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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 109 |
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管理番号 | 1244695 |
審判番号 | 取消2010-300625 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2010-06-07 |
確定日 | 2011-09-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2146780号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2146780号商標(以下「本件商標」という。)は、「FLIP」の文字を横書きしてなり、昭和62年5月18日に登録出願、第9類「産業機械器具、動力機械器具(電動機を除く)風水力機械器具、事務用機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)その他の機械器具で他の類に属さないもの、これらの部品および附属品(他の類に属するものを除く)機械要素」を指定商品として平成元年6月23日に設定登録され、その後、2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同21年9月7日に、商標法第50条第1項の規定により指定商品中「動力式手持ボルト締付工具」についての登録を取り消す旨の審決の確定登録がされているものである。 なお、本件審判の請求の登録は、平成22年6月22日にされている。 第2 請求人の主張 1 請求の趣旨 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中「金属加工機械器具」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出している。 2 請求の理由 (1)本件商標は、その指定商品中「金属加工機械器具」について継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実が存在しないから、上記商品についての登録は取り消されるべきである。 (2)弁駁 請求人は、被請求人の提出した平成22年8月9日付け答弁書に対し、弁駁していない。 第3 被請求人の主張 1 答弁の趣旨 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第5号証(枝番を含む。)を提出している。 2 答弁の理由及び回答書 (1)概要 本件商標は、日本国内において本件審判の請求の登録前3年以内に、請求に係る指定商品「金属加工機械器具」について使用されており、本件審判の請求は成り立たないものである。 ア 本件商標の使用状態の概要 本件商標権者(被請求人)であるヤマハ発動機株式会社は、その事業の一つとして、いわゆる「産業用ロボット」の製造販売を行っており、本件商標は、この「産業用ロボット」との関連において使用されているものである。 上記「産業用ロボット」についてみると、この商品は、金属加工の分野でも当然に用いられているものであるが、一般に「産業用ロボット」といわれる商品には、各種の用途があり、その用途との関係において、その種の機械器具のカテゴリーに属する商品として位置付けられるものである。したがって、金属加工の分野でも用いられている「産業用ロボット」にあっては、省令表示に倣うと「金属加工機械器具」のカテゴリーに属する商品に当たるものである。 そして、被請求人自ら、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標「FLIP」と社会通念上同一の商標の下、「金属加工機械器具」のカテゴリーに属する商品たる「産業用ロボット」を販売している。 イ 乙第1号証 乙第1号証は、被請求人発行(2010年5月発行)に係る「産業用ロボット」についての製品カタログ(「ヤマハロボットカタログ」)の抜粋である。このカタログ中に示されているように、被請求人は、「産業用ロボット」のうちの「単軸ロボット」について、本件商標と社会通念上同一の商標をわが国において使用している。 ウ 乙第2及び第3号証 乙第2号証は、被請求人の一事業部であるIMカンパニーの事業概要を示すパンフレットであり、当該パンフレット中の記載より、被請求人が継続的に本件商標と社会通念上同一の商標を使用している。 また、乙第3号証の1ないし3は、被請求人のウェブページの写しであり、これには、「産業用ロボット」のうち、「単軸ロボット」(乙第3号証の1)、「直交ロボット」(乙第3号証の2)、「スカラロボット」(乙第3号証の3)の販売終了モデルと修理対応期限が示されている。 上記証左のうち、乙第2号証のパンフレットの9?10頁には、被請求人が販売する「産業用ロボット」の発展の歴史(PRODUCT DEVELOPMENT HISTORY)が記載されており、この歴史をみると、被請求人は、1986年に本件商標を使用した「単軸ロボット」の販売を開始し、それ以降現在に至るまで、当該「単軸ロボット」は約15年に亘って継続的に販売されている。また、この「産業用ロボット」の発展の歴史の記載より、被請求人は、当該「単軸ロボット」以外にも、その用途に応じて各種の産業用ロボット(例えば、「直交ロボット(XY)」「スカラロボット(YK)」等)を販売していることも分かり、この点については、上記カタログ(乙第1号証)からも窺い知れるものである。 加えて、上記「産業用ロボット」の発展の歴史の記載からは、被請求人は、1997年に当該「単軸ロボット」を「tシリーズ」ヘモデルチェンジし、2000年に「xシリーズ」へ再度モデルチェンジをするに至っていることが分かるとともに、このようなモデルチェンジは、「単軸ロボット」のみに限らず、「直交ロボット」や「スカラロボット」についても、同時期になされていることが分かる。つまり、被請求人は、これら各種の「産業用ロボット」について、「tシリーズ」「xシリーズ」という形で統一的にモデルチェンジをし、それを示すために、各種「産業用ロボット」の基幹となる名称、即ち、「単軸ロボット」であれば「FLIP」という名称に、シリーズ名を付した表示を用いているものである。このことは、乙第3号証に示す「修理対応シリーズ」の一覧において、「単軸ロボット」(乙第3号証の1)、「直交ロボット」(乙第3号証の2)、「スカラロボット」(乙第3号証の3)に「tシリーズ」や「xシリーズ」が存在することからも窺い知れるものである。 このような「tシリーズ」や「xシリーズ」についてみると、一般に、産業機械器具を取り扱う業界をはじめとして、事業者は、自己の製造販売に係る各種製品に関し、その製品管理又は取引の便宜上、アルファベット1文字等をハイフンで結合した標章等を当該商品のシリーズや規格等を表すための記号又は符号として商取引上類型的に採択、使用しているという実情があり、このような実情の下、被請求人においても、各種「産業用ロボット」の基幹となる名称に続く形で、シリーズ名を表示しているものである。 上述の諸点及び被請求人により長年に亘って「単軸ロボット」に本件商標が使用されていることとも相俟って、上記カタログ(乙第1号証)中に示されている「FLIP-X」という表示に接する需要者・取引者にあっては、当該表示を以って、被請求人の製造販売に係る「FLIP」という名称の「単軸ロボット」における「xシリーズ」というモデルの商品であると認識し、そのような認識の下、実際の取引に資される訳であるから、上記カタログ中に示されている「FLIPーX」という表示は、本件商標と社会通念上同一の商標に当たるものである。 エ 乙第4号証は、被請求人会社の発行(2007年8月作成)に係る「産業用ロボット」についてのカタログ(「ヤマハロボット アプリケーション集」)の抜粋であり、このカタログには単軸ロボットの用途例が挙げられており、これらの用途例より、単軸ロボットは各種装置(産業用ロボット)内の一部に組み付けられ、“クリーン、防塵・防滴高速搬送ユニッド、“当てストッパ高さ変更ユニッド、“ネジ締め装置”、“ワークの幅よせ装置”、“圧入装置”、“Oリング組付装置”及び“搬送移載装置”等の一部として機能するものである。 オ 乙第5号証の1は、「ボールねじナット ラップ研磨装置(産業用ロボット)」を示すものであり、当該装置(産業用ロボット)は、その一部に上下運動をする単軸ロボットと回転運動をする単軸ロボットとが組み込まれており、両単軸ロボットを同期させて加工対象であるナット内部の溝を専用ツールで研磨するというものである。 カ 乙第5号証の2は、「ボールねじ軸焼きなまし装置(産業用ロボット)」を示すものであり、当該装置(産業用ロボット)は、その一部に材料の焼きなましの長さ調整を行う単軸ロボットと、材料を回転させるための単軸ロボットと、材料の長さを決めるための単軸ロボットが組み込まれおり、単軸ロボットの回転に伴い当該単軸ロボット上部のローラが回転することで、ボールねじそのものが回転して均一な焼きなましを行うものである。 キ 乙第5号証の3は、「ボールねじ軸切断装置(産業用ロボット)」を示すものであり、当該装置(産業用ロボット)は、その一部に材料であるボールねじの長さを決める(位置決め)単軸ロボットが組み込まれており、単軸ロボットにより定められた位置で回転砥石によりボールねじが切断されるというものである。 ク 乙第5号証の4は、「ボールねじにバフ研磨加工を施す装置(産業用ロボット)」を示すものであります。当該装置(産業用ロボット)の一部に単軸ロボットが組み込まれており、装置全体としてボールネジにバフ研磨加工をするというものである。 ケ 上記各書証より明らかなように、本件商標が使用されている「産業用ロボット(単軸ロボット)」は、各種装置として機能する「産業用ロボット」に組み込まれ「各種装置(産業用ロボット)」の一部品として機能しているものであり、加えて、上記乙第4号証ないし乙第5号証の4で説明した装置(産業用ロボット)は、装置全体として金属(ボールねじ)の研磨、焼きなまし、切断等を行うもの、即ち、金属の加工を行う装置である。そして、その一部品として組み込まれ、且つ、互換性を有するとともに単独で取引の対象となり得る「産業用ロボット(単軸ロボット)」は、「金属加工機械器具」の「部品及び附属品」という形で位置付けられるものである。 これらの諸点、及び、乙第5号証の2の書証中に表れている「産業用ロボット(単軸ロボット)」は乙第2号証の第2頁、同第8頁に表れている「単軸ロボット」であること、さらには、本件審判請求に係る指定商品たる「金属加工機械器具」は、昭和34年分類における「金属加工機械器具」であり、その包括概念的な表示の中には「それらの部品及び附属品」を含まれていることからすると、被請求人会社は、本件審判登録前3年以内に我が国において、本件商標「FLIP」と社会通念上同一の商標を本件審判請求に係る指定商品「金属加工機械器具」の範躊に属する商品「産業用ロボット(単軸ロボット)」について使用している。 (2)まとめ 以上を総合すると、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に我が国において、本件商標と社会通念上同一の商標を請求に係る指定商品たる「金属加工機械器具」のカテゴリーに属する商品「産業用ロボット」について使用している。 第4 当審における審尋(要旨) 「産業用ロボット」とは、例えば「プログラムあるいはコンピューターからの指令によって多様な作業を行う産業用機械。視覚を備え、また移動できるものもある。物体の移動、工作機械の操作、組立・塗装・溶接などに用いる。」(広辞苑第5版)とされ、様々な用途があり、単に「産業用ロボット」というだけでは、その用途、内容等を特定することはできない。 したがって、本件商標を「金属加工機械器具」の範疇に属する商品(「産業用ロボット」)に使用していたのであれば、その関係を明らかにする証拠を、提出されたい。 第5 当審の判断 1 被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標を、請求に係る指定商品たる「金属加工機械器具」の範疇に属する商品であるところの、金属加工の分野で用いられる「産業用ロボット」に使用している旨主張するので、以下、被請求人の提出した証拠及び主張について検討する。 (1)乙第1号証は、「YAMAHA ROBOT CATALOG 2010」と題する製品カタログの抜粋写しと認められるところ、その2、3及び7頁目の「単軸ロボット」の欄には、「FLIP-X Series」とあり、そのFタイプには「F14/F14H」及び「F17/F17L」と、Rタイプには「R10」との記載があり、当該商品の写真が掲載されている。そして、裏表紙にあたる頁には、被請求人の「ヤマハ発動機株式会社」の記載及び2010年5月に作成されたと解される「201005-C」の記載がある。 (2)乙第3号証の1ないし3は、被請求人のウェブサイトの写しと認められるところ、その内容は、産業用ロボットの「販売終了モデルと修理対応期限」について紹介するものであるが、これには、シリーズ名として「FLIP-X」、「FPILt」、「FLIP AC」及び「FLIP DC」等の記載が認められるところ、被請求人は、被請求人の製造販売に係る「FLIP」という名称の「単軸ロボット」について、「tシリーズ」「xシリーズ」等という形で統一的にシリーズ名を付した表示を用いている旨述べている。 (3)乙第5号証の2は、機械装置の写真であるところ、組み込まれた「単軸ロボット」の位置が示されており、「R10(回転)」及び「F14、F17」の標記が併せて記載されているところ、被請求人は、この機械装置についての「ボールねじ軸焼きなまし装置(産業用ロボット)」を示すものであり、当該装置(産業用ロボット)は、その一部に材料の焼きなましの長さ調整を行う単軸ロボットと、材料を回転させるための単軸ロボットと、材料の長さを決めるための単軸ロボットが組み込まれおり、単軸ロボットの回転に伴い当該単軸ロボット上部のローラが回転することで、ボールねじそのものが回転して均一な焼きなましを行うものである旨述べている。 2 以上のことからすると、被請求人は、2010年5月に、産業用ロボットの一種である「単軸ロボット」に、「FLIP-X Series」と付していたものと認められ(乙第1号証)、該「FLIP」には、「tシリーズ」及び「xシリーズ」等のシリーズ名を付して使用されていた(乙第3号証の1ないし3)ものであるから、該「FLIP-X Series」中の「-X Series」の部分は、シリーズ名の一つを表したものであり、その要部は「FLIP」と認められるから、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されたとして差し支えないものである。 そして、被請求人は、機械装置の写真(乙第5号証の2)を示して、この機械装置は材料の焼きなまし等を行う単軸ロボットである旨述べているが、この写真からは、被請求人の主張の内容全てを確認することは出来ない。 しかしながら、写真の機械装置は、加工する部品を送る部分と部品に加工を行う部分とからなると見受けられ、かつ、加工される部品と推認される鉄の棒状の商品も同時に見受けられるものであるから、概ね何らかの金属加工を行う機械装置と見ることができ、また、「単軸ロボット」の部分として示された部分(装置)と、乙第1号証に示された同一の記号(F14、F17、R10)の商品(装置)とは、その外観・形状において、ほぼ同一視できるものである。 以上のように、機械装置の写真(乙第5号証の2)に関する被請求人の主張の内容の全てを確認することは出来ないまでも、相当程度、信ずるに足る内容であると認められる。 そうとすると、この機械装置(乙第5号証の2)は、本件商標と社会通念上同一の商標が使用された被請求人のカタログに記載の「単軸ロボット」が組み込まれた金属加工(焼きなまし等)を行う金属加工用の機械装置であって、「金属加工機械器具」の範疇に属する商品とみて差し支えないものである。 3 むすび したがって、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者が、請求に係る指定商品「金属加工機械器具」について使用していたものであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-04-18 |
結審通知日 | 2011-04-21 |
審決日 | 2011-05-09 |
出願番号 | 商願昭62-54477 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(109)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
石田 清 |
特許庁審判官 |
小川 きみえ 小林 由美子 |
登録日 | 1989-06-23 |
登録番号 | 商標登録第2146780号(T2146780) |
商標の称呼 | フリップ |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 朝倉 正幸 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 本宮 照久 |