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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y30 審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効としない Y30 |
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管理番号 | 1239962 |
審判番号 | 無効2010-890072 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-09-06 |
確定日 | 2011-07-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4892499号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4892499号商標(以下「本件商標」という。)は、「うなぎフロランタン本舗」の文字を横書きしてなり、平成16年8月27日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同17年6月23日に登録査定がなされ、同年9月9日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録は無効とする、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 引用商標 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして請求人が引用する登録第2723157号商標(以下「引用商標1」という。)は、「うなぎ」の文字を横書きしてなり、昭和59年8月9日に登録出願、商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成9年10月9日に設定登録、その後、同19年9月11日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。そして、指定商品については、同20年2月20日に第30類「パイ菓子」を指定商品とする書換登録がされたものである。 同じく、登録第4171395号商標(以下「引用商標2」という。)は、「うなぎサブレ」の文字を横書きしてなり、平成7年11月24日に登録出願、第30類「サブレ」を指定商品として、同10年7月31日に設定登録され、その後、同20年6月24日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。 同じく、登録第4412564号商標(以下「引用商標3」という。)は、「うなぎ」の文字を標準文字で表してなり、平成11年10月6日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同12年8月25日に設定登録され、その後、同22年5月25日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。 同じく、登録第5194889号商標(以下「引用商標4」という。)は、「うなぎ」の文字を標準文字で表してなり、平成19年4月3日に登録出願、第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同21年1月9日に設定登録されたものである。 同じく、登録第5243954号商標(以下「引用商標5」という。)は、「うなぎ」の文字を横書きしてなり、平成20年6月19日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同21年7月3日に設定登録されたものである。 以下、これらをまとめていうときは「引用各商標」という。 2 請求の理由 (1)本件商標について 本件商標中「フロランタン」の文字は、「スタンダード仏和辞典」(株式会社大修館書店発行)によれば、フランス語の「florentin」のことであって、「菓子の一種」の意味合いがあると記載されている(甲3)。 また、フランス語の「florentin」について、「洋菓子・和菓子・デザート 百菓辞典」(株式会社東京堂出版発行)においては、「(1)糖菓。イタリア起源のアーモンド風味菓子。生クリーム、水あめ、砂糖、蜂蜜、バターを混ぜて煮詰め、スライスアーモンド、オレンジピール、砂糖漬け果物を混ぜ、テンパン上に少量ずつ丸く薄く平らに焼いて、裏側にチョコレートを塗る。(2)りんごのジャムをはさんだプティフール。」であると記載されている(甲4)。 一方、フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」によれば、「フロランタン(仏:florentins)」は、フランスの菓子。フロレンスティーナシュニッテンとも呼ばれるとの記載がある(甲5)。 さらに、本件商標中「本舗」の文字は、「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店発行)によれば、「(1)本店。(2)特定商品を製造販売する大元の店。」の意味合いがあると記載されている(甲6)。 したがって、本件商標は、商標中の「フロランタン」の文字は、焼き菓子のことであるから、当該部分は、商品の普通名称であり、「本舗」の文字は、本店又は店の意味合いを表示しているものであるから、「フロランタン本舗」の文字には、自他商品の識別機能はなく、識別標識として機能するのは、前段の「うなぎ」の文字部分であり、この「うなぎ」の文字から「ウナギ」の称呼及び「うなぎ(鰻)」の観念が生ずるものである。 (2)「フロランタン」の使用状況について 本件商標中「フロランタン」の文字は、フランス語で焼き菓子を表しているものであって、焼き菓子としての「フロランタン」は、菓子市場において、多くのメーカーが製造販売をしている。 以下、インターネット上で通信販売されている例を示す。 ア はなのき堂のうなぎフロランタン本舗【イーアーケード】 広告中には、フロランタンにおける3つのこだわりとして、「1.高級魚のこだわり 2.フロランタン 3.アーモンド」が紹介されており、このうち、フロランタンについては、「フロランタンとは、フランス語で焼き菓子を意味します。語源は『Frorence(フランス)』で、イタリア語では『フィレンツェ』と同じ意味です。イタリアのメディチ家の娘がフランスに嫁に行く時にフランスに伝わったと言われています。」との説明がなされており、フロランタンが焼き菓子であることが記載されている(甲7)。 なお、本件商標の商標権者と本件商標の使用者「はなのき堂」との関係は不詳であるが、本件商標の広告には、本件商標中「フロランタン」が焼き菓子を表す商品の普通名称であることが表記されているので、商標権者及び商標使用者は、いずれも「フロランタン」が商品の普通名称であることを認識しているものといえる。 イ 【楽天市場】ピエール・エルメ フロランタン:IKSPIARPI ONLINE SHOP フロランタンについて、「フランスでは有名なクッキーでコーヒーに良く合います。サクサク生地にアーモンドとオレンジのコンフィがのっています。」の説明がなされ、ここでもフロランタンが焼き菓子であることが記載されている(甲8)。 ウ 【楽天市場】フロランタン:お菓子と果物の里 田園詩人レパコ フロランタンについて、「ビスケット生地にアーモンドをのせ、さっくりと焼き上げました。」の説明が記載されており、フロランタンが焼き菓子であることが紹介されている(甲9)。 エ 【楽天市場】3種のフロランタン:ラ・ターブル・ド・コンフィアンス フロランタンについて、「さっくり食感にやきあげたサブレ生地に、上品な蜂『レンゲ』とローストした香ばしいスライスアーモンドをのせて焼き上げたお菓子です。サブレ生地を焼き、その上にソースとアーモンドを載せてさらに焼く、2度焼きを採用しています。これにより、サクサク感がさらによくなり、美味しく仕上がっています。」との説明があり、フロランタンが焼き菓子の一種であることが理解できる(甲10)。 オ 【楽天市場】卵不使用フロランタン:ミニヨン手作り工房カワムラ アレルギー対策として卵を使用していない焼き菓子(卵不使用フロランタン)を販売している(甲11)。 カ パイ生地タルトシュクレ&アーモンドのフロランタン-洋菓子きのとや フロランタンについて、「フロランタンはバターたっぷりのクッキーに、葉のようにアーモンドを敷き詰めました。」の説明がなされており、フロランタンが焼き菓子であることが記載されている(甲12)。 (3)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、「うなぎフロランタン本舗」であるが、自他商品の識別機能を有していて識別標識となり得る部分は、前半の「うなぎ」の文字部分であり、ここから「ウナギ」の称呼が生じ、また「うなぎ(鰻)」の観念を生ずるものである。 これに対し、引用商標1及び引用商標3ないし5は、平仮名の「うなぎ」を横書きしたものであって、これより「ウナギ」の称呼並びに「うなぎ(鰻)」の観念を生ずるものである。 一方、引用商標2は「うなぎサブレ」であるが、このうち「サブレ」部分は、商品の普通名称であるから、識別標識となる商標の要部は、前半の「うなぎ」の文字部分である。 本件商標と引用商標とは、ともに「ウナギ」の称呼及び「うなぎ(鰻)」の観念を生ずる点で両者は、同一又は類似しており、また、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品は、類似であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (4)商標法第3条第1項第6号について 本件商標中の「うなぎ」の文字は、「うなぎ(鰻)」のことであるから、これを指定商品について使用しても、「うなぎ(鰻)を原料として使用したフロランタン」の意味合いとして認識されるものであって、結局、本件商標は、自他商品の識別機能を果すものがないので、取引者及び需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものである。 なお、「うなぎフロランタン本舗」の広告(甲7)中に、フロランタンにおける3つのこだわりとして、「1.高級魚のこだわり 2.フロランタン 3.アーモンド」が紹介されているが、このうち「高級魚のこだわりについて」は、「なんと言っても、うなぎです。脳の働きを活発にするDHA、血管を丈夫にするEPAなどがたくさん含まれているうなぎは、今、健康食材としても注目されています。そのうなぎの粉末をたっぷり含んだ焼き菓子です。食べれば食べるほど元気もりもり間違いなし!」と記述されており、「うなぎフロランタン本舗」の焼き菓子が、うなぎ(鰻)を原材料としていることが認識できるものである。 したがって、本件商標は、自他商品の識別標識としての機能を有しないものであるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。 (5)結び 本件商標は、請求人が所有する引用商標と類似する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、また、取引者及び需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものであるから、同法第3条第1項第6号に該当するものであって、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。 3 弁駁の理由 (1)本件商標と引用各商標との類否について 被請求人は、本件商標「うなぎフロランタン本舗」が、その構成中、「うなぎ」の文字は商品の原材料を表し、「フロランタン」の文字は「焼き菓子」を表し、また、「本舗」の文字は「本店、特定商品を製造販売する大元の店」を表しており、いずれも自他商品の識別力がないか弱いと判断されるのが相当であると主張するとともに、識別力がないか弱い文字同士がまとまりよく一体に表されている商標においては、その構成中のいずれかの文字のみが着目され認識されることはなく、全体が一体不可分のものとして認識されるものであると主張している(答弁書5頁)。 また、被請求人は、本件商標が、一体不可分のものであるから、本件商標からは「ウナギフロランタンホンポ」の称呼のみが生じ、特定の観念は生じないものであると主張しているが(答弁書5頁)、いずれの主張も理由がない。 被請求人は、本件商標の各構成文字が、いずれも自他商品又は役務の識別力はないことを認めているが、本件商標中、「うなぎ」の文字は、商品の原材料を表すだけではなく、魚類としての「鰻」も表しており、この場合は、これ自体が自他商品又は役務の識別標識となり得るものである。 次に、被請求人は、引用商標1及び引用商標3ないし5の「うなぎ」が、「ウナギ」の称呼及び「うなぎ(鰻)」の観念が生ずることを前提にしながら、これら引用商標1及び引用商標3ないし5と本件商標とは、非類似であると主張している(答弁書6頁)。 また、被請求人は、引用商標2の「うなぎサブレ」に対し、当該商標「うなぎサブレ」と本件商標「うなぎフロランタン本舗」が共通している「うなぎ」の文字部分を比較検討することなく、「フロランタン本舗」と「サブレ」とは異なるから、引用商標2と本件商標とは非類似であると主張しているが(答弁書6頁)、いずれの主張も理由がないと言わざるを得ない。 なお、引用商標2の「うなぎサブレ」の要部が「うなぎ」の文字部分であるとの判断は、甲第18号証で引用された審決公報2頁35行ないし39行、「…引用商標Bは、『うなぎサブレ』の文字を書してなるところ、その構成中、『サブレ』の文字部分は、指定商品の普通名称を表示するものであるから、引用商標Bをその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、『サブレ』の文字部分が、商品の普通名称を表示する語と認識、把握し、自他商品の識別標識としての機能を果すのは、前半の『うなぎ』の文字部分にあるものと理解するとするのが相当である。」の記載からも明らかである。 本件商標「うなぎフロランタン本舗」は、要部が「うなぎ」の文字部分であり、これに対し、引用商標1及び引用商標3ないし5は、いずれも「うなぎ」の文字であり、また、引用商標2は、要部が「うなぎ」の文字部分であるから、結局のところ、本件商標は、引用商標1ないし5のいずれにも類似するものであることが明らかである。 (2)本件商標の識別性について 被請求人は、本件商標が、「うなぎ」、「フロランタン」、「本舗」の文字から構成されており、いずれの文字も自他商品の識別力がないか弱いと判断されるものであるが、識別力がないか弱い文字同士がまとまりよく一体に表されている商標においては、看者をしてその構成中のいずれかの文字のみが着目され認識されるようなことはなく、全体が不可分一体のものとして認識されるとみるのが自然であると主張しているが(答弁書5頁)、理由がない。 言うまでもなく、商標法3条の規定は、商標登録の要件として「自他商品又は役務の識別機能」を要求するものであって、識別機能を有していない商標の登録は認めないとする趣旨である。 本件商標は、「うなぎ」、「フロランタン」、「本舗」の文字を結合したものであり、ここで、「うなぎ」の文字は、商品の原材料を表しているから商標法第3条第1項第3号に該当し、「フロランタン」の文字は、焼き菓子であることを表しているから同法第3条第1項第1号に該当し、また、「本舗」の文字は、本店又は特定商品を製造販売する大元の店であることを表しているから、同法第3条第1項第4号に該当するものであって、これら各構成部分に自他商品又は役務の識別機能がないことは明らかである。 なお、被請求人は、本件商標から特定の観念は生じないと主張しているが(答弁書5頁)、本件商標は、全体として「うなぎ(鰻)を原材料とした焼き菓子の店」と言った意味合いを有するものである。ただし、本件商標は、商標全体を判断した場合であっても、自他商品又は役務の識別機能がないことに変わりはない。 本件商標は、識別機能を有しない複数の文字が結合されたものであるが、そもそも、自他商品又は役務の識別標識として機能し得ない複数の文字が結合されたものに「自他商品又は役務の識別標識としての機能」が備わることなど到底あり得ないことであるから、本件商標を全体として判断した場合であったとしても、識別標識として機能し得ないものであることは明らかである。 (3)その他の主張について 被請求人は、請求人が「うなぎ」関連の商標を独占しようとしており、このようなことは社会的に許されない行為であると非難しているが(答弁書8頁ないし15頁)、本件無効審判の請求とは何ら関係のない主張である。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。 1 本件商標について 本件商標は、「うなぎフロランタン本舗」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で一体に表され、これより生ずる「ウナギフロランタンホンポ」の称呼もよどみなく、一連に称呼し得るものである。 本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、本件商標の登録査定の日前から、うなぎエキス入りの商品が製造、販売され、また、フロランタン(florentin)の語が「焼き菓子」の意味を有することは、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証によって説明されており、本舗の語は「本店、特定商品を製造販売する大元の店」の意味を有することが、甲第6号証によって説明されている。 そうとすれば、本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者をしてその構成中「うなぎ」の文字は、商品の原材料を、また「フロランタン」の文字は焼き菓子であることを、「本舗」の文字は、「本店、特定商品を製造販売する大元の店」であることを、それぞれ表したものと認識するものであって、いずれも自他商品の識別力がないか弱いと判断されるのが相当である。 そして、識別力がないか弱い文字同士がまとまりよく一体に表されている商標においては、看者をしてその構成中のいずれかの文字のみが着目され認識されるようなことはなく、全体が不可分一体のものとして認識されるとみるのが自然である。 となれば、識別力がないか弱い文字同士を一体に表してなる本件商標は、全体が不可分一体のものとして取引者、需要者に認識されるものであって、「ウナギフロランタンホンポ」の一連の称呼のみを生じるというべきであり、また、特定の観念を生じないものといわなければならない。 2 引用各商標について 引用商標1及び引用商標3ないし引用商標5は、「うなぎ」の文字からなるものであることから、いずれも「ウナギ」の称呼及び「うなぎ(鰻)」の観念を生じるものである。 引用商標2は、「うなぎサブレ」の文字を横書きしてなるものであり、その構成中「うなぎ」、「サブレ」のいずれの文字も識別力がないか弱いものであるから、全体が不可分一体のものとみるのが相当である。 つまり、引用商標2は、「ウナギサブレ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。 3 本件商標と引用各商標との類否について 本件商標と引用各商標とを比較すると、両者は、外観において「フロランタン本舗」の文字の有無の差異を有し、又は、「フロランタン本舗」と「サブレ」との明らかな差異を有することから、相紛れるおそれのないものである。 称呼においては、後半部で「フロランタンホンポ」の音の有無の、又は、「フロランタンホンポ」と「サブレ」との明らかな差異を有することから、相紛れるおそれのないものである。 4 したがって、本件商標は、引用各商標と外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似のものであることは明白であり、商標法第4条第1項第11号に該当するものではないし、同法第3条第1項第6号に該当するものでもない。 第4 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、「うなぎフロランタン本舗」の文字よりなるものであるところ、その構成中の「うなぎ」の文字は、「ウナギ科の硬骨魚の総称、またはその一種。蒲焼として珍重、特に土用の丑の日に賞味する。」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)の意味を、「フロランタン」の文字は、「糖菓、イタリア起源のアーモンド風味菓子」などの意味を(甲4)、「本舗」の文字は、「本店。特定商品を製造販売する大元の店。」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)の意味をそれぞれ有するものである。 そして、本件商標は、その構成中の「うなぎ」の文字は、食品などの原材料を表し、また、「フロランタン」の文字は、菓子の一種を表す普通名称であり、「本舗」の文字は、「本店」と同様に営業の本拠である店という意味合いの表示であるから、いずれも自他商品の識別力がないか弱いものと判断するのが相当であるが、上記したそれぞれの文字が軽重の差がなく全体にまとまりよく結合しているものであって、その構成の一体性からみれば、その構成中の「フロランタン本舗」の文字部分を省略し、殊更、「うなぎ」の文字部分のみを分離抽出して、称呼、観念されるとみるべき格別の理由も見出し得ないから、むしろ、「うなぎフロランタン本舗」の文字全体をもって不可分一体の一種の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である。 してみれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「ウナギフロランタンホンポ」の称呼のみを生じるものというべきであり、また、特定の観念は生じないものといわなければならない。 2 商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、「うなぎフロランタン本舗」の文字よりなるものであるところ、前記1で認定したとおり、一連の「ウナギフロランタンホンポ」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものである。 他方、引用商標1及び引用商標3ないし引用商標5は、「うなぎ」の文字よりなるものであるから、いずれも「ウナギ」の称呼及び「うなぎ(鰻)」の観念を生じるものである。 また、引用商標2は、「うなぎサブレ」の文字よりなるものであるところ、構成中の「サブレ」の文字は、「(フランスの町の名から)小麦粉・バター・卵黄・砂糖などを混ぜて焼いた、さくさくした口当りのクッキー。」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を意味する「サブレー」の語に通じるものとして、一般に使用されているものである。 そうとすれば、「うなぎ」の文字は、食品などの原材料を表し、「サブレ」の文字は、菓子のクッキーを表す普通名称にすぎないものであって、いずれの文字も識別力がないか弱いものであるから、全体として不可分一体のものとみるのが相当である。 してみれば、引用商標2は、その構成文字に相応して、「ウナギサブレ」の称呼のみを生じるものというべきであり、また、特定の観念は生じないものといわなければならない。 そこで、本件商標と引用各商標とを比較するに、両者は、外観において明らかな差異を有し、称呼においては、本件商標の称呼が「ウナギフロランタンホンポ」であるのに対し、引用各商標の称呼は、「ウナギ」又は「ウナギサブレ」であるから、その構成音数が明らかに相違し、十分に聴別し得るものであって、称呼上相紛れるおそれはない。 また、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 してみれば、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえない。 3 商標法第3条第1項第6号について 本件商標は、前記1で認定したとおり、その構成中の「うなぎ」の文字は、食品などの原材料を表し、また、「フロランタン」の文字は、菓子の一種を表す普通名称であるとしても、さらに、「店舗」の文字を付け加えて、それぞれの文字が軽重の差がなく全体にまとまりよく結合しているものであって、その構成の一体性からみれば、「うなぎフロランタン本舗」の文字全体をもって不可分一体の一種の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である。 そうとすれば、これよりは、請求人が言うような「うなぎ(鰻)を原料として使用したフロランタン」の意味合いとしてのみ直ちに認識されるようなものではないというべきである。 そして、請求人の提出した証拠からは、「うなぎフロランタン」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、菓子の業界において普通に使用されていたことは認められない。 そうすると、本件商標は、その指定商品のいずれについても、自他商品の識別標識としての機能を発揮するものであったというべきである。 加えて、商標の構成中に該「うなぎフロランタン」の文字を有して使用しているのは、株式会社はなのき堂及び株式会社わかふじが販売し、被請求人の会社の製造に係る商品のみである(甲7、乙11)。 してみると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、自他商品の識別力を有するものというべきであり、かつ、その登録査定時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であったということもできない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反してされたものとはいえない。 4 結び 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第11号のいずれにも違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2011-04-27 |
結審通知日 | 2011-05-11 |
審決日 | 2011-05-25 |
出願番号 | 商願2004-83481(T2004-83481) |
審決分類 |
T
1
11・
26-
Y
(Y30)
T 1 11・ 16- Y (Y30) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 水落 洋 |
特許庁審判長 |
芦葉 松美 |
特許庁審判官 |
井出 英一郎 渡邉 健司 |
登録日 | 2005-09-09 |
登録番号 | 商標登録第4892499号(T4892499) |
商標の称呼 | ウナギフロランタンホンポ、ウナギフロランタン、フロランタン |
代理人 | 中山 清 |
代理人 | 松波 祥文 |