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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X03
管理番号 1246403 
審判番号 無効2011-890017 
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-02-25 
確定日 2011-10-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5353568号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5353568号の指定商品中、第3類「化粧品」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5353568号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成22年1月18日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品として、同年9月17日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2372747号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和51年4月2日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年1月31日に設定登録され、その後、同14年3月26日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同15年1月22日に、指定商品を第3類「化粧品,歯磨き,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」とする指定商品の書換登録がされたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定商品中の「化粧品」と引用商標の指定商品中の「化粧品」とは、同一の商品である。
(2)本件商標と引用商標との類否
ア 称呼について
(ア)引用商標
引用商標を構成する「IReS」の語は、一般的に知られている成語ではない。よって、引用商標は、我が国で知られている外国語のうち、もっとも一般的に親しまれている英語の発音に基づいて称呼されるのが通常である。そして、語頭に「Ire」の綴りを有する英単語において、第1字「I」は「ai」と表音され、「アイ」と発音されるのが通常であることから(例えば、「Ireland」(アイルランド))、引用商標に接する需要者は、「I」の部分から「アイ」の称呼を認識し、「ReS」の部分から「レス」の称呼を認識することにより、引用商標を「アイレス」と称呼するのが通常である(甲第4号証参照)。
また、請求人は、引用商標の登録出願時(昭和51年)から今日に至るまでの長期間にわたり、「化粧品」について、引用商標を「アイレス」と称呼するように使用し続けている(甲第5号証ないし甲第9号証)。
甲第5号証ないし甲第9号証は、請求人が取り扱う化粧品を掲載したカタログであり、年4回発行される。該カタログは、印刷業者から、請求人のグループ会社である野々川物産株式会社へ納入され、その後、野々川物産株式会社から請求人を経て、日本全国にある請求人の販売代理店に登録している販売員(メナードレディ)を介して需要者へ配布されている。甲第10号証は、甲第7号証ないし甲第9号証の印刷・納入部数(野々川物産株式会社のコンピュータ中の電子データとして存在。)を表す一覧表である(「数量」の項。なお、「長屋印刷」及び「サンメッセ」は印刷業者である。)。
甲第5号証は、昭和51年10月発行のカタログであり、ここには、引用商標を付した基礎化粧品が「アイレスE グループ」と紹介されている(2枚目)。甲第5号証の印刷部数は、1996年(平成8年)3月の印刷部数に基づき算出すると、推定で約26万冊程度である。
甲第6号証は、昭和61年4月発行のカタログであり、ここには、引用商標を付した化粧品が「アイレス グループ」と紹介されている(2枚目)。甲第5号証と同様に、甲第6号証の印刷部数を算出すると、推定で約60万冊程度である。
甲第7号証は、平成8年3月発行のカタログであり、ここには、引用商標を付した化粧品が「アイレス グループ」と紹介されている(2枚目)。甲第7号証の印刷部数は、75.2万冊である。
甲第8号証は、平成18年1月発行のカタログであり、ここには、引用商標を付した化粧品が「アイレス グループ」と紹介されている(2枚目)。甲第8号証の印刷部数は、38.59万冊である。
甲第9号証は、平成22年10月発行のカタログであり、ここには、引用商標を付した化粧品が「アイレス グループ」と紹介されている(2枚目)。甲第9号証の印刷部数は、33万冊である。
以上のように、甲第5号証ないし甲第9号証は、請求人の商品を紹介するために需要者へ頒布する趣旨の刊行物であることから、印刷だけで頒布しないことはあり得ず、また、発行日と頒布日が著しく異なるという事態は考え難い。よって、上記発行日後、遅くとも1月程度の後には、そのほとんどが販売代理店を介して需要者へ配布されたと考えられる。
そして、上記カタログは、かなりの部数が頒布されていることから、引用商標に接する需要者は、引用商標と「アイレス」の名称とを結び付けて、引用商標を「アイレス」と称呼するものと認識するのが通常である。
したがって、引用商標は、「アイレス」と称呼されることは明らかである。
(イ)本件商標
本件商標を構成する「AILLES」の語は、一般的に知られている成語ではない。よって、本件商標は、引用商標と同様に、我が国で知られている外国語のうち、もっとも一般的に親しまれている英語の発音に基づいて称呼するのが通常である。そして、「AI?」という英単語において、「AI」の部分を、日本人に一般的に親しまれているローマ字風に、「アイ」と発音することが知られている(例えば、「Aisha」(女性名;アーイシャ)、「Aileen」(女性名;アイリーン)、「Aisle」(発音記号で[ail]であり、「アイル」と称呼))ことから、本件商標の「AI」の部分に接する需要者は、特に日本人に親しみのあるローマ字風の発音で「アイ」と読むのが通常であり、本件商標の「AI」の部分から、「アイ」の称呼が生じるのが通常である。また、本件商標の「LLES」の部分について、一般に英語では、「?LES」の語は「?レス」と読むのが通常である。さらに、「LL」の部分が語中にある語の場合、特に「LL」が複数あることを意識せずに、両者をまとめて単純にラ行の1音で称呼することが通常である(例えば、「Hollywood」(ハリウッド)、「Halloween」(ハロウィーン))ことから、「LLES」の部分からは「レス」の称呼が生じるのが通常である。
英単語を発音する際、一般に語中に子音と母音が続けて存在する場合、あえてその両者を分断して発音することは考え難い。よって、本件商標を「AILL」と「ES」とに分断し、「アイルエス」と発音することは不自然である。また、上記のように、「LL」の部分が語中にある語の場合、特に「LL」が複数あることを意識せずに、両者をまとめて単純にラ行の1音で称呼することが通常であり、しかも、本件商標について、特に「AIL」と「LES」とに分断して称呼する必然性はない。よって、本件商標について、「AIL」と「LES」とに分断し、「アイルレス」と発音することは不自然である。
以上の事情を総合すれば、本件商標に接する需要者は、「AI」の部分から「アイ」の称呼を認識し、「LLES」の部分から「レス」の称呼を認識することにより、本件商標を「アイレス」と称呼するのが通常である。
(ウ)そうすると、本件商標と引用商標とは、共に「アイレス」と称呼されるのが通常であることから、本件商標と引用商標とは、称呼において同一である。
イ 観念について
本件商標と引用商標とは、いずれも一定の意味を有する成語ではなく、特段の意味を有しない造語である。
よって、本件商標と引用商標とは、特定の観念を認識することはない点で共通することは明らかである。
ウ 外観について
本件商標と引用商標とは、欧文字の綴りが異なっていることから、外観上は一応相違しているといえる。
しかし、本件商標と引用商標とは、いずれも特に字体に特徴がなく、一般的な字体を用いた表記である点で共通する。また、上記のように、本件商標と引用商標とは、特段の意味を有しない造語である上、我が国は英語を公用語とする国ではないことに鑑みれば、需要者が本件商標と引用商標の正確な綴りを認識しているとは考え難く、需要者が本件商標と引用商標の綴りの相違を認識することは困難である。
よって、本件商標と引用商標とは、外観上一応相違はあるとしても、かかる相違は需要者には認識し難く、その結果、本件商標と引用商標とは、外観においても類似することは明らかである。
エ 取引の実情
本件商標及び引用商標の指定商品である「化粧品」は、価格も高額ではない日常消費物資であって、その取引者、需要者には、広く一般消費者も含まれる。よって、これらの者が、例えば、陳列棚に貼付された表示札や多数の商品と共に掲載された宣伝広告チラシ等の記載によって商品の同一性を識別するに際して、商品の名称、すなわち、称呼が極めて重要な要素となることは明らかである。よって、本件商標と引用商標の指定商品に係る商品の取引者、需要者による取引の実情を考慮すれば、本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては、外観及び観念に比して称呼を重視すべきことが明らかである。
そして、上記のとおり、本件商標と引用商標とは称呼が同一であり、また、外観や観念についても類似性が高い。特に称呼については、上記のように、請求人が引用商標を「アイレス」の称呼で「化粧品」に対して長年にわたって使用し続けており(甲第5号証ないし甲第9号証)、広く需要者にも知られていることから、その需要者は、引用商標を「アイレス」と称呼することについて既に下地が形成されているといえる。これに対し、本件商標と引用商標とで外観や観念に若干の相違があるとしても、僅かな相違にすぎず、当該相違は、需要者の通常の注意力で認識することが困難である。
以上の事情を総合的に考慮すれば、本件商標が「化粧品」に使用された場合、引用商標を付した「化粧品」と商品の出所につき誤認混同するおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標と引用商標とは類似であることは明らかである。
3 むすび
以上より、本件商標と引用商標とは類似であり、また、本件商標と引用商標の指定商品は、第3類「化粧品」の点で同一であることから、本件商標の指定商品中、「化粧品」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
したがって、本件商標の指定商品中、「化粧品」についての登録は、商標法第46条第1項の規定により無効にすべきものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、前記第3の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。

第5 当審の判断
1 本件商標と引用商標の類否について
(1)本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおり、「AILLES」の文字を書してなるものであるところ、該文字は、それぞれの文字にセリフ(serif)のある同一の書体をもって、同一の大きさ、同一の間隔で書してなるものである。
また、本件商標を構成する「AILLES」の文字は、特定の読みをもって親しまれた成語を表したものとは認められないから、これに接する取引者、需要者は、これをローマ字読み風ないし英語読み風に称呼して、商品の取引に当たる場合が多いとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応する「アイレス」の称呼を生ずるというのが自然である。
(2)引用商標
引用商標は、別掲(2)のとおり、「IRes」の文字を書してなるものであるところ、該文字は、いずれもやや丸みを帯びた同一の書体をもって、同一の間隔で横書きしてなるものである。
そして、引用商標を構成する「IRes」の文字は、本件商標と同様に、特定の読みをもって親しまれた成語を表したものとは認められないところ、甲第5号証ないし甲第9号証によれば、請求人は、引用商標を付した化粧品について、昭和51年10月、同61年4月、平成8年3月、同18年1月及び同22年10月に、それぞれ発行、頒布されたと推認し得るカタログにおいて、「アイレス」の文字を表記していたことを認めることができる。
また、仮に請求人の発行に係るカタログの存在を知らない需要者が引用商標を付した化粧品に接した場合においても、我が国で知られている英単語の「iron」を「アイロン」と、「iris」を「アイリス」と発音するように、引用商標中の語頭文字「I」を「アイ」と発音し、その構成全体として「アイレス」と称呼する場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応する「アイレス」の称呼を生ずるというのが自然である。
(3)本件商標と引用商標との対比
以上によれば、本件商標と引用商標とは、その書体、構成する文字の綴りそのものが相違するものであるため、外観においては相違するものの、「アイレス」の称呼を同じくする商標であり、また、観念においては、いずれも特定の観念を有しない造語からなるものであるため、比較することができないものであるから、これらを総合勘案すれば、両商標は、互いに類似する商標というべきである。
2 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について
前記第1及び第2のとおり、本件商標と引用商標とは、その指定商品中に、いずれも「化粧品」を含むものであるから、同一の商品について使用するものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中の「化粧品」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものと認めることができるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(登録第5353568号商標)

(2)引用商標(登録第2372747号商標)


審理終結日 2011-08-22 
結審通知日 2011-08-24 
審決日 2011-09-07 
出願番号 商願2010-2592(T2010-2592) 
審決分類 T 1 12・ 262- Z (X03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村上 照美 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 2010-09-17 
登録番号 商標登録第5353568号(T5353568) 
商標の称呼 アイユ、アーユ、エールズ、アイルズ、アイレス 
代理人 小島 清路 
代理人 谷口 直也 

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