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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X19
管理番号 1238521 
異議申立番号 異議2009-900363 
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2011-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2009-09-17 
確定日 2011-06-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第5241858号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5241858号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5241858号商標(以下「本件商標」という。)は、「シャンパングレイ」の文字を標準文字により表してなり、平成19年10月16日に登録出願され、第19類「合成建築専用材料,建具(金属製のものを除く。),建造物組立てセット(金属製のものを除く。)」を指定商品として、同21年6月9日に登録査定、同月26日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第97号証を提出した。
本件商標は、「シャンパングレイ」の文字からなるところ、その構成中「シャンパン」の文字は、発泡性ぶどう酒の著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理・統制されているものに他ならないものである。
そして、本件商標は、この著名な原産地統制名称の化体した高い名声及び信用にフリーライドするものであり、これを原産地からかけ離れた特定個人の商標として登録し使用することは、厳格に管理統制されている上記原産地統制名称を希釈化させるものである。
したがって、本件商標は、公正な取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるというべきであるから、その登録は商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成22年8月31日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)三省堂1996年10月1日発行「コンサイスカタカナ語辞典」(甲2号証)の「シャンパン[champagne]」の項には、「発泡ワインの1種.フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒.白ぶどう酒に糖分を加え発酵させ、香料を配し、びん詰にして1年以上貯蔵する。多量の炭酸ガスを含みさわやかな香味をもつ。祝宴に多く用いられる。シャンペンとも。日本では中国名『三鞭酒』を借りてシャンペンと読んでいた。シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリング-ワインと呼んで区別される。」と記載されている。
(イ)岩波書店1998年11月11日発行「広辞苑第5版」(甲第3号証)の「シャンパン【champagne】」の項には、「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。発酵の際に生じた炭酸ガスを含み、一種爽快な香味がある。・・・」と記載され、同じく「シャンパーニュ【Champagne】」の項には、「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。中心部ランス。」と記載されている。
(ウ)柴田書店1982年5月20日発行「新版世界の酒事典」(甲第4号証)には、「シャンパン(Champagne)」の見出しの下に、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン.正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で、各種のスパークリング・ワインがつくられているが、このうちシャンパンと呼ばれるものは、フランスのシャンパーニュ地方、特にブルミェール・ゾーン(ランス山とマルヌ谷との一等地)、ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている.・・・・」と記載されている。
(エ)明治屋本社昭和63年8月1日再版発行「明治屋酒類辞典」(甲第5号証)には、「Champagne(仏)(英)シャンパン」の見出しの下に、「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって、何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは、マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし、その地域内で、『シャンパン法』でつくった『白』スパークリングワインである。最高生産量にも制限があって、それを越えた部分には形容詞がつく。」と記載され、また、[統制名称]の見出しの下に、「シャンパンは、詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて、『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。・・・」、「要するにシャンパンの条件は(a)シャンパン地区の生産であること。(b)シャンパン法(ビン内で後発酵を行い、発生したガスをビン内に封じ込める)で製造したものであること。(c)白ワインであること。(原料ブドウには黒ブドウと白ブドウとを、メーカーの秘伝で混和するけれど、でき上がりは白ワインである)(d)その年度の最高の生産高に制限があること、の4条件を具えなければならない。」、「戦前、わが国でもシャンパンの名称を乱用した歴史があるが、敗戦の結果、サンフランシスコ講和条約の効果として、マドリッド協定に加入を余儀なくされ、以来フランスの国内法を尊重している。」等の記載がある。
(オ)文藝春秋1991年9月25日発行「ワイン紀行」(甲第6号証)には、シャンパンの歴史及び製造過程について記載されている。
(カ)柴田書店昭和56年6月15日発行「洋酒小事典」(甲第7号証)には、「シャンペン Champagne」の項に、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワインの総称。・・・」と記載されている。
(キ)日本経済新聞社1996年9月30日発行「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(甲第9号証)には、「ソムリエ世界一が案内するフランスワイン名醸地紀行」の見出しの下に、「私たちはシャンパーニュという言葉を聞いただけで、心が浮き浮きしてくる。それだけシャンパーニュは特別な意味を持ったワインなのだ。近頃は日本でもシャンパーニュが本格的にレストランやワインバーで飲まれるようになったのはうれしい限りだ。・・・」と記載されている。
(ク)読売新聞社昭和62年10月14日第一刷「最新版Theワイン」(甲第10号証)には、「やわらかな自然優しき人々・・・そして黄金の美酒」の見出しの下に、「シャンパーニュ地方でつくられる、発泡酒だけに名付けられるシャンパン」と記載されている。
(ケ)角川書店1990年6月30日発行「世界の酒4 シャンパン」(甲第11号証)には、その6頁に、「シャンパーニュの丘」の見出しの下に、「シャンパーニュのワインの歴史に、さらにひとつの栄光のエピソードが加わった。それは発泡性のワインの誕生である。この画期的な発見、発明は、その後の研究者たちの努力によって、発泡性ワイン、ンャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」と記載され、8頁に、「シャンパーニュのブドウ畑」の見出しの下に、「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。・・・シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」と記載されている。
(コ)日本映像出版1991年5月27日第1刷「ザ・ワールドアトラス・オブ・ワイン」(甲第12号証)には、その58頁において、「フランス」の見出しの下に、「フランスは勤勉で感覚的なだけでなく、実に組織的だ。・・・栽培地を規定し、分類し、管理している。どの地所が一番優れているかを、ほぼ200年にもわたって整然とリストアップし続けている。過去60年前後、こうした仕事はワインそのものだけでなく、消費者の保護という点で世界的な関心事として次第に重要性を増している」と記載され、110頁に、「シャンパーニュ」の見出しの下に地図等と共に、「シャンパンがどれも、世界中の他のどんな発泡性ワインにも勝るというのは言い過ぎだろう。さまざまなシャンパンがあるのだから。しかし、申し分ないシャンパーニュには、さわやかさと鋭敏さ、芳醇さ、混じりけのなさといったものの組み合わせ、それに優しく刺激してくれるアルコールの強さが見られ、他の追随を許さない。」と記載されている。
(サ)サントリー1998年12月1日発行「世界のワインカタログ1999by Suntory」(甲第13号証)には、「シャンパーニュ Champagne」の項に、「シャンパーニュ(Champagne)A.O.C.ワイン地域図」としてワイン産地の地図が掲載され、「シャンパ一二ュ」の見出しの下に、「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界的で最も有名なワインのひとつです。その名にふさわしく、大変手間のかかる伝統的な手法をかたくなに守り続けて、素晴らしい風味を生み出しています。」と記載されている。
(シ)料理王国社2000年1月20日発行「料理王国1月号別冊 季刊ワイン王国 NO.5」(甲第14号証)には、「シャンパン味わいの多様性チャート」の見出しの下に、「ひとくちにシャンパンといっても一様でないのはそれもそのはず、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)がまとめているすべての醸造元の数は5200にものぼる。委員会は、シャンパン消費量上位10カ国に外国事務所をおいて、『シャンパンと呼べるのは、シャンパーニュ地方産スパークリングだけ』ということを訴えてきたが、’93年頃から『5200の醸造元があれば5200様のシャンパンがある』ということもアピールするようになった。」と記載されている。
(ス)講談社昭和55年5月30日発行「世界の名酒事典’80改訂版」(甲第15号証)には、「スパークリング・ワイン」の見出しの下に、「グラスに注ぐと、軽やかな細かい泡が立つ、華やかなワイン。発泡酒といわれ、第二次発酵ののち、グラスに注いだとき泡立つワインをいう。シャンパンがその代表で、別格扱いされているが、世界のワイン地帯には、ほとんどある。」と記載され、さらに「シャンパンの故郷ランス」の見出しの下に、写真及び地図入りでシャンパンの特徴、製造法、地理等についての記載されている。そして、「世界の名酒事典」の’82-’83年度版、’84-’85年度版、’87-’88年版、’90年版ないし2000年版、2002ないし2004年版においてもほぼ同内容の記載があり、製品の紹介がされている(甲第16ないし第32号証)。
例えば、上記事典の’90年版には、「シャンパンの楽しみ」と題して対談が記載され、その215頁には、「ワインの法律」との見出しの下に、「ヨーロッパではEC(欧州共同体)においてワイン法を制定し、加盟各国はこれに基づいてそれぞれ国内法を設けている。」との記載及びECのワイン法に基づく品質区分例として、フランスにおける指定地域優良ワインはV.D.Q.S.ワインとA.O.C.ワインと記載されているほか、上記事典の’94年版には、映画にかかわるシャンパンについて、例えば、「『肉料理には赤いワイン、魚には白いワイン、そして恋にはシャンパンを』といったのは『昼下がりの情事』(57年、ビリー・ワイルダー監督)のオードリー・ヘプバーン。」のように多数紹介されている。
(セ)読売新聞社1986年4月17日発行「The一流品 決定版」(甲第33号証)には、「スパークリングワイン/シャンパン」の見出しの下部に「スパークリングワイン、発泡性で炭酸ガスを多量に含んだワインである。いちばん有名なのがシャンパン。フランスではマルヌ、オーブ、エーヌ、セーヌ・工・マルヌ四県のブドウ畑でとれたものを原料にしたものだけをほんとうのシャンパンと証明している。祝祭典や結婚式、誕生日などの華やいだ場所で乾杯用として使われる、歓びを演出する酒でもある。」との記載があり、以下に著名なシャンパンが紹介されている。同誌PART2ないしPART4にも同旨の記載がある(甲第34ないし第36号証)。
(ソ)世界文化社昭和57年11月1月発行「家庭画報特選Made in EUROPE ヨーロッパの一流品 女性版」(甲第37号証)には、「”女性を美しくする唯一の飲み物”-シャンパン」の見出しの下に、「シャンパンという名称は、フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡性ワイン(スパークリング・ワイン)の総称で、それ以外のものは単にスパークリングと呼ばれます。」と記載され、その製品が紹介されている。
(タ)世界文化社昭和58年11月1日発行「家庭画報編女性版 世界の特選品’84」(甲第38号証)には、「CHAMPAGNE シャンパン」との見出しの下に、「パリから170キ口東の、ランスより南一帯がシャンパーニュ地方。ここでつくられる発泡性ワインがシャンパンです。」と記載され、その製品が紹介されている。
(チ)講談社昭和60年12月1日発行「男の一流品大図鑑’86年版」(甲第39号証)には、CHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されており、同誌’87年版及び’88年版においても同様に紹介されている(甲第40及び第41号証)。
(ツ)宙出版1999年発行「はじめてのシャンパン&シェリー」(甲第42号証)には、「一目で分かるシャンパンのデータ」の見出しの下に、1998年における上位10カ国へのフランスからの国別出荷量等がグラフにより示されており、我が国への出荷量については、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで多く298万本(750ml、以下同じ。)であること及びフランスからの総出荷量は、1993年が22909万本、1998年が29246万本であって、この間ゆるやかに上昇を続けている旨の記載がある。
(テ)昭和64年1月5日付け日本経済新聞夕刊では、「シャンパン(産地)」との見出しの下に、「シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワイン(発泡酒)のこと。グラスに注ぐと軽やかな細かい泡が立つ華やかなワインだ。シャンパーニュ地方はパリの北東、約百七十キロにあり、同国のブドウ産地では最も北に位置する寒い地域」と報道された(甲第43号証)。
(ト)平成元年6月13日付け日本経済新聞夕刊では、「シャンパン人気急上昇中」の見出しの下に、「結婚披露宴の乾杯用かクリスマス・ディナーの小道具ーーこれまで限られた出番に甘んじていたシャンパンなど発泡性ワインの人気が急上昇している。」などを内容とする記事があり、「発泡性ワイン輸入量5割増」との見出しの下に、「現在ではフランスの原産地名称国立研究所(INAO)により、『シャンパン』と名のれるのはその『生誕地』シャンパーニュ地方の発泡性ワインのみと規定されている。」と報道された(甲第44号証)。
(ナ)平成2年1月11日付け日本経済新聞夕刊では、「シャンパン」の見出しの下に、「はじける泡や優雅な味と香りが魅力のシャンパン。結婚披露宴やクリスマスパーティーだけでなく、入学式や誕生日などにも登場することが多くなった。炭酸ガスを含む発泡性ワインは各国にあるが、『シャンパン』を名乗れるのはフランスのシャンパーニュ地方産だけ。・・・最近のパーティーブームに加えて、昨年4月の酒税改正で2割程度価格が下がったことから人気急上昇。」と報道された(甲第45号証)。
(ニ)平成2年1月27日付け朝日新聞では、「日本の昨年のシャンパン輸入が初めて百万本を突破し、前年に比べて実に66.65%増の128万本に達した・・・日本の輸入の伸び率は世界一。輸入量も、カナダの147万本に次いで世界第10位にのし上がった。」と報道された(甲第46号証)。
(ヌ)平成2年11月16日付け朝日新聞では、「商品の外国地名使用ご用心」との見出しの下に、「祝賀パーティーの乾杯に欠かせないシャンパンといっても、厳密には『シャンパン』と『スパークリング(発泡性)ワイン』の区別がある。どちらも泡の立つ白ワインに違いはないが、前者はフランスのシャンパーニュ地方産、後者はそれ以外の国や地域で製造されたものをさす。・・・欧州共同体(EC)は『スパークリング・ワイン』を勝手に『シャンパン』として売るな、と主張している。」と報道された(甲第47号証)。
(ネ)平成3年4月27日付け朝日新聞では、「スパークリングワイン」の見出しの下に、「・・・スパークリングワインが最近、人気を集めています。お祝いの席の乾杯の酒から、友人たちといつでも気軽に楽しめる飲み物に変わってきているようです。代表的な銘柄であるシャンパンの高級品は一本数万円しますが、・・・」、「シャンパンはシャンパーニュ地方で、瓶内発酵法によってつくるなど、法律で基準が細かく決まっており、この地方以外でつくられるスパークリングワインをシャンパンと呼ぶのは禁止されている。」と報道された(甲第48号証)。
(ノ)平成4年7月27日付け毎日新聞夕刊では、「ワインの里を疾走」との見出しの下に、「・・・『シャンパン』はフランスのシャンパーニュ地方だけで作られるワインの発泡酒の名称。」と報道された(甲第49号証)。
(2)当審における職権の調査によれば、以下の事実が認められる。
(ア)株式会社岩波書店2008年1月11日発行「広辞苑第六版」の「シャンパン【champagne フランス】」の項には、「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。発酵の際に生じた炭酸ガスを含み、一種爽快な香味がある。祝宴の乾杯などに用いる。三鞭酒。シャンペン。サンパン。」と記載されている。
(イ)2007年11月2日付け共同通信において、「名産『りんご酒』を守れ EU規制に独の地元反発」の見出しの下に、「『りんご酒』(アップルワイン)の産地ヘッセン州のコッホ首相は一日、欧州連合(EU)が『ワイン』の表現を、ブドウだけを原料とする飲料以外に禁止することを検討しているとして『全力で阻止する』との声明を発表した。・・・欧州産品の名称をめぐっては『シャンパン』をフランス・シャンパーニュ地方産に限るなどさまざまな規制があるが、コッホ首相は『(EU本部がある)ブリュッセルの規制マニアの犠牲にするな』と“全面対決”の構え。」と報道された。
(ウ)2007年12月5日付け共同通信において、「『最高級』のブランド力 オートクチュール」の見出しの下に、「オートクチュールとは、もともとフランス語で、『オート=高級』『クチュール=仕立服』が一つになった言葉。パリの限られたブランドの最高級の服をこう呼びます。限られたとは、認められたメンバーということ。発泡ワインであっても、フランス・シャンパーニュ地方産しかシャンパンとは呼ばないのと似ていますね。」と報道された。
(3)前記の(1)及び(2)の認定事実によれば、「Champagne」及び「シャンパン」の語は、フランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、我が国において数多くの辞典、事典、書籍、雑誌及び新聞などにおいてシャンパンについての説明がなされていること、世界の名酒事典などにおいてシャンパンの具体的製品が紹介されていること、乾杯用としてシャンパンが用いられることが多いこと及び我が国の1998年におけるシャンパン輸入量が世界第7位で298万本(750ml)と多いことなどが認められ、これらを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願時(平成19年10月16日)はもとより登録査定時(平成21年6月9日)を含むその後においても、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているというのが相当である。
(4)次に、「Champagne」及び「シャンパン」の名称の保護に関しては、上記認定事実のほか、フランス食品振興会(SOPEXA)1987年発行「フランスのワインとスピリッツ」(甲第8号証)によれば、その18頁及び19頁において、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(a)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)、(b)V.D.Q.S.(上質指定ワイン)、(c)ヴァン・ド・ペイ(地酒)、(d)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質指定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.Sワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件等の規準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載されていること、また、同書の20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「シャンパーニュ(CHAMPANE)」が記載されていることが認められる。
さらに、フランス食品振興会(SOPEXA)発行のパンフレット(甲第52号証)、フランス国原産地統制名称の国際的保護のためのINTO(Institut National des Appellation d'Origine)のアクションに関するメモ(甲第53号証)、1936年6月29日のフランス国条例抜粋(甲第54号証)、1935年7月30日付けフランス国政令「原産地統制呼称法」抜粋(甲第55号証)及びフランス国農事法典抜粋(甲第56号証)によれば、フランスでは、1935年に原産地統制呼称法を制定し、上記INAOは、原産地統制名称のぶどう酒が満たすべき生産地域、ぶどうの品種、収穫量、最低アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、またフランス国内及び国外で原産地統制名称を保護することができる旨などを規定していること、INAOは、申立人などとともにフランス国内及び国外で原産地統制名称の保護の活動をしていることなどが認められる。
(5)一方、本件商標は、前記1のとおりの構成からなるところ、その構成中の「シャンパン」の文字は、前記(3)で認定したとおり、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られている語であるのに対して、その構成中の「グレイ」の文字は、「灰色、ねずみ色」の意味を有する外来語として親しまれ、商品の色彩表示としてもしばしば用いられる語である。
そして、本件商標は、全体をもって親しまれた既成の観念を有する成語として知られているものとはいえず、他にこれが常に一体不可分のものとしてのみ認識し把握されるべき事情は見当たらない。
そうすると、本件商標に接する需要者は、本件商標を「シャンパン」及び「グレイ」の2語からなるものとして認識し把握するばかりでなく、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして広く知られている構成前半部の「シャンパン」の文字部分が強く印象づけられるとみるのが相当である。
(6)以上を総合し、「シャンパン」の語が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして登録出願時はもとよりその後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること、フランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者・ぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと、フランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであること、をも併せ考慮すれば、「シャンパン」の文字を含む本件商標をその指定商品に使用するときは、著名な「Champagne」及び「シャンパン」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものと判断するのが相当である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

4 商標権者の意見
前記3の取消理由に対して、商標権者は、次のように意見を述べている。
(1)本件商標の不可分一体性
本件商標が一連の文字構成からなることは明らかである。すなわち、本願商標は、その外観上、切れ目のないものであり、また、その称呼上も7音構成であって、よどみなく容易に発音され、かつ、その観念上も「シャンパングレイ」という「シルバー系メタリック調の新色」(オリジナルカラー)のごとき意味合いをもって取引者間に看取される。
本件商標は、商標権者によって、2007年に採択され、一貫して多くの住宅用建材に使用されてきたものであり、「シャンパングレイ」という名称は、この種業界において、商標権者が従来銀色しかなかったアルミサッシ製品のイメージを高めるために、新たに開発された商品に付されたカラーネーミングである。特に、先入観を持たないで本件商標に接する場合には、「シャンパン」の文字のみをもって把握され、略称されるべき事情が存在しないものである。
本件商標を付した製品は、各地のショールームに展示され、また、商品カタログに掲載され、インターネットのサイトにも多く掲載されることで、該商品の取引者間で周知されるに至っている。したがって、仮に、該名称中に、商品「ワイン」の産地名称(Champagne)及びその翻訳名「シャンパン」に通じる文字が含まれていたとしても、その指定商品との関係において、「シャンパングレイ」の文字が一連の文字として使用される状態にかんがみれば、独自の色彩名を示す文字として当該指定商品の取引者に看取されるものとみることが取引の実情に合致するものである。
(2)本件商標は、ワインの原産地名称「CHAMPAGNE」の翻訳である「シャンパン」の翻訳名から逸脱しており、「シャンパングレイ」の文字は、原産地の表示「CHAMPAGNE」の翻訳である「シャンパン」の名称の範囲外の名称といえる。
(3)本件商標は、これを指定商品に使用しても、当該産地名称の翻訳名「シャンパン」の名称へのただ乗り(フリーライド)及び同表示への希釈化(ダイリューション)を生じさせるものではない。
著名商標の保護法理としての「ただ乗り(フリーライド)」及び「希釈化(ダイリューション)」の法理は、ワインの原産地名称表示に直接的に適用されるべきものではない。すなわち、「Champagne」及び「シャンパン」の表示は、商品「ワイン」の産地名表示であって、商品の営業標識ではない。
本来、高度の商品出所識別機能を有する著名商標の保護を目的とし、不正目的の商標を規制するための著名商標の保護法理としての「ただ乗り(フリーライド)」及び「希釈化(ダイリューション)」の法理(商標法第4条第1項第19号に規定する不正目的出願の規制対象行為)を商標法第4条第1項第7号に規定する「公序良俗違反商標」の登録禁止の判断要件とすることは、法目的を異にする他の不登録事由(商標法第4条第1項第19号)の適用要件を借用するものであって適切ではない。
(4)以上のように解すべきことは、過去の商標登録例及び商標登録異議決定の内容に即してみれば当然である。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その構成自体はもとより、その指定商品に使用しても国際信義に反するものではなく、公の秩序を害するおそれもないものと判断するのが相当であり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものではなく、その登録は維持されるべきものである。

5 当審の判断
(1)本件商標の取消理由は、前記3のとおりであり、本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるとした認定、判断は、妥当なものである。
(2)これに対して、商標権者は意見を述べているが、以下の理由により採用することができない。
(ア)商標権者は、本件商標について、その外観上及び称呼上の一連性をあげ、かつ、その観念上も「シャンパングレイ」という「シルバー系メタリック調の新色」(オリジナルカラー)の意味合いをもって一体不可分のものと把握され認識されるものであると主張している。
しかしながら、本件商標は、構成中の「シャンパン」の語が単なる「発泡性ワインあるいは発泡性酒」を表すものではなく、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして著名であることが前記3のとおりであることよりすれば、従来銀色しかなかったアルミサッシ製品のイメージを高めるために商標権者自身が新開発製品に付されたカラーネーミングであるとしても、そのことは、商標権者が意図的に本件商標を採択した事実を述べているにすぎないものであり、また、商標権者の提出に係る参考資料2ないし同5(枝番を含む。)によっても本件商標が該商品の取引者間で周知になっているともいえず、本件商標を常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情は認められないから、この点についての商標権者の主張は採用することができない。
(イ)商標権者は、過去の商標登録例及び商標登録異議決定例を提出し(参考資料8ないし同13(枝番を含む。))、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない旨主張している。
しかしながら、商標権者の主張する過去の商標登録及び異議事件において、それらに係る登録商標の構成中に「CHAMPAGNE」、「Champagne」又は「シャンパン」の文字を有していたにもかかわらず、商標登録がされ又は商標法第4条第1項第7号に違反してされたものでない旨の判断がされたとしても、本件商標が公の秩序を害するおそれがあるものであることは、上述したとおりであるから、この点についての商標権者の主張も採用することができない。
(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2011-04-14 
出願番号 商願2007-106488(T2007-106488) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (X19)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田中 敬規 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 酒井 福造
末武 久佳
登録日 2009-06-26 
登録番号 商標登録第5241858号(T5241858) 
権利者 三協立山アルミ株式会社
商標の称呼 シャンパングレイ、シャンパングレー、シャンパン 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 堀内 香菜子 
代理人 細井 貞行 
代理人 田中 克郎 
代理人 小橋 立昌 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 景子 

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