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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 2091725
管理番号 1244851 
審判番号 取消2010-300801 
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-07-22 
確定日 2011-08-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第475530号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第475530号商標の指定商品中、第9類「ゴム製浮袋」、第17類「絶縁用ゴム手袋」及び第25類「靴のかかとゴム,ゴム製草履裏」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
登録第475530号商標(以下「本件商標」という。)は、「OMEGA」の文字を書してなり、昭和30年3月19日に登録出願、第16類「護謨、『エボナイト』、『ガタペルチヤ』、『ラバ-サブスチチユ-ト』、及び他類に属しないその軟質製品」を指定商品として、昭和31年1月18日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成18年2月15日、第1類「ゴムのり(事務用又は家庭用のものを除く。)」、第5類「歯科用ゴム」、第9類「ゴム製浮袋」、第10類「乳首,コンドーム,ゴム製臼歯」、第12類「チューブの修繕用ゴムはり付け片」、第16類「事務用又は家庭用のゴムのり」、第17類「ゴム,エボナイト,グタペルカ,ラバーサブスチチュート,ゴム管,絶縁用ゴム手袋,糸ゴム(織物用のものを除く。)」、第21類「ゴム製洗濯板」、第23類「織物用糸ゴム」及び第25類「靴のかかとゴム,ゴム製草履裏」に書換登録がなされたものである。
なお、平成23年5月17日受付の本件抹消登録申請書により、本件商標権の登録の抹消がなされた。
2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第9類「ゴム製浮袋」、第17類「絶縁用ゴム手袋」、第25類「靴のかかとゴム、ゴム製草履裏」について、継続して3年以上日本国内において使用した事実がなく、商標登録原簿に専用使用権又は通常使用権の設定が登録されていないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)弁駁の理由
答弁書で添付された使用証拠に基づく被請求人の主張には後述する点で疑義があり、被請求人が審判請求登録日前3年以内に日本国内において本件商標を商品に使用していたことを証明していないかと考える。
ア 使用に係る商品について
乙第1号証及び乙第2号証に添付された写真の物品が、本件審判の取消請求に係る指定商品である、第25類に属する「靴のかかとゴム」に該当する事実は認める。しかし、商標法第2条第1項第1号に規定する「商品」に該当するか否については否認する。
商標法における「商品」は、甲第1号証の判決(東京高裁 昭和63年3月29日判決昭和62年(ネ)第1462号)では「商標法における商品は、商取引の目的物として流通性のあるもの、すなわち、一般市場で流通させることを目的として生産される有体物であると解すべきである。」と判示している。
この判決によれば、商標法上の商品は、a)独立性、b)有償性、c)流通性、d)動産性の要件を満たすことが必要ということになる。
しかし、被請求人は、当該物品を販売に供している等の「商取引の目的物としての流通性」を証明する証拠、乙第2号証の商品が有償で取り引きされた事実を証明する証拠を提出しておらず、当該物品が市場で流通し取り引きされた事実が証明されていない。
倉庫に眠っている「物品」や無償配布の「物品」は、商標法上の商品には該当しない。
イ 登録商標の使用について、
乙第1号証及び乙第2号証で証明された事実は、商標法第2条第3項各号に該当する使用行為には該当しない。
(ア)商標権者の使用について
a 被請求人は、乙第1号証の太洋ゴム工業有限会社(以下「太洋ゴム工業」という。)の平成22年9月16日付の証明書にて、平成20年9月2日付の納品書及び平成21年6月2日付の納品書で証明された納品の事実及び乙第2号証の平成22年9月8日撮影の「商標が付された商品」の写真をもって、「納品されたものを商標権者によって一束にして、包装して、販売に供するもの」であることから、本件商標を使用していることが明確であると主張している。
しかし、乙第2号証には商標が付された「靴のかかとゴム」を本件審判請求の予告登録日以降に撮影された写真が付されているのみである。
商標権者等が商標を付した商品を所持する行為は商標法第37条第2号に掲げる予備的行為に該当する場合はあるが、上述した商標法第2条第3項第1号、第2号又は第8号で定義される「使用」に当たる行為のいずれにも該当しない。
b 乙第2号証の写真では、一束にして、包装した「靴のかかとゴム」に登録商標を表示したラベルを付したもの及び「靴のかかとゴム」の底部に登録商標の「OMEGA」を浮き出させたものが表示されている。
当該行為は、写真で表示された「靴のかかとゴムの物品」を「商品」に置き換えれば商標法第2条第3項第1号に掲げる「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に形式的には該当するものである。
しかし、もしこれが商品であるならば、商標法第2条第3項第2号の本件審判の予告登録日前3年以内における「納品されたものを商標権者によって一束にして、包装して、販売した」という実績を証明できるはずである。
すなわち、商標が記載された請求書又は領収書の写しの提出、販売数等についての第三者による有償性の証明がなされてしかるべきである。しかし、被請求人は、乙第2号証で、かかる事実について何等立証していない。
被請求人が乙第2号証で証明したのは、平成22年9月8日の商品の撮影写真であって予告登録日から1か月以上経過した後のものであり、審判請求登録前に使用していた事実を証明したことにならない。
c さらに、被請求人は、商品に関する広告、価格表若しくは標章を付した注文書、納品書、送り状、出荷案内書、物品領収書、カタログ等の取引書類を提出していないことから、商標法第2条第3項第8号に掲げる行為も証明されていない。
以上より、これら取引書類の提出又は証明がされない限り、乙第2号証によっては商標を付した「靴のかかとゴム」の予告登録日以降の所持が証明されているのみであり、商標法第2条第3項各号の使用には該当しないことから、乙第2号証によって商標法第50条第2項に規定する使用を証明したこととはならない。
(イ)太洋ゴム工業の証明書(乙第1号証)について
a 被請求人は、乙第1号証にて太洋ゴム工業が商標「OMEGA」が刻印された「靴のかかとゴム」を平成20年9月2日に502足、平成21年6月2日に250足を被請求人に納入した旨証明している。
しかし、「靴のかかとゴム」の物品が納品されたとしても、商標権者が、平成19年8月4日から平成22年8月4日までの期間内において、これを商品として市場に流通させ、商品として販売(有償性)したという事実が証明されなければ、商標を使用している事実を証明したことにはならない。
さらに、請求人が財団法人民事法務協会運営の「登記情報表示サービス」で検索したところ、太洋ゴム工業は、千葉県香取市の商業法人登記所には登記されていないとの検索結果が得られた。
以上の検索結果で明らかなとおり、太洋ゴム工業には法人格を有しないことが予想される状況にある。
もし、太洋ゴム工業が登記されていない場合は、当該企業は民法上の法人格を有しないため、証明書に関して証明する能力はなく、乙第1号証に証明力はない。納品したという事実に問題がある。
b 太洋ゴム工業の証明書には、上述した法人格を有しないという主体的要件以外に、以下に示すような疑問点が存在する。
(a)証明願の日付と証明書の日付が逆転している。
被請求人である有限会社三ツ星ゴム商店(以下「三ツ星ゴム商店」という。)は、平成22年9月16日付で、太洋ゴム工業(非法人)に対して証明願を提出しているが、太洋ゴム工業の証明書の日付は、平成22年9月13日であり、証明書発行後に証明願を出していることになり、証明書としての形式的要件を欠いているように思われる。
(b)証明書に添付された二つの商品の写真(形状及び大きさが異なる)と納品書に記載された品番・品名が全く同じである。
乙第1号証に添付された「靴のかかとゴム」の写真は、一方が「日本政府認可」、「OMEGA」及び「第475530号」の三段併記の文字が付されている物品、他方は「PAT」、「OMEGA」及び「475530号」の三段併記の文字が付されている物品というように明らかに物品の形状及び大きさが異なっている。
しかし、乙第1号証の証明書の末尾に添付された2通の納品書の品番はいずれも「006-10」で同じであり、品名も「厚オメガ 黒 大」と同じである。
一般に商品の形状又は大きさが異なる場合は、異なる品番が付されるのが社会的常識であることに鑑みれば、納品書と写真との整合性に関しても疑問を感じざるを得ない。
(c)証明書では納品書のみ証拠として添付されている点
商取引において納品書は、受領側の請け書があって次に請求書が送付されるものである。すなわち、納品書は実際に取り引きが成立した否には疑問を生じる取引書類である。
そこでもし、取り引きが成立していたとすれば、請求書の写しが存在するはずであり、その請求書に従い三ツ星ゴム商店から太洋ゴム工業へ送金されているはずである。したがって、請求書の存在及び送金書類の写しが提出されて、初めて「靴のかかとゴム」の所有権が被請求人に移転したものと推認される。しかし、乙第1号証及び乙第2号証の書証にはかかる証明書が添付されていない。
ウ 被請求人が太洋ゴム工業から購入した物品を実際に乙第2号証にかかる態様で商品として流通させていないと推定する請求人の主張を証左するものとして、以下の事実が存在する。
(ア)特許法第188条に違反する虚偽表示について、
特許法第188条には虚偽表示の禁止が記載されている。
乙第1号証及び乙第2号証には、「PAT第475530号」(包装に付したラベルの下部)、「PAT/OMEGA/475530号」(靴のかかと中央部)と表示された「靴のかかとゴム」が付されている。
「PAT」とは特許を意味する英語の「PATENT」の略語と認識できるものであることから、当該表示は「特許第475530号」という特許表示と紛らわしい表示に該当するものである。しかし、特許第475530号は、被請求人の「靴のかかとゴム」の特許とは異なるものである。
したがって、被請求人が乙第2号証の物品を特許法第188条に規定する行為を実際に行っているとすれば、その行為は、特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示と紛らわしい表示を付する行為及び特許表示と紛らわしい表示を付した物を譲渡する行為に該当することから、特許法第188条第1号及び第2号に規定する虚偽表示の禁止に違反するものである。
もし、被請求人が、商品として市場に流通させていたことを立証すれば、被請求人は特許法第198条(虚偽表示の罪)「第百八十8条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」の刑事罰の対象にもなる。また、法人の場合は、第201条(両罰規定)の対象ともなる。
このような虚偽表示と思われる物品を、商標権者である被請求人が商品として流通させている又は流通したにも拘わらず放置されている状況は考えにくく、商標権者が登録商標を付した商品を販売している証拠を提出していない状況を鑑みても、商標権者は実際には販売行為をしていないと考えるのが相当である。もし譲渡しているのであれば、それは特許法第188条に規定する虚偽表示の禁止に違反する行為を自白しているに等しいこととなる。
(イ)不正競争防止法第2条第1項第13号の「誤認惹起行為」表示について
乙第2号証の「靴のかかとゴム」の写真の一方には「日本政府認可」、「OMEGA」及び「第475530号」の三段併記の文字が付されている。
この表示の中の「日本政府認可」は、あたかも日本政府によって品質が良いことを保証された商品であるかのごとく誤認させるものであり、不正競争防止法第2条第1項第13号の不正競争行為に該当する可能性を秘めている。
「日本政府認可」、「OMEGA」及び「第475530号」の三段併記の文字が付された「靴のかかとゴム」の物品の販売は、特許法第188条の虚偽表示の禁止規定に違反するものではないが、不正競争防止法第2条第1項第13号の規定の誤認惹起行為に該当する。したがって、被請求人が「靴のかかとゴム」を市場に流通させる行為に該当する行為をした場合には、処罰の対象となることから、商品としての市場への流通を避けているものと思われる。
エ まとめ
以上述べたように、被請求人が提出した証拠では、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内で業として本件商標を審判請求に係る商品に使用していたことが立証されていない。
3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び同第2号証を提出した。
(1)本件商標は、昭和30年3月19日の出願以来、今日まで「靴のかかとゴム」について、使用されて来ており、更に将来も使用を継続するものである。
(2)被請求人は、本件審判の登録前3年以内に日本国内において、審判請求に係る指定商品中、「靴のかかとゴム」について、本件商標の使用をしていることについて、証明するものである。
乙第1号証の証明書は、商標権者の三ツ星ゴム商店が願人となって、「証明願」を大洋ゴム工業に呈示し、太洋ゴム工業が証明したものである。
証明書の内容について、説明する。
商標権者は、本件商標を刻印した「靴のかかとゴム」を販売しているのであるが、その製造については、乙第1号証の証明者である太洋ゴム工業に、その製造を発註し、製品である「靴のかかとゴム」を商標権者に納品しているものである。
商標権者は、納品された商標「OMEGA」刻印入りの「靴のかかとゴム」を乙第2号証の登録商標使用説明書に示すように、所定枚数の靴のかかとゴムを揃え、一束にして、包装して、販売に供するものである。
(3)上述のように、本件商標権者は、審判請求に係る指定商品中「靴のかかとゴム」について、本件商標を使用していることが明確である。
4 当審の判断
(1)乙各号証について
被請求人は、本件商標を商標権者が取消請求に係る指定商品中の「靴のかかとゴム」について使用しているとして、乙第1号証及び乙第2号証を提出しているので、以下、被請求人の提出に係る乙各号証について検討する。
ア 乙第1号証は、商標権者を願人とし、太洋ゴム工業あての証明願であり、太洋ゴム工業は、平成22年9月13日付けで、証明願に添付された写真の「靴のかかとゴム」を2008年9月2日に502足、2009年6月2日に250足を商標権者に納入したことを証明している。
そして、当該証明願には、いずれも「OMEGA」の文字が表示されている薄型の「靴のかかとゴム」及び厚型の「靴のかかとゴム」の写真並びに太洋ゴム工業が商標権者に「厚オメガ 黒 大」を502足納品したことを示す2008年9月2日付けの納品書及び太洋ゴム工業が商標権者に「厚オメガ 黒 大」を250足納品したことを示す2009年6月2日付け納品書が添付ている。
イ 乙第2号証は、被請求人代理人が平成22年9月8日に撮影した写真を添付した登録商標の使用説明書と題する書面であり、前記証明願に添付写真にある薄型の靴のかかとゴムを20個を「登録商標」、「OMEGA」等が記載された商品ラベルを貼付したが透明ビニールにより包装された商品の写真及び前記証明願に添付写真にある厚型の靴のかかとゴムを10個を「登録商標」、「OMEGA」等が記載された商品ラベルを貼付したが透明ビニールにより包装された商品の写真が添付されている。なおいずれのラベルにも商標権者の名称は記載されていない。
(2)上記(1)によれば、「OMEGA」の商標が付された「靴のかかとゴム」について、2008年9月2日に502足、2009年6月2日に250足が太洋ゴム工業から商標権者に納品されたことが認められる。
しかしながら、被請求人は、商標権者等が請求に係る指定商品のいずれかについて、登録商標の使用をしていることを証明しない限り、商標権者は、その指定商品に係る登録商標の取消しを免れない。
この点について、被請求人は、商標権者が、納入された靴のかかとゴムについて、一束にして包装して販売に供していると主張し、包装した商品の写真(乙第2号証)を提出している。
しかし、乙第1号証の薄型及び厚型の靴のかかとゴム(写真)、及び乙第2号証の靴のかかとゴムの包装(ラベル)には、いずれも「OMEGA」の表示以外に、商品の製造元や販売元等の出所を示す表示はなく、被請求人の提出した証拠によっては、商標権者が、靴のかかとゴム及びその包装に「OMEGA」の商標を付したかどうか明らかとはいえないし、その他、商標権者が当該商品を譲渡した事実等、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標について商標法第2条第3項各号所定の行為を行ったことについて何ら立証されていない。
そして、当合議体は、本件審判請求について、口頭審理を予定し、被請求人に対し、平成23年4月5日付け通知書により、商標権者が本件審判請求の予告登録前3年以内に、本件商標を使用した靴のかかとゴムの販売(譲渡)した事実の立証について通知したが、被請求人は平成23年5月24日に付け上申書において、本件商標に係る商標権抹消登録申請書を提出したこと及び口頭審理には出頭しない旨を述べ、上記の点について、何ら主張、立証していない。
してみれば、被請求人の提出した証拠によっては、本件商標が商品「靴のかかとゴム」について、商標権者により、要証期間内に使用をされていたものと認めることはできない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件商標が、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その取消請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中「結論掲記の商品」について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-06-07 
結審通知日 2011-06-09 
審決日 2011-06-21 
出願番号 商願昭30-7394 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (2091725)
最終処分 成立  
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 前山 るり子
内山 進
登録日 1956-01-18 
登録番号 商標登録第475530号(T475530) 
商標の称呼 オメガ 
代理人 山川 政樹 
代理人 山川 茂樹 
代理人 谷山 守 

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