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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y14
管理番号 1243326 
審判番号 取消2009-301275 
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-11-17 
確定日 2011-09-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4692531号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4692531号商標の指定商品中、第14類「時計」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4692531号商標(以下「本件商標」という。)は、「SINCA」の文字を横書きしてなり、平成14年6月12日に登録出願され、第14類「貴金属,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,貴金属製コンパクト,貴金属製靴飾り,時計,貴金属製喫煙用具」を指定商品として平成15年7月18日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べている。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「時計」について継続して3年以上日本国内において使用された事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 第1弁駁
(1)本件商標の本件指定商品への使用が全く立証されていないこと
被請求人は、「本件審判請求の登録前3年以内に我が国において請求に係る指定商品『時計』について、本件商標を使用している」旨主張している。
しかしながら、被請求人から提出された証拠は信憑性に乏しく、その主張は客観的な証明に基づかないものであると思われるため、以下にその理由を述べる。
(ア)乙第1号証について
乙第1号証は、市販の納品伝票に手書きで細目等を記入しているものである。同号証には、平成18年12月9日にTなる人物に価格1万円の時計ブレスを納品した旨記入がなされている。
ここで、乙第1号証の「納品書」の作成日付は、平成18年12月9日となっているが、この日付は本件審判の予告登録日である平成21年12月9日のちょうど3年前であり、あまりに不自然である。当該事実は、被請求人が、本件審判請求後に予告登録日を確認したうえで、ちょうど3年前となる日付を付して同証拠を作成した可能性も否定できないことを示している。
また、乙第1号証に記載がある「時計ブレス」は、その価格が1万円と高額であり、かつ、Tの住所静岡県と被請求人の住所東京都とは遠隔地にあることから、その販売活動においては、見本品やパンフレット、写真等を使用することが一般的であるが、被請求人はそれらの本件商標の使用を裏付ける客観的証拠を一切提出せずに手書きの証拠2点のみを提出し、その使用を立証しようとするものであるがその主張は極めて不合理である。
(イ)乙第2号証について
乙第2号証は、パソコンで作成した文書をプリントアウトしたものであり、「刻印確認証明書」と題され、「私、Tは平成18年12月9日に・・・SINCAの刻印を確認したことを証明致します。」との記載に、同人の署名・捺印がなされている。しかしながら、同証拠には不自然な点が見受けられる。
まず、証明書の記載どおりの刻印の証明は、現物の写真等を併せて提出すればより客観的になると思われるが、その提出はなされていない。
また、一般的に3年前に購入した時計ブレスの購入日を正確に記憶しているのは不自然であるとともに、仮に百歩譲って、購入日を正確に記憶しているのであれば、その日付を特定する根拠となる代金の振り込みや、商品の受け取りを証する振込明細書や配達証明書等を提出するのが通常であるが、被請求人はそのような客観的証拠の提出をしていない。さらに、上記(ア)でも述べたとおり、「刻印確認日」が本件審判の予告登録日のちょうど3年前というのは極めて不自然である。
(ウ)乙第3号証ないし第12号証について
乙第3号証ないし第12号証は、被請求人が本件商標を商品「時計」に使用していたか否かという事実に何ら関係のない書類であるため、本件商標使用の事実について被請求人は何も立証していない。
(エ)参考資料(納品書控)について
被請求人が参考資料として提出している納品書控は、その下部分に「JEWELRY ITEM」なる記載の下段に四角い模様で囲まれて「SINCA」の記載があるが、これは指定商品「身飾品」についての商標の使用であり本件審判請求に係る指定商品「時計」(以下「本件指定商品」という。)にかかる使用ではないことが伺える。また、同納品書に「平成19年より使用伝票です。」旨の記載があるが、その使用開始時期を客観的に立証する証拠書類についても何ら提出がなされていない。したがって、参考資料についても本件商標の使用の事実を立証できるものではない。
さらに、同納品書に記載のある商標「FREEJ(丸の中にR)・FREEHEART(丸の中にR)・SAFTYSETTING(丸の中にR)」について特許庁電子図書館にて検索を行ったが、被請求人による登録は確認できなかったものであり、被請求人の作成資料の信憑性は極めて疑わしいものである。
(オ)被請求人の商標使用の立証について
被請求人は、平成22年2月9日付で上申書にて、「関連資料等収集に日数を要しました。後2週間の御猶予をいただきたくお願い申し上げます。」旨の上申を行い、答弁書の提出期限の延長を求めたうえで、審判請求書送達日から2か月余りを経過した本年2月20日に本件答弁書及び証拠書類を提出している。
しかしながら、被請求人の提出した証拠は、記載の態様及び内容に照らし、本件審判の予告登録日後においても作成可能である手書きやパソコンソフトにより作成されたものであって、客観性・信憑性を欠くものであり、かつ、本件商標の「時計」への使用を立証する証拠としては極めて乏しいと言わざるを得ない。また、被請求人が、本件商標を本件指定商品「時計」へ使用しているのであれば、その現物を提出することも可能であるはずである。
仮に、被請求人が本件商標を本件審判の予告登録前3年以内に使用しているのであれば、他にも商標の使用を立証する客観的な証明書類を提出することができたはずであるが、被請求人は答弁書の提出を延長し2か月余りもの期間をかけて証拠の収集をしたにも拘わらず、そのような証拠書類の提出がなされなかったことは、本件商標の使用の事実を客観的に立証することができないことの証左であり、当該事実は、被請求人が実は本件商標を本件指定商品に使用していなかったことを端的に表している。
(カ)被請求人ハウスマークの商標登録
被請求人は、平成4年3月31日に同人の社名である「進化」の商標出願手続を行い、同6年4月28日に登録を受けている(登録第2645655号)。
そして、上記登録商標の出願時の指定商品は、第21類「装飾具、その他本類に属する商品」(昭和34年法)であったが、その後、平成16年11月4日に書換登録が行われ、第14類「身飾品、貴金属製のがま口及び財布、宝玉及びその模造品、貴金属製コンパクト」ほかとなった。
このように、上記登録商標の指定商品には本件指定商品「時計」が含まれておらず、被請求人はハウスマークである上記登録商標でさえ、本件指定商品に使用する意思がなかったものであり、当該事実からも、被請求人が本件商標を本件指定商品に使用する予定はなかったと解される。
(キ)インターネットによる検索
請求人は、インターネットにて「進化(株) 時計」、「SINCA 時計」など様々な語から検索を行ってみたが、被請求人が本件指定商品に本件商標を使用している事実は特段見あたらなかった。
(2)まとめ
上述のとおり、被請求人は、本件商標の使用について客観的な立証ができないことから、本件商標は、本件審判の予告登録前3年以内の使用が認められず登録を取り消すべきものである。
3 第2弁駁
(1)「時計ブレスの写真」について
被請求人は、「時計ブレスの写真はない。何故なら、加工が容易な受注製品は、通常写真撮影は行わない。」と主張している。
しかし、そもそも昨年2月19日の答弁書提出以降1年間を経過して、被請求人は1個も本件商標を使用した商品「時計」の現物やその「写真」を提出できていないのであって、それは端的な不使用の事実を示している。
また、「受注商品」であれば、当然、サンプル写真や写真を載せたパンフレットくらいは存在するのが通常であって、被請求人の弁解は極めて不自然・不合理である。
さらに、被請求人は、顧客であるTから1万円で時計ブレスを買ったとの「確認証明書」(乙第13号証)を提出しているが、確認証明書をとれるくらいであれば、現物の写真の提供を求めることはいとも簡単なことであって、それがされていないのは、本件商標を使用した商品が存在しないことを意味している。
そして、Tは、「12月何日かの記憶はありませんが・・・」と商品の購入日をはっきりと覚えていないにも拘わらず、「時計の留め金具の外側にSINCAの刻印が存在した」のみをはっきり記憶しているというものであり、同人の証明書の記述は、極めて不自然である。このように、同証明書は、被請求人が作成した乙第1号証の「納品書」に沿って作成された可能性が極めて高く、客観的な証拠価値は全くない。
(2)「再仕上」の意味について
被請求人は、乙第1号証の納品書の「時計ブレス」の下に記載している「再仕上」の意味について、「リング表面の軽微な傷除去のための再仕上サービス」を意味するとしている。
これらの納品書に関する被請求人の答弁からすれば、被請求人は、指輪やジュエリーを加工する役務を提供しているものであり、そもそも商品「時計」を販売しているわけではないことを自ら認めるものである。
(3)「物品受領書等」について
被請求人は、「乙第1号証の納品書(控)に対応する物品受領書等はない。何故なら個人販売で現金取引の場合は、物品受領書等を受け取ることはない。」旨主張している。
しかし、被請求人は、「デパートと取引をしている。」と説明をしているし、遠隔地の顧客と商品のやりとりをしている訳であるから、1万円もの商品を納入した場合には、物品受領書をとるのが商慣習上当然である。
また、乙第1号証の納品書は、4枚複写式で、受領書付きの納品書であるから、納品書の控えがあるのに、物品受領書がないのは極めて不自然である。
(4)「乙第1号証」について
被請求人は、「乙第1号証の納品伝票の日付が本件審判の予告登録日のちょうど3年前であることは偶然である。納品伝票は、当時使用中であり、今回作成したものではない。」と主張する。
しかし、被請求人が本件商標の「3年以内」の使用の証拠として提出した「唯一」の納品伝票の日付が、本件審判の予告登録日の「ぴったり3年前」というのは極めて不自然であり、同証拠が物理的に後日作成可能な性質のものであることからしても、本件取消審判請求の書類受領後に作成された蓋然性を払拭することはできない。
(5)「乙第2号証」について
被請求人は、乙第2号証の「刻印確認証明書」について、「通常、加工が容易な受注製品は写真撮影を行わない。個人販売は、通常、現金取引であるから振込明細書や配達証明書はない。」と反論している。しかし、この点は、(1)で述べたとおり、証明書を発行している顧客のTから端的に本件商標を使用した商品の写真を徴求することは容易なことであるし、現在に至るまで使用を裏付ける1点の写真も提出できていないことは極めて不自然である。
(6)「乙第3号証ないし乙第12号証」について
被請求人は、「乙第3号証ないし乙第11号証は、使用に係る商品、時計ブレスが時計バンドであることの証明である。乙第12号証は、商標権者の住所が東京都八王子市八日町8-1-2807であることの証明である。」旨主張している。
しかし、乙第3号証ないし同第12号証は、被請求人が本件商標を商品「時計」に使用した事実を裏付けるものでは全くない。
(7)「被請求人の商標使用の立証について」について
被請求人は、「止むを得ず資料等収集に日数を要した。『時計ブレス』は受注製品であるから、現物の在庫はない。」旨主張している。
しかし、全く在庫がなければ、顧客のニーズに対応できないし、実際に販売を行っているのであれば、本件審判での立証のために1個くらいは提出できるのは極めて容易いことである。本件審判での答弁書提出以来、御庁の審尋や請求人の釈明にもかかわらず、被請求人が現物在庫や写真等の使用の事実を立証する証拠をひとつも提出できていないということは端的に「不使用であること」を示している。
(8)「インターネットによる検索」について
被請求人は、インターネット上にて、被請求人が本件商標を指定商品「時計」に使用している事実が確認できないことについて、「慣習上、デパートが納入先を非公開とするためである。」旨述べている。
しかし、「時計」というそのブランド化が極めて重要で不特定多数へ販売することを目指すことが想定される商品分野において「SINCA」ブランドをインターネットその他で宣伝している形跡がないのは極めて不自然である。
また、仮に百歩譲って被請求人でなくとも取り扱うデパート等がインターネット等で商品の宣伝を行うものと思われるが、インターネット上ではそのような形跡も検索できないし、被請求人も一切証拠を提出することができていない。
(9)結語
以上に述べたとおり、被請求人は、本件商標の指定商品への使用について客観的な立証を全くできておらず、本件商標は本件審判の予告登録前3年以内に使用が認められないので、その登録は取り消されるべきものであることが明らかである。

第3 被請求人に対する審尋
1 乙第2号証の事実を確認するために必要であるから、時計ブレスの留め金具の外側にSINCAの刻印をしていたことを証する写真を提出されたい。
なお、上記の写真を提出するのであれば、商品全体の写真及び本件商標「SINCA」が確認できる拡大写真を提出されたい。
2 乙第1号証の納品書(控)中に記されている「再仕上」とは、何を意味するのか説明されたい。
3 乙第1号証の納品書(控)に対応する物品受領書等があれば提出されたい。
4 その他、本件審判の請求の登録(平成21年12月9日)前3年以内に取消に係る指定商品について、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者による本件商標の使用の事実を立証する証拠(例えば、広告等が掲載された新聞、雑誌等の印刷物、カタログやパンフレット、取引の際使用される販売伝票、発注伝票、請求書等の取引書類等であって、いずれも、使用された年日付、本件商標、使用商品及び発行者等が明確に把握できる資料)を提出されたい。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出している。
1 第1答弁
(1)本件商標の使用事実の要点
本件商標の商標権者である「進化株式会社」は、本件審判請求の登録前3年以内に我が国においてその請求に係る指定商品「時計」について、本件商標を使用している。
(2)本件商標の使用の事実
(ア)商標の使用者
乙第1号証の「納品伝票」及び乙第12号証の「郵便はがき」には、「進化株式会社」及び「東京都八王子市八日町8-1-2807」が表示されており、乙第2号証の「刻印確認証明書」には、「進化株式会社」が表示されている。
(イ)使用に係る商品
乙第1号証には請求に係る指定商品「時計」の製品名が記載され、乙第2号証には、乙第1号証に記載された製品名が記載されている。
乙第3号証ないし乙第11号証の「インターネットホームページの印刷物」には、請求に係る指定商品「時計」の製品名が記載されている。
(ウ)使用に係る商標
乙第1号証及び乙第2号証には、本件商標が記載されている。
(エ)使用時期
乙第1号証には、「発行日18年12月9日」と記載され、乙第2号証には購入日として「平成18年12月9日」と記載されている。
2 第2答弁
(1)審尋に対する答弁
(ア)時計ブレスの写真
時計ブレスの写真はない。何故なら、加工が容易な受注製品は、通常写真撮影は行わない。
(イ)「再仕上」の意味
乙第1号証の納品書(控)中に記されている「再仕上」とは、納品書(控)1行目、2行目に記されている「品名 Pt950 リングフリーイニシャル/数量 1/金額 0円」について、金額が0円である理由はリング表面の軽微な傷除去のための再仕上サービスであることの覚書である。
(ウ)物品受領書等
乙第1号証の納品書(控)に対応する物品受領書等はない。何故なら個人販売で現金取引の場合は、物品受領書等を受け取ることはない。
乙第13号証「確認証明書」には、「進化株式会社にて時計ブレスを受け取り1万円を支払いました。」が表示されている。
(エ)その他の証拠
その他の証拠は調査中であるが、現在発見できていない。
(2)第1弁駁に対する答弁
(ア)乙第1号証について
乙第1号証「納品伝票」記載の日付、平成18年12月9日が本件審判の予告登録日である平成21年12月9日のちょうど3年前であることは偶然である。「納品伝票」は当時使用中であり、今回作成したものではない。企業秘密保持のため審判官同席のもと、請求人に「納品伝票」原本の確認を要望する。
乙第14号証「納品伝票表紙写真」には、「個人様」の文字が表示されている。
乙第15号証「納品書(控)写真」には、「時計ブレス」の文字が表示されている。
また、乙第1号証に記載の「時計ブレス」の価格1万円は、被請求人にとっては相当な低価格であり、加工が容易な受注製品であるから、パンフレットや写真等を使用しないことが一般的である。
乙第13号証「確認証明書」にはTの当時の住所「東京都大田区北馬込1-8-11-A101」が表示されている。
(イ)乙第2号証について
通常、加工が容易な受注製品は写真撮影を行わない。
個人販売は通常、現金取引であるから振込明細書や配達証明書等はない。
乙第13号証「確認証明書」には「平成18年12月に八王子市、進化株式会社にて時計ブレスを受け取り・・・納品書の日付が12月9日であれば間違いないと思います。」と表示されている。
また、乙第13号証「確認証明書」には、「時計ブレスの留め金具の外側にSINCAの刻印を確認しました。」と表示されている。さらに、「刻印確認日」は、乙第1号証「納品伝票」記載の日付であるから、原本の確認を審判官同席のもとで請求人に要望する。
(ウ)乙第3号証ないし乙第12号証について
乙第3号証ないし乙第11号証は、使用に係る商品、時計ブレスが時計バンドであることの証明である。
乙第12号証は、商標権者の住所が東京都八王子市八日町8-1-2807であることの証明である。
(エ)参考資料について
あくまで参考資料であり本件審判とは関係ない。
(オ)被請求人の商標使用の立証について
止むを得ず資料等収集に日数を要した。
「時計ブレス」は受注製品であるから、現物の在庫はない。
「納品伝票」は当時使用中のものであり、今回作成したものではない。企業秘密保持のため審判官同席のもとで請求人に「納品伝票」原本の確認を要望する。
(カ)被請求人ハウスマークの商標登録
登録商標「進化」は、今回の本件審判とは関係ない。
(キ)インターネットによる検索
慣習上、デパートが納入先を非公開とするためである。
(ク)むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により指定商品「時計」について使用していることが明らかである。

第5 口頭審理について
被請求人は、「納品伝票」等の原本確認を要望している。そこで、平成23年2月14日付(発送日:同年2月16日)で、請求人、被請求人の双方に対して、口頭審理(日付:同年4月25日、場所:特許庁審判廷)を行う旨通知したところ、同年2月16日に請求人より期日請書を受領し、同年2月18日に被請求人より期日請書を受領したが、その後、同年4月8日付けの請求人からの上申書及び同年4月12日付けの被請求人からの上申書において、双方から口頭審理を中止したい旨の申し出があったため、同年4月19日付(発送日:同年4月20日)で、口頭審理期日の中止に関する通知書を請求人、被請求人の双方へ送付し、以後、本件審理を書面審理としたものである。

第6 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠について
被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品「時計」について使用している旨主張し、証拠を提出しているので、該証拠について検討する。
(1)乙第1号証は、「納品書(控)」と題する書面の写しであり、乙第14号証は、「納品書(控)」と題する書面の表紙の写真であって、乙第15号証は、「納品書(控)」と題する書面の写真である。
乙第1号証及び乙第15号証の右上方に商標権者の社名、住所、電話番号等が押印され、手書きにより、日付欄に「18年12月9日」と記載され、宛先欄に「T様」と記載されているほか、「品名」、「数量」、「金額(税抜・税込)」、「摘要」欄の1行目に「Pt950 リングフリーイニシャル」、「1」、「0」、「進化/SINCA」、2行目に「〃 〃」、「1」、「0」、「〃」、3行目に「Sil 時計ブレス」、「1」、「10000」、「〃」とそれぞれ記載され、「品名」欄の4行目に「再仕上」と記載されている。
そして、被請求人は、乙第1号証及び乙第15号証の「納品書(控)」中に記載されている「再仕上」とは、品名欄に記載されている「Pt950 リングフリーイニシャル」に関するリング表面の軽微な傷除去のための再仕上サービスと主張している。
しかしながら、被請求人は、平成22年6月7日付け審尋に対し、「時計ブレス」の留め金具の外側にSINCAの刻印をしていたことを証する写真を提出しないばかりか、他にカタログ、パンフレット、乙第1号証の納品書(控)に対応する物品受領書、他の取引書類等の本件商標の使用を示す客観的証拠を何ら提出していない。
そうすると、商標権者が、商品としての「時計ブレス」をTへ納品したとする乙第1号証及び乙第15号証の信憑性は、乏しいものといわざるを得ない。
(2)乙第2号証は、「刻印確認証明書」と題する書面であり、「私、Tは平成18年12月9日進化株式会社より購入した時計ブレス(価格10000円)の留め金具の外側にSINCAの刻印を確認したことを証明致します。」と印字した下方に、「平成22年2月16日」の日付、Tの住所、氏名及び携帯電話番号が手書きされ、押印されていることが認められる。
乙第13号証は、「確認証明書」と題する書面であり、「私、Tは下記の通り確認したことを証明致します。」「1.平成18年12月に八王子市、進化株式会社にて時計ブレスを受け取り1万円を支払いました。12月何日かの記憶はありませんが、納品書の日付が12月9日であれば間違いないと思います。」「2.時計ブレスの留め金具の外側にSINCAの刻印を確認しました。」「3.平成18年12月9日当時は、東京都大田区北馬込1-8-11-A101に居住していました。」「以上の通り相違ありません。」「必要があれば証言致します。」と手書きした下方に、「平成22年7月12日」の日付、Tの郵便番号、住所、氏名及び携帯電話番号が手書きされ、押印されていることが認められる。
しかしながら、乙第2号証及び乙第13号証は、時計ブレスに「SINCA」の刻印があることを証明するというものであるが、該刻印を具体的に示す写真等はなく、Tが実際に該時計ブレスを購入したことを客観的に示す、例えば、請求書、送付書、領収書といった書類の提出もない。しかも、これらの書類なしに、証明書より3年以上も前の購入日(平成18年12月9日)を正確に覚えているとは、一般的には考え難い。
そうすると、Tが商標権者から商品としての「時計ブレス」を購入したとする乙第2号証及び乙第13号証の信憑性は、乏しいものといわざるを得ない。
(3)乙第3号証ないし乙第11号証は、商標権者とは無関係の他人のウェブサイトの写しと認められるところ、その内容は、「自動巻時計ブレス」、「K18時計ブレス」、「時計ブレスレット」、「時計ブレス」、「腕時計ブレスレット」、「ブレスレット時計」、「ウォッチケース・ウォッチブレス」、「電波時計 ブレス」等と称する商品を紹介するものであり、本件商標はもとより、商標権者の表示も一切見当たらない。
被請求人は、使用に係る商品「時計ブレス」が時計バンドであることの証明であるとしているものの、該「時計ブレス」に表示された商標は、本件商標とは全く異なる他人のものであるから、本件商標の使用を証明したものとは認められない。
(4)乙第12号証は、商標権者に宛てられた年賀はがき4枚の表面を複写したものであり、仮に、これが商標権者の代表者の住所が東京都八王子市八日町8-1-2807であることを示しているとしても、本件商標はもとより、請求に係る商品の表示も一切見当たらないものであるから、この証拠によって、本件商標の使用を証明したものとは認められない。
(5)他に、被請求人は、参考として平成21年12月18日付の「納品書控」と題する書面を提出しているが、該書面は本件審判の請求の登録(平成21年12月9日)後のものであるばかりでなく、品名として記載された「18WGセーフティセッティング/ペンダント1.01ct」の文字及び摘要欄の写真に徴すれば、該書面の取引対象商品は、身飾品のはんちゅうに属する商品であって、時計とはいえないものであるから、これをもって、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に請求に係る商品について使用されているとは認められない。
(6)その他、本件商標が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る商品について使用されていることを認めるに足る証拠の提出はない。
2 まとめ
以上のとおり、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
また、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があるものとも認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、請求に係る指定商品である第14類「時計」についての登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2011-06-28 
結審通知日 2011-06-30 
審決日 2011-07-29 
出願番号 商願2002-48588(T2002-48588) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y14)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 千里 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 前山 るり子
渡邉 健司
登録日 2003-07-18 
登録番号 商標登録第4692531号(T4692531) 
商標の称呼 シンカ 
代理人 杭田 恭二 

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