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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 111
管理番号 1241459 
審判番号 取消2010-300180 
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-02-17 
確定日 2011-07-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第868916号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成22年10月14日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成22年(行ケ)第10359号、平成23年3月17日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第868916号商標(以下「本件商標」という。)は、「JIL」の欧文字をゴシック体で横書きしてなり、昭和42年11月2日に登録出願、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として、昭和45年5月20日に登録査定、同45年8月13日に設定登録、その後、3回に亘り商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標を使用している主体について
ア 被請求人が提出した乙第1号ないし乙第2号証によれば、被請求人は、照明器具の製造等を行う事業者及び団体を会員として構成する公益法人であり、一般事業として照明器具に関する調査などを行うと共に、特別事業として「非常用照明器具自主評定事業」「埋込み形照明器具の自主評定認証事業」などを行っていることが認められる。
イ 被請求人は、乙第3号証として「非常用照明器具技術基準」というタイトルの書類(発行日不詳)、乙第4号証として「東芝ライテック株式会社に対して送付した非常用照明器具等評定証」の写しを提出して、「各メーカーにおける形式の非常用照明器具に対して、『非常用照明器具技術基準』により、その基準に適合しているかを評定し、適合しているものには『JILマーク付きの適合マーク(仮称)』を該当商品である非常用照明器具に表示する(付する)」と述べている。
ウ 被請求人は、乙第5号証として「埋込み形器具」というタイトルの書類(発行日不詳)、乙第6号証として「松下電工株式会社に対して送付した埋込み形照明器具製品登録証」の写しを提出して、「埋込み形照明器具管理委員会で温度試験等の評定を行い、適合しているものには『JILマーク付きのS商標(仮称)』を付するようにしている」と述べている。
エ しかしながら、被請求人が提出した乙第3号ないし乙第6号証によっては、被請求人が「当該マークを非常用照明器具、埋込み形照明器具に付している」事実は、以下のとおり、何ら立証されていないものである。
(ア)乙第3号証は、被請求人が定めた「非常用照明器具技術基準」の規格書であるが、1971年9月7日に制定し2001年6月13日に改正された当該基準についての規格書であることは伺える。しかし、被請求人が答弁書第3ページ第5行目において示している「規格書第19、20ページ」では、「附属書2 非常用照明器具JIL適合マークの表示方法」として当該マークの様式などについて説明しているにすぎず、「被請求人が当該マークを非常用照明器具に表示している(付している)事実」は、何ら証明されていない。
(イ)乙第4号証は、被請求人が東芝ライテック株式会社に対して送付した非常用照明器具等評定証の写しであるが、被請求人が同社の製品である「器具」について評定し、2008年5月30日付で評定書を送付したことは伺えるが、この評定書中には、何ら商標は存在せず、「被請求人が当該マークを非常用照明器具に表示している(付している)事実」が証明されていないことは明らかである。
(ウ)乙第5号証は、被請求人が定めた「埋込み形照明器具」についての規格書であるが、1987年11月16日に制定し2000年9月27日に改正された基準についての規格書であることは伺える。しかし、被請求人が答弁書第3ページ第9行目において示している「規格書第8ページ」は、「附属書2 S形埋込み形照明器具の表示マーク」について当該マークの様式などについて説明をしているものであって、「被請求人が当該マークを埋込み形照明器具に付している事実」は、何ら証明されていない。
(エ)乙第6号証は、被請求人が松下電工株式会社に対して送付した埋込み形照明器具製品登録証の写しであるが、被請求人が同社の製品について2007年2月1日に製品登録し、同年2月14日付で登録証を送付したことは伺えるが、この登録証には、何ら商標は存在せず「被請求人が当該マークを埋込み形照明器具に付している事実」が証明されていないことも明らかである。
(オ)被請求人は、乙第7号証として松下電工株式会社の「住宅・店舗照明」のカタログ、乙第8号証としてパナソニック電工株式会社の「施設・屋外照明」のカタログ、乙第9号証として東芝ライテック株式会社の「施設屋外照明」のカタログ、乙第10号証としてオーデリック株式会社の製品カタログの写しを提出して、各カタログ中で当該マークを使用しているがごとく述べているが、 これらのカタログは、いずれも各社の商品について各社が発行したカタログであり、カタログ中の商標を使用している主体は、当該各社であって商標権者である被請求人ではないため、被請求人が当該マークを使用している事実を証明するものではないことが明らかである。
(カ)被請求人は、乙第11号証としてタイトルを「防災照明器具 保守・点検リニューアルのおすすめ」とするパンフレット、乙第12号証としてタイトルを「照明器具リニューアルのおすすめ」とするパンフレット」の写しを提出して、「『JIL適合』のマークが付されることが記載されている」、「JILマーク付きの適合マークが記載されている」と述べているが、各パンフレット中、被請求人が「『JIL適合』のマークが付されることが記載されている」とする箇所は、「交換バッテリーはメーカー指定のJIL適合マ一ク付のものをお使いください。」とする記述と「当該適合マークの見本」を表しているにすぎない。また、各パンフレット中、被請求人が「JILマーク付きの適合マークが記載されている」とする箇所は、「誘導灯・非常灯の認定・評定制度について」として、その審査機関・マークを表しているにすぎず、いずれにしても乙第11号及び乙第12号証によっては、「被請求人が当該マークを誘導灯・非常灯(それらのバッテリー)に表示している(付している)事実」は、何ら証明されていないことが明らかである。
(キ)被請求人は、乙第13号ないし乙第16号証として、パナソニック電工株式会社、東芝ライテック株式会社による証明書を提出しているが、これらの証明書は、いずれも「両社の製品である非常用照明器具・埋込み形照明器具が『JIL付きのマーク』を付したものであること」を両社が証明している書面にすぎず、「被請求人が当該マークを非常用照明器具・埋込み形照明器具に表示している(付している)事実」は、何ら証明されていない。
このことは、被請求人自身が答弁書第4ページ第12行目で「各メーカーにおいてそれぞれのマークが表示された(付された)ものを販売している」と述べていることとも合致するものである。
(ク)被請求人は、乙第17号証として昭和54年審判第4832号の審決書を提出し、「本件不使用取消審判より前に、被請求人が本件登録を証明標として使用していたことで被請求人である本商標権者の使用が認められた事件がある」と述べている。
しかし、本件審判請求の登録前3年以内に登録商標を指定商品に使用していないことを理由に商標登録の取消しを求めている本件取消審判において、今から30年以上も前である当該審決は、本件不使用取消審判と何ら関係がなく、被請求人が本件商標を非常用照明器具・埋込み形照明器具に表示している(付している)事実」は、何ら証明されていないことが明らかである。
(ケ)以上述べたとおり、被請求人が提出した各号証によっては、被請求人が当該マークを非常用照明器具・埋込み形照明器具に表示している(付している)事実」は、何ら証明されていない。
(コ)被請求人が主張する「証明標」について「商品に商標を使用している」とされるためには、当該商品の品質を保証する認定証・保証書等に当該商標を使用していることが必要である。
このことは、被請求人が乙第17号証として提出した昭和54年審判第4832号審決書第2ページで「誘導灯器具技術基準に基づき検査し、その品質を保証する認定証に証明標として使用されている」と認定されていることからも明白である。
すなわち、当該審判においては、商標権者が使用証拠として提出した認定証に当該登録商標が使用されていたため証明標として使用されていると認められたものであり、本件取消審判において、被請求人が提出した乙各号証によっては、かかる使用の事実が証明されておらず、被請求人が当該商標を証明標として使用していることは、何ら証明されていないものである。
(2)使用商標と登録商標の同一性について
ア 被請求人が提出した乙各号証において使用されている商標は、被請求人の主張によれば、「JILマーク付きの適合マーク(仮称)」「JILマーク付きのS商標(仮称)」(以下「使用商標」という。)であり、一方、本件商標は、活字体の「JIL」と同視できる「JIL」の文字からなるものである(甲第2号証)。
イ 商標法第50条では、本条の審判の請求があった場合においては、「登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、取消しを免れない」とされており、この登録商標とは「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。」とされている。
ウ そこで、乙各号証で使用されている商標について考察すると、「JILマーク付きの適合マーク」とは、二重円の図形中、中心部に「適合」の文字、輪郭の上部に扇形で「(社)日本照明器具工業会」の文字、輪郭の下部に扇形で「JIL5501」の文字が使用されてなるものである。
エ また、乙各号証で使用されている使用商標「JILマーク付きのS商標」は、二重円の図形中、中心部に太字の「S」の文字、輪郭の上部に扇形で「(社)日本照明器具工業会」の文字、輪郭の下部に扇形で「JIL5502」の文字、二重円の外側右下部に太字の「G」、「GI」又は「B」の文字が使用されてなるものである。
かかる使用商標は、いずれも二重円という図形を構成要素に含み、また、「5501」あるいは「5502」という数字及び被請求人の名称を必須構成要素としており、さらに、「JILマーク付きのS商標」については、二重円の右下部に太字の「G」、「GI」又は「B」の文字も使用されている。
オ したがって、活字体の「JIL」と同視できる態様である本件商標「JIL」と比較した場合に「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標」に該当しないものであることは、明白である。
カ 「社会通念上同一と認められる商標」とは、「社会一般に通用する常識」で同一と認められる商標を意味するものであるが(甲第3号証)、被請求人が各号証において使用している商標と本件商標は、商標の構成から生ずる呼び名、意味、外観のいずれもが明確に相違することから、社会一般に通用する常識で考えれば同一と認められないことは、明白である。
キ さらに、使用商標中、「JIL」の文字以外の構成要素である漢字、図形、数字、ローマ字の全てが商品との関係で型番等を示す記述的なものではなく、また、本件商標の使用に際して付加して使用しなければならないという取引社会の通念や必然性も存在しないことから、これらの構成要素は、使用商標において識別力を有する必須構成要素である。
したがって、乙各号証において使用されている商標は、本件商標と社会通念上の同一性の範ちゅうを超えた商標である。
このことは、被請求人自身が、答弁書第4ページ第21行目において「JILマーク」を使用していると述べ、本件商標「JIL」を使用していると述べていないことからも明らかである。
ク 被請求人は、使用商標の1つである「JILマーク付きのS商標」について、登録第2286245号商標、同第2255459号商標、同第2255460号商標として登録しているが、いずれの商標も本件商標である登録第868916号商標の連合商標として登録されている(甲第4号証)。
すなわち、被請求人が使用している商標「JILマーク付きのS商標」は、これらの登録商標と同一の商標であり、「本件商標ではなく被請求人自身が本件商標に類似する商標(連合商標登録の要件)であることを認めて登録した商標」を使用しているにすぎないものである。
ケ 以上のとおり、乙各号証によっては、被請求人が「本件商標との同一性の範ちゅうを超えた商標の使用」をしていることを示しているにすぎず、本件商標を使用していることを証明していない。
(3)まとめ
以上述べた理由により、被請求人が提出した答弁書及び乙各号証によっては、商標権者によって本件商標がその指定商品について本件審判請求の登録前3年以内に使用されている事実を示すものではなく、提出された証拠によっては、本件審判請求の登録前3年以内における登録商標の指定商品についての使用が立証されていないこと明らかであるから、本件商標の登録は、法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証を提出し、さらに、平成23年5月20日付け回答書において乙第18号証ないし乙第94号証を提出した(審決注:ただし、甲第46号証ないし甲第49号証、甲第69号証及び甲第70号証は欠番である。なお、被請求人は、これらの証拠について甲号証としているが乙号証に読み替えた。また、これらの証拠は、いずれも前記裁判事件において提出されたものと同一である。)。
1 答弁の理由
(1)本件商標の商標権者は、その指定商品中の「非常用照明器具(停電時におけるバッテリーでの非常用照明器具)」に「JIL」マークを使用し、また「埋込み形照明器具(天井埋込み形の照明器具)」にも「JIL」マークを使用している。
ア 照明器具のメーカーで構成される商標権者(乙第1号証)〔1942年(昭和17年)に創立、1975年4月22日(昭和50年)法人設立〕が、一般事業のほかに、非常用照明器具自主評定事業と埋込み形照明器具の自主認証等の特別事業を行っている(乙第2号証)。
イ 商標権者は、各メーカーにおける形式の非常用照明器具に対して、「非常用照明器具技術基準」により、その基準に適合しているか否かについて非常用照明器具自主評定委員会により評定し、適合しているものには、JILマーク付きの適合マーク(仮称)を該当商品である非常用照明器具に表示する<付する>(乙第3号証p.19、20、の非常用照明器具技術基準2001.6.13改正と、乙第4号証は、同基準に基づく評定書の各メーカーに送付したものの商標権者の控え。)ものである。
ウ 埋込み形照明器具については、埋込み形照明器具管理委員会で温度試験等の評定を行い、適合しているものには、JILマーク付きのS商標(仮称)を付するようにしている(乙第5号証p.8の埋込み形照明器具の本商標権者の規格2000年改正と、乙第6号証は、同基準に基づく登録証。)。
エ 乙第7号証には、松下電工株式会社製品として「住宅・店舗照明2008-2009」p.633に、JILマーク付きのS商標(仮称)がS形ダウンライトに表示され、乙第8号証には、パナソニック電工株式会社製品として「施設・屋外照明2009-2011」p.384に、(電池内蔵型)非常用照明器具にJIL印を入れた適合マーク(仮称)を貼付することにしている。
オ 乙第9号証の東芝ライテック株式会社の「施設屋外照明2009-2010のp.282、283」に、(1)建築基準法第68条の10及び11(型式適合認定ほか)・・・(社)日本照明器具工業会の非常用照明器具自主評定制度に合格した非常用照明器具です。合格した東芝非常用照明器具には評定マークの表示が許され、適合した商品であることが見分けられます。」として、JILマーク付きの適合印の記載が見られる。
カ 乙第10号証のオーデリック株式会社(ODELIC)のカタログ「Habitation Structural Lighting 2008-2009 vol.128」のp.162にもS型ダウンライトにJILマーク付きのSマークが記載されている。
キ なお、乙第11号証の「防災照明器具 保守・点検リニューアルのおすすめ」2009年2月発行の本商標権のパンフレットの誘導灯全体については、乙第2号証に記載の消防法で規定されている(社)日本電気協会が認定するものであるが、同号証の交換部品の寿命にその誘導灯のバッテリーについては、本商標権者の検査に基づく「JIL適合」のマークが付されることが記載されている(同号証3枚目)。
ク その他、前記した非常灯(非常用照明器具)に係るJILマーク付きの適合マークが記載されてもいる(同号証の6枚目)。また、乙第12号証の「照明器具リニューアルのおすすめ」2009年8月発行のp.11とp.15に乙第11号証と同様な記載がある。
(2)上記したように、本商標権者の証明した商品である非常用照明器具に付された「JILマーク付きの適合」や、埋込み形照明器具に付された「JILマーク付きのSマーク」は、ほんの一部を紹介した乙第13号ないし第16号証において、各メーカーにおいてそれぞれのマークが表示された(付された)ものを販売している。
なお、本商標権者が、商標が適合したものとする証明票においては、全国的に多数設置されているものが見受けられる。
そして、本件不使用取消審判より前に、被請求人が本件登録を証明標として使用していたことで、被請求人である本商標権者の使用が認められた事件がある(乙第17号証)。
(3)まとめ
上記各乙号証からも明らかなように、被請求人は非常用照明器具や埋込み形照明器具等に対して「JIL」マークを本件取消審判の請求登録前から日本国内で使用していたものであるから、請求人の主張する「使用の事実がない」との主張は、当を得ていない。
したがって、本件商標の登録を取り消すべきものとの理由はない。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び使用商標について証拠(以下の括弧内に掲記するもの)によると、次の事実を認めることができる。
(1)被請求人は、昭和17年に創立され、昭和50年に法人設立認可を受けた照明器具の製造・販売を行う我が国の主要な事業者及び団体を会員として構成する社団法人であって、照明器具及びその支持・制御装置に関する調査及び研究、情報の収集及び提供、普及及び啓発、規格等の立案及び推進等を行うことにより、照明器具工業及び関連産業の健全な発展を図り、もって産業の振興に資するとともに、国民生活における安全性の確保と生活文化の向上に寄与することを目的とし、エネルギーの有効利用の促進等の活動を行うとともに、特別事業として、非常用照明器具自主評定事業や埋込み形照明器具の自主認証等を行っている(乙1、2、20、21)。
(2)上記(1)のうち、非常用照明器具自主評定事業とは、建築基準法で規定されている非常用照明器具の照明設備のうち、非常用照明器具につき、非常用照明器具自主評定委員会を組織して、基準の制定、事業者登録、型式評定、事業者立入調査、買上試験の実施等を行うものであって、被請求人は、非常用照明器具の自主評定を受けようとする製造事業者からの申請を受けると、自主評定委員会において、申請書類の審査及び実地調査を経た上、登録可とされると事業者登録を行い、さらに、当該照明器具が被請求人の非常用照明器具についての規格である「非常用照明器具技術基準(JIL5501)」(以下「JIL5501」という。)に適合しているかどうかを審議し、評定可となった場合には、当該製造事業者に対し、評定証を交付するとともに、別掲1に示すとおり、当該照明器具がJIL5501に適合していることを証する標章である使用商標1を当該器具に貼付することを許可し、登録事業者は、使用商標1を作成し、その使用料を被請求人に支払った上で、当該器具に使用商標1を貼付して販売する(乙2、3、4、50、52、55、56、60、62、63)。
(3)上記(1)のうち、埋込み形照明器具の自主認証とは、S形ダウンライトを含む埋込み形照明器具につき、埋込み形照明器具管理委員会を組織して、基準の制定、事業者登録、型式評定、工場立入調査、製品登録、買上試験等の業務を行うものであって、被請求人は、埋込み形照明器具の製品登録を受けようとする製造事業者からの申請を受けると、埋込み形照明器具管理委員会において、申請書類の審査及び実地調査を経た上、登録可とされると事業者登録を行い、さらに、当該照明器具が被請求人の埋込み形照明器具についての規格である「埋込み形照明器具(JIL5002)」(以下「JIL5002」という。)に適合しているかどうかを審議し、登録可となった場合には、当該製造事業者に対し、別掲2ないし4に示すとおり、製品登録証を交付するとともに、当該照明器具がJIL5002に適合していることを証する標章である使用商標2ないし4(なお、使用商標2ないし4の区別は、施工方法の違いによる。)を当該器具に貼付することを許可し、登録事業者は、使用商標2ないし4を作成し、その使用料を被請求人に支払った上で、当該器具に使用商標2ないし4のいずれかを貼付して販売する(乙2、5、6、51、53、57、61、64、65)。
(4)我が国の主要な照明器具製造販売会社は、被請求人の会員となっており(乙20)、被請求人の非常用照明器具自主評定又は埋込み形照明器具登録を受け、上記(2)又は(3)の手続によって、その製造販売するこれらの照明器具に使用商標1ないし4(以下「使用商標」という。)のいずれかを貼付している。
例えば、被請求人の会員である東芝ライテック株式会社は、平成20年製造の非常用照明器具に使用商標1を(乙14)、同21年製造の埋込み形照明器具に使用商標2(乙16)をそれぞれ貼付し、そのころ販売していた。被請求人の会員である岩崎電気株式会社は、平成13年8月から同22年12月まで、製造販売する非常用照明器具に使用商標1を貼付してきた(乙72)。被請求人の会員であるオーデリック株式会社は、昭和62年から平成22年12月まで、製造販売する埋込み形照明器具に使用商標2を貼付してきた(乙73)。被請求人の会員である三菱電機照明株式会社は、昭和62年11月から平成22年12月まで製造販売する埋込み形照明器具に使用商標3を、同13年8月から同22年12月まで製造販売する非常用照明器具に使用商標1を貼付してきた(乙71)。
2 使用商標の構成中の「JIL」部分について
(1)上記1のとおり、使用商標1は被請求人の規格であるJIL5501に適合している旨の評定を受けた非常用照明器具等に、使用商標2ないし4は被請求人の規格であるJIL5002に適合している製品登録を受けた埋込み形照明器具に、それぞれ貼付されるものである。
(2)そして、使用商標1についてみると、上部から順に、二重円間に「(社)日本照明器具工業会」と、二重円の一番内側に「適合」と、二重円間に「JIL5501」との記載をするものである。
そして、これらのうちの上段の「(社)日本照明器具工業会」は、照明器具の製造・販売を行う我が国の主要な事業者及び団体を会員として構成する社団法人であって、非常用照明器具自主評定事業や埋込み形照明器具の自主認証等を行っている被請求人の名称を示すものと、また、中段の「適合」とは照明器具の何らかの規格等に適合したことを示すものとみることができるところ、下段の「JIL5501」は、被請求人の規格であるJIL5501に係る記載であるが、一般的には必ずしもその意味が明らかなものとみることができない。また、これらの上、中、下段の各記載は明瞭に分けられており、かつ、それぞれが関連性を有するものと解することもできないから、それぞれが独立したものとしてもみることができる。その上で、下段の「JIL5501」について改めてみると、何らかの記号であると推測されるとしても、上記のとおりの被請求人の規格であるJIL5501に係る記載であると一見して認識されるものではなく、必ずしも特定の観念を生ずるものではないところ、これは、欧文字の「JIL」と算用数字である「5501」とからなるものであるから、これを一体のものとしてみるほかに、「JIL」と「5501」とを区切ってみることが可能であって、「JIL」との独立した表示も抽出して認識されるものということができる。
(3)また、使用商標2ないし4についてみると、いずれも、上部から順に、二重円間に「(社)日本照明器具工業会」と、二重円の一番内側に太く「S」と、二重円間に「JIL5002」との記載をし、これらに加え、外側円の右横に太く、使用商標2は「B」を、使用商標3は「GI」を、使用商標4は「G」を記載するものである。
そして、これらのうちの上段の「(社)日本照明器具工業会」は、被請求人の名称を示すものとみることができるが、中段の「S」との欧文字からは特段の意味を読み取ることができない。下段の「JIL5002」は、被請求人の規格であるJIL5002に係る記載であるが、一般的には必ずしもその意味が明らかなものとみることができない。外側円の右横の「B」、「GI」又は「G」との欧文字からも特段の意味を読み取ることができない。また、これらの上、中、下段及び外側円右横の各記載は明瞭に分けられており、かつ、それぞれが関連性を有するものと解することもできないから、それぞれが独立したものとしてもみることができる。その上で、下段の「JIL5002」について改めてみると、何らかの記号であると推測されるとしても、上記のとおりの被請求人の規格であるJIL5002に係る記載であると一見して認識されるものではなく、必ずしも特定の観念を生ずるものではないところ、これは、欧文字の「JIL」と算用数字である「5002」とからなるものであるから、これを一体のものとしてみるほかに、「JIL」と「5002」とを区切ってみることが可能であって、「JIL」との独立した表示も抽出して認識されるものということができる。
(4)そして、以上のように使用商標の構成中から独立した表示として抽出される「JIL」の欧文字についてみると、それは、本件商標の指定商品である「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」との関係で何らかの性状等を示すものと認めることもできないから、同部分は、本件商標との関係において、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものということができる。
また、仮に、取引者・需要者において、「JIL5501」や「JIL5002」が照明器具の認証に係る標章であることを知っていたとしても、「JIL」部分が照明器具の認証の部類に係るものであることを、これに続く算用数字部分が具体的な認証の種類を表すものと理解し得るものであって、「JIL」部分も、独立して自他商品識別標識としての機能をも有しているものということができる。
3 本件商標の使用について
(1)前記1によると、使用商標は、被請求人による評定又は認証がされた被請求人の規格に適合する照明器具であることを証する標章であって、その上段に被請求人の名称が記載されていることが示すように、使用商標によってその旨を証している者は被請求人ということができる。
もっとも、前記1のとおり、実際に使用商標を作成し、当該器具に同商標を貼付するのは各登録事業者であるが、これは、被請求人の了承の下、被請求人に使用料を支払った上で、被請求人の名称で行っているものであるから、被請求人が、各登録事業者を介して、照明器具に使用商標を貼付して使用しているというべきものであって、使用商標の構成中に存在する本件商標についても、被請求人が、各登録事業者を介して、照明器具に本件商標を貼付して使用しているものであるということができる。
そして、上記1(4)のとおり、少なくとも、被請求人は、平成20年及び同21年において被請求人の会員である東芝ライテック株式会社を介して、同13年8月から同22年12月において被請求人の会員である岩崎電気株式会社を介して、昭和62年から平成22年12月まで被請求人の会員であるオーデリック株式会社を介して、昭和62年11月から平成22年12月まで被請求人の会員である三菱電機照明株式会社を介して、照明器具に使用商標を貼付することにより、本件商標の構成である「JIL」のみでそのまま使用されていないものであったものの、本件商標の指定商品に本件商標を付していたということができるから、これらは本件商標の使用(商標法第2条第3項第1号)に該当するものであって、商標権者が、本件に係る審判の請求の登録(平成22年3月5日)前3年以内に、本件商標を使用していたものと認めることができる。
(2)また、前記1によると、被請求人は、製造事業者からの申請に基づき、被請求人の規格であるJIL5501又はJIL5002に基づいて審議し、評定可又は登録可となった場合に、製造事業者から使用料の支払を受けた上で、使用商標を照明器具に貼付して使用することを認めることにより、使用商標の構成中に存在する被請求人が商標権を有する本件商標についても、照明器具に貼付して使用させているものであって、このようにして使用許可を得た製造事業者は、本件商標の使用についての通常使用権者ということができる。
そして、上記1(4)のとおり、少なくとも、被請求人の会員である東芝ライテック株式会社は平成20年及び同21年において、被請求人の会員である岩崎電気株式会社は同13年8月から同22年12月まで、被請求人の会員であるオーデリック株式会社は昭和62年から平成22年12月まで、被請求人の会員である三菱電機照明株式会社は昭和62年11月から平成22年12月まで、照明器具に使用商標を貼付することにより、本件商標の構成である「JIL」のみでそのまま使用されていないものであったものの、本件商標の指定商品に本件商標を付していたということができるから、これらは本件商標の使用(商標法第2条第3項第1号)に該当するものであって、通常使用権者が、本件に係る審判の請求の登録(平成22年3月5日)前3年以内に、本件商標を使用していたものと認めることができる。
4 結語
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者及び通常使用権者が本件請求に係る指定商品中「電気機械器具」の範疇に属する「非常用照明器具」及び「埋込み形照明器具」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 使用商標1(乙3、50)


2 使用商標2(乙5、51)


3 使用商標3(乙5、51)


4 使用商標4(乙5、51)


審理終結日 2011-05-27 
結審通知日 2010-09-30 
審決日 2010-10-14 
出願番号 商願昭42-68128 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (111)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
鈴木 修
登録日 1970-08-13 
登録番号 商標登録第868916号(T868916) 
商標の称呼 ジェイアイエル、ジル 
代理人 藤田 雅彦 
代理人 蔵合 正博 
代理人 香原 修也 
代理人 酒井 一 

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