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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X25
審判 全部申立て  登録を維持 X25
管理番号 1246591 
異議申立番号 異議2011-900211 
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2011-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-06-10 
確定日 2011-11-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5396842号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5396842号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5396842号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成22年11月30日に登録出願され、第25類「フランス製またはフランスでデザインされた被服,フランス製またはフランスでデザインされたガーター,フランス製またはフランスでデザインされた靴下止め,フランス製またはフランスでデザインされたズボンつり,フランス製またはフランスでデザインされたバンド,フランス製またはフランスでデザインされたベルト,フランス製またはフランスでデザインされた履物,フランス製またはフランスでデザインされた仮装用衣服,フランス製またはフランスでデザインされた運動用特殊衣服,フランス製またはフランスでデザインされた運動用特殊靴」を指定商品として、同23年2月8日に登録査定、同年3月11日に設定登録されたものである。

2 引用商標
(1)登録第4479759号商標(以下「引用商標1」という。)
商標 別掲2のとおり
指定商品 第25類に属する商標登録原簿記載の商品
登録出願日 平成12年8月21日
設定登録日 平成13年6月1日
(2)登録第4666475号商標(以下「引用商標2」という。)
商標 別掲2のとおり
指定商品 第27類に属する商標登録原簿記載の商品
登録出願日 平成14年10月17日
設定登録日 平成15年4月25日
(3)登録第4984425号商標(以下「引用商標3」という。)
商標 別掲2のとおり
指定商品 第18類に属する商標登録原簿記載の商品
登録出願日 平成18年3月9日
設定登録日 平成18年9月1日
(4)登録第5085281号商標(以下「引用商標4」という。)
商標 別掲2のとおり
指定商品 第8類に属する商標登録原簿記載の商品
登録出願日 平成18年7月13日
設定登録日 平成19年10月19日
(5)登録第5085283号商標(以下「引用商標5」という。)
商標 別掲2のとおり
指定商品 第21類に属する商標登録原簿記載の商品
登録出願日 平成18年7月13日
設定登録日 平成19年10月19日
(6)登録第5095566号商標(以下「引用商標6」という。)
商標 別掲2のとおり
指定商品 第14類に属する商標登録原簿記載の商品
登録出願日 平成18年7月13日
設定登録日 平成19年11月30日
(7)申立人が使用するとする「PARIS」の文字からなる商標(以下「引用商標7」という。)
商標 別掲3のとおり
使用商品 「レディス・メンズウェア、ナイトウェア、インナー、ソックス、靴、履物、鞄、袋物、ベルト、革小物、ネクタイ、ネックウェア、ハンカチ、スカーフ、マフラー、メガネ、フレーム、サングラス、アクセサリー、貴金属、時計」等
以下、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の主張において引用している引用商標1ないし引用商標6の商標を総称するときには「引用商標」といい、同第10号に該当する旨の主張において引用している引用商標1ないし引用商標7は、「申立人使用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第33号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号
本件商標と引用商標は、それぞれ、その構成中特異なデザイン態様で表された「PARIS」の文字部分をもって、取引に資されることがあり得るものであるから、両者は、外観、称呼及び観念を共通にする類似の商標である。また、本件商標と引用商標の「PARIS」の欧文字部分の態様は同一であることから、需要者、取引者は、本件商標及び引用商標を使用した各指定商品に接した場合には、同一の営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれが極めて高く、本件商標と引用商標とは商品の出所について誤認混同を生じさせる類似のものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人使用商標について
申立人は、平成10年より今日に至るまで、申立人使用商標を、自社及びライセンシーを通じて、鞄、財布及びベルト等、広くファッション関連商品に継続して使用している。
そして、申立人使用商標は、本件商標の商標登録出願時及び査定時において、申立人商品を表示するものとして需要者に広く認識されている商標となっていた。
申立人は、平成8年に、ロア株式会社と商標登録第3184321号(甲第10号証及び甲第11号証)、同第1805136号(甲第12号証及び甲第13号証)等について、商標使用許諾契約を締結し、べルト、財布、カバン、衣料品等にこれら登録商標を使用していた。そして、「パリス」ブランド事業の大々的な展開を開始した。
この「パリス」ブランド事業の拡張にともない、申立人は、申立人使用商標を「パリス」ブランドの主要態様の一つとし、引用商標について商標登録も取得した(甲第2号証ないし甲第7号証)。そして、今日に至るまで、多くの企業にこれら登録商標を軸としたライセンスを与え(甲第15号証及び甲第16号証)、宣伝広告にも多大な力を入れてきた結果、申立人使用商標は広く認知されるものとなっている。
企業調査・市場調査等で有名な株式会社矢野経済研究所(甲第17号証)が発刊する「ライセンスブランド全調査」には、ライセンスマーケットの動向を示すライセンスブランドの売上高ランキングが掲載されている。この売上高ランキングで、「パリス」ブランドは、2001年度は上代ベースで19位(233.3億円)出荷ベースで26位(140億円)(甲第18号証)、2002年度は出荷ベースで19位(150億円)(甲第19号証)、2003年度は出荷ベースで27位(130億円)(甲第20号証)、2004年度は出荷ベースで37位(90億円)(甲第21号証)となっている。ここで記載されている「パリス」ブランドとは、申立人使用商標を含む申立人の商標を示すものである(甲第22号証)。
ブランドのライセンシングが盛んに行われているファッション関連業界において、無数に存在するファッションブランドの中で、上述のとおり「パリス」ブランドが何年にもわたって連続して上位にランキングされている事実は、引用商標が広く使用され、需要者・取引者間において広く認識されていることの証左である。
また、ボイス情報株式会社が発行する「ライセンスブランド名鑑」でも、他の有名ブランドと並んで、「パリス」ブランドがリストされており(甲第24号証及び甲第25号証)、ライセンシングの対象として取引者等に注目されているといえる。
さらに、申立人は、引用商標の使用開始以降今日に至るまで、宣伝広告にも多大な力を入れている。例えば、西日本の中心地ともいえる大阪では、特に繁華な場所を選んで広告を出しており(甲第26号証ないし甲第33号証)、このような一例を含め、看板、業界紙、雑誌等において年間8000万円ないし1億円もの費用を費やして宣伝広告活動を行っている。
ウ 本件商標と申立人使用商標との類否
本件商標と引用商標との類否については、上述したとおりである。そして、引用商標7は、引用商標の構成中の「PARIS」の欧文字と同一のものであるから、本件商標は、引用商標7との関係においても、外観、称呼、観念のいずれの点からしても、互いに相紛らわしい類似の商標というべきものである。
エ 本件商標の指定商品と申立人使用商標に係る商品との類否
本件商標は、前記1のとおり、第25類「フランス製またはフランスでデザインされた被服,フランス製またはフランスでデザインされたガーター,フランス製またはフランスでデザインされた靴下止め,フランス製またはフランスでデザインされたズボンつり,フランス製またはフランスでデザインされたバンド,フランス製またはフランスでデザインされたベルト,フランス製またはフランスでデザインされた履物,フランス製またはフランスでデザインされた仮装用衣服,フランス製またはフランスでデザインされた運動用特殊衣服,フランス製またはフランスでデザインされた運動用特殊靴」に使用するものである。これに対し、申立人使用商標は、レディス・メンズウェア、ナイトウェア、インナー、ソックス、靴、履物、鞄、袋物、ベルト、革小物、ネクタイ、ネックウェア、ハンカチ、スカーフ、マフラー、メガネ、フレーム、サングラス、アクセサリー、貴金属、時計等、多岐にわたるファッション関連商品に継続して使用されている(甲第18号証ないし甲第21号証及び甲第26号証ないし甲第33号証)。
してみれば、本件商標の指定商品と申立人使用商標に係る商品とは、同一又は類似の商品といえる。
オ したがって、本件商標は、その出願前より登録査定時に至るまで、申立人使用商標に係る商品を表示するものとして、当該商品の需要者の間に広く認識されていた申立人使用商標と類似の商標であって、申立人使用商標が使用される商品と同一又は類似の商品について使用するものであることから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、上段に「MONSIEUR PARIS」のひげ飾りのついた欧文字と、下段には、上段の「PARIS」と同一の書体からなり、上段の文字に比して縦横のいずれも略4倍程度の大きさからなる「PARIS」の欧文字とを二段に横書きしてなるものであるところ、上段の各構成文字は、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく一体的に表されたものであり、かかる文字から生ずる「ムッシュパリス」の称呼も冗長ではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、その構成中の「PARIS」の語は、一般には「フランスの首都パリ」を意味する語として知られているものの、欧米における氏姓の一を表す語でもあり、これに男性に冠する敬称であって「…様…さん…氏」の意味を有するフランス語として我が国において知られている「MONSIEUR」の語を冠して、「MONSIEUR PARIS」と書してなる上段の文字部分は、その構成全体をもって「パリスさん」の意味を表したというべきものであり、これに接する取引者、需要者をして、その全体が一体不可分のものとしてのみ把握されるとみるのが自然である。
また、その構成中、下段の「PARIS」の文字についてみるに、被服等の取引業界においては、商品に関するファッションをリードする地の一つとしてフランスのパリ(paris)が一般に認識されていること、事業者の取り扱う商品がフランス製であることを表したり、当該事業者の本店等が首都パリに所在する等の事情を示すために、出所表示標識とともに、「PARIS」の欧文字を併記することが盛んに行われているというのが取引上の顕著な実情であることに加え、本件商標は、前記1のとおり、「フランス製の被服,フランスでデザインされた被服」のように、いずれも、フランス製又はフランスでデザインされた商品のみを指定商品とするものである。
そうとすれば、フランス製又はフランスでデザインされた商品のみをその指定商品とする本件指定商品に本件商標を使用した場合、これに接する取引者・需要者は、該「PARIS」の文字部分を商品の属性にかかわる表示、つまり、当該商品がフランスあるいはパリにかかわりがある旨の表記として捉えるというのが相当であり、当該部分から生ずる称呼及び観念をもって取引に当たるとはいい難いものである。
してみれば、本件商標は、下段の「PARIS」の文字が、上段の「MONSIEUR PARIS」の文字に比べて、相当程度大きく表されているとしても、該「PARIS」の文字部分から、取引上、商品の出所を識別するための「パリ」あるいは「パリス」(フランスの首都パリ)なる称呼及び観念は生じないというのが相当であるから、本件商標からは「ムッシュパリス」の称呼及び「パリス様、パリスさん」の観念のみが生ずるというべきであり、また、他に構成中の「PARIS」の文字部分のみを分離抽出すべき特段の事情も見いだせない。
イ 引用商標(引用商標1ないし引用商標6)について
引用商標は、別掲2のとおり、二重の楕円状輪郭線の内側中央部に、肉厚の直線や曲線及び細線によってやや図案化された構成文字に極く小さな跳ねたひげのような線を付加した「PARIS」の欧文字を表し、その下に、「accessories for men」の欧文字を小さく表し、かつ、外側輪郭線と内側輪郭線の間に「Massachusetts・NewYork・LosAngeles・Chicago・Dallas」及び左右に小さな図形を配して「Established1887」の文字を小さく表してなるものである。
そして、「Massachusetts」、「NewYork」、「LosAngeles」、「Chicago」及び「Dallas」の各文字が、いずれも我が国において一般によく知られた地名を表したものであることからすれば、該「PARIS」の文字は、中央に大きく表されているとしても、他の文字と同様に地名を表したとの認識をもって把握されるものとみるのが自然である。
そうとすれば、「PARIS」の文字は、大きく表されており、やや図案化されているとはいえ、そのことから直ちに該文字のみが看者に他の文字と別異の認識を与えるものとはいい難く、引用商標は、その構成全体が密接に結合した一種固有の識別標識というべきものであり、該「PARIS」の文字部分は、商品の属性にかかわる表示、つまり、当該商品がフランスの首都パリにかかわりのある表記として捉えられるものであって、該文字部分から、商品の出所を識別するための称呼及び観念は生じないというのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、上述のとおり「MONSIEUR」と「PARIS」並びに「PARIS」との結合した商標であって、殊更に「PARIS」の文字部分のみが分離抽出されて取引の場において着目されるものとはいい難く、むしろ、全体を一体のものとしてのみとらえられる商標というべきものである。
他方、引用商標は、二重の楕円状輪郭図形とその内側に配された文字とが密接に結合した一種固有の態様からなる商標というべきものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、その構成において著しい差異を有するから、外観において類似するものとはいえない。また、本件商標は、その構成全体に相応する「ムッシュパリス」の称呼及び「パリスさん」の観念を生ずるのに対し、引用商標は、その構成中の「PARIS」の文字部分から商品の出所を識別するための称呼及び観念を生ずることはないものというべきであるから、該文字から生ずる称呼及び観念においては比較すべくもなく、ほかに、両商標が称呼及び観念において類似するものとすべき理由は見いだせない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
そうとすると、本件商標から「PARIS」の文字部分も独立して認識されることを前提に、その上で本件商標と引用商標とが該文字部分において、類似するものとする申立人の主張は採用できない。
その他、本件商標と引用商標とが類似するとすべき理由は見当たらない。
したがって、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標と申立人使用商標(引用商標1ないし7)との類否について
上記(1)において判断したとおり、本件商標と引用商標(引用商標1ないし6)とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものである。
次に、本件商標と引用商標7との類否についてみるに、引用商標7は、別掲3のとおり、引用商標構成中の「PARIS」の文字と同じ態様からなるものであって、肉厚の直線や曲線及び細線によってやや図案化された構成文字に極く小さな跳ねたひげのような線を付加した「PARIS」の欧文字からなるものである。
そこで、両商標の類否について判断するに、上記(1)のとおり、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものとしてのみ把握されるものであるから、その構成中の「PARIS」の文字部分が、取引上分離、抽出され、独立して商品の出所識別標識としての機能を果たすとは認められないものである。
そうすると、本件商標と引用商標7の「PARIS」の文字が商品の出所識別標識としての機能を果たすことを前提に、その上で、本件商標と引用商標7とが当該文字の外観、称呼及び観念において類似するものとする申立人の主張は採用できない。そして、ほかに本件商標と引用商標7とが類似するとすべき理由は見当たらない。
したがって、本件商標と引用商標7とは、相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
イ 申立人使用商標の周知性について
申立人は、申立人使用商標の周知性を示す証拠として、甲第15号証ないし甲第33号証を提出している。
しかしながら、以下の理由により、上記甲各号証をもってしては、申立人使用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品、その中でも、本件商標の指定商品と同一又は類似の関係にある「被服」や「履物」等の商品を表示する商標として、需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
(ア)甲第15号証は、「ライセンシーリスト」と題する書面であり、上段に3種類の商標が表示されており(これは、甲第16号証に記載されている商標と同じものと認められる。)、34社(そのうちの1社は、申立人であるヤング産業株式会社である。)のライセンシーが記載されているところ、各ライセンシーの扱い商品は、本件商標の指定商品と同一又は類似の関係にある「被服」や「履物」等の商品ばかりでなく、「レディスバッグ全般、傘、メガネ、サングラス、メンズアクセサリー、陶器全般」等々多岐にわたるものである。しかも、34社のライセンシーの中には、本件商標の出願時には既に契約使用期間が終了しているものも多く、契約継続中のものであっても、本件商標の指定商品と関係のある商品を扱っているライセンシーはわずか8社に減少している。
(イ)甲第16号証は、申立人が株式会社リオンドールとの間で締結した商標使用許諾契約書と認められるものであり、「メンズ重衣料、レディス重衣料」等の商品について商標の使用許諾を与えているが、使用許諾した商標のうち、引用商標1(登録第4479759号商標)と事実上の使用を認めている「PARIS」の商標が本件申立てにおいて引用されている商標であり、他の2件(登録第1805136号商標及び登録第5074560号商標)は、引用商標1との類否は別にして、引用に係る商標ではない。
(ウ)甲第17号証は、株式会社矢野経済研究所のウェブサイトであり、該社の事業内容やメディア掲載実績等が掲載されているが、これ自体は、申立人使用商標の周知性とは関係のないものである。
(エ)甲第18号証ないし甲第21号証は、株式会社矢野経済研究所発行の「ライセンスブランド全調査<還元資料>」の抜粋であり、甲第18号証は2002年版、甲第19号証は2003年版、甲第20号証は2004年版、甲第21号証は2005年版のものである。これらに掲載されている「ライセンスブランド売上高ランキング(出荷ベース)」によれば、「パリス」商標に係る商品の売上額及びランキングは、2001年度においては約140億円であって26位(甲第18号証)、2002年度においては約150億円であって19位(甲第19号証)、2003年度においては約130億円であって27位(甲第20号証)、そして、2004年度においては約90億円であって37位(甲第21号証)となっていたことが認められる。
しかしながら、これらのデータは、2001年度から2004年度までのものであって、本件商標の出願時である2010年当時の状況を示すものではない。しかも、これらの売上額の中には、具体的な金額は表示されてはいないが、展開アイテムとして「鞄、寝装寝具、インテリア、メガネ、サングラス、アクセサリー、貴金属、時計」等々の商品も含まれており、本件商標の指定商品及びこれに類似する商品のみを対象としたデータではない。
そうすると、甲第18号証ないし甲第21号証をもってしては、本件商標の出願当時(2010年11月)において、かつ、本件商標の指定商品又はこれに類似する商品について、「パリス」商標に係る商品がどの程度販売されていたものであるのか、どれ位の順位にランクされていたものであるのかを確認することができない。
ちなみに、上記証拠によれば、2002年度以降、売上高は年々減少しており、このことは、甲第15号証(ライセンシーリスト)の箇所でも述べたとおり、ライセンシーが減少していることと符合しているものと考えられる。甲第15号証によれば、2002年当時には34社あったライセンシーが本件商標の登録出願前の2008年4月9日には13社に減少しており、しかも、本件商標の指定商品と関係のある商品を扱っているライセンシーに限ってみれば、わずか8社に減少しており、その後、本件商標の登録出願時までの間、売上高が増加(回復)したことを認めるに足る証拠も見当らない。
そうとすれば、本件商標の出願時における被服等についての「パリス」商標に係る商品の売上高は、ライセンシーの減少に伴い、相当減少していたものと推認し得るところであるから、本件商標の出願時における被服等についての「パリス」商標が需要者の間に広く認識されていたものと認めるに足る程の売上げがあったかは疑問であるといわざるを得ない。
(オ)甲第22号証は、株式会社矢野経済研究所が平成22年11月4日付けでヤング産業株式会社(申立人)へ宛てた「証明書」と題する書面であり、「2002年版ライセンスブランド全調査<還元資料>」ないし「2005年版ライセンスブランド全調査<還元資料>」に掲載されているブランド名「パリス」は、「ヤング産業株式会社『パリス』商標リスト(添付資料5)」に記載の商標を示すものであることを証明する旨記載されている。添付資料5に表示されている商標は、引用商標と同一の構成からなる商標の外、引用商標構成中の「極く小さな跳ねたひげのような線を付加してやや図案化されたPARIS」の文字部分のみからなる商標及び引用商標構成中の「PARIS」の文字部分の態様を異にした2種類の商標と該2種類の「PARIS」の文字部分のみからなる商標である。
しかしながら、添付資料5は、該ライセンスブランド全調査に掲載されているブランド名「パリス」に代表される個々の商標の態様を示しているにすぎないものであるから、甲第22号証自体は、申立人使用商標の周知性を証明するものではない。そして、添付資料5から、該ライセンスブランド全調査に掲載されているブランド名「パリス」に代表される個々の商標の態様は理解できるが、甲第18号証ないし甲第21号証の調査結果は、「パリス」商標一括の調査結果であり、各態様毎の調査結果が明らかにされているわけではなく、特に「PARIS」商標(引用商標7)に係る売上高がどの程度のものであったかも明らかではない。
(カ)甲第24号証及び甲第25号証は、ボイス情報株式会社のウェブサイトの抜粋であって、甲第24号証は「ライセンスブランド名鑑2009(2008年11月21日)」であり、甲第25号証は「ライセンスブランド名鑑2010(2009年12月11日)」であって、いずれにも、掲載ブランド一覧として記載されているブランドの一つとして「パリス」が掲載されていることが認められる。
しかしながら、該ライセンスブランド名鑑は、「資料概要」の欄に記載されているように、ライセンスブランドのライセンス状況等を掲載したものであって、ライセンスブランド名鑑2009には723件ものブランドが掲載されており、ライセンスブランド名鑑2010には731件ものブランドが掲載されているものであるから、該名鑑に「パリス」が掲載されているからといって、そのことをもって、「パリス」商標の周知性が認められるという性質のものではない。
(キ)甲第26号証ないし甲第33号証は、宣伝広告の事実を示す証拠として提出されているものであり、甲第26号証は近鉄南大阪線あべの橋駅に掲げられている大型ボードの広告の写真(2006年6月1日付け)であり、甲第27号証は地下鉄御堂筋線心斎橋駅の看板面意匠変更報告書(平成18年7月20日付け)であり、甲第28号証は地下鉄御堂筋線ホームの看板制作報告書(平成18年10月30日付け)であり、甲第29号証は大阪市営地下鉄駅看板意匠変更報告書(平成18年11月8日付け)であり、甲第30号証はホワイティうめだプチシャン意匠変更報告書(平成19年1月10日付け)であり、甲第31号証は大阪市営地下鉄谷町線平野駅AEDタイアップ広告(2007年10月1日付け)であり、甲第32号証及び甲第33号証はホワイティうめだプチシャン意匠変更報告書(平成19年12月28日付け及び平成20年12月24日付け)である。そして、例えば、近鉄南大阪線あべの橋駅に掲げられている大型ボードの広告(甲第26号証)には、中央に引用商標が表示されており、引用商標の左右に3種類の態様からなる「PARIS」の文字が表示されているものである。
しかしながら、駅の構内やホームにおける大型ボードの広告が駅利用客に対して一定程度の宣伝効果のあることを否定するものではないが、新聞や雑誌、テレビ等のマスメディアを用いた広範な者を対象とする宣伝広告に比べれば、駅広告を目にする需要者の範囲は自ずと一定の範囲の者に限定されるものといわざるを得ない。しかも、上記した駅広告のうち、具体的な商品(被服)との関係をも含めた広告がなされているのは甲第30号証、甲第32号証及び甲第33号証のみである。そして、申立人は、看板、業界紙、雑誌等において年間8000万円ないし1億円もの費用を費やして宣伝広告活動を行っている旨主張しているが、申立人が提出しているのは駅の構内やホームにおける大型ボードの広告についての証拠のみであり、宣伝広告費用についても具体的な証拠は提出しておらず、宣伝広告の事実を示す証拠としては充分なものとはいえない。
ウ 以上のとおり、申立人の提出に係る甲第15号証ないし甲第33号証をもってしては、申立人使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品、その中でも、本件商標の指定商品と同一又は類似の関係にある「被服」や「履物」等を表示する商標として、全国にわたるこの種商品の取引者・需要者の間に相当程度認識されていたものとは認め難いばかりでなく、大阪及びその隣接数県における取引者・需要者の間においてさえ、広く認識されていたものと認めることはできない。
してみれば、本件商標と申立人使用商標(引用商標1ないし7)との類似性が認められないばかりでなく、申立人使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品(被服等)を表示する商標として、需要者の間に広く認識されていたものとも認められないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第10号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1 本件商標




2 引用商標(引用商標2ないし6)




3 引用商標7






異議決定日 2011-10-21 
出願番号 商願2010-97118(T2010-97118) 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (X25)
T 1 651・ 26- Y (X25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2011-03-11 
登録番号 商標登録第5396842号(T5396842) 
権利者 株式会社アイ、シー、シー
商標の称呼 ムッシュパリス、ムッシュ 
代理人 小川 稚加美 
代理人 小山 義之 
代理人 西川 惠清 
代理人 田中 康継 

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