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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X05
審判 全部無効 観念類似 無効としない X05
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X05
審判 全部無効 外観類似 無効としない X05
管理番号 1247968 
審判番号 無効2011-890007 
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-01-28 
確定日 2011-11-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5352173号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5352173号商標(以下「本件商標」という。)は、「コスチュームキューピー」の文字を標準文字で表してなり、平成22年3月18日に登録出願、第5類「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,失禁用おしめ,乳糖,乳幼児用粉乳」を指定商品として、同年9月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 商標法第4条第1項第11号の引用商標
請求人が、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(13)のとおりである。
(1)登録第2399233号商標(以下「引用商標1」という。)は、「KEWPIE」の欧文字と「キューピー」の片仮名を上下二段に横書きしてなり、昭和58年3月9日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年4月30日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同15年5月7日に第1類、第2類、第3類、第4類、第5類、第8類、第10類、第16類、第19類及び第30類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第4564585号商標(以下「引用商標2」という。)は、「キューピー」の片仮名を書してなり、平成13年7月18日に登録出願、第5類、第29類、第30類、第31類、第32類及び第33類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年4月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(3)登録第4569666号商標(以下「引用商標3」という。)は、「KEWPIE」の欧文字を標準文字で表してなり、平成13年6月1日に登録出願、第5類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年5月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(4)登録第74144号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、大正4年7月10日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同4年9月1日に設定登録され、その後、6回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、平成18年2月8日に第1類、第2類、第3類、第5類、第16類及び第30類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(5)登録第4272955号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成10年2月20日に登録出願、第5類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年5月14日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(6)登録第5037089号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成15年12月17日に登録出願、第5類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品として、同19年3月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(7)登録第5202422号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、平成19年5月28日に登録出願、第5類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品として、同21年2月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(8)登録第619822号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲5のとおりの構成よりなり、昭和36年2月13日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同38年7月2日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、平成16年8月4日に第30類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(9)登録第595694号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲6のとおりの構成よりなり、昭和35年5月31日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同37年8月24日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、平成15年7月23日に第30類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(10)登録第832283号商標(以下「引用商標10」という。)は、「キューピー」の片仮名を書してなり、昭和41年8月11日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同44年9月24日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、平成21年6月17日に第30類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(11)登録第3256011号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲7のとおりの構成よりなり、平成5年9月8日に登録出願、第30類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品として、同9年2月24日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(12)登録第4343852号商標(以下「引用商標12」という。)は、別掲8のとおりの構成よりなり、平成10年10月2日に登録出願、第29類及び第30類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年12月10日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(13)登録第4410202号商標(以下「引用商標13」という。)は、「KEWPIE」の文字を標準文字で表してなり、平成11年9月21日に登録出願、第29類及び第30類に属する別記に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年8月18日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
なお、引用商標1ないし13を一括していうときは、「引用各商標」という場合がある。
2 商標法第4条第1項第15号の引用商標
請求人が、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録商標は、引用商標9及び10である。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第70号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものである。したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とされるべきものである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 引用各商標の称呼及び観念
引用商標1ないし同13は、その構成文字、図形、構成文字と図形の組み合わせのそれぞれに相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
なお、引用商標8は、その構成文字と図形の組み合わせより、「キューピー」の称呼及び観念以外に「キューピートカネ」の称呼及び「キューピーと鐘」の観念をも生じるものである。
イ 本件商標の称呼及び観念について
本件商標は、標準文字による片仮名文字「コスチュームキューピー」を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「コスチュームキューピー」の称呼が生じるものである。
本件商標が「コスチューム」と「キューピー」の二語からなることは明らかであるが、このうちの「コスチューム」の語は、「特定の民族・階級・時代・地方の服装。仮装・演劇などの衣装、上下揃いの婦人服」等の意味を有し(甲15)、一般には「ヘアスタイルから靴や装身具までをも含めた、一つの調和のとれた服装」を意味するものである(甲16)。
そうすると、本件商標全体からは、「(一つの調和のとれた)服装・衣装を身につけたキューピー」程度の意味合いが生じるものである。
ここで、「キューピー」とは、我が国でも周知になっている「キューピー」人形やそのキャラクターを意味することは明らかである。「キューピー」が人形やキャラクターを意味する以上、これに服や衣装を着させることは極めてありふれたことであり、このような状況においては、本件商標中の「コスチューム」の部分よりも「キューピー」の部分の方が需要者により強い印象を与えるものと思われる。このことから、本件商標の要部は「キューピー」の部分と考えるのが妥当である。
したがって、本件商標からは、「コスチュームキューピー」の一連の称呼の他に「キューピー」の略称も生じ、「(一つの調和のとれた)服装・衣装を身につけたキューピー」の観念の他に「キューピー」の観念も生じると考えるのが妥当である。
ウ 本件商標と引用各商標との類否
上述のとおり、本件商標からは、「コスチュームキューピー」の他に、「キューピー」の称呼が生じ、引用各商標のいずれからも、「キューピー」の称呼が生じる。
また、本件商標からは、「(一つの調和のとれた)服装・衣装を身につけたキューピー」の観念の他に、「キューピー」の観念が生じ、引用各商標のいずれからも「キューピー」の観念が生じる。
これらのことから、本件商標と引用各商標は、互いにその称呼及び観念を同一とする類似商標であるといえる。
さらに、本件商標は、引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。
したがって、本件商標がその指定商品に使用されると、取引者又は需要者において引用各商標との間で出所の混同を生じることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し登録を受けることができない商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標9及び10との類似について
本件商標からは、「コスチュームキューピー」の他に「キューピー」の称呼が生じ、また、「(一つの調和のとれた)服装・衣装を身につけたキューピー」の観念の他に「キューピー」の観念が生じることは、上記(1)で詳述したとおりである。
また、引用商標9からは、「キューピー」の称呼・観念を生ずるものである。さらに、引用商標10からも、「キューピー」の称呼・観念を生ずるものである。
なお、キューピー人形よりなる引用商標9から「キューピー」の称呼・観念を生ずることは、引用商標9と引用商標10とが相互に連合商標として登録されていた事実からも明らかである(甲10、甲11)。
したがって、本件商標と引用商標9及び引用商標10とは、「キューピー」の同一の称呼・観念を有する類似の商標である。
イ 引用商標9及び10の著名性について
請求人「キューピー株式会社」は、大正8年(1919年)に設立された会社であり、大正14年に我が国初の国産マヨネーズの製造を開始し、「キューピー」の文字及び「キューピー人形」よりなる商標を付して発売してより今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきたものである(甲19)。
そして、戦後の国民の食生活の変化に伴い、洋食に合うマヨネーズが爆発的に売れるようになったことにより、「キューピー」「キューピー人形」の商標は、日本全国津々浦々にまで知れ渡るに至ったものである。
請求人は、「キューピー」「キューピー人形」の商標を付したマヨネーズが全国的なシェアを持つに至ったことから、昭和32年に社名を「キューピー株式会社」に変更し、以来、今日までその社名を使用し続けてきたものである。
請求人の多種にわたる商品が全国的規模で売れたことから、本件商標出願前には、「キューピー」といえば、直ちにマヨネーズをはじめとする請求人の商品あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。
そして、請求人の取扱商品は多種にわたるものであるのみならず、例えば、「ソース類缶詰」、「液状ドレッシング」、「マヨネーズ類(液状ドレッシング類を除く)」及び「ベビーフード」などの商品の日本国内における請求人の年度別シェア及び順位は、甲第20号証及び甲第21号証のとおり、ともに高いものである。
また、「キューピー」は、食品関連商品についてのみならず、商品分野を限定しない企業全般を対象とした第三者によるアンケート調査において、甲第22号証ないし甲第26号証のとおり、第1位(3回)、第2位(1回)、第4位(1回)と非常に高い評価結果を得ており、このことは、上記事実を裏付けるものでもある。
したがって、「キューピー」は、企業ブランドとしても需要者から極めて高い評価を得ているものであり、食品分野の枠を超えた著名性を獲得しているものである。
しかして、引用商標9及び引用商標10は、需要者の間に広く認識されている著名な商標であって、他人が使用することにより混同を生ずるおそれがあるものとして、商標登録原簿に記載のとおり、防護標章の登録が認められているものである。
これらの防護標章登録の事実からみても、引用商標9及び引用商標10は、本件商標の登録出願日(平成22年3月18日)以前から現在に至るまで著名な商標であるといわなければならないものである。
さらに、引用商標9及びこれと「KEWPIE」の欧文字からなる商標は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に日本の著名商標として掲載されており、この事実は、引用商標9が非常に高い著名性を有することを裏付けるものである(甲46、甲47)。
ウ 本件商標の指定商品と、販売店舗・売り場を同じくする商品について、請求人が引用商標9及び引用商標10と同一態様の商標を使用していることについて
(ア)請求人は、本件商標の登録出願日前から現在に到るまで、継続して引用商標9及び引用商標10と同じ態様の商標を商品「ベビーフード(乳児用食品)」について使用している。
請求人は、本件商標の登録出願日前の2004年7月・2005年1月や登録前の2010年6月の時点においても、それぞれ甲第48号証、同第49号証及び同第50号証のとおりの多種多様な乳児用の飲料及び食品を継続して販売してきており、これらの全ての商品には引用商標9又は引用商標10と同じ態様の商標が使用されている。
なお、請求人は、引用商標9及び引用商標10と同じ態様の商標について、ベビーフードに該当する商品を指定した商標登録を所有している(甲51、甲3)。さらに、請求人は、ベビーフードに該当する商品を指定した商標「キューピーベビーフード」についても、登録を所有している(甲52)。
そして、これらの請求人のベビーフード商品は、一般的な百貨店等の他に、「赤ちゃん本舗」「トイザらス(ベビーザらス)」「西松屋」「バースデー(しまむらグループ)」等の幼児・子供用品専門店でも販売されている。
なお、本件商標の平成18年度のベビーフード商品の市場規模は315億円以上あり、そのような大規模な市場の中において、請求人は平成13年度から平成18年度までシェア第2位を維持している(甲21)。
一方、本件商標の指定商品には商品「乳幼児用粉乳」が含まれており、この商品が百貨店等のベビー用品売り場や「赤ちゃん本舗」や「トイザらス(ベビーザらス)」等の幼児・子供用品専門店で販売されていることは明らかである。甲第55号証として提出するのは、いずれも2010年11月20日撮影にかかる「赤ちゃん本舗」(多摩境店)及び「ベビーザらス」(多摩境店)の売り場写真であるが、請求人会社の商品を含む各種ベビーフード商品と、本願指定商品「乳幼児用粉乳」に該当する商品が、同一店舗内の極めて近い棚に陳列されて販売されている。
そうすると、請求人の著名商標である引用商標9及び引用商標10と同一の称呼・観念を生じる本件商標が付された商品「乳幼児用粉乳」が、請求人のベビーフード商品と同一の店舗・同一売り場にて販売されることは充分に考えられる。
上記のような取引実情を踏まえると、本件商標をその指定商品「乳幼児用粉乳」について使用した場合には、引用商標9及び引用商標10との間で出所の混同が生じるおそれは極めて高いといわざるを得ない。
(イ)引用商標9及び引用商標10は、商品「調味料」を含む食品関連商品等について、非常に高い著名性を獲得しているものである。
一方、本件商標の指定商品には「乳糖」が含まれ、この商品は、食品として又は食品の原料として使用されるものである。このことから、特許庁編集にかかる類似商品・役務審査基準(国際分類第9版対応)によれば、商品「乳糖」は、請求人の主力商品である「調味料」と同様に31A03の類似群コードが付されており、両商品は、互いに類似するものと考えられる。
請求人は、本件商標と引用商標1ないし引用商標13とは類似すると確信する。しかし、万が一これらが類似しないとしても、上記のとおり、「キューピー」の語を含む本件商標が、請求人の主力商品である「調味料」と類似の関係にある商品「乳糖」について使用された場合には、本件指定商品「乳糖」があたかも請求人の取扱いにかかるかのような、または、請求人の関連会社の取扱いにかかる商品であるかのような出所の混同が需要者において生じるおそれがあるといわざるを得ない。
エ 本件商標をその指定商品について使用した場合の混同のおそれについて
(ア)本件商標と引用商標9及び引用商標10とは、「キューピー」の同一の称呼・観念を有する類似の商標であること。
(イ)引用商標9は、本件商標の指定商品をはじめとする全ての商品・役務について他人が使用した場合、混同を生じさせるおそれがある極めて著名なものであり、同じく引用商標10は、本件商標の指定商品をはじめとする多くの分野の商品・役務について他人が使用した場合、混同を生じさせるおそれがある著名なものであること。
(ウ)請求人は、本件商標の指定商品と同一の店舗・売り場で販売される商品について、引用商標9及び引用商標10を本件商標の登録出願日前から継続して使用していること。
上記(ア)ないし(ウ)の事実から、被請求人が、引用商標9及び引用商標10と称呼、観念を同じくする本件商標を、その指定商品について使用する場合には、その商品が請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品であるかの如く混同を生じることは明らかである。
オ したがって、本件商標は、請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当し登録を受けることができない商標である。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、引用各商標との関係において商標法第4条第1項第11号に該当し、また請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるから同項第15号に該当する。
したがって、本願商標は、商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項11号について
ア 本件商標から生じる称呼及び観念について
被請求人は、本件商標の構成を総合的に考慮する限り、ここから単に「キューピー」の観念及び称呼が生じることはあり得ないと結論づける。
しかしながら、答弁書において本件商標と同一態様の商標を使用していると主張する乙第9号証の通常使用権者「株式会社オンリーワン」(以下、単に「通常使用権者」という。)自身により、実際に「コスチュームキューピー」の語が単に「キューピー」と略されている事実がある。そのような略称の例は多数に上る。
ところで、商標から生じる称呼の特定のためには、当該商標に接する需要者又は取引者が当該商標を実際にどのように称呼しているかを検討することが重要であると請求人は考える。
被請求人は、本件商標と同一態様の商標が通常使用権者により、根付や携帯電話機用ストラップ等の商品について実際に使用されていると主張する。
請求人は、当該商標が我が国で広く認知されるに至っているとは考えないが、本件商標と同一文字から構成される商標「コスチュームキューピー」が使用された携帯電話用ストラップやマスコット等の商品が販売されていること自体は請求人も否定するものではない。
しかしながら、請求人が調べたところ、実際の取引社会では、商標「コスチュームキューピー」が付された携帯電話用ストラップやマスコット等の商品の販売に際しては、商標「コスチュームキューピー」が単に「キューピー」と略称されている例が多数発見される(甲60ないし甲62)。
そうすると、通常使用権者自身が同社の取扱いに係る商品に使用された商標「コスチュームキューピー」を「キューピー」と略し、商標「コスチュームキューピー」が付された商品に接する取引者又は需要者も当該商標を「キューピー」と略称している状況にあっては、取引者又は需要者は、「コスチュームキューピー」の語からキューピー(人形)のイメージを強く受けるものであり、「コスチューム」の語は「キューピー」の語に比べて需要者に与える印象が極めて薄いと考えるのが自然である。
以上述べてきたとおり、答弁書における被請求人の主張は失当又は根拠がないものであり、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものであると確信する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 被請求人は、「引用商標9?10について防護標章登録が認められているとの事実のみをもって、本件商標との混同の問題を論じることは不可能である。」と主張する。
しかし、請求人が当該防護標章登録の事実を指摘したのは引用商標9及び引用商標10が非常に高い著名性を獲得していることを証明するためであり、当該防護標章登録の事実のみをもって、本件商標との混同の問題を論じているのではない。
イ 被請求人は、請求人以外にも「キューピーのイメージを使用している企業」として、牛乳石鹸共進社株式会社や旧日本興行銀行がある点を指摘する。
確かに牛乳石鹸共進社株式会社は「せっけん」等の商品についてキューピーに関連する商標を使用しているが、同社と請求人との間では、キューピー関連商標を使用する商品が事実上棲み分けられており、両社の商品の間で出所の混同は生じない。
ウ 被請求人は、乙第29号証及び同第30号証の判例を引用する。
しかし、これらの判例で対象とされた商標登録の指定役務はいずれも第39類「貨物自動車による輸送」であり、本件商標の指定商品とはその性質が大きく異なるものである。
したがって、これらの判例は、本件無効審判の判断において参酌できるものではない。
エ 被請求人は、本件商標の指定商品中「医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンテイ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド」については、一般に「医療補助品」や「衛生用品」に属するこれらの商品を「調味料、香辛料」と比較してみた場合、互いに商品の生産者・販売者・流通経路・原材料・用途等を明らかに異にする、異業種に係る商品群であることが明らかであると主張する。
しかしながら、審判請求書において請求人が述べたとおり、引用商標9及び引用商標10は、その指定商品「調味料、香辛料」はもちろんのこと、それ以外の食品関連商品や、さらには食品分野の枠を超えた著名性を獲得しているものである。また、請求人の「キューピー」ブランドは、企業ブランドとしても高く評価されている。
さらに、実際の取引社会を見てみると、企業の多角経営化が進んだことにより、最近では「医療補助品」「衛生用品」と「食品」をともに扱っている企業も少なくないが実情である(甲63ないし甲67)。
また、「医療補助品」「衛生用品」と「食品」は、我が国全域に多数存在するドラッグストアにおいては、同一店舗内で販売されていることが一般的である。
以上のとおり、本件商標の指定商品中の「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」と食品関連商品とは、少なくとも生産者・販売者を共通にするものである。さらに、生産者・販売者を共通にすることから、流通経路も共通にすると請求人は推測する。
なお、「失禁用おしめ」についても、製造、販売を共通にする企業が存在する。
したがって、上記の被請求人の主張は失当である。
オ 被請求人は、本件商標の指定商品「乳糖」と類似群を共通にする商品は、引用商標の指定商品「調味料」に含まれる「角砂糖,果糖,氷砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ」のみであり、これらの商品に引用商標9及び10を請求人が使用している事実は発見できなかったため、これらの商品について引用商標9及び10が広く認識されているといえるのかが疑問であると主張する。
しかし、引用商標9及び10が商品「角砂糖,果糖,氷砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ」について広く知られている点ではなく、「調味料」を含む食品関連商品及びこれに密接に関連する分野での引用商標9及び10の著名性である。
これに関しては、引用商標9及び引用商標10が「マヨネーズ,ドレッシングその他の加工食品の分野あるいはこれに密接に関連する分野では広く知られている」と乙第29号証及び同第30号証の判例でも認定されたのは上述のとおりである。
一方、「乳糖」は食品に関連する商品であるため、これに「キューピー」の語を含む本件商標が使用された場合には、当該商品が請求人の取扱いにかかるような、または、請求人の関連会社の取扱いにかかるというような出所の混同が生じるおそれがあることは明白である。
なお、請求人は、甲第68号証のとおり、商品「乳糖」に類似する商品「人工甘味料(類似群:31A03)」に該当する商品を販売しており、これにも引用商標9及び10が使用されている。
さらに、商品「乳糖」とは、甲第69号証のとおり、乳児に不可欠の栄養成分であり、エネルギー源になる、グリコーゲンとして蓄積される、体組織の構築をする等の作用があるものであるため、健康に関連する商品であり、いわゆる健康食品の原材料としても多く使用される。
一方、請求人会社は主力商品のーつとして各種の健康食品を大々的に取り扱っており(甲70)、これらの商品にも引用商標9及び10と同一態様の商標が使用されている。食品関連商品についての引用商標9及び10の著名性を考慮した場合には、本件商標が付された商品「乳糖」が健康志向の強い取引者又は需要者の目に触れると、当該商品を請求人又は請求人の関連会社の取扱いに係る商品であるとの混同が生じるおそれがあると請求人は確信する。
カ 被請求人は、「乳児用食品」は引用商標9及び10の指定商品に包含される商品でないため、単に請求人が商品「乳児用食品」について引用商標9及び10と同態様の商標を使用しているという事実は、少なくとも引用商標9及び10と本件商標の混同可能性を論じる場合においては直接の影響を与えないと主張する。
しかし、単に「調味料、香辛料」のみに止まらず広く食品関連商品等に及ぶ引用商標9及び10の著名性を考慮すると、本件商標が指定商品「乳幼児用粉乳」に使用された場合に出所の混同が生じるおそれがあるということである。
商品「乳幼児用粉乳」は食品に関連するものであり、請求人は「乳児用」の食品・飲料の販売事業を実際に大々的に行っており、また、これらの商品について引用商標9及び10と同一態様の商標登録も有している(甲51、甲53)。
さらに、請求人はベビーフード商品の市場において、継続して2位という高いシェアを維持しており(甲21)、このことから、乳児用食品・飲料の分野でも、引用商標9及び10と同一態様の商標は著名性を獲得していると考えられる。このような状況において、「キューピー」の文字を要部とする本件商標が指定商品「乳幼児用粉乳」について使用されると、出所の混同が生じるおそれは極めて高いといえる。
以上のことから、いずれにしても、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標であることは明白である。
キ これらのことから、答弁書における商標法第4条第1項第15号に関する被請求人の主張は根拠がない。
(3)むすび
以上述べたとおり、被請求人の主張はいずれも理由、根拠がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号に該当するものであり、商標法第46条第1項により無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第35号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用各商標の対比
ア 本件商標を引用商標1ないし13と比較すると、本件商標は、引用各商標のいずれとも明らかに外観を異にすることはいうまでもない。
次に、観念及び称呼についてみると、本件商標は、その文字構成から「コスチュームをつけたキューピー」の観念とともに「コスチュームキューピー」の称呼が生じる。
一方、引用商標中、引用商標1ないし7、引用商標9ないし10、引用商標12ないし13からは、各々「キューピー」の観念のもと「キューピー」の称呼が生じる。
引用商標8は、図形部分及び文字部分から想起される内容が一致しないことから特定の観念を生じさせないが、上部の図形部分からは「鐘を抱えたキューピー」といったイメージを生じさせつつ「キューピートカネ」の如き称呼が生じ、また、下部の文字部分より「キューピー」の称呼が生じる。
引用商標11も、図形部分及び文宇部分から想起される内容が一致しないことから特定の観念を生じさせないが、上段の図形部分からはローマ神話の神「キューピッド」を想起させつつ「キューピッド」の称呼が生じ、また、下段の文字部分より「キューピー」の称呼が生じる。
したがって、本件商標は、いずれの引用各商標との関係においても、想起されるイメージや観念において明らかに相違し、また、称呼においても明確な差異を有する。本件商標は、引用商標1ないし13のいずれとも、何ら類似するものではない。
イ 請求人は、本件商標から単に「キューピー」の観念、また、単に「キューピー」のみの称呼も生じると主張する。しかし、被請求人はこれに首肯できない。
上記のとおり、本件商標「コスチュームキューピー」は、カタカナのみで構成された標準文字商標であり、同一文字種・同一書体・同一の大きさにより空白なく横一連に書き表され、その外観上、一目見てこれをひとまとまりの語と把握できるような一体性を有している。このような構成の商標に接した者は、自然にこれを一つの成語と把握し、その文字全体から「コスチュームをつけたキューピー」といった観念を想起するとともに、そのままこれを「コスチュームキューピー」と称呼するものである。
この点、本件商標中、冒頭の「コスチューム」の文字からは、その意味を自ずと把握できる。また、この「コスチューム」の文字が、本件指定商品との関係上、何らかの普通名称や品質表示等として機能するとの事情も見当たらない。したがって、この「コスチューム」部分から生じる意味合いが観念上省略されることはなく、本件商標に接した者は、不可分一体の構成そのままに「コスチュームをつけたキューピー」の観念を生じるとみるのが自然である。
また、称呼についてみても、本件商標から生じる「コスチュームキューピー」の称呼は、途中で区切らなければ称呼できないような冗長な音数ではないし、「コスチューム」及び「キューピー」の語は、いずれも我が国ではそのカタカナ表記自体が日本語として定着しているほど親しまれた語として、表された文字を見たままに淀みなく称呼できる。したがって、本件商標から「コスチューム」の称呼が欠落し、後半の「キューピー」部分のみ称呼されることはあり得ない。
ウ なお、請求人も述べているとおり、「キューピー」とは、我が国では一般に幼児のキャラクター(及びその人形)を指す語として知られ、それ以外の語義はないから、本件商標の構成からは、自ずと「幼児のキャラクターがコスチュームを身に付けている」姿がイメージとして想起され、このような独特のイメージが「コスチュームをつけたキューピー」の観念とともに、看者に強く印象付けることになる。
これに関して詳述すると、そもそも「キューピー」とは、1900年代に米国の画家が描いたイラストに端を発するキャラクター及びその人形を意味する(乙1)。ローマ神話の神「キューピッド」に着想を得て生まれたこのキャラクターは、現在では「とがった頭をもつ、裸の」人形を意味する語として一般に用いられ、キャラクターとして広く流通している(乙1ないし乙3)。ちなみに、手近な例として、引用商標中、図形要素を含むものがいずれも裸体であるところからも、「キューピー」と称するキャラクター自体は、裸を基本的姿態とするものであることが想像される。(なお、引用商標4及び7は、請求人とは異なる第三者(日本臓器製薬株式会社)が出願した商標である)一方、「コスチューム」の語義も請求人が述べているとおりであるが、更にいえば、この語は百科事典において『衣服(clothes、clothing)が単に物的なものをさすのに対して、コスチュームは、物と心の一体化した服装や衣装を表す語として用いられる。』(乙4)と解説されているように、「コスチューム」とは、請求人がいうような、単に「服を着ている」ことを指す語というよりも、それを超えて、民族衣装・仮装・舞台衣装のように、その服装が有する精神的・文化的背景や、その服装を身に付けた者の個性を重視して用いる言葉と解される。
また、辞典類に「コスチュームプレー」「コスチュームデザイナー」「コスチュームジュエリー」などの語が掲載されているように(甲15、乙5ないし乙7)、「コスチューム」の語は、他のカタカナ語と結合し一つの成語として日本語化するほど親しまれ、また、近年では「コスチュームプレー」の語が「コスプレ」と略されて、漫画やアニメの登場人物に仮装する意味で用いられている実情も存在する(甲15中「コスチュームプレー」の項目、乙8)。現在では、辞書的に「特定の民族・階級・時代一地方の服装」などと置き換えるよりも、そのまま「コスチューム」といったほうがその意味するところを理解しやすいといえるほど、「コスチューム」の語は我が国一般に浸透している。
こうした背景を踏まえると、本件商標に接した者は、「コスチュームキューピー」の文字から、「(普通のキューピーではなく)独特の扮装をしているキューピー」とか「(ただの裸のキューピーではなく)仮装をしたキューピー」のように、従来知られている「キューピー」から更に衣装を通じて独自の性格付けがなされた別異のキャラクターを自ずと想起・認識するものであり、このような認識を前提としながら、本件商標全体より「コスチュームをつけたキューピー」の観念を生じさせることとなる。このような観念は、通常「キューピー」の文字から想起されるイメージとは一線を画する新感覚のものとして本件商標に接した者に対して強く印象付けるものであるから、看者はこれを自ずと「キューピー」とは異なるものとして区別しつつ、そのまま「コスチュームキューピー」と称呼することになる。
エ このように、本件商標は、その構成全体より固有かつ独特の観念を生じさせるものであるから、本件商標を構成する「コスチューム」及び「キューピー」の文字に軽重の差はない。むしろ、「コスチューム」の文字は、本件商標に内包される商標としての個性に大きく寄与する部分であるから、この文字から生じる観念及び称呼を捨象してしまっては、本件商標が全体として発揮している個性を没却することにしかならない。
以上のとおり、本件商標の構成を総合的に考慮する限り、ここから単に「キューピー」の観念及び称呼が生じることはあり得ない。
(2)本件商標の使用状況
ア なお、本件商標は、被請求人及び本件商標と商標の態様を同じくする登録商標全10件の通常使用権者である株式会社オンリーワン(参考:乙9。以下、被請求人と株式会社オンリーワンを含めて「被請求人等」ということがある)が、根付や携帯電話機用ストラップを初めとする複数の商品にこれを付して日本全国で使用した結果、今までにないユニークなキャラクターグッズに付された商標として、我が国で広く認知されるに至っているものである。
上記乙第1号証ないし乙第3号証のとおり、「キューピー」は、一般に「とがった頭をもつ、裸の」人形或いはキャラクターとして浸透している。1900年代に誕生したこのキャラクターは、その特有のかわいらしさから、そのセルロイド人形等が欧米で製造されるようになった。その後これらが日本に輸入され、日本国内でも人形が製造されるようになり、セルロイド玩具産業の花形として逆に欧米に輸出されるようになるほどに親しまれ、第二次大戦後も、プラスチック製の人形が子供用のおもちゃとして広く流通した(乙1)。
被請求人等は、誕生以来約100年間“裸でとがった頭をもつ幼児の人形”として認知されていたキューピーに、「たこ焼き」「富士山」「赤べこ」のように、通常のキューピーのイメージからはおよそ想像もつかないような日本各地の名物・名所・名産品等を模した独特の扮装(かぶりもの)を纏わせて、このキャラクターを使用した商品群に「コスチュームキューピー」の商標を付し、根付(携帯電話用ストラップやキーホルダー形状のものを含む)・ぬいぐるみ・耳かき・ボールペンその他の文房具類・かばん類・湯たんぽ・ばんそうこうその他数多くの商品に使用してきたものである(乙10、乙11の1ないし乙11の7)。
この「コスチュームキューピー」は、世界中で親しまれるキューピーというキャラクターに、日本各地の名物・名所一名産品などを大胆に表現した扮装(かぶりもの)を着用させるという意表を突いた発想により我が国消費者に強いインパクトを与えた。また、原則としてインターネット販売等を行わず、あくまでも各地域の土産物店・駅売店・空港・サービスエリア・観光地売店等に販売ルートを限定するという独特の手法により、本件商標は、ごく短期間のうちに新しいスタイルのお土産品として消費者間に浸透し、今までにない個性を持ったキャラクターグッズの商標として、日本全国で広く受けいれられるに至った。その地域密着型の販売手法により「地域限定コスチュームキューピー」等とも呼ばれ、その評判の高まりから様々な雑誌や新聞で紹介されたほか(一例として、乙12の1ないし乙12の5)、2007年には時事用語・最新流行語としてジャパンナレッジ「新語探検」にも掲載された(乙13)。また、日本各地に散らばる本件商標を付した商品を収集する者も登場し、こうしたコレクターのために「コスチュームキューピー」商品の全国展開状況を掲載した書籍も2回に亘り発行されている(乙14、乙15)。(ちなみに、乙12の1の新聞記事によれば、請求人は2007年時点で被請求人等商品のことを認知しているものと解される。)
このほか、被請求人等は、本件商標を上記の地域限定商品に使用するのみならず、大学その他の学校法人・消防隊・自衛隊・警察・小売店及び百貨店・雑誌社・芸能人のように、多方面にわたる様々な団体・企業からの依頼を受けて製造販売するオリジナル商品にも使用してきた(一例として、乙15の164ページないし195ページ等)。これら一連のシリーズも、各々そのユニークなデザインや入手方法の難しさから人気を得て、商品によってはプレミアも付くなど広く認知されるに至っている。
このように、多種多様な商品に本件商標を使用した結果、一連の「コスチュームキューピー」商品群は発売以来爆発的に売上げを伸ばし、現在でも極めて高い売上げを記録しているものである。
例えば、被請求人の商品販売個数及び売上額(本件商標を使用した商品に限る)の状況を見ると、過去5年間(2006年?2010年)で、最も高い年(2007年)には1年間で1400万個以上の「コスチュームキューピー」商品を販売し、その売上金額は約17億9千万円にも達した。また、2010年の時点でも販売個数は約400万個以上にのぼり、約5億9千万円の売上を計上している(乙16)。
イ 以上のとおり、本件商標「コスチュームキューピー」は、被請求人等がその個性的なデザインからなる各種商品の商標として使用した結果、そのユニークな販売手法等も奏功して、商品「根付、携帯電話用ストラップ」等に係る商標としてはもとより、それ自体固有のキャラクターを想起させる商品商標として、日本各地の津々浦々に至るまで広く認知されるに至っている。
したがって、上記のような、本件商標における実際の取引実情をも勘案するならば、本件商標に接した者は、ここから「コスチュームをつけたキューピー」、若しくはよく知られたキャラクター商品の商標そのものとしてそのまま「コスチュームキューピー」の観念を生じさせながら、これを「コスチュームキューピー」と称呼するものと確信する。
(3)小括
以上のとおり、本件商標からは、「コスチュームをつけたキューピー」、あるいは「コスチュームキューピー」の観念を生じさせっつ「コスチュームキューピー」の称呼が生じるものであって、「キューピー」の観念や称呼は生じない。したがって、本件商標は、外観・称呼・観念のいずれについても、引用商標とは何ら類似するものではない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標9、引用商標10との対比
上記1において詳述したとおり、本件商標は、引用商標9、引用商標10とは全く別異の商標であり、商標として何ら類似するものではないから、請求人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれもなく、商標法第4条第1項第15号には該当しない。
(2)引用商標9、引用商標10の著名性に関して
ア なお、被請求人は、引用商標9及び引用商標10の商標の態様それ自体を請求人以外の他人が使用した場合に、請求人の業務に係る商品等と混同の生じるおそれがあり得ることを否定するものではない。しかし、このような観点を超えて、請求人以外の他人が使用する商標が単に「キューピー」の文字及び図形を含んでなるにすぎない場合に、これを以って、総じて請求人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがあると解することはできない。
イ 第一に、請求人は、引用商標9、引用商標10が多数の防護標章登録を受けている点を強調しているが、防護標章登録が認められているとの事実のみをもって、本件商標との混同の問題を論じることは不可能である。
ウ 第二の点として、「キューピー」の文字自体は、そもそも請求人が創作したものではないばかりか、現在の我が国においては一般に幼児のキャラクター及びその人形を意味し、また、請求人以外の複数の出所を表示する商標として様々な分野で機能しているものである。
まず、「キューピー」という語は請求人とは何ら関連のない米国の画家がキャラクターの名称として創作した語であって、現在では、とがった頭をもつ裸の幼児のキャラクター(或いは人形)を意味する語として一般に認知されている(乙1ないし乙3、参考:乙27)。
ちなみに、請求人の主張によれば、請求人が「キューピー」の文字及び図形の使用を開始したのは大正14年(1925年)であるが、これは、元々のキューピーイラスト創作者であるローズ・オニールが「キューピー」の名称を使用し始めたとされる1909年頃(乙第1号証)よりも15年以上も後のことである。また、日本国語大辞典によれば、既に、大正7年(1918年)には、小説等の文献に「キューピー」が登場していたことがわかる(乙3)。
そして、日本国内においては、請求人及び被請求人のみならず、様々な企業・個人が、「キューピー」というキャラクター自体がもつ独特の魅力からそのモチーフや名称を企業活動等に使用してきた。実際、インターネット百科事典ウィキペディアにおいても、「キューピー」の項において「キューピーのイメージを使用している企業」の項目が設けられ、牛乳石鹸共進社株式会社や旧日本興業銀行など、請求人以外の企業が複数社紹介されている(乙27)。この他、同資料によれば、ローズ・オニールが創作したキューピーは「ローズオニールキューピー」として請求人とは関連のない商品商標として現に流通していることが伺え、その他、我が国において「キューピー」の文字や図形を含む商標が様々な者の名義で多数登録されていることは、枚挙にいとまがない。参考までに、本件商標の指定商品と類似群が共通する範囲だけに極めて限定してみても、「キューピー」の文字を含んでなる商標は多数存在している(乙28)。
エ また、以上の主張は、「キューピー引越センター」の文字からなる登録商標(指定役務:貨物自動車による輸送)について、本件請求人及び請求人子会社(キューソー流通システム株式会社)が、引用商標9、引用商標10を根拠として商標法第4条第1項第15号該当性を争った無効審決取消訴訟(東京高裁・平成15年(行ケ)103)において、請求人らの主張が認められなかったことからも十分に裏付けられるものと思料する(乙29)。
なお、本事案においては、問題となった商標の構成態様からは「キューピー」の文字が明らかに要部として看取できるにも係わらず、引用商標9、引用商標10との関係上、登録商標「キューピー引越センター」は請求人らの業務と商品役務の混同は生じないと判断され、登録が維持されているものである。
また、キューピーの図形を含む商標について、同当事者により商標法第4条第1項第15号該当性が争われた事案(東京高裁・平成15年(行ケ)192号)においても、同趣旨の判断がなされている(乙30)。
オ 以上の事実に鑑みるかぎり、少なくとも、請求人以外の者が単に「キューピー」の文字や図形を含む商標を使用したからといって、これにより請求人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがあるとは到底考えることができない。
(3)本件指定商品と引用商標9、引用商標10の指定商品との関連性
ア なお、請求人が掲げる引用商標9、引用商標10の指定商品は、第30類「調味料,香辛料」である。
一方、本件商標の指定商品(以下「本件商品」ということがある。)は、第5類「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンテイ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,失禁用おしめ,乳糖,乳幼児用粉乳」である。
本件商品は、いずれも請求人が全く使用していない商品と解されることはもとより、以下のとおり、いずれも引用商標の指定商品と出所の混同を生じるほどの関連性を有するとは考えられない。
イ 特に、本件商品中「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」(類似群01C01)は、旧日本分類において第1類中いわゆる「医療補助品」に属していた商品である。また、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」(国際分類第9版対応)によると、上記本件商品中「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」について、『これらは主として薬局、薬店で販売され、一般に家庭でも使われる衛生用品であり、この中には薬事法にいう“医薬品”の一部(例えば、ガーゼ、脱脂綿等)も含まれる。また、「ガーゼ」「脱脂綿」等は、医師が使用するものも含まれる。』と説明されている。このような、一般に「医療補助品」や「衛生用品」に属する商品を、「調味料、香辛料」と比較してみた場合、互いに商品の生産者・販売者・流通経路・原材料・用途等を明らかに異にする、異業種に係る商品群であることが明らかである。
ウ また、本件商品中「失禁用おしめ」についても、「調味料,香辛料」と比較した場合に商品の生産者・販売者・流通経路・原材料・用途等を明らかに異にすることは、上記で述べたことと同様である。
エ 本件商品中「乳糖」について、請求人は、引用商標9、引用商標10の指定商品中「調味料」と類似群(31A03)を共通にする旨主張する。とはいえ、実際に「乳糖」と類似群を共通にする指定商品は「調味料」中の「角砂糖,果糖,氷砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ」のみである。この点,被請求人が確認した限りにおいて,請求人が上記「角砂糖,果糖,氷砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ」に引用商標9、引用商標10を現に使用しているとの事実は見受けられなかった。したがって、そもそも引用商標9、引用商標10が指定商品「角砂糖,果糖,氷砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ」との関係で、現に広く認識されている商標といえるのかどうか疑問である。
オ 本件商品中「乳幼児用粉乳」について、請求人は、請求人の使用する商品である「ベビーフード(乳児用食品)」(以下、便宜的に「乳児用食品」とする)との関連性を強調している。
しかし、そもそも、この「乳児用食品」は、引用商標9、引用商標10の指定商品に包含される商品ではないと解される。この点、一般に、乳児用の食品が、同時にマヨネーズやソース類といった「調味料、香辛料」としても利用されるという実態は存在しないし、実際、請求人の商品一覧表(甲49、甲50)をみても、調味料や香辛料として使用される商品が掲載されているとは考え難い。また、一般的に「調味料、香辛料」と「乳児用食品」の製造者は共通する等の事情も見当たらない。したがって、単に請求人が商品「乳児用食品」について引用商標9、引用商標10と同態様の商標を使用しているという事実は、少なくとも引用商標9、引用商標10と本件商標との混同可能性を論じる場合においては直接の影響を与えないものと思料する。
(4)そして、最後に付言すると、本件商標は、あくまでも「コスチュームキューピー」という不可分一体の商標である。本件商標からは「コスチュームをつけたキューピー」という一体的な観念が自然に生じるのであるから、それ以上に請求人商標を想起することはない。本件商標は、引用商標9、引用商標10とは明らかに別異の商標である。
また、被請求人等が根付や携帯電話機用ストラップを初めとする複数の商品に本件商標を付して日本全国で使用した結果、本件商標「コスチュームキューピー」は、それ自体、今までにないユニークなキャラクター商品に付された商標として、日本全国で広く認知されるに至っている。よって、本件商標に接した者は、「コスチュームをつけたキューピー」或いは「コスチュームキューピー」というキャラクターそのものを想起しつつ、これを本件商品に係る商標「コスチュームキューピー」としてそのまま認識・把握するものである。
よって、たとえ引用商標9、引用商標10それ自体が一定の著名性を有していることを考慮するとしても、商標の相違、商品分野の相違、更には「キューピー」の文字の意味や実際の取引実情を総合的に考慮する限り、本件商標が、引用商標9、引用商標10との関係上、請求人の業務に係る商品等と混同を生じるおそれがないことは明らかである。
(5)小括
以上のとおり、本件商標「コスチュームキューピー」は、これを本件指定商品分野に使用しても、請求人の業務に係る商品等であると混同されるおそれはない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
3 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも該当しないから、商標法第46条第1項の規定により無効にされるべき商標にはあたらない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、「コスチュームキューピー」の片仮名よりなるところ、その構成中の「コスチューム」の文字は、「特定の民族・階級・時代・地方の服装。髪型・装身具も含めていう。仮装・演劇などの衣装。上下揃いの婦人服。」の意味を有するものであり、また、その構成中の「キューピー」の文字は、「オニール(Rose O’Neill 1874?1944)のキューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちゃ。頭の先がとがり、目の大きい裸体の人形。1910年代にアメリカで発売。」の意味を有する(ともに「広辞苑第六版」:株式会社岩波書店)ものであって、これらの語は、我が国において一般によく知られているといえるものである。
そして、本件商標は、「コスチュームキューピー」の文字を、同書、同大、等間隔に、まとまりよく一体的に表されているものであって、これより生ずる「コスチュームキューピー」の称呼も格別冗長というべきものではなく、一連に無理なく称呼し得るものである。
その他、本件商標の構成文字について、格別に分断の要素はないものである。
また、被請求人の提出に係る乙第9号証ないし乙第16号証によれば、被請求人は、「コスチュームキューピー」の商標権について、「商標権通常使用権設定契約書」によって、株式会社オンリーワン(以下「オンリーワン社」という。)に通常使用権を認めているものである。そして、オンリーワン社は、「キーホルダー、ストラップ」等のいわゆるファンシーグッズに「コスチュームキューピー」の商標を使用し、2003年頃よりその販売を始めた。その後、地域限定など各種のコスチュームをつけたキューピー人形として、人気商品となった「コスチュームキューピー」は、全国で販売されるようになり、その売上数量からすれば、本件商標は、需要者に相当程度知られるようになったものと認められるものである(「読売新聞2007年5月2日」:乙12の1、売上実績表:乙16)。
そうとすれば、本件商標「コスチュームキューピー」は、一義的には特定の成語としての観念は生じないとしても、一般によく知られている「コスチューム」及び「キューピー」の語の意味、並びに、上記商品名としての周知性によって、「コスチュームをつけたキューピー」程の意味合いを生ずるものである。
してみれば、本件商標からは、「コスチュームキューピー」の称呼のみを生じ、「コスチュームをつけたキューピー」の観念を生ずるものというのが相当である。
なお、請求人は、「通常使用権者自身により、実際に『コスチュームキューピー』の語が単に『キューピー』と略されている事実がある。」旨の主張をしているが、たとえ、「キューピー」の語が使用されている事例が散見されるとしても、そのほとんどの使用は、商品の特徴を表したご当地キューピーとして「○○キューピー」(○○には、地名や特色など表示する文字が入る。)などの名称で使用されており、本件商標が単に略されて使用されているものとはいえないものである。
(2)引用各商標について
ア 引用商標1ないし引用商標7、引用商標9、引用商標10、引用商標12及び引用商標13は、いずれも「KEWPIE」の欧文字、「キューピー」の片仮名、「キューピー人形の図形」、あるいはこれらの組合せよりなるものであるから、それぞれから、「キューピー」の称呼を生じ、「キューピー人形」の観念を生ずるものである。
イ 引用商標8は、「キューピー人形(下半身が鐘に隠れている。)と鐘の図形」及び「キューピー」の文字よりなるものであるところ、その構成中の「キューピー」の文字に相応して、「キューピー」の称呼を生じ、「キューピー人形」の観念を生ずるものである。また、図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
ウ 引用商標11は、「キューピッド」(ローマの恋愛の神。通常、裸で背に小さい翼が生え、弓を手にする子供として描かれる。)と思しき特徴をもった子供の図形と、「KEWPIE」の文字よりなるところ、その構成中の「KEWPIE」の文字に相応して、「キューピー」の称呼を生じ、「キューピー人形」の観念を生ずるものである。また、図形部分からは、直ちに特定の称呼及び観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用各商標との類否について
本件商標と引用各商標とを比較するに、外観においては、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別できる差異を有するものである。
称呼においては、本件商標からは「コスチュームキューピー」の一連の称呼のみが生じるものであり、引用各商標からは、「キューピー」の称呼を生じるものであるから、両称呼は、構成音数の相違及び相違する構成音の差によって、相紛れることなく区別できるものである。
観念においては、本件商標からは「コスチュームをつけたキューピー」の観念を生じるものであり、引用各商標からは、「キューピー人形」の観念を生じるものであるから、観念上明確に区別できる差異を有するものである。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、何ら相紛れることのない非類似のものであって、明確に区別できる別異の商標である。
なお、本件商標より「キューピー」の称呼、「キューピー(人形)」の観念が生じるとした上で、本件商標と引用各商標とが類似するとする請求人の主張は、その前提において誤りといえるものであるから、この点に関する請求人の主張は採用の限りでない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標9及び引用商標10との類否について
請求人が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する引用商標9は、別掲6のとおりの構成よりなり、左右の手を広げて直立している裸のキューピー人形の図形を描いてなるものである。また、同様に引用する引用商標10は、「キューピー」の文字よりなるものである。
そして、請求人の提出に係る甲第19号証ないし甲第47号証によれば、引用商標9及び引用商標10は、請求人「キューピー株式会社」の業務に係る商品、主に「マヨネーズ、ドレッシング」等に使用され、本件商標の登録出願日前はもとより、登録査定時においても需要者間に広く知られていることが認められる。
しかしながら、本件商標と引用商標9及び引用商標10とは、上記1のとおり、その外観、称呼及び観念のいずれからみても明らかに区別し得る別異の商標である。
(2)本件商標と引用商標9及び引用商標10に係る商品の類否について
本件商標の指定商品である第5類「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,失禁用おしめ,乳糖,乳幼児用粉乳」は、主として、医療用に関連した商品であって、医療補助品や衛生用品などの商品といえるものである。
これに対して、引用商標9及び引用商標10の指定商品である第30類「調味料,香辛料」は、食品における調味料に関連した商品である。
そうすると、基本的に商品の分野が相違し、その商品の生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途、需要者等が相違するものであるから、非類似の商品というべきである。
(3)出所の混同について
前記(1)において認定したとおり、請求人の「キューピー人形の図形」及び「キューピー」の商標が請求人の業務に係る「マヨネーズ、ドレッシング」等の商品について使用されている商標として、本件商標の登録出願日前はもとより、登録査定時においても需要者間に広く知られていることが認められるものである。
しかしながら、前記(1)及び(2)において認定したとおり、本件商標と引用各商標等とは、十分に区別し得る別異の商標というべきものであり、互いの商品も類似しない商品というべきものである。
そして、上記認定のとおり、本件商標からは「コスチュームキューピー」の一連の称呼、「コスチュームをつけたキューピー」の観念を生じるものであり、引用商標9及び引用商標10からは、「キューピー」の称呼、「キューピー人形」の観念を生じるものであって、また、「キューピー」の語は、請求人の創造に係る語でないことは明らかであるから、この観点からみても、本件商標構成中の「キューピー」の文字部分のみが殊更強く印象付けられるということもない。
そうとすれば、引用商標9及び引用商標10の著名性の程度、その商標の独創性、商標間の類似性の程度、商品間の類似性の程度等を総合勘案してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標9及び引用商標10を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
なお、請求人は、本件商標の指定商品と、販売店舗・売り場を同じくする商品について、引用商標9及び引用商標10と同一態様の商標を使用していると述べ、請求人の販売する商品「ベビーフード(乳児用食品)」と本件商標の指定商品に含まれる商品「乳幼児用粉乳」が百貨店等のベビー用品売り場や「赤ちゃん本舗」や「トイザらス(ベビーザらス)」等の幼児・子供用品専門店で販売されていることは明らかであり、本件商標をその指定商品「乳幼児用粉乳」について使用した場合には、引用商標9及び引用商標10との間で出所の混同が生じるおそれは極めて高いといわざるを得ない、旨の主張をし、また、引用商標9及び引用商標10は、商品「調味料」を含む食品関連商品等について、非常に高い著名性を獲得しているものである。一方、本件商標の指定商品には「乳糖」が含まれ、この商品は、食品として又は食品の原料として使用されるものであるから、両商品は互いに類似するものと考えられるものであって、「キューピー」の語を含む本件商標が、請求人の主力商品である「調味料」と類似の関係にある商品「乳糖」について使用された場合には、本件指定商品「乳糖」があたかも請求人の取扱いにかかるかのような、または、請求人の関連会社の取扱いにかかる商品であるかのような出所の混同が需要者において生じるおそれがあるといわざるを得ない、旨の主張もしている。
しかしながら、たとえ、「ベビーフード(乳児用食品)」と「乳幼児用粉乳」が販売店舗、売り場を同じくする商品であって、乳児用の商品という共通点があるとしても、また、「乳糖」が食品の原材料としての用途もあって、「調味料」と「乳糖」が関連性を有する場合があるとしても、上記のとおり、本件商標と引用商標9及び引用商標10とは、商標において別異のものであるから、被請求人が本件商標を「乳幼児用粉乳,乳糖」に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標9及び引用商標10を連想、想記して、請求人若しくは請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、請求人のいずれの主張も採用できない。

3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(引用商標4)


別掲2(引用商標5)


別掲3(引用商標6)


別掲4(引用商標7)


別掲5(引用商標8)


別掲6(引用商標9)


別掲7(引用商標11)


別掲8(引用商標12)



< 別記 >
引用商標1ないし引用商標13の指定商品は、下記の(1)ないし(13)のとおりである。
(1)引用商標1(登録第2399233号商標)
第1類「化学品,植物成長調整剤類,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」、第2類「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,セラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」、第3類「かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用海草のり,洗濯用コンニャクのり,洗濯用柔軟剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用漂白剤,洗濯用ふのり」、第4類「固形潤滑剤」、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」、第8類「ピンセット」、第10類「氷まくら,三角きん,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」、第19類「タール類及びピッチ類」及び第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤」
(2)引用商標2(登録第4564585号商標)
第5類「歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,人工受精用精液,乳児用粉乳,乳糖,防虫紙,乳児の離乳育児用菓子,乳児の離乳育児用清涼飲料,乳児の離乳育児用果実飲料,乳児の離乳育児用飲料用野菜ジュース,乳児の離乳育児用乳清飲料,その他の乳児の離乳育児用加工食品,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に食肉を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に食用水産物を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に野菜を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,その他の咀嚼嚥下障害者用食品」、第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,ハムサラダ,ポテトサラダ,マカロニサラダ,その他のサラダ,その他の加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,乾燥卵,液卵,冷凍卵,茹で卵,卵焼き,スクランブルエッグ,その他の加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,ミートソース,その他のパスタソース,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,卵どうふ,食用たんぱく,食用卵殻粉を主材とする粉状・液状又はタブレット状の加工食品」、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,茶わん蒸し,オムレツ,スコッチエッグ,粥,ぞうすい,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,酒かす」、第31類「あわ,きび,ごま,そば,とうもろこし,ひえ,麦,籾米,もろこし,うるしの実,コプラ,麦芽,ホップ,未加工のコルク,やしの葉,食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,獣類・魚類(食用のものを除く。)・鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。),蚕種,種繭,種卵,飼料,釣り用餌,果実,野菜,糖料作物,種子類,木,草,芝,ドライフラワー,苗,苗木,花,牧草,盆栽,生花の花輪,飼料用たんぱく」、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料,ビール製造用ホップエキス」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」
(3)引用商標3(登録第4569666号商標)
第5類「歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,人工受精用精液,乳児用粉乳,乳糖,防虫紙,乳児の離乳育児用菓子,乳児の離乳育児用清涼飲料,乳児の離乳育児用果実飲料,乳児の離乳育児用飲料用野菜ジュース,乳児の離乳育児用乳清飲料,その他の乳児の離乳育児用加工食品,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に食肉を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に食用水産物を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に野菜を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,その他の咀嚼嚥下障害者用食品」
(4)引用商標4(登録第74144号商標)
第1類「無機酸類,有機酸類,無機塩類,有機塩類,アルカリ,漂白粉(洗濯用のものを除く。),アラビヤゴム,にかわ(事務用又は家庭用のものを除く。),りん,エチルアルコール,グリセリン,硫黄(化学品),オゾン,酸素ガス,しょうのう,しょうのう油(化学品),蒸留水,人造しょうのう,炭酸ガス,はっかのう,はっか油(化学品),竜のう」、第2類「マスチック,松脂」、第3類「洗濯用漂白粉,じゃ香,粉末又は水液の人工又は天然の香精(精油からなる食品香精以外の食品香精を除く。),芳香油(しょうのう油(化学品)・はっか油(化学品)を除く。)」、第5類「薬剤(日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。),ばんそうこう,包帯,綿紗,綿撒糸,脱脂綿,医療用海綿,オブラート」、第16類「事務用又は家庭用のにかわ」及び第30類「食品香精(精油のものを除く。)」
(5)引用商標5(登録第4272955号商標)
第5類「歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,人工受精用精液,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,防虫紙,乳幼児の離乳育児用菓子,乳幼児の離乳育児用清涼飲料,乳幼児の離乳育児用果実飲料,乳幼児の離乳育児用飲料用野菜ジュース,乳幼児の離乳育児用乳清飲料,その他の乳幼児の離乳育児用加工食品,流動状の医療食餌療法用食品」
(6)引用商標6(登録第5037089号商標)
第5類「歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液,乳児の離乳育児用清涼飲料,乳児の離乳育児用果実飲料,乳児の離乳育児用飲料用野菜ジュース,乳児の離乳育児用乳清飲料,乳児の離乳育児用菓子,その他の乳児の離乳育児用加工食品,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に食肉を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に食用水産物を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,調味付けしたゾル又はゲル中に野菜を主材とする小片具材を含んでなる咀嚼嚥下障害者用食品,その他の咀嚼嚥下障害者用食品」
(7)引用商標7(登録第5202422号商標)
第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」
(8)引用商標8(登録第619822号商標)
第30類「調味料」
(9)引用商標9(登録第595694号商標)
第30類「調味料,香辛料」
(10)引用商標10(登録第832283号商標)
第30類「調味料,香辛料」
(11)引用商標11(登録第3256011号商標)
第30類「茶,調味料,香辛料,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミ?トパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリ?ムのもと,シャ?ベットのもと,ア?モンドペ?スト」
(12)引用商標12(登録第4343852号商標)
第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,ハムサラダ,ポテトサラダ,マカロニサラダ,その他のサラダ,その他の加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,乾燥卵,液卵,冷凍卵,茹で卵,卵焼き,スクランブルエッグ,その他の加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,ミートソース,その他のパスタソース,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,卵どうふ,食用たんぱく,食用卵殻粉を主材とする粉状・液状又はタブレット状の加工食品」及び第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,茶わん蒸し,オムレツ,スコッチエッグ,粥,ぞうすい,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,酒かす」
(13)引用商標13(登録第4410202号商標)
第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,ハムサラダ,ポテトサラダ,マカロニサラダ,その他のサラダ,その他の加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,乾燥卵,液卵,冷凍卵,茹で卵,卵焼き,スクランブルエッグ,その他の加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,ミートソース,その他のパスタソース,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,卵どうふ,食用たんぱく,食用卵殻粉を主材とする粒状・液状又はタブレット状の加工食品」及び第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,茶わん蒸し,オムレツ,スコッチエッグ,粥,ぞうすい,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,酒かす」




審理終結日 2011-08-31 
結審通知日 2011-09-05 
審決日 2011-09-29 
出願番号 商願2010-21138(T2010-21138) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (X05)
T 1 11・ 271- Y (X05)
T 1 11・ 261- Y (X05)
T 1 11・ 262- Y (X05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中束 としえ 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2010-09-10 
登録番号 商標登録第5352173号(T5352173) 
商標の称呼 コスチュームキューピー、コスチューム、キューピー 
代理人 中川 拓 
代理人 高田 泰彦 
代理人 吉村 公一 
代理人 宮嶋 学 
代理人 柏 延之 
代理人 宇梶 暁貴 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 宮城 和浩 
代理人 黒瀬 雅志 

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