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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X070911
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない X070911
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X070911
管理番号 1243197 
審判番号 不服2010-9383 
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-30 
確定日 2011-08-18 
事件の表示 商願2009- 19115拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用乾燥機能付き電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー」、第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,太陽電池,太陽電池モジュール,太陽光発電装置,充電池,蓄電池,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,太陽電池からの電力を利用する携帯電話機,電子応用機械器具及びその部品」及び第11類「家庭用電熱用品類,電球類及び照明用器具」を指定商品として、平成21年3月17日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『太陽エネルギーを利用した』等の意味を有する『Solar』の文字と『混成物、異質の要素の結合から成る』等の意の『Hybrid』の文字とを一連に『Solar Hybrid』と書してなるものであるところ、近年のエコブームに伴い、太陽エネルギーを利用した商品が各種業界において、研究・開発・販売されていることに鑑みれば、その指定商品との関係においては、『太陽電池とその他の電源により充電可能な商品』程の意味合いを容易に認識させるものである。また、インターネット情報において、太陽電池とその他の電源により充電可能な商品が多数販売されている実情があることが確認される。してみれば、本願商標に接する取引者、需要者は、上記意味合いを理解するにとどまり、これを本願指定商品中、上記に照応する商品、例えば『交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,配電用又は制御用の機械器具,充電池,蓄電池,太陽電池からの電力を利用する携帯電話機・電気通信機械器具・電子応用機械器具』等に使用するときは、単に商品の品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審において通知した審尋(要旨)
1 本願商標に係る拒絶の理由について
本願商標は、「Solar Hybrid」の文字を書してなるところ、その構成中「Solar」の文字は、「太陽の。太陽光熱を利用した。」の意味を有するものであって、例えば、「ソーラーカー【solar car】」や「ソーラーハウス【solar house】」のように、他の語の上に付いて熟語を形成し易いものであり、同じく「Hybrid」の文字は、「異種のものを組みあわせたもの。」の意味を有するものである(後記2の(1)ないし(2)参照)。
ところで、職権調査によれば、
(a)「Solar Hybrid」の表音である「ソーラーハイブリッド」の文字は、「太陽エネルギーとその他のエネルギーとを組み合わせてなるもの」を意味する語として使用されていること(後記2の(3)参照)
(b)太陽光とその他の発電方法とを組み合わせて利用する「ハイブリッド」型の発電施設が存在し、また、指定商品を含む様々な商品について、太陽光とその他の発電方法による「ハイブリッド」型の電源を有するものが存在していること(後記2の(4)参照)
が認められる。
そうとすると、「Solar Hybrid」の文字は、指定商品との関係において、「太陽光発電とその他の発電とを組み合わせてなる『ハイブリッド』型の電源を利用するもの」を認識させ、商品の品質を表示するにすぎないものであるから、本願商標をその指定商品中前記文字に照応する商品に使用しても、自他識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 当審における職権調査
(1)「Solar」の文字について
ア 「グランドセンチュリー英和辞典」(三省堂 第2版 2008年)において、「solar」の項に、「太陽の」「太陽から生じる」との記載がある。
イ 「広辞苑 第六版」において、「ソーラー【solar】」の項に、「『太陽の』『太陽光熱を利用した』の意。」との記載がある。
ウ 「大辞林」(三省堂 第3版 2006年)において、「ソーラー【solar】」の項に、「太陽の光や熱を利用していること。他の語の上に付けて用いられる。」との記載がある。
(2)「Hybrid」の文字について
ア 「グランドセンチュリー英和辞典」において、「hybrid」の項に、「(動植物の)雑種」「混成の」との記載がある。
イ 「広辞苑」において、「ハイブリッド【hybrid】」の項に、「異種のものを組みあわせたもの。」との記載がある。
ウ 「大辞林」において、「ハイブリッド【hybrid】」の項に「異なったものが組み合わされていること。」との記載がある。
エ 「ウィキペディア(Wikipedia)」のウェブサイトにおいて、「ハイブリッド」の見出しの下、「2つ(またはそれ以上)の異質のものを組み合わせ一つの目的を成すもの」とある。
さらに、このうち「ハイブリッドと呼ばれるもの」中の、「環境、エネルギー、科学、工学一般」の項に、「機械産業の分野では、2つの個別の技術に基づく物を併用、組み合わせて構成し新たな機能を持った製品、もしくは混成部品や混成機構からなるものを多くハイブリッドと呼ぶ。」及び「ハイブリッドシステム(エネルギー)-エネルギー分野ではハイブリッドシステム論が有り2種類以上のエネルギー発生技術・製品を組み合わせて用いることで、相補的・効率的なエネルギー運用を目指す技術の総称である。」との記載がある(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%89#.E3.83.8F.E3.82.A4.E3.83.96.E3.83.AA.E3.83.83.E3.83.89.E3.81.A8.E5.91.BC.E3.81.B0.E3.82.8C.E3.82.8B.E3.82.82.E3.81.AE)。
(3)「Solar Hybrid」及び「ソーラーハイブリッド」の文字について
ア 指定商品の分野における使用例
(ア)「株式会社バリュープレス」のウェブサイトにおいて、「株式会社ストラップヤネクスト/★世界初のiPhone4専用★ソーラーハイブリッド充電ケース for iPhone 4を発表!」の見出しの下、「『ソーラーハイブリッド充電ケース for iPhone 4 solar charge jacket 4』は、世界初のiPhone4専用ソーラーパネル搭載バッテリー型ジャケットカバーです。前面にソーラーパネル、本体内部にリチウムポリマー電池を内臓し、前面のソーラーパネル及び、USB電源からとハイブリッド充電が可能となっています。」との記載がある(http://www.value-press.com/pressrelease.php?article_id=64267)。
(イ)「株式会社 キャットアイ」が製造販売する、「直射日光をソーラーパネル部で受けて充電される内蔵型ニッケル水素充電池及び単3形乾電池」を電源とする自転車用ヘッドライト「HL-EL020」について、「MGM BIKE SHOP」のウェブサイトにおいては、「CAT EYE [ソーラーハイブリッド ライト]」との記載で紹介されている(http://www.emgem.jp/index.php?main_page=product_info&products_id=6783)。
(ウ)「おちゃのこネット株式会社」のウェブサイトにおいて、「LED ソーラーハイブリッド懐中電灯」の見出しの下、「6.ハイブリッド使用できます。1.スイッチを1回押すと--ソーラーパワーで点灯---黄色パイロットランプ点灯 2.スイッチを2回押すと--バッテリーで点灯」との記載がある(http://www.garitto.com/product/index/11716946#review)。
(エ)「株式会社桐生」のウェブサイトにおいて、「風力・ソーラーハイブリッド独立電源システム」の見出しの下、「風力発電機エアドルフィンと、薄膜系太陽電池を併用するハイブリッド発電システム。」との記載がある(http://item.rakuten.co.jp/kiryu-ginza/1448904/)。
イ 指定商品の分野とは異なるが、当該文字が使用されている例
(ア)2000年3月23日付けの日刊工業新聞には、「東工大、ソーラーハイブリッド燃料技術の実用化にめど」の見出しの下、「石炭や天然ガスなどの化石燃料に太陽集光熱を取り込むソーラーハイブリッド燃料技術」との記載がある。
(イ)1992年3月18日付けの朝日新聞(東京夕刊)には、「夜走るソーラーカー 三洋電機」の見出しの下、「三洋電機は、太陽電池とリン酸型燃料電池を組み合わせることで、夜間でも走行できるソーラーハイブリッドカー『MIRAI-1(みらい1号)』を開発」との記載がある。
(ウ)「有限会社グリーン・ポスト」のウェブサイトにおいて、「豪華なIsland Pilot社製のソーラーハイブリッドボート」の見出しの下、「太陽電池とエンジンのハイブリッド船というのは本格的なものは、今回のIsland Pilot社製のものが初だと思います。少なくともアメリカでは、ソーラー&ディーゼルエンジンのハイブリッドボートということです。」との記載がある(http://greenpost.way-nifty.com/sinaken/2008/11/island-pilot-ba.html)。
(エ)「株式会社 環境システムデザイン研究所」提供の「建築設備フォーラム」のウェブサイトにおいて、「新製品ニュース 2005.02.07 <デンソー 東京電力> ソーラーハイブリッドなど3種類の新型エコキュートを開発。」の見出しの下、「ソーラーハイブリッド方式は、日中にソーラーシステムや太陽熱温水器で沸かしたお湯を優先的に利用しながら、不足するお湯をエコキュートにより給湯するもので、すでに太陽熱温水器を設置している家庭にもエコキュートを追加することができる。」との記載がある(http://www.setsubi-forum.jp/snew/0502/050207_1.html)。
(オ)「国際基督教大学・理学館(教養学部自然科学科)」のウェブサイトにおいて、「Special Lecture of SIS 2002 特別講義 ソーラーハイブリッド燃料とサンベルトの開発」の見出しの下、「ソーラーハイブリッド燃料生産技術は『太陽エネルギー』(日照)を化石燃料(石炭、天然ガス)とハイブリッド化して日照太陽エネルギーを利用するものである。」との記載がある(http://subsite.icu.ac.jp/ns/sis/2002/tamaura.html)。
(カ)「株式会社パロマ」のウェブサイトにおいて、「2010年のニュース 2010年07月 ソーラーハイブリットガス給湯器 『ソラエコ』新発売」の見出しの下、「株式会社パロマ(愛知県名古屋市 代表取締役社長:小林弘明)はソーラーハイブリットガス給湯器『Sola・ECO』(ソラエコ)を発売します。集熱パネルにて太陽エネルギーを熱に変換し、熱媒を暖めます。暖められた熱媒で家庭内で使用するお湯を作り、足りない熱量をガス給湯器エコジョーズで゛補います。」との記載がある(http://www.paloma.co.jp/news/news119.php)。
(4)太陽光発電とその他の電力からなる「ハイブリッド」型の電源・発電施設について
ア 指定商品の分野における例
(ア)「日経エレクトロニクス 1月24日号」(日経BP社 2011年)において、「太陽電池と熱電素子を一体化 富士通研究所が開発」の見出しの下、「光エネルギーと熱(温度差)エネルギーのどちらかを選んで電力に変換できる,いわゆる『ハイブリッド発電素子』を開発した。」及び「複数の素子を組み合わせるハイブリッド発電素子の開発は各地で盛んになっている」との記載がある。
(イ)2008年5月3日付けの読売新聞(東京朝刊)には、「洞爺湖サミット 太陽光と風力活用、道庁前に発電施設=北海道」の見出しの下、「札幌市中央区の道庁北門前に太陽光と風力発電を行う『ハイブリッド型発電施設』が設置され、本格的に稼働を始めた。」との記載がある。
(ウ)2004年9月21日付けの毎日新聞(地方版/愛知)には、「[てくてくテクノ]発電式街灯/1 アテネでも活躍 /愛知」中の、「◇ハイブリッドタワー、太陽光と風力で」の見出しの下、「これは立派な街路灯。今年3月に設置されたハイブリッドタワー『風かもめ』だ。(中略)自然エネルギーの太陽光と風力で発電後に蓄電し、夜に明かりをともす電力自給型。」との記載があり、また、「◇自然エネルギー」の見出しの下、「太陽光や風力の発電を活用した街路灯が最近目立つ。(中略)大別すると、太陽光と風力を別々に使うタイプと、両方を一緒に用いたハイブリッドの二つ。」との記載がある。
(エ)2003年1月10日付けの電気新聞には、「ゼファーが小型風力発売 微風域でも発電」の見出しの下、「既に、岩崎電気が太陽光発電と組み合わせ、ハイブリッド街路灯への採用を決定。」との記載がある。
(オ)「アマゾン ジャパン株式会社」のウェブサイトにおいて、「PLANEX USB接続ハイブリッドソーラーモバイル充電器」の見出しの下、「■USB機器を太陽光でエコ充電、USBソーラーチャージャー」及び「■充電時間:USB接続:約2.0時間、太陽光:約18時間」との記載がある(http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d.html/378-6025390-4692727?ie=UTF8&dl=1&uid=NULLGWDOCOMO&a=B00422MLCW)。
(カ)「ループウイング株式会社」のウェブサイトにおいて、「街路灯ユニット TRONC トロン」の見出しの下、「ハイブリッド発電で独立型街路灯を実現」、「監視カメラや、災害時の非常用電源にも利用できます。」及び「トロンは直径1.5mのループウイング型風車、θ1500と太陽光パネルのハイブリッド発電方式。」との記載がある(http://www.loopwing.co.jp/jp/01wind/02tronc.html)。
(キ)「株式会社 WINPRO」のウェブサイトにおいて、「WINPRO風力発電&太陽光発電 ハイブリッド街路灯の特徴」の見出しの下、「風力発電&太陽光発電モジュール ハイブリッド発電機」、「風力発電と太陽光発電によるクリーンエネルギーのハイブリッド発電システムです。」及び「独立電源システムのため、停電時や災害時等の非常時の電源として、また携帯電話の充電や、通信機器の電源などにも使用可能です。」との記載がある(http://www.winpro.co.jp/products/hybrid_g_tokutyo.html)。
イ 指定商品の分野とは異なるが、当該電源・発電施設についての例
(ア)2004年7月31日付けの読売新聞(東京朝刊)には、「“無人農業”実用化にめど 携帯で散水機操作など 県砂丘地農業試験場=石川」の見出しの下、「風力と太陽光二つの発電機を組み合わせたハイブリッド発電装置(発電量四百ワット時)を電源に、畑に埋め込まれたセンサーが土壌内の温度と水分を検知、データを一時間ごとに携帯電話にメールで送信する。」との記載がある。
(イ)「コモライフ株式会社」提供の「【通販奉行】」のウェブサイトにおいて、「【送料無料】マザーツール MT-4060 カード型ソーラーマルチメータ【smtb-k】【w2】【10P13jul10】」の見出しの下、「一次電池・二次電池・太陽電池併用のハイブリッド電源。」との記載がある(http://item.rakuten.co.jp/manpura/9212i/)。
(ウ)「株式会社東亜計器製作所」のウェブサイトにおいて、「冷凍・冷蔵庫用温度計SN-1100 新ソーラーデジタル温度」の見出しの下、「一次電池とソーラー電池を自動的に切り替えるハイブリッド電源採用」との記載がある(http://www.toakeiki.jp/cl04/43-index.html)。
(エ)「カシオ計算機株式会社」のウェブサイトにおいて、「DQS-300J-2JF 置き時計」の見出しの下、「『日本標準時』をのせた標準電波を受信して時刻を自動修正する電波時計に、ソーラーエナジー機能を搭載したデスクトップクロックです。太陽電池とリチウム電池を組み合わせたハイブリッド電源により電池寿命約5年の長寿命化を実現しました。」との記載がある(http://casio.jp/wat/search/clock/detail/?m=DQS-300J-2JF&n=4177)。
(オ)「日置電機株式会社」のウェブサイトにおいて、「ソーラハイテスタ 3245」の見出しの下、「一次電池&太陽電池併用のソーラ充電式 DMM」及び「一次電池(CR2032)と二次電池・太陽電池併用のハイブリッド電源」との記載がある(http://hioki.jp/3245/)。

第4 審尋に対する請求人の回答の要点
審尋では、辞書上の意味及び取引実情における使用例が挙げられた上で、本願商標からは「太陽光発電とその他の発電とを組み合わせてなる『ハイブリッド』型の電源を利用するもの」を認識し得ると判断されているが、職権調査の結果を検討したところ、本願商標が英和辞書などに掲載されているとの指摘はなく、かつ、本願商標自体の使用例が指摘されているわけではない。かかる調査結果からは、指定商品の分野における取引者、需要者は、本願商標を特定の意味合いを有さない独創性のある新語(造語)ととらえ、上記意味合いは認識しないと考えるのが相当である。
仮に、本願商標から何らかの意味合いが生じ得るとしても、せいぜい「太陽電池とその他の電源により充電可能な商品」程度にすぎず、単なる暗示にとどまり、「太陽光発電とのその他の発電とを組み合わせてなる『ハイブリッド』型の電源を利用するもの」との意味合いが、直接的かつ具体的に認識されるとは言えない。
また、本願商標を付した請求人の携帯電話機は、第1号証ないし第19号証に示すとおり、我が国において広く販売、認知されており、本願商標が請求人の取扱いに係る携帯電話機を表す商標として、自他商品識別力を獲得していることは明白である(商標法第3条第2項)。
したがって、本願商標は自他商品識別力を十分に有しており、登録されるべき商標である。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の該当性について
本願商標は、別掲のとおり、「Solar Hybrid」の文字からなるところ、その構成中の「Solar」の文字は、「太陽の。太陽光熱を利用した。」等を意味する英語として一般に知られており、また、例えば、「ソーラーカー【solar car】」のように、他の語と結合することにより、それが太陽光熱を利用したものであることを表示する熟語を形成するものとしても広く用いられているものである。
同じく、「Hybrid」の文字は、「異種のものを組みあわせたもの。」等を意味する英語として一般に知られているものである。
そして、これらの文字を結合してなる「Solar Hybrid」について、その表音と容易に理解される「ソーラーハイブリッド」の文字は、「太陽エネルギーとその他のエネルギーとを組み合わせてなるもの」であることを表示する語として、電気エネルギー関連の分野においても普通に用いられており、例えば、太陽光発電と家庭内電源とを組み合わせてなる携帯電話機用充電器等、本願に係る指定商品を含む様々な商品に関して、その商品が太陽光とその他のエネルギー源の組合せからなる電源を利用するものであることを表示するものとして用いられる場合が少なくないというのが実情である。
してみれば、「Solar Hybrid」の文字からなる本願商標を、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その構成全体から容易に「太陽光発電とその他の発電方法とを組み合わせてなる(ハイブリッド型の)電源を利用するもの」程の意味合いを看取、把握し、商品の品質を表示してなるものと認識するにとどまるというのが相当であるから、本願商標をその指定商品中、前記意味合いに照応する商品に使用しても、自他識別標識としての機能を果たし得ないというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
2 商標法第3条第2項の該当性について
請求人は、自己の取扱いに係る携帯電話機に本願商標を使用した結果、本願商標は、自他商品識別力を獲得するに至っており、商標法第3条第2項の要件を具備する旨主張し、その証拠として、第1号証ないし第19号証を提出している。
そこで、本願商標が、その指定商品との関係において、自他商品識別力を獲得するに至っているか否かについて、以下、検討する。
(1)本願商標と使用に係る商標との同一性について
請求人が、本願商標が付された商品に関する証拠として提出した、第1号証ないし第5号証、第11号証、第17号証及び第18号証は、請求人自身又は請求人の製品を取り扱う通信事業者による携帯電話機の宣伝広告に係る内容からなるものであるところ、これらにおいては、全て大文字で、かつ、本願商標と異なる書体からなる「SOLAR HYBRID」の文字が用いられており、さらに、該文字中の「O」の文字を青色で彩色する場合が少なからずある。
また、第6号証ないし第10号証及び第12号証ないし第16号証は、インターネット上の携帯電話機の新機種紹介記事であるところ、その文章等においては、全て大文字からなる「SOLAR HYBRID」の文字が用いられている。
(2)使用に係る商品について
本願に係る指定商品は、上記第1のとおり多岐にわたるものであるところ、各号証においては、該指定商品中の「携帯電話機」に関するもののみが示されており、その他の指定商品に関するものは、何ら示されていない。
また、該「携帯電話機」についても、「ソフトバンクモバイル株式会社」の取扱いに係る「842SH」及び「936SH」と称する機種並びに「株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ」の取扱いに係る「SH-08A」と称する機種の3機種に関するものに限られている。
(3)使用の期間・地域及び販売数について
使用に係る商品は、上記(2)のとおり、「842SH」、「936SH」及び「SH-08A」と称する3機種の携帯電話機であって、「842SH」は2010年(平成22年)7月30日に(第6号証)、「936SH」は2009年(平成21年)8月に(第8号証)、「SH-08A」は2009年(平成21年)9月11日に(第13号証)、それぞれ発売されたところ、各機種の販売数は、順に「41,000台」(平成22年7月ないし9月)、「70,000台」(平成21年8月ないし翌22年4月)、「77,076台」(平成21年9月ないし翌22年3月)とされている(第19号証)。
なお、この点に関し、職権を持って調査したところ、「株式会社MM総研」のウェブサイトの「国内携帯電話およびスマートフォンの市場規模予測」の項目(http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120100831500)中に、「2009年度の販売台数は前年比5.4%減の3,582万台となった。」の記載があり、また、「株式会社シード・プランニング」のウェブサイトの「携帯電話流通の現状と将来動向がまとまりました。」の項目(http://www.seedplanning.co.jp/press/2010/2010061801.html)中に、「携帯電話販売台数が2009年度3,857万台、対前年比4.7%減少する中で、携帯電話上位・有力代理店30社は、2009年度2,219万台を販売、全国シェア57.5%になっている。」の記載がある。
(4)まとめ
上記(1)ないし(3)によれば、本願商標と使用に係る商標とでは、大文字と小文字の違いや書体等において、少なからず差異が認められ、また、使用に係る商品も、指定商品中の「携帯電話機」のみであって、かつ、3機種に限られており、さらに、該3機種の販売数は、同時期における全販売数に比して、極めて僅少なものにとどまるものである。
その他、請求人の提出に係る全ての証拠の内容を総合してみても、本願商標が、使用の結果、請求人の業務に係る商品を表示する商標として需要者間に広く認識されるに至っていると認めるに足るものは、発見できない。
したがって、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるとする請求人の主張は、採用することができない。
3 請求人によるその他の主張について
請求人は、職権調査の結果において、本願商標が英和辞書などに掲載されているとの指摘や、本願商標自体の使用例が指摘されているわけではないから、指定商品の分野における取引者、需要者は、本願商標を特定の意味合いを有さない独創性のある新語(造語)ととらえるものであり、仮に、本願商標から何らかの意味合いが生じ得るとしても、単なる暗示にとどまり、「太陽光発電とのその他の発電とを組み合わせてなる『ハイブリッド』型の電源を利用するもの」との意味合いが、直接的かつ具体的に認識されるとは言えないものであるから、本願商標は自他商品識別力を十分に有している旨主張する。
しかし、「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(平成12年(行ケ)第76号 東京高裁平成12年9月4日 判決言渡)から、たとえ、「Solar Hybrid」の文字が、その指定商品を取り扱う業界において、商品の品質を表示するものとして実際に使用されている事実が存在しなくとも、本願商標が商品の品質を表示するものであると認定判断することの妨げにはならない。
そして、本願商標が、その指定商品の取引者、需要者の間で、当該商品の品質を表示するものとして認識されることは、上記1のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとした原査定は、妥当なものであって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標


審理終結日 2011-06-17 
結審通知日 2011-06-21 
審決日 2011-07-06 
出願番号 商願2009-19115(T2009-19115) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (X070911)
T 1 8・ 13- Z (X070911)
T 1 8・ 17- Z (X070911)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 大塚 順子
田中 敬規
商標の称呼 ソーラーハイブリッド、ソーラー 
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所 

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