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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X29
管理番号 1256599 
異議申立番号 異議2011-900354 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-10-03 
確定日 2012-05-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第5422121号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5422121号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
登録第5422121号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、「水琴茶堂」及び「甲府 鳥もつ煮」の文字を上下二段に表してなり、平成22年11月8日に登録出願、第29類「山梨県甲府市産の鳥もつの照り煮」を指定商品として、同23年5月24日に登録査定され、同年7月1日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由の要点
(1)引用商標
登録第5360261号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおり、オレンジ色と黒色で色分けされた幟旗と思しき図形の黒色部分に、「恋人・家族・地域・・・すべての縁をとりもつ」、「甲府鳥もつ煮」及び「みなさまの縁をとりもつ隊」の文字を3行に分けて縦書きに白抜きした構成(「甲府鳥もつ煮」の文字は、オレンジ色で縁取りされている。)よりなり、平成22年3月2日に登録出願、第29類「山梨県甲府市産の鳥のもつの照り煮」を指定商品として、同年10月15日に設定登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、「みなさまの縁をとりもつ隊」の商標として、広く一般に知られているから、これと類似する本件商標がその指定商品に指定された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
ア 具体的理由
申立人の設立母体である「みなさまの縁をとりもつ隊」は、平成20年(2008年)6月に「鳥もつ煮で甲府を元気に!」を合言葉に、甲府市職員有志により結成された団体である。
商品「山梨県甲府市産の鳥もつの照り煮」について、のぼり様の図形中に「甲府鳥もつ煮」と縦に大書し、また「コウフトリモツニ」と容易に称呼しうる文字からなる商標と、右側に「恋人・家族・地域・・・すべての縁をとりもつ」の文字、左側に「みなさまの縁をとりもつ隊」の結合からなる商標を広く使用して今日に至っている。
また、前記引用商標が種々のイベントやマスメディア等において露出する頻度ははなはだしく、「甲府鳥もつ煮」の語は「みなさまの縁をとりもつ隊」の活動そのものと一体化して周知され、すでに全国的に著名となっている。
しかも、「みなさまの縁をとりもつ隊」が関連している商品「山梨県甲府市産の鳥もつの照り煮」の我が国における市場占有率も極めて大きい。
したがって、本件指定商品の分野の需要者は、「甲府鳥もつ煮」を主要な文字として含む本件商標が、本件指定商品について使用された場合には、申立人の設立母体である「みなさまの縁をとりもつ隊」の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
イ 「甲府鳥もつ煮」について
「甲府鳥もつ煮」の文字が以前から「鳥もつ煮」の名称として一般に使用されていたかのような記事があるが、「元祖」である奥藤でも「甲州名物 奥藤鳥もつ煮」を使用しており(「Wikipedia」のサイト参照)、「みなさまの縁をとりもつ隊」がB-1ブランプリを厚木の大会で獲得する以前から「甲府鳥もつ煮」の文字が使用されていた事実は存在しない(甲8ないし甲11)。
なお、株式会社奥藤本店所有の「元祖甲府鳥もつ煮/奥藤」なる商標(登録第5400225号)が存在するが、要請があれば商標権を放棄するとの言質を同人から得ている。
同人は甲府の「鳥もつ煮」を作り上げ、また「みなさまの縁をとりもつ隊」と協力してB-1グランプリを獲得した原動力となった会社であって、現在も協力関係を保っている。
「甲府鳥もつ煮」を命名したのはB-1グランプリに参加を決めた「みなさまの縁をとりもつ隊」である(甲12及び甲13)。
「みなさまの縁をとりもつ隊」による周知性を立証する同隊の新聞記事は、いずれも山梨県内で発行されている新聞の記事(甲22ないし甲43)であるが、その他、甲14ないし甲16に示すように、同隊の活動は、広く日本全国に及んでおり、山梨県甲府市内という一部地域における活動にとどまらないことはもちろんである。
また、提出した資料は2010年までのものがほとんどであるが、B-1グランプリの活動がメディア等に広く取り上げられ、また、「みなさまの縁を とりもつ隊」は、「甲府鳥もつ煮」を携えてB-1グランプリに積極的に参加しており、その周知度はさらに増しているのが実情である。
(4)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、本件商標の登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。

3 当審の判断
(1)「甲府鳥もつ煮」及び「鳥もつ煮」の文字について
ア 申立人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
甲4の裏面には、「甲府鳥もつ煮・取り扱い店(とりもつ隊調べ)」の見出しのもとに、平成23年7月1日現在、48件の店名が記載されている。
甲10は、「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」であるところ、「甲府鳥もつ煮は、山梨県で食べられている、ニワトリのモツを砂糖と醤油で煮込んだ郷土料理。・・・同県内では一般に『鳥もつ煮』と呼ばれているが、発祥の店がある同県甲府市の名を採って「甲府鳥もつ煮」とばれる。また、同県内で広く食されることから、同県と同じ範囲にあった令制国・甲斐国の通称を採って『甲州鳥もつ煮』とも呼ばれる。」の記載があり、「歴史」の項には、「山梨県甲府市にある蕎麦屋『奥藤』において、1950年(昭和25年)頃に2代目主人・塩見勇蔵が鳥もつを使って料理を作ることを発案、調理担当の弟・塩見力造がレシピを完成させた。・・・2008年(平成20年)から、甲府市役所職員の若手有志がまちおこし団体『みなさまの縁をとりもつ隊』を旗揚げ、『甲府鳥もつ煮』のブランド名で甲府のB級グルメとして『鳥もつ』の全国に向けてのPR活動が行われており、『縁をとりもつ』という語呂合わせとともに、B級ご当地グルメブームと地域おこしの二つの概念から知名度の向上を目指している。2009年、愛Bリーグに加盟、準会員を経て2010年4月に正会員に昇格した。2010年(平成22年)9月18、19日に開催された『第5回B-1グランプリin厚木』に初出場し、ゴールドグランプリ(優勝)を獲得した。・・・」の記載があり、「類似の料理」の項には、「・中華料理には、ニワトリのモツを生姜・八角と共に醤油で煮込んだ料理がある。」の記載がある。
甲13は、「甲府鳥もつ煮ブランド戦略/-TAKE ACTION-」であるところ、表紙には、「平成20年10月」等の記載があり、2頁目の「I.甲府鳥もつ煮とは」の項には、「鶏の砂肝、ハツ、レバー、きんかん(産まれる前の卵)を甘く濃厚な醤油ダレで照り煮した甲府独自の料理で、・・・もちろん県外ではその存在さえほとんど知られていないのが実情です。」の記載があり、裏表紙には、「発行事務局/みなさまの縁をとりもつ隊」等の記載がある。
甲23ないし甲36は、2010年(平成22年)3月20日ないし同年11月3日付けの山梨日日新聞であるところ、甲23には、「ホルモン料理で同盟結成」の見出しのもと、「甲府市の『みなさまの縁をとりもつ隊』(料理名、甲府鳥もつ煮)」の記載がある。
甲24には、「鳥もつ煮冷凍パックに/武田食品/名物料理、家庭でも」の見出しのもと、「武田食品(甲府市・・・)は、甲府市の名物料理『鳥もつ煮』を・・・冷凍食品として商品化した。」「昨年12月末の販売開始から6千個を売り上げ、当初目標(年間1万2千個)を上回るペースという。」の記載がある。
甲27には、「土産用に商品化鳥もつ煮を発売/桔梗屋グループ水琴茶堂」の見出しのもと、「桔梗屋グループで、加工品の製造販売を手掛ける水琴茶堂(甲府市・・・)は7日、真空パック入りの『鳥もつ煮』を発売した。同社が展開している飲食店で提供している『鳥もつ煮』を、お土産用として商品化した。・・・水琴茶堂は、2007年から、鳥もつ煮を提供。」の記載がある。
甲29には、「『鳥もつ煮』誕生の物語」の見出しのもと、「戦後間もない昭和25年ごろ、・・・」「奥藤本店の献立に鳥もつ煮が加わった。・・・」「・・・のれん分けした店でも、本家と同じように、献立に鳥もつ煮を書き込んだ。甲府のそば屋で発祥した鳥もつ煮は、・・・『甲州の鳥もつ煮』になった。」の記載がある。
甲34には、「街をおこす/甲府・とりもつ隊物語5」の見出しのもと、「それまで鳥もつ煮をメニューに載せていなかったラーメン屋や定食屋に、『鳥もつ煮あります』の看板が掲げられた。」の記載がある。
甲36の表面には、「『みなさまの縁をとりもつ隊』は、甲府の鳥もつ煮のぼり旗デザインを商標登録した。」の記載があり、同号証の裏面には、「認定制度は材料や調理法、おもてなしの心など一定の基準を満たした店に、のぼり旗の使用を認め、甲府鳥もつ煮として料理を提供してもらうことを検討している。」の記載がある。
甲44は、平成22年度中心市街地活性化支援等委託事業(地域食文化による中心市街地活性化調査及び普及啓発事業)の「地域食文化による中心市街地活性化事例集」であるところ、事例6には、「◆ご当地グルメ名 甲府鳥もつ煮」等の記載がある。
イ 以上によれば、「甲府鳥もつ煮」及び「鳥もつ煮」の文字は、昭和25年ころ、甲府のそば屋で考案された料理であり、以来、鶏の砂肝、ハツ、レバー、きんかんを甘く濃厚な醤油ダレで照り煮した郷土料理として、多数の取扱店において提供され、山梨県内で広く食されているものであって、当該料理の名称を意味するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、別掲(1)のとおり、「水琴茶堂」及び「甲府 鳥もつ煮」の文字を上下二段に表してなるところ、本件商標中の「甲府 鳥もつ煮」の文字部分は、上記(1)に記載したとおり、料理の名称と理解されるものであり、また、その指定商品「山梨県甲府市産の鳥もつの照り煮」との関係でみた場合、「山梨県甲府市産の鳥もつを煮た商品」といった、商品の品質を記述的に表した語と理解されるに止まると判断するのが相当であることから、商標として自他商品の識別力を発揮する部分は、「水琴茶堂」の文字部分にあるとみるのが自然である。
してみれば、本件商標において、「甲府 鳥もつ煮」の文字部分は、出所識別標識として機能しないものであることから、本件商標からは、出所識別標識としての「コウフトリモツニ」の称呼は生じないというべきである。
一方、引用商標は、別掲(2)のとおり、幟旗と思しき図形の中に「恋人・家族・地域・・・すべての縁をとりもつ」、「甲府鳥もつ煮」及び「みなさまの縁をとりもつ隊」の文字を3行に分けて縦書きした構成からなるところ、「甲府鳥もつ煮」の文字部分は、本件商標と同様に、上記(1)に記載したとおり、料理の名称と理解されるものであり、また、その指定商品「山梨県甲府市産の鳥のもつの照り煮」との関係でみた場合、「山梨県甲府市産の鳥もつを煮た商品」といった、商品の品質を記述的に表した語と理解されるに止まると判断するのが相当である。
してみれば、引用商標において係る「甲府鳥もつ煮」の文字部分からも出所識別標識としての「コウフトリモツニ」の称呼は生じないというべきである。
そうとすると、「本件指定商品の分野の需要者は、『甲府 鳥もつ煮』を主要な文字として含む本件商標が、本件指定商品について使用された場合には、申立人の設立母体である『みなさまの縁をとりもつ隊』の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである」とする申立人の主張は、採用することができない。
そして、両商標は、それぞれ上記1及び2(1)のとおりの構成よりなるから、外観上互いに区別し得る差異を有するものであり、観念上も類似するものではない。
してみれば、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても類似するものとはいえず、別異の商標であるといわざるを得ない。
加えて、「甲府鳥もつ煮」は、第5回B-1グランプリにおいて、ゴールドグランプリを獲得したことにより、料理の名称としては広く認識されたとしても、本件商標と引用商標とは、上記のとおり、別異の商標であるから、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標、「みなさまの縁をとりもつ隊」又は申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が「みなさまの縁をとりもつ隊」、申立人又は同グループと経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、本件登録異議の申立てに係る第29類「山梨県甲府市産の鳥もつの照り煮」について、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(1)本件商標



(2)引用商標(色彩については原本参照)



異議決定日 2012-05-10 
出願番号 商願2010-86931(T2010-86931) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (X29)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大渕 敏雄 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2011-07-01 
登録番号 商標登録第5422121号(T5422121) 
権利者 株式会社桔梗屋
商標の称呼 スイキンチャドーコーフトリモツニ、スイキンチャドー、スイキンサドー、スイキンチャ、スイキンサ、コーフトリモツニ、トリモツニ 
代理人 土橋 博司 

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