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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 133
管理番号 1241495 
審判番号 取消2010-300160 
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-02-12 
確定日 2011-08-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第1780689号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1780689号商標(以下「本件商標」という。)は、「じゃばら」の文字と「JABARA」の文字とを上下二段に横書きしてなり、昭和58年6月8日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年6月25日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品については、平成18年2月1日に第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中「第33類 薬味酒」について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、商標登録原簿記載のとおり、専用使用権者、通常使用権者の登録がなく、また、請求人が調査した範囲において、本件商標の指定商品中「第33類 薬味酒」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しない。
よって、本件商標の指定商品中「第33類 薬味酒」についての登録は、商標法第50条1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「薬味酒」と「果実酒」は、商標法上截然と分別されており、被請求人が述べている「じゃばら酒」は、別段「薬味酒」と「果実酒」の二つの指定商品に属する二面性を有する商品ではない。
商標登録出願をするに当たって、商品を指定する場合、政令で定める商品区分に従って行うわけであるが、政省令に対応した「類似商品・役務審査基準」に基づき指定する。類似商品・役務審査基準においては、第33類「果実酒」と「薬味酒」は、非類似の商品とし截然と分別記載されている。そして「梅酒」は、「薬味酒」に属する商品として明確に記載されている(甲3)。
言うまでもなく、「梅酒」は、何百年も前から日本人に愛飲されていて、薬効あらたかな「酒」として知られている。血液をサラサラにする、豊富なクエン酸が夏バテを解消してくれる、梅酒の「ベンズアルデヒド」成分がアロマテラピーの効果を奏する、梅酒のピクリン酸が肝機能を回復させてくれる、食欲増進、成人病予防等々健康に役立つ酒として誰でも知っている。「薬味酒(類似群28A04)」であることに何の問題もない(甲4)。
単に「梅」を原料とする「リキュール」は、「類似群28A02」であり、単に「柑橘類、じゃばら」を原料とする「リキュール」である「じゃばら酒」を「類似群28A02」であると判断することに何の問題もない(甲5)。
請求人は、被請求人が柑橘類の一種である「じゃばら(よみ:ジャバラ、品種登録の育成権は1991年11月2日消滅(甲6)、現在、柑橘類の普通名称となっている」を原材料に使った「じゃばら酒」は、「薬味酒」とはいえず、よって被請求人は指定商品「薬味酒」について登録商標を使用していないわけだからその登録は取り消されるべきだ、と主張しているのである。
被請求人は「果実酒」についても縷々述べているが、被請求人が本件商標を使用しているという「酒」は、「果実酒」ではない。酒類業組合法では、「酒類の種類を表示しなければならない」(甲7、甲8)としているが、被請求人の提出した乙第4号証(甲9)の商品説明ラベル右肩に明確に表示されているとおり「リキュール」と表示される酒類の種類であることを指摘しておく。
つまり「じゃばら酒」は、原材料が清酒(純米酒)、北山村じゃばら、糖類からなる「柑橘類果実じゃばらを原料とする、じゃばら風味のリキュール」であるというのが正確な表現ということになる(甲9)。
ちなみに酒税法上「梅酒」も当然リキュールの一種である。
(2)薬味酒について説明し、被請求人のいう「じゃばら酒」が「薬味酒」と全く異なるものであることを述べる。
薬味酒、の「薬味」とは薬の原料で、薬効のある草根木皮などを酒に浸したものを薬酒とか薬味酒という。植物・動物・鉱物などで薬用に供する物を生薬というが、この生薬を加えた、薬用として飲用する酒も同じものである(甲10)。
被請求人が述べる、柑橘類「じゃばら」を使った「じゃばら酒」は既述のとおり、原材料を清酒(純米酒)、北山村じゃばら、糖類などからなり、「果実じゃばらを原料とする、じゃばら風味のリキュール」といえるようなものであるが、被請求人は乙第8号証において「柑橘類じゃばら果汁」の効果を提示し、「スギ花粉」に効果があることをもって「薬味酒」同様のもの、とする判断は短絡にすぎる。
「薬味酒」は、商品区分第5類の「薬用酒」と成分がほとんど同じ、つまり酒店で販売する場合は「薬味酒」として取引され、医薬品として取引される場合は「薬用酒」つまり「薬剤」の中の「滋養強壮変質剤」なのである(甲11)。
つまり単に「果実」を各種の「酒」に加えれば「薬味酒」となるというわけではない。前記薬効があらたかではなく、例えば癖のある「酒」を飲みやすくする為に「ハーブ」とか「果実」の風味をつけて飲みやすくする様なものは、「ハーブ風味、果実風味のリキュール」、つまり「洋酒、果実酒」であって類似群で言えば「28A02」に属するものなのである。
翻って、被請求人のいう「じゃばら酒」が、「柑橘類じゃばら」の果汁効果で、多少「スギ花粉」に効用が有るとしても、それは「そばの実」に「ルチン」成分が豊富で健康に良いから「そば焼酎」は体に良い、「ワイン」は「ポリフェノール」が多いから体に良いというような程度のもので、とても「薬味酒」といえるものではない。
さらに、商標法における商品の同一・類似の判断は、どのような販売形態で商品が流通するかをも考慮する必要があるので、被請求人が「じゃばら酒」をどのような言辞で販売しているかを考察してみると、「あまりのすっぱさに酔いが吹っ飛ぶかも知れません。」、「ベースの日本酒には、純米酒と純米古酒をブレンドし、じゃばらの風味を引き立てます。甘いだけのリキュール、酸っぱいだけのリキュールではもう満足できなくなります。」「さっぱりとした味わいから中華料理など油を使った料理とは相性ぴったり。」(甲12)「じゃばらの味わいを一番に考えたお酒です。」、「じゃばら酒と料理、豚や鶏肉の塩焼きや、ささみの梅肉巻きなどの塩味のある料理などに抜群です・脂っこい料理にも良く合います。じゃばらの風味が・・・」(甲13)など、普通の果実風味のリキュールであることを宣伝している。そこには健康・滋養強壮などの言葉は微塵もない。
被請求人が述べる「じゃばら酒」は、まさしく「類似群28A02」に属する「酒」ということができる。
卑近な例を述べれば、「養命酒」は、養命酒製造株式会社が販売する「酒」であるが、「薬味酒」、「薬用酒」を厳然と区別して販売している。
中身は同じであるが、酒類販売業者からは酒類(リキュール類、「薬味酒」)として、薬局などでは第2類医薬品(滋養強壮保険薬)」として販売していることを明確にしている(甲14)。
また、「陶陶酒」は、陶陶酒製造株式会社の販売する「酒」であるが、「薬用陶陶酒」、「陶陶酒、薬味酒」と区分けを明確にして販売している(甲15ないし甲17)「薬味酒」といえる販売形態は上記のような形態をとるものである。
「薬味酒」は、「洋酒、果実酒」を飲用するように、酒の風味を味わったり嗜好的に自由に沢山飲む酒ではない。「薬味酒」は、医薬品同等のものであるから用量に注意し、適量を健康増進の為に飲むという飲用形態をとるものなのである。
かように「洋酒、果実酒」と「薬味酒」は、商品内容も、商品販売形態、飲用形態も異にするものであるから、両者は全く非類似のものである。被請求人がいうところの「じゃばら酒」は「洋酒、果実酒(類似群28A02)」にのみ属する「酒」である、との判断が妥当なものであって、「薬味酒」との二面性を持つ、との被請求人の主張は「薬味酒」の意義を深慮検討しない牽強付会の説といえる。
上述のとおり、請求人がなした「果実酒」、「薬味酒」の説明により、被請求人が販売するという「じゃばら酒」は、「薬味酒」でないこと明らかであるから、被請求人が例示した裁判例は、本件審判と全く無関係なものといえる。
(3)商標の使用者たる「北山村役場」は、インターネット上及び納品書において本件商標を使った使用者とはいえない。
ア 乙第1号証について
インターネット情報として、被請求人は乙第1号証を提示し、「北山村役場」、「北山村役場観光産業課」が、本件商標の使用者であると述べているが、乙第1号証には「北山村の特産幻の柑橘じゃばら 紀州・熊野のこだわりの味をお届けするじゃばら村センターわいわい市場店」を見ることができ、ホームページ最終ページの「お問い合わせ」欄においても架空と思われる「じゃばら村センター」が出てくるが、「北山村役場」、「北山村役場観光産業課」は出てこない。
被請求人の提出した乙第1号証において、商標の使用を許諾された者の名称は存在せず、「北山村役場」、「北山村役揚観光産業課」は、本件商標を指定商品に使用する者ということはできない。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は、「和歌山県岩出市畑毛72番地」の「株式会社吉村秀雄商店」が「和歌山県東牟婁群北山村下尾井335」の「北山村役場観光産業課」に「リキュール・じゃばら酒 瓶詰」、「リキュールじゃばら酒;別仕立 瓶詰」などを納品した旨の「納品書」であるが、納品者を特定する手段たる、印影がない。本件納品に関する請求書、領収書などの提出がない。
第一に、「リキュール・じゃばら酒 瓶詰」及び「リキュールじゃばら酒;別仕立 瓶詰」は、商標ではない。じゃばら入りのリキュールという商品の品質表示及び商品の荷姿を示すにすぎない。
また、「株式会社吉村秀雄商店」は、本件商標の使用を許諾された使用権者ではないから、例え納品書の商品名欄記載の「リキュール・じゃばら酒 瓶詰」における「じゃばら酒」が商標であっても通常使用権者の使用とはいえない。納品書左上部の宛名人が「商標使用権者」であっても、商品の宛名人であって、宛名人は商標の使用者にはならない。
また、納品書の商品名の欄に記載された「じゃばら酒」部分は、商標ではない。
つまり、「じゃばら」は、特定柑橘品種の普通名称であって、この「じゃばら」の果汁を糖類と共に酒類に加えてできたものがリキュール「じゃばら酒」である。この「じゃばら酒」の注文を受けた「株式会社吉村秀雄商店」が、「北山村役場観光産業課」に「じゃばら酒」を納品したことを示すだけのもので、そこには登録商標「じゃばら/JABARA」の使用といえる証拠の提出が無い。
(4)使用に係る商品「果実じゃばら」の果汁・果皮を原材料とする「じゃばら酒」は、本件取消審判請求の対象となる「薬味酒」ではない。
被請求人は、「乙第1号証には本件商標の付された請求に係る指定商品が記載され、乙第2号証の商品名の欄には乙第1号証に記載された商品名に対応する商品名が記載されている。
また、乙第4号証は、乙第1号証に記載された商品『じゃばら酒720ml[箱入り]』に貼付された商品説明書であり、本商品が『果実じゃばら』の果汁・果皮を原材料とすることが記載されている。」とのみ説明し、最終段において「被請求人においては、以下に証明する商標使用に係る商品を、『薬味酒』と『果実酒』のふたつの指定商品に属する二面性を有する商品であるとの認識を前提としている。」と述べているだけで「薬味酒」と「果実酒」の比較検討をしていない。
前記(1)、(2)で述べたとおり、「果実酒」と「薬味酒」は、截然と区別されて理解されているわけで、「じゃばら酒」は「薬味酒」ではない。
つまり、登録商標を指定商品「薬味酒」に使用した事実はない。
(5)乙第1号証、乙第4号証などにおいてデザイン化された「じゃばら酒」商標は、登録商標と同一性を欠くものである。
登録商標は、甲第1号証に見られるとおり、平仮名「じゃばら」を上段に、欧文字「JABARA」を下段に、それぞれ左から右へ横に書記したものであり、その称呼は「ジャバラ」としか出ないものであるところ、乙第1号証、乙第4号証などにおいては「じゃばら」の文字のみならず「酒」の文字が一体化され、デザイン化され全体として「ジャバラシュ」の称呼が出るものとなっている。
さらに、登録商標のように左から右へ同書・同大に書記されたものではなく、「じゃばら」と「酒」を略方形に配置してあるため、どの部分から読み始めたらデザイン意図に添った正しい読み方になるのか不明で、例えば右上から下へ「じゃ酒ばら/ジャシュバラ」と読むのか、左上から右へ「ばじゃら酒/バジャラシュ」と読むのか、左上から下へ「ばらじゃ酒/バラジャシュ」と読むのか、造語的言語であるが故に、様々に称呼・観念されるものとなっているわけで、特定されるべき権利範囲が不確かなものとなっていて、「ジャバラ」としか称呼・観念されない登録商標「じゃばら/JABARA」とはその称呼・観念を全く異にするものとなっている。
登録商標「じゃばら/JABARA」ではなく、「じゃばら」という柑橘を材料に使った酒、つまり「じゃばら酒」をデザイン化した表示は、登録商標の使用とはいえないから、本件商標が不使用であることを免れ得ない。
(6)三年以内の使用時期について
被請求人は、乙第1号証のインターネット情報の下段左上に「新物2009 11月1日予約開始」の記載があり、同ページ右側中段に「2010年1月6日」の記載がある、から審判請求に登録前3年以内に登録商標を指定商品に使用した、と述べている。
2010年1月に2009年11月の新物を予約するとはどのようなことか理解できない。そして「新物」として紹介されている商品は、「じゃばら果汁」であって「じゃばら酒」の事ではない。
全体として、乙第1号証は、信憑性に疑義がありホームページの記載内容について証拠能力を欠くものであるから証拠として採用できない。
また、被請求人は、乙第2号証において売上日付が平成20年8月4日他の日付の納品書を提出するが、前記「商標の使用者」の欄で述べたとおり、「柑橘果実じゃばら」を原材料とする商品名「じゃばら酒」の納品書であって、そこに登録商標「じゃばら/JABARA」が表記されていないことは明らかである。
「柑橘果実じゃばら」を原材料とする商品名「じゃばら酒」は識別力がない。商標ではない表示を使用しても「審判請求の登録前3年以内に登録商標を使用した」ことにはならない。
3 むすび
如上のとおり、被請求人が答弁書において述べた事項は、本件商標の指定商品中「第33類 薬味酒」について、通常使用権者が登録商標を継続して3年以上日本国内おいて使用している事実を証するものではないので、被請求人の答弁の理由は成り立たない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証を提出している。
1 指定商品「薬味酒」について(「果実酒」との関係)
本件商標の第33類における指定商品は、後述のとおり「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」であり、商標法施行規則第6条別表(以下、別表という)においても、同様に列記される。
そして、別表には、薬味酒の例示商品として「梅酒 にんじんきなてつぶどう酒 はちみつ酒 保命酒 松葉酒 まむし酒」が列挙され、果実酒の例示商品として「いちご酒 なし酒 ぶどう酒 りんご酒」が列挙されている。
一般的国語辞典において、「薬味酒」なる語は、例えば、「薬効のある草根木皮を浸した酒。にんじん酒。薬酒。」(大辞林 三省堂)あるいは「薬酒→酒などに漢方薬を溶かし込み、香味をつけたもの。梅酒・・・など。」(大辞泉 ジャパンナレッジ)と説明されており、同様に「果実酒」なる語は、例えば「(1)果実を原料として、発酵させてつくる酒。ぶどう酒、(2)蒸留酒に果実を漬け込んだ飲み物。梅酒」(大辞泉 ジャパンナレッジ)と説明される。
上記した極めて一般的な辞書の掲載内容においても、「梅酒」などは、「薬味酒」と「果実酒」の両概念の例示商品とされており、かつ、例えば、「『果実』を原料とする『薬味酒』」も、少なくとも、国語上の一般的理解や市場における需要者認識においては、存在するものと解される。
以上より、現実の市場において出現する「果実を原料とする何がしかの薬効が期待できる酒」を内容とする商品が、「薬味酒」「果実酒」のいずれかの商品群に属するかを截然と分別することは不可能といわざるを得ない。
これに関して、昭和57年(行ケ)第67号(乙5)、平成12年(行ケ)第447号(乙6)判決例がある。
さて、「果実じゃばら」には、アレルギー抑制効果を有するフラボノイドの成分(ナリルチン、ナツダイダイン)が、他の柑橘類に比して非常に多く含有されていることを内容とする研究機関の研究結果(乙7、乙8)などから、花粉症の改善を期待して「果実じゃばら」果汁・果皮を含む飲料を購入する需要者ニーズが最近高まっている。
すなわち、需要者をして、「果実じゃばら」果汁・果皮を含むアルコール飲料を、「果実を原料とする薬効の期待できる酒」であるとの認識に至っていると解することも可能である。
したがって、被請求人においては、以下に証明する商標使用に係る商品を、「薬味酒」と「果実酒」の二つの指定商品に属する二面性を有する商品であるとの認識を前提としている。
2 本件商標の使用事実の要点
本件審判は、本件商標の指定商品中第33類「薬味酒」について、不使用による商標登録の取消請求がなされたものである。
しかしながら、本件商標の通常使用権者である「北山村役場」は、本件審判請求の登録前3年以内に我が国においてその請求に係る指定商品「薬味酒」について、本件商標を使用している。
3 本件商標の使用事実
(1)商標の使用者
乙第1号証は、本件商標の使用権者「北山村役場」が開設するインターネットサイト(http://www.kitayamamura.com)中、「じゃばら酒:じゃばら村センターわいわい市場店(http://www.kitayamamura.com/category/12/)の掲載画像を印刷した文書である。
乙第2号証は、酒製造業者「株式会社吉村秀雄商店」から本件商標の使用権者である「北山村役場観光産業課」へ、上記インターネットサイトに掲載された商品を納品した「納品書」である。
また、乙第3号証「『じゃばら』商標権の使用契約書」には、被請求人(商標権者)が「北山村役場」に本件商標の使用を許諾した旨の記載がされている。
(2)使用に係る商品
乙第1号証には、本件商標の付された請求に係る指定商品(商品名:じゃばら酒720ml【箱入り】・じゃばら酒180ml・じゃばら酒720ml)が記載され、乙第2号証の商品名の欄には、乙第1号証に記載された商品名に対応する商品名が記載されている。
また、乙第4号証は、乙第1号証に記載された商品「じゃばら酒720ml【箱入り】」に貼付された商品説明書であり、本商品が「果実じゃばら」の果汁・果皮を原材料とすることが記載されている。
(3)使用に係る商標
乙第1号証には、本件商標が記載されている。
なお、本件商標は、上記に特定したように「じゃばら/JABARA」の平仮名と欧文字の二段併記の構成からなるが、欧文字「JABARA」の部分は平仮名文字「じゃばら」の称呼「ジャバラ」を通常の方法で表記したものであり、これらは観念を同一とするものである。
したがって、乙第1号証に記載される使用態様「じゃばら」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であり、登録商標の使用に該当する。
(4)使用時期
乙第1号証には、「新物2009 11月1日予約開始」の記載や、「2010年1月6日」との記載が確認できる。
乙第2号証の売上日付の欄には、「平成20年8月4日」「平成20年4月4日」「平成20年4月10日」「平成20年6月18日」と記載されている。
4 以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者により指定商品「薬味酒」について使用していることが明らかであるから、本件審判の請求は成り立たない、との審決を求める。

第4 当審の判断
1 被請求人から提出された乙各号証について
(1)乙第1号証は、「北山村役場」が開設するインターネットサイトであって、1枚目の上段のページ画面の左上には、「じゃばら酒:じゃばら村センターわいわい市場店-」の表示とその下に「http://www.kitayamamura.com/category/12/」のアドレスが表示されている。
また、1枚目の下段のページ画面には、「商品一覧」の項のもと、3種類のじゃばら酒の商品写真が掲載されており、その酒瓶等の容器には、「じゃばら/酒」(縦書きの「じゃ」「ばら」の下部に「酒」の文字が配されている。)と表示されている縦書きのラベルが貼付されている。
そして、各商品の下に左から「じゃばら酒720ml【箱入り】/2,000円(税込み)」、「じゃばら酒180ml/1,000円(税込み)」、「じゃばら酒720ml/1,780円(税込み)」の各記載がある。さらに、同ページ中の「公式ブログ」の見出しのもと、「ふるさとまつり東京」「2010年01月06日09:43」の表示がある。
同ホームページの4枚目には、左上の「ふるさと和歌山/わいわい市場」の見出しの下、「北山村」についての紹介と地図が掲載され、その下には、「お支払い方法」「注文受け付け」「お届けについて」等に関する説明があり、右下には、「お問い合わせ」の表示のもと、「商品およびお届け品、その他ご不明な点は、ご遠慮なくメール、お電話、FAX等でお尋ねください。」と記載されており、その下に「http://www.kitayamamura.com/」「jabara@kitayamamura.net」のアドレスが表示されている。
(2)乙第2号証は、「売上日付」が平成20年8月4日付け(1件)、同年4月4日付け(1件)、同年4月10日付け(1件)、同年6月18日付け(2件)の計5枚の「納品書」であり、いずれも「じゃばら酒」の納品についてのものであって、「株式会社吉村秀雄商店」から「北山村役場 観光産業課」宛となっているものである。
そして、「売上日付」が平成20年8月4日付けの「納品書」をみてみれば、以下のとおりである。
当該「納品書」(伝票No.003835)には、一段目の「コード」の欄に「M2201」、「商品名」の欄に「リキュール・じゃばら酒 瓶詰0.72L」、「容量」の欄に「720」、「入数」の欄に「6」、「ケース」の欄に「20」、「総バラ数」の欄に「120」、「単価」の欄に「1,286.00」、「金額」の欄に「154,320」の記載がある。二段目の「コード」の欄に「M2202」、「商品名」の欄に「リキュール・じゃばら酒 瓶詰0.18L」、「容量」の欄に「180」、「入数」の欄に「12」、「ケース」の欄に「8」、「総バラ数」の欄に「96」、「単価」の欄に「594.00」、「金額」の欄に「57,024」の記載がある。
(3)乙第3号証は、「『じゃばら』商標権の使用契約書」を表題とする平成19年3月10日付けの「商標権の使用契約書」である。そこには、「株式会社東豊(以下、甲とする。)と、北山村役場(以下、乙とする。)とは、商標権の使用について、次のとおり契約する。」と記載され、「第1条(商標権の使用許諾)/1.甲は乙に対し甲の保有する『じゃばら』に関する全ての商標権の使用を許諾する。/2.商標権は『じゃばら』の文字が折り込まれた全ての商標権とし、次の商標権を含むものとする。/登録番号 第1780689号、(他3件省略。)」、「第2条(商標権の使用期間)/商標権の使用期間は平成19年4月1日より平成22年3月31日までの3年間とする。」等の記載がある。
(4)乙第4号証は、被請求人によれば、乙第1号証に掲載された商品「じゃばら酒720ml【箱入り】」に貼付された「商品説明書」とされるものである。
これには、左上角部に大きく「じゃばら/酒」(縦書きの「じゃ」「ばら」の下部に「酒」の文字が配されている。)が表記され、その右横に「リキュール/(じゃばら果皮入)/アルコール分10%/内容量720ml/原材料名 清酒(純米酒)、北山村じゃばら、糖類/・・・株式会社/吉村秀雄商店/製造年月日 22.3.」の記載がある。
(5)乙第7号証は、2009年2月18日付けで「和歌山県北山村役場 観光産業課」が報道関係者に宛てたプレスリリースに関するインターネット情報である。
これには、「岐阜大学医学部が北山村特産じゃばら果汁の花粉症に対する効果発表、過疎の北山村の地域振興に期待!」のタイトルとこれに関する記載がある。
(6)乙第8号証は、月刊「臨床免疫・アレルギー科」(科学評論社 第50巻 第3号 2008年9月 360頁から364頁)に掲載された「スギ花粉症の症状とQOLに対する『じゃばら』果汁の効果」をタイトルとする文献である。

2 上記1の事実及び被請求人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)乙第1号証のインターネットサイトは、「北山村役場」が開設する「じゃばら村センターわいわい市場店」というホームページである。そして、そのホームページ中には、3種類のじゃばら酒の商品写真が掲載され、販売されているものである。
なお、同ページには、「2010年01月06日09:43」の記載があることから、該「じゃばら酒」は、「2010年1月6日」の時点での販売である。
また、その酒瓶等の容器には、「じゃばら/酒」と表示されている縦書きのラベルが貼付されている。
さらに、乙第4号証は、上記の掲載された商品「じゃばら酒720ml【箱入り】」に貼付された「商品説明書」とされるものであり、これによれば、該「じゃばら酒」は、じゃばら果皮入のリキュールであり、アルコール分10%、内容量720ml、清酒(純米酒)、北山村じゃばら、糖類を原材料とし、株式会社吉村秀雄商店が製造しているものである。
(2)乙第2号証の「納品書」によれば、北山村役場は、平成20年4月4日から同年8月4日頃にかけて、「株式会社吉村秀雄商店」から各納品書に記載された「リキュール・じゃばら酒」が納品されているものである。
(3)乙第3号証の「商標権の使用契約書」によれば、北山村役場は、平成19年4月1日より平成22年3月31日までの3年間、本件商標の通常使用権者である。
(4)以上によれば、本件商標の通常使用権者である北山村役場は、商品の酒瓶等の容器に、「じゃばら/酒」と表示されている縦書きのラベルが貼付されている「じゃばら果皮入のリキュール」について、2010年1月6日の時点で「じゃばら村センターわいわい市場店」というホームページで商品写真を掲載、及び「じゃばら酒」と表示し、広告、宣伝を行い、これを販売していたものである。

3 本件商標の使用された商品「じゃばら果皮入のリキュール」(以下「使用商品」という。)が「薬味酒」か否かについて
請求人は、本件商標の使用された使用商品が、第33類「薬味酒」ではない旨の主張をしているので、以下、検討する。
(1)「薬味酒」について
ア 「類似商品・役務審査基準〔改訂第8版〕」(平成13年12月改訂)等に記載される「薬味酒」について
本件商標の指定商品の書換登録日(平成18年2月1日)以前の「類似商品・役務審査基準〔改訂第8版〕」において、第33類「薬味酒」(28A04)は、その例示商品として、「梅酒 にんじんきなてつぶどう酒 はちみつ酒 保命酒 松葉酒 まむし酒」が例示されており、(備考)として、「1『薬味酒』は、第5類の『薬用酒』に類似する。2『にんじんきなてつぶどう酒』は、『中国酒』に類似する。」の記載がある。
そして、「商品及び役務の区分解説」〔国際分類第8版対応〕で「薬味酒」は、「『薬用酒』と薬味酒とは成分がほとんど同じであるが、酒店で販売される場合は薬味酒としてこの概念に属し、医薬品として取引される場合は『薬用酒』として第5類薬剤中の<滋養強壮変質剤>に属する。」の記載がある。
イ 広辞苑第6版(株式会社岩波書店)の「薬味酒」の項には、「味醂や焼酎に草根木皮などの薬草を浸して造った混成酒。屠蘇とその類。」の記載がある。
また、「大辞林」(株式会社三省堂)の「薬味酒」の項には、「薬効のある草根木皮などを酒に浸した酒。ニンジン酒など。薬酒。」(甲10)の記載がある。
(2)「リキュール」について
ア 広辞苑第6版(株式会社岩波書店)の「リキュール【liqueur/フランス】」の項には、「混成酒の一種。醸造酒・蒸留酒・アルコールに果実・香草・甘味料・香料などを加えて造る。ペパーミント・アブサン・キュラソーなど。」の記載がある。
イ インターネットのフリー百科事典「ウィキペディア」の「リキュール」の項には、「日本におけるリキュールの歴史」の見出しのもと、「日本にリキュールが伝わった時期についてはさまざまな説がある。平安時代説 平安時代に中国から伝わった屠蘇を起源とする説。」の記載がある。
また、「定義」の見出しのもと、「日本 日本には『リキュール』という定義は存在せず、日本の酒税法上において、『リキュール類』として定義されている。その定義は『酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの(清酒、合成焼酎、しょうちゅう、みりん、果実酒類、ウイスキー類、発泡酒、粉末酒を除く。)』というもので・・・」の記載がある。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB)
(3)以上のように、「薬味酒」と「リキュール」は、共に、清酒、合成焼酎、しょうちゅう、みりん、果実酒類、ウイスキー類、発泡酒、などを除く「混成酒」であって、薬味酒は、草根木皮などの薬草を浸して造るものであり、また、リキュールは、果実・香草・甘味料・香料などを加えて造るものであるから、両者を明確に仕分けることはできないものというべきである。
そして、上記のように前者の語源として「屠蘇」があげらており、後者も「屠蘇の類」と記述されている事実がある。
加えて、実際の取引上においても、健康によい草、根、木、皮、などを原料として用いてアルコール飲料を、常に、「薬味酒」と表示しているとは考えられず、また、これを「リキュール」と表示している場合も十分に考えられるところである。
なお、この点に関して、請求人は「『梅酒』は何百年も前から日本人に愛飲されていて薬効あらたかな『酒』として知られている。・・・食欲増進、成人病予防等々に役立つ酒として誰でも知っているので、『薬味酒』(類似群28A04)であることに問題ない。」旨主張している。
しかしながら、請求人は、一方で、「ちなみに酒税法上『梅酒』も当然リキュールの一種である。」旨の主張もしている。
(4)そうすると、使用商品は、花粉症に良いとする「じゃばら」の「じゃばら果皮、清酒(純米酒)、糖類」を原材料として製造されているものであるから、実際に、「じゃばら酒」と表示したり、併せて「リキュール」と表示したととしても何の問題もなく、また、仮に、これを「薬味酒」と表示しても差し支えないものというのが相当である。
したがって、使用商品は、商品の区分第33類中の「薬味酒」に属する商品でないとはいえないものである。

4 北山村役場(通常使用権者)による本件商標の使用について
本件商標は、「じゃばら」の平仮名と「JABARA」の欧文字とを上下二段に横書きしてなるものであるから、両文字からは「ジャバラ」の称呼を生じること明らかである。
一方、北山村役場によって使用されている商標(以下「使用商標」という。)は、ホームページに掲載された商品写真にみられるように、酒瓶等の容器には、「じゃばら/酒」と表示されている縦書きのラベルが貼付されており、そのラベルに表示された文字は、縦書きの「じゃ」「ばら」の平仮名とその下部に赤色で「酒」の漢字が配されているものである(甲1)。また、掲載された酒瓶等の商品には、その写真の下に「じゃばら酒」の記載がある。
そして、上記ラベルに表示された「じゃばら/酒」中の「酒」の文字部分は、本件商標の指定商品との関係からすると、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであることは明らかであり、また、そのラベルに縦書きされている「じゃ」、「ばら」、「酒」の表記方法によれば、「じゃばら」の文字を色彩を異にして表示しており、看者に強く印象づけられる文字及び構成態様になっているものである。
してみれば、使用商標は、その構成中の「じゃ」と「ばら」の文字を「じゃばら」の一連の文字として捉えられるものであるから、これよりは、「ジャバラ」の称呼を生じるというのが相当である。
また、本件商標の上段の「じゃばら」の平仮名は、下段の「JABARA」の欧文字の表音を表記したものである。
したがって、上記の使用商標は、「じゃばら」の文字を共通にし、本件商標と称呼を同じくする商標であって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということができる。

5 まとめ
上記1ないし4からすると、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が、商品「じゃばら果皮入のリキュール」の包装のラベルに表示され、当該商品は、本件審判の請求の登録前3年以内である2010年1月6日に通常使用権者である北山村役場によって、ホームページ上で広告、宣伝が行われたものである。
そして、前記商品は、本件請求に係る指定商品の「薬味酒」に含まれるものである。

6 結論
以上のとおり、本件商標は、通常使用権者によって、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品の「薬味酒」の範疇に含まれる「じゃばら果皮入のリキュール」について使用されていたものと認められる。
したがって、本件商標の指定商品中、請求に係る指定商品「薬味酒」についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2011-05-26 
結審通知日 2011-05-30 
審決日 2011-06-24 
出願番号 商願昭58-51973 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (133)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 1985-06-25 
登録番号 商標登録第1780689号(T1780689) 
商標の称呼 ジャバラ 
代理人 須田 元也 
代理人 内山 充 
代理人 岡島 順治 
代理人 須田 孝一郎 

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