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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X36
管理番号 1256517 
審判番号 不服2010-20045 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-06 
確定日 2012-05-01 
事件の表示 商願2008- 25140拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「カーボンオフセット銀行」の文字を標準文字で表してなり,第36類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成20年4月1日に登録出願されたものであるが,その後,その指定役務については,当審における平成22年9月6日受付の手続補正書により,第36類に属する別掲1に記載のとおりの役務に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は,「二酸化炭素排出権取引を行う銀行」程の意味合いを認識させる「カーボンオフセット銀行」の文字を普通に書してなるものであるから,これをその指定役務中,上記に係る役務に使用するときは,単に役務の質を表示するにすぎず,商標法3条1項3号に該当する。

第3 当審における審尋
当審において,平成23年12月27日付けで,別掲2のとおりの審尋を発し,請求人に意見を求めた。

第4 審尋に対する請求人の回答
請求人は,前記第3の審尋に対して,所定の期間内に何ら応答するところがない。

第5 当審の判断
本願商標は,前記第2及び第3の原査定及び審尋に記載したとおり,これをその指定役務中,排出権関連役務に使用するときは,これに接する取引者・需要者は,本願商標を「カーボンオフセットに関する銀行業を行う金融機関」や「二酸化炭素排出権取引を行う(ないしは同排出権取引を組み込んだ金融商品を取り扱う)銀行」程度の意味合いを有する語として認識し,単に役務の質を表したものと理解するにすぎず,自他役務識別標識としての機能を有しないものである。
したがって,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は,妥当であって,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 (別掲1)

〔本願商標の補正後の指定役務〕
第36類
クレジットカード・デビットカード利用金額に関する情報の提供,クレジットカードの発行及び利用に関する情報の提供,ファクシミリ又は電話による金融情報の提供,外国為替市況に関する情報の提供,外国為替取引に関する助言,外国為替取引に関する情報の提供,外国為替相場に関する情報の提供,確定拠出年金に関する運営管理の受託,確定拠出年金に関する資産管理契約の引受け,確定拠出年金の運用管理の受託に関する情報の提供,割賦購入あっせんに関する情報の提供,金銭債権の取得及び譲渡に関する情報の提供,金融・証券市場に関する調査及び情報の提供,金融に関する情報の提供,金融資産の形成・運用に関する助言及び指導,金融先物取引の受託並びにそれに関する情報の提供,建物の長期修繕計画に関する資金計画の助言,個人の経済的生活設計に係わる資産管理及び運用に関する情報の提供,個人の資産運用に関する助言,債券の募集の受託に関する情報の提供,債務の借換に関する助言,財務に関する助言,財務管理に関する助言及び指導,資産の管理・運用に関する情報の提供,信用状に関する業務に関する情報の提供,電子マネー利用者に代わってする支払代金の決済の代行に関する相談・助言,電子的方法による金融情報の提供,土地・建物担保付資金の貸付けに関する助言,投資信託に関する情報の提供,内国為替取引に関する情報の提供,不動産投資信託に関する情報の提供,預金口座に関する取引情報の提供,両替に関する情報の提供,預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入あっせん,遺言信託の引受け,預金の残高照会,為替市況・金利に関する情報の提供,金融情報の提供,ICカード方式による電子マネー利用者に代わってする支払い代金の精算,クレジットカード・デビットカード・電子マネー利用者に代わって行う支払代金の清算又は決済,クレジットカード発行の取次又は斡旋,クレジットカードの利用金額に関する情報の提供,旅行用小切手の発行及び管理,クレジットカード利用に際しての信用の保証,信用状の発行,投資に関する指導・助言及びこれに関する情報の提供,開発資金に関する債務の保証,金銭債権の回収代行,金銭債権の取得又は譲渡,金銭信託・その他の投資信託に関する情報の提供,金利・通貨オプション取引,金利・通貨スワップ取引,個人の資産運用に関する助言,個人の財務に関する情報の提供,国・地方公共団体・会社等の金銭の収納その他金銭に関する事務の取扱い,小切手の検証・照合,純金積立の引受け,貸し金庫の提供,預貯金からの株式等の買付代金の自動振込・振替,インターネットを利用した株式市況に関する情報の提供,外国への投資に関する調査・指導及び助言並びに情報の提供,外国市場における有価証券の売買に関する情報の提供,株式・債券市場に関する情報の提供,株式市況に関するチャート分析の情報の提供,株式市況に関する助言,株式市況に関する情報の提供,建物・土地の証券化に関する助言および指導,投資顧間契約に基づく助言及び投資一任契約に基づく投資,投資情報の提供,有価証券・有価証券指数及び有価証券オプションの相場情報の提供,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引に関する情報の提供,有価証券に係る投資一任契約に基づく助言,有価証券の価値に関する情報の提供,有価証券の相場・株式市況に関する情報の提供,有価証券の売買に関する情報の提供,有価証券の売買の媒介・取次ぎ又は代理に関する情報の提供,商品先物取引市況に関する情報の提供,商品投資受益権の販売又はその代理若しくは媒介に関する情報の提供,建物又は土地の管理に関する情報の提供,建物又は土地の情報の提供,土地の貸与に関する情報の提供,土地の売買に関する情報の提供,関税に関する情報の提供,金融資産の相続税等の税金に関する助言及び指導,税務相談・税務代理に関する情報の提供,慈善のための募金,インターネットを利用した社会貢献活動のための募金及びこれに関する情報の提供,温室効果ガスの排出権の売買取引・先物取引,温室効果ガスの排出権の売買取引・先物取引の媒介・取次ぎ・代理,温室効果ガスの排出権の売買契約の仲介・代行,温室効果ガスの排出権の売買取引・先物取引に関する情報の提供,温室効果ガスの排出権の売買取引に関する斡旋・仲介及びそれらに関する情報の提供,温室効果ガスの排出権に関する先物取引の斡旋・仲介及びそれらに関する情報の提供,温室効果ガスの排出権の売買契約に関する情報の提供,温室効果ガスの排出権の資産価値の評価,温室効果ガスの排出権に関する売買に関する信用状の発行

(別掲2)

〔当審における審尋〕
1 本願商標の商標法3条1項3号該当性について
(1)事実関係
ア 平成23年3月環境省作成の「平成22年度カーボン・オフセット白書」(http://www.j-cof.org/document/knowledgepool/cof_whitepaper2011.pdf)
(ア)同白書の「第1章 我が国におけるカーボン・オフセット」の見出しの下,「(1) カーボン・オフセットの概要」の項には,「カーボン・オフセットとは,市民,企業,NPO/NGO,自治体,政府等の社会の構成員が,自らの温室効果ガスの排出量を認識し,主体的にこれを削減する努力を行うとともに,削減が困難な部分の排出量について,他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(以下『クレジット』という)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により,その排出量の全部又は一部を埋め合わせることをいう。」(1頁)との記載がある。
(イ)同じく「(カーボン・オフセットの流れ)」の項には,「一般的なカーボン・オフセットの流れを,京都メカニズムの一つであるクリーン開発メカニズム(CDM)を通じて国連により認証されたクレジット(CER)を利用したカーボン・オフセット型商品を例にとって説明する。
途上国において温室効果ガス排出削減・吸収プロジェクトが実施され,そこで生成された排出削減・吸収量が,国連によりクレジット(CER)として認証される。そのクレジットを,カーボン・オフセット・プロバイダー等の仲介業者が購入し,カーボン・オフセット型商品等を販売したいという製造業者(メーカー)や小売業者等に対し,クレジットを販売する。このようにして世に売り出された商品には,クレジット調達費用等埋め合わせのための各種費用(オフセット料金)が反映されており,一般消費者や事業者が当該商品を購入することにより,支払われる金額に含まれるオフセット料金が,最終的には途上国で行われている排出削減・吸収プロジェクトへ還流し,資金調達に貢献することになる。平成20年11月には,国内で創出される排出削減・吸収量をカーボン・オフセットに用いられるオフセット・クレジット(J-VER)として認証する,オフセット・クレジット(J-VER)制度がスタートした。J-VER認証件数・認証量,J-VERをカーボン・オフセットに活用する事例も増加しており,海外のクレジット活用時と同様に,プロジェクト実施者,カーボン・オフセット・プロバイダー,商品・サービス提供事業者等が連携してカーボン・オフセットを展開している。」(2頁?3頁)との記載がある。
イ 「現代用語の基礎知識」(2011年1月1日自由国民社発行)
(ア)「カーボンオフセット」の項には,「日常生活や経済活動にともなう温室効果ガスの排出について,自らによる削減が困難な部分の排出量に見合った削減活動に投資することなどにより,排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方。欧州等での取組みが活発であり,日本でも『カーボン・オフセットフォーラム』などによる取組みが進んでいる。2008年には国内プロジェクトによる温室効果ガス排出削減・吸収量をオフセットに用いることのできるクレジットとしてオフセット・クレジット制度(J-VER)が創設された。」との記載がある。
(イ)「排出量取引」の項には,「国や企業ごとに温室効果ガスの排出枠を定め,枠が余った国や企業と,枠を超えた国や企業との間で取引する制度。京都議定書においても,京都メカニズム(柔軟性措置)のひとつとして規定されている。2008年10月には試行的な国内排出量取引が開始され,303社が参加している。」との記載がある。
ウ 新聞記事
(ア)2007年11月14日付けの日刊工業新聞には,「三井物産と中央三井信託,排出権を1000トンから小口販売」の見出しの下,「三井物産と中央三井信託銀行は13日,京都議定書に基づく温室効果ガス削減の排出権を小口化し,信託化の手法で販売すると発表した。二酸化炭素(CO2)相当の最小販売量を1000トンと小さくしたため,企業側では調達がしやすくなる。三井信託銀が同日,事前販売活動を開始した。信託での排出権の小口発売は国内初。」との記載がある。
(イ)2008年2月13日付けの日刊工業新聞には,「三井住友銀行,温暖化防止を住宅ローンで支援-排出権を購入」の見出しの下,「三井住友銀行は12日,住宅ローンを通じた『地球温暖化防止(カーボンオフセット)』応援キャンペーンを4-9月の間,実施すると発表した。同行の住宅ローンを利用して環境配慮型住宅を購入すると,同行が1世帯当たり1トン分の排出権を購入し,その排出権を国に移転する仕組み。ローン顧客の温暖化効果ガスの排出削減への取り組みを後押ししようというもの。」との記載がある。
(ウ)2008年2月17日付けの朝日新聞(東京朝刊)には,「三菱東京UFJ,温室効果ガスの排出枠買い取り」の見出しの下,「三菱東京UFJ銀行は,途上国などから温室効果ガスの排出枠を買い取り,自社が排出する温室効果ガスと相殺する『カーボンオフセット』に乗り出した。今回買い取った排出枠は5・5万トンで,同行の本店などが入る本館ビル(東京都千代田区)から排出する二酸化炭素(CO2)の5年分に当たる。」との記載がある。
(エ)2008年4月11日付けの化学工業日報には,「カーボンオフセット,金融など商品・サービス続々登場」の見出しの下,「日常の生活や社会活動で削減できない最低限度のCO2排出を,植林や排出権の購入で埋め合わせるカーボンオフセットが,この1年ほどの間に国内でも急速に注目度を高めている。民間主導の取り組みとして昨年9月には,有限責任中間法人の日本カーボンオフセットが小売り大手や金融,日用品メーカーなどの協賛で発足。これと軌を一に,オフセット付きの商品・サービスが相次いでいる。とくに金融商品を含めたサービスで組み込んだものが目立ち,ユニークなアイデアと評価されるものも多い。…環境意識の高い金融機関からは,預金やローンに組み合わせた商品が現れた。滋賀銀行が国内初の『カーボンオフセット定期預金』の取り扱いを今月から開始。限定預け入れ枠総額60億円を上限とし,0・1%分を同行負担で排出権購入する。大垣共立銀行は『住宅ローンでカーボンオフセット』キャンペーンを今月から来年3月まで実施。500万円以上の契約1世帯につき1トンの排出権を購入し国に移転する。顧客への譲渡は行わないが記念カードを発行。このほかソニーバンクが先ごろ,グリーン電力証書を利用して邦銀初の100%カーボンオフセットとすることを表明。」との記載がある。
(オ)2008年4月11日付けの金融専門紙ニッキンには,「地域銀行,地球温暖化対策を積極化,商品で顧客意識高める」の見出しの下,「地域銀行が地球温暖化対策に積極的に動き出した。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス削減に向け,金融商品を通じて顧客に意識を高めてもらおうとする動きが広がっている。特に,地方銀行では滋賀銀行や大垣共立銀行が,カーボンオフセット(CO2削減の相殺)で排出権取引を絡めた商品の取り扱いを開始。また,静岡銀行もCO2の削減目標を達成するため,カーボンオフセットに取り組んでいる。」との記載がある。
(カ)2008年6月20日付けの日本経済新聞(朝刊)「私募債受託で排出枠を購入,千葉銀,法人対象に。」の見出しの下,「千葉銀行は法人を対象に温暖化ガスの排出枠取引を絡めた『カーボンオフセット商品』の取り扱いを始めた。取引先企業の私募債発行に伴い,千葉銀が受け取る引受手数料の一部で排出枠を購入,国に無償譲渡する。カーボンオフセットを取り入れた金融機関の私募債受託は珍しい。『ちばぎんカーボンオフセット私募債『風のちから』』は,九月十二日までの期間限定で取り扱う。申し込みが百三十億円に達した時点で終了する。」との記載がある。
(キ)2008年6月26日付けの日刊工業新聞には,「三菱UFJ,地球環境で行動指針-CO2削減目標を設定」の見出しの下,「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は地球環境問題への取り組みを本格化させる。…三菱東京UFJ銀行,三菱UFJ信託銀行,三菱UFJ証券のグループ3社合計で二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量の削減目標を設定。00年度比で2012年度までに25%の削減を目指す。自らの環境負荷低減に取り組むとともに,環境に配慮した金融商品を相次いで市場に投入していくことで,持続可能な社会の実現に貢献する。MUFGではCO2などの削減目標を達成するため,排出量取引を活用して,本社など主要ビルのCO2の排出量を相殺できるカーボンオフセットを進めるほか,環境配慮型設備への切り替えや代替エネルギーの活用を進めていく考えだ。」との記載がある。
(ク)2008年10月24日付けの金融専門紙ニッキンには,「鹿児島銀行,カーボンオフセット付きマイカーローン取り扱う」の見出しの下,「【鹿児島】鹿児島銀行は10月15日,カーボンオフセット付きのマイカーローンの取り扱い…を始めた。」との記載がある。
(ケ)2009年4月3日付けの琉球新報(朝刊)には,「エコ定期排出権 政府に無償譲渡/琉球銀行」の見出しの下,「琉球銀行は一日,二〇〇八年十月から販売したカーボンオフセット定期『エコ定期 地球の未来』で取得した温室効果ガス排出権四百トンを日本政府に無償譲渡したと発表した。」との記載がある。
(コ)2009年4月8日付けの日刊工業新聞には,「りそな銀,排出権信託に参入」の見出しの下,「りそな銀行は『排出権信託』の取り扱いに乗り出す。…企業の社会的責任(CSR)活動や環境問題への関心が高く排出枠の取得に興味を示している中堅・中小企業や,一般消費者への販促手段としてカーボンオフセット(二酸化炭素〈CO2〉排出量の相殺)の仕組みを検討している中堅・中小に対して,排出枠を提供していく考えだ。」との記載がある。
(サ)2009年8月29日付けの朝日新聞(大阪朝刊)には,「(情報フラッシュ)環境定期の共通商品 アーバン銀・びわこ銀 【大阪】」の見出しの下,「来年3月に合併する関西アーバン銀行(大阪市)とびわこ銀行(大津市)は,第1弾の共通商品として来月1日から『eco定期預金?カーボンオフセット』を取り扱う。各銀行が預金残高の0.02%にあたる金額を出して二酸化炭素の排出枠を海外から購入。政府に寄付して,日本の排出削減率アップに貢献する。」との記載がある。
(シ)2010年2月27日付けの毎日新聞(大阪朝刊)には,「けいざいフラッシュ:預金額の一部,森林整備費に--みなと銀行」の見出しの下,「みなと銀行は26日,集めた預金額の一部を森林整備に拠出する『森林カーボンオフセット定期預金』の募集を3月1日から始めると発表した。温室効果ガス排出権を購入して政府に無償譲渡するカーボンオフセット定期預金は多くの金融機関が扱っているが,森林整備の目的を明確にしたのは全国初という。」との記載がある。
(ス)2010年5月14日付けの電気新聞には,「カーボンオフセット 09年利用,2割減少 国内10社,不況で/JBIC調査」の見出しの下,「カーボンオフセットは削減が困難な温室効果ガスの排出量分を,排出権クレジットを購入することで埋め合わせる仕組み。オフセット用には京都クレジット,国内クレジット,環境省のJ-VER,グリーン電力証書,その他の自主クレジットが使われている。」との記載がある。
(セ)2010年7月16日付けの金融専門紙ニッキンには,「四国銀行,カーボンオフセット定期の取り扱い開始」の見出しの下,「【高松】四国銀行は,7月7日に『絆の森・カーボンオフセット定期預金』の取り扱いを開始した。高知県の森林吸収オフセットクレジット(J-VER)を購入し,取得した二酸化炭素(CO2)排出枠を預金者に付加する。」との記載がある。
エ インターネット記事
(ア)「排出量取引インサイト」のウェブサイト(http://www.ets-japan.jp/bsc/bsc_2_5.html)
「2.京都メカニズムの基礎知識」及び「2-5.京都クレジットへの需要供給と調達方法」の見出しの下,「…2008年6月に成立した改正金融商品取引法により,取引所が付随業務として京都クレジットの取扱いが認められ,同じ時期に成立した改正銀行法・保険業法により,銀行,保険会社での京都クレジットの取扱いが認められました。」との記載がある。
(イ)「排出量取引の解禁 金融商品取引法 WEBガイド」のウェブサイト(http://kinnyuu.jiten.name/2008/08/post_25.html)
「排出量取引の解禁」の見出しの下,「改正金融商品取引法による排出量取引の仲介業務は, ・証券会社 ・証券取引所 ・銀行 ・生命保険会社 ・損害保険会社 で行えます。金融商品取引所の規制も緩和され,金融商品の取引と排出量取引市場を兼業できるようになりました。」との記載がある。
(ウ)「ウィキペディア フリー百科事典」のウェブサイト(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%92%E5%87%BA%E5%8F%96%E5%BC%95)
「排出取引」の見出しの下,「排出取引とは,各国家や各企業ごとに温室効果ガスの排出枠を定め,排出枠が余った国や企業と,排出枠を超えて排出してしまった国や企業との間で取引する制度である。『排出量取引』,『排出権取引』,『排出枠取引』,『排出許可証取引』,『排出証取引』ともいう。」との記載がある。
(エ)「AllAbout」のウェブサイト(http://allabout.co.jp/gm/gc/11771/)
「タイプでわかる,あなたにピッタリ家計管理術 更新日:2008年06月30日/ボーナスはカーボンオフセットでエコ満足」の見出しの下,「カーボンオフセットってなに?」の項に,「最近よく聞く『カーボンオフセット』。…カーボンとは地球温暖化の原因とも言われる,温室効果ガスのCO2(二酸化炭素)の事。オフセットとは,offset=相殺(そうさい)すると言う意味で,自分達が排出してしまった,二酸化炭素を別の形で,差引ゼロにしましょうという事です。」との記載がある。また,「銀行でカーボンオフセット」の項には,「■滋賀銀行 カーボンオフセット定期預金 未来の種」,「■ソニー銀行 投信でオフセット」,「■三井住友銀行 住宅ローン,カーボンオフセット応援キャンペーン」,「■スルガ銀行 カーボンオフセット付き住宅ローン」,「■大垣共立銀行 住宅ローンでカーボンオフセットキャンペーン」及び「カーボンオフセットは金利優遇や,プレゼントキャンペーンと違い,誰かが得をする訳ではありません。でも,銀行と言う社会的な責任がある会社を通じてCO2削減の取り組みに関わることが出来るはじめての仕組みですね。」との各記載がある。
(オ)「住友信託銀行」のウェブサイト(http://www.sumitomotrust.co.jp/csr/innovation/environment/02.html)
「事業を通じたCSR(環境問題の解決への貢献) 地球温暖化の解決に寄与する取組み」の見出し下にある「排出権に関する取組み」には,「当社は排出権を地球温暖化問題に対する補完的な対応手段と位置付け,金融商品の開発を進めています。」との記載があり,それに続く「1.カーボンオフセット商品組成の支援」の項には,「数万トン単位の大口取引が主流の京都議定書に基づく海外の排出権(京都クレジット)を『信託受益権』に転換することで小口化(取引単位を1,000トンへと引き下げ)し,2008年6月から排出権信託商品の取り扱いを開始しました。」との記載がある。
(カ)「武蔵野銀行」のウェブサイト(http://www2.musashinobank.co.jp/irinfo/news/h20/pdf/080919_01.pdf)
平成20年9月19日付けの「NEWS RELEASE(MUSASHINOBANK)」には,「カーボンオフセット定期預金『地球(ほし)の未来』の発売について」の見出しの下,「武蔵野銀行は,銀行の本来業務を通じた環境活動の一環としてカーボンオフセット定期預金『地球(ほし)の未来』を発売します。」との記載がある。
(キ)「八十二銀行」のウェブサイト(http://www.82bank.co.jp/ct/other000004900/news20090312.pdf)
平成21年3月12日付けの「『排出権取引分野に関する包括業務協力協定』締結のお知らせ」と題する文書には,「八十二銀行は,本日,MUFGグループの3社(三菱東京UFJ銀行,三菱UFJ証券,三菱UFJリース)と「排出権取引分野に関する包括業務協力協定」を締結いたしました。協定を締結した3社と協力し,環境配慮型企業向けに,排出権の購入ニーズへの対応やカーボンオフセット付の商品開発のサポートを行ない,お客さまのCSR実現や環境貢献活動をご支援いたします。」との記載がある。
(ク)「岩手銀行」のウェブサイト(http://www.iwatebank.co.jp/news/2011/1102/110225_mycar-camp_carbon.pdf)
平成23年2月25日付けの「IWATE BANK NEWS LETTER」には,「?カーボン・オフセットに貢献!?「地球に優しいマイカーローンキャンペーン」の実施について」の見出しの下,「当行は,岩手県が推進する県有林のCO2吸収量を増加するプロジェクトに賛同し,CO2排出枠(オフセット・クレジット)を購入しておりますが,マイカーローンを利用するお客さまのためにこの排出枠を使用いたします。」との記載がある。
(2)前記(1)認定の事実に基づき,本願商標の商標法3条1項3号該当性につき検討する。
ア 本願商標は,「カーボンオフセット銀行」の文字を標準文字で表示してなるところ,その前半の「カーボンオフセット」は,前記(1)ア(ア),イ(ア),ウ(エ)及びエ(エ)等の各事実によれば,「市民,企業,NPO/NGO,自治体,政府等の社会の構成員が,自らの温室効果ガスの排出量を認識し,主体的にこれを削減する努力を行うとともに,削減が困難な部分の排出量について,他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(「クレジット」)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により,その排出量の全部又は一部を埋め合わせること」の意味合いを表す語として一般に認識され,使用されているものと認められる。一方,その後半の「銀行」は,「銀行法4条1項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営む者」を表す語であって,一般人には「一方で貯蓄者から預金を預かり,他方で貸付・手形割引および証券の引受けなどを業務とする金融機関。」(広辞苑第6版)を表す語として広く知られているものである。
そして,前記(1)の各事実よれば,(a) 2008年6月に成立した改正金融商品取引法及び同時期に成立した改正銀行法により,銀行も排出権取引(これが排出量取引や排出枠取引等ともいわれていることは,エ(ウ)参照。以下同じ。)の仲介業務が行えるようになったこと(エ(ア)(イ)),(b) また,2007年から2008年にかけて,前記カーボンオフセットが国内でも急速に注目度を高めたとされ,これに合わせて,カーボンオフセット付きの商品・サービスが相次いで登場し,金融機関においても,二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減への取組を後押しするため,多数の銀行から,排出権信託商品,排出権取引を絡めたカーボンオフセット付きの定期預金や住宅ローン・マイカーローンなどの金融商品の取扱いが開始されていること(ウ(ア)(イ)(エ)?(シ)(セ),エ(エ)?(ク)),(c) さらに,金融機関である銀行自らも,温室効果ガス排出量の削減目標を達成するため,カーボンオフセットに取り組んでいること(ウ(ウ)(キ))が認められる。
イ 本願商標の補正後の指定役務中には,「温室効果ガスの排出権の売買取引・先物取引,温室効果ガスの排出権の売買取引・先物取引の媒介・取次ぎ・代理,温室効果ガスの排出権の売買契約の仲介・代行,温室効果ガスの排出権の売買取引・先物取引に関する情報の提供,温室効果ガスの排出権の売買取引に関する斡旋・仲介及びそれらに関する情報の提供,温室効果ガスの排出権に関する先物取引の斡旋・仲介及びそれらに関する情報の提供,温室効果ガスの排出権の売買契約に関する情報の提供,温室効果ガスの排出権の資産価値の評価,温室効果ガスの排出権に関する売買に関する信用状の発行」のように,前記カーボンオフセットと密接に関連する温室効果ガスの排出権取引等に関する役務が明示されており,また,その他の指定役務についても,排出権信託商品,排出権取引を絡めたカーボンオフセット付きの定期預金や住宅ローン・マイカーローンなどの金融商品を取り扱う役務が含まれているものである。(これらを以下「排出権関連役務」という。)
ウ このような事実に照らすと,「カーボンオフセット」と「銀行」とを標準文字で一連に「カーボンオフセット銀行」と表示した本願商標からは,「カーボンオフセットに関する銀行業を行う金融機関」や「二酸化炭素排出権取引を行う(ないしは同排出権取引を組み込んだ金融商品を取り扱う)銀行」程度の意味合いが容易に認識されるものというべきである。
そうすると,本願商標をその指定役務中,排出権関連役務に使用するときは,これに接する取引者・需要者は,本願商標を上記程度の意味合いを有する語として認識し,単に役務の質を表したものと理解するにとどまるものと認めるのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。
2 請求人の主張に対する判断
(1)本願商標の自他識別力及び独占適応性に関する主張
請求人は,辞書を引用した上で,通常の英語知識を有する者ならば,本願商標中の「カーボンオフセット」からは,「二酸化炭素の相殺」ではなく,「炭素の相殺」を認識し,全体としても「炭素相殺銀行」ほどの意味合いを認識するにとどまるから,原査定のように「二酸化炭素排出権取引を行う銀行」ほどの意味合いを認識するという判断は,英語的な解釈から逸脱した判断であり,承服できないものであり,また,「カーボンオフセット銀行」の語は,金融業界において普通に用いられる方法で使用されておらず,「二酸化炭素排出権取引を行う銀行」とも認識されていないことなどから,本願商標には,自他識別力及び独占適応性がある旨主張する。
しかし,辞書的な意味から「カーボンオフセット」を「炭素の相殺」との意味合いで認識でき,また,「カーボンオフセット銀行」の語が金融業界において普通に用いられる方法で使用されていないとしても,他方で,前記1(1)認定の事実がある以上,そのことは,本願商標について役務の質を表したものと理解されるとの上記判断を左右すべき理由にはならない。
なお,請求人は,過去の登録例も挙げているが,それらは,商標の構成中に特定の観念を生じさせない図形を有していたり,指定役務の内容が前記排出権関連役務ではなかったりするなど,本願商標とは商標の構成又はその指定役務を異にするものであるから,必ずしも同様の事案とはいえないものである。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。
(2)本願商標は第三者による使用がないとの主張
請求人は,新聞記事データベース「日経テレコン21」を用いて「カーボンオフセット銀行」の語を検索した結果,3件のみがヒットしたこと(甲47),そして,それらはいずれも請求人に関する記事であること(甲48)から,「カーボンオフセット銀行」という商標を使用しているのは,請求人のみである旨主張する。
しかし,当該3件の新聞記事は,いずれも2008年4月に発行されたものであって,その記事内容は,いずれもほぼ同様のものであるところ,例えば,2008年4月11日付け「ニッキン」には,「ソニー銀行は4月から”環境にやさしいネット銀行”を展望し,使用する全電力に相当する量のグリーン電力証書の発行を受ける。これにより邦銀初のカーボンオフセット銀行となる。」と記載されているとおり,これは,請求人自らが使用する全電力に相当する温室効果ガスの排出量を,グリーン電力証書(前記1(1)ウ(ス))の発行を受けて100%埋め合わせた銀行として邦銀初であることを伝えるために,「邦銀初のカーボンオフセット銀行となる」と紹介されているにすぎないものであるから,請求人自らが本願商標をその指定役務について使用をしているものとはいえない。また,自らの活動に伴って排出される温室効果ガス排出量の削減目標を達成するためカーボンオフセットに取り組んでいる銀行は,請求人以外にもあるところ(前記1(1)ウ(ウ)(キ)),そもそも,「邦銀初」という紹介の仕方からして,それに続く第2,第3の銀行が登場した場合には,それらの者も同様に「カーボンオフセット銀行」として紹介されるであろうから,仮にこのような意味合いで認識された場合であっても,本願商標に自他役務の識別力があるものとは認め難いものである。
したがって,請求人の上記主張も採用できない。



審理終結日 2012-02-29 
結審通知日 2012-03-02 
審決日 2012-03-14 
出願番号 商願2008-25140(T2008-25140) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X36)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 明訓椎名 実 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 瀧本 佐代子
田村 正明
商標の称呼 カーボンオフセットギンコー、カーボンオフセット 
代理人 押本 泰彦 

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