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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y293043
管理番号 1253635 
審判番号 取消2010-300901 
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-08-13 
確定日 2012-03-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5069185号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5069185号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5069185商標(以下「本件商標」という。)は、「pinkberry」の欧文字を標準文字で表してなり、平成18年8月14日に登録出願され、第29類「ヨーグルト,その他の乳製品」、第30類「菓子及びパン,コーヒー及びココア,サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品又は指定役務として、同19年8月10日に設定登録されたものである。なお、本件商標権は、株式会社ジェイイーシーインターナショナル(以下「JEC」という。)に、当初設定登録された後、平成23年8月22日に森岡和彦氏(以下「森岡氏」という。)に譲渡する本件の移転の受付がなされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を、平成22年12月14日付け弁駁書、同23年1月11日付け及び同年10月27日付け上申書並びに同年9月30日付け口頭審理陳述要領書及び口頭審理における陳述において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、今日に至るまで3年以上、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていない。
2 第1答弁に対する弁駁の理由
(1)「pinkberry」の使用について
ア パンフレット等について
被請求人は、通常使用権者による本件商標の使用事実を証明する証拠として、ヨーグルトの販促用のパンフレット(乙3)、顧客宛のハガキ(乙5)及びポスター(乙7及び乙8)(以下、これらをまとめて「パンフレット等」という。)を提出している。
しかしながら、本件審判請求の登録前三年以内に頒布ないし掲示されたと被請求人が主張する販促用のパンフレット等が、同期間内に頒布又は掲示されたという点について証拠は存在せず、かかる事実が存在しないことは明白である。
イ 乙各号証(乙1、乙2、乙10及び乙11)の信用性について
乙第1号証は、通常使用権許諾証書であるが、そこには対価は別途覚書で定めると記されているが、覚書が提出されていないから、被請求人が通常使用権者に対して本件商標の通常使用権を与えた事実は証明されていない。
乙第2号証によれば、通常使用権者は、被請求人の代表者であった森岡氏がフローズンヨーグルトの事業を行うために酪農家を紹介した事実を陳述しているにすぎず、かかる事実が、通常使用権者が使用許諾を受けて本件商標の使用をしていることと、どのような関連性を有するかが明らかではないし、「計画当初から本件商標を用いたフローズンヨーグルト事業に積極的に関与している」との記載中の「計画当初」も何を指すのか不明である。
乙第10号証は、通常使用権者の運営するジャズ喫茶「BOSSA」の店内に掲示されたパネルの写真であるが、撮影されたのは本件審判請求後の平成22年10月14日であるから、そもそも、審判請求の登録前三年以内の使用は一切証明されていない。
なお、JECは、平成21年11月30日付けで解散決議がされ、同年12月10日にこれが登記されている(甲5)。
してみれば、それ以降の通常使用権者による商標の使用は、そもそも被請求人と同使用権者との間の通常使用権許諾契約に基づく使用ということはできない。
さらに、乙第11号証は、品名、荷姿の欄にヨーグルトと書かれた発送控であるから、本件商標を付したヨーグルトの存在を示すものか不明である。仮に本件商標を付したヨーグルトを実際に販売していたのであれば、当該ヨーグルトの写真等の資料が存在していることが通常であるが、被請求人はこれらの資料を全く提出していない。パンフレット等にも本件商標を付したヨーグルトの写真等は全く存在せず、また、どのように本件商標が付されていたかの説明すらない。このような被請求人の態度をあわせ考えるに、単なる発送控え(乙11)をもって、本件商標が付されたヨーグルトが存在したことを何ら立証し得ない。
乙第11号証記載の日時に通常使用権者がヨーグルトを第三者に発送していたとしても、この「ヨーグルト」が業として譲渡されたものであるのか不明である。また、乙第11号証のうち、平成22年1月18日及び同年2月2日付の受領印が押印された控えは、JEC解散後に作成されたものである。
ウ 小括
以上のとおり、乙第3号証、乙第5号証、乙第7号証及び乙第8号証によっては本件商標の使用の事実はー切証明されておらず、また、乙第1号証、乙第2号証、乙第10号証及び乙第11号証によっても、本件審判請求の登録前三年以内における使用の事実は一切証明されていない。
(2)本件商標と使用標章との同一性について
上述のとおり、本件商標が審判請求の登録前三年以内に使用された事実は存在しないが、乙第1号証ないし乙第11号証(ただし、乙4、乙6及び乙9、を除く。)に記載された「Natural pink berry」、「ナチュラル・ピンクベリー」又は「Natural」と「pink berry」とが併記された各標章(以下これらをまとめて「使用標章」という。)は、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標とはいえず、この点からも、かかる証拠によって本件商標の使用の事実が立証されるということはあり得ない。
ア 本件商標の内容
本件商標は、欧文字「pinkberry」と横書きに表してなり、一体的に表示されている。本件商標は、ピンクベリーという呼称のみが生じ、また本件商標は、具体的に何らかの意味を持つものではないため、全体としては特別の観念を生じない。
イ 使用標章の内容
使用標章は、乙第3号証、乙第5号証、乙第7号証、乙第8号証に表示されているように、「Natural pink berry」若しくは「ナチュラル・ピンクベリー」と横書きに、又は「Natural」と「pink berry」をそれぞれ上下二段組で横書きに表してなる。
まず、欧文字で表示された使用標章は、「Natural」、「pink」、「berry」の間にそれぞれ一文字分のスペースが存在するものの、それぞれが同じフォントにより同間隔で表示されているため、外観上軽重なく一連に看取される。また、構成全体に相応して生ずる「ナチュラルピンクベリー」の称呼も特段冗長とは言えず、容易に一気一連に称呼できるものである。さらに、「Natural」、「pink」、「berry」の語は、何れも広く親しまれた語であり、その意味合いを容易に把握できるため、「Natural」の部分は、商品の品質を表示するというよりは、それに続く「pink」を修飾し、構成全体で「自然なピンク色をしたベリー」程度の意味合いを把握させるものである。
また、片仮名で表示された使用標章「ナチュラル・ピンクベリー」は、「ナチュラル」と「ピンクベリー」との間に「・」が表示されているものの、「ナチュラル」と「ピンクベリー」は同書同大で纏まりよく一体的に表示されており、また、その構成全体から生ずる「ナチュラルピンクベリー」の称呼が冗長ではないこと、構成全体から一つの纏まった観念が生ずることは上述のとおりである。
さらに、「Natural」と「pink berry」が上下二段組で表された使用標章は、「Natural」と「pink berry」が、やや異なるフォントで表示されているものの、二段組に表わされた各語の横方向中央を同じ位置に揃え、かつ、各語をピンク色で統?的に彩色しているため、外観上の一体性が認められる。二段組の標章は、決して単独では使用されず、欧文字又は片仮名で表わされた前記各標章とともに用いられているため、これに接する者は、二段組の標章を、欧文字又は片仮名の使用標章と同様の称呼・観念を以って認識される。
ウ 本件商標と使用標章の対比
以上に述べたように、本件商標が「pinkberry」の1語からなるのに対し、使用標章は「Natural」、「pink」及び「berry」の3語からなり、文字数も全く異なり、本件商標と使用標章とは外観の差異が顕著であって、その構成を異にする。
また、本件商標は、称呼が「ピンクベリー」であるのに対し、使用標章の称呼は「ナチュラルピンクベリー」であって、同一であると解する余地はない。
さらに、観念についても、本件商標が1語で表示されているため特筆すべき観念が生じ得ないのに対して、使用標章からは、「自然なピンク色をしたベリー」程度の意味合いが把握されるため、やはり同一であるということはできない。
エ 小括
してみれば、本件商標と使用標章は、外観において同視することを妨げる程度の顕著な差異を有するものであり、また、同一の称呼及び観念を生じさせるものとは決していえず、その他社会通念上同一と認めるべき事由は存在しないことから、本件商標と社会通念上同一の標章の使用といえないことは明らかである。
オ まとめ
以上のように、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標が、本審判請求の登録日前三年以内に日本国内において使用されていた事実は一切証明されておらず、よって、本件商標の登録は、その不使用を理由とする取消を免れないものである。
3 口頭審理(口頭審理陳述要領書)における陳述
(1)乙第4号証、乙第6号証及び乙第9号証について
請求人は、被請求人が乙第4号証、乙第6号証及び乙第9号証を偽造したことを認めたので、これに係る主張を撤回した。
(2)乙第14号証ないし乙第17号証について
被請求人が高橋氏による本件商標の使用事実を証明する証拠として、パンフレット等の作成(印刷)にかかる有限会社デフ(以下「デフ」という。)作成の各請求書(乙15ないし乙17、以下「デフ請求書」という。)及び佐々木氏陳述書(乙14)を提出しているが、以下に述べるように、いずれの証拠も偽造され又は内容虚偽の証拠であり、信用性に乏しい。
デフ請求書及び佐々木氏が陳述書に記載の本件所在地及び本件電話番号について調査したところ、「K-factory」というカラオケボックス(以下「K-factory」という。)が、デフ請求書が作成された平成21年10月30日(乙15)、11月30日(乙16)及び平成22年1月31日(乙17)及び佐々木氏陳述書(乙14)が作成された平成23年5月31日時点において、「K-factory」が本件所在地に存在し、本件電話番号を使用していたものである(甲8)。
ところで、デフは、本件所在地を本店住所地として登記しているものの、実際には、本件所在地では、カラオケボックスが営業されていたものであり、そうだとすると、平成21年から同22年にかけて、デフが、本件所在地で実態のある形で印刷業を営んでいたこと自体疑わしいし少なくとも、デフ請求書が、会社の通常の営業の過程で作成されたものではないことは明らかである。また、デフ請求書の右上隅の請求書番号欄は、空白であり、この点からも、デフ請求書が、会社の通常の営業の過程で作成されたものではないことが強く疑われる。
(3)乙第12号証について
上記のとおり、デフ請求書及び佐々木氏の陳述書(乙14)は、パンフレット等(乙18、「封筒」を含む。)の真正性を立証するために提出されており、仮納品書が偽造であり、デフ請求書が真正なものであることを示すために高橋氏の謝罪文(乙12、以下「本件謝罪文」という。)は、内容自体が以下の点において不合理である。
まず、パンフレット等では「ナチュラル・ピンクベリー」または「ピンクベリー」の英文表記としては、「Natural pink berry」「Pink berry」との表記が用いられており、「pink」と「berry」の間に明らかに一文字空欄がある。
これに対し本件謝罪文では、「Natural Pinkberry」と記載されており、「Pinkberry」を一語として記載している。真実、高橋氏が世界最高というところの「Natural pink berry」又は「ナチュラル・ピンクベリー」というブランド名のヨーグルト(以下「本件ヨーグルト」という。)を販売し、当該ブランドの普及・浸透に心血を注いでいたのであれば、かかる表記の揺れ、すなわちブランドの記截の不統一な使用は極めて不自然である。
また、高橋氏は、平成21年12月1日の時点で、本件ヨーグルトを販売していたと主張するが、JECは平成21年11月30日の株主総会の決議により解散している。デフ請求書の日付は、それぞれ平成21年10月30日(乙15)、平成21年11月30日(乙16)及び平成22年1月31日(乙17)であるところ、乙第17号証にかかる封筒を発注した時点、そして、乙第16号証及び乙第17号証にかかる経費を「本部」に請求した時点では、「本部」は既に解散していたのである。
「本部」がまさに解散しようとしている又は解散しているのに「本部」から独占販売権を取得している本件ヨーグルトの販売を促進すること自体極めて不合理であるのに加え、かかる重大な事実が全く本件謝罪文に現れていないのも極めて不自然である。
以上のような本件謝罪文の内容の不自然さは、高橋氏が実際には本件ヨーグルトを販売していなかったこと、本件商標の使用の事実が存在しなかったことを如実に示すものである。
(4)乙第11号証及び乙第19号証について
被請求人は「本件商標を付した商品(ヨーグルト)を購入者に対して発送したことを示す控え」3通(乙11、以下「本件発送控え」という。)を提出しているが、「本件商標を付した商品」は内容量が5キログラムであるところ(乙3、乙5、乙8及び乙20)、包装容器及び保冷箱を含んだ総重量は5キログラムを超過することとなるから、通常の料金設定では佐川急便で5キロを超過する貨物をクール便で郵送することすなわち、北海道から佐川急便で本件ヨーグルトを発送することはできない。
また、本件発送控えはいずれも、「お問い合せ送り状No」は、一つの荷物に一つ付されている番号であり、同じタイミングには一つしか存在しない。荷物の配送が済み、例えば数ヶ月後に同じ番号が使用されることもあるが、同じ12桁から成る「お問い合せ送り状No」が3回も同一の依頼主に割り当てられることは確率から考えて極めて稀である(甲10)。特に平成22年1月18日付及び2010年2月某日という極めて近接した時期に割振られることは想定し難い。
また、本件商標を付した包装容器(乙19、以下「本件容器」という。)に入れられた本件ヨーグルトが、本件審判請求の登録前三年以内に頒布されたという点について証拠は存在しない。
以上のように、乙第11号証はその信頼性が低く、本件容器(乙19)が頒布されたことを示す証拠とはならない。
(5)偽造又は内容虚偽の認識及びかかる証拠を提出する理由
平成23年9月12日付発送の手続続行通知書にかかる権利の移転前の被請求人であるJECの元代表取締役である川島正子氏は、アメリカ合衆国においてフローズンヨーグルトを販売するスノーラ インコーポレイテッドの創始者であり、同様に、被請求人であり、JECの元取締役及び代表清算人でもある森岡氏はスノーラ インコーポレイテッドの関連会社であり、現在我が国でフローズンヨーグルトを販売する株式会社スノーラ・ジャパンの代表取締役を務めている。
他方、請求人は、本件商標と同一の標章を含む「Pinkberry Inc.」という商号で2005年(平成17年)1月に設立され、以来、「pinkberry」にかかる商標を使用し、これまでに12か国以上でフローズンヨーグルトの販売事業を展開している。すなわち、請求人と被請求人らは、販売するフローズンヨーグルトの販売に関し、競業関係にある。
(6)証拠の原本の確認の必要性
請求人は、口頭審理期日において、乙第3号証、乙第5号証、乙第7号証、乙第8号証、乙第11号証、乙第18号証及び乙第19号証についても、これらの原本が提示されるべきであると考える。
なお、乙第19号証については食品衛生法及び農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に定められた表示がされているはずであるところ、製造業者として「高橋乳業」が記載されているか等についても確認されたい。
(7)口頭審理陳述要領書における被請求人の主張に対する反論
平成23年8月30日付け審理事項通知書において、被請求人に提出を求めている、デフ請求書に対して被請求人が代金を支払ったことの証拠として例示されているのはデフの通帳における入金記録の提出であるところ、被請求人は既にデフの代表者である佐々木氏より陳述書(乙14)作成の協力を得ているのであるから、高橋氏との関係が損なわれたことはかかる証拠を提出し得ない理由とはならない。
また、被請求人は、被請求人の口頭審理陳述要領書3頁29行目ないし34行目において、「審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていること」について審理されるべきであって、やみくもに書類の提出を要求すべきではないように主張している。
しかし、審理は証拠に基づいてなされるものであるところ、かかる証拠の成立の真正も審理の対象となることは当然である。特許庁が提出を求めている書類は証拠の成立の真正を審理するために必要な書類であり、被請求人の主張は失当である。
(8)まとめ
以上のように、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標が、本審判請求の登録日前三年以内に日本国内において使用されていた事実は一切証明されておらず、よって、本件商標の登録は、その不使用を理由とする取消を免れないものである。
4 平成23年10月27日付け上申書
(1)高橋氏が販売している本件ヨーグルトの包装に本件商標が付されていた事実は証明されていないこと
ア 被請求人が提出した証拠は、本件期間に本件ヨーグルト又はその包装が存在したことすら立証するものではないこと
乙第11号証は、本件ヨーグルトを顧客に発送した際の控えであると主張しているが、原本を提示していない。乙第11号証の3枚の控えに記載の、12桁の数字である「お問い合わせ送り状No」が完全に一致していること、及び宅配業者である佐川急便の通常の料金設定では5キログラムを超える荷物をクール便で北海道内に配送することはできなかったことから、乙第11号証は、その原本の存在すら極めて疑わしいものと言わざるを得ない。乙第11号証によって発送された商品と本件ヨーグルトとの同一性について何ら立証していないから、本件の審判請求の登録前3年以内(要証期間内)に本件ヨーグルト又はその包装が存在したことを証明する証拠にはならない。
乙第19号証は、本件ヨーグルトの包装であると主張しているが、実物を提出していない。写真からは容量や材質すら不明であることから、その証明力は極めて小さく、本件期間に本件ヨーグルト又はその包装が存在したことを何ら立証するものではない。
乙第20号証の陳述書も、何ら裏付けもないものであり、その証明力は極めて小さく、本件ヨーグルトの存在を立証するものではない。
乙第25号証ないし乙第30号証は、本件ヨーグルトの「原料の仕入れ」の「取引事実を示す」証拠であると主張しているが、乙第25号証ないし第30号証に記載された製品と、本件ヨーグルトとのつながり、関係は全く示されておらず、これが本件ヨーグルトの原料であるかは全く明らかではない。
イ 存在すべき証拠の不提出
被請求人が本件ヨーグルトを真に顧客に販売及び発送していたのであれば、顧客からかかる販売及び発送にかかる代金の入金にかかる資料が存在し、本件ヨーグルトが真実存在したのであれば、本件ヨーグルトの製造元との間の発注書、納品書、請求書等が存在しているのが通常であると考えられるが、かかる証拠をなんら提出しないどころか、製造元を明示することすらしていない。
被請求人のかかる対応からすると、本件期間に本件ヨーグルトが存在したという主張を信用することはできない。
(2)広告又は取引書類が展示又は頒布された事実も立証されていないこと
ア 被請求人が提出した証拠は広告又は取引書類が展示又は頒布された事実を立証するものではないこと
乙第3号証のパンフレットには、「最上の素材は最高の環境がつくりだす。」という見出しの下、「牛乳は品質が命です。そのためには牛が健康であること。松本牧場では、衛生環境をしっかり整え、・・・」との記載があり、乙第3号証が作成された時期に本件ヨーグルトの原料を「松本牧場」から仕入れていたことが暗示されている。しかしながら、被請求人は、かかる事実について言及すらせず、原料の供給元ないし原料(又はヨーグルト)の通常使用権者への納入経路について、その主張を二転三転させている。
乙第10号証には、撮影日時が記載されているものの、該日時は客観的な裏付けがされておらず、単なる被請求人の主張である可能性が高く、さらにそもそも、かかる撮影日時も本件審判請求登録後の日時であるため、要証期間内にパンフレット等が展示又は頒布されたことを立証するものではない。
乙第20号証は、本件ヨーグルトを購入した顧客の陳述書として提出されているが、いずれも作成日付は平成23年5月であり、作成者の記憶を述べた陳述を内容とするものに過ぎず、客観的な裏づけがされていない。
イ 被請求人が提出した証拠は、本件商標が付された広告又は取引書類が平成21年10月頃から平成22年1月頃までに作成されたことを立証するものではないこと
カラオケボックスの経営主体であるデフは、デフ請求書に記載の同じ電話番号を用いて印刷業又は印刷の仲介業を営んでいることは合理的とは言いがたいことから、デフ請求書が会社の通常の営業の過程で作成されたものでないことが推測される。
デフ請求書が会社の通常の営業の過程で作成されたものでないのであれば、かかる証拠は、本件商標が付された広告又は取引書類が平成21年10月頃から平成22年1月頃までに作成されたことを何ら立証していない。
乙第31号証の領収書については、その金額はデフ請求書の金額と一致しておらず、領収書を交付する原因はデフ請求書の支払いの他にも考えられる。すなわち、乙第31号証がパンフレット等の代金の支払いにかかる領収書であることは立証されておらず、かかる証拠は、本件商標が付された広告又は取引書類が遅くとも平成22年1月末までに存在していたことを何ら立証するものではない。
ウ 存在すべき証拠の不提出
デフ請求書が会社の通常の営業の過程で作成されたものであるとすると、高橋氏よりデフヘ代金が支払われた領収書や通帳の人金記録等が存在するはずである。しかし、被請求人は、デフ請求書に対してデフに代金が支払われた証拠を提出していない。
また、デフ請求書がパンフレット等の印刷にかかる請求書であるとすると、パンフレット等の発注指示書や作成過程の資料が存在するはずであるが、かかる証拠を何ら提出していない。
(3)被請求人提出の平成23年10月13日付け上申書の主張は不合理であること
被請求人は、同上申書において、通知書において提出を求められた証拠を提出し得ない理由について述べ、また、請求人口頭審理陳述要領書の主張に反論しているが、かかる主張は不合理であり、信用性に乏しいと言わざるを得ない。
被請求人は、新たな証拠や既に提出済みの証拠の原本を提出できない理由として、「本件事案に起因して被請求人と高橋氏との関係が悪化している事実があることから、かかる証拠の提示を行うことはできません」と述べている。
しかしながら、被請求人と高橋氏との関係が真に悪化しているかは定かではない。そもそも、乙第11号証は、答弁書と同じタイミングで提出されているものであって、被請求人の主張する高橋氏との関係の悪化に先立ち提出されたものであるから、上記の関係悪化は、必ずしも原本を提出できない理由にならない。
また、デフ請求書及びこれらの請求書に対してデフに代金が支払われた証拠については、デフより入手が可能であるため(実際に、デフより乙第33号証を入手している。)、高橋氏との関係の悪化は、被請求人が、それらの原本を提出しなかったことの理由にならない。
次に、被請求人は、高橋氏との関係について、「いわば“お願いベース”で被請求人が高橋氏に依頼」をしたと主張している。被請求人は、具体的には高橋氏に何を依頼したのかにつき言及していないが、被請求人が高橋氏に宣伝広告費も支払ってまで「お願いベース」で本件ヨーグルトの販売を依頼する目的についても何ら言及はない。ヨーグルトの販売は、被請求人が経営に携わるスノーラの事業とも競業する事業であり、広告宣伝の費用を負担してまで本件ヨーグルトの販売を高橋氏に依頼した理由を見出すことはできない。
(4)被請求人対応が不自然であること
被請求人は、同上申書を提出する段階になって初めて株式会社ピンクベリーより原料を仕入れて本件ヨーグルトを販売していたとの主張を追加した。他方で、本件ヨーグルトの製造元については依然、何ら明言していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、平成22年10月19日付け答弁書(以下「第1答弁」という。)、同23年10月13日付け及び同月27日付け上申書、同年6月17日付け答弁書(以下「第2答弁」という。)、同年9月30日付け口頭審理陳述要領書並びに口頭審理における陳述において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第41号証(ただし、被請求人が偽造した証拠と認めた乙4、乙6及び乙9を除く。)を提出した。
1 第1答弁
本件商標は、商標権者が許諾した通常使用権者により「ヨーグルト」に使用されている。
(1)通常使用権許諾の事実
乙第1号証は、本件商標の商標権者が札幌市内でジャズ喫茶「BOSSA」を運営する高橋氏に対し本件商標に関する通常使用権を許諾していることを示す許諾証書である。本件許諾を受け、通常使用権者である高橋氏は北海道域内において本件商標を指定商品「ヨーグルト」につき使用している。なお高橋氏は札幌市内において35年以上にわたりジャズ喫茶を運営しており、その地の利を生かし、原料である乳牛調達のために被請求人に酪農家を紹介するなど、計画当初から本件商標を用いたフローズンヨーグルト事業に積極的に関与している(乙2)。
(2)通常使用権者における広告宣伝活動の事実
乙第3号証は、本件商標を付したヨーグルトの販促用パンフレットである。その表紙下部に本件商標が明記されている。
乙第5号証は、通常使用権者と経常的に付き合いのある個人及び法人に対して配布されたハガキである。この表面に「平素はナチュラル・ピンクベリー商品のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。限定個数での販売のため購入しづらい状況が続いており、大変ご迷惑おかけしております。…今後ともナチュラル・ピンクベリーをご愛顧頂ければ幸いです。」とあるように、本件商標を付した商品はその繊細な商品特性ゆえ小ロット生産を余儀なくされており、そのため発信地を北海道に限定し、かつ個数も限定にて販売を行っている。
乙第7号証及び乙第8号証は、通常使用権者の店頭にて掲示されている、本件商標を付した商品のポスターの写しである。乙第7号証では「濃密(リッチ)な時を味わうラグジュアリーヨーグルト」との本件商品のコンセプトを商品写真、及び本件商標とともにシンプルかつ直接的に表示することで、需要者に対し広告宣伝を行っている。
また、乙第8号証では、乙第3号証のパンフレットと同様の内容を掲示することにより、BOSSA(通常使用権者の店舗)を訪れた顧客の注目を惹く役割を果たしている。そのポスター下部には本件商標の使用がされている。
なお、乙第10号証は、通常使用権者が運営するジャズ喫茶「BOSSA」の店内の風景を撮影したものである。ここからも明らかなように、飲食料品に関するポスターと一線を画する形で、カウンターやテーブル、レジなど顧客が頻繁に目にする場所にて、パネルにして掲示されている。
乙第11号証に、本件商標を付した商品(ヨーグルト)を購入者に対して発送したことを示す控えの一部を提示する(但しプライバシー保護の関係上、「お届け先」に記載の購入者欄についてはマスキングを施している。)。平成21年10月15日、平成22年1月18日、平成22年2月2日に運送業者が受領したことを示す受領印が押印されていることが確認できる。「品名・荷姿」の欄に「ヨーグルト保冷箱入(1ケ口)」と明記されており、送付したものが冷蔵状態であり、乙第3号証に示すとおり「保冷パッケージ発送」を行っていることが見て取れる。この「お客様控」には、本件商標の記載はない。しかし、通常使用権者は既述のとおりジャズ喫茶の経営を主たる業務として行っており、ヨーグルトの販売を行っているのは専ら商標権者との人的な繋がりに基づくものであることに鑑みれば、これが本件商標を付したヨーグルト以外のヨーグルトであるとすることはむしろ不自然であり、乙第2号証から乙第8号証に見て取れる広告宣伝を行った本件商標を付したヨーグルトを販売している、とみるのが常識的かつ妥当である。そしてそれは実際そのとおりである。
(3)結語
以上のとおり、本件商標は、本審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者により、その請求に係る指定商品中少なくとも第29類「ヨーグルト」について使用がされていたものであり、商標法第50条第1項に基づく請求人の主張は失当である。
2 第2答弁
(1)乙第3号証ないし乙第8号証の真正性に関する指摘について
高橋氏は、乙第14号証にもあるように、本件商標を付した商品のパンフレット(乙3)、ポスター(乙7、乙8)、ハガキ(乙5)及び封筒(乙18)につき、デフに発注、納品を受け使用をしていたのである。
乙第14号証ないし乙第17号証により、各パンフレット等が現実に平成21年11月から平成22年1月にかけ製作され高橋氏の店舗に納品されたことは明らかである。
(2)ヨーグルト販売の事実について
乙第19号証は、被請求人がヨーグルトを販売するに際して使用している包装容器の写真である。当然ながらこれらの容器はワンウェイであり一度売ってしまえば顧客が処分してしまうものであるため、当該容器についての過去の写真を提示することはできない。
しかし、乙第20号証にも示すように、実際本件商標の通常使用権者である高橋氏から本件商標を容器に付したヨーグルトを購入した複数のお客様から陳述書を頂いているが、これらの陳述書には、実際に商品を購入し喫食した事実、そして本件商標が付されたダイレクトメール(以下「DM」という。)やパンフレットを手渡された事実が示されている。これらの陳述と既に提示した各証拠とを照らし合わせれば、高橋氏が現実に本件商標を付したヨーグルトを販売していたことは明らかである。
(3)被請求人解散の指摘について
ア JECは、平成21年11月30日付けで解散決議がなされ登記がされている状態、換言すれば清算結了登記がなされていない状態においては、被請求人は依然存続しており、被請求人による使用許諾は解散決議前になされており、かつ、本件商標は有効に存続している以上、その通常使用権許諾も有効に存続している。
イ 本件商標は、JECにおいて解散決議がなされた平成21年11月30日より前の平成21年11月27日付にて、同社から同社役員である森岡氏に譲渡がなされているとのことである。効力発生要件に関する同社の不知により移転登録申請が現時点でなされていないが、譲受人である森岡氏は近く当該手続を行う予定である。これにより被請求人の地位は法人であるJECから個人である森岡氏に承継されることとなる。なお、森岡氏は本件ヨーグルト事業を個人にて継続する意思を有しており、事業計画に変更はなく、引き続き高橋氏に対する通常使用権を許諾する意思を有している。
(4)本件商標と使用標章との同一性に関する指摘について
ア 乙第3号証においては「Natural」と「pink berry」とは、2行に分かれ、かつフォントも別異に表示されている。その下に小さく書されたカタカナでも「ナチュラル」と「ピンクベリー」との間に「・」(中黒)が挟まれており、両者は別個独立のものとして把握される一方、「pink berry」部分のみが独特のフォントで大きく書されていることにより、当該部分が単体で一体的にのみ把握される。
イ 乙第5号証においても同様に、カタカナ表記において「ナチュラル」と「ピンクベリー」とは「・」(中黒)で分断されており、このうち「ナチュラル」部分は指定商品との関係にあっては“自然の”という、品質表示的な意味合いを持って理解される顕著性の極めて低い語であることから、「ピンクベリー」部分が識別標識として認識され把握される。
ウ 乙第7号証、乙第8号証も、乙第3号証と同一の構成を有するものであり、「pink berry」部分が単独で看取されるべき構成を有している。
エ 乙第18号証の封筒においては、「Natural」と「pink berry」とが一列に書されているが、明らかに「pink berry」の構成が特殊なロゴ化しか態様にて大きく表示されており、当該部分をもって商標として認識される外観を呈している。
オ 以上のとおり、本件商標と使用標章とは、同一性を有するものであって、これらの使用標章における使用は、商標法第2条第3項第8号の商標の使用に該当する。
3 口頭審理(口頭審理陳述要領書)における陳述
(1)乙第4号証、乙第6号証及び乙第9号証について
被請求人は、乙第4号証、乙第6号証及び乙第9号証を偽造したことを認め、撤回した。
(2)乙第2号証「陳述書」について
乙第2号証において言及していた「町村牧場」からは、最終的にはコスト諸般の理由から原料を仕入れるには至らなかった。実際には、被請求人が関係する乳製品の製造販売業者「株式会社スノーラ・ジャパン」(乙38)が原料メーカーである「高橋乳業」から仕入れ、その一部を「株式会社スノーラ・ジャパン」から仕入れる形となっている。
(3)乙第11号証、乙第15号証ないし乙第17号証、乙第20号証について
通知書において、上記各取引の裏付けとなる取引書面或いは入金記録の提出が求められているが、これらはいずれも被請求人による取引ではなく、通常使用権者である高橋久氏によるものであり、現時点において提示することができない。
しかし、こうした書面の提示に至るまでもなく、以下のとおり本件商標の使用をしている。
乙第14号証において販促物を製作したデフが販促物の受注をし、納品、対価受け取りを行った旨陳述をしており、第三者により本件商標の使用をした販促物が要証時期に作成されたことが示されている。
また、乙第20号証中「仲井」の陳述書において、「平成21年12月の年末ごろ、BOSSAの店に行った際、Natural pink berryのヨーグルトのパンフレットとポスター等々を見ました。」とあり、第三者の陳述として、本件商標の使用をした販促物(乙8)が要証時期に通常使用権者によって展示されていたことが示されている。
或いは、同じく乙第20号証中「成田B」の陳述書において、「私は友人と平成22年7月のゼップサッポロで行われたシャカタクのコンサートに行きましたら、会場入口でpinkberryヨーグルトのパンフレットを手渡され、BOSSAが販売しているのを知りました。」とあり、やはり第三者の陳述として、本件商標の使用をした販促物(乙3)が要証時期に通常使用権者によって頒布されていたことが示されている。
これらからは、通常使用権者が、本件商標を付した販促物を外注により作成し、これを用いて広告を展示しまた頒布していた事実、つまり商標法第2条第3項第8号の商標の使用の事実が示されているといえる。
4 平成23年10月13日付け上申書における主張
(1)乙第25号証ないし乙第30号証は、その取引事実を示す請求書である。被請求人が関係する乳製品の製造販売業者が、乳製品の原料メーカーから仕入れ、これを関連する株式会社ピンクベリー(乙37)に販売している。そして、株式会社ピンクベリーから高橋氏に販売する形をとっている。
なお、大元の原料メーカー(先の口頭審理陳述要領書では「高橋乳業」と仮に記載した)からの請求書詳細については、金額も含め被請求人の営業秘密の範疇であり、提出できない。
また、デフ請求書の請求に対する支払いは高橋氏が行っているものであり、先にも述べたとおり本件事案に起因して被請求人と高橋氏との関係が悪化している事実があることから、かかる証拠の提示を行うことはできない。
(2)請求人「口頭審理陳述要領書」に対する反論
請求人は、「仮納品書を提示する等して、費用を請求して受領していたのだとすれば、その送金記録等が残っているはずであるが、そのような証拠は一切提出されていない」などと述べている。
この点、乙第31号証に提示するように、被請求人は3回に分けて高橋氏に対して現金で支払っている。
更に請求人は、「商標権者が宣伝広告費までをも負担することは異例」、「裏切られたにも拘わらず、被請求人が高橋氏に対し、通常使用権の許諾の取消しその他、高橋氏に対する責任追及をした形跡はない」から「弁明自体が虚偽のものであったと考えるのが自然」などと主張している。
しかし、ライセンスには当事者間の関係においてさまざまな事情があることは自明であるところ、本件は両者が芸能プロモーターをも営むなど長年来の知己であるという人間関係に基づいた、いわば“お願いベース”で被請求人が高橋氏に依頼をした事案であり、責任追及を行う立場になどなかったものである。請求人の主張は独善的かつ視野狭窄に陥っているものと言わざるを得ない。
(3)デフの所在について
請求人は、「デフの電話番号、FAX番号はつながらず、同電話番号について調査したところ『K-factory』なるカラオケボックスのものであったことが判明した」とし、「デフが、本件所在地で実体のある形で印刷業を営んでいたこと自体疑わしい」などと述べている。
しかし、乙第32号証に示すように、デフは、「札幌市中央区南7条西四丁目422-35アバンティビル7F」を本店所在地として現に存在していた。そして、デフは、広告代理店業とともに飲食店の経営(カラオケボックスも含む)を行っていたところ、請求人が言うところの「K-factory」は、デフが運営していた。
乙第33号証は、クーポンマガジン「HotPepper」に記事掲載をデフが依頼した際の、株式会社リクルートからの請求書であり、その宛名欄に「デフ カラオケ K-factory」とあるように、同地で営業を行っていた主体は、デフそのものである。
(4)高橋氏の謝罪文は内容からして不合理である、との主張について
請求人は、高橋氏の謝罪文中の本件商標に関する表記にブレがあることや、元被請求人であるJECの解散のタイミングからして、独占販売権を得ることが不自然などと主張しているが、こうしたブレは、商品への表示であれば別論、一個人の文章においては通常有りえる範囲内と考えるのが自然である。また法人の形態如何にかかわらず、被請求人と高橋氏との人的な関係に基づいて本ライセンスはなされているのであるから、上記主張は失当というほかはない。
(5)佐川急便の料金及び伝票に関する主張について
請求人は、「5キログラムを超過する貨物」や「クール便」を北海道から950円で郵送できる地域は存在しない、などと述べている。
しかし、佐川急便には法人向けサービスとして包括的な契約により料金表より割り引かれた料金が適用されうることは広く知られているところである。この点は請求人自身が提出している「電話聴取報告書」(甲10)にも「各種の割引料金が契約者毎に設定されている場合も」ある旨述べられているにもかかわらず意図的に言及しておらず、上記主張は実態に即さない虚偽である。
また、「お問い合わせ送り状No」が3回も同一の依頼主に割り当てられることは稀、などと主張している。
この点、あたかも当該番号が無作為のものであることが前提に述べているが、番号帯の意味(例えばどの営業所で発行された伝票か)などは何ら説明がなされておらず、稀とする根拠がない。
このように、被請求人は、小規模でこそあれ本件商標を付した商品の企画製造販売を真摯に行ってきた者であることは、現に購入した需要者が複数名陳述している(乙20)ことからも明らかである。
5 平成23年10月27日付け上申書における主張
(1)乙第34号証は、「陳述書」(乙20)の原本であり、各々直筆で記載され、署名押印がなされている。
(2)乙第35号証は、乙第20号証のうち「成田B」氏の「陳述書」にて言及がなされている「平成22年7月のゼップサッポロで行われたシャカタクのコンサート」のチラシであり、乙第36号証は、そのチケット見本で、陳述書記載のイベントが開催されたことが見てとれる。このイベントのプロモーションを執り行っていたのがBOSSAであり、高橋氏はその会場内で本件商標を付したヨーグルトのパンフレットを手渡しされたのである。
(3)「株式会社ピンクベリー」「株式会社スノーラ・ジャパン」との被請求人との関係を証明する資料について
乙第37号証は、「株式会社ピンクベリー」の履歴事項全部証明書であり、乙第38号証は、「株式会社スノーラ・ジャパン」の履歴事項全部証明書であるが、これからも明らかなように、被請求人は上記両法人の代表取締役である。被請求人は、関係会社が保有する原料調達経路を活用することで良質な原料を安価で購入する選択を行ったのである。
(4)その他
デフ請求書の原本は、乙第39号証及び乙第41号証として提出する。
以上により、要証期間内において、被請求人がヨーグルトの原料を調達した事実、本件商標を付したパンフレット等を外注した事実、ライブイベント会場でそのパンフレットを頒布した事実から、大々的な販売実績とはいえないまでも、購買に結びついた事実は明白である。
少なくとも、本件商標を付したパンフレットを頒布した事実は、商標法第2条第3項第8号の「商品・・・に関する広告・・・に標章を付して・・・頒布・・・する行為」に該当する。

第4 当審の判断
1 事実認定
当事者の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)通常使用権の許諾及び高橋氏に係る証拠ついて
ア 乙第1号証は、2009年9月1日付けの「通常使用権許諾証書」と題する書面であり、同書面には、本件商標について、「甲は乙に対し、下記の条件で貴社に上記登録商標に関する通常使用権を許諾することを証します。」と記載され、通常使用権の範囲として、地域「日本国内全域」、期間「2009年9月1日から2017年8月10日まで」、内容「全指定商品」及び対価「別途覚書にて定める。」と記載され、当事者として、甲(商標権者)JEC代表取締役川島正子(代表者印)及び代表者森岡(個人印)は乙(通常使用権者)札幌市中央区南3条西4丁目シルバービル2F(BOSSA)高橋久(個人印)と表示されている。
イ 乙第2号証は、札幌市中央区南3条西4丁目シルバービル2階 有限会社マイルストーンの代表者である高橋氏作成の平成20年8月18日付け陳述書であり、有限会社マイルストーンは同所において1971年以来ジャズ喫茶「BOSSA」を運営していること、2004年ころ被請求人の森岡氏からフローズンヨーグルトの販売を始めたいとの相談を受け、江別の「町村牧場」を紹介したこと、などが記載されている。
(2)パンフレット等に係る証拠について
ア 乙第3号証のパンフレットには、「Natural」「pink berry」の文字の併記、「ナチュラル・ピンクベリー」の文字、商品「ヨーグルト」、「札幌市中央区南3条西4丁目シルバービル2F BOSSA」などの表示がなされ、裏面には、「最上の素材は最高の環境がつくりだす。」として「松本牧場」の紹介や「美しいカラダに必要な『乳酸菌』へのこだわり」などが記載されているほか、牧場の風景やヨーグルトの写真が掲載されている。
イ 乙第5号証は、表面に「BOSSAメンバーズのみな様へ」との見出しを有する作成日不明の私製ハガキであり、表面には前記見出しのほか挨拶文の記載、「札幌市中央区南3条西4丁目シルバービル2階 ナチュラル・ピンクベリー・BOSSA」の表示がなされ、裏面には「Natural pink berry北海道地区限定発売/こだわりの製法のため数量限定での販売となります/販売価格5kg 5,250円 送料別途/保冷パッケージ発送」「札幌市中央区南3条西4丁目シルバービル2F BOSSA」等の記載がある。
ウ 乙第7号証は、別掲(1)のとおり、「Natural」「pink berry」の文字の併記(以下「使用標章1」という。)、「ナチュラル・ピンクベリー」の文字、また、乙第8号証は、「Natural」「pink berry」の文字の併記、及び別掲(2)のとおり、「ナチュラル・ピンクベリー」の文字(以下「使用標章2」という。)、商品「ヨーグルト」、「札幌市中央区南3条西4丁目シルバービル2階」又は「札幌市中央区南3条西4丁目シルバービル2F BOSSA」、「販売価格5kg 5,250円 送料別途/保冷パッケージ発送」(乙7)などの表示がなされているほか、ヨーグルトの写真が掲載されている。
なお、乙第7号証ないし乙第8号証は、ポスターの写しであるが、口頭審理で乙第7号証及び乙第8号証の原本を確認した。
エ 乙第18号証は、青色で長形3号(235ミリ×120ミリ)より大きいサイズの封筒であるが、表には郵便号記入枠、切手貼付枠が表示されている他に、下方にはゴチック体の「Natural」の文字及び筆記体風の「pink berry」の文字、「ナチュラル・ピンクベリー・BOSSA」「北海道札幌市中央区南3条西4丁目 シルバービル2階 BOSSA」等が記載されている。
また、右下の隅には、日付と数量と思しき(2010.01.22.5,000)が記載されている。
(3)デフ請求書に係る証拠について
ア 乙第15号証は、デフが「ナチュラル・ピンクベリーBOSSA高橋」宛に作成した平成21年10月30日付け請求書であるところ、月日欄には「H21/10/29」、摘要欄には「Pinkberryパンフレット」、単価欄には「21.50」、数量欄には「1,000」及び金額欄には「215,000」との記載及び欄外には振込先である「北海信用金庫・札幌支店普通預金/口座名」等の記載がある。
なお、被請求人は、乙第15号証の原本を乙第39号証として提出した。
イ 乙第16号証は、デフが「ナチュラル・ピンクベリーBOSSA高橋」宛に作成した平成21年11月30日付け請求書であるところ、月日欄「H21/11/6」、摘要欄「Pinkberryスタンド付ポスター2種」、単価欄「4,050.00」、数量欄「40」及び金額欄「162,000」並びに日付欄「H21/11/16」、摘要欄「DMハガキ」、単価欄「13.36」、数量欄「5,500」及び金額欄「73,480」との記載及び欄外には振込先である「北海信用金庫・札幌支店普通預金/口座名」等の記載がある。
なお、被請求人は、乙第16号証の原本を乙第40号証として提出した。
ウ 乙第17号証は、デフが「ナチュラル・ピンクベリーBOSSA高橋」宛に作成した平成22年1月31日付け請求書であるところ、月日欄には「H22/11/22」、摘要欄には「Pinkberry封筒」、単価欄には「7.30」、数量欄には「5,000」及び金額欄には「36,500」との記載及び欄外には振込先である「北海信用金庫・札幌支店普通預金/口座名」等の記載がある。
なお、被請求人は、乙第17号証の原本を乙第41号証として提出した。
エ 乙第31号証は、高橋氏が作成した株式会社ピンクベリー宛の平成21年12月21日付け、同22年2月9日付け及び同年3月26日付け領収書で、高橋氏の押印、印紙には割り印がされ、合計金額を582,000円とするものである。
オ 甲第6号証ないし甲第8号証によれば、デフの会社所在地にデフの「カラオケ K-factory」と称する飲食店の記載が認められる。
(4)店内の風景写真について
乙第10号証は、平成22年10月14日に森岡氏が「札幌市中央区南3条西4丁目シルバービル2階 BAR BOSSA前」を撮影したとする写真5葉(写し)であり、各写真は室内の風景写真で、乙第3号証、乙第7号証又は乙第8号証のパンフレットやポスターが置かれているのが写し出されているが、要証期間内のものではない。
(5)「ヨーグルト」の発送に係る証拠について
ア 乙第11号証は、受領印の日付が平成21年10月15日、同22年1月18日及び同年2月2日の佐川急便の元払い送り状控であり、いずれも依頼主欄「札幌市中央区南3条西4丁目/シルバービル2F/BOSSA」、運賃欄「950」及び品名・荷姿欄「ヨーグルト/保冷箱入り(1ケ口)」等の記載があるが、宛先もマスキングされ、本件商標の記載もない。
イ 甲第9号証の佐川急便株式会社のウェブサイトの飛脚宅配便の料金表(写し)によれば、10kgの荷物を道内から道内の依頼者へ発送する場合、1,260円かかることが記載されている。
ウ 甲第10号証の「電話聴取報告書」によれば、宅急便の発送控えの「お問い合わせ送り状No」は、同じタイミングには一つしか存在しないから、同一の依頼主に3回も同一の番号を割り当てられることが極めて希である旨記載されている。
(6)包装容器に係る証拠について
乙第19号証は、包装容器の写真の写しであるが、白色の包装容器の正面には、赤色のゴチック体で「Natural」の文字と筆記体風の「pink berry」の文字が2段で表示されている。
(7)顧客による陳述について
乙第20号証は、通常使用権者の顧客4人「成田A」「仲井」「吉田」及び「成田B」の陳述書であり、その陳述書中で、「成田A」は、本件ヨーグルトを購入した旨陳述している。「仲井」は、平成21年12月の年末に、BOSSA店内で本件ヨーグルトのパンフレット及びポスターを見たこと、そして、本件ヨーグルトを注文し、後日クール便で受け取った旨陳述している。「吉田」は、平成21年12月前半ころに、本件ヨーグルトのDMを受け取ったことやBOSSA店内で本件ヨーグルトのパンフレット及びポスターを見たこと、そして本件ヨーグルトを注文し、後日宅配便で受け取った旨陳述している。「成田B」は、平成22年7月のシャカタクのコンサート会場入口で、本件ヨーグルトのパンフレットを受け取ったこと、そして、後日本件ヨーグルトを食したことや注文した旨陳述している。
なお、被請求人は、乙第20号証の原本を乙第34号証として提出した。
そして、被請求人は、乙第20号証の「成田B」に係る証拠として、平成22年7月のゼップサッポロで開催されたシャカタクのコンサートのチラシの原物及びそのシャカタクのコンサートのチケットの見本をそれぞれ乙第35号証及び乙第36号証として提出した。
(8)「ヨーグルト」の原料に係る取引書類等について
ア 乙第25号証及び乙第26号証は、原料製造元が作成した2009年11月分・12月分のスノーラ京都店宛の「無脂肪乳よーぐると」等の請求書であるが、作成者はマスキングされている。
なお、被請求人は、乙第25号証及び乙第26号証の原本を提出していないが、口頭審理期日において合議体が原本を確認した。
イ 乙第27号証及び乙第28号証は、株式会社スノーラ・ジャパンが作成した株式会社ピンクベリー宛の平成21年11月30日付け及び同年12月31日付け宛のヨーグルト代金の請求書と認められる。
ウ 乙第29号証及び乙第30号証は、株式会社ピンクベリーが作成したナチュラルピンクベリーBOSSA宛の平成21年11月30日付け及び同年12月31日付け低温殺菌無脂肪ヨーグルト代金の請求書と認められる。
エ 乙第37号証及び乙第38号証は、平成21年1月25日会社設立の株式会社ピンクベリー及び株式会社スノーラ・ジャパンの履歴事項全部証明書であるが、会社設立の目的には「ヨーグルト製品の製造」、役員に関する事項には、森岡氏が取締役であることが記載されている。
(9)その他
乙第33号証は、株式会社リクルートが作成したデフ宛の2011年3月29日付け「ホットペッパー」(広告)掲載代金の「自動引落のご明細書」写しであるが、そこには引落額「¥162,750」、摘要「ホットペーパー 札幌版 2011 4月号(3/31発行)」等の記載がある。
2 前記1で認定した事実及び当事者の主張によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
(1)本件商標の使用者
乙第1号証によれば、JECの代表取締役川島正子氏、森岡氏がJEC解散前である平成21(2009)年9月1日に札幌市中央区南3条西4丁目在の高橋氏に本件商標をヨーグルトを含む本件指定商品全てに使用することを内容とする通常使用権を与えたものと認められる。
(2)本件商標と使用標章について
本件商標は、「pinkberry」の文字を表示してなるところ、使用標章1は、「Natural」と「pink berry」からなるところ、両語は書体を異にし、2段に分けて表示されていることから、「Natural」と「pink berry」に分離して看取される。また、使用標章2は、「ナチュラル・ピンクベリー」からなるところ、その中間に「・」(中黒)を有することから、外観上「ナチュラル」と「ピンクベリー」に分離して看取される。
してみれば、本件商標と使用標章1とは、「pink berry」の文字綴りを同じくし、本件商標と使用標章2とは、「ピンクベリー」の称呼及び「ピンク色をしたベリー」の観念を同じくすることから、使用標章は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。
よって、乙第7、8、18、19号証で使用されている「pinkberry」の文字も同様の理由で本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。
しかしながら、被請求人は、以下のとおり、本件商標の使用を立証していない。
(3)本件商標の使用
ア 乙第3号証のパンフレット、乙第5号証のDMハガキ、乙第7号証及び乙第8号証のポスターによれば、ヨーグルトの宣伝広告に使用標章1ないし使用標章2が表示されていることが認められるが、被請求人は、パンフレット等が頒布されたことを証明していないから、これらの証拠のみによっては、要証期間内に本件商標の使用を証明するものとはいえない。
イ 乙第11号証の本件発送控えは、佐川急便株式会社のものであるが本件商標の記載もなく、送付先欄がマスキングされ、また、被請求人はその原本を提出していないから、購入者を確認することもできない。
さらに、被請求人は、本件ヨーグルトが購入者に送付されたことを裏付ける購入者からの入金が確認できる取引書類も提出していない。
その上、本件発送控えに記載の受領印の日付が3件とも相違するにもかかわらず、「お問い合わせ送り状No」が同一であること、送料については、950円と記載されているところ、請求人の主張及び甲第10号証によれば、本件発送控えに記載の「お問い合わせ送り状No」の同じものが、3回も同一の依頼主に割り当てられることは希なこと、また、甲第9号証によれば、本件の発送荷物の重量は、ヨーグルト5kgとその保冷剤等を含めると5kgを越えることから、10kgの荷物として扱われることが推認される。
してみれば、本件発送控えに記載された荷物を道内から道内へ発送する場合、1,260円の料金がかかることが認められるから、送料950円が記載された乙第11号証をにわかに信用することはできない。
これに対して、被請求人は「お問い合わせ送り状No」が同一であることについて、購入者が同一人であるから同一である旨主張し、また、被請求人による送料が通常料金より安価であることについては、被請求人の送料が割引になっている旨主張するが、これらの主張を裏付ける証拠の提出はない。
そうとすれば、乙第11号証によっては、被請求人が本件ヨーグルトを販売したことを証明する証拠とはいえない。
ウ 乙第10号証の店内及び店外の写真(5葉)写しは、本件審判請求の登録がされた平成22年9月1日より後の同年10月14日の撮影日であるから、要証期間内に本件商標の使用を証明するものではない。
エ 乙第15号証ないし乙第17号証の請求書は、デフが作成したパンフレット、ポスター、封筒等の代金を高橋氏宛てに請求したものであるが、請求書番号欄には番号の記載がなく、通常の営業の過程で作成されたものとは認めがたいものである。
また、請求人がこれらの請求書が偽造されたものであると主張して、証拠として甲第6号証ないし甲第8号証を提出しているが、これらの証拠によれば、デフが該請求書を作成した時点において、デフは、同社の所在地において「カラオケ K-factory」と称する飲食店を営業していたことが認められる。
これに対して、被請求人は、デフが同社の所在地で「カラオケ K-factory」と称する飲食店を経営していたことを自認しているところでもある(乙33)。
そうとすれば、乙第32号証のデフの「履歴事項全部証明書」に業務として、広告宣伝の情報媒体の企画、制作及び広告代理店業の記載があるとしても、デフは、請求書に記載の同一住所(札幌市中央区南7条西4丁目アバンティビル7F)において、「K-factory」という飲食店を営業していたこと(乙33)から、カラオケ飲食店において、印刷業を営業していたとするのは不自然である。
また、高橋氏が代金を支払ったことを裏付ける取引書類を提出していないこと等から、デフが「パンフレット」(乙3)、「DMハガキ」(乙5)、「ポスター」(乙7、乙8)を請求書に記載の相当数を制作したものとはにわかに認めることができない。
オ 乙第18号証の封筒には、「Natural」、「pink berry」の文字が表示されているが、被請求人はこれを使用したことを証明していない。
カ 乙第19号証の包装容器の写真には、「名称」、「原材料名」、「内容量」、「製造業者等の氏名または名称及び住所」の表示等もなく、また、その原物の提出もないから、本件商標の使用を証明する証拠として採用できない。
キ 乙第20号証の「成田A」「仲井」及び「吉田」の陳述書によれば、「成田A」、「仲井」及び「吉田」は、本件ヨーグルトに係るパフレット等を店内で見たことや本件ヨーグルトを購入したこと等を陳述しているが、陳述を裏付ける具体的な証拠を提出していないから、被請求人がパンフレット等を顧客に頒布したこと及び本件ヨーグルトを販売したことを証明していない。
また、乙第20号証の「成田B」の陳述書によれば、「成田B」は、平成22年7月のシャカタクのコンサート会場で本件ヨーグルトに係るパフレットを受け取ったこと、そして、その後本件ヨーグルトを注文し、食したこと等を陳述しているが、被請求人は、「成田B」が本件ヨーグルトを購入したことについては、裏付ける具体的な証拠を提出していないから、本件ヨーグルトを販売したことを証明していない。
さらに、被請求人は、「成田B」の本件ヨーグルトに係るパンフレットをコンサート会場で受け取ったこと旨の陳述を裏付ける証拠として、乙第35号証のチケット見本を提出しているが、これによって、平成22年7月にシャカタクのコンサートが開催されたことを証明しているにすぎず、「成田B」がこのコンサート会場にいたことを証明するものではない。
してみれば、乙第35号証は、「成田B」がそのコンサート会場でパンフレット(乙3)を受け取ったことを証明するものとはいえず、また、被請求人は、「成田B」が受け取ったするパンフレットを提出していないから、パンフレットが実際にコンサート会場で頒布されたことを証明していない。
ク 乙第25号証及び乙第26号証の原料仕入れ先の請求書によれば、スノーラ京都店(株式会社スノーラ・ジャパンの支店)が原料メーカーから「生乳仕立て 無脂肪乳」ないし「無脂肪乳よーぐると」を仕入れたこと、また、乙第27号証及び乙第28号証の請求書によれば、株式会社ピンクベリーがスノーラ京都店(株式会社スノーラ・ジャパンの支店)から「ヨーグルト」を仕入れたこと、さらに、乙第29号証及び乙第30号証の請求書によれば、高橋氏が株式会社ピンクベリーから「低温殺菌無脂肪ヨーグルト」を購入したことが推認される。
しかしながら、乙第25号証及び乙第26号証の請求書は、ヨーグルト原料製造販売メーカーが作成したものであるが、請求者の住所及び名称はマスキングされており、この点について、被請求人は、ヨーグルト原料製造販売メーカー名は営業秘密であるから公表できない旨主張しているので、当合議体が口頭審理で確認したところ、ヨーグルト製造メーカーは、陳述書(乙2)に記載の町村牧場でもなく、パンフレット(乙3)に記載の「松本牧場」でもないことを確認しえた。
してみれば、乙第25号証ないし乙第26号証によっては、原料製造販売メーカーがパンフレット等(乙3)に記載の「松本牧場」及び陳述書(乙2)に記載の「町村牧場」とも一致しないから、不自然なものといわざるを得ない。
また、被請求人は、コスト諸般の理由から株式会社スノーラ・ジャパンが仕入れたヨーグルトを使用している旨の主張しているが、本件ヨーグルトは道内で限定販売している商品であることからすれば、原材料等の商品が京都所在の株式会社スノーラ・ジャパンから東京所在の株式会社ピンクベリーを経て北海道の高橋氏へ送付される取引は、不自然なものといわざるをえない。
そうとすると、これらの証拠によっては、本件ヨーグルトの原料となるヨーグルトに係る取引には、疑問があるといわざるを得ない。
ケ 乙第31号証の領収書によれば、高橋氏は、パンフレット等の作成代金として582,000円を株式会社ピンクベリーから受領したことが推認される。また、被請求人は、口頭審理で、高橋氏が偽造した仮納品書に基づき請求した金額を含め代金を支払った旨陳述している。
ところで、平成23年6月17日付け答弁書によれば、被請求人は「JECからパンフレット等の作成費用を支給した。」旨及び「JECは、清算結了登記がなされていない状態においては、被請求人は依然存続している。」旨主張している。
しかしながら、乙第31号証によれば、本来JECが支払うべきパンフレット等の代金を株式会社ピンクベリーが支払ったこととされるから、JECが解散後も存続しているから旨の主張とも矛盾すること、また、高橋氏がデフに代金を支払ったことを証明していないこと等から、乙第31号証の領収書が「パンフレット」(乙3)、「DMハガキ」(乙5)、「ポスター」(乙7、乙8)の代金に係るものであるとにわかに信用することはできない。
コ 小括
以上のとおり、被請求人は、通常使用権者が使用標章を付したパンフレット等を頒布したこと、使用標章を付した本件ヨーグルトを譲渡したことを証明していない。
(4)以上のとおり、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者がその請求に係る指定商品中第29類「ヨーグルト」に使用している事実は、本件全証拠によってもこれを認めることはできない。
3 結論
したがって、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定商品のいずれかに本件商標を使用していることを被請求人が証明したとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品について使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)使用標章1(なお、色彩等については乙第7号証参照)


(2)使用標章2(なお、色彩等については乙第8号証参照)


審理終結日 2011-12-08 
結審通知日 2011-12-12 
審決日 2012-01-24 
出願番号 商願2006-75844(T2006-75844) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y293043)
最終処分 成立  
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2007-08-10 
登録番号 商標登録第5069185号(T5069185) 
商標の称呼 ピンクベリー、ベリー 
復代理人 前田 千尋 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 城山 康文 
代理人 北口 貴大 
代理人 下坂 スミ子 
代理人 中山 俊彦 

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