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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない X28
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X28
管理番号 1246460 
審判番号 無効2010-890078 
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-09-10 
確定日 2011-11-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第5327363号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5327363号商標(以下、「本件商標」という。)は、「TRAD」の欧文字と「トラッド」の片仮名とを上下二段に横書きしてなり、平成20年6月27日に登録出願され、第28類「スロットマシン,その他の遊戯用器具,ビリヤード用具」を指定商品として、同22年5月6日に登録審決、同年6月4日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし144号証(枝番を含む。以下、「甲第○号証」を単に「甲○」と略して記載する場合がある。)を提出している。
(ただし、甲18は甲9と同一、甲22は甲19と同一、甲25は甲21と同一、甲48は甲13と同一、甲108は甲42と同一、甲109は甲60と同一、甲110は甲23と同一、甲111は甲40と同一、甲112は甲39と同一、甲113は甲30と同一、甲114は甲35と同一、甲115は甲4と同一、甲116は甲63と同一、甲117は甲45と同一、甲118は甲24と同一、甲119は甲47と同一、甲120は甲28と同一、甲121は甲5と同一、甲122は甲48と同一、甲123は甲34と同一、甲124は甲34及び甲123と同一、甲125は甲27と同一、甲126は甲20と同一、甲127は甲6と同一、甲128は甲7と同一、甲130は甲21及び甲25と同一、甲131は甲9及び甲18と同一である。)

2 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。
(1)引用商標について
ア 引用商標の使用について
請求人は、昭和41年12月12日、遊戯用機械器具等の製造販売を目的として設立された株式会社であるところ(設立当初の名称は「株式会社尚球社」)、設立当初より「スロットマシン」等の遊戯用機械器具の製造販売を行ってきたものである。
そして、請求人は、商品「スロットマシン」に「トラッド」との名称を含む「トラッド、ニュートラッド1、トラッドA、トラッドA30、シートラッド、シートラッド30、スロットニュートラッド、スロットニュートラッド30」の各商標を使用しており、これらの総称として「トラッド」商標(以下、「引用商標」又は「トラッドシリーズ」ともいう。)を使用している。
イ 引用商標の周知性について
(ア)各引用商標の使用実績及びこれらに関する宣伝広告等の実績は、以下のとおりである。
(a)機種名 トラッド
販売開始時期:1998年11月
販売台数:3,006台(甲132の1ないし289)
売上額:893,505,438円(同上)
宣伝広告(雑誌掲載例)
「遊技通信、パチスロ攻略マガジン増刊、攻略パチスロ極技200連発、パチスロ勝、パチスロ必勝ガイド パチスロ大図鑑」(甲4ないし9)
(b)機種名 ニュートラッド
販売開始時期:2000年5月
販売台数:14,867台(甲133,甲134の1ないし618)
売上額:3,143,860,000円(同上)
宣伝広告(雑誌掲載例)
「Fame、パチスロ必勝ガイド、遊技ジャーナル、娯楽産業、パチスロ攻略マガジン、遊技通信、パチスロ必勝ガイド パチスロ大図鑑」(甲10ないし18)
(c)機種名 トラッドA
販売開始時期:2002年10月
販売台数:1,411台(甲135,甲136の1ないし38)
売上額:194,645,000円(同上)
宣伝広告(雑誌掲載例)
「パチスロ攻略マガジン、パチスロ必勝ガイド パチスロ大図鑑」(甲19ないし21)
(d)機種名 トラッドA30
販売開始時:2002年11月
販売台数:354台(甲137,甲138の1ないし13)
売上額:66,730,000円(同上)
宣伝広告(雑誌掲載例)
「パチスロ攻略マガジン、プレイグラフ、娯楽産業、パチスロ必勝ガイド パチスロ大図鑑」(甲22ないし25)
(e)機種名 シートラッド
販売開始時期:2008年4月
販売台数:566台(甲139の1ないし140)
売上額:129,457,500円(同上)
宣伝広告(雑誌掲載例)
「Fame、パチスロ攻略マガジン、娯楽産業」等(甲26ないし43)
(f)機種名 シートラッド30
販売開始時期:2008年5月
販売台数:186台(甲140の1ないし30)
売上額:47,344,500円(同上)
宣伝広告(雑誌掲載例)
「Fame、パチスロ攻略マガジン、娯楽産業」等(甲26ないし43)
(g)機種名 スロットニュートラッド
販売開始時期:2009年5月
販売台数:814台(甲141,甲142の1ないし146)
売上額:70,400,000円(同上)
宣伝広告(雑誌掲載例)
「遊技通信、娯楽産業」等(甲44ないし64)
(h)機種名 スロットニュートラッド30
販売開始時期:2010年7月
販売台数:13台(甲143の1ないし10)
売上額:4,680,000円(同上)
宣伝広告(雑誌掲載例)
「遊技通信、娯楽産業」等(甲44ないし64)
(イ)上記(ア)の引用商標の使用実績及びこれらに関する宣伝広告をまとめたものと、雑誌の発行部数等は、以下のとおりである。
販売開始時期:1998年11月
販売台数:21,217台
売上額:4,550,640,438円
ネット掲載記事:甲65ないし甲107
宣伝広告(雑誌掲載例) 発行部数
・日本遊技通信 8,000部
・プレイグラフ 10,000部
・NICHIYUKYO 2,600部
・遊技日本 12,000部
・GreenBe1t 15,000部
・SEQUENCE 7,000部
・遊技通信 15,500部
・パチンコウォーカー 50,000部
・娯楽産業 10,000部
・パチスロ必勝ガイドMAX 400,000部
・パチスロ攻略マガジン 300,000部
・攻略パチスロ極技200 発行部数不明
・Fame(Fp129) 5,897部(ほくとう通信社確認)
・パチスロ必勝ガイド パチスロ大図鑑 発行部数不明
(ウ)小括
各引用商標の使用実績等は、以上のとおりであるが、係る実績に鑑みれば、引用商標が本件商標の出願時及び査定時において、周知性を有していたことは明らかといえる。

(2)本件商標の商標法第4条第1項第10号の該当性について
周知性について
引用商標が、商標法第4条第1項第10号にいう「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」に該当するものであることは、上述したとおりである。
イ 本件商標と引用商標の類似性について
本件商標は、「TRAD」及び「トラッド」の文字を上下二段に書してなるところ、引用商標は、「トラッド」の文字より構成されるものである。
そのため、このような本件商標と引用商標の構成に照らせば、両商標からは、共に「トラッド」との称呼が生じ、また、観念においては「伝統」との意味合いが生じるものといえる。
また、両商標の外観についてみれば、本件商標には引用商標にはない「TRAD」との文字を有することから、両商標は、一見、外観において相違するものとも思われる。しかしながら、該「TRAD」との文字が「トラッド」の文字と同一の称呼及び観念であることからすると、この外観の相違点に、両商標の外観を非類似といわせる程の影響力があるとはいえない。
してみれば、両商標は、称呼、観念及び外観のいずれにおいても同一又は類似するものであることから、両商標を全体的に考察すれば、これらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等が大きく異なるということはない。
したがって、両商標を同一又は類似の商品役務に使用すると、商品役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるといえることから、両商標が類似することは明らかである。
ウ 本件商標と引用商標の商品の類似性について
本件商標は、その指定商品を第28類「スロットマシン、その他の遊戯用器具、ビリヤード用具」とするところ、該指定商品中「スロットマシン」は、引用商標の商品「スロットマシン」と同一の商品である。
また、該指定商品中の「その他の遊戯用器具、ビリヤード用具」は、特許庁類似商品・役務審査基準(国際分類第9版対応)によれば、引用商標の商品「スロットマシン」と同一の類似群コード付されているものである(類似群コード:24B02)。したがって、該「その他の遊戯用器具、ビリヤード用具」は、引用商標の商品「スロットマシン」と類似する。
以上より、本件商標の指定商品は、引用商標の商品と同一又は類似するものである。
エ まとめ
引用商標は、本件商標の出願時及びその査定時において、すでに需要者の間に広く認識されていたものである。
そして、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、また、その指定商品も引用商標の商品と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものある。

(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号の該当性について
引用商標は、本件商標の出願時及び査定時において、既に請求人の業務に係る商品スロットマシンを表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた。
そのため、このような「トラッド」商標の周知性にかんがみると、被請求人が「トラッド」商標と類似する本件商標を請求人の業務に係る商品スロットマシンと同一又は類似する本件商標の指定商品に使用すれば、これに接する需要者において、本件商標が付された当該商品を請求人の業務に係る商品と誤認混同することは明らかといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(4) むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にされるべきものである。
よって、請求の趣旨のとおりの審決を求める。

第3 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし6号証(以下、「乙第○号証」を単に「乙○」と略して記載する場合がある。)を提出している。

2 答弁の理由
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号又は第15号に違反してされたものではなく、無効理由が存在しない。
(1)商標法第4条第3項の解釈について
請求人が本件商標登録の無効理由として主張する商標法第4条第1項第10号及び同第15号については、同条第3項において、登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しないこととされているので、引用商標「トラッド」が本件商標の出願日である平成20年6月27日又は本件商標の登録出願に対する拒絶査定不服審判の審決日である平成22年5月6日(「21日」は誤記と認められる。)の何れかにおいて周知性及び著名性を有していなければ本件審判請求には理由がない。
以下、本件商標の出願日において引用商標が周知著名性を有していなかった理由を述べる。

(2)請求人における引用商標「トラッド」の使用
ア 各名称のスロットマシンの販売
甲第132号証、同第134号証、同第136号証、同第138号証、同第139号証、同第140号証、同第142号証、及び同第143号証によれば、請求人は、「トラッド、ニュートラッド、ニュートラッド1、トラッドA、トラッドA30、シートラッド、シートラッド30、スロットニュートラッド、スロットニュートラッド30」という各名称のスロットマシンを販売したことがあるものと認められる。
それぞれの販売台数は甲第144号証(トラッドシリーズの売上額等一覧表)に示されている。甲第144号証には販売開始日も記載されているが、甲第132号証、同第134号証、同第136号証、同第138号証、同第139号証、同第140号証、同第142号証、及び同第143号証の売買契約書の日付には必ずしも対応していない。
また最後の販売日についての記載もない。
そこで被請求人としては、上記売買契約書の日付を確認した上で、下記のとおり、甲第144号証記載の販売台数と併せて販売期間を示す。なお、ニュートラッドとニュートラッド1は、甲第144号証に倣い、併せてニュートラッドとして記載している。
機種名 台数 時期
トラッド 3,006台 1998/8-2002/12
ニュートラッド 14,867台 2000/5-2000/12
2009/4(計6台)
トラッドA 1,411台 2002/9-2003/10
トラッドA30 354台 2002/10-2004/4
シートラッド 566台 2008/4-2008/6
シートラッド30 186台 2008/4-2008/5
スロットニュートラッド 814台 2009/4-2009/6
スロットニュートラッド30 13台 2010/7
イ 引用商標「トラッド」の使用と認められる事実
(ア)しかしながら、甲号証に示された内容のうち本件登録出願前における引用商標「トラッド」のスロットマシンについての使用と認め得るのは、スロットマシンの販売及びスロットマシンについての広告における標章「トラッド」、「トラッドA」又は「トラッドA30」の使用のみである。
仮に、請求人が述べるように、インターネットのウェブサイトについての検索結果(甲65ないし68)及びインターネットのウェブサイトの記事(甲69ないし107)並びに遊技業界紙及び遊技情報雑誌の記事やパチスロについての図鑑の掲載内容(甲108ないし131)に「トラッドシリーズ」などと紹介されていたとしても、そのように紹介されたことが、請求人がスロットマシンについて「トラッド」という商標を使用したことにはならないことは言うまでもない。
(イ)なお、「トラッドシリーズ」が何を指すものであるかは、各甲号証によっても明らかではないが、少なくとも、本件商標の出願日より後に発売された「スロットニュートラッド」及び「スロットニュートラッド30」は、本件登録出願時における引用商標「トラッド」の周知・著名性の存否に関しては考慮の対象とはならない。
「ニュートラッド」は引用商標「トラッド」に類似する商標に過ぎず、類似商標の使用により引用商標「トラッド」に業務上の信用が化体して引用商標「トラッド」が周知・著名となることは起こり得ないのであるから、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に関する周知・著名性の認定において「ニュートラッド」という商標の使用を引用商標「トラッド」の使用とは認められない。
また、「トラッド」に類似しない「シートラッド」及び「シートラッド30」に至っては、その使用を引用商標「トラッド」の使用と認められないことは言うまでもない(乙3)。

(3)本件商標の出願日における引用商標「トラッド」の周知著名性欠如
ア スロットマシン(パチスロ、回胴式遊技機)の日本国内における販売台数及び設置台数
社団法人日本遊技関連事業協会のインターネットウェブサイト(乙4)には、警察庁調べのパチンコ・パチスロ(回胴式遊技機、スロットマシン)台数の推移が掲載されている。またフィールズ株式会社(東京都渋谷区円山町3番6号E・スペースタワー)の2009年3月期決算補足データ資料の遊技機販売の市場規模のページ(40ページ)(乙5)にパチスロ機販売台数が掲載され(出所:「パチンコ関連メーカーの動向とマーケットシェア2008年版」矢野経済研究所)、セガサミーホールディングス株式会社(東京都港区東新橋一丁目9番2号)のセガサミーホールディングスアニュアルレポート2009のパチンコ・パチスロ遊技機市場のページ(8ページ)(乙6)にパチンコ遊技機・パチスロ遊技機設置台数及び年間販売台数が掲載されている。なお、スロットマシンが”パチスロ”又は”回胴式遊技機”とも称されることは周知のとおりであり、請求人が引用商標「トラッド」を使用したことを示すために提出した各甲号証には、ほとんどの場合、スロットマシンがパチスロと記載されている。
乙第4ないし6号証によれば、平成10年ないし平成20年の各年におけるスロットマシンの日本国内の販売台数及び設置台数は次のとおりである。なお、平成20年の販売台数は、乙第6号証におけるパチンコ遊技機・パチスロ遊技機設置台数のグラフから読み取ったものである。
時期 販売台数 設置台数
平成10(1998)年 775,019台 1,004,642台
平成11(1999)年 932,705台 1,139,356台
平成12(2000)年 1,134,341台 1,323,729台
平成13(2001)年 1,290,719台 1,459,233台
平成14(2002)年 1,501,894台 1,606,123台
平成15(2003)年 1,842,392台 1,660,839台
平成16(2004)年 1,672,049台 1,887,239台
平成17(2005)年 1,786,292台 1,936,470台
平成18(2006)年 1,647,853台 2,003,482台
平成19(2007)年 1,744,876台 1,635,860台
平成20(2008)年 約90-95万台 1,448,773台
イ 本件商標の出願日前における請求人のスロットマシンの販売及びスロットマシンに関する広告
(ア)販売
本件商標の出願日前に請求人がトラッド、トラッドA、トラッドA30の名称のスロットマシンを販売した期間は、平成10年8月から平成16年4月までの約5年9か月間であり、その間のトラッド、トラッドA、トラッドA30の合計販売台数は4千771台である。最後の販売から約4年2か月後に本件登録出願が行われている。
ニュートラッド(又はニュートラッド1)の名称のスロットマシンも本件商標の出願日前においては前記期間内に販売されており、トラッド、トラッドA、トラッドA30にニュートラッドを加えた販売台数は1万9千638台である。
シートラッド及びシートラッド30は、平成20年4月から6月までの約2か月間販売されたが、仮にこれを加えたとしても、販売台数の合計は2万390台である。
スロットニュートラッド及びスロットニュートラッド30は、甲第142及び143号証によれば未発売である。
(イ)広告又は紹介記事
請求人がスロットマシンに関する広告の事実を示すものとして提出した甲第4ないし64号証のうち、トラッド、トラッドA又はトラッドA30に関する本件商標の出願日前のものは、以下のものに限られる。
すなわち、甲第4ないし8号証、甲第19及び20号証、並びに甲第22ないし24号証によれば、平成10年11月から平成15年1月までに10回にわたりトラッド、トラッドA及びトラッドA30の名称のスロットマシンについて遊技業界紙やパチスロ情報雑誌に広告又は紹介記事が掲載されている。
なお、甲第15ないし17号証によれば、平成12年6月及び7月並びに平成14年10月の3回にわたりニュートラッドの名称のスロットマシンについて遊技業界紙及びパチスロ情報雑誌に広告又は紹介記事が掲載されている。
ウ 本件商標の出願日における引用商標「トラッド」の非周知著名性
前述のとおり、各甲号証に示された内容のうち本件登録出願前における引用商標「トラッド」のスロットマシンについての使用と認め得るのは、スロットマシンの販売及びスロットマシンについての広告における標章「トラッド」、「トラッドA」又は「トラッドA30」の使用のみである。
(ア)販売台数
請求人が引用商標「トラッド」の使用であると主張するスロットマシンを平成10年8月に販売し始めてから、本件商標の出願日平成20年6月27日に至るまでの期間の日本国内におけるスロットマシンの販売台数の合計は、前記販売台数一覧より明らかなように約1500万台である。
トラッド、トラッドA、トラッドA30の合計販売台数は4千771台であるから、日本国内におけるスロットマシンの販売台数中、引用商標「トラッド」を用いた請求人のスロットマシンの販売台数が占める率は約0.03%に過ぎない。
仮にトラッド、トラッドA、トラッドA30にニュートラッドを加えたとしても、その販売台数の合計は1万9千638台であるから、日本国内におけるスロットマシンの販売台数中に占める率は約0.13%に過ぎない。
何れにせよ、本件商標の出願日前の日本国内における販売台数比率がこのような率である商品に付された商標が、本件商標の出願日に何人かの業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたということ、すなわち周知性を有していたということが通常あり得ないことは明らかである。
(イ)広告又は紹介記事が掲載されている量
本件商標の出願日前におけるトラッド、トラッドA及びトラッドA30の名称のスロットマシンについての遊技業界紙やパチスロ情報雑誌の広告又は紹介記事掲載は10回であり、ニュートラッドを併せても13回である。
前記販売台数を併せて考慮しても、この程度の広告又は紹介記事掲載により引用商標「トラッド」が周知性を獲得することは起こり得ない。
前記各スロットマシンの販売期間と販売台数の推移を見ても、販売台数は年を経るに従い低下している。したがって、広告又は紹介記事掲載が販売増に結びついているとは認められず、広告又は紹介記事掲載が引用商標の周知性を高める効果を有していたとも認められない。
(ウ)インターネットウェブサイト記事
インターネットのウェブサイトの記事として提出された甲第69ないし107号証のうち、トラッド、トラッドA及びトラッドA30の名称のスロットマシンに関するものは皆無であるから、引用商標「トラッド」の周知性を証明するものではない。
ニュートラッドに関するものは甲第76、91、97、102及び103号証であるが、何れもその日付らしき記載は本件商標の出願日(平成20年6月27日)よりも後の年月日を示している。したがって、仮にニュートラッドを考慮に入れたとしても、本件商標の出願日における引用商標「トラッド」の周知性を証明するものとは認められない。
(エ)業界紙及びパチスロ情報雑誌記事
遊技業界紙及びパチスロ情報雑誌の記事として提出された甲第108ないし131号証のうち、トラッド、トラッドA及びトラッドA30の名称のスロットマシンに関する本件商標の出願日前の記事は、平成10年10月から平成15年1月にかけての甲第110、115、118、121、126ないし128号証の7件と、その4年4か月後である平成19年5月の甲第130及び131号証の2件の合計9件である。
これらのうち、遊技業界紙及びパチスロ情報雑誌の記事として提出された甲第110、115、118、121、126ないし128号証は、全て、審判請求書第8ないし10ページに記載されているように一方では宣伝広告として提出された甲第4ないし7、20、23及び24号証とそれぞれ二重に提出されているものである。
また前述のとおり、甲第130及び131号証は、宣伝広告を示すものとして提出された甲第9及び21号証と二重に提出されたものであり、平成19年5月発行の図鑑に、トラッドについては1998年9月発売のスロットマシンとして、トラッドAについては2002年10月発売のスロットマシンとして、それぞれ掲載されたに過ぎない。
本件商標の出願日前のニュートラッドに関する記事は皆無である。
この程度の掲載により本件商標の出願日における引用商標「トラッド」の周知性を立証し得るものではない。
(オ)販売及び広告の時期
付言するならば、平成10年8月から平成16年4月までの間のトラッド、トラッドA及びトラッドA30の名称のスロットマシンの販売により、請求人が使用した商標「トラッド」に何らかの業務上の信用が化体されていたとしても、本件商標の出願日前には、その業務上の信用は実質上消滅していたものと認められる。
すなわち、平成10年8月から平成16年4月までの間のトラッド、トラッドA及びトラッドA30の名称のスロットマシンの販売の後、本件商標の出願日平成20年6月27日まで、4年以上の間これらのスロットマシンは全く販売されず、その後もトラッド、トラッドA及びトラッドA30の名称のスロットマシンの販売はなされていないのであるから、3年間登録商標の不使用のときは保護すべき業務上の信用が消滅するとしてその登録を取り消す商標法第50条の審判の趣旨に鑑みても、平成16年4月までのスロットマシンの販売により商標「トラッド」に何らかの業務上の信用が化体していたとしても、本件商標の出願日前には、その業務上の信用は実質上消滅していたものと言わざるを得ない。
この点は、本件商標の出願日前に平成12年5月から12月までの間のニュートラッドの名称のスロットマシンの販売を仮に考慮したとしても同様である。
(カ)以上よりすれば、引用商標「トラッド」が、本件商標の出願日においてスロットマシンの商標として周知であったとは到底認められない。まして著名であったと言い得ないことは言うまでもない。
この点は、本件商標の登録出願に対する拒絶査定不服審判の審決日までのトラッド、トラッドA及びトラッドA30の名称のスロットマシンの販売等を考慮に入れても(或いは、仮にニュートラッドの名称のスロットマシンの販売等を考慮に入れても)変わりはなく、本件商標の登録出願に対する拒絶査定不服審判の審決日においても、引用商標「トラッド」がスロットマシンの商標として周知又は著名であったとは到底認められない。
したがって、本件商標は、その出願時においても拒絶査定不服審判の審決時においても、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号の何れの規定にも違反してはいない。

(4) むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号の何れの規定にも違反していないのであるから、本件商標は商標法第46条第1項第1号には該当せず、本件審判請求には理由がない。
よって、答弁の趣旨とおりの審決を求める。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第10号の該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否について
請求人は、商品「スロットマシン」に「トラッド」との名称を含む「トラッド、ニュートラッド1、トラッドA、トラッドA30、シートラッド、シートラッド30、スロットニュートラッド、スロットニュートラッド30」の各商標を引用商標としているところ、本件商標と引用商標中「トラッド、ニュートラッド1、トラッドA、トラッドA30」(以下、これらを「使用商標」という。なお、「ニュートラッド1」については「ニュートラッド」を含むものであって、これらを単に「ニュートラッド」という場合がある。)とが類似することについては、当事者間において、争いがないものである。
そこで、以下、本件商標と引用商標中の上記使用商標を除く「シートラッド、シートラッド30、スロットニュートラッド、スロットニュートラッド30」の各商標との類否について検討する。
ア 本件商標と「シートラッド」及び「シートラッド30」(これらを併せて、「『シートラッド』商標」という。)との類否
本件商標は、「TRAD」の欧文字と「トラッド」の片仮名文字とを上下二段に横書きした構成からなるところ、それぞれの構成文字に相応して、「トラッド」の称呼を生ずるものであり、また、その構成中の「TRAD」の欧文字が「伝統的な」の意味を有する英語「traditional」の短縮形であるところからすれば、「伝統的な」程の観念が生ずるものである。
他方、「シートラッド」商標は、同書、同大、等間隔で表されており、全体として外観上まとまりよく一体的に構成されているものであり、これより生ずる「シートラッド」あるいは「シートラッドサンジュー」の称呼も、一気一連に称呼し得るものであって、これを「シー」と「トラッド」あるいは「トラッド30」とに分離すべき特段の事情は見いだし得ない。
そうとすると、「シートラッド」商標は、構成全体から一体不可分のものとみるのが相当であって、「シートラッド」あるいは「シートラッドサンジュー」の称呼を生ずるものであり、また、特定の観念を生じないものである。
そこで、本件商標から生ずる「トラッド」の称呼と「シートラッド」商標から生ずる「シートラッド」あるいは「シートラッドサンジュー」の称呼を比較すると、両者は、語頭における「シー」及び末尾における「サンジュー」のそれぞれの音の有無に明らかな差異を有するものであるから、十分聴別することができるものである。
また、本件商標と「シートラッド」商標とは、それぞれの構成に照らし、外観上区別し得るものであり、さらに、両者は、観念において比較することができない。
したがって、本件商標と「シートラッド」商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標というべきものである。
イ 本件商標と「スロットニュートラッド」及び「スロットニュートラッド30」(これらを併せて、「『スロットニュートラッド』商標」という。)との類否
本件商標は、上記アのとおり、「トラッド」の称呼及び「伝統的な」程の観念が生ずるものである。
他方、「スロットニュートラッド」商標は、同書、同大、等間隔で表されており、全体として外観上まとまりよく一体的に構成されているものであり、これより生ずる「スロットニュートラッド」あるいは「スロットニュートラッドサンジュー」の称呼も、一気一連に称呼し得るものであって、また、特定の観念を生じないものである。
そこで、本件商標から生ずる称呼「トラッド」と「スロットニュートラッド」商標から生ずる「スロットニュートラッド」あるいは「スロットニュートラッドサンジュー」の称呼を比較すると、両者は、語頭における「スロットニュー」及び末尾における「サンジュー」のそれぞれの音の有無に明らかな差異を有するものであるから、十分聴別することができるものである。
また、本件商標と「スロットニュートラッド」商標とは、それぞれの構成に照らし、外観上区別し得るものであり、さらに、両者は、観念において比較することができない。
したがって、本件商標と「スロットニュートラッド」商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標というべきものである
ウ 小括
以上のとおり、本件商標は、請求人が商品「スロットマシン」(以下、「請求人商品」という。)について使用する引用商標中の「シートラッド、シートラッド30、スロットニュートラッド、スロットニュートラッド30」の各商標とは、いずれも別異の商標というべきものである。そして、上記したとおり、本件商標と引用商標中「トラッド、ニュートラッド、トラッドA、トラッドA30」とが類似することについては、当事者間において、争いがないものである。
そこで、請求人商品について使用する引用商標のうち、「トラッド、ニュートラッド、トラッドA、トラッドA30」の使用商標の周知・著名性について、以下、について検討する。

(2)使用商標の周知・著名性について
本件商標と類似する使用商標「トラッド、ニュートラッド、トラッドA、トラッドA30」の周知性について、当事者から提出された甲乙各号証からすれば、以下の事実が認められる。
なお、それぞれの使用商標の販売台数について、当事者間に争いはないが、販売開始日については、争っているので、これを踏まえて、以下、検討する。
ア 販売時期について
(ア)甲132の1ないし287は、商品名を「トラッド」とするものであるところ、それらの契約成立日は、平成10年8月21日ないし同14年12月13日である。
(イ)甲134の1ないし618は、商品名を「ニュートラッド」とするものであるところ、それらの契約成立日は、平成12年5月ないし同年12月13日及び同21年4月(販売台数は6台)である。
(ウ)甲136の1ないし38は、商品名を「トラッドA」とするものであるところ、それらの契約成立日は、平成14年10月2日ないし同16年4月6日である。
(エ)甲138の1ないし13は、商品名を「トラッドA30」とするものであるところ、それらの契約成立日は、平成14年9月10日ないし同15年10月23日である。
ただし、上記の甲各号証は、「機械売買契約書」の写しであるところ、これらには契約成立日の記載がないものも含まれている。
イ 使用商標の販売台数について
甲144は、「〈岡崎産業 トラッドシリーズ〉」を表題とする表であるところ、「機種名/トラッド」についての販売開始日が「1998年11月」、販売台数「3,006台」、「機種名/ニュートラッド」についての販売開始日が「2000年5月」、販売台数「14,867台」、「機種名/トラッドA」についての販売開始日が「2002年10月」、販売台数「1,411台」及び「機種名/トラッドA30」についての販売開始日が「2002年11月」、販売台数「354台」と記載されているものであり、これら販売台数の合計は、19,638台となる。
ウ 我が国におけるスロットマシンの販売台数
乙5は、フィールズ株式会社作成に係る「2009年3月期決算補足データ資料」を表題とする資料であって、40ページには、遊技機販売の市場規模(販売金額ベース)の下に、パチスロ機販売台数等が掲載されている。
これによれば、平成10(1998)年ないし同19(2007)年における、パチスロ機販売台数は、各年別に見ると平成10年が775,019台、平成11年が932,705台、平成12年が1,134,341台、平成13年が1,290,719台、平成14年が1,501,894台、平成15年が1,842,392台、平成16年が1,672,049台、平成17年が1,786,292台、平成18年が1,647,853台、平成19年が1,744,876台との記載がある。
また、平成20年に関しては、セガミホールディングスのアニュアルレポート2009(乙6)における3枚目の「パチンコ遊技機・パチスロ遊技機設置台数及び年間販売台数」のグラフからすれば、約100万弱の台数である。
そうすると、平成10(1998)年ないし同20(2008)年における、パチスロ機販売台数は、約1500万台と推認されるものである。
エ 雑誌及びインターネットにおける広告又は記事掲載について
(ア)使用商標の雑誌などへの掲載について
「トラッド」については、平成14(2002)年10月20日及び平成10(1998)年11月20日発行雑誌「遊技通信」(甲4及び5)、平成11年9月21日発行雑誌「パチスロ攻略マガジン10月増刊号」(甲6)、平成14年12月5日発行雑誌「攻略極技200連発」(甲7)、平成11年8月26日発行「パチスロ勝」(甲8)、2007(平成19)年5月21日株式会社白夜書房発行「パチスロ大図鑑1964?2000」(甲9)に機種紹介記事が掲載されている。
「トラッドA」については、平成14年9月21日発行雑誌「パチスロ攻略マガジン10月号」(甲19)、平成14年12月1日発行雑誌「パチスロ攻略マガジン12月号」(甲20)、平成15年1月20日発行雑誌「プレイグラフ」(甲23)、2007(平成19)年5月21日株式会社白夜書房発行「パチスロ大図鑑2001?2007」(甲21)に機種紹介記事が掲載されている。
「トラッドA30」については、平成14年9月21日発行雑誌「パチスロ攻略マガジン10月号」(甲19)、平成15年1月20日発行雑誌「プレイグラフ」(甲23)、平成14年9月5日発行雑誌「娯楽産業」(甲24)、2007(平成19)年5月21日株式会社白夜書房発行「パチスロ大図鑑2001?2007」(甲21)に機種紹介記事が掲載されている。
「ニュートラッド」については、平成12年6月5日発行雑誌「娯楽産業」(甲15)、平成14年10月28日発行雑誌「パチスロ攻略マガジン11月号増刊」(甲16)、平成12(2000)年7月20日発行業界誌「遊技通信」(甲17)、2007(平成19)年5月21日株式会社白夜書房発行「パチスロ大図鑑1964?2000」(甲9)に機種紹介記事が掲載されている。なお、甲第10号証ないし甲第14号証の雑誌は、いずれも本件商標の登録出願後の発行である。
以上のとおり、使用商標は、機種紹介などとして、平成10年11月(甲5)から平成15年1月(甲23)発行の雑誌に12回掲載され、平成19年5月発行の「パチスロ大図鑑1964?2000」(甲9)及び「パチスロ大図鑑2001?2007」(甲21)に2回掲載され、合計14回掲載されたものと認められる。
(イ)引用商標のインターネット掲載について
請求人は、引用商標のネット掲載記事として甲第65号証ないし甲第107号証を提出している。
甲第65号証は「トラッドシリーズ スロット」及び甲第66号証は「トラッドシリーズ パチスロ」についてのYAHOOの検索結果であり、甲第67号証は「トラッドシリーズ スロット」及び甲第68号証は「トラッドシリーズ パチスロ」についてのGoogleの検索結果であるところ、これらからは「トラッド、トラッドA、トラッドA30、ニュートラッド」の使用商標についての記事はなく、また、これら甲各号証の打ち出し日は、いずれも、2010(平成22)年6月14日であることが認められる。
また、甲第69号証ないし甲第107号証についても、「トラッド、トラッドA、トラッドA30」についての記事はなく、「ニュートラッド」に関しては、甲第76号証が、掲載日不明、「ニュートラッド1」の中古品の販売広告であるがすでに完売しましたと掲載されているもの、甲第91号証は2010年5月2日現在「ニュートラッド」が人気の話題ランキング75位であることが掲載されているトレンド百科事典の記事、甲第97号証は最終データ更新が2010(平成22)年1月1日にされた「ニュートラッド」についてのフリー百科事典「ウィキペディア」の記事、甲第102号証及び甲第103号証は掲載日不明「ニュートラッド 吉本興業とは」との見出しの記事で、いずれも検索結果の打ち出し日が2010年6月14日のものであることが認められる。
オ 以上の事実を総合すると、それぞれの使用商標の販売期間は、上記アのとおり、「機械売買契約書」に記載の契約成立日からすれば、「トラッド」が、平成10年8月ないし同14年12月、「ニュートラッド」が、平成12年5月ないし同年12月及び同21年4月(販売台数6台)、「トラッドA」が、平成14年10月ないし同16年4月、「トラッドA30」が、平成14年9月ないし同15年10月と認められるものである。
そうとすると、「ニュートラッド」が、平成21年4月に機械売買契約を結んでいたとはいえ、その販売台数は6台にすぎないものであるから、使用商標全体としての販売期間は、実質的に、平成10年ないし同16年の約6年間にすぎないものである。
そして、使用商標を付した「スロットマシン」が販売開始された平成10年8月から本件商標の登録出願がされた平成20(2008)年6月27日までの期間における販売台数は,被請求人が周知・著名性の認定において引用商標の使用には当たらないと主張する「ニュートラッド」(14,867台)を加えても、19,638台(甲144)であって、我が国におけるスロットマシンの販売台数約1,500万台に対する使用商標の販売台数19,638台の市場占有率は、わずか0.14パーセントにすぎないものである。
また、雑誌などへの使用商標掲載件数が14回と少ないこと、さらに、インターネットにおける広告又は記事掲載(甲65ないし甲107)にしても、「トラッドシリーズ」あるいは「『トラッド』シリーズ」等の語の記載はあるものの、該語が、使用商標中のいずれの商標についての内容か不明であること、検索結果の打ち出し日が本件商標の登録出願後の2010(平成22)年6月14日であること等からすれば、「ニュートラッド」の使用を考慮したとしても、本件商標の登録出願時における使用商標の周知性を証明するに足るものとは認められないものである。
さらにまた、使用商標を付した「スロットマシン」が販売終了日から本件商標の登録出願日までの約4年間販売されていないこと等を併せ考慮すれば、使用商標は、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。そして、使用商標が、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録査定時までに、需要者の間に広く認識されるに至ったと認めるに足りる特段の事情も見出せない。

(3)小括
本件商標は、上述したとおり、「トラッド」、「ニュートラッド」、「トラッドA」及び「トラッドA30」のいずれの使用商標と類似する商標であるとしても、使用商標が、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないものである。

2 商標法第4条第1項第15号の該当性について
上記1の認定のとおり、使用商標が、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであるところからすれば、本件商標に接する需要者は、使用商標を想起又は連想することはないというべきであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、該商品が請求人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

3 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-03-04 
結審通知日 2011-03-09 
審決日 2011-03-24 
出願番号 商願2008-51640(T2008-51640) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X28)
T 1 11・ 25- Y (X28)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅沼 結香子金子 尚人 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
小川 きみえ
登録日 2010-06-04 
登録番号 商標登録第5327363号(T5327363) 
商標の称呼 トラッド 
代理人 西田 研志 
代理人 高良 尚志 

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