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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y09
管理番号 1256392 
審判番号 取消2010-300501 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-05-12 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4891354号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4891354号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成16年11月11日に登録出願され、「電気通信機械器具用モジュール,その他の電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ」を含む第9類及び第38類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同17年9月2日に設定登録された。その後、第38類の指定役務については、平成22年8月17日の審決(取消2010-300502)により取り消され、その確定の登録が同年10月21日になされているものである。

2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中「電気通信機械器具用モジュール,その他の電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。
(1)請求の理由
本件商標は、請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において使用をしていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
通常使用権者による使用について
(ア)乙第9号証は、通常使用権者である安川情報システム株式会社(以下「通常使用権者」あるいは「安川情報システム」という。)により印刷され、通常使用権者あるいは被請求人により頒布されたと主張する商品パンフレットの写しである。
同商品パンフレットは、通常使用権者の製造する「無線通信用アダプタ(Intesse D2-K’s1 EL及びIntesse D2-K’s2 EL)」(以下「本件商品」という。)のパンフレットであり、その表面の左上方には本件商標と色彩の異なる商標が表示されている。
そして、被請求人は、同商品パンフレットの裏面に「08G.3XP.YOB.S」と記載されていることをもって、同商品パンフレットが2008年に印刷されたものであると主張しているが、同商品パンフレット裏面の記載「08G.3XP.YOB.S」は、数字とアルファベット文字が羅列されたもので、何を意味するものか不明であり、同商品パンフレットが印刷された時期を表示しているものと理解することはできない。また、他に、印刷された時期を表わしている表示は同商品パンフレット上にはない。
(イ)乙第12号証は、通常使用権者により予告登録日前3年以内に本件商標が表示されたと主張する本件商品の本体及びその包装用箱の写真である。
乙第12号証は、本件商品の本体の写真3枚と包装用箱の写真2枚からなり、本体の上面及び包装用箱の側面に貼付されたシール上に商標が表示されているものであるが、乙第12号証の写真は、その撮影日が不明である。すなわち、乙第12号証の写真は、本件商標の予告登録日前3年以内の使用を証明するものではない。
なお、乙第12号証において撮影されている商品と、乙第9号証の商品パンフレットに掲載されている商品は、製品名「Intesse」及び型名「D2-K’s2 EL」が共通し、外観も共通することから同一の製品と推察されるが、乙第12号証の商品の上面には商標の付されたシールが貼付されているのに対し、乙第9号証の商品の上面にはシール等が貼付されていないことから、乙第12号証における商標の使用が、予告登録日前3年以内のものであることに疑念を抱かざるを得ない。
(ウ)乙第13号証は、通常使用権者の代理店である被請求人が、2007年(平成19年)12月の需給見通に基づいて本件商品を通常使用権者に注文し、2008年(平成20年)3月に納入を受けたこと、すなわち、通常使用権者が被請求人に本件商品を譲渡又は引き渡したことを示すものである。
しかしながら、譲渡又は引き渡しのあったとされる本件商品に本件商標が付されていたことは、上述の乙第9号証及び乙第12号証から類推することはできない。また、この時期に本件商標が本件商品に付されていたことは、他の証拠によっても証明されていない。
(エ)乙第8号証は、通常使用権者のホームページを印刷したものであって、通常使用権者の事業内容を示しており、本件商品の製品名・型名である「Intesse D2-K’s1EL/2EL」の表示及び本件商品の写真が掲載されている。しかしながら、乙第8号証には本件商標は一切掲載されていない。
(オ)乙第2号証の5は、被請求人のホームページを印刷したものであって、被請求人の実施する「KDDI モジュール ソリューション パートナー プログラム(KDDI Module Solution Partnerプログラム)」事業(以下「本件被請求人事業」という。)の登録製品一覧を掲載しており、本件商品の製品名・型名と思われる「Intesse D2CoreSeries D2-K’s」の表示及び本件商品と思しき写真が掲載されているが、本件商標は一切掲載されていない。
(カ)乙第10号証及び乙第11号証は、通常使用権者が、本件被請求人事業に参加申込をし、2006年(平成18年)4月16日付にて製品登録パートナーとして「合格」の認定を受け、本件商品について本件商標を使用することを許諾されたことを示すものであるが、被請求人が通常使用権者により本件商標が使用されていたと主張する予告登録日前3年以内とは、平成19年5月28日から平成22年5月27日までの期間を指すものである。そして、仮に、2006年(平成18年)4月16日の時点で通常使用権者が本件商標を使用していたとしても、平成19年5月28日から平成22年5月27日までの期間内に使用されていたことを乙第10号証及び乙第11号証は証明していない。
また、乙第4号証の「別紙3・規定2」及び乙第7号証は、製品登録パートナーによる本件商標の使用について定めたものであるが、これらは、本件商標を使用することができる旨を定めたものであって、本件商標の使用を義務と定めたものではない。よって、通常使用権者が、本件被請求人事業の製品登録パートナーに認定され、本件商標の使用の許諾を受けているとしても、そのことをもって、本件商標を使用していたことの証拠にはならない。
(キ)乙第15号証及び乙第16号証は、2009年(平成21年)に東京ビッグサイトで開催された「第12回 組込みシステム開発技術展」に本件商品が出展されたことを示すものであり、本件商品の型名である「D2-K’s1 EL」や「D2-K’s2 EL」の記載が見られるが、本件商標は全く掲載されていない。
(ク)乙第17号証は、2009年(平成21年)に発行された雑誌の広告に本件商品が掲載されていたことを示すものであって、同広告には、本件商品の型名である「D2-K’s1 EL」や「D2-K’s2 EL」の記載が見られるが、本件商標は全く掲載されていない。
なお、同広告のページ中央には、被請求人の通信モジュールが掲載されており、同通信モジュール上に商標が付されているが、これは本件商標と異なり、「KDDI RECOMMENDED MODULE」の欧文字から構成される商標である(乙第19号証参照)。
(ケ)以上のとおり、乙第2号証の5、乙第8号証ないし乙第13号証並びに乙第15号証ないし乙第17号証は、いずれも、通常使用権者により本件商標が予告登録日前3年以内に使用されていたことを証明するものではない。また、乙第1号証ないし乙第19号証を総合的に検討しても、通常使用権者により本件商標が予告登録日前3年以内に使用されていたと判断することはできない。よって、本件商標は通常使用権者によって、本件審判請求に係る指定商品について、予告登録日前3年以内に日本国内において使用されているとする被請求人の主張には理由がない。
イ 商標権者による使用について
(ア)乙第14号証は、被請求人が通常使用権者の代理店として、本件商品について第三者と商談し、第三者から注文を受け、被請求人の社内で調達申請を行い、費用の社内確認を行い、第三者に費用見積書を提示したことを示すものであるが、乙第14号証には本件商標が付されていない。よって、乙第14号証、とりわけ、乙第14号証の5「御見積書」が商品に関する価格表若しくは取引書類であるとしても、本件商標が付されていないため、商標法第2条第3項第8号に定める商標の使用をしていたことにならない。
次に、乙第14号証は、本件商品について第三者との商談から費用見積書の提示までが行われたことを示すものであるが、被請求人が本件商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供したことを証明するものではない。よって、仮に、本件商品に本件商標が付されていたとしても、乙第14号証は、被請求人が本件商標について商標法第2条第3項第2号に定める使用をしていたことを証明するものではない。また、仮に、被請求人が乙第14号証に係る第三者に本件商品を譲渡又は引き渡しをしていたとしても、本件商品に本件商標が付されていたことは、被請求人の提出した証拠によっては何ら証明されていない。
(イ)乙第2号証の1ないし4及び乙第3号証は、被請求人のホームページを印刷したものである。これら乙号証中には「KDDI Module Inside」の文字や本件商標と色彩の異なる商標が記載されているが、これら乙号証の記載は本件被請求人事業の概要を記載したものであって、具体的な商品に関する記載ではない。
(ウ)乙第4号証ないし乙第7号証は、本件被請求人事業に関して各製品登録パートナーに順守させるための規約やガイドラインであるが、乙第4号証ないし乙第6号証には本件商標の記載は一切無い。一方、乙第7号証の表紙には「KDDI Module Inside」の文字が記載されているが、これは本件商標を製品等へ表示する方法等を記載するものであって、具体的な商品に関する記載ではない。
(エ)乙第15号証及び乙第16号証は、2009年(平成21年)に東京ビッグサイトで開催された「第12回 組込みシステム開発技術展」において、被請求人がブースを設けたこと及びそのブース内で被請求人の通信モジュールを組み込んだ商品の実例が紹介されたことを示すものであるが、乙第15号証及び乙第16号証において、本件商標は全く掲載されていない。
(オ)乙第19号証は、被請求人の通信モジュールと通信ネットワークを利用して、業務の効率化や新規ビジネス創出をサポートする「通信モジュールソリューション」並びに被請求人の通信モジュールの製品ラインナップを紹介する法人向けカタログの抜粋である。
同法人向けカタログには、被請求人の通信モジュールが掲載され、同通信モジュール上に商標が付されているが、これは本件商標ではなく、「KDDI RECOMMENDED MODULE」の欧文字から構成される商標であり、同法人向けカタログに本件商標は全く掲載されていない。
(カ)乙第17号証は、被請求人が2009年(平成21年)に発行された雑誌に被請求人の通信モジュールに関する広告を掲載したことを示すものであり、同広告には、被請求人の通信モジュール及び同モジュールを搭載した製品登録パートナー各社の商品が掲載されているが、本件商標は全く掲載されていない。また、被請求人の通信モジュール上に商標が付されているが、これは本件商標ではなく、「KDDI RECOMMENDED MODULE」の欧文字から構成される商標である(乙第19号証参照)。
(キ)以上のとおり、乙第2号証の1ないし4、乙第3号証ないし乙第7号証、乙第14号証ないし乙第17号証並びに乙第19号証は、いずれも、被請求人により本件商標が予告登録日前3年以内に使用されていたことを証明するものではない。また、乙第1号証ないし乙第19号証を総合的に検討しても、被請求人により本件商標が予告登録日前3年以内に使用されていたと判断することはできない。よって、本件商標は被請求人によって、本件審判請求に係る指定商品について、予告登録日前3年以内に日本国内において使用されているとする被請求人の主張には理由がない。
ウ 結語
以上のとおり、被請求人が提出する証拠によっては、被請求人及び通常使用権者が本件商標を本件審判請求に係る指定商品について、予告登録日前3年以内に日本国内において使用している事実を示すことができないことは明らかであり、答弁の趣旨には理由がない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標に係る事業
被請求人は、通信事業を中心に様々な事業を行っているが、この中に、「KDDI モジュール ソリューション パートナー プログラム(KDDI Module Solution Partnerプログラム)」という事業がある。このプログラムは、通信アダプタ・遠隔監視機器・位置情報確認通知機器・コンピュータ・その他の機械器具に、被請求人が提供する通信モジュール(乙第19号証)を搭載させることにより、同機械器具を通じて、同機械器具の需要者が被請求人の通信サービスの提供を受けることができるようにして、被請求人及び同機械器具のメーカーである「製品登録パートナー」の双方で新たな市場を開拓しビジネスを発展させることを目的としたものである(乙第2号証の1ないし4)。
このプログラムに参加を希望する機械器具メーカーは、被請求人に対してプログラム事業参加の申し込みをしてもらうとともに、被請求人の製品である通信モジュールを搭載した機械器具について、被請求人が設ける基準に合致したものであるかどうか製品毎に検査を受けてもらう必要があり、この検査に合格することにより、プログラム対象の製品として登録されたことになる(乙第2号証の1ないし4)。
現在、このプログラムの対象として登録された製品は、10数品目を数える(乙第2号証の5)。
そして、被請求人は、製品登録パートナーに対して、この者の製品がプログラムの対象として登録された製品であることの証として、本件商標と全く同一のロゴマーク「KDDI Module Inside」(以下「本件商標」という。)の使用を許諾している(乙第3号証)。本件商標は、パートナー企業の製品本体、パッケージ及び包装、製品パンフレット、チラシ、ホームページ等に使用される。すなわち、製品登録パートナーは、被請求人の検査に合格した製品について、本件商標の使用を許諾される。
被請求人は、このプログラムを実施するため「KDDIモバイルソルーションパートナー・プログラム規約」(乙第4号証)を用意し、この規約に合致する企業をパートナーとして受け入れ、パートナー企業はこの規約に沿って活動することが求められ、また、このプログラムの対象となる製品を登録・選択するための「KDDIモバイルソリューションパートナープログラム・製品登録ガイドライン(通信モジュールソリューション)」(乙第5号証)や「KDDIモバイルソリューションパートナープログラム・製品評価試験ガイドライン」(乙第6号証)を設けている。このうち、上記「KDDIモバイルソリューションパートナー・プログラム規約」の「別紙3・規定2」は、被請求人が製品登録パートナーに対して、上記ロゴマーク(本件商標)の使用を認める条項である(乙第4号証)。
さらに、被請求人は、製品登録パートナーが「本件商標」を使用するにあたって順守してもらうべきことを定めたガイドラインとして、「『KDDI Module Inside』ロゴマーク表示ガイドライン」(乙第7号証)を設けている。
(2)製品登録パートナーによる本件商標の使用
被請求人が実施する本件被請求人事業に登録された製品は10数品目に上るが、この中には、安川情報システムの製品が含まれている(乙第2号証の5)。
安川情報システムは、様々な企業のITソリューションを構築することを主たる業務とする法人であり(乙第8号証の1)、同社事業目的に沿った各種の商品を製造しているところ、これらの製品の中に「無線通信用アダプタ」(Intesse D2-K’s 1EL 及び Intesse D2-K’s/2EL)(本件商品)が含まれる(乙第8号証の2)。
本件商品は、被請求人の通信モジュールを搭載することによって、被請求人が提供する携帯無線電話網を活用して、遠隔地とのデータ送受信を実現する無線通信用アダプタ(CDMA1Xパケット通信端末)である(乙第8号証の3及び乙第9号証)。したがって、本件商品は、本件審判請求に係る指定商品(第9類「電気通信機械器具用モジュール,その他の電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ」)の範ちゅうに該当する商品である。
安川情報システムは、2005年4月19日付にて被請求人が実施する本件被請求人事業に参加の申し込みをし、この申込書(乙第10号証)において、被請求人の通信モジュールを搭載する製品について被請求人による技術上あるいは営業上のサポートヘの期待を表明するとともに、同社製品に被請求人のロゴマーク(すなわち、本件商標)を表示したいとの意思を表明している。これに対して、被請求人は、安川情報システムから登録申請のあった本件商品について、商品評価試験を行い、2006年4月16日付にて「合格」の認定結果を通知した(乙第11号証)。この結果、安川情報システムは、被請求人が定める規約やホームページに記載されたとおり、本件商品について本件商標を使用することを許諾された。すなわち、プログラム参加のための一連の手続を経ることにより、安川情報システムは本件商標の通常使用権者となった。
これに伴い、通常使用権者である安川情報システムは、許諾に基づき、本件商品の本体、及び、その包装用箱に本件商標を表示している(乙第12号証)。
そして、安川情報システムが製造する本件商品は、安川情報システムが直接受注するばかりでなく、本件商品に被請求人の通信モジュールが搭載されており、本件商品を購入した需要者が被請求人の提供する通信サービスを申し込むことが期待されるため、被請求人が本件商品の販売のサポートをしている。すなわち、被請求人が安川情報システムの本件商品に関する代理店として、第三者から本件商品に関する注文を受け、被請求人が注文者に対して本件商品を販売することもある。
このため、被請求人は、安川情報システムから本件商品をまとめて購入する。例えば、2007年12月の需給見通に基づいて、本件商品(Intesse D2-K’s/2EL)(1500台)を注文(注文No.KA0735434)し、2008年3月に納入を受けた(乙第13号証)。
そして、被請求人が第三者から本件商品の注文を受けたことの一例を示すに、被請求人は、いすゞ自動車株式会社(東京都品川区)(以下「いすゞ自動車」という。)との間で、本件商品及び本件商品を利用して提供される被請求人の通信サービスに関する商談を行っていたところ(乙第14号証の1)、2008年2月にこの商談が無事妥結し、本件商品(Intesse D2-K’s/2EL)100台の注文を受けた(乙第14号証の2)。
この注文に伴い、被請求人の営業担当者が被請求人の内部にて、本件商品に関する受注を受けたことの確認と本件商品の調達申請を行い(乙第14号証の3)、また、費用について内部確認のうえ(乙第14号証の4)、いずゞ自動車株に対して費用見積書を提示した(乙第14号証の5)。このような手続を経て、本件商品はいすゞ自動車に対して納品された。
また、安川情報システムは、本件商標を本件商品の本体やその包装箱に表示するばかりでなく、本件商品に関する商品パンフレットに表示している(乙第9号証)。同商品パンフレットは、裏面に(08G.3XP.YOB.S)と記載されているように、2008年に印刷されたものであり、安川情報システム自身により、あるいは、被請求人により、本件商品の需要者や本件商品に関心のある者に頒布される等、販売促進活動において活用されている。
被請求人は、被請求人の通信モジュール及びこれを搭載した製品を紹介するため、2009年に東京ビッグサイト(東京都江東区)において開催された「第12回 組込みシステム開発技術展」(ESEC2009)(主催:リード エグジビジョン ジャパン株式会社)にブースを出した。このブースにおいて、被請求人は、「KDDI モジュール ソリューション パートナー プログラム」の製品登録パートナーが自社の商品を紹介するコーナーを設けたが、この中には安川情報システムも含まれ、本件商品について紹介した(乙第15号証及び乙第16号証)。この展示会において、本件商標の使用に係る本件商品が紹介され、また、本件商品に関する上記商品パンフレットが配布されている。
さらに、被請求人は、技術者にエレクトロニクス製品を紹介する雑誌「EPD(Electronics Products Digest)」(発行元:株式会社コスモブレインズ)の2009年11月号(Vol.26 N0.11)に、被請求人の通信モジュールに関する広告を掲載すると共に、この誌面に、同モジュールを搭載した製品登録パートナー各社の紹介をした(乙第17号証及び乙第18号証)。この中には安川情報システムが製造販売する本件商品も含まれている。
(3)まとめ
被請求人は、「KDDI モジュール ソリューション パートナー プログラム(KDDI Module Solution Partner プログラム)」を実施しており、このプログラムに参加する者(製品登録パートナー)に対して、同プログラムの基準に合格した製品にロゴマーク「KDDI Module Inside」(本件商標)の使用を許諾している。
製品登録パートナーである安川情報システムは、同社製品である無線通信用アダプタ(本件商品)について上記基準をクリアし、同商品について本件商標を使用することが許諾された者であり、通常使用権者である。そして、同社の無線通信用アダプタ(本件商品)は、本件審判請求の対象となる指定商品に該当する。
安川情報システムは、本件商品の本体や包装用箱に本件商標を表示している。そして、本件商品は、安川情報システムが自ら販売するばかりでなく、被請求人が販売することもあるため、安川情報システムは、本件商品を2008年3月に被請求人に納品した。また、被請求人は、2008年2月頃に行ったいすゞ自動車との商談に基づき、本件商品を同社に納品した。
したがって、本件商標の使用に係る商品である本件商品は、本件審判請求の予告登録日前3年以内の期間に、日本国内において、通常使用権者によって使用された。
また、安川情報システムは、本件商品に関する商品パンフレットを作成したところ、同商品パンフレットには本件商標が表示されており、その印刷年は2008年であるから、同商品パンフレットは本件審判請求の予告登録日前3年以内の期間に作成されたものと認められ、かつ、同商品パンフレットは、本件商標の通常使用権者である安川情報システム及び被請求人によって、本件商品の需要者に配布される等、本件商品の販売促進活動に利用された。
以上のとおり、本件商標は、審判請求に係る指定商品について、日本国内において、本件審判の予告登録日前3年以内に、通常使用権者により使用されていたものであるから、本件審判の請求は理由がない。

4 当審の判断
(1)被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 被請求人は通信事業を中心に様々な事業を行っており、その事業のうちの一に、通信アダプタ・遠隔監視機器・位置情報確認通知機器・コンピュータ・その他の機械器具に、被請求人が提供する通信モジュール(乙第19号証)を搭載させることにより、同機械器具を通じて、その需要者が被請求人の通信サービスの提供を受けることができるようにするという、被請求人及び製品登録パートナーの双方で新たな市場を開拓しビジネスを発展させることを目的とした「KDDIモジュールソリューションパートナープログラム」(以下「プログラム」という。)事業がある(乙第2号証の1ないし4)。
イ プログラムに参加を希望する者は、参加の申し込みを行い、被請求人の製品である通信モジュールを搭載した機械器具が、被請求人が設ける基準に合致するか否かの検査を受け、この検査に合格すれば、プログラム対象の製品として登録され(乙第2号証の1ないし4)、被請求人は、製品登録パートナーに対して、本件商標を製品本体、パッケージ及び包装、製品パンフレット、チラシ、ホームページ等へ表示する権利を許諾している(乙第2号証ないし乙第7号証)。
ウ 安川情報システムは、2005(平成17)年4月19日に、被請求人のプログラムへの参加の申し込みをし(乙第10号証)、これに対して、被請求人は、安川情報システムに対して、2006(平成18)年4月16日付け書面で、登録申請があった装置「対象製品名 Intesse D2CoreSeries D2-K’s」(無線通信用アダプタ)を「合格」と判定したことを通知した(乙第11号証)。
エ 写真(乙第12号証)の1枚目は本件商品にシールが貼られた状態の写真であり、2枚目は同シールの拡大写真である。同シールには「型名:D2-K’s EL」「製造元・販売元:安川情報システム株式会社」等の表示がされているほか、右上部には本件商標と同一の商標が表示されている。また、3枚目及び4枚目は本件商品を包装箱に収納した状態の写真であり、それぞれ前記シールが貼られていることが確認できる。また、5枚目は本件商品の包装箱外側に貼られた別のシールを拡大した写真であるが、同シールにも、右上部に本件商標と同一の商標が表示され、その下に「商品コード D2-K’s2 EL」などが表示されている。なお、包装箱外側に貼られたシール中の出荷日の欄は空白であり、当該写真の撮影年月日は明らかでない。
オ 被請求人会社の納入検収一覧(乙第13号証)によれば、2008年3月11日に、安川情報システム株式会社から、被請求人に、本件商品1,500台が納入された。

(2)通常使用権者について
上記(1)アないしウによれば、被請求人は、安川情報システムに対し、2006(平成18)年4月16日に「無線通信用アダプタ」について、日本国内における、本件商標の通常使用権の使用許諾をしたものと解される。

(3)通常使用権者による使用について
上記(1)の認定事実によれば、通常使用権者と認められる安川情報システムから、被請求人に、型名を「D2K’s2」とする本件商品(1,500台)が、2008(平成20)年3月11日に納品されていることが、納入検収一覧の表示から確認できる。
そして、通常使用権者が本件商品の商品本体及び包装用箱に貼付したシールに表示された型名及び商品コード(D2-K’s EL)と、上記の2008(平成20)年3月11日に通常使用権者から被請求人に納品された商品の型名(D2K’s2)は同一のものであるから、同一の商品であるものと認められる。
そうとすれば、通常使用権者から被請求人に納品された(譲渡又は引き渡された)本件商品に、本件商標と同一の商標が表示された当該シールが貼ってあったことは十分に推認されるものであって、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者により、その請求に係る指定商品のうちの「無線通信用アダプタ」に使用していたものと認めることができる。

(4)請求人の反論について
請求人は、乙第12号証(本件商品及び包装用箱の写真)の商品の上面には商標の付されたシールが貼付されているのに対し、乙第9号証(パンフレット)の商品の上面にはシール等が貼付されていないことから、乙第12号証における商標の使用が、予告登録日前3年以内のものであることに疑念を抱かざるを得ない旨主張する。
しかしながら、パンフレット等に商品の写真を掲載する場合は、見栄え等の観点から、その商品の一部が隠れてしまうようなシールの貼付は行わないのが一般的であり、さらに、当該パンフレットは、「D2-K’s1 EL」及び「D2-K’s2 EL」の商品外形が同一の2種類の通信端末用のパンフレットであることからすれば、当該パンフレットに表示されている商品にどちらか一方の型番のシールを表示することはできないものであるから、商品本体に貼られていたシールが、パンフレット等に表示されている商品に貼られていないことについて、何ら不自然な点があるとはいえない。
そして、通常使用権者はプログラムの対象として登録された製品であることの証として本件商標を表示する権利を許諾されているものであり(乙第4号証)、かつ、パートナー申込時に、ロゴマーク表示の意思を表している(乙第10号証)ことからすれば、通常使用権者による本件商品の製造販売の当初から、本件商品に本件商標が表示されたシールを貼付していたものと優に推認できるものである
してみれば、請求人の上記主張は採用できない。

(5)むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者により、取消請求に係る指定商品の範ちゅうに属する「無線通信用アダプタ」について、本件商標を使用していたことを証明したというべきできる。
したがって、本件商標は、その指定商品中、第9類「電気通信機械器具用モジュール,その他の電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ」について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)



審理終結日 2011-11-18 
結審通知日 2011-11-24 
審決日 2011-12-12 
出願番号 商願2004-103409(T2004-103409) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 内山 進
田中 亨子
登録日 2005-09-02 
登録番号 商標登録第4891354号(T4891354) 
商標の称呼 ケイデイデイアイモジュールインサイド、ケイデイデイアイモデュールインサイド、ケイデイデイアイ、モジュールインサイド、モデュールインサイド、インサイド 
代理人 高梨 範夫 
代理人 大村 昇 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 前田 大輔 
代理人 小林 久夫 
代理人 木村 三朗 
代理人 中村 知公 
代理人 安島 清 

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