQ(Sn-Ag-Cu)」の品番の項には、「リフローはんだ付に適したSn-Ag-Cu系鉛フリーはんだです。」等の記載がある。
また、見開きの最右面の上方に、「eCore(eCの文字は、本件商標と同様に緑色で表され、かつ、Cの文字にはレタリングが施されている。以下同じ。)」「やに入りはんだ」「Lead-Free Flux-Cored Solder Wire」の記載があり、「焦げ付き対策 SN100C(030)(Sn-Cu-Ni+Ge)」の品番の項には、「溶融速度が速く、焦げ付きを低減した、高信頼性やに入りはんだです。」等の記載があり、同頁の下方に「高信頼性鉛フリー極細やに入りはんだ SN100C(030)(Sn-Cu-Ni+Ge)」の品番の項には、「鉛フリー極細やに入りはんだSN100C(030)は、微細接合に最適な高信頼性やに入りはんだです。」等の記載がある。
「鉛フリーはんだ 製品一覧表」の頁には、「鉛フリーソルダーペースト」の項の「合金」の欄に「SN100C」等の記載がある。また、「鉛フリーやに入りはんだ」の項の「合金」の欄に「SN100C」等の記載があり、「品番」の欄に「SN100C(030)」「SN100C(040)」「SN100C(510)」「SN100C(010)」等の記載がある。
イ 乙第2号証の1ないし3は、納品書(控)であるところ、同号証の1には、受注年月日の欄に「2010/3/1」、売上品名の欄の1段目に「SN100C(010)・・・」、2段目に「SN100C(030)・・・」、数量の欄にそれぞれ「5」と記載され、同号証の2には、受注年月日の欄に「2010/4/14」、品名の欄に「SN100C(020)・・・」、数量の欄に「20」と記載され、同号証の3には、受注年月日の欄に「2010/5/11」、品名の欄に「SN100C(020)・・・」、数量の欄に「180」と記載されている。
ウ 乙第3号証は、「日本工業規格/JIS/Z3283:2006」の「やに入りはんだ」に関する頁であるところ、「やに入りはんだ/Resin flux cored solders」の「1 適用範囲」について、「この規格は,主として電気機器,電子機器,通信機器などの配線接続,部品の製造などに用いるフラックスを心として,はんだを線状にしたやに入りはんだについて規定する。」の記載がある。
エ 乙第4号証は、「社団法人日本溶接協会 溶接情報センター」のホームページを印刷したものであるところ、「溶接材料【ろう・はんだ】」の項に、「JIS Z3282 はんだ-化学成分及び形状」「JIS Z3283 やに入りはんだ」「JIS Z3284 ソルダペースト」等の記載がある。
オ 乙第5号証及び乙第6号証は、「JIS Z3001-3:2008」の「ろう接材料」に関する頁であるところ、乙第5号証の「用語」欄の「はんだ」の項には、「450℃未満の低い融点をもつろう接用フィラーメタル。軟ろうともいう。」と定義されており、その対応英語欄には、「solder,/soft solder」の記載があり、「やに入りはんだ」の項には、「樹脂系のフラックスを心とした線状のはんだ。」と定義されており、その対応英語欄には、「resin flux cored solder」等の記載がある。
また、乙第6号証の「用語」欄の「ソルダペースト」の項には、「はんだ粉末とフラックスとを(又はこれらにビヒクルを加えて)混練したペースト状のはんだ。はんだペーストともいう。」と定義されており、その対応英語欄には、「solder paste,/paste solder」等の記載がある。
カ 乙第7号証及び乙第8号証は、「『商品及び役務の区分』に基づく類似商品・役務審査基準[国際分類第9版対応]」の抜粋であるところ、乙第7号証には、第6類「非鉄金属及びその合金」が例示されており、乙第8号証の「化学剤」の中には、「はんだ付け用ペースト」が例示されている。
キ 乙第9号証は、「商品・サービス国際分類表[第9版]」の一般的注釈である。
ク 乙第10号証は、「JIS Z3001-1:2008」の「用語及び定義」に関する頁であるところ、「用語」欄の「フラックス」の項には、「溶接のとき,母材及び溶加材の酸化物などの有害物を除去し,母材表面を保護し,又は溶接金属の精錬を行う目的で用いる材料。」と定義されており、その対応英語欄には、「flux」の記載がある。
ケ 乙第11号証は、商標権者発行の「やに入りはんだの総合カタログ」とするものであるところ、その表紙面には、「RoHS対応!NSe(eの右下には○の中にRが記載されている。)-SOLDER/LEAD FREE」、「eCore」、「鉛フリーやに入りはんだ」、「Flux-Cored Solder Wire」及び「SN100C(030)」等の記載がある。
見開きの左面に、「eCore」「高信頼性鉛フリーやに入りはんだ」「SN100C(030)」「比較材料:・・・【合金:SN100C・・・フラックス含有量:3%)】」等の記載がある。
裏表紙面には、「SN100C(030)」「SN100C(040)」「SN100C(510)」「SN100C(020)」「SN100C(010)」「SN100C(011)」の各製品について、いずれも「フラックス含有量(mass%)」「3.0」 の記載がある。また、商標権者の名称及び住所(吹田市・・・)と共に発行日として「(注)このカタログは2009年3月現在のものです。」等の記載がある。
コ 乙第12号証は、登録第2522906号商標の書誌事項の写しである。
(2)使用事実1について
ア 商品「やに入りはんだ」について
本件取消審判の対象となる商品は、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」であるところ、商標権者が本件商標を使用しているとする商品は、「やに入りはんだ」であるが、「やに入りはんだ」については、「日本工業規格」において、「この規格は,主として電気機器,電子機器,通信機器などの配線接続,部品の製造などに用いるフラックスを心として,はんだ線状にしたやに入りはんだについて規定する。」(乙第3号証)と解説され、また、「樹脂系のフラックスを心とした線状のはんだ。」(乙第5号証)とも記載されているものである。また、広辞苑第六版によれば、商品「はんだ」とは、「錫と鉛とを主成分とする合金で、金属の接合剤として用いるもの。」のことである。
そして、当該「やに入りはんだ」とは、「やに入り」の「はんだ」であって、上記した「はんだ」に該当するものである。
さらに、「JIS Z3001-1:2008の用語及び定義に関する頁」(乙第10号証)によれば、「フラックス」の用語は、「溶接のとき,母材及び溶加材の酸化物などの有害物を除去し,母材表面を保護し,又は溶接金属の精錬を行う目的で用いる材料。」と定義されている。
そうとすれば、「鉛フリーやに入りはんだの総合カタログ」(乙第11号証)によれば、商品「やに入りはんだ」のフラックスの含有量は3%にすぎないから、商品「やに入りはんだ」は、フラックスを主たる材料とする第1類の商品ということはできない。
してみれば、商品「やに入りはんだ」は、第6類「非鉄金属及びその合金」に属する商品というのが相当である。
したがって、「納品書(控)」(乙第2号証)に記載された「SN100C(010)」「SN100C(030)」「SN100C(020)」は、乙第1号証及び乙第11号証に記載された商品「やに入りはんだ」を表すことは認められるとしても、これが、商標権者が請求に係る第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」を表示しているものとは認められない。
イ 商品「ソルダペースト」について
被請求人は、本件商標を商品「ソルダペースト」について使用していると主張しているが、商品「ソルダペースト」とは、「はんだ粉末とフラックスとを(又はこれらにビヒクルを加えて)混練したペースト状のはんだ。はんだペーストともいう。」(乙第6号証)と定義されているように、商品「はんだ」そのものを指すものと認められる。
また、乙第1号証の商品「ソルダペースト」には、「リフローはんだ付に適したSn-Ag-Cu系鉛フリーはんだです。」の記載があることから、商標権者は、商品「ソルダペースト」を第6類「非鉄金属及びその合金」に属する商品「はんだ」として実際に使用している。
したがって、商品「ソルダペースト」は、第6類「非鉄金属及びその合金」に属する商品「はんだ」というのが相当である。
なお、商品「ソルダペースト」に使用されている商標は、「ePaste」であるから、当該商標は、本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない。
(3)使用事実2について
被請求人は、請求人が提出した甲第2号証が商標法第2条第3項第8号の使用である旨主張しているが、甲第2号証には、「eCore」の記載があるものの、「焦げ付き対策 SN100C(030)(Sn-Cu-Ni+Ge)」の記載もあり、これは、乙第1号証の「焦げ付き対策 SN100C(030)(Sn-Cu-Ni+Ge)」の記載に照らせば、第6類に属する商品「やに入りはんだ」のことであるから、甲第2号証によって、請求に係る指定商品について、本件商標を使用していることを証明したものとは認められない。
また、甲第2号証には、「eCoreソルダペースト」の記載があるものの、商品「ソルダペースト」は、上記(2)イのとおり、第6類「非鉄金属及びその合金」に属する商品「はんだ」であるから、甲第2号証によって、請求に係る指定商品について、本件商標を使用していることを証明したものとは認められない。
(4)被請求人の主張について
被請求人は、「ソルダペースト」は第1類に属するものとして商標登録を受けている旨主張しているが、乙第12号証の登録例は、平成元年7月24日に登録出願、第1類「ハンダ用フラツクス、その他本類に属する商品」を指定商品として、同5年4月28日に設定登録され、その後、指定商品については、同16年3月3日に、第1類「ハンダ用フラックス,ソルダペースト」とする指定商品の書換登録がされたものであるとしても、職権において調査しても、商品「ソルダペースト」を第1類に書換登録した例は、この1件にすぎず、商標権者による乙第1号証の該商品の使用例及び乙第6号証の商品「ソルダペースト」の定義の記載に照らせば、商品「ソルダペースト」は、第6類「非鉄金属及びその合金」に属する商品であり、過去の書換登録例の判断に拘束されることなく検討されるべきものである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(5)まとめ
上記のとおり、被請求人の答弁の全趣旨及び提出された証拠を総合的に判断しても、被請求人が、第6類「非鉄金属及びその合金」に属する商品「はんだ」について、本件商標を使用したことを示すものであって、請求に係る指定商品に本件商標を使用したことを示すものではない。
2 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に商標権者が請求に係る指定商品、第1類「はんだ付け用フラックス及びはんだ付け用ペーストを含む化学品」について本件商標を使用していることを証明したものとは認められない。
他に、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に請求に係る指定商品について使用されていたものと認めるに足る証拠はない。
また、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があるものとも認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中、結論掲記の指定商品についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標(色彩については原本参照)



審理終結日 2012-04-20 
結審通知日 2012-04-25 
審決日 2012-05-08 
出願番号 商願2007-39223(T2007-39223) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X01)
最終処分 成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 2008-01-25 
登録番号 商標登録第5106969号(T5106969) 
商標の称呼 エコレ、エコア、イイコレ、イイコア、オレ、コレ、コア 
代理人 城村 邦彦 
代理人 熊野 剛 
代理人 濱田 俊明 

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