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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X05
管理番号 1256428 
審判番号 無効2011-890015 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-02-07 
確定日 2012-04-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5203227号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5203227号商標(以下「本件商標」という。)は、「REMOXY」の欧文字を標準文字で表してなり、平成20年6月20日に登録出願され、第5類「鎮痛剤,麻酔薬,麻薬,その他の薬剤」を指定商品として、同21年1月14日に登録査定、同年2月6日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第92号証(以下「甲1?92」のように表記する。)を提出している。
(1)請求人の事業について
請求人は、1957年にスイス国バーゼルに設立して以来、慢性疼痛、呼吸器疾患の治療薬、消毒薬などを専門領域とする製薬企業グループのための国際貿易とライセンス関連の業務を行っており、現在、100か国以上にわたり、各国の有力企業と業務提携をし、提携企業に対する特許・商標に関するライセンスの供与を通じて製品の販売を行うビジネスモデルを推進している。
我が国においては、1989年に塩野義製薬株式会社(以下「塩野義製薬」という。)と業務提携をし、持続性がん疼痛治療剤(硫酸モルヒネ徐放錠「MSコンチン」)の製造販売を開始し、2002年に日本法人としてムンディファーマ株式会社(以下「ムンディファーマ社」という。)を発足させ、2003年に持続性がん疼痛治療剤(塩酸オキシコドン徐放錠「OxyContin(オキシコンチン)」)の製造・販売を通常使用権者である塩野義製薬を通じて開始し、その後「OxyContin(オキシコンチン)」は「MSコンチン」に代わる主力商品となっている(甲11)。
(2)がん疼痛治療薬に関する取引の実情について
WHOは、1986年に「がん性痛緩和のガイドライン」を発表して、鎮痛薬の使用を主軸とするがん疼痛治療法「WHO三段階除痛ラダー」を提唱し、現在、同治療法は世界中で行われている。同治療法では、痛みを3段階に分類し、痛みの強さに応じて、軽い時に「非オピオイド鎮痛薬」、中くらいの時に「弱オピオイド鎮痛薬」、強い時に「強オピオイド鎮痛薬」を中心に薬を選択する。オピオイド鎮痛薬とは、医療用麻薬の一種であり、神経組織内にあるオピオイド受容体に結合することで脊髄と脳への伝達を遮断することにより、痛みを和らげる医療用鎮痛剤の総称をいい、我が国においては、代表的なものとしてモルヒネ、フェンタニル、オキシコドンがある(甲12・13)。
(3)引用使用商標の著名性について
請求人は、別掲のとおりの「オキシコンチン」関連の各商標(登録第3124429号商標(甲3・4)、登録第3167162号商標(甲5・6)、登録第4502485号商標(甲7・8)及び登録第4503914号商標(甲9・10))の商標権を有しており、同商標権について塩野義製薬に通常使用権を許諾している。
塩野義製薬は、「オキシコンチン」(塩酸オキシコドンを有効成分として製剤化した経口除放錠)(以下「本件使用商品」という。)について、2003年4月16日に製造承認を取得し、同年6月6日に薬価収載され、同年7月7日に発売を開始した。この経緯は数々の経済紙、業界紙に掲載されたほか、塩野義製薬は、医療関係者に対する販売促進活動やパンフレットの配布などを行った(甲26?41)。
当時、我が国における疼痛治療の普及は世界各国に比べて立ち遅れていたが、ムンディファーマ社と塩野義製薬は、がん疼痛治療薬(医療用麻薬)の啓蒙・普及活動を行った結果、オピオイド鎮痛薬、なかでもオキシコドンの使用頻度が飛躍的に増加し、その代表的な商品として本件使用商品が挙げられる(甲13?23)。
本件使用商品は、従来の代表商品「MSコンチン」と比較して、高齢者や腎機能が低下した患者でも副作用の出現が少ないのでより使いやすく、経済性も高いという利点があり、大変注目を集めた(甲44?46)。
我が国における本件使用商品の一年間の売上高は、発売当初の2003年度には約9億円程であったが、2004年度は29億円、2005年度においては43億円、2006年度においては52億円、2007年度においては66億円に達した(甲60?90)。
以上のとおり、通常使用権者である塩野義製薬が本件使用商品に使用する「オキシコンチン」、「OxyContin」及び「OXYCONTIN」の各標章(以下、これらを総称して「引用使用商標」という。)は、本件商標の登録出願時及び登録時には請求人の業務に係る商品を表示する商標として周知・著名となっていた。
(4)商品の出所混同のおそれについて
本件商標は「REM」と「OXY」の文字を結合させたものと理解できるのに対し、引用使用商標中の「OxyContin」も「Oxy」と「Contin」の文字の結合と容易に理解できるものであり、両者は、構成中に「OXY」の文字を含む点において外観上の類似性が認められる。
そして、引用使用商標の周知著名性、本件商標の指定商品及び引用使用商標の使用商品の性質・用途・目的における関連性、需要者・取引者の共通性・注意力、取引実情等を併せ考慮すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、商品の出所について請求人の業務に係る商品と混同を生じ、ひいてはその品質についても誤認を生じさせる蓋然性が極めて高いといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

3 被請求人の答弁
審判長は、本件審判請求書の副本を被請求人に送達し、相当の期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人は、所定の期間内に答弁書を提出していない。

4 当審の判断
(1)引用使用商標の著名性について
甲各号証によれば、ムンディファーマ社は塩野義製薬と本件使用商品の製造販売に関して業務提携をしていること、塩野義製薬によって2003年7月に持続性がん疼痛治療剤「オキシコンチン錠」の販売が開始されたこと、その経緯については日経産業新聞、日刊工業新聞、日本工業新聞、薬事日報など各種新聞に報道されたこと、ムンディファーマ社と塩野義製薬は、本件使用商品などのがん疼痛治療薬の適正使用や疼痛治療について啓蒙活動を行っていること、その一環として啓発テレビコマーシャルが放映されていること、本件使用商品については、医療関係者向けのパンフレットが発行されているほか、雑誌広告、チラシ広告、雑誌・新聞記事報道等が行われていること、本件使用商品には引用使用商標が使用されていること、本件使用商品は、発売以来着実に売上を伸ばし、2007年度にはその売上高が66億円に達していることなどが認められる。
以上を総合すると、引用使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、請求人及び通常使用権者である塩野義製薬の業務に係る本件使用商品について使用する商標として、この種業界における取引者・需要者の間に広く認識されていたものといえる。
もっとも、本件使用商品に「OXY」又は「Oxy」の文字と「CONTIN」又は「Contin」の文字とを分離して表示したり、単に「OXY」、「Oxy」又は「オキシ」と省略して使用している事実については、請求人は何ら立証するところがなく、これらの事実は認められないから、引用使用商標は、あくまでも一連一体のものとして知られているというべきである。
(2)本件商標と引用使用商標との類似性の程度について
本件商標は、前記1のとおり、「REMOXY」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該文字は特定の意味合いを想起させない造語よりなるものであり、このような場合には、我が国において最も親しまれたローマ字又は英語風に読まれるとみるのが自然であるから、その構成文字に相応して「レモクシー」又は「レモキシー」の称呼を生じるものであり、特定の観念を生じるものではない。
他方、引用使用商標は、いずれも特定の意味合いを想起させない造語よりなるものであるから、本件商標と同様に、それぞれの構成文字に相応して、いずれも「オキシコンチン」の称呼を生じるものであり、特定の観念を生じるものではない。
そこで、本件商標から生ずる「レモクシー」及び「レモキシー」の称呼と引用使用商標から生ずる「オキシコンチン」の称呼とを比較すると、両者は、称呼上において、構成音数が異なるばかりでなく、構成するほとんどの音を異にするものであって、それぞれを一連に称呼するときは全体の音感・音調が明らかに相違し、容易に聴別できるものである。
また、本件商標と引用使用商標とは、観念上において比較することができない。
さらに、本件商標の外観と引用使用商標の外観とを比較すると、両者は、外観上において、構成上顕著な差異を有することから、判然と区別し得るものである。この点に関し、請求人は、本件商標と引用使用商標とは「OXY」を含む点において外観上類似する旨主張するが、本件商標と引用使用商標とは、いずれも一連一体の構成として看取されるものであり、これらから「OXY」の文字部分のみを分離抽出して観察すべき格別の理由を見いだし難いから、請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標と引用使用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。
(3)出所の混同のおそれについて
引用使用商標の著名性、本件商標の指定商品と引用使用商標が使用されている商品との類似性、需要者の共通性、取引者・需要者が払う注意力の程度などを考慮しても、本件商標と引用使用商標とは、上記(2)のとおり、その類似性において全く別異のものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合に、取引者・需要者をして、その商品が請求人又は通常使用権者である塩野義製薬など請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
(4)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(請求人が所有する登録商標)
(1)登録第3124429号商標(甲3・4)
商標の構成 「OXYCONTIN」
指定商品 第5類「薬剤」
出願日 平成5年3月26日
登録日 平成8年2月29日
(2)登録第3167162号商標(甲5・6)
商標の構成 「オキシコンチン」
指定商品 第5類「薬剤」
出願日 平成5年7月8日
登録日 平成8年6月28日
(3)登録第4502485号商標(甲7・8)
商標の構成 「OxyContin」(標準文字)
指定商品 第5類「薬剤」
出願日 平成12年9月11日
登録日 平成13年8月31日
(4)登録第4503914号商標(甲9・10)
商標の構成 「オキシコンチン」(標準文字)
指定商品 第5類「薬剤」
出願日 平成12年9月11日
登録日 平成13年9月7日

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審理終結日 2011-11-25 
結審通知日 2011-11-29 
審決日 2011-12-16 
出願番号 商願2008-49055(T2008-49055) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前山 るり子 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2009-02-06 
登録番号 商標登録第5203227号(T5203227) 
商標の称呼 レモキシー、レモクシー 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 石田 昌彦 
代理人 福田 秀幸 

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