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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010680005 審決 商標
無効200135265 審決 商標
無効200135424 審決 商標
無効2012890045 審決 商標
無効2012890002 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X3742
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X3742
管理番号 1241371 
審判番号 無効2010-890099 
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-11-24 
確定日 2011-07-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5294072号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5294072号の指定役務中,第42類「電子計算機用プログラムの提供」についての登録を無効とする。 その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。 審判費用は,その2分の1を請求人の負担とし,2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5294072号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲に示す構成からなり,第37類「建設設備の運転・点検・整備,建設設備の運転状況の遠隔監視,建築設備の運転状況の遠隔監視に関する情報の提供,ボイラー・冷暖房・配電設備等の建築物附帯設備の運転及び点検,建物の電源設備・空調設備・衛生設備・防犯設備・防災設備の運転・管理・保守」及び第42類「省エネルギーに関するコンサルティング,コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として,平成20年3月21日に登録出願された商願2008-21254に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として,同21年8月20日に登録出願,同21年12月10日に登録査定,同22年1月15日に設定登録されたものである。
そして,指定役務については,登録査定後である同23年1月21日を受付日とし,第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)(但し,エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)を除く。),電子計算機の貸与(但し,エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与を除く。),電子計算機用プログラムの提供(但し,エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供を除く。)について放棄による一部抹消登録がされている。

第2 引用商標
請求人の引用する登録第2210856号商標(以下「引用商標」という。)は,「WATCHING」の欧文字からなり,昭和62年4月16日に登録出願,第11類「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品として,平成2年2月23日に設定登録され,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ,さらに,同23年3月16日に,第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直 流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」,第8類「電気かみそり及び電気バリカン」,第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」,第10類「家庭用電気マッサージ器」,第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」,第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」, 第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラシ」とする指定商品の書換登録がなされているものである。

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第30号証を提出した。
2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について
ア 商標の類否
本件商標は,前記のとおり「e」と「watching」の文字とを「-」(ハイフン)で連結した構成からなるものである。
そして,「e」の文字の大きさは,その高さ・幅において後半の「watching」の文字よりやや大きい1.5倍程度であり,また,「e」と「watching」は同一色で合成度の浅い複合語を連結する意味を有する「-」で結ばれている。
一方,「e」の文字は,「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を含む本件指定役務との関係で「electric(電機の)」の略語,「電子」あるいは「インターネットを介した」といった意味合いで理解されると解されるものであり,「e」の文字部分が電気やインターネットを利用すること,あるいは環境に配慮していることを示す略語としてハイフンに続く語に対し接頭語のように使用されていることに照らすと,「e」の文字部分から特定の役務の出所が識別できるとはいえない。
そうすると,「e」の部分からは,出所識別標識としての観念は生じないというべきである。
また,本件商標は,「e」と「watching」を「-」(ハイフン)で連結してなるところ,複数の言葉の連結又は1語内の形態素の区切りの明確化というハイフンの役割自体からして,本件商標は,「e」と「watching」の各文字部分とを分離して看取することは可能と考えられる上,「e-watching」の語が取引社会において一連一体の語句として特定の意味合いをもって一般に親しまれていると認めることもできないから,「e」と「watching」がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているということができない。
さらに,「watching」は,「e」の8倍の長さがあるのみならず,英語で「観察,監視」の意味を有する語であって日本においても比較的親しまれた語であり,本件商標は,「watching」だけによって簡略に称呼,観念されることもあるということができる。
そうとすれば,本件商標は,「e」と「watching」の構成部分の結合度が浅く,分離して観察することが取引上不自然でないというのが相当であるから,本件商標のうち「watching」の文字部分を分離して,本件商標と引用商標との類否判断をすることは許されるというべきである。
そこで,本件商標と引用商標を全体観察をもって対比観察した場合,外観は相違するということができるが,本件商標の「watching」の部分は,引用商標と文字の綴りを同一とし,取引者,需要者の注意を引く部分であるから近似した印象を与えるものである。
また,本件商標と引用商標とは「観察,監視」の観念において共通する。
さらに,本件商標からは,全体として「e-watching」の文字に相応して「イーウォッチング」の称呼が生ずるとともに,「watching」の文字部分より「ウォッチング」の称呼も生ずるといえる。
そうとすれば,本件商標と引用商標とは「ウォッチング」の称呼を共通にするものであるということができる。
そうしてみると,本件商標と引用商標は,外観において近似した印象を与えるものであり,「観察,監視」の観念及び「ウォッチング」の称呼を共通にする類似の商標というべきものである(甲6ないし8)。
イ 本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定役務中,第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」は,引用商標の指定商品中,「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」に包含される「電子計算機,電子計算機用プログラム」と類似の役務である。
(ア)電子計算機を製造する会社及びその子会社,関連会社は,用途に応じた性能の電子計算機を製造するのみならず,その用途に応じた電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守をも行うことが多いところである(甲9ないし甲20)。
そして,電子計算機及び電子計算機用プログラムの設計・作成は,高額になることが多く,かつ,その更新,機能の追加・拡張・改修にも高額の費用を要することが多いことから,自社専用の電子計算機及び電子計算機用プログラムの導入は負担が大きいため,電子計算機については,電子計算機を製造する会社及びその子会社,関連会社によりレンタル又はリース等の電子計算機の貸与が多くなされているところである(甲21,甲22)。
また,電子計算機用プログラムについても,電子計算機を製造する会社及びその子会社,関連会社によりASP等により,電子計算機と共に電子計算機用プログラムの提供が多くなされているところである(甲9ないし甲20)。
(イ)「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」とは,電子計算機(コンピュータ(サーバ))の利用者自身で電子計算機(コンピュータ(サーバ))の運営・管理をしなくてもいいように,有料又は無料で電子計算機(コンピュータ(サーバ))の記憶スペースや情報処理機能などを利用させるサービスをいうもので,利用者は,電子計算機(コンピュータ(サーバ))とそれに入力されている電子計算機用プログラムを利用するものであるから,その役務は,「電子計算機の貸与及び電子計算機用プログラムの提供」に相当するものである。
(ウ)電子計算機を製造する会社及びその子会社,関連会社は,一般の需要者向けの電子計算機を製造するのみならず,各分野の業種(システム)に合わせた性能の電子計算機をも製造しているところであり,かつ,それぞれの電子計算機の用途等に適合する電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守をも行っているといえるものである。
(エ)そうしてみると,本件商標の指定役務中の第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」とく。)」は,引用商標の指定商品中の「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)」に包含される「電子計算機,電子計算機用プログラム」とは,「(a)商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われるのが一般的であり,(b)商品と役務の用途が一致し,(c)商品の販売者(販売場所)と役務の提供者(提供場所)が一致することが多く,(d)需要者の範囲が一致する」ことから見ても,両者は,類似の役務(商品)というべきものである。
(オ)本件商標の指定役務が引用商標の指定商品と類似することは,「商品・役務審査基準」の第9類「電子応用機械器具及びその部品」「5 電子計算機用プログラム」の備考において「電子計算機用プログラム」は,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に類似すると定め,第42類の「電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」の備考において「電子計算機用プログラムの提供」は,第9類の「電子計算機用プログラム」に類似すると定めている。
ウ 以上のとおり,本件商標は,引用商標と商標において類似し,本件商標の指定役務は,引用商標の指定商品とは類似の役務であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当し,これに違反して登録されたというべきものである。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
請求人は,引用商標をその指定商品中の「データ管理システム」について使用している(甲24ないし甲28)。
この「データ管理システム」とは,広域化する各種施設(例えば「上下水道施設」)のデータ管理・簡易監視をするもので,「電子計算機」と「電子計算機用プログラム」から成り立っているものである。
本件商標の指定役務中の第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」は,引用商標の指定商品と類似の役務である。
そうしてみると,本件商標の指定役務と類似する「電子計算機,電子計算機用プログラム」について使用されている引用商標と類似する本件商標を,引用商標の指定商品と類似する本件商標の指定役務中の第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」について使用するときは,該役務が恰も請求人の業務に係る役務であるかのごとく混同を生じるおそれがあるといわなければならない。
さらに,被請求人の提供する「トータルエネルギーソリューション e-watching」は,様々な業種に対応するエネルギー監視システムであり,そのシステムでは「ガス,水道」に係る遠隔監視をも行っている(甲20,甲29,甲30)ところであり,「水道」に係る遠隔監視のプログラム及び上下水道関連業種のエネルギー監視をした場合,請求人の「上下水道施設」)のデータ管理・簡易監視をするプログラムと同様の用途・目的・効果を訴求することとなることからみても,本件商標をその指定役務中の第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」について使用するときは,該役務が恰も請求人の業務に係る役務であるかのごとく混同を生じるおそれが,なおさら高いといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当し,これに違反するにもかかわらず登録されたというべきものである。
(3)結論
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項第1号に基づき無効とされるべきものである。
よって,請求の趣旨のとおりの審決を求める。

第4 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,その答弁の理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第55号証を提出した。
2 答弁の理由
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標の非類似
請求人は,本件商標のうち「watching」の部分を全体から分離して,本件商標と引用商標との類否判断をすることが許されると主張するが,本件商標を分離することは認められず,請求人の主張は誤りである。
(ア)結合商標類否判断手法について
本件商標と引用商標は,「watching」なる言葉が共通の構成要素である。しかし,商標が類似するか否かは,単に「言葉」同士が類似であるかを問題とするものではなく,出所識別標識としての二つの標章が類似するか否かが問題となるべきものである。本件は,結合商標(A+B)と,その一構成要素のみからなる商標(B)が類似するか問題となる事案であるが,結合商標(A+B)の「B」のみを全体から分離し,他商標(B)と類似すると認定できるのは,当該部分が出所識別標識として機能するがゆえに商標全体も「B」と略称されることがある場合である。とすると,「B」部分が出所識別標識として機能できない場合は,当然に当該結合商標は「B」と略称されず,結合商標(A+B)から「B」を分離することはできない。
この点,複数の構成部分を組み合わせた結合商標類否判断における一部抽出の可否について,最高裁も「法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を綜合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察されるべきものであり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合やそれ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである。」(乙2)と判示している。
上記判決が結合商標(A+B)から「B」を抽出して類否判断できる例外的な場合として,「B」が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合を挙げていることからすれば,「B」が何ら出所識別機能を果たし得ない場合に「B」を抽出できないことは当然である。
結局,結合商標(A+B)と,その一部構成要素からなる商標(B)との類否判断にあっては,「B」に出所識別力があって看る者に強い印象を与えるがゆえに結合商標が「B」と略称されるような例外的場合を除き結合商標の一要素「B」を分離観察することは許されないことになる。
そこで,本件では請求人の主張のように分離観察が許されるか「watching」部分の評価がまず問題となる。
(イ)「watching」部分の評価
a 「watching」の意味,観念
株式会社研究社発行「ルミナス英和辞典」によれば,「watch」は,「見守る,注意して見る,見張る,監視する」などの意味を有する語であり(乙3),その動名詞形ないし現在分詞形である「watching」もまた上記意味を有するものである。また,「watching」の片仮名表記である「ウォッチング」の語は,集英社発行イミダス編集部編imidas現代人のカタカナ語欧文略語辞典によると,「【watching】観察,見張り,監視」と紹介されている(乙4)。このように,「watching」は,「監視,観察」などの意味を有する語である。
b 「watching」の言葉としての一般性
「watch」という英単語は,我国の義務教育の初歩段階で教えられる基本的英単語であり(乙5),平均的教育を受けた日本人には比較的親しまれた語といえる。「watching」を看た平均的教育レベルの需要者,取引者が直ちに「監視,観察」という意味,観念を順に思い浮かべることは明白である。
c 「watching」と指定役務との関係
本件商標の指定役務中,請求人が引用商標の指定商品と類似であると主張する部分は,「エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与,エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供」である。
そうすると,一般人が容易に「監視,観察」の意味を認識できる「watching」の語が上記役務に使用されたときは,「watching」部分は,当該役務の内容,質等を記述する部分に過ぎず,それのみでは自他役務識別力を発揮できない部分といわざるを得ない。実際の取引における「watching」の使用例をみても,監視装置・監視サービスなどの分野において,商品・役務の用途・内容・質等を記述するものとして使われている例が多数ある(乙6ないし乙15)。
このように「watching」の文字部分は,本件商標の指定役務の内容,質等を普通に記述するのみであり出所識別標識として機能し得ない。
(ウ)「e-」部分の評価
a 「e-」のデザイン化
本件商標の「e-」は,一見して明らかなようにデザイン化された図形である。この「e-」は,一般的なアルファベットのフォントではなく,被請求人がブランドコンセプト企画の際に依頼したデザイナーが「エネルギーの流れを一筆書きのようにする意図で表現」したもので(乙16),右斜め上に向けてやや傾けて流動的に書かれた肉太の筆致による特徴あるデザインであって,これを見る者に,これが何らかの標識であるとの認識を十分に感じさせるものである。このような手法はアルファベット一文字を商標化するためしばしば採用されるものであって,特許庁の登録例にもデザイン化されたアルファベット一文字の登録例が多数存在する(乙17ないし乙19)。
本件商標の「e-」もそれらと同様に出所識別標識として十分に機能しうるものである。本件は単なるアルファベット一文字は出所識別力がないとの基準が当てはまる事案ではない。
b 「e-」の観念について
本件商標は,「e-」が「観察,監視」を意味する「watching」と結合していること,又,本件商標の指定役務中,請求人が引用商標の指定商品と類似であると主張する部分が「エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与,エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供」のようにITテクノロジーを利用した監視役務であることを指摘したい。
「e-」又は「e」は,指定役務との関係上,「エネルギーに関する」,「エコロジーに関する」若しくは「省エネルギーのための」等の意味,観念を暗示させるものである。また,十分にオリジナル性を持ってデザイン化されたものであり,このような観念があるから,本件指定役務に使用された場合は,当該指定役務の質を暗示させる識別標識として十分機能するものといえる。
c 結合語における「e」若しくはアルファベット一文字の機能,役割
近年,アルファベット一文字と既存語との結合によるネーミング手法が多用されている。このように二つの語を組み合わせて商標を考案する方法は「足し算ネーミング法」と呼ばれており(乙20),市場で多数使用されている。二つの言葉をつないだネーミングは,その組合せ方によって意味を拡大,増幅し,強いイメージを生み出す効果を発揮するとされており(乙20),本件商標において「e-」と「watching」の組合せにより,インターネット等のIT技術を駆使したエネルギー使用量の監視という最先端のイメージが生まれるのは,まさに「足し算ネーミング」の効果である。
特に,当該アルファベットが指定役務との関係上特定の観念を生じる場合は,この造語機能が強く発揮されることとなる。この種の事例として「E-Learning」や「E-Commerce」があるがこれらは「e」が既存語の「learning」や「commerce」に付加されることで,新たなビジネス概念を創出し,新たな言葉が創出された代表例である。
認知心理学によれば,複数の要素を一つのまとまりとして見ようとする傾向を「群化の法則」と呼んでおり,その要因の一つとして,過去にしばしば観察したものはまとまりとして知覚されやすいという経験の要因が挙げられているが(乙21),アルファベット一文字と既存の言葉を組み合わせた結合語が多用される今日では,この種の結合語を見た需要者,取引者はそれを新たな,且つ一連一体の言葉と理解する傾向が強い。
特許庁においても「e-○○○」の商標としての登録例は,上記の限定した指定役務の分野である類似群コード42X11を検索キーワードとして検索しても,438件も存在しており(乙22),アルファベットと既存語からなる結合語が識別標識として使用されているトレンドが分かる。また,類似群コード42X11の分野において「e-○○○」と「○○○」とでは観念が異なるから非類似と認定され,並存登録された例も多数存在する(乙23ないし乙50)。
本件商標においても,全体として一つの商標と認識されるため,「e-」が捨象され本件商標が「watching」と略称されることはない。
イ 指定役務について
指定役務中,請求人が引用商標の指定商品と類似であると主張する部分は,「エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与,エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供」である。請求人は,これらの役務が,引用商標の指定商品中「電子計算機,電子計算機用プログラム」と類似すると主張するが,その主張は誤りである。
(ア)「エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与」と「電子計算機」の類否について
商品の類否について,最高裁は「それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある場合には,・・・類似の商品にあたる」と判示し(乙51),出所混同のおそれの有無を基準として示している。
これを受けて,商標審査基準は「商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか」を商品と役務の類否判断要素の一つとして挙げている。
これらの判決,審査基準に「同一営業主の・・・」,「同一事業者によって・・・」とあるように,ここで基準とされる出所混同のおそれとはいわゆる狭義の混同であって,「同一事業主によって行われているのが一般的であるか」が検討されなければならない。
しかるに,請求人は,「電子計算機については,電子計算機を製造する会社及びその子会社,関連会社によりレンタル又はリース等の電子計算機の貸与が多くなされているところである」と述べ,同一事業者のみならず子会社,関連会社まで含むいわゆる広義の混同を主張するかのようである。しかし,本件で検討されるべきは,あくまでも「同一事業主によって行われているのが一般的であるか」である。
この点,実際の取引の実情をみると,コンピュータのレンタル・リース市場においてトップクラスの地位にある日本電子計算機株式会社は,国内主要メーカー(富士通・NEC・日立・東芝・OKI・三菱電機)の共同出資によって,コンピュータ専門のレンタル・リース会社として設立されており,1961年の設立以来,コンピュータのレンタル・リースに特化して事業を行っている(乙52)。このようにコンピュータのレンタル・リース事業が製造業者とは独立した会社によって行われている理由の一つは,利用者の多種多様はニーズに応えるため,できるだけ多くのメーカーの多くの機種を幅広く揃えておく必要があるからである。例えば,コンピュータのレンタル事業を行っている横河レンタ・リース株式会社のレンタル商品メーカー一覧に掲載されたメーカー数は100社を下らない(乙53)。
このように,コンピュータのレンタル・リース事業は,特定メーカーから独立して行うことが有利であることから,同一事業主によって行われているのが一般的とはいえない。したがって,「エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与」と「電子計算機」とは,同一の営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認されるおそれはなく,互いに非類似である。
(イ)「エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供」と「電子計算機用プログラム」の非類似について
請求人は「電子計算機用プログラムについても,電子計算機を製造する会社及びその子会社,関連会社によりASP等により,電子計算機と共に電子計算機用プログラムの提供が多くなされているところである」と述べ,同一事業主のみならず子会社,関連会社まで含むいわゆる広義の混同を主張するかのようであるが,本件で検討されるべきは「同一事業主によって行われているのが一般的であるか」であることは,すでに述べたとおりである。
この点,取引の実情をみると,「電子計算機用プログラムの提供」は,利用者が事業者側のサーバーで管理されるプログラムをネットワーク経由で利用し,プログラムのレンタル使用料を支払う,いわゆるASPサービスの形で提供されるのが通例である(乙54)。かかる役務を提供するためには,事業者はプログラム開発のほかサーバーの保守・管理,情報漏えい防止のための暗号化等のITスキル・ノウハウを必要とする。また,かかる役務は,プログラムの購入・更新・変更等にかかる高額のコストを回避して,低額の費用で利用できる点にメリットがあり,従来型の「電子計算機用プログラム」をパッケージソフトとして製造・販売するビジネスモデルとは異なるものであるから,これらの商品と役務が同一事業者によって製造・販売及び提供されるのが一般的とまではいえないし,取引の形態・流通経路等も異なる。
したがって,「エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供」と「電子計算機用プログラム」とは同一の営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認されるおそれはなく,互いに非類似である。
(ウ)「エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」と「電子計算機,電子計算機用プログラム」の非類似について
「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」は,請求人も述べるように,サーバーの記憶スペースを利用させるサービスであるところ,OCN,GMO,KDDI,NTTといったインターネットサービスプロバイダ又は通信事業者が自社設備を用いて提供するのが通例で(乙55),「電子計算機,電子計算機用プログラム」の製造・販売業者との事業者の同一性はなく,用途・目的,取引の形態・流通経路等も異なるのが通例である。
したがって,「エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」と「電子計算機,電子計算機用プログラム」とは同一の営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認されるおそれはなく,互いに非類似である。
ウ 以上述べたように,本件商標は,一連一体として扱われる結合商標であって,引用商標とは「称呼」「観念」「外観」が異なり,全体として非類似の商標であるし,本件商標の指定役務は,引用商標の指定商品と非類似であるから,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
商標法第4条第1項第15号は,他人の業務に係る商品又は役務と混同のおそれがある商標を規定するところ,周知・著名商標を一部に含む場合にその保護を図ることを想定したものである。商標審査基準においても,その他人の標章の周知度,その他人標章が創造標章であるか,その他人の標章がハウスマークであるか,といった要素を考慮している。
しかしながら,請求人が主張する引用商標の使用事実からは,周知性が認められる事情は見当たらない。また,「watching」の語は,既存語であって創造標章とはいえないし,被請求人のハウスマークでもないことはいうまでもない。
また,請求人が引用商標を使用していると主張する商品は,上下水道設備のデータ管理用・簡易監視用プログラムであって,その用途は上下水道設備のデータ管理・簡易監視による当該設備の維持・管理である。一方,本件商標の指定役務中,請求人が出所混同のおそれありと主張する役務は,「エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与,エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供」であって,その目的はエネルギー使用量の監視による省エネルギーの実現である。したがって,請求人商品と被請求人役務とは,それぞれ異なる用途・目的を有するものであって,関連性は認められない。また,現実の取引上,被請求人が本件商標をその指定役務に使用した結果,請求人の業務に係る商品と混同が生じたという事実はなく,混同のおそれは全く認められない。
したがって,本件商標は,他人の業務に係る商品又は役務と混同のおそれがある商標ということはできず,商標法第4条第1項第15号には該当しない。
(3)結語
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号にも該当しない。したがって,審判請求人の請求は根拠がなく,請求不成立とされるべきものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は,別掲のとおり,「e」の欧文字一文字と「watching」の欧文字8文字を「-」(ハイフン)で結合した構成からなるものであるところ,その構成中の「e」の文字は,「英語アルファベットの第5字,文字eが表す音,electric(電機の)の略語」等(新英和大辞典),「アルファベットの五番目の文字,電気素量を表す記号,電子を表す記号,エネルギーを表す記号」等(広辞苑第六版)といった意味を有する語であり,「電子の,インターネットの」という意味も有するから(現代用語の基礎知識2010年版),「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を含む本件役務との関係で,「electric(電気の)」の略語,「電子」あるいは「インターネットを介した」といった意味合いで理解されると解される。
そして,インターネットを介した「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」や「電子計算機用プログラムの提供」が,一般に行われている上,「e」が電気やインターネットを利用することを示す略語としてハイフンに続く語に対し接頭語のように使用されていることに照らすと,「e」の文字部分からは出所識別機能として観念は生じないというべきである。
また,本件商標は,前記のとおり,「e」と「watching」を「-」(ハイフン)で結合してなるところ,「-」(ハイフン)は,言語表記の補助符号であり,英文などで合成度の浅い複合語の連結,1語が行末までに収まりきれず2行にまたがる時のつなぎ,又は,1語内の形態素の区切りを明確にするのに使われるものである(広辞苑第六版)。そうすると,本件商標は,複数の言葉の連結又は1語内の形態素の区切りの明確化というハイフンのなす役割自体からして,「e」と「watching」を分離して看取することは可能であると考えられる上,「e-watching」の語が取引社会において一連一体の語句として特定の意味合いをもって一般に親しまれていると認めることもできないから,本件商標の構成部分である「e」と「watching」とがそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものということはできない。
さらに,「watching」の文字部分は,8文字からなっていて,1文字である「e」の8倍の長さがあるのみならず,英語で「観察,監視」(ポケットプログレッシブ英和辞典,ランダムハウス英和大辞典)の意味を有する語であって,日本においても比較的親しまれた語であるから,本件商標は,その一部である「watching」の文字部分だけによって簡略に称呼,観念されることもあるということができる。
そうすると,本件商標は,複数の構成部分の結合度が浅くそれを分離して観察することが取引上不自然でないと認めるのが相当であるから,その構成中の「watching」の文字部分を分離して,本件商標と引用商標との類否判断することは許されると解される。
したがって,本件商標は,「watching」の文字部分が独立して自他役務の識別力を有するものであって,その構成文字に相応して「ウォッチング」の称呼及び「観察,監視」の観念を生ずるものである。
イ 引用商標
引用商標は,「WATCHING」の欧文字を横書きした構成からなるところ,該語からは,本件商標の構成中の「watching」と同様に「ウォッチング」の称呼及び「観察,監視」の観念を生ずるものである。
ウ 両者の対比
本件商標と引用商標の外観を全体観察をもって対比観察した場合,「e」の文字と「-」(ハイフン)の有無により,外観上相違するものであるが,本件商標の「watching」の部分と引用商標とは,文字の綴りを同じくし,また,本件商標の「watching」の部分は,取引者,需要者の注意を引く部分であるから,近似した印象を与えるものであるといえる。
また,本件商標は,「watching」の部分から「観察,監視」の観念を看取し得るのに対し,引用商標も「観察,監視」の観念を生ずるから,本件商標と引用商標とは,「観察,監視」の観念を共通するものである。
さらに,本件商標からは,全体として「イーウォッチング」の称呼を生ずると共に,「watching」の部分から「ウォッチング」の称呼を生ずるものであり,引用商標もその構成文字から「ウォッチング」の称呼を生ずるものであるから,本件商標と引用商標とは,「ウォッチング」の称呼を共通するものである。
したがって,本件商標と引用商標は,外観において近似した印象を与えるものであり,「観察,監視」の観念及び「ウォッチング」の称呼を共通する類似の商標である。
(2)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品の類否について
請求人は,本件商標の指定役務中の第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」が引用商標の指定商品中の第9類「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」に含まれる「電子計算機,電子計算機用プログラム」と類似すると主張するので,当該役務と商品の類否について検討する。
商標法は第2条第6項において,商品と役務との間に類似関係があることを規定しているところ,商品と役務の類否を判断するに際しては,例えば,(a)当該商品の製造・販売と当該役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか,(b)当該商品と当該役務の用途が一致するかどうか,(c)当該商品の販売場所と当該役務の提供場所が一致するかどうか,(d)当該商品と役務の需要者の範囲が一致するかどうかを総合的に考慮して具体的に判断すべきものと解するのが相当である。
ア 「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」と「電子計算機,電子計算機用プログラム」の類否について
「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」は,サーバーの記憶スペースを利用させるサービスであるところ,これはインターネットサービスプロバイダ又は通信事業者が自社設備を用いて提供するのが通例であり(乙54及び乙55),当該役務を提供する者と「電子計算機,電子計算機用プログラム」の製造・販売業者との事業者の同一性はなく,用途・目的,取引の形態等も異なるのが一般的である。
そうすると,「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト)」は,「電子計算機,電子計算機用プログラム」と同一の営業主の提供に係る役務であると誤認されるおそれはなく,両者は類似するものとはいえない。
イ 「電子計算機の貸与」と「電子計算機」の類否について
「電子計算機の貸与」は,その貸与に係る物品が「電子計算機」であることから,商品「電子計算機」とその利用関係において共通するものである。しかし,物品の貸与と商品の販売とは,取引の形態を異にするものであり,また,物品の貸与を業とする者は,当該物品(商品)の製造・販売業者ではなく,リース業者又はレンタル業者であることが一般的である(乙52及び乙53)。
そうすると,「電子計算機の貸与」は,「電子計算機」と同一の営業主の提供に係る役務であると誤認されるおそれはなく,両者は類似するものとはいえない。
ウ 「電子計算機用プログラムの提供」と「電子計算機用プログラム」の類否について
「電子計算機用プログラムの提供」は,その提供に係る物品が「電子計算機用プログラム」であることから,商品「電子計算機用プログラム」とその利用関係において共通するものである。そして,役務の提供としては,インターネット等の通信回線を通じてその提供がなされるのに対し,商品としては,記録媒体に記録されて店頭にて販売されるほか,インターネット等の通信回線を通じてダウンロードすることによって販売されるものである。また,これらの取引においては,役務の提供者と商品の製造・販売者,役務と商品の用途,共にインターネット等の通信回線を通じて取引が行われること,需要者の範囲などの取引形態が共通していることが一般的である。
そうすると,「電子計算機用プログラムの提供」は,「電子計算機用プログラム」と同一の営業主の提供に係る役務であると誤認されるおそれがある類似する役務というのが相当である。
したがって,本件商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの提供」
は,引用商標の指定商品中の「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」に含まれる「電子計算機用プログラム」と類似する役務である。しかし,本件商標の指定役務中の「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与」は,引用商標の指定商品中のいずれの商品にも類似するものということはできない。
(3)当事者の主張について
ア 請求人は,引用商標をその指定商品中の「データ管理システム」について使用していることを前提に,本件商標を本件審判の請求に係る指定役務について使用した場合に,引用商標との間で混同を生じるおそれがある旨主張する。
しかし,請求人が上下水道設備のデータ管理・簡易監視用システムにおいて,データ管理システムや簡易型監視制御装置の名称として,「WATCHING-V」なる表示を使用していることは認められるものの,提出された証拠は,作成日の不明なカタログ2通,平成20年1月16日締結の建設工事請負契約書1通とその取引書類及び2002年5月と表示された機能説明書1通のみであり(甲25?28),その使用の事実のみをもって「WATCHING」の文字からなる商標,すなわち,引用商標が遅くとも本件商標の登録査定時までに,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,事業者に限らず一般消費者を含む需要者の間に広く認識されているものとはいえず,ましてや,著名性を獲得しているとは到底いえない。
イ 被請求人は,本件商標の指定役務中の「エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与,エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供」との関係において,本件商標の「watching」の部分は,役務の質等を表示し,自他役務識別力を発揮しないものである旨主張する。
しかし,本件商標の無効請求に係る指定役務は,第42類「コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」であって,エネルギー使用量監視用に限定されているものではない。そして,これらの役務との関係において,「watching」が自他役務識別力を発揮しないものとはいえない。
なお,当該無効請求に係る指定役務については,平成23年1月21日を受付日とし,一部役務の抹消登録がなされ,実質的に「エネルギー使用量監視用のコンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),エネルギー使用量監視用の電子計算機の貸与,エネルギー使用量監視用の電子計算機用プログラムの提供」に限定されているが,商標法第4条第1項第11項該当の判断時は,登録査定時であるから,当該指定役務についての「エネルギー使用量監視用」とする限定が本件商標と引用商標の類否の判断を左右するものではない。
ウ 以上,請求人及び被請求人双方の役務の取引の実情に関する主張は,いずれも本件商標と引用商標の類否の判断に影響を及ぼすものということはできない。
(4)小括
本件商標は,引用商標と外観において近似した印象を与えるものであり,「観察,監視」の観念及び「ウォッチング」の称呼を共通にする類似の商標である。また,本件商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの提供」は,引用商標の指定商品中の「電子計算機用プログラム」と類似のものである。一方,引用商標が本件商標の登録査定時までに引用商標の指定商品の取引者,需要者間に出所識別標識として広く知られるに至ったと認めることもできず,また,その他,本件商標と引用商標の類否判断において,考慮すべき取引の実情も見あたらない。
したがって,本件商標は,その指定役務中の「電子計算機用プログラムの提供」について使用するときには,引用商標と商標及び役務において類似し,これに接する取引者,需要者が役務の出所について混同を生じるおそれがあるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号の該当性について
請求人は,引用商標をその指定商品中の「データ管理システム」に使用しているところ,本件商標の指定役務は,引用商標の指定商品と同じ業種の業者によって提供され,販売されるもので,かつ,需要者も共通にすることが多いことから,引用商標と類似する本件商標をその指定役務について使用した場合,他人の業務に係る役務であるかのごとく混同を生じるおそれがある旨主張する。
そこで,本件請求に係る指定役務中の商標法第4条第1項第11号に該当する役務である「電子計算機用プログラムの提供」以外の指定役務について,以下判断する。
ところで,商標法第4条第1項第15号は,以下の判例のとおり,主として,周知・著名商標の保護を図ることを想定したものであると解される。
「けだし,同号の規定は,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ,・・・」(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決 平成10年(行ヒ)第85号)
そして,前記第4の1(3)アのとおり,引用商標は,遅くとも本件商標の登録査定時までに,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されてとはいえず,かつ,著名性を獲得しているともいえない。
したがって,本件商標と引用商標が商標において類似するとしても,被請求人が本件商標をその指定役務中の「電子計算機用プログラムの提供」以外の指定役務に使用して場合,請求人の業務に係る商品と出所について混同を生じさせるおそれはないというのが相当であり,本件商標は,商標法第4条第1項第15に該当しない。
3 むすび
本件商標の登録は,その指定役務中,第42類「電子計算機用プログラムの提供」については,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
しかし,前記以外の指定役務については,同法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきものではない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)


審理終結日 2011-05-13 
結審通知日 2011-05-19 
審決日 2011-06-01 
出願番号 商願2009-63720(T2009-63720) 
審決分類 T 1 11・ 271- ZC (X3742)
T 1 11・ 26- ZC (X3742)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 田中 幸一加園 英明 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2010-01-15 
登録番号 商標登録第5294072号(T5294072) 
商標の称呼 イイウオッチング、ウオッチング 
代理人 柏 延之 
代理人 宮嶋 学 
代理人 小泉 勝義 
代理人 山口 現 
代理人 原 隆 
代理人 塩谷 信 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 高田 泰彦 
代理人 田島 壽 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 青木 篤 
代理人 宮城 和浩 

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