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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 X07 審判 全部申立て 登録を維持 X07 |
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管理番号 | 1248200 |
異議申立番号 | 異議2011-900267 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2011-07-29 |
確定日 | 2011-12-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5407738号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5407738号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5407738号商標(以下「本件商標」という。)は、「クリスタルダイヤコート」の片仮名を標準文字で表してなり、平成22年10月22日に登録出願、第7類「金属加工機械器具,動力付き手持工具,切削工具,超硬工具,金属用金型」を指定商品として、同23年3月15日に登録査定、同年4月22日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立の理由 登録異議申立人三社(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第24号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)引用商標 申立人の引用する登録第4253797号商標(以下「引用商標」という。)は、「クリスタル」の片仮名を横書きしてなり、平成7年2月8に登録出願、第7類「金属加工機械器具」を指定商品として、同11年3月19日に設定登録、その後、同21年9月1日に商標権存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。 (2)理由の要旨 ア 商標法第4条第1項第11号について (ア)「ダイヤコート」の識別力について 本件商標が使用される商品の主たる需要者は、金属加工に用いられる加工機械器具及び工具、ならびに塑性加工に用いられる金属用金型について、十分に知識を有する専門家であり、これらの者は、工具の材質、硬度、表面処理等について深い知識を有している。 そして、超硬工具を含む切削工具の技術分野においては、表面硬度を付与するために刃部の材料の表面に被覆材を密着させた工具が、一般的にコーティング工具、被覆工具、コーテッド工具などと呼ばれることは、需要者にとって周知の技術である(甲3ないし5)。 また、被覆材としてダイヤモンドでコーティングされたドリル・フライス・リーマなどが、コーティング工具の具体例として存在することもまた、需要者にとって周知の事実である(甲3)。 そして、ダイヤモンドでコーティングされた切削工具は、そのカタログに「ダイヤコート」と表示して流通経路に置かれているものが、数多く存在している(甲7ないし10)ことから、「ダイヤコート」の文字は、「ダイヤモンドでコーティングされた」ものを示す商品の品質表示であって、当該部分に自他商品の識別力は認められない。 さらに、工具のみならず金属用金型の需要者に対しても「ダイヤコート」は「ダイヤモンドでコーティングされた」という品質を想起させるため、格別の識別力を有さない。 (イ) 両商標における称呼の比較 本件商標の「ダイヤコート」の部分は、特段の識別力を有しないことから、本件商標からは「クリスタル」の称呼が生じ、引用商標からも「クリスタル」の称呼を生ずる。 してみれば、両商標は、「クリスタル」の称呼を共通にする類似のものであり、かつ、互いの指定商品も同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 イ 商標法第4条第1項第15号の該当性について (ア)引用商標の周知性 引用商標は、申立人の一人である菱高精機株式会社により、1986年頃から切削工具及び超硬工具についての使用が開始され、遅くとも1993年頃からは、切削工具及び超硬工具に対して継続的に使用された(甲11ないし24)結果、引用商標は申立人の商標として、また金属加工機械器具、切削工具及び超硬工具について使用される商標として、広く一般に知られている。 なお、引用商標の商標権者は申立人の一人である菱高商事株式会社であるが、菱高精機株式会社に対してその使用を許諾している。 (イ)出所の混同について 本件商標は「クリスタルダイヤコート」の片仮名よりなり、引用商標「クリスタル」を一部に含んでいる。そして本件商標の指定商品は、引用商標が使用されている商品と同一又は類似である。 そのため、本件商標がその指定商品について使用された場合、商品の出所について混同を生じるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 ウ むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号の該当性について ア 本件商標について 本件商標は、「クリスタルダイヤコート」の片仮名を標準文字で表してなるところ、各文字は同じ書体、同じ大きさ及び同じ間隔でまとまりよく一体的に表現されていること、該文字より生ずる称呼も無理なく称呼し得るものであること、「クリスタル」の文字は「水晶、結晶」の意味を有する外来語として知られているが、同部分のみが本件指定商品の取引者、需要者に対して、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえないこと、「ダイヤコート」の語は、我が国において特定の意味合いを有する語としては、未だ普通に使用されているものとは認め難いこと及び構成全体としては特定の意味を有しない一体の造語と認識されることなどを総合すると、該構成文字に相応して、「クリスタルダイヤコート」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないというのが相当である。 イ 申立人の主張について 申立人は、本件商標は、その構成中の「ダイヤコート」の文字部分が、金属加工機械器具を取り扱う業界においては、「ダイヤモンドでコーティングされた」ものを示す商品の品質表示であって、すでに一般的な使用がされているものであるから、当該部分に自他商品の識別力は認められない旨主張するが、甲各号証によれば、以下の事実が認められる。 (ア)2010年6月22日、財団法人日本規格協会発行「JISハンドブック 5 工具」には、以下の記載が認められる(甲3)。 a 「切削工具用語(基本)」における用語欄に「コーティング工具」、その定義欄に「刃部の材料の表面に,・・・ダイヤモンドなどを一層又は多層に,化学的又は物理的に被覆材を密着させた工具材料を使用した工具。被覆工具。コーテッド工具ともいう。備考 被覆材としては,・・・ダイヤモンドなどがある。」と定義している。 b 「ドリル用語」における用語欄に「コーティングドリル」、その定義欄に「刃部の材料の表面に,・・・ダイヤモンドなどを一層又は多層に,化学的又は物理的に被覆材を密着させた工具材料を使用したドリル。備考1.コーテッドドリルともいう。備考2.被覆材としては,・・・ダイヤモンドなどがある。」と定義している。 c 「フライス用語」における用語欄に「コーティングフライス」、その定義欄にも「刃部の材料に炭化物,・・・などを,表面に一層又は多層に化学的又は物理的に密着させた工具材料を使用したフライス。被覆フライスともいう。備考・・・被覆材質によって,・・・ダイヤモンドコーティング(diamond coating)などがある。」と定義している。 d 「リーマ用語」においても同様である(但し、上記「c」における「フライス」の文字部分を「リーマ」と読み替える。)。 (イ)2006年10月31日、社団法人日本機械学会発行の「機械工学便覧 デザイン編 β3 加工学・加工機器」には、「5・3・1 ドリル加工」における「a.ドリルの材質」の項において、「超硬合金ドリルは,研削状態のものと,その表面に硬質材(・・・ダイヤモンド)をコーティングしたものを用いる。・・・また、超硬合金またはその表面にダイヤモンドをコーティングした極小径ドリル・・・」との記載が認められる(甲4)。 (ウ)2009年2月1日、理工学社発行の「機械工学用語辞典(縮刷版)」における「コーティング」の項には、「硬さ,耐熱性,耐摩耗性あるいは耐腐食性などの改善ために,材料の表面を別の材料の膜で覆うこと。例えば、切削工具では、高速度鋼や超硬合金などの基礎材の上に数μm厚さの・・・ダイヤモンドの膜をコーティングすることによって,硬さ,耐熱性,及び耐摩耗性が向上し,・・・」との記載が認められる(甲5)。 (エ)2011年1月に作成された愛知県豊川市在の「オーエスジー株式会社」の製品カタログ「穴加工・ねじ加工工具」の「ドリル選定基準表」におけるドリルの名称欄には、「ダイヤモンドドリル」、その製品記号「D-GDN」の仕様欄に「ダイヤコート超硬」、コーティング欄に「DIA」と記載され、また同じく製品記号「D-STAD」の仕様欄に「CFRP用ダイヤコート超硬トリプルアングルドリル」、コーティング欄に「DIA」との記載が認められる(甲7)。 (オ)2007年7月に作成された上記の「オーエスジー株式会社」の製品カタログ「荒加工用ボールエンドミルF2039シリーズ」の「グラファィト用 F2039/F2039G」の「特長」欄において、「ダイヤコーティングチップとの組合せでこれまでにない高能率長時間加工が可能です。」との記載、また、比較表の項の「超硬材種」及び「コーティング材種」とともに「ダイヤコート」との記載、さらには、「加工データ」の項における表の見出しには、「ダイヤコートチップによるグラファイト電極の加工」、その表中の「チップ材種」欄に「ダイヤコート品」、その説明には、「ダイヤコートチップは無処理超硬に比べて10倍以上の寿命があり、・・・」などの記載が認められる(甲8)。 (カ)2010年5月26日に作成されたと思われる(製品カタログ最終頁末尾に20100526の記載より)東京都大田区在のハムジャパン株式会社の製品カタログ「HAM超硬切削工具」には、「ダイヤコート切削工具」、「高密着・新複層技術によるHAMのダイヤモンドコーティング工具」及び「ご注文に応じて各種切削工具(ドリル・ルーター・エンドミルなど)ダイヤコーティング製品を提供します」との記載が認められる(甲9)。 (キ)愛知県知多市在の株式会社エフエスケーのウェブサイト上のTOPICS欄中の2008年12月1日の項に「微結晶ダイヤモンドコーティング工具『エフコートD マイクロダイヤコートドリル』」の表示、その右には、同商品の説明として「エフコートDのダイヤモンド皮膜は、CVD法(化学蒸着法)によって形成される多結晶ダイヤモンド被膜で、天然ダイヤモンドと同等の硬度と耐摩耗性を有します。」との記載が認められる(甲10)。 上記(ア)ないし(キ)の認定事実によれば、「JISハンドブック」、「機械工学便覧」及び「機械工学用語辞典」の文献には、切削工具を取り扱う分野においては、「硬さ、耐熱性、耐摩耗性あるいは耐腐食性の改善のために、材料の表面を別の材料の膜で覆うこと」ことを「コーティング」と称し、「刃部の材料の表面を別の材料の膜で覆った工具」を「コーティング工具」又は「被覆工具・コーテッド工具」などとも称しており、各種切削工具についても「コーティングドリル」、「コーティングフライス」、「コーティングリーマ」などとして使用し、その被覆材料の一として「ダイヤモンド」が使用されていることを認めることができる。 しかしながら、これらの文献には、ダイヤモンドで被覆したものを「ダイヤコート」として掲載されているものはない。 また、申立人が提出した証拠においても、「ダイヤコート」の文字が金属加工機械器具を取り扱う業界において、「ダイヤモンドでコーティングされた」ものを示す商品の表示として使用されているものは、僅か3社における4例(甲第7号証ないし甲第10号証)にすぎず、これらの証拠のみによっては、未だ申立人の主張を認めるに足りないものと言わざるを得ない。 ウ 引用商標について 他方、引用商標は、「クリスタル」の片仮名文字を横書きしてなるものであるから、該構成文字に相応して、「クリスタル」の称呼のみを生じ、「水晶、結晶」の観念を生ずるものである。 エ 本件商標と引用商標との対比 そこで、本件商標と引用商標を対比すると、外観において両者は、「クリスタル」の文字を共通にするが、「ダイヤコート」の文字の有無に差異を有するから、互いに相紛れるおそれがなく十分に区別することができる。 次に、本件商標から生ずる「クリスタルダイヤコート」と引用商標から生ずる「クリスタル」の両称呼を対比すると、両者は、「クリスタル」の各音を共通にするが、「ダイヤコート」の音の有無に顕著な差異を有することから、両商標は称呼上、互いに相紛れるおそれがない非類似の商標である。 また、本件商標と引用商標とは、観念においては比較することができない。 以上を総合すると、本件商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのない非類似の全く別異の商標というのが相当であり、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第15号の該当性について ア 引用商標の周知性について 申立人は、引用商標の商標権者は申立人の一人である菱高商事株式会社であり、当該菱高商事株式会社から菱高精機株式会社に対して使用を許諾しているとしたうえで、1993年から2010年までのカタログを各年版毎に約2,000部発行し、切削工具・超硬工具の販売店及び需要者に頒布されているとしているが、その事実を証明する証拠はなく、また、これ以外に宣伝、広告を行っている事実を立証する証拠もない。 さらに、切削工具、超硬工具製品の詳細、その生産数量、販売数量及び市場占有率などの販売実績も立証されていないものであるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が周知であったとは到底認められない。 イ 出所の混同のおそれについて 本件商標は、上述したとおり、引用商標とは全く別異の商標である。 また、申立人の提出に係る甲各号証によっても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において引用商標が周知であったとは認められないものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、その使用商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3) 結論 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたと認められないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。 よって結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2011-11-29 |
出願番号 | 商願2010-82405(T2010-82405) |
審決分類 |
T
1
651・
262-
Y
(X07)
T 1 651・ 271- Y (X07) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 冨澤 美加、大房 真弓 |
特許庁審判長 |
水茎 弥 |
特許庁審判官 |
渡邉 健司 井出 英一郎 |
登録日 | 2011-04-22 |
登録番号 | 商標登録第5407738号(T5407738) |
権利者 | 株式会社不二越 |
商標の称呼 | クリスタルダイヤコート、クリスタルダイヤ |
代理人 | 岡島 明子 |
代理人 | 高崎 真行 |
代理人 | 川角 栄二 |
代理人 | 川角 栄二 |
代理人 | 向江 正幸 |
代理人 | 高崎 真行 |
代理人 | 塩田 哲也 |
代理人 | 塩田 哲也 |
代理人 | 福島 三雄 |
代理人 | 向江 正幸 |
代理人 | 向江 正幸 |
代理人 | 川角 栄二 |
代理人 | 福島 三雄 |
代理人 | 福島 三雄 |
代理人 | 塩田 哲也 |
代理人 | 高崎 真行 |