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審決分類 審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て成立) Y43
管理番号 1231811 
判定請求番号 判定2010-600061 
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2011-03-25 
種別 判定 
2010-10-09 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4797745号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 請求人が使用するイ号標章は、登録第4797745号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第4797745号商標(以下「本件商標」という。)は、「健遊館」の文字を標準文字で表してなり、平成15年12月1日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同16年8月27日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
請求人が、高齢者向け賃貸住宅に使用するイ号標章は、「健遊館」の文字を書してなるものである。

第3 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証及び資料1を提出した。
1 判定請求の理由
(1)イ号標章は、高齢者専用賃貸住宅に使用する不動産の名称であり、商標法上の「商標」ではない。
(2)請求人は、本件商標の指定役務を提供していない。請求人の提供する役務は、「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与」であり、本件商標の指定役務とは類似しない。
(3)したがって、本件商標とイ号標章とは、商標が一致するとしても、イ号標章は、不動産に付されている名称であって、本件商標の指定役務を提供するものではないから、本件商標に係る商標権の効力の範囲内に属しない。
2 判定請求の必要性
請求人は、イ号標章を用いた高齢者専用賃貸住宅を提供しているところ、本件商標に係る商標権者(被請求人)から、警告書(資料1)を受け取ったため、判定を請求した。

第4 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するとの判定を求め、その理由を次のように述べた。
1 甲2には、「多目的ホールなどを備える。」との記載がある。
2 甲4第2頁には、「配食サービスは別途費用となります」との記載がある。
3 甲5には、「くらしのしおり1」に、「お食事について・・・2階食堂ホールにてカフェテリア形式でお召し上がり下さい。」との記載がある。
4 同じく、甲5には、「Life Information3」に「小会議室・多目的ホール」との記載がある。
5 甲6には、「食事代は別途必要です。」との記載がある。
6 甲8の3には、「別契約とすべきもの 食事の提供を行うサービス」との記載がある。
7 以上から明らかなように、「小会議室・多目的ホール」、「食事」については、本件商標の指定役務中「会議室の貸与」、「飲食物の提供」に該当する。
特に、「食事」は、独立した収支計算のもとに行われていることが明らかであるから、本件商標の指定役務中の「飲食物の提供」に該当する。
甲4ないし6は、総合カタログのように、その中で提供されているサービスが網羅されているような性格を有し、表紙等にイ号標章が記載されていれば、イ号標章をもって各役務が提供されているとみることができる。
よって、イ号標章は、本件商標の指定役務に含まれる役務について使用されており、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

第5 当審の判断
1 イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するか
(1)甲2は、2010年6月20日付け岐阜新聞中濃版の記事の写しであり、高齢者専用賃貸住宅「健遊館」の開設記念式典に関する記事が掲載されている。
(2)甲3は、2010年6月20日付け中日新聞中濃版の記事の写しであり、高齢者専用賃貸住宅「健遊館」の開設記念式典に関する記事が掲載されている。
(3)甲4は、「健遊館のご案内」と題する入居の案内の写しであり、2頁に入居費用として、「家賃、管理費、敷金・礼金」等が記載され、「敷金:家賃1ヵ月相当、礼金:家賃1ヵ月相当(上記は新貸借契約時に申し受けます。)」との記載がある。また、3頁に「1 お問い合わせ 健遊館にご入居いただくための条件や流れを専任スタッフがご説明いたします。・・・」、「5 入居ご契約 当社と『住居賃貸借契約』を締結していただきます。敷金・礼金のお支払いをお願いいたします。」と記載されている。
(4)甲5は、1枚目に「健遊館のご案内」及び「(株)白水館」と表示された入居の案内の写しである。
(5)甲6は、「入居予約中 健遊館 2010年春オープン!!」と題する、入居者募集のためのパンフレットの写しであり、表紙に建物の写真とともに「高齢者住宅 健遊館」の記述、賃貸住宅の居室の間取り、家賃等の記述とともに「3階 高齢者専用賃貸住宅」の記述があり、連絡先として「健遊館のお問い合わせは(株)白水館」との記述がある。
(6)甲7の2は、高齢者専用賃貸住宅の登録情報検索サイトの写しであり、3枚目に当該住宅の賃貸人として「(株)白水館」との記述、賃貸住宅の戸数が36戸、そのうち高齢者専用賃貸住宅の対象となる戸数が18戸との表示、5枚目に「物件情報」として「名称」が「健遊館」との記述がある。
(7)甲8の1は、平成20年5月8日付けの岐阜県知事宛の「高齢者円滑入居賃貸住宅登録申請書」の写しであり、2枚目に「申請者」として「株式会社 白水館」、「高齢者専用賃貸住宅の戸数」が「18戸」との記述があり、3枚目に「住宅情報」として「名称」が「健遊館」との記述がある。
(8)甲8の2は、平成21年11月13日付けの岐阜県都市建築部公共建築住宅課長から株式会社白水館宛の「高齢者円滑入居賃貸住宅の登録抹消及び登録替えについて(ご案内)」とする文書の写しである。
(9)甲8の3は、平成22年1月28日付けの岐阜県知事宛の「高齢者円滑入居賃貸住宅登録申請書」の写しであり、登録申請者の名称として「株式会社 白水館」の記述、2枚目に「登録申請対象戸数」が「18戸」、「賃貸人の名称」が「株式会社白水館」との記述、8枚目に「高齢者円滑入居賃貸住宅のチェックリスト」として「賃貸借契約である旨が明記されていること」、「賃貸借の対象物が明記されていること」、「賃貸借の対象物に対する賃料に相当するものが明確であること」との記述がある。
(10)甲8の4は、岐阜県知事から、株式会社白水館宛の「高齢者円滑入居賃貸住宅に係る登録通知書」の写しであり、甲8の3に係る申請について、平成22年5月19日付けで登録され、登録番号が付され、登録内容は、「平成22年1月28日付け高齢者円滑入居賃貸住宅登録申請書に記載のとおり」と記述されている。
(11)甲9の1は、「住居賃貸契約書」の写しであり、1枚目に「物件名」「健遊館」、「グループハウス千日草」、「株式会社 白水館」、3枚目に「貸主」として「(株)白水館」、9枚目に「貸主(甲)」として「株式会社 白水館」との記述がある。
(12)甲9の2は、「住居賃貸契約書」の写しであり、1枚目に「物件名」「健遊館」、「高齢者専用賃貸住宅『福寿草』」、「株式会社 白水館」、3枚目に「貸主」として「(株)白水館」、9枚目に「貸主(甲)」として「株式会社 白水館」との記述がある。
以上の甲各号証を総合すれば、請求人がイ号標章を使用して提供する役務は、「高齢者向けの賃貸住宅の提供」と認められる。
他方、本件商標の指定役務は前記の第1のとおりである。
そうすると、イ号標章を使用する役務と、本件商標の指定役務とは、需要者の範囲、業種、業務や事業者を規制する法令及び同一の事業者が提供する役務であるか否か等を総合的に考慮しても、類似するものということはできない。
したがって、イ号標章と本件商標とが、その構成する文字を同一にするものであるとしても、イ号標章の使用に係る役務と本件商標の指定役務とが、同一又は類似するものではない以上、イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するものということはできない。
2 被請求人の主張について
(1)被請求人は、請求人がイ号標章を使用して「小会議室・多目的ホール」及び「食事」を提供しているから、イ号標章は本件商標の商標権の効力に属すると主張する。
しかしながら、被請求人の主張に係る役務は、イ号標章の使用に係る役務「高齢者向けの賃貸住宅の提供」を受ける者、すなわち、高齢者向けの賃貸住宅の入居者であることが、甲各号証から十分に推認しうるものである。
そうすると、当該役務は、イ号の使用に係る役務に付随するものであって、独立して商取引の目的となっているものということはできず、また、被請求人もその主張に係る証拠を全く提出していない。
してみれば、当該役務は、商標法上の役務としての要件というべき「独立して商取引の目的たりうべきもの」(社団法人発明協会発行「特許庁編 工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第17版〕」1160頁参照、なお、同旨の判示について東京高等裁判所の判決(平成11年(行ケ)第390号、平成12年(行ケ)第105号)及び大阪地方裁判所の判決(平成18年(ワ)第4737号)参照)であることを満たすものではない。
したがって、当該役務は、商標法上の役務ということはできず、商標法上の役務である本件商標の指定役務「会議室の貸与」及び「飲食物の提供」との同一又は類似について論ずる余地もないというべきである。
(2)被請求人は、特に「食事」は、独立した収支計算のもとに行われていることが明らかであると主張する。
しかしながら、被請求人の主張の根拠が、食事代が別料金である点(甲4、甲6、甲8の3)にあるとしても、その役務が、商標法上の役務ということができないのは、前記(1)のとおりである。
したがって、請求人の提出に係る甲号証に、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」に相当するかのような文言が形式的に存在することを捉えて、直ちに当該文言に係る役務が、商標法上の役務に該当し、かつ、本件商標の指定役務に含まれる役務であることを理由として、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、とする被請求人の主張は、採用できない。
3 まとめ
以上からすれば、イ号標章は、本件商標権の効力の範囲に属しないものといわざるを得ない。
よって、結論のとおり判定する。
判定日 2011-02-01 
出願番号 商願2003-106540(T2003-106540) 
審決分類 T 1 2・ 0- ZA (Y43)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加園 英明 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官
前山 るり子
内田 直樹
登録日 2004-08-27 
登録番号 商標登録第4797745号(T4797745) 
商標の称呼 ケンユーカン 
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 
代理人 足立 勉 

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