• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y03
管理番号 1234838 
審判番号 取消2010-300600 
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-05-28 
確定日 2011-03-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4922445号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4922445号商標(以下「本件商標」という。)は、「ASP」の欧文字を標準文字で表してなり、平成17年3月1日に登録出願、第3類「洗濯用のり剤,化粧用接着剤,塗料用剥離剤,靴クリーム,つや出し剤,せっけん類,洗口液,その他の歯磨き,化粧品,薫料,研磨紙,研磨布,つや出しシート」を指定商品として、平成18年1月20日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成22年6月16日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中『せっけん類,化粧品,薫料』についてその登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「せっけん類,化粧品,薫料」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「アクロン」(商品名)が、ライオン株式会社の衣料用洗剤として本件審判の請求の登録日の30年以上前から現在まで販売されていることは、よく知られている。
そして、乙第5号証記載のデザインの商品が2005年8月から2008年8月頃まで販売され、それ以降から現在まで乙第13号証記載のデザインの商品が販売されているのも事実である。
ここで、乙第5号証記載のデザインと乙第13号証記載のデザインを比較すると、乙第5号証のデザインには表面にASPの文字があるが、乙第13号証記載のデザインにはない。また、その他の証拠を見ても乙第5号証よりASPの文字が目立ったものはない。つまり、乙第5号証記載の表面のデザインに示された標章「ASP」が商標としての使用でなければ、本件商標は、取り消されるべきものであるといえる。
(2)乙第5号証記載のデザインを見ると、表面上部に大きな文字で「アクロン」と記載され、この文字は、全体の17%程度の面積を占めている。そして、その上部に「アクロン」の5分の1程度の大きさの文字で「洗うたび、おろしたて感覚」と記載されている。この文字は、「アクロン」と同じ色である。また、「アクロン」の下には、「アクロン」の4分の1程度の大きさの白抜き文字で「しわ・ヨレ・縮み」そして行を変えて「色あせを防ぎます」と記載されている。
そして、その下に「アクロン」の7分の1程度の大きさの文字で「スタイル保持成分ASP配合」と記載されている。この文字は、背景の基調色と同色となっている。
(3)「アクロン」という商品名は、テレビのコマーシャル等により、需要者に大変良く知られているものである。また、上記のとおり、商品にも他の文字と比較して特別に大きくアクロンと表示されている。これらによれば、本件商品において、自他商品識別機能を発揮しているのは「アクロン」であり、需要者は、「アクロン」によって、本件商品を他の商品から識別するものと認められる。
(4)次に「スタイル保持成分ASP配合」の「ASP」が商標としての使用であるかについて検討する。「…アクロンなら毛糸洗いに自信が持てます。」というコマーシャルソングはよく知られており、アクロンは、自宅で毛糸のセーターやマフラーを洗濯することができる洗剤であると需要者は認識している。そして、毛糸を使用した製品を洗濯すると型崩れしやすい。このため、需要者は、「スタイル保持成分ASP配合」という文字を見ても、型崩れを防止するために「ASP」と呼ばれる化学成分が入っているのだと認識するにすぎない。また、「ASP」が造語であるとしても、洗剤に含まれる化学成分名を需要者は知らないのが普通であって、「ASP」と聞いてもせいぜい長い名前の化学成分名を略したものであろうと認識するにすぎない。さらに、「スタイル保持成分ASP配合」は「アクロン」の文字の7分の1程度の大きさで、他の文字と比較しても小さく、文字色も背景の基調色と同色であり目立たない。これらによれば、「ASP」は、自他商品識別機能を有する態様で使用されているものということはできない。
(5)以上のとおり、乙第5号証記載の商品の表面に示された標章「ASP」は、商標としての使用でない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 乙各号証について
(1)乙第1号証は、請求に係る指定商品のうち「せっけん類」に属する「衣料用洗剤」(以下、「本件商品」という。)の商品案内であるが、ここでは2005年8月に同商品が販売されることが紹介され、その中には本件商標「ASP」の使用も確認できる。
この商品案内は、被請求人製造の商品を実際に販売する小売店等に対し、新発売する商品などの宣伝広告及び販売促進のために配布されるものである。本件商品は、大きな商品名としては「アクロン」であるが、「ASP」はその中に含まれる独自のスタイル保持成分の名称であり、柔軟・色あせ防止成分(A)、しわを防ぐなめらか成分(S)、ハリ付与成分(P)を総合的に「ASP」と言い表したものである。もちろん、これらを配合した成分を「ASP」と呼ぶことは一般におこなわれておらず、「A」「S」「P」という呼び方も、またその組合せも被請求人が独自に案出したものにすぎない。これが、乙第1号証にみられるように本件商品の表面に表示されることで、商標としての自他商品識別機能を発揮することとなり、実際にも「ASP」は、本件商品の大きなアピールポイントとなっている。
(2)乙第2号証は、2006年7月に発行された雑誌での本件商品の紹介記事である。ここでは、本件商標がカギ括弧で強調されて表示されており、この成分の表示が本件商品のひとつの目印となっていることが分かる。
(3)乙第3号証は、2007年の被請求人の製品カタログであり、本件商品の説明中には、「ASP」の表示が見られる。この時期には、これまで「アクロン」(ピンク色)に加え、「アクロン フレッシュハーブの香り」(みどり色)が新たに販売されることとなったが、商品デザインは基本的には変わらず、乙第4号証の商品チラシに示すように、商品ボトルやパッケージの表面にも「ASP」の表示が付されている。
(4)乙第5号証は、この時期の商品の実物をカラーコピーで写したもので、同様に商品の前面には「ASP」の表示がある。そして、商品の裏面にも2カ所、その説明とともに「ASP」の表示が見られる。
(5)乙第6号証は、2008年6月に発行された雑誌における本件商品の紹介記事である。この頃には、商品のデザインが多少変更されているが、依然として「ASP」の成分が含まれていることは本件商品の特徴であることに変わりなく、この雑誌記事においても「ASP」はカギ括弧付きで紹介がされている。
(6)乙第7号証からは、現在まで用いられている商品デザインの紹介となるが、このデザインは2008年8?9月に順次リニューアルされたものである。
ア 乙第7号証は、被請求人の製品の販売促進を兼ねて社外に配布されるパンフレットで、やはり本件商品の特徴として「ASP」の説明がなされている。
イ 乙第8号証は、同じ時期に本件商品の新発売を発表する被請求人会社のホームページであり、引き続き「ASP」の表示とその説明を見ることができる。
ウ 乙第9号証の新聞記事も同様に、本件商品の新発売を紹介するもので、その記事の中には「ASP」の表示及び説明をみることができる。
エ 乙第10号証は、2010年の被請求人会社の製品カタログであり、乙第3号証と同様に商品の特徴として「ASP」の表示及び説明が記載されている。乙第11号証は、このカタログが意匠の公知資料として寄託されたことを示す社団法人日本デザイン保護協会の受け入れ通知書であり、念のためカタログの存在を裏付けるために提出する。
オ 乙第12号証は、現時点における被請求人会社の製品紹介ホームページで、乙第8号証と同様、本件商品の紹介とともに「ASP」への言及がなされている。
カ 乙第13号証は、2009年6月5日製造に係る実物の商品の写真である。ここではパンフレットやホームページでの商品紹介とともに、商品自体にも「ASP」の表示とその説明が記載されている。
(7)このように、本件商標「ASP」は、その指定商品「せっけん類」に属する「衣料用洗剤」について、遅くとも2005年8月以来現在まで継続して使用されているものである。
この点をさらに商品の販売事実から裏付けるため、乙第14号証として商品の売上伝票を提出する。これは、本件審判の請求の登録前3年以内の日付である2010年5月11日の商品売上伝票であり、札幌市にある株式会社東流社の札幌営業所へ向けて、被請求人が本件商品を販売した旨の記録である。
この中で、「商品コード/商品」の区分にある「4903301435518 アクロンフローラルブーケツメカエヨウ」という表示が、本件商品に該当する部分である。これら商品コードと商品名は、被請求人の直近の2010年版の製品カタログである乙第10号証に対応し、「アクロン/フローラルブーケの香り/つめかえ用」とそのバーコード数字「4903301435518」が、それぞれ上記乙第14号証の売上伝票の表示に対応している。乙第10号証の製品カタログには被請求人の住所と名称が記載され、乙第14号証の売上伝票には被請求人の名称が記載されていることからも、本件商品を被請求人が販売したことが分かる。
(8)本件商品に本件商標が付されていることは上記のとおりであり、伝票に記録される商品の販売によって、本件商標が実際に市場において使用されていることが証明される。より具体的にみるなら、当該販売された商品については、乙第10号証のカタログに加え、乙第13号証に示す実物の商品に「ASP」の表示が使用されていること、また乙第12号証の製品紹介ホームページにも「ASP」が使用されていることが確認できる。
さらに、乙第15号証として商品の配送記録を提出するが、ここでは2010年5月10日の日付において、九州西濃運輸株式会社の鹿児島支店に向け、本件商品である「アクロン デオドラントグリーン」「アクロン デオドラントグリーンつめかえ用」「アクロンデオドラントグリーンつめかえ用増量(カエゾウリョウ)」「アクロンフローラルブーケ」の配送が手配されていることがわかる。
2 ところで、本件商標は、「スタイル保持成分」という説明とともに使用される例が見られるが、そもそも「ASP」なる表示は特定の意味合いにおいて一般的に用いられるものではない。「スタイル保持成分ASP配合」という表示がなされる場合でも、「『ASP』という名称の衣類のスタイルを保持する成分が配合されている」ということが理解されるのみで、「ASP」自体は、特定の意味合いにおいて商品の内容を直感させるものではなく、本件商品を他社商品から識別する目印として機能しているのである。
3 以上により、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、被請求人により、その指定商品中、「せっけん類」に含まれる「衣料用洗剤」について使用されていることは明らかであり、使用されている商標の態様も、本件商標と同一と認められるものである。

第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第6号証は、雑誌「オレンジページ」(2008年6月17日発行)の抜粋(写し)であり、3枚目(103頁)の右上の「『アクロン』は、スタイル保持成分配合だからしわ、ヨレ、縮み、色あせだって怖くない!」の見出しの下に「スタイル保持成分『ASP』が入っている『アクロン』なら、しわ、ヨレ、縮み、色あせ、静電気を防ぎ、…」と記載され、左下には、「協力/ライオン株式会社」と記載されている。
(2)乙第8号証は、右上に「2008年7月3日」の記載がある被請求人の洗濯用中性洗剤に係るウェブページの写しであり、「ライオン株式会社(社長・藤重 貞慶)は、『スタイル保持成分ASP』の働きで、お気に入りの服の“型くずれ(しわ・ヨレ・縮み)”と“色あせ”を防いで、洗うたびにおろしたての感覚に仕上げる洗濯用中性洗剤『アクロン』から、スッキリした洗い上がりの『アクロン デオドラントグリーンの香り』を、2008年9月10日(水)より全国で新発売いたします。あわせて、『アクロン フローラルブーケの香り』はデザインをリフレッシュして、2008年8月より全国で改良新発売いたします。」と記載されている。
(3)乙第9号証は、2008年(平成20年)9月24日付けの「石鹸日用品新報」の写しであり、「ライオン スッキリした洗い上がり『アクロン デオドラントグリーンの香り』新発売」の見出しの下に、「ライオンは、『スタイル保持成分ASP』の働きで、お気に入りの服の“型くずれ(しわ・ヨレ・縮み)”と“色あせ”を防いで、洗うたびにおろしたての感覚に仕上げる洗濯用中性洗剤『アクロン』から、スッキリした洗い上がりの『アクロン デオドラントグリーンの香り』(500ミリリットル、つめかえ用450ミリリットル)を9月10日に新発売。同時に『アクロン フローラルブーケの香り』(同)のデザインをリフレッシュして8月、全国で改良新発売した。」と記載されている。
(4)乙第10号証は、「2010 ライオン 製品カタログ」の表題のあるカタログの写しであり、右上に「平成22年2月発行」と記載され、2枚目には、「商品名・容量」の欄の6段目に「アクロン フローラルブーケの香り つめかえ用 450ml」、その右側の「JANコード」の欄の6段目に「4 903301 435518」、その右の「商品特長」の欄の3段目に「お気に入り衣服の『型くずれ』・『色あせ』を防ぎ、おろしたてのように洗い上げる ●『スタイル保持成分ASP』が“型くずれ(しわ、ヨレ、縮み)”や“色あせ”、“着用時の静電気”を防ぎます。…」と各記載されている。
(5)乙第11号証は、ライオン株式会社宛の「社団法人日本デザイン保護協会」に係る2010年2月22日付け「カタログの寄託受入通知書」の写しであり、2010年2月19日付けで「2010 ライオン製品カタログ」の寄託申請があり、寄託の受入日及びカタログの公開日が共に2010年2月22日である旨の記載がなされている。
そして、そのカタログの名称及び公開日の記載からすれば、乙第10号証に係る製品カタログが寄託されたものと認められる。
(6)乙第14号証は、2010年5月11日付けの「売上伝票」の写しであり、右上に「ライオン株式会社」、「商品コード/商品」の欄の2段目に「4903301435518 アクロンフローラルブーケツメカエヨウ」と各記載されている。
そして、上記「商品コード/商品」の欄に記載された「4903301435518」の数字は、「2010 ライオン 製品カタログ」(乙第10号証)において、「アクロン フローラルブーケの香り つめかえ用 450ml」のJANコードと符合するものである。
2 判断
前記1の認定事実によれば、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において請求に係る指定商品中の「せっけん類」に含まれる「衣料用洗剤」と認められる本件商品に「ASP」の文字を使用していたものと認めることができる。
これに対して、請求人は、商標権者が使用しているとする本件商品が請求に係る指定商品中の「せっけん類」に含まれることについては格別争っているものではないが、本件商品において自他商品識別機能を発揮しているのは「アクロン」であり、乙各号証における「ASP」の表示については、せいぜい長い名前の化学成分名を略したものであることを認識させるにすぎず、自他商品識別機能を有する態様で使用されているものではないから、商標としての使用ではない旨主張している。
しかし、前記1で認定した乙各号証における「ASP」の文字は、いずれも「スタイル保持成分『ASP』」、「スタイル保持成分ASP」のように使用されているものであるところ、これが衣料用洗剤の品質、原材料等を表すものとみるべき特段の事情は見いだせないものであるから、たとえ、本件商品に使用する商標として「アクロン」の文字が一般に知られているとしても、「ASP」の文字が自他商品の識別標識としての機能を全く発揮し得ないということはできない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
そうすると、「ASP」の文字は、それ自体が自他商品を識別させるために付されている商標であるというのが相当であり、本件商標と同一というべきものである。
よって、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る指定商品中の「せっけん類」に含まれる「衣料用洗剤」について使用していたというべきである。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が取消請求に係る指定商品中、「せっけん類」について本件商標の使用をしていたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-01-05 
結審通知日 2011-01-11 
審決日 2011-01-25 
出願番号 商願2005-17065(T2005-17065) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小畑 恵一
末武 久佳
登録日 2006-01-20 
登録番号 商標登録第4922445号(T4922445) 
商標の称呼 アスプ、エイエスピイ 
代理人 小谷 武 
代理人 木村 吉宏 
代理人 加藤 達彦 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ