• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) Y25
管理番号 1244935 
判定請求番号 判定2010-600059 
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2011-11-25 
種別 判定 
2010-10-06 
確定日 2011-10-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5004631号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「靴下」に使用するイ号標章は、登録第5004631号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
登録第5004631号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成18年6月5日登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品として同年11月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
被請求人が、商品「靴下」に使用する標章として示したイ号標章は、別掲2のとおりの構成よりなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「被請求人が商品『靴下』について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する。」との判定を求め、その理由及び弁ばくの理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 判定請求の必要性
請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人が商品「靴下」に標章「足から健康」の使用をしていることについて、被請求人に対し、本件商標の商標権を侵害するものである旨の警告を発した(甲第1号証ないし甲第3号証)。
これに対し、被請求人は請求人の求める請求には一切応じられないとの回答であった。
よって、本件判定を求める。
2 イ号標章の説明
被請求人は、少なくとも平成18年12月26日より、「足から健康」の文字からなるイ号標章を付した商品「靴下」を製造し、長野市内の西友川中島店の店舗内で販売している(甲第4号証ないし甲第7号証)。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標は、その構成中、語頭「足」の文字が他の文字よりも若干大きく表現されているものの、その態様は冗長とは言えず、分離解釈される余地はなく一連一体の造語として「アシカラケンコウ」の称呼が生ずるものである。
他方、イ号標章は、「足から健康」の文字からなるものであるから、「アシカラケンコウ」の称呼が生じるのは明白である。
したがって、本件商標とイ号標章とは、外観が多少相違するとしても、「アシカラケンコウ」の称呼を共通にし、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるから、類似の標章というべきである。
そして、本件商標に係る指定商品中、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」とイ号標章の商品「靴下」は同一の商品である。
以上のとおり、イ号標章は、本件商標と類似する標章であり、その使用商品と本件商標の指定商品は同一の商品であるから、被請求人が商品「靴下」に使用するイ号標章は、登録第5004631号商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
4 被請求人の答弁に対する弁ばく
(1)イ号標章の商標的使用について
イ号標章は、靴下業界の取引者・需要者間において、キャッチフレーズとして広く一般的に採択使用されている事実は見いだされない。
イ号標章は、「靴下」の品質等を暗示させはしても、直接限定的に品質等を表示した語句として広く一般的に採択使用されているものではない。
したがって、イ号標章は自他商品識別力を有する語句であって、出所表示機能を十分果たしているから商標的使用といえる。
(2)イ号標章の自他商品識別性
被請求人は、イ号標章は、「足下からの健康作りに役立つ商品」という靴下の品質、効能、用途、内容を端的に表したものであり、自他商品識別標識として認識されないと主張している。
しかし、靴下とは、広辞苑第4版(甲第10号証)を参照すると「靴をはく時などに足に直接はく衣料。」であり、健康のためにはくものではないことは自明である。靴下は医療品、医薬品とは違い、靴下をはくことで健康作りに役立つという認識は一般的には存在しない。
したがって、イ号標章が自他商品識別機能を発揮していることは明白である。
(3)イ号標章と本件商標との類否
イ号標章は、同書、同大、同色、同一間隔に表記された態様からなり「アシカラケンコウ」なる称呼が生じるのは明らかである。
他方、本件商標は、その構成からは、一体不可分に結合された一連の商標というべきであり、「アシカラケンコウ」なる称呼が生じるものである。
そうしてみると、イ号商標と本件商標は、「アシカラケンコウ」なる称呼が共通し、互いに誤認混同するものというべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、イ号標章は、本件商標に係る商標権の効力の範囲に属さないとの判定を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属しない根拠
(1)イ号標章の使用は商標的使用ではないこと
イ号標章は、商品「靴下」をかかと部付近で二つに折り、その折り目をはさむように紙製のパッケージで止着し、そこに比較的小さく付記的に「足から健康」と付されているだけである。したがって、イ号標章は、いわば「足もとからの健康づくりに役立つ商品」であることを連想させるためのキャッチフレーズとして形容詞的に記載されているにすぎず、出所表示機能を果たさないから商標的使用とはいえない。
(2)イ号標章は自他商品識別性がないこと(商標法第26条第1項第2号)
イ号標章の「足から健康」という語句の意味合い及びイ号標章の付されている製品が靴下であることからすれば、需要者が商品「靴下」に接しても、「足もとからの健康づくりに役立つ商品」という、靴下の品質、効能、用途、内容を端的に表わしたものとしてイ号標章を理解するにとどまり、自他商品識別標識として認識されないことは明らかである。
(3)イ号標章と本件商標は類似しないこと
本件商標は、その構成中、先頭の「足」のイラスト部分は、漢字「足」の7画目の払いに相当する部分が人の足のような形にデフォルメされて、躍動感のある特徴的な形状をしている。
一方、「から健康」の文字は黒く塗り潰され、角がありゴシック調の字体を使用しており、硬くて力強い印象を受ける。したがって、まず、本件商標から「足」の称呼・観念等が独立に生じるとは社会通念上考えられず、また、仮に「足」の称呼等が独立に生じるとしても、「足」と「から健康」は外観上、完全に区別されているというべきである。更に、「から」の文字に比べて「健康」の文字を大きく強調するように表示されており、「から」と「健康」も区別するように表示されている。
総じて、「足」「から」「健康」の3つの異なる構成から成る本件商標は、「足から健康」というーつの語句として非常に認識しづらい態様であるといえる。
一方、イ号標章は、「足から健康」の5文字全てを同じ字体、色、大きさで一連不可分に表示し、「足から健康」と横一連に一体と見えるように、普通に用いられる態様で表示している。
したがって、これらの相違から明らかな通り、イ号標章と本件商標の外観は、著しく異なるものである。
イ号標章は、その構成から、「足もとからの健康づくりに役立つ商品」あるいは「足もとを通じて健康になること」なる観念が生じると考えられるが、本件商標については、上記のとおり、足を部首としてデザイン化された図形とみれば、本件商標全体からは特定の観念は生じないというべきであり、少なくともイ号標章と同一・類似の観念は生じないという見方が妥当である。
したがって、イ号標章と本件商標は類似しない。
2 被請求人によるイ号標章の使用状況について
被請求人は、少なくとも1999年から2005年にかけて商品又は商品群にイ号標章を使用し(乙第8号証ないし乙第15号証)、かかる商品を全国の量販店向けに継続的に販売していた。
3 本件商標の指定商品について
本件商標の指定商品に「靴下」の記載がないものの、被服類に靴下が属するとの理解のもと、イ号標章を使用した商品が本件商標の指定商品に属することは認める。

第5 当審における証拠調べ通知
当審において、イ号標章が、本件商標の効力の範囲に属するか否かについて、職権により証拠調べした結果、下記の事実を発見したので、商標法第28条第3項で準用する特許法第71条第3項で準用する同法第150条第5項の規定に基づき請求人及び被請求人に通知し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。
1 「足から健康」の文字について
(1)株式会社ミヤシタのウェブサイトにおいて、「【ミヤシタ】靴下、5本指靴下、腹巻、竹炭加工|竹紀行」の見出しのもと、「メディアで紹介されました」の項に、「女性自身で竹炭・シルク5本指ソックスで足から健康をと紹介されました。」の記載。
(http://www.miyacita.co.jp/)
(2)シルクパジャマ、シルク下着、冷えとり絹靴下の専門店【シルクル】のウェブサイトにおいて、「シルク5本指靴下 22-24cm 毎日履いて足から健康! 3足セット」の記載。
(http://www.silkl.com/SHOP/sox-lasa-8440-3set.html)
(3)健康肌着、腹巻のEMウェア・ジャパンのウェブサイトにおいて、「【EM繊維 足楽ソックス(rasox) 足の冷えない不思議な靴下】」の見出しのもと、「人間工学に基づいた、L字型靴下ラソックスのやさしい履き心地とEM糸による不思議な効能。第2の心臓”足”から健康に!」の記載。
(http://mall.marchs.co.jp/em-wear/24705/)
(4)ALL ABOUT STYLE STOREのウェブサイトにおいて、「大人気ソックスの新バージョン!癒しの繊維で足元あったか」の見出しのもと、「ふわぽかソックス ソックス型 2足セット」の項に「足から健康を追求するフットケア」の記載。
(http://stylestore.allabout.co.jp/mojo/ProductInfo/sku/BL023-10-0000-A176/)
(5)砂山靴下のウェブサイトにおいて、「ケアランスについて」の見出しのもと、「コンセプト」の項に、「足から健康を考え続けてきた砂山靴下が提案する、働く女性の応援アイテムです。」の記載。
(http://www.sunayama-socks.com/carelance/about.html)
そして、前記ウェブサイトの商品カタログの項には、「3点立ちソックス」及び「着圧回旋ハイソックス」の記載。
(http://www.sunayama-socks.com/carelance/catalog/)
(6)YAHOO!JAPANショッピングのウェブサイトにおいて、「靴下、パンツ、サポーター、ウォーマーなどの製造直売 ほとめいと」の見出しのもと、「商品説明」の項に、「国産工場直送!安心の品質とお手頃価格!足から健康を・・男女兼用!」の記載。
(http://store.shopping.yahoo.co.jp/hotmeit521/7.html)
(7)自転車専門店-株式会社ツーワンのウェブサイトにおいて、「ツインエアー備長炭 着圧スポーティングソックス グレー」の見出しのもと、「圧力差によるサポートする着圧ソックスだからむくみや疲れ知らずになりますよ!足から健康になろう!!」の記載。
(http://www.cebunatcon2007.com/item/item_03144.html)
(8)天然素材とシルク専門店湘南絹衣のウェブサイトにおいて、「絹の5本指、靴下類、婦人用、紳士用、ストッキング」の見出しのもと、「毎日履いて、足から健康に!」の記載。
(http://www.kinue.jp/p4.html)
2 商品「靴下」の効能について
(1)前記(4)と同じウェブサイトに、「足は『第二の心臓』と呼ばれ、体全体を支える重要な部位です。とはいえ、顔やボディに比べ、そのケアはおろそかにされがち。また、何かと女性特有の悩みが集中する部分でもあります。そこで生まれたのが『Carelance』シリーズ。足から健康を考え続けた砂山靴下が提案する働く女性のための応援アイテムです。冷え対策を始め日常的なフットケアなど、『Carelance』はさまざまなシーンで女性のココロとカラダをケアしてくれます。」の記載。
(2)前記(5)と同じウェブサイトに、「たとえば自分で温度調整できない室内の冷え対策。たとえば素足の日常的なフットケア。『ケアランス』はさまざまなシーンで、女性のココロとカラダをケアします。」の記載。
(3)前記(6)と同じウェブサイトに、「健康志向に活用・・・!冷え対策と清潔対策のすぐれもの!重ね履きにより健康は足元から!」の記載。
(4)前記(8)と同じウェブサイトに、「綿の約1.5倍の吸湿、放湿性。絹は熱伝導率が低いため、冬暖かく、夏は涼しい。」の記載。
(5)NAIGAIのウェブサイトにおいて、「Men’s 2011 Spring & Summer」の見出しのもと、「MEN’S COLLECTIONS」の項の「concept コンセプト」の項に、「足もと、いつも気持ちいい“歩き”に着目した機能性ソックス。独自の発想や特色ある素材で、足もとから健康をサポート。」の記載。
(http://www.naigai.co.jp/03brands/03/m_brands.php)
(6)健康シルク絹物語しらはたのウェブサイトにおいて、「シルクマジック【先丸】パンプスイン お得3足セット」の見出しのもと、「『健康は足もとから 』機能靴下は『足もとから健康』をテーマにつくられた機能性のある靴下です。 冷え性や、敏感肌、アブラ足など、足もとのことで お悩みの方、ぜひ一度ためしてみてください。」の記載。
(http://silk.uf.shopserve.jp/SHOP/mob_item_desc.cgi?ITEM_NO=4134)

第6 請求人及び被請求人の意見
請求人は、前記第5の証拠調べに対し意見書において要旨以下のように述べているのに対し、被請求人は、同証拠調べに対し何ら意見を述べていない。
商品「靴下」は、繊維の特性に基づいた特殊な機能を有する靴下について「足もとから健康に」などと称して販売している例はあるが、一般的な商品「靴下」において、「足から健康」という機能、効能が生じているということは確認できない。
したがって、標章「足から健康」については、商品「靴下」について自他商品識別力が備わっているものと判断すべきである。

第7 当審の判断
1 商標権の効力の範囲について
商標権の効力は、商標権の本来的な効力である専用権(使用権)にとどまらず、禁止的効力(禁止権)をも含むものであるから、指定商品と同一又は類似の商品についての登録商標と同一又は類似の商標及び商品の使用に及ぶものである(商標法第25条第37条)が、同時に同法第26条第1項各号のいずれかに該当する商標(他の商標の一部となっているものを含む。)には、及ばないとされており、同項第2号には、「当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。次号において同じ。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標」と規定されている。
したがって、商標法第26条第1項第2号の規定に該当する商標であれば、当該商標権の効力は、及ばないことになる。
そこで、以下検討する。
2 イ号標章について
イ号標章は、別掲2のとおり、商品「靴下」において、「足から健康」の文字を横書きしてなるところ、該語は、商品「靴下」の分野において、「竹炭・シルク5本指ソックスで足から健康」、「シルク5本指靴下 22-24cm 毎日履いて足から健康」、「第2の心臓”足”から健康に」、「足から健康を追求するフットケア」、「足から健康を考え」、「足から健康を」、「足から健康になろう」及び「毎日履いて、足から健康に」のように使用(前記第5の1)されており、また、商品「靴下」の効能については、「冷え対策を始め日常的なフットケア」、「自分で温度調整できない室内の冷え対策。たとえば素足の日常的なフットケア」、「冷え対策と清潔対策のすぐれもの!重ね履きにより健康は足元から」、「綿の約1.5倍の吸湿、放湿性。絹は熱伝導率が低いため、冬暖かく、夏は涼しい」、「独自の発想や特色ある素材で、足もとから健康をサポート」及び「冷え性や、敏感肌、アブラ足など、足もとのことで お悩みの方、ぜひ一度ためしてみてください」との各記載(前記第5の2)があることを総合してみれば、イ号標章は、「健康によい靴下」ほどの意味合いを有することを示す商品の効能を表示する語として、普通に使用されるものとして認識、把握されるものであるといい得るものである。
そうとすれば、商品「靴下」に使用するイ号標章は、「健康によい靴下」であることを理解させるにとどまるから、単に商品の効能を表示するにすぎないといい得るものである。
したがって、イ号標章は、商品の効能を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきであるから、商標法第26条第1項第2号に該当するものといわざるを得ない。
3 請求人の主張について
請求人は、イ号標章は、商品「靴下」の品質等を暗示させはしても、直接限定的に品質等を表示した語句として広く一般的に採択使用されているものではない。したがって、イ号標章は自他商品識別力を有する語句であって、出所表示機能を十分果たしているから商標的使用である旨主張するが、イ号標章は、その使用に係る商品「靴下」の分野においてその商品の効能を表すものとして使用されていることは、上記3のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人が商品「靴下」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 イ号標章

(色彩は原本参照)
判定日 2011-09-30 
出願番号 商願2006-51809(T2006-51809) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 大島 勉
末武 久佳
登録日 2006-11-17 
登録番号 商標登録第5004631号(T5004631) 
商標の称呼 アシカラケンコー 
代理人 傳田 正彦 
代理人 堀米 和春 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ