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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2010900235 審決 商標
無効2011890038 審決 商標
異議2009900319 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y30
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y30
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y30
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y30
管理番号 1233438 
審判番号 無効2010-890045 
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-05-28 
確定日 2011-02-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4959166号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4959166号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成17年9月15日に登録出願、第30類「アイスキャンデー,アイスクリーム,シャーベット,アイスクリーム用凝固剤,ホイップクリーム用安定剤,氷,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」を指定商品として、平成18年6月9日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が、商標法第4条第1項第11号に関する証拠として引用する登録第4567995号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ババヘラ」の文字を標準文字としてなり、平成13年7月19日に登録出願、第30類「菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,氷,アイスクリーム用凝固剤,ホイップクリーム用安定剤」を指定商品として、平成14年5月17日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第45号証(枝番を含む。)を提出した。
[ 請求の理由 ]
本件商標は、以下に示すとおり、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号の規定に違反して登録されたものである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上段に「ババヘラアイス発祥の地」の文字を配してなるが、このうち「アイス」や「発祥の地」はことばの意味が分かるとしても、「ババヘラ」の部分は一見して造語であり、これを見る者には特に強い印象を残す部分である。さらに、「発祥の地」はその前の「ババヘラアイス」に連なる部分であって、それ自体では特定の意味を表さないため、ここでは「ババヘラアイス」が重要な意味を有することとなる。とりわけ本件指定商品を表すのみである「アイス」の部分を除けば、「ババヘラ」の部分が本件商標の識別要素となるため、これよりは単独の「ババヘラ」の称呼を生じる。
一方、引用商標1は、「ババヘラ」の文字を標準文字で表してなり、これよりはそのまま「ババヘラ」の称呼を生じる。
よって、本件商標及び引用商標1は、「ババヘラ」の称呼を共通にするものであり、指定商品もそれぞれ同一あるいは類似するものであるため、これらは互いに類似する商標である。
本件商標の上段部分は、「アイス」や「発祥の地」の部分は看者に強い印象を与えるものではなく、識別要素として重要な部分は「ババヘラ」であることは、上に述べるとおりである。より詳しく見れば、この上段部分は大きくは「ババヘラアイス」と「発祥の地」の部分よりなり、後半の「発祥の地」の部分は前半の「ババヘラアイス」によってその内容が特定される。単に「発祥の地」といっても何の発祥の地かは不明であり、その前にことばがあってはじめて「○○発祥の地」として意味が出てくるため、本件商標では「ババヘラアイス」の部分が重要となるのである。加えて、「発祥の地」を名乗るのは、「○○」の部分が有名である場合や人気のある場合が通例であるため、本件商標では「ババヘラアイス」の部分が否応なく目立つこととなる。
また、「ババヘラアイス」のうち、「アイス」の部分は、本件指定商品である「アイスクリーム」あるいは「アイスキャンディー」を意味するに過ぎないため、結局そのあとに残る商標の重要な識別要素は「ババヘラ」の部分となる。国語辞典の広辞苑(甲第3号証)によれば、「アイス」は「アイスクリーム・アイスキャンデーの略」との説明がなされており、本件指定商品分野にあって「アイス」の文字は、「アイスクリーム」や「アイスキャンディー」を直感させる。もちろん、「アイス」には「氷」や「冷やした飲み物」といった意味もあるが、これらも本件指定商品との関係では、商品の普通名称(略称)や、商品の内容を直感させるということに変わりはない。
一方、「ババヘラ」の部分は、特徴的で強い印象を残す有声破裂音「バ」を続ける発音から始まり、その後の「ヘラ」にもスムーズに発音がつながる一連の造語である。このような既成語はなく、「ババヘラアイス」ということばを特徴付けているのは、前半の「ババヘラ」の部分である。「アイス」は商品の普通名称(略称)に過ぎないから、「ババヘラアイス」という固有の名称を特定するのは「ババヘラ」に他ならず、実際後述のように、「ババヘラアイス」は「ババヘラ」とも呼ばれている。「ババヘラ」なる珍しく特徴的な響きによって、「ババヘラアイス」も「アイス」の一種として特定されるのであって、これは「ババヘラ」と同視してよい。
したがって、商標の類否判断においては、本件商標では「ババヘラ」の部分が最も大きな比重を占めるのであり、これを除いて本件商標は成り立たない。本件商標より「ババヘラアイスハッショウノチ」あるいは「ババヘラアイス」という称呼が生じることもあるかもしれないが、その場合でもこの中で際立って目立つのは「ババヘラ」の部分である。ユニークで特徴的な「ババヘラ」という響き、また「発祥の地」の意味合いや「アイス」が商品名に過ぎないことを考慮に入れれば、本件商標より「ババヘラ」の単独の称呼が生じることは容易に理解できるのであって、これは同一の称呼を生じる引用商標1と類似する。
もちろん、本件商標は「ババさんアイス」や「元祖児玉冷菓」といった文字も有するが、これらはそれぞれ段を違えて表されており、文字の大きさや書体も異なっているため、外観上常に一体的に把握される態様にはない。また、「ババヘラアイス発祥の地」で一旦意味が切れ、中段以降に意味が繋がる必然性もないため、本件商標は観念上も特定の意味合いで一体的に把握されるとはいい難い。よって、本件商標ではそれぞれの段のことばやフレーズが独立した識別要素となり得、特に「ババヘラアイス発祥の地」の上段にあっては、唯一の造語である「ババヘラ」の部分が独立した識別要素となるのである。
加えて、後述のように、「ババヘラ」(引用商標1)は需要者らの間で広く知られる商標となっているため、上記商標の類否判断にも大いに影響を与える。ただでさえ、「ババヘラ」というインパクトの強い響きを残すことばであるのに、これが広く知られているとなれば、「ババヘラアイス発祥の地」などと表示する本件商標にあっては、「ババヘラ」の部分は否が応でも際立たざるを得ない。商標の構成のみから見ても、本件商標から「ババヘラ」の部分は容易に抽出されるのに加え、この名称が広く知られており、しかも、本件商標権者は「ババヘラ」の本場である秋田県男鹿市に所在することを考えれば、本件商標と引用商標1との混同は避けようがない。引用商標1の著名性は、本件商標との間の出所混同の可能性を増幅させる要因となるのである。
以上、「ババヘラ」の単独の称呼を生じる本件商標は、同一の称呼を生じる引用商標1とは類似する商標であり、請求人の商標「ババヘラ」の知名度、また、本件商標権者が実際に業務をおこなう地域を考慮に入れれば、両商標が商品の出所において混同を生じることは明らかである。したがって、本件商標は引用商標1に類似する商標であり、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
周知性について
引用商標1、あるいはこれに商品(アイスクリーム)の普通名称が加わった別掲2に示す「ババヘラ・アイス」(甲第4号証。以下「引用商標2」という。)は、請求人の製造・販売するアイスクリームあるいはアイスキャンディーの商標として、需要者・取引者の間では広く知られたものとなっている。
請求人である有限会社進藤冷菓は、創業より57年を迎える歴史のある企業であり、アイスクリームの製造・販売を主たる業務としている。このうち、アイスクリームの販売については、国道などの路上やお祭り会場等でおこなう対面販売の方式を伝統的に続けており、インターネット販売なども取り入れている現在においても、この対面販売は行われている。
こうした道路などでのアイスクリームの対面販売は、請求人及び本件商標権者の活動拠点である秋田県において広く行われているが、その様子を最も特徴的に表すものに、大きなパラソルの存在が挙げられる。大きなパラソルのもと、女性が外でアイスクリームを売っているのが、「秋田名物アイス売り」としてお馴染みとなっている。この販売方法は、請求人の現在の社長が昭和36年の秋田国体で見た清涼飲料メーカーのパラソルから発案し取り入れたもので、それ以来、秋田のアイス売りの特徴的な姿となっている。
長年そのような屋外での対面販売を続けていたところ、今度はアイスクリームの特徴とも相俟って、請求人の商品を「ババヘラ」と呼ぶ場面に一部出会うようになった。「ババ(お年寄り)」が「ヘラ」でアイスクリームを盛り付けることからの呼び名だが、請求人はこれを正式に商品名として採用することとし、2000年頃から使用を開始した。特徴的な販売方式と名称により、アイスクリームの「ババヘラ」はその後人気を得、東京など他地域へもその存在が広まったため、請求人はこの「ババヘラ」ブランドを保護すべく、2001年に引用商標1の登録出願を行った。
このように、特徴的な販売方法とともに「ババヘラ」及び「ババヘラ・アイス」の名称は広く知られるようになったが、この事実を示すものとして、以下に「ババヘラ」を扱った新聞記事等を紹介する。
なお、各新聞記事には地方版も含まれるが、それぞれの最近の朝刊発行部数は、「河北新報」(甲第5・7号証)が約50万4千部、「産経新聞」(甲第6号証)が約192万1千部、「朝日新聞」(甲第10・16号証)が約806万6千部、「秋田魁新報」(甲第8・11・12・14・15・22・23号証)が約25万5千部である(甲第25号証?甲第28号証)。
(a)シャーベットアイス「ババヘラ」が商標登録されたとの見出しのもと、「ババヘラ」の通信販売が開始されたことが記事となっている(甲第5号証)。ここでは、請求人が「販売元の進藤冷菓」と紹介され、「ババヘラ」の商標を冠したアイスクリームの出所が請求人であることが理解される。「ババヘラ」は、甘さを控えた昔懐かしい味のアイスクリームであり、秋田のみならず、「東京や九州に住む子供に贈りたい」との注文を受けることも多くなったため、その人気に応えるべく2002年春から通信販売が開始された。
(b)秋田の名物となった「ババヘラ」が、その歴史などを踏まえ紹介されている(甲第6号証)が、特に現在行われているパラソルのもとでの販売が、請求人によって始められたという部分が注目される。甲第5号証やその他の記事にも見られるが、パラソルは「ババヘラ」の大きな特徴のひとつであって、ここでも、「カラフルなパラソルを開いてアイスクリームを売っている」とその様子が伝えられている。
(c)上記のとおり、このパラソルを用いた販売方法は、昭和36年に請求人の代表者により発案されたものであり、請求人がこれを始めることで徐々に広まっていった。その後、これを模する販売方法も出てくるが、もともとは請求人が広めたことで、これが秋田名物とまでいわれるようになったのである。この点に関しては、請求人とともに、「ババヘラ」やこれにつきもののパラソルに関する記事が掲載されている(甲第7号証)。
(d)2003年7月に東京・池袋でおこなわれたアイスクリームのイベント(ナンジャタウン・アイスクリームシティ)に招待されたこともあり、人気がさらに全国へと広がっていった。「ババヘラ」が期間限定の当該イベントの中で売上トップを記録したこと、また、その後2004年春には、東京・銀座にオープンした秋田郷土料理を提供する居酒屋でもメニューに取り入れられ、人気デザートとなっていることなどが紹介されている(甲第8号証)。上記イベントのオープンを伝える主催者のウェブサイト(甲第9号証)の中には、もちろん秋田名物として「ババヘラ・アイス」が請求人の名称とともに紹介されている。
(e)「ババヘラ」の特徴である販売員に注目した記事が掲載されている(甲第10号証及び甲第11号証)。「ババヘラ」というように、販売員はお年寄りの女性が多いと紹介されているが、このような素朴ではあるが、コミュニケーションのとれる独特な販売方法も、「ババヘラ」の人気を支えるひとつの要素となっている。なお、ここでも上記イベントでの東京進出についてコメントが載せられている。
(f)「ババヘラ」のラインアップのひとつである「ババヘラキャンデー」が、秋田市の竿燈まつりで販売点数が最も多かったことを伝える記事がある(甲第12号証)。
(g)請求人は、「ババヘラ・アイス」を花火大会などのイベントやお祭りでも販売しており、「ババヘラキャンデー」もその一環であるが、この秋田の竿燈まつりは、青森のねぶた祭り、仙台の七夕祭りとともに東北三大祭りと呼ばれ、昨年の来場者数は約130万人という大きなお祭りである(甲第13号証)。なお、請求人がアイスキャンデーを販売開始したのが2004年であり(これを伝える甲第8号証の記事が2003年の東京池袋のイベントの1年後の記事である。)、アイスキャンデーにつき「ことしから取扱を始めた」と紹介されている(甲第12号証)。
(h)「ババヘラ」が実際に東京で人気が出てきたことが、「都会で大受けババヘラアイス」の見出しとともに紹介されている(甲第14号証)。東京進出の大きなきっかけになったのは、上記池袋でのイベントであるが、これは同イベント担当者の熱心な誘いによるものであったことが、この記事からは分かる。その結果、「ババヘラ」のパラソルの前には長蛇の列ができ、来場者アンケートでも好感度一位に選ばれるなど、東京にも「ババヘラ」の魅力が十分に伝わることとなった。その後はインターネットでの販売を始めたこともあって、全国各地からの問い合わせが相次ぎ、「爆発的な売れ行きに、進藤社長夫妻は夏中、発送作業に追われた」という状況にまで、「ババヘラ」は人気を獲得していった。
(i)全国各地というからには、もちろん東京にとどまるものではなく、関西地方にも「ババヘラ」は進出し、そのひとつの足がかりとなったのが、2005年に大阪・大阪市で開催されたアイスクリームのイベント(天保山アイス博覧会)である。「『ババヘラ』関西上陸へ」として同イベントヘの「ババヘラ」の出品が紹介されている(甲第15号証)。この中では、「テレビや雑誌などの影響で、関西でも『ババヘラアイス』の存在を知っている人は多い」ことから、「ババヘラ」が既に注目されていたことが分かる。また、同イベントについての記事(甲第16号証)の中でも秋田名物として「ババヘラアイス」が登場することが特に紹介されている。なお、甲第17号証は、同イベントの様子を「ババヘラ・アイス」とともに紹介するウェブサイトの記事である。
(j)東京も大阪もイベントには「ババヘラ」は期間限定で出品しているが、これは秋田のご当地アイスとして生産・販売を手掛ける請求人が常に秋田に拠点を置くからである。したがって、人手は限られてしまうが(甲第14号証)、その分本物のご当地アイスとしての価値は下がることなく、人気に拍車をかけている。
(k)2005年から2006年にかけての雑誌記事であるが、「ババヘラ・アイス」の人気が全国で高まり、製造元の対応も追いつかないことが紹介されている(甲第18号証)。また、ドライブ中に立ち寄って食べる冷菓に「進藤冷菓のババヘラ・アイス」が紹介され(甲第19号証)、さらにインターネットでの共同通信社による配信記事等を通じ、2004年7月には「ババヘラ」がインターネット検索サイトの大手「Yahoo!」においてトップ記事で紹介されるなど(甲第20号証及び甲第21号証)、人気も知名度もさらに高まっていった。
(l)「ババヘラ、知名度上昇」という見出しのもと、旅行会社や他県の観光協会からツアー客などの集客を見込んで協力を要請されるなど、観光資源としても注目されていることが紹介されている(甲第22号証)。また、「ババヘラアイスの進藤冷菓」として請求人が紹介される、とともに、新しい商品ラインアップの記事が載るなど、「ババヘラ」は最近における注目度もますます高い(甲第23号証)。ちなみに、インターネット検索サイトの「Google」では、「ババヘラ」「進藤冷菓」のキーワードで検索をおこなうと、約2820件のサイトが検出されるように、現在も多数のサイトやブログにおいて、「進藤冷菓」の「ババヘラ」が注目されていることが分かる(甲第24号証)。
(m)このように、請求人の製造・販売に係るアイスクリーム「ババヘラ」あるいは「ババヘラ・アイス」は、2000年頃の使用開始から広く需要者らに知られるところとなり、「ババヘラ」と請求人「進藤冷菓」との結び付きも強い。
(n)請求人の製造・販売に係るアイスクリーム「ババヘラ」は、度々テレビ番組にも取り上げられている。
このうち、まず、2003年7月に東京・池袋でおこなわれたアイスクリームのイベント「ナンジャタウンアイスクリームシティ」に、請求人の「ババヘラ」が招待され、出品されたことを紹介するニュース番組である(「ニュース朝いち430」・甲第29号証)。ここでは「ババヘラ・アイス」の文字とともに、請求人の名称である「(有)進藤冷菓」の文字も見られ、「ババヘラ」が数あるアイスクリームの中でも注日度が高かったことが窺われる。また、このイベントで「ババヘラ」が売上トップを記録したことは、上記のとおりである。
(o)甲第30号証から甲第32号証は、秋田から出発した「ババヘラ」が、東京からさらに関西へと大々的に進出した際のイベント「天保山アイスクリーム博覧会」を紹介するニュース番組である(「かんさいニュース一番」「おはよう日本」「ニューススクランブル」「ほっとカンサイ」「ビジネス525」)。ここでも数あるアイスクリームの中から、その名前のインパクトも手伝って請求人の「ババヘラアイス」が取り上げられており、関心の高さを窺わせる。
(p)甲第33号証は、情報番組でお取り寄せのおやつとして「ババヘラ」が紹介されているシーンである(「いわて特盛!5きげんテレビ」)。ここでは請求人の会社や社長の紹介とともに、2002年から通信販売を開始した「ババヘラ・アイス」が紹介されている。
(q)秋田の名物として「ババヘラ」を紹介するバラエティー番組や、ニュース番組である(「大キングコング情熱!しゃべり隊!!」「スーパーニュース」「おもいっきりDON!」)。このような放送や上記イベント等を通じ、秋田発祥の「ババヘラ」は、近年ますますその知名度を全国的に広めているのである(甲第34号証から甲第36号証)。
(r)「ババヘラ」を紹介するバラエティー番組である「ぷあぷあ金星」の中では、単に「ババヘラ」を紹介するだけではなく、請求人がおこなっているパラソルの下での販売を実際に出演者が体験し、最終的には販売員としての検定試験を受けて合格するまでの過程が紹介されている(甲第37号証)。アイスクリームの盛り方や、対面販売による顧客とのコミュニケーションなど、「ババヘラ」を販売する際の実際の特徴も、ユニークに紹介されている。
(s)おいしい物語として「ババヘラ」を紹介するニュース番組「ABSワイドゆう」では、請求人の「ババヘラ」が紹介された上で、視聴者へのプレゼントとしても「ババヘラ」が登場し、さらには問い合わせ先として請求人の名称・電話番号等も紹介されている(甲第38号証)。
「ババヘラ」を大きめの話題として取り扱ったニュース番組である「スーパーモーニング」で「ババヘラ」は、そのユニークな特徴とともに、請求人の会社の紹介や社長のコメントなども含め、10分以上に渡って紹介されている(甲第39号証)。
このように、「ババヘラ」及び「ババヘラ・アイス」は、各種の活字・映像メディアによっても全国的にその知名度を高めているアイスクリームであるが、ここで挙げたものはその多く(甲第5?19・21・29?33号証)が、本件商標出願前(2005年9月15日以前)の請求人の製造・販売に係る商品を扱った記事等である。このうち、「ババヘラ」(引用商標1)の表示は、記事中のかぎ括弧や見出しなどに見ることができ(少なくとも甲第5?8・10・15・18・20?22・37号証)、これと同一範囲の「ババヘラアイス」の表示も数多く見ることができる(甲第5?11・14?20・23・29?31・33?36・38?39号証)。また、引用商標2の態様そのものである「ババヘラ・アイス」の表示は、記事や画面中の商品写真等に見ることができ(甲第5・18?19・29?30・34?35・38?39号証)、これより「ババヘラ」や「ババヘラ・アイス」の表示が、請求人の商品を表す商標として本件商標出願時既に広く知られていたことが分かる。
イ 本件商標と両引用商標との類否について
本件商標上段の「ババヘラアイス発祥の地」の部分から、「ババヘラ」が独立した識別標識として認識されることは既に上に述べるとおりである。また、少なくとも「ババヘラアイス」の表示が抽出されることは、両引用商標の著名性に照らせば、これが目立つ表示となることからは疑うべくもないので、本件商標は両引用商標に類似するものである。
ウ 混同について
請求人の企業努力により広く知られるようになった「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」は、既に秋田のご当地アイスとしての地位を確立している。もちろん、今回挙げた新聞、雑誌、テレビ番組等以外でも、請求人の商品は繰り返し取り上げられており、そのような事実にも鑑みれば、これは既に請求人のブランドとして需要者らには認識されている。一方で請求人の「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」が広く知られているのであれば、「ババヘラアイス発祥の地」なる表示を有する商標を使用したところで、需要者らは「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の部分に注目するのであるから、これを相変わらず請求人の商品と思うのみである。
実際にも、このような混同は生じており、請求人には需要者からの誤った問い合わせや、苦情が寄せられてもいる。例えば、請求人会社のサイトを通じて、「ババヘラ」や「ババヘラ・アイス」に関する問い合わせや感想(甲第41?44号証)、あるいは苦情(甲第45号証)が寄せられているが、これらはいずれも請求人の商品を模して他社が販売する商品に関し寄せられたものである(このうち甲第44号証は、本件商標権者との混同事例である)。これら甲号証は、請求人会社のウェブ担当者へ回答内容を指示した書面であるが、請求人はその都度回答をおこない、需要者に正しい認識を持ってもらうとともに、「ババヘラ」ブランドの価値を維持することに努めているのである。
もちろん、これら以外の電話による問い合わせなども多く、一部需要者間に混乱が生じているが、これは、“「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」といえば「進藤冷菓」”という結び付きが需要者間に強く形成されているためである。「ババヘラ」を冠する商品は何でも請求人のものであるとの認識が需要者間にはあり、それゆえ他社によるこれを模した商品についても、請求人に問い合わせが寄せられるのである。こうした混同を誘発する状況は早く是正されるべきであり、本件商標のような登録も早急にその登録を無効として、需要者らの利益を保護すべきである。
エ 小括
以上、本件商標は、その出願日以前より全国的に広く知られた両引用商標との間で商品の出所混同を生じる類似商標である。特に、上記のとおり、本件商標権者は秋田県に所在するが、秋田より広まった「ババヘラ」が最も早く、かつ深く浸透した地域が秋田とその周辺であることに疑いの余地はないので、本件商標が商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものであることは明らかである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、上記のとおり、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の部分が非常にユニークで特徴的な表示であるため、この部分が独立して自他商品識別標識となり、仮に商標全体として把握される場合であっても、その中において「ババヘラ」「ババヘラアイス」部分の存在は、その著名性に照らせば無視できない。
一方、請求人は長い間アイスクリーム「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」を製造・販売しているのであり、これは請求人自身による企業努力、また多数の新聞や雑誌、あるいはテレビ番組などで紹介されることを通じ、既に秋田のご当地アイスとして全国的にも著名なものとなっている。この点は既に上記(2)において述べたとおりである。
そこで、このような著名な商標と同一の称呼を生じる、あるいは少なくとも強烈な印象を残す「ババヘラ」「ババヘラアイス」の文字を含む本件商標が、特に「アイスクリーム」や「アイスキャンディー」といった指定商品について使用された場合には、全く同じ商品分野における著名な請求人の引用商標「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」との間で、商品の出所につき混同を生じる。今回提出の新聞記事やテレビ番組等では、いずれも「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」と「進藤冷菓」が一緒に紹介され、これは常に請求人との結び付きにおいて理解されているものである。さらに、実際に一部の「ババヘラ」を模した商品に関し、需要者からの誤った問い合わせが請求人に寄せられてもいることも上記のとおりである。
本件商標は、請求人の業務に係る著名な商標「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」との関係で、これを付した商品はあたかも請求人の商品であるかのような誤解を需要者らに与え、両者間において混同を生じるものである。逆に、他人の著名な商標を含む本件商標が、当該他人の業務に係る商品と混同を生じないということは考えられず、特に「ババヘラ」などというインパクトの強い表示を有する本件商標にあってはなおさらである。
したがって、本件商標は、請求人の業務に係る商標と混同を生ずるものであり、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、請求人の広く知られた商標「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」を含むものであるが、本件商標権者は、請求人が長年の企業努力をかけて築き上げてきた「ババヘラ」の信用にただ乗りしようとするものであり、不正の目的が認められる。
請求人の商標「ババヘラ」「ババヘラ・アイス」については、既に上記(2)において説明するとおりであり、本件商標権者はこれにあやかる意図で本件商標を採用したものであることが容易に推測される。本件商標権者はこれに対し、本件商標は「ババヘラ」とは非類似である旨や、「ババヘラ」が一般的表示であるという反論を将来的に準備しているかもしれない。しかし、本件商標が「ババヘラ」に類似し、商品の出所混同を生じることは、これも上記(2)(3)で既に述べたとおりであり、この点に反論するには無理がある。また、「ババヘラ」が一般的な表示であるという点も、決してそのようなことはないのであり、これは当初より請求人の製造・販売に係る商品を指す呼び名である。
もともと、「ババヘラ」ということばは、請求人自身が案出したものではないかもしれないが、これを採用した際には、この呼び名は例えば秋田県男鹿市で広く一般的に用いられていたという訳ではない。「ババヘラ」は、請求人のアイスクリームについてごく一部でそう呼ばれていたというだけで、その響きを気に入った請求人がこれを商品名としたに過ぎない。その後、請求人が考案したパラソルを用いた販売方法とともに、「ババヘラ」の名称も秋田県を発信地として広く知られるようになり、2001年には「ババヘラ」の商標登録をおこなったものである。
請求人が「ババヘラ」の使用を開始した際にも、路上でアイスクリームを販売する業者は存在したが、こうした業者も「ババヘラ」という名称を用いることはなく、それぞれが例えば「ふるさとアイス」「交通安全アイス」「なまはげアイス」などと異なる名称のもとに販売をおこなっていた。ところが、請求人の「ババヘラ」の評判がよくなると、次第に他の業者もこの名称に興味を示すようになり、例えば本件商標にも含まれる「ババさんアイス」など、多少印象の近い商品名を使用する者も出てきた。
そして、さらに「ババヘラ」の人気が高まってくると、今度は「ババヘラ」の表示をしないまでも、ロ頭で「ババヘラ」を名乗って販売する者が出てきた。「ババさんアイス」や他の表示の使用に関しては、請求人も異議を申し立てることはなかったが、ロ頭とはいえ「ババヘラ」を名乗られては、商標の価値が希釈化され、一般名ともなりかねず、延いては請求人の信用も毀損されるおそれがあるため、そのような行為に対しては請求人は厳重な注意をおこなってきた。
ところが、やはり「ババヘラ」の人気にあやかろうとする者は存在するのであり、本件商標のように「ババヘラ」を商品名の一部に含んでカムフラージュし、「ババヘラ」に追随しようとする者が現れてきた。請求人の長い間の企業努力により、ようやく「ババヘラ」が広く知られるようになったところへ、その人気に便乗しようと、本件商標のような出願・登録も行われているのであり、請求人はそのような商標を看過することはできない。繰り返すように、本件商標権者は「ババヘラ」の本場である秋田県男鹿市に所在しており、請求人が広めてきた「ババヘラ」の名声を利用しようとしていることは明らかである。
このように、本件商標は、請求人の「ババヘラ」に近付こうとする意図が透けて見えるのであり、「ババヘラ」の信用にただ乗りしようとする不正の目的が認められる。たまたま地元から広く知られるようになった商標であるからといって、他人の企業努力を無視し、これに類似する商標を登録して使用しようとする行為は許されるべきではない。請求人は、アイスクリームの衛生面に細心の注意を払うことはもちろん、「ババヘラ」のブランドを守ろうと常に努力しており、この名称を希釈化から守るうとする努力も同様におこなうものである。本件商標のような商標が登録されてしまうと、なし崩し的にいくつもの類似商標が並存する状況が生まれかねず、その場合は、商標に化体した業務上の信用を保護しようとする商標法の趣旨にも悖る結果となる。
本件商標は、広く知られた請求人の商標「ババヘラ」あるいは少なくとも「ババヘラ・アイス」と類似する商標であって、長年にわたって築き上げてきた請求人の当該商標に係る信用及び顧客吸引力を利用するという点において不正の目的を有する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(5)まとめ
以上のように、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであり、その登録を無効とすべき商標である。

4 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第23号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号に該当しない理由
ア 請求人は、本件商標中、上段の「ババヘラアイス発祥の地」の文字部分のうち、「ババヘラ」の部分が本件商標の識別要素となるため、これより単独の「ババヘラ」の称呼を生じ、引用商標1の「ババヘラ」の称呼と共通するから、これらは互いに類似する商標と主張している。
しかし、本件商標中の「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」は、秋田県内のいたるところの道路脇のスペースでパラソルを立て、帽子を被り、エプロンをした主に年配女性(多くは農家の主婦)が販売する、コーンにシヤーペット状にアイスを盛り付けた氷菓のことをいい、ババ(「お年寄り」のことを秋田の方言で「ババ」という)がヘラで盛り付けることから「ババヘラ」と呼ばれるようになったもので、遅くとも引用商標1が登録出願された平成13年7月19日以前において、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の語は、秋田県内の路上で年配女性がヘラを用いて盛り付けて売るアイスクリームの一種を表す普通名称となっていたものと認められるから、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の各文字部分は自他商品識別機能を有しないものである。換言すれば、引用商標1は、「ババヘラ」の語が普通名称であるにもかかわらず、過って登録されたものといえるものである。
イ 「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の語が自他商品識別機能を有しないものであることについて
(ア)ノースアジア大学総合研究センター経済研究所(2010年3月31日発行)の経済論集第8号の「秋田の夏の風物詩-ババヘラアイスの研究-その生成と歴史的な背景を中心としてー」(以下「経済論集」という。)(乙第1号証)、インターネット上のフリー百科事典「ウィキペディア」の「ババヘラ」の解説(乙第2号証)及び秋田文化出版(株)(2006年9月29日発行)の「秋田ふるさと検定 公式テキスト(秋田商工会議所監修)(乙第3号証)等によれば、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の誕生の地は、現在の男鹿市角関崎(旧若美町、2005年に男鹿市と合併)と考えられており、このアイスが生まれたのは、第二次世界大戦後の厳しい食糧事情とインフレのさなか、菓子職人であった児玉冷菓(男鹿市角関崎宇百日木30)の創業者が昭和23年に旧若美町(潟西村)の角関崎においてアイスキャンディーの製造・販売を始めたのが契機である。
その後、児玉冷菓が進藤冷菓(男鹿市角間崎宇下屋長根12-1)・杉重冷菓(男鹿市五里合神谷宇鮫の口122)にアイスを卸し、共に販売を始めたのが現在のババヘラアイスに至る道程の第一歩であった。そして、少し遅れて千釜冷菓(男鹿市船越字根木1-105)、若美冷菓(男鹿市払戸)、三浦商店(潟上市飯田川町)が設立された。
この南秋田地区で製造された最初のアイスキャンディーは、長方形のアイスキャンディー、ダルマの形をしたダルマキャンディー等であり、自転車の荷台にアイスボックスを乗せて売っていたものである。
また、ババヘラアイス誕生の地である旧若美町潟西村の人々は、米作を中心とする単作農家でありながら小作農家が多く、水田所有面積が狭いこと、毎年のように八郎潟の洪水被害や病害虫被害に見舞われたこと等の厳しい環境のなかで、女性の出かせぎが少なく家庭を守る主婦が多く残されたことが、このアイスの販売を拡大させる体制を確立させたのと考えられている。
そして、昭和29年頃になるとアイスをコーンの容器に入れて販売するようになり、現在のババヘラアイスの形に近づくことになる。
その後、秋田県内各地の運動会やお祭りなどの種々の催し物に出向いて販売するようになったが、催し物会場に業者が多すぎて店を出せなくなり、モータリゼーションが加速された昭和39年ごろから、その会場の外にある道路で販売を始めたのが発端といわれている。
そして、当初は、「交通安全アイス」などと掲示されていたが、昭和50年ごろに、当時の高校生の間から生じた呼び方という説、秋田県内を案内していた観光バスのバスガイドが、乗客の質問にとっさに答えたのがはじまりという説など多数があり、どれが正しい説なのか定かではないが、1970年代に「秋田県内の路上で年配女性がヘラを用いて盛りつけるアイスクリーム」のことを「ババヘラ」または「ババヘラアイス」と命名され、1980年ごろには一般に「ババヘラ」または「ババヘラアイス」と呼ばれるようになった。
(イ)以上のことは、以下の情報からも認められる。
(a)平成8年9月18日付けの秋田魁新報の新聞記事「ババヘラ・ロック」には、「・・・路傍のアイスクリーム売り、いわゆる『ババヘラアイス』を見つけた・・・」旨が記載されている(乙第4号証)。
なお、秋田魁新報は、創刊135年の歴史を誇り、秋田県内で最も読まれている新聞である(甲第28号証)。
(b)平成8年10月28日付けの秋田魁新報の新聞記事「こだま」には、「・・・県民にとっては昔懐かしいあの味。そう、お祭りや運動会会場,行楽地、路上販売などでおなじみの『ババヘラアイス』のことだ。・・・県内の『ババヘラ』業者は、同町に三つ、男鹿市に二つ、昭和町に一つの計六つ。・・・秋田で生まれ、地場産業・・・」旨が記載されている(乙第5号証)。
(c)平成10年8月16日付けの秋田魁新報の新聞記事「まちひと見聞(ババヘラの風景)」の記事には、「県民になじみの『ババヘラアイス』・・・路傍のアイスクリーム売り、いわゆる『ババヘラ』。・・・売り手を県内各地に送り込んでいるのは若美町を中心とする南秋田地区の計6業者。・・・」旨が記載されている(乙第6号証)。
(d)平成10年8月17日付けの秋田魁新報の新聞記事「まちひと見聞(ババヘラの風景)」の記事には、「・・・県立球場入り口にある『ババヘラ』に寄ってアイスクリームを食べるのが『何とも言えずいいから』だそうだ。・・・「最近ほとんど『ババヘラ』を買っていない。でも、お祭りなどで『ババヘラ』がいれば安心する。おいしいとかまずいとかっていう問題じゃない。『“ババヘラ”はお祭りそのものなんじゃないかな。なくなれば寂しいと思う』。天王町の女性Dさん(26)はそう胸の内を表現した。」旨が記載されている(乙第7号証)。
(e)平成11年4月6日付けの秋田魁新報の新聞記事「『だんご』だ!競馬だ!どっと1万4千人」には、「・・・“ババヘラアイス”を売っていた女性も・・・」旨が記載されている(乙第8号証)。
(f)平成11年6月22日付けの秋田魁新報の新聞記事「地方点描」には、「『路上販売アイスクリーム』と言っても長くなってしまうので、取材先の許しも受けたことだし、やはり『ババヘラ』アイスでいく。ババヘラアイスは、男鹿市、若美町、飯田川町内の合わせて六業者が製造、販売していると聞く。秋田市育ちの自分にとって、休日や運動会などの行事があった時意外は見みかけることがなかったが、男鹿市ではなんにもない“普通の日”でも、雨さえ降らなければ国道101号沿いなどでアイスを販売しているのを見るにつけ『さすが地元、さすが観光地』などと妙に感心している。・・・」旨が記載されている(乙第9号証)。
(g)平成11年7月5日付けの秋田魁新報の新聞記事「北斗星」には、「・・・道端にいる通称ババヘラアイスのおばさんたち。・・・」旨が記載されている(乙第10号証)。
(h)平成11年7月23日付けの秋田魁新報の新聞記事「アイス通じた出会い楽しみ」には、「愛称?ババヘラアイス。皆さんご存知だろうか。カラフルな傘が、今の時期にきっと目立っていると思う。・・・」旨が記載されている(乙第11号証)。
(i)平成11年8月13日付けの秋田魁新報の新聞記事「猛暑では売れない」には、「国道沿いなどでアイスクリームを販売している通称・ババヘラアイス。・・・」旨が記載されている(乙第12号証)。
(j)平成11年9月7日付けの秋田魁新報の新聞記事「鯉川小児童は手作り祭り 縄文太鼓も披露」には、「・・・子供たちは焼きそば、ジュースや『ババヘラアイス』の“店”に陣取り、・・・」旨が記載されている(乙第13号証)。
(k)平成12年7月30日付けの秋田魁新報の新聞記事「ワールドソーラーカー・ラリー」には、「・・・『ババヘラ』が大人気。冷たくておいしい『シャーベットの舌触りが気持ちい』一大潟村スポーツラインわきで売られている通称『ババヘラアイス』が、県外チームを中心に好評だ。・・・」旨が記載されている(乙第14号証)。
(l)平成12年11月11日付けの朝日新聞秋田版の記事「随想」には、「・・・秋田ですごいなあと感心したのは『ババヘラアイス』。このネーミングは心憎いほどうまいし言語センスもいい。十五年前ほど前、初めてこの言葉を聞いて大笑いした。ということは二十年近い歴史を持つ職業なのだろう。国道沿いにパラソルを立て、中高年の女性がスチール缶の中のシャーベット・アイスを金属のヘラでコーンに盛りつける例のやつである。この『ババヘラ』の由来は秋田、というのが定説になっているが、本当なのだろうか。・・・ちなみに『ババヘラアイス』の秋田での正式名称は『交通安全アイスクリーム』。このネーミングの落差も笑える。」旨が記載されている(乙第15号証)。
(m)(有)無明舎出版(2007年7月30日発行)の「食文化あきた考」の「ババヘラの伝説」には、「もはや秋田の特産品といっても過言ではないだろう。道路沿いにビーチパラソルを立て、中高年の女性がブリキ缶に入ったアイスを金属のヘラでコーンに盛り付ける。通称『ババヘラアイス』は、いつのまにか秋田の食文化のひとつとして市民権を得た。味や存在よりもそのネーミングの特異さで県民に親しまれ、全国区になった食べる『言葉の特産品』である。ババヘラを食べたことのないという県民は実は結構多いのだが、名前を知らない県民は少ない、という珍しい食品なのだ。『ババヘラアイス』という名称は2年前(03年)、男鹿市(旧若美町)に会社があるS冷菓によって商標登録されている。大手菓子メーカーであるロッテがその人気に目をつけ、『ババヘラ味のガム』を売り出そうと動いた事から、地元業者が危機感を募らせて法的防衛をとったのである。・・・商標登録したS冷菓では、『10年ほど前から、お客様からそう呼ばれはじめた』と新聞取材などに答えているが、これは時間的に正確さを欠く。たぶん、ババヘラという語感には蔑称のニュアンスが含まれていため、売り手である業者の人たちにはいらなかっただけで、すでに20年間以上前から若者達の間では符丁のように流通していた言葉でもあります。・・・」旨が記載されている(乙第16号証)。
(n)インターネット上の「AKITA_STYLE 秋田の基礎知識」のホームページの「初級偏『ばばへらアイスstandard』の『mission03 目撃レポート』」で、2000年7月21日のレポートとして、「・・・各社全く呼び名がバラバラにも関わらず、『ババヘラ』で勝手に統一されているのが、また、秋田らしくてたまりません。・・・」旨が記載されている(乙第17号証)。
(ウ)請求人は、「『ババヘラ』の部分は一見して造語であり」と主張しているが、上述したように秋田県ではアイスクリームの一種を表す普通名称として知られている語である。また、下記の新聞記事から明らかなように、請求人の社長自身も認識、理解していたものである。
(a)平成16年5月2日の朝日新聞の記事(甲第10号証)に、記者の「ババヘラ売りがたくさんいるのはなぜ?-お年寄りの販売員が多いですね。何人いるのですか。-」という質問に対して、進藤冷菓・進藤永三社長は「おばあさんがヘラですくうからババヘラ。お客さんからそう呼ばれ始めて10年はたちます。・・・うちは45人。同業6社も含めると、約170人が県内で販売しています。」と答えているように、請求人の社長本人がババヘラは、造語ではなく、また、同業者が6社あることを述べており、請求人の社長はババヘラがアイスクリームの一種を示す普通名称であることを自認していることを示すものである。
(b)平成14年5月29日の新聞記事(甲第5号証)には、「・・・秋田県内の幹線道路沿いに立つ露店で販売され、『ババヘラ』の愛称で親しまれてきた昔懐かしいシャーベット・・・。進藤冷菓は四年ほど前から『ふるさとアイス』の名称で通信販売を行ってきたが、愛称と商品名が異なることや、大手菓子メーカーから商標登録したいとの話が寄せられたため、『地元として守らなければ』(進藤社長)と思い立って急きょ商標登録した。同様のシャーベットは現在、県内のほかの五業者も販売している。・・・」旨が記載されている。
(c)平成14年7月20日の新聞記事(甲第6号証)には、「・・・秋田県人ならご存知だと思うが、秋田名物『ババヘラアイスクリーム』の販売だ。・・・今年創業50周年を迎えた「進藤冷菓」(若美町角関崎)の代表、進藤永三さん(53)を尋ねて話を聞いた。アイスは、以前まで『ふるさとアイスクリーム』という名称で、主に運動会や学芸会などの会場に出掛けていた。その後、昭和46年から街道沿いに出店するようになり、この商売を『ババヘラ』と呼ぶようになったという。名前の由来は単純なもの。お年寄りを秋田の方言で『ババ』、そのお年寄りが金属の専用のヘラでコーンに盛るところからその名がついた。・・・県内には、進藤冷菓を含め6業者が営業している。」旨が記載されている。
(d)平成14年7月31日の新聞記事(甲第7号証)には、「秋田名物アイス売り、秋田県若美町や男鹿市などの6業者が、国道沿いや夏祭り会場などで販売している秋田の夏の風物詩。女性が金属のヘラでコーンに盛り付ける姿から、地元の高校生らが親しみを込めて『ババヘラアイス』と呼ぶようになったといわれる。」旨が記載されている。
(e)新聞記事(甲第16号証)には、「・・・年配女性が国道沿いでヘラですくって売ることから名付けられたという秋田名物『ババヘラアイス』も登場。・・・」と記載され、新聞記事(甲第22号証)には、「年配の女性が金ヘラでアイスクリームを盛る通称『ババヘラアイス』。販売元が意識して名付けた名前ではない。」旨が記載されて、ババヘラがアイスクリームの一種を示す普通名称である事を示す事実が記載されている。
(エ)以上の事実からすると、遅くとも平成8年には、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の語は、秋田県内の路上で年配女性がヘラを用いて盛り付けて売るアイスクリームの一種を表す普通名称となっていたものと認められるものであるから、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の各文字部分は自他商品識別機能を有しないものである。
ウ なお、本件商標を構成する文字中の「発祥の地」及び「元祖」に関して、「発祥地」とは「物事の初めて起こった土地」と記載され、「元祖」とは「ある物事を初めてしだした人」と記載(「広辞苑第2版」(昭和51年12月1日株式会社岩波書店発行))(乙第18号証)されていることより、「発祥の地」及び「元祖」の各文字部分には自他商品識別標識機能を有しないものである。
エ したがって、本件商標の自他商品識別機能を有する部分は、造語として認められる「ババさんアイス」及び「児玉冷菓」の各文字部分にあるから、これらが本件商標の要部を構成するものというべきである。
オ 上述より、本件商標の要部は「ババさんアイス」あるいは「児玉冷菓」である。
他方、引用商標1は自他商品識別機能を有しないものであるから、本件商標と引用商標1との類否を判断するまでもないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号には該当しない。
(2)商標法第4条第1項第10号、第15号に該当しない理由
ア 請求人は、「引用商標1『ババヘラ』、あるいはこれに商品(アイスクリーム)の普通名称が加わった引用商標2「ババヘラ・アイス」は、請求人の製造・販売するアイスクリームあるいはアイスキャンディーの商標として、需要者・取引者の間では広く知られたものとなっている。」旨主張している。
しかし、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の語は、秋田県内の路上で年配女性がヘラを用いて盛り付けるアイスクリームの一種である普通名称であるから、自他商品識別機能を有しないものである。
してみれば、請求人の製造・販売するアイスクリームまたはアイスキャンディーに「ババヘラ」の語を使用しても、需要者・取引者のは単に普通名称を表すものと理解、認識するにすぎないとみるのが妥当である。
イ (ア)請求人は、甲第5号証から甲39号証より周知性がある旨主張しているが、甲第13号証、甲第17号、甲第18号証、甲第19号証、甲第37号証、甲第38号証、甲第39号証の各証拠の発行月日(放送月日)が不明である。また、甲第20号証の発行日は平成18年5月19日、甲第22号証の発行日は平成19年5月25日、甲第23号証の発行日は平成21年7月4日、甲第34号証の放送日は、平成19年4月28日、甲第35号証の放送日は、平成19年7月22日、甲第36号証の放送日は、平成21年6月18日で、本件商標の登録出願日より後の記事である。
したがって、以上の甲号証は単に請求人の使用事実を述べているだけのものであって、周知性を立証するものではない。これは、「ババヘラ」または「ババヘラアイス」の語が普通名称であることを示しているだけである。
(イ)「パラソルは『ババヘラ』の大きな特徴であって請求人が発案した」などの記載があるが、「パラソル」を使用した販売方法の周知性と、「ババヘラ」が周知であるということは関係ないものである。
(ウ)請求人は「『ババヘラ』あるいは『ババヘラ・アイス』は、2000年頃の使用開始から広く需要者らに知られるところになり、『ババヘラ』と請求人『進藤冷菓』との結びつきが強い」と主張しているが、例えば、甲第10号証に記載されているように「・・・おばあさんがヘラですくうからババヘラ。お客さんからそう呼ばれ始めて10年はたちます。・・・・うちは45人。同業6社も含めると、約170人が県内で販売しています。・・・」と請求人の社長が自ら述べているように、「ババヘラ」と請求人「進藤冷菓」との結びつきを示す証拠はない。
(エ)請求人は、「インターネット検索サイト『Goog1e』では、『ババヘラ』『進藤冷菓』のキーワードで検索を行うと、約2820件のサイトが検索されるように、現在も多数のサイトやブログにおいて、『進藤冷菓』の『ババヘラ』が注目されている」と主張しているが、商標権者が同様に、インターネット検索サイト「Google」により、「ババヘラ」+「進藤冷菓」、「ババヘラ」+「児玉冷菓」、「ババヘラ」+「若美冷菓」、「ババヘラ」+「杉重冷菓」、「ババヘラ」+「千釜冷菓」のキーワードで検索を行うと、それぞれ2070件、290件、171件、153件、108件のサイトが検索されているように、進藤冷菓以外の業者も注目されていることが分かる(乙第19号証ないし乙第23号証)。
(オ)請求人は、需要者からの問い合わせに関する甲第40号証から甲第45号証を提出しているが、上述したように、需要者は「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」のことを「年配女性がヘラでアイスをコーンにすくうアイスクリームの一種である」以上の認識ができないものであるから、このような問い合わせは当然起こり得る問い合わせである。
すなわち、会社名などを付けて「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の表示しなければ、需要者はどの業者が製造・販売しているのか需要者は認識できないものである。
(カ)以上のことより、甲第5号証から甲45号証においては、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」が請求人の商品であることを結びつけるものではなく、かつ、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」が請求人の商品であると需要者・取引者の間で広く知られたものであることを示すものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号には該当しない。また、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないから、同15号にも該当するものではない。
(3)商標法第4条第1項第19号に該当しない理由
ア 請求人は、「本件商標は、請求人の広く知られた商標『ババヘラ』、『ババヘラ・アイス』を含むものであるが、本件商標権者は、請求人が長年の企業努力をかけて築き上げてきた『ババヘラ』の信用にただ乗りしようとするものであり、不正の目的が認められる」と主張している。
しかし、「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」は、秋田県内の路上で年配女性がヘラを用いて盛り付けるアイスクリームの一種である普通名称であり、1980年ごろには、秋田県民になじみのある言葉として定着して現在に至るものである。
そして、商標権者は、ハバヘラアイス発祥の地である旧若美町でこのアイスクリームを製造・販売しているので、「ババヘラ」の信用をただ乗りしようとするものではなく、不正の目的はないことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号には該当しない。
イ なお、甲第5号証の記事には、「秋田県内の幹線道路沿いに立つ露店で販売され、「ババヘラ」の愛称で親しまれてきた昔懐かしいシャーベット・・・進藤冷菓は四年ほど前から「ふるさとアイス」の名称で通信販売を行ってきたが、愛称と商品名が異なることや、大手菓子メーカ現在、県内のほかの五業者も販売している」の記載があり、進藤社長は地元を守るために商標登録した旨、及び、他に5業者がいることが記載されている。
また、甲第20号証の記事には、「ババヘラを商標登録したのはいつですか。『ある時、東京の大手菓子メーカーから突然ババヘラの名前でガムを販売したいという電話がきました。寝耳に水の話でしたが、当時は商標登録していなかったことから・・・、その後、商標登録を急ごうと、結局自社で平成13年に申請しました。』・・・」と進藤冷菓の進藤永三社長の発言が載っている。
また、前記経済論集(乙第1号証)には、「・・・進藤永三社長は大手の製菓会社にこの名称を登録されると、これからのババヘラアイスの販売に支障をきたすと考え、秋田県外商協会(露店商の組合)と相談して平成14年5月にこの名称を商標登録した(進藤冷菓への聞き取り調査による)。・・・」と記載がある。
このように、請求人は、他の5業者の製造・販売するアイスクリームを「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」と呼ばれることを知って、そして、地元を守るつもりで「ババヘラ」の商標登録をしたと主張しているにもかかわらず、商標登録をした後に、他の業者の「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の使用を排除し、利益を独占しようとする行為は、秋田県民及び他の5業者が築き上げてきた「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」の信用及び地域の財産を奪い取るものであって、信義則に反する行為で、商取引上許されない行為と思料する。
(4)結び
以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号、同第19号の規定に違反して登録されたものではない。

5 当審の判断
(1)認定事実
ア 当事者提出の証拠及び主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人及び被請求人は、ともに、秋田県男鹿市角間崎において、冷菓等を取り扱う事業者である。「ババヘラアイス」が生まれたのは、第二次大戦後、前記の角間崎地区において、菓子業者であった被請求人の創業者がアイスキャンデーの製造販売を始めたのが契機とされ、その後、請求人、杉重冷菓と共に販売を始めたのが、ババヘラアイスに至る道程の第1歩であった。その後、男鹿市のほかの業者もその製造販売に参入した(乙第1号証)。
(イ)最初は、長方形やだるまの形をしたアイスキャンデーを自転車で販売していたが、昭和29年頃には、アイスをコーンの容器に入れて販売するようになり、バイクでリヤカーを引いて、秋田県内各地の運動会やお祭りなどの会場に出向いて販売するようになった。しかし、昭和39年ごろ、モータリゼーションの加速等もあって、前記会場に出店する業者が多くなりすぎて会場内に出店できなくなる事態が発生したため、会場外の道路に出て路上販売をするようになった。また、出稼ぎに出られない当地域近在の主婦等にとって格好の働き場として、比較的年齢の高い女性達が路上販売員の仕事に従事することが多かった(乙第1号証及び乙第2号証)。
(ウ)平成8年9月18日付、同年10月28日付及び平成10年8月16日付の新聞「秋田さきがけ」(乙第4号証ないし同第6号証)には、それぞれ、「県庁からの帰り、路傍のアイスクリーム売り、いわゆる『ババヘラアイス』を見つけた・・」、「・・県民にとっては昔懐かしのあの味。そう、お祭りや運動会会場、行楽地、路上販売などでおなじみの『ババヘラアイス』のことだ。」、「県民になじみの『ババヘラアイス』」というように、路傍などで販売されるのアイスクリームを「ババヘラアイス」として、その紹介記事や小見出しが掲載されている。
そして、平成11年に発行の同新聞(乙第8号証ないし同第13号証)にも、路傍などで販売されるアイスクリームを「ババヘラアイス」と称している旨を記載した記事が掲載されている。
(エ)また、平成14年7月20日の産経新聞(甲第6号証)には、「・・・秋田県人ならご存知だと思うが、秋田名物『ババヘラアイスクリーム』の販売だ。・・・この商売は、秋田県で生まれ、他県には存在しない。今年創業50周年を迎えた『進藤冷菓』(若美町角関崎)の代表、進藤永三さん(53)を尋ねて話を聞いた。アイスは、以前まで『ふるさとアイスクリーム』という名称で、主に運動会や学芸会などの会場に出掛けていた。その後、昭和46年から街道沿いに出店するようになり、この商売を『ババヘラ』と呼ぶようになったという。名前の由来は単純なもの。お年寄りを秋田の方言で『ババ』、そのお年寄りが金属の専用のヘラでコーンに盛るところからその名がついた。・・・県内には、進藤冷菓を含め6業者が営業している。・・・」との記事が掲載されている。
また、平成14年7月31日の河北新報新聞(甲第7号証)には、「秋田名物アイス売り、秋田県若美町や男鹿市などの6業者が、国道沿いや夏祭り会場などで販売している秋田の夏の風物詩。女性が金属のヘラでコーンに盛り付ける姿から、地元の高校生らが親しみを込めて『ババヘラアイス』と呼ぶようになったといわれる。・・・」との記事が掲載されている。さらに、前記以外の新聞記事(甲第16号証、甲第22号証)にも、「・・・年配女性が国道沿いでヘラですくって売ることから名付けられたという秋田名物『ババヘラアイス』も登場。・・・」、「年配の女性が金ヘラでアイスクリームを盛る通称『ババヘラアイス』。販売元が意識して名付けた名前ではない。・・・」と記載されている。
(オ)請求人は、平成12年頃に標章「ババヘラ」を同人の商品に採用し始め、翌年7月に引用商標1の登録出願をした。
イ 以上からすれば、遅くとも平成8年から同10年頃に、秋田県男鹿市近辺のイベント会場や路上で年配女性によって冷菓が販売され、その冷菓の名称成立の経緯については諸説があるものの、いずれにしろ、「ババ(「年寄り」を指す秋田の方言)がヘラでコーンに盛りつけた冷菓」であることに由来し、同冷菓が「ババヘラアイス」と称されていた事実があり、その後も当該呼び名が継続したと認められる。当該名称は、引用商標1の出願時には既に、前記地域を中心として相当な範囲で知られたものであったと推認し得るものである。
そして、前記名称の由来及び当該冷菓の販売業者のほとんどが所在することから、秋田県の前記地域が、「ババヘラアイス」と称され販売される冷菓の発祥の地であるということができる。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標1との類否について
(ア)本件商標は、別掲(1)に示すとおり、最上段に、「ババヘラアイス発祥の地」の文字を中央が膨らむよう弧状に表し、中段に「ババさんアイス」の文字を表し、その下段の左側に、黒い暖簾風の図の中に「元祖」の文字を白抜きにしたものを配し、その右に、他の文字に較べて、縦横の各幅が略3倍ほどの大きさで、「児玉冷菓」の文字を籠字風に表したものである。
しかして、本件商標の構成文字中上段の「ババヘラアイス発祥の地」の文字部分には、「ババヘラ」の文字が含まれているものの、当該文字部分は、後続する「アイス発祥の地」と同じ書体、同じ大きさ、等間隔をもって表されているものであり、かつ、「ババヘラアイス」と「発祥の地」とが一連に結び付いて「ババヘラアイスというものが初めて起こった土地」ほどの意味を認識させるものであるから、不可分一体のものとして看取されるのが自然である。
そうとすると、本願商標は、上段の「ババヘラアイス発祥の地」の文字に相応して、「ババヘラアイスハッショウノチ」の称呼を生ずるものであり、また、その構成中の中段及び下段の文字に相応して、「ババサンアイス」「ガンソコダマレイカ」「コダマレイカ」の各称呼を生じ得るものである。

しかしながら、構成中の「ババヘラ」の文字部分や「ババヘラアイス」の文字部分に相応した称呼をもって取引に資されるとすべき特段の理由はみいだせないから、単に「ババヘラ」の称呼は生じないというべきである。
(イ)引用商標1は、「ババヘラ」の文字を横書きしてなるものであり、構成文字に相応して「ババヘラ」の称呼が生じ、「年寄りがヘラでコーンに盛りつけた冷菓」(以下、単に「ババヘラ」という。)の観念を生じ得るものである。
なお、請求人は、引用商標1が需要者らの間で広く知られる商標となっている旨主張するが、全証拠に徴しても、引用商標1を使用した商品の販売数量等の取扱の実績や取引相手の地域等、その使用の実績を把握し得る証左はみいだすことができず、また、新聞・雑誌やテレビのニュース等で取り上げらたことを除き、引用商標1を使用した商品の広告宣伝等の事実も明らかでないから、引用商標1についての周知性や著名性の主張を直ちに首肯することはできないものである。
(ウ)しかして、本件商標と引用商標1とを対比してみると、両者は、全体の外観構成において著しく相違するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件商標の構成文字中,「ババヘラアイス発祥の地」の文字部分は、不可分一体のものとして看取されるのが自然であって、本件商標にあって、「ババヘラ」の文字部分のみが強く印象され、記憶されるとすべき理由はみいだせず、外観上、当該文字部分のみが殊更に強い印象を与えるものとはいえない。
してみれば、両者は、外観上相紛れるおそれはないものである。
次に、称呼についてみると、引用商標1の称呼「ババヘラ」と、本件商標から生じ得る称呼「ババヘラアイスハッショウノチ」、「ババサンアイス」、「ガンソコダマレイカ」及び「コダマレイカ」の各称呼とは、いずれも、構成音数及び相違する各音の音質の相違によって、相紛れる余地はないものである。
また、両商標の観念については、本件商標から「ババヘラ」の観念が生じない以上、観念上、比較することはできない。
してみると、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標1に類似する商標と判断することはできない
イ 小括
以上によれば、本件商標は、引用商標1に類似する商標と認めることができないから、指定商品の類否について言及するまでもなく、引用商標1をもって商標法第4条第1項第11号に該当するものということはできず、同号に違反して登録されたものとは認められない。
(3)商標法第4条第1項第10号について
ア 引用商標2の周知性について
引用商標2として主張された商標は、別掲(2)に示すとおり、「ババヘラ・アイス」の文字からなると認められるところ、当該標章を表示したとする商品について、全証拠によっても、具体的な商品に使用された態様が明らかでない上、請求人による販売数量等取扱の実績や取引の地域等を具体的に把握し得る証左はみいだすことができず、また、広告宣伝の事実も明らかでない。
そして、証拠として提出された新聞の紹介記事の中で、「ババヘラ・アイス」や「ババヘラアイス」が請求人を指称する名称「進藤冷菓」とともに紹介された事実(甲第5号証ないし同第24号証)が見いだせるものの、それらは、請求人の商品に表示された商標に基づき記載されたものというよりも、被請求人が、上記(1)で述べた秋田県の名物の冷菓を取り扱っている事実を記載したものとみるのが相当である。
なお、当該記事中には、「ババヘラ・アイス」や「ババヘラアイス」が請求人によって商標登録された旨の記載も認められるところ、職権による調査をするも、これらが商標登録された事実はなく、結局、その記載は、引用商標1が登録された事実との関わりで、当該記事の作成者が商標登録に関する事実を正確に把握していないことによる誤認といわざるを得ないものである。
しかして、全証拠によっても、引用商標2は、本件商標の出願時において、請求人の商品を表示する商標として、需要者の間で広く認識されるに至っていたと認めることはできないものである。
イ 本件商標と引用商標2との類否について
本件商標は、前記(2)で述べたとおりの「ババヘラアイスハッショウノチ」、「ババサンアイス」、「ガンソコダマレイカ」及び「コダマレイカ」の各称呼を生ずるものであり、また、その構成中の「ババヘラアイス発祥の地」の文字部分は、不可分一体のものとして看取されるところからすれば「ババヘラアイス」の観念が生じないものであるから、例え、引用商標2から、「ババヘラアイス」の称呼が生じ、「ババヘラのアイス」の観念をもって把握・理解されることがあるとしても、称呼において明らかに異なるものであって、観念においては比較することができないから、称呼及び観念上、引用商標2と相紛れるおそれはないものである。
そして、上記(2)のとおり、本件商標の構成文字中,「ババヘラアイス発祥の地」の文字部分は、不可分一体のものとして看取されるのが自然であって、本件商標にあって、「ババヘラアイス」の文字部分のみが強く印象され、記憶されるとすべき理由はみいだせず、外観上、当該文字部分のみが殊更に強い印象を与えるものとはいえない。
してみれば、両者は、外観上相紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標2に類似する商標と判断することはできない。
ウ 小括
以上によれば、本件商標は、他人の周知商標に類似する商標には該当しないから、商標が使用される商品の類否について論及するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当するということはできず、同号に違反して登録されたものとは認められない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、前記のとおり、引用商標1及び2と類似するものではなく、また、全証拠によっても、引用商標1及び2が請求人の取り扱いに係る商品を表示する商標として需要者間に広く認識されるに至ったと認めることはできないものである。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、本件商標の出願時及び登録査定時のいずれにおいても、需要者が引用商標1及び2を想起し連想して、当該商品を請求人の業務に係る商品、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤認するとは認め難い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとはいえない。
(5)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、前記のとおり、引用商標1及び2に類似するものと認めることができない上、引用商標1及び2が需要者の間で広く認識されるに至っていたものとも認められない。
また、被請求人は、「ババヘラアイス」販売の発祥地(秋田県男鹿市)の事業者であること、「ババヘラアイス」と称される冷菓が被請求人を含む複数の同業者によって、引用商標1の出願時よりも相当以前から継続して販売されてきたこと、前記冷菓の名称が請求人に由来するとみるべき的確な証拠はないこと等、「ババヘラアイス」に係る事情を勘案してみれば、被請求人が、請求人の信用に依存し、それにただ乗りするなどの「不正の目的」をもって本件商標を使用するものであるということはできないというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものとはいえない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号によって、その登録を無効とすることはできないものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)引用商標2(色彩については原本を参照されたい。)


審理終結日 2010-11-29 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-18 
出願番号 商願2005-86649(T2005-86649) 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (Y30)
T 1 11・ 25- Y (Y30)
T 1 11・ 271- Y (Y30)
T 1 11・ 26- Y (Y30)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
小川 きみえ
登録日 2006-06-09 
登録番号 商標登録第4959166号(T4959166) 
商標の称呼 ババヘラアイスハッショーノチババサンアイス、ババヘラアイスハッショーノチ、ババサンアイス、ババサン、ババ、ガンソコダマレーカ、コダマレーカ、コダマ 
代理人 木村 吉宏 
代理人 澤木 誠一 
代理人 奥村 陽子 
代理人 澤木 紀一 
代理人 小谷 武 
代理人 井上 博人 
代理人 伊東 美穂 

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