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審決分類 再審 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z03
管理番号 1243126 
審判番号 再審2008-950005 
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-12-01 
確定日 2009-11-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第4493392号商標の登録取消審判事件(取消2007-300723)について、平成20年10月3日に確定した審決に対し、再審の請求があったので、次のとおり審決する。 
結論 (1)本件審判の請求は、成り立たない。(2)審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件再審の請求に至る経緯
本件は、商標登録第4493392号に係る取消審判事件(取消2007-300723号(以下「原審判」という。))に対する再審請求事件である。
再審請求に係る審決(以下「原審決」という。)は、平成19年6月4日に商標法第50条第1項の規定による商標登録の取消審判の請求(以下「不使用取消審判請求」という。)がされ、平成19年6月18日にその登録がなされ、審理された結果、同20年5月27日に「本件商標の登録は取り消す。」との審決(原審決)がなされ、同年10月3日に確定したものである。
そして、本件再審の請求は、確定した原審決に対して、再審請求人(以下「請求人」という。)により、平成20年12月1日にされたものであり、被請求人を原審判の請求人「橋本文枝」(以下「被請求人橋本」という。)及び原審判の被請求人「ジェスパーリミテッド」(以下「ジェスパー社」という。)とするものである。
なお、再審請求に係る登録第4493392号商標(以下「本件商標」といい、その商標権を「本件商標権」という。)は、「Palgantong」の欧文字を書してなり、第3類「せっけん類,香料類,クレンジングクリーム,その他の化粧品,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用漂白剤,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として、平成12年8月28日に登録出願、同13年7月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件確定審決を取り消す、本件商標権を回復するとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
1 本件商標の経緯
(1)本件商標権は、平成13年7月19日に「ドド コーポレイション」によって登録され、その後、同15年2月19日に「マグザス(エイチケイ)リミテッド」(以下「マグザス社」という。)に移転された(甲第2号証)。
(2)平成16年(2004年)12月14日の連帯保証契約によってマグザス社に対して5億韓国ウォンの債権を有している請求人は、同18年8月22日、東京地方裁判所に対し、本件商標権の仮差押命令申立てを行い(甲第3号証)、同年9月12日に仮差押決定を受け(甲第4号証)、同仮差押は、同年9月27日に商標登録原簿に登録された(甲第2号証)。
よって、請求人は、本件商標権につき、極めて大きな権利又は利益を有していた。
(3)平成19年8月22日、本件商標権は、マグザス社から、ジェスパー社に移転された(甲第2号証)。
(4)被請求人橋本により、平成19年6月4日、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていないことを理由に、商標法第50条の規定により、本件商標について不使用取消審判請求がされた(甲第5号証)。
(5)原審判において、被請求人ジェスパー社が何ら答弁を行わなかったため、平成20年5月27日、本件商標の商標登録を取り消すとの原審決がなされ、原審決は、同年10月3日に確定した(甲第5号証)。
2 原審決が詐害審決であることについて
(1)はじめに
以下に主張する事実からすれば、原審決は、原審判の請求人であった被請求人橋本と原審判の被請求人であったジェスパー社が共謀して、本件商標権の仮差押債権者である請求人の権利又は利益を害する目的をもって審決させたものであること(以下「詐害審決」という。)は明らかである。
(2)ジェスパー社が、原審判において何ら答弁を行っていないことについて
上記のとおり、原審判においては、被請求人橋本の本件商標についての不使用取消審判請求に対し、ジェスパー社が何ら答弁を行わなかったため、平成20年5月27日に本件商標の商標登録を取り消すとの原審決がなされている(甲第5号証)。
この点、ジェスパー社は、平成19年8月22日に、マグザス社から本件商標の移転を受け、その結果、同日以降、本件商標の商標権者として登録されていたのであるから、その後に他者から本件商標について不使用取消審判請求がなされたのなら、本件商標権を守るべく、答弁をして然るべきである。
しかし、ジェスパー社は、原審判において何ら答弁を行っていない。
よって、被請求人橋本とジェスパー社が共謀して、本件商標権の仮差押債権者である請求人の権利又は利益を害する目的をもって原審決をさせたことは明らかである。
(3)被請求人橋本の代理人が、ジェスパー社の代理人であることについて
ア 被請求人橋本の原審判における代理人は、特許業務法人ウィンテック(以下「ウィンテック」という。)である(甲第5号証、甲第6号証)。
イ ジェスパー社は、本件商標の他に、日本国内において、本件商標と同じ第3類について、下記(ア)ないし(エ)の商標(以下「本件関連商標」という。)の登録を受けている。
そして、本件関連商標のうち、下記(ア)ないし(ウ)については、本件商標「Palgantong」と同じく、「Palgantong」又は「PALGANTONG」の文字が使用されている。

(ア)商標登録第4989970号(甲第7号証)
登録日 2006年(平成18年)9月22日
指定商品
第3類「化粧品,歯磨き,せっけん類,香料類,つけづめ,つけまつ
毛」
代理人 特許業務法人ウィンテック
(イ)商標登録第5003730号(甲第8号証)
登録日 2006年(平成18年)11月17日
指定商品 第3類「メーキャップ用化粧品」
代理人 特許業務法人ウィンテック
(ウ)商標登録第4940539号(甲第9号証)
登録日 2006年(平成18年)3月31日
指定商品
第3類「クレンジングクリーム,固形おしろい,ペンシル状まゆ墨,
まゆ墨,粉おしろい,口紅,香水,クリームおしろい,ファ
ウンデーションクリーム,マスカラ,その他の化粧品,香料
類」
(エ)商標登録第4940540号(甲第10号証)
登録日 2006年(平成18年)3月31日
指定商品
第3類「クレンジングクリーム,固形おしろい,ペンシル状まゆ墨,
まゆ墨,粉おしろい,口紅,香水,クリームおしろい,ファ
ウンデーションクリーム,マスカラ,その他の化粧品,香料
類」
ウ 上記のとおり、(ア)及び(イ)の商標登録出願については、代理人は、原審判における請求人である被請求人橋本の代理人であるウィンテックであった。
したがって、こうした代理人の共通性からも、被請求人橋本とジェスパー社が共謀して、本件商標権の仮差押債権者である請求人の権利又は利益を害する目的をもって原審決をさせたことは明らかである。
(4)ジェスパー社が、本件商標を使用していることについて
ア 訴訟提起による使用
ジェスパー社は、平成19年11月16日、本件関連商標の商標権の侵害を理由に、請求外株式会社エムアンドディを被告として、福岡地方裁判所に対し、商標権侵害排除請求の訴えを提起し(甲第11号証)、現在同訴訟が福岡地方裁判所に係属中である(福岡地方裁判所平成19年(ワ)第4128号)。
そして、本件関連商標のうち、少なくとも、上記(ア)ないし(ウ)は、本件商標と社会通念上同一のものであることは明らかである。
特に、ジェスパー社自身、上記訴訟の訴状において、「原告(審決注:ジェスパー社)商品は、前記登録商標(審決注:本件関連商標)で示される「Palgantong パルガントン」「PALGANTONG」の呼称において、既に大きな商品識別力を有している(甲第11号証、第3頁第4(2))と主張している。
よって、上記訴訟の提起により、ジェスパー社は、本件商標を使用していることが明らかである。
イ 請求外株式会社ドド・ジャパンによる本件商標の使用
また、ジェスパー社自身、上記訴訟の訴状において、「原告(審決注:ジェスパー社)と訴外株式会社ドド・ジャパン(以下「ドド・ジャパン社」という。)は2007(平成19)年1月29日「バルガントン(Palgantong)」を商標とする商品の輸入販売に関し、ドド・ジャパン社を総代理店とする旨の契約を締結し、「パルガントン」を商標とする商品の輸入・販売について、ドド・ジャパン社が、総代理店としてこれを行ってきた。」と述べ(甲第11号証、第2頁第3)、福岡地方裁判所に対してその証拠と主張する文書も提出しており(甲第12号証、甲第13号証)、本件商標と社会通念上同一の商標である本件関連商標を使用した事実を認めている。
よって、ジェスパー社が、本件商標を使用していることが明らかである。
ウ ジェスパー社が答弁しなかったことについて
このように、ジェスパー社にとっては、実際に本件商標を使用し、かつその使用の資料も保有していたのであるから、原審判において本件商標の使用について証明することは極めて容易であった。それにもかかわらず、ジェスパー社は、原審判において、何ら答弁を行っていないのである。
よって、こうしたジェスパー社の態度から見ても、被請求人橋本とジェスパー社が共謀して、本件商標権の仮差押債権者である請求人の権利又は利益を害する目的をもって原審決をさせたことは明らかである。
(5)まとめ
以上のとおり、原審決は、原審判の請求人であった被請求人橋本と原審判の被請求人であったジェスパー社が共謀して、本件商標権の仮差押債権者である請求人の権利又は利益を害する目的をもって審決させたものであることは明らかである。
よって、原審決は、商標法第58条第1項の規定により詐害審決として取り消され、かつ、本件商標権は回復されるべきである。
3 再審の請求期間について
(1)再審は、原則として、請求人が審決が確定した後再審の理由を知った日から30日以内に請求しなければらない(商標法第61条で準用する特許法第173条第1項)。
この点、請求人は、原審判の当事者又は参加人ではなく、かつ韓国に居住している個人であるため、原審決の理由を正確に把握するには、特許電子図書館の審決データベースによるしかない。
そして、一般に、確定した審決の公報は、確定から1ヶ月以上の期間が経過してからデータベースに記録されるものであるところ、特許電子図書館の審決データベースにおいては、原審決の審決公報は、平成20年11月28日に発行された(甲第5号証に記載の「発行日」)。
そして、請求人が、原審決が上記のとおり詐害審決であることを知ったのは、特許電子図書館の審決データベースにおいて原審決の審決公報が平成20年11月28日に発行された後、同月29日に、請求人の息子を通じて現請求人代理人と打ち合わせを行った時であった。
よって、本件における再審の請求期間は、平成20年11月29日の翌日から30日以内か、又は同年11月28日の翌日から30日以内である。
(2)万一、商標法第61条で準用する特許法第173条第1項の期間が経過していたと判断されても、請求人においては、商標法第61条で準用する特許法第173条第2項により、平成20年11月30日から2ヶ月以内か、又は同月28日から2ヶ月以内に再審を請求すれば足りる。
(3)以上より、本件では、再審の請求期間については、全く問題ない。
4 本件商標と使用商標の同一性について
(1)ジェスパー社による「PALGANTONG」商標の使用
ア ジェスパー社は、2007年1月29日、ドド・ジャパン社(甲第14号証)に対し、本件関連商標及び本件商標を含む「パルガントン」の化粧品ブランドの通常使用権を付与した(甲第12号証)。
イ そして、ドド・ジャパン社は、日本国内へ輸入する商品(フェイスパウダー)に、本件商標「Palgantong」を大文字にしただけの「PALGANTONG」の文字を付して、同商品を日本国内で販売し、もって、遅くとも、2007年11月までには、「PALGANTONG」の商標を使用している。
また、ドド・ジャパン社は、「PALGANTONG」又は「パルガントン」の文字を表示して広告を行い、もって、遅くとも2007年11月までには、「PALGANTONG」又は「パルガントン」の商標を使用している(甲第13号証)。
(2)使用商標と本件商標が社会通念上同一であることについて
ア ドド・ジャパン社が上記のとおり使用している商標「PALGANTONG」又は「パルガントン」と、本件商標「Palgantong」を比較すると、「PALGANTONG」と「Palgantong」の場合は、ローマ字の文字の表示を相互に変更するものであり、また、「PALGANTONG」と「パルガントン」の場合も、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであり、いずれの場合も、「パルガントン」という同一の称呼及び観念を生ずる商標である(商標法第50条第1項)。
したがって、ドド・ジャパン社が使用している商標「PALGANTONG」又は「パルガントン」と、本件商標「Palgantong」は、社会通念上同一であることが明らかである。
イ また、取引の実情を考慮すると、「Palgantong」の文字にこそ商品識別力がある。そして、ジェスパー社自身も、上述の福岡地方裁判所に係属している訴訟において、「原告(審決注:被請求人ジェスパー社)商品は、前記登録商標(審決注:本件関連商標)で示される「Palgantong パルガントン」「PALGANTONG」の呼称において、既に大きな商品識別力を有している(甲第11号証、第3頁第4(2))と主張している。
よって、取引の実情を考慮しても、ドド・ジャパン社が使用している商標「PALGANTONG」又は「パルガントン」と、本件商標「Palgantong」は、社会通念上同一であることが明らかである。
(3)まとめ
以上のとおり、ドド・ジャパン社が使用している商標「PALGANTONG」又は「パルガントン」と、本件商標「Palgantong」は、社会通念上同一である以上、本件商標は使用されていることが明らかである。
したがって、ジェスパー社は、実際に本件商標を使用し、かつ、その使用の資料も保有していたのであり、原審判において本件商標の使用を証明することは極めて容易であった。
それにもかかわらず、ジェスパー社が、原審判において何ら答弁を行わず、もって、本件商標について商標登録を取り消すとする原審決をなされたことからすれば、被請求人橋本とジェスパー社が共謀して、本件商標権の仮差押債権者である請求人の権利又は利益を害する目的をもって原審決をさせたものであることは明らかである。
よって、原審決は、商標法第58条第1項の規定により、詐害審決として取り消され、かつ、本件商標権は回復されるべきである。
5 答弁に対する弁駁
(1)被請求人橋本は、商標権者は商標権を維持する義務はなく、また、被請求人橋本の知らないことであると主張する。
しかし、本件商標権は、請求人によって仮差押を受けているのであるから、ジェスパー社が原審判において答弁しないことは、請求人の仮差押の被保全権利(5億ウォンの債権)を不当に侵害するものであり、明らかな不法行為(民法第709条)である。
したがって、本件商標の商標権者であるジェスパー社としては、請求人の権利を不当に侵害しないよう、原審判において、答弁を行うべき信義則(民法第1条第2項)上の義務があることは明らかである。
(2)被請求人橋本は、原審判での請求人橋本の代理人であるウィンテックが、原審判の被請求人のジェスパー社保有の他の商標(登録第4989970号、登録第5003730号)に係る出願の代理人であったとしても、事件が別であるので共謀はないと主張する。
しかし、ウィンテックは、マグザス社の依頼を受けて、登録第4989970号商標「Palgantong/パルガントン」、登録第5003730号商標「PALGANTONG MAKE-UP」の登録を行っている。
その後、登録第4989970号商標「Palgantong/パルガントン」、登録第5003730号商標「PALGANTONG MAKE-UP」の商標権は、ジェスパー社に移転されている(甲第11号証)。
そして、登録第4989970号商標「Palgantong/パルガントン」と登録第5003730号商標「PALGANTONG MAKE-UP」は、いずれも、「Palganton」又は「PALGANTONG」の部分に特徴的な商品識別力を持つものであり、この点で、本件商標は、「Palgantong」の文字綴りを共通する。
それにもかかわらず、ウィンテックは、被請求人橋本の依頼を受けて、ジェスパー社に登録されている本件商標の不使用取消審判請求を代理したのである。
このような経緯からすれば、ウィンテック内部において、当然、利益相反についての検討がなされているはずである。
そして、ジェスパー社において事前に被請求人橋本からの本件商標の不使用取消審判請求を争わない旨の内諾があったからこそ、ウィンテックは、被請求人橋本の依頼を受けて、本件商標の不使用取消審判請求を行ったものであることは明らかである。
よって、被請求人橋本とジェスパー社が共謀して、本件商標権の仮差押債権者である請求人の権利又は利益を害する目的をもって原審決をさせたことは明らかである。

第3 再審被請求人の主張
1 被請求人橋本は、結論(1)と同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べた。
請求人は、平成20年12月1日付け提出の再審請求書において、「商標法第58条第1項の規定により、特許庁が、平成20年5月27日付けで本件商標についてした確定審決を取り消す、同商標登録に係る商標権を回復する」との審決を求め、その理由として原審決が「詐害審決」である旨を述べているが、これについて、以下意見を述べる。
(1)ジェスパー社が、原審判において何ら答弁を行っていないことについて
請求人は、ジェスパー社が、平成19年8月にマグザス社より本件商標権の移転登録を受けているにもかかわらず、被請求人橋本による原審判で何ら答弁を行わなかったことを共謀と詐害の理由に挙げている。
しかし、ジェスパー社が答弁を行わなかった理由は知らないが、本件商標権の移転登録を受ける行為と、本件商標の不使用取消審判請求に対して答弁する行為との間には、関連性がなく、必ず答弁すべき理由はない。
商標権者の義務として、商標権を維持すべき義務が存在するわけではない。
(2)被請求人橋本の代理人が、ジェスパー社の代理人であることについて
請求人は、原審判の請求人橋本の代理人であるウィンテックが、原審判の被請求人ジェスパー社保有の、他の商標(登録第4989970号、登録第5003730号)に係る出願の代理人であったことから、その代理人の共通性を共謀と詐害の理由に挙げている。
しかしながら、この点については、本件と他の案件とは異なる別の事案であり、別の案件で代理人が共通するからといって共謀性を推測するのは見当違いである。本件商標の出願時の代理人もウィンテックではなく、本件商標の不使用取消審判請求については、原審判の請求人橋本の依頼に基づき債務を履行したにすぎない。
(3)ジェスパー社が、本件商標を使用していることについて
請求人は、ジェスパー社が、本件関連商標権の侵害排除請求訴訟を提起しており、その訴状において 「『Palgantong パルガントン』『PALGANTONG』の呼称において、既に大きな商品識別力を有している」旨主張していること、ジェスパー社の日本における総代理店「ドド・ジャパン社」が、本件商標と社会通念上同一の商標を使用した事実を認めていること、ジェスパー社がこれらの使用の証明が極めて容易であったにもかかわらず、何ら答弁を行っていないこと、を共謀と詐害の理由に挙げている。
しかし、当該商標権侵害排除請求訴訟の提起は、被請求人橋本の知らなかったことであり、商標使用の事実に関する主張の如何もジェスパー社側の事情にすぎない。
ジェスパー社らが本件商標を使用しており、その証明が容易だからといって、答弁するか否かは被請求人の判断によるところで、必ずしも答弁を行うべき理由はない。
一般に、権利の管理上、既に不要になった権利については、登録の取消に伴う権利の消滅に任せることがあるところである。
(4)以上より、請求人により提出された証拠によっては共謀及び詐害目的を合理的に認めるに足る根拠がなく、被請求人橋本とジェスパー社とが共謀して、本件商標権の仮差押債権者である請求人の権利又は利益を害する目的をもって原審決をさせたことが明らかであるという請求人の主張は憶測にすぎない。
したがって、被請求人橋本は、本件再審請求は成り立たない、との審決を求める。
2 被請求人であるジェスパー社は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 再審請求の期間について
商標法第61条で準用する特許法第173条第1項には、「再審は、請求人が審決が確定した後再審の理由を知つた日から30日以内に請求しなければならない。」、同2項には、「再審を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から14日(在外者にあつては、2月)以内でその期間の経過後6月以内にその請求をすることができる。」と記載されている。
これを、本件についてみると、原審決は、平成20年10月3日に確定したものである。
そして、請求人は、韓国に居所を有する個人であり、請求人の主張する再審の理由を知った日を仮に当該審決の公報発行日(平成20年11月28日)としてみることは、無理のないところであり、被請求人もこの点について争っていないことから、これを認めても差し支えないものと判断できる。
2 詐害審決について
本件再審請求は、商標法第58条第1項の規定により取り消しを求められているものであり、同項は、「審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもつて審決をさせたときは、その第三者は、その確定審決に対し再審を請求することができる。」と定めている。
そこで、当該条項の要件について検討する。
(1)第三者の権利又は利益を害することの有無について
甲第3号証及び甲第4号証によれば、請求人は、平成18年8月22日に東京地方裁判所に「商標権仮差押命令申立書」を提出し、同年9月12日に本件商標権についての「仮差押決定」がされたことが認められる。
その「商標権仮差押命令申立書」には、「申立ての理由」の「第2 保全の必要性」の項番4に、「債務者は、・・・保有していたドド・クラブ株式のすべてを譲渡したが、その譲渡先は同一グループに属するジェスパーエルティディーである。」、同じく項番5には、「債務者は、韓国において2005年8月25日、その保有に係る商標権をジェスパーエルティディーに譲渡して、債務者がその債権者に対して負っている債務を詐害的に免れることを企てた。」との記載が認められる。
また、同「仮差押決定」によれば、「債権者の債務者に対する上記債権の執行を保全するため,別紙商標権目録記載の債務者名義の商標権は,仮に差し押さえる。債務者は,金7184万6432円を供託するときは,この決定の執行の停止又はその執行処分の取消しを求めることができる。」との仮差押決定がなされたことが認められる。
さらに、同「仮差押決定」に添付の「当事者目録」には、請求人が債権者であること、本件商標権の前権利者であったマグザス社が債務者であること、同じく添付の「商標権目録」には、本件商標権他2件の商標権が記載されている。そして、平成18年9月27日に本件商標権の登録原簿本に「仮差押」の登録がなされている(甲第2号証)。
そうとすれば、原審決の確定によって、本件商標の商標登録を取り消されたことは、本件商標権の仮差押債権者である請求人の利益を失わせたものということができる。
(2)原審判の請求人及び被請求人の共謀について
請求人は、被請求人橋本とジェスパー社との関係を述べていないし、共謀した裏付けとなる証左の提出もないから、被請求人橋本が原審判を請求した意図は明らかでないとしても、ジェスパー社と共謀したということはできない。
なお、請求人は、本件商標の商標登録出願の代理人と原審判の請求人の代理人とが一致することを根拠に、被請求人橋本とジェスパー社とが共謀している旨主張している。
しかしながら、代理人は、弁理士法第4条に規定する弁理士業務を多数の案件について多数の人の求めに応じて行うのが通常であるから、代理人が一致することのみでは、共謀の裏付けとはいえないから、請求人の主張は採用できない。
(3)請求人の権利又は利益を害する目的について
請求人は、原審判においてジェスパー社が本件商標の使用をしていることを極めて容易に証明できる立場にありながら、請求人の権利又は利益を害する目的で何ら答弁を行っていない旨主張し、ジェスパー社が本件商標を使用していることの証拠として甲第11号証ないし甲第13号証を提出している。
甲第11号証は、上記商標権侵害排除請求の訴状の写しであり、その訴状には、確かに、「原告(審決注:ジェスパー社)商品は、前記登録商標(審決注:本件関連商標)で示される『Palgantong パルガントン』『PALGANTONG』という呼称において、既に大きな商品識別力を有している。」「原告と訴外ドド・ジャパン社は2007(平成19)年1月29日『バルガントン(palgantong)』を商標とする商品の輸入販売に関し、ドド・ジャパン社を総代理店とする旨の契約を締結し、『パルガントン』を商標とする商品の輸入・販売について、ドド・ジャパン社が、総代理店としてこれを行ってきた。」旨記載されている。
甲第12号証は、ジェスパー社がドド・ジャパン社を「Palgantong」ブランドの我が国における独占的な輸入業者として許可する旨の2007(平成19)年1月29日付けの同意書の写しと認められる。
しかしながら、甲第11号証及び甲第12号証によっては、ジェスパー社が、ドド・ジャパン社を「Palgantong」ブランドの我が国における独占的な輸入代理店として許可したことは認め得るとしても、具体的に商標を付した商品が取引されていることはもとより、実際に使用されている商標や商品の状態も示されていない。
また、甲第13号証は、ドド・ジャパン社のホームページをプリントアウトしたものであり、そこには、同社が化粧品輸入販売、化粧品製造販売を事業内容として、平成17年2月2日に設立されたことが記載され、また、「PALGANTONG」の商標又は別掲(4)の商標が表示されている化粧品の範疇に含まれる商品「パウダー」や「マスカラ」等の写真や紹介文が掲載されている。
そして、同ホームページ(写し)には、本件商標並びに別掲(1)、(3)及び(4)の商標又はこれらと社会通念上同一と認められる商標が表示されている。
しかしながら、各頁右下の「2007/11」の数字によれば、同号証は2007年(平成19年)11月にプリントアウトしたものと判断するのが相当であり、原審判における要証期間内の証拠ではない。
他に、本件商標の商標権者であったジェスパー社又は専用使用権者若しくは通常使用権者であった者のいずれかが原審判の要証期間内に本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証する証拠は提出されていない。
してみれば、原審判において、ジェスパー社が本件商標の使用を極めて容易に証明できたことを前提とする請求人の主張は、その前提を欠くものといわなければならず、採用することはできない。
3 まとめ
以上のとおり、原審決は、審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもつて審決をさせたものとは認められないから、商標法第58条第1項に該当しないものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(請求人主張商標)
(1)登録第4989970号


(2)登録第5003730号(色彩については原本参照))


(3)登録第4940539号



(4)登録第4940540号



審理終結日 2009-06-26 
結審通知日 2009-07-01 
審決日 2009-07-14 
出願番号 商願2000-94349(T2000-94349) 
審決分類 T 5 31・ 1- Y (Z03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 信彦 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 2001-07-19 
登録番号 商標登録第4493392号(T4493392) 
商標の称呼 パルガントング 
代理人 特許業務法人ウィンテック 
代理人 山上 祥吾 

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