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審決分類 |
審判 査定不服 商3条柱書 業務尾記載 登録しない X35 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない X35 |
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管理番号 | 1230136 |
審判番号 | 不服2008-11969 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-05-12 |
確定日 | 2011-01-04 |
事件の表示 | 商願2007-30718拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成19年4月2日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、以下(1)及び(2)のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。 (1)商標法第3条第1項柱書により商標登録を受けることができる商標は、現在使用をしているもの又は近い将来使用をするものと解される。しかし、本願に係る指定役務「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、一般的に百貨店・総合スーパー、総合商社等の事業に関するものであるが、職権による調査では、出願人がこれらの事業を経営している事実を見出すことができない。よって、かかる状況の下では、出願人がその指定役務について出願に係る商標を使用しているか又は近い将来使用をすることについて疑義があるといわざるを得ない。したがって、本願は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しているということができない。 (2)本願商標は、その構成中に「NATIONAL」の文字を有してなるところ、これは、「家電・住宅設備・情報通信機器・半導体・電子部品・産業用機器等の製造・販売」等で著名な松下電器産業株式会社(大阪府門真市大字門真1006)の著名な商標をその一部に有するものであるから、このような商標をその指定する役務について使用するときは恰も上記会社に係る役務であると誤認し、若しくは上記会社と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の需要者が役務の出所について混同するおそれがあるものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 当審の判断 (1)商標法第3条第1項柱書について 本願の指定役務は、「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であるところ、これは、いわゆる「総合小売等役務」とされるものであって、小売業等を行う者が、衣料品、飲食料品及び生活用品の各範疇にわたる商品を一括して1事業所で扱い、それらの商品の売上げがいずれも総売上高の10%?70%程度の範囲内にあることがこの目安とされるものである。そして、本願の指定役務は、具体的にいうならば、原審も説示するように、百貨店又は総合スーパーが提供する役務である。 そこで、提出された証拠(甲4ないし甲9)をみると、請求人のスーパーにおける2002年度から2007年度の部門別売上として、「乳製品」、「菓子」、「青果」、「精肉」、「鮮魚」、「食品」、「酒類」、「雑貨」、「ブック」、「通販」の項目ごとに売上高が集計されている(審決注:各年度で若干の項目の異同がある。)が、それらの売上げからは、衣料品、飲食料品及び生活用品の各範疇にわたる商品の売上げが、いずれも総売上高の10%?70%程度の範囲内にあるものとは認めることはできない。 また、請求人のスーパー「NATIONAL AZABU」の店舗内の写真(甲3)からは、衣料品の売り場面積はごく狭小なものとしか認められないから、衣料品の売り上げ高も、食品と比較して僅少なものと推認される。 加えて、インターネットを利用した請求人の通販サイト(甲2)の品ぞろえも、「お酒Liquor」、「食品Food」、「菓子Sweets」といった広義の食品を主として品揃えしており、現在の請求人の通販サイト(http://store.shopping.yahoo.co.jp/national/index.html)も、「商品カテゴリ」として「ワイン&リカー」、「デイリー・日配品」(審決注:内容はチーズ&バター、ヨーグルト&デザート、アイスクリームなどである。)、「グロッサリー・加工食品」、「コンフェクショナリー お菓子」、「ミート・精肉」、「シーフード・鮮魚」、「プロデュース・青果」といった広義の食品を主として品揃えしていることが認められ、衣料品や生活用品の売上高は、食品と比較して僅少なものと推認される。 さらに、請求人の提出した証拠には「NATIONAL AZABU SUPER MARKET」の見出しのもと「・・・利用者の70%以上が外国人というだけあって、店内に並ぶのはビッグでカラフルな輸入品がほとんど。特にチーズとワインの充実ぶりは圧巻。・・・」(甲10)との記載、掲載写真の説明に「カラフルなパッケージのお菓子類のほか、ワインの品揃えも抜群。・・・」(甲11)との記載、英字紙の広告に「・・・We have it all -turkey,ham,stuffing,pumpkin pie filling and,of course,cranberry sauce! We also have the best selection of wine and champagne for this special holiday.・・・ 」(甲18)との記載、同じく英字紙の広告に「・・・Your supermarket choice for imported foods.・・・」(甲19)との記載がある上に、請求人スーパーのチーズ、ワイン等の売場写真(甲10ないし甲15)及び請求人スーパーのチーズ、ワイン等の食料品の広告(甲20ないし甲24)があることからすれば、請求人の業務は、飲食料品の小売に係るものと認められる。 してみれば、請求人が、飲食料品の小売に係る業務を行っていることは認められるものの、本願の指定役務に係る業務を行っているとは、認められない。 よって、請求人が、本願の指定役務に係る業務を行っていることについて、合理的疑義があるといわざるを得ない。 (2)商標法第4条第1項第15号について ア 商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」については、以下のように判示がなされている。「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」(平成10年(行ヒ)第85号 同12年7月11日最高裁判所第三小法廷判決)。 これを本件についてみると、次のとおりである。 イ 引用商標の周知、著名性について 引用商標については、「松下電器:社名変更 パナソニック船出 ブランド向上正念場、米では後塵78位」との見出しのもと「1日、松下電器産業から社名変更してパナソニックが誕生した。冷蔵庫、洗濯機などの白物家電に使ってきたブランド『ナショナル』も廃止し、社名から製品までパナソニックに統一する。」との報道がある(毎日新聞2008年10月2日大阪朝刊10頁)。 しかしながら、引用商標は、1927年4月に制定され(パナソニック株式会社のウェブサイト(http://panasonic.co.jp/company/info/history/))以来、永年にわたり、家庭用電気製品や住宅用設備機器を主として多岐にわたる商品に使われてきた、パナソニック株式会社の代表的な出所識別標識として著名な商標である。そして、引用商標に化体した業務上の信用は、その使用が廃止されたとしても、一時に失われてしまうものと言うことはできない。 また、本願商標の登録出願時(2007年4月2日)において、引用商標は、未だ、使用されていたものである。 さらに、引用商標の商標登録原簿に徴すれば、その権利者として、パナソニック株式会社への登録名義人の表示の変更登録がなされている(例えば、登録第626000号、登録第1312620号及び登録第1536219号については、平成20年11月14日付け、登録第5025183号については平成21年1月16日付け。)。そうすると、パナソニック株式会社は、引用商標に係る商標登録の管理を続けており、引用商標を今後使用する可能性が全くないと断ずることはできない。 してみれば、現在において、引用商標に化体した業務上の信用が喪失したものということはできない上に、本願商標の登録出願時において、引用商標は我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていた商標ということができるものである。また、現在においても、家庭において、引用商標を付した電気製品が存在しており(例えば、電気冷蔵庫、電気掃除機、電気洗濯機、エアコン等)、一般的な消費者は、引用商標を目にする機会がしばしばあることをも考慮するならば、引用商標の著名性は、現在に至るまで失われていないものと見て差し支えないものである。 ウ 本願商標と引用商標の類似性の程度 本願商標は、上記1のとおり、その構成中に「NATIONAL」の欧文字を顕著に有しており、上記2(2)の原審で引用するパナソニック株式会社(審決注:2008年10月に、松下電器産業株式会社から、現在の社名に変更されている(上掲パナソニック株式会社ウェブサイト)。)の商標(以下「引用商標」という。)は、「NATIONAL」、「National」の欧文字を横書きして表されるものであるから、本願商標の構成中「NATIONAL」の文字部分と、引用商標は、そのつづり字を同じくするものである。 そして、本願商標の構成中「AZABU」の欧文字は、上記1のとおり、「NATIONAL」の文字の下段に横書きされており、その書体も「NATIONAL」の文字とは相違し、その大きさも「NATIONAL」の文字より小さく表されているから、視覚上も、分離して観察されるものというのが相当である。 加えて、我が国においては、地名を表記するときには、漢字、平仮名、片仮名の他に欧文字をもって表記することが、よく行われているところ、当該「AZABU」の欧文字は、我が国において、よく知られている東京都港区内の地名である麻布に通じるものであるから、当該地名を欧文字で表記したものと容易に理解され、本願の指定役務に係る取引者、需要者をして、役務の提供の場所を表したものであると、認識するものというのが相当である。 そうとすると、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際にあっては、本願商標は、顕著に表され、看者の注意を引き、自他役務識別力を有する「NATIONAL」の文字部分をもって、称呼、観念されるものというのが相当である。 また、「NATIONAL」の語は、「国家の、国民の、国立の」の意味を有する英語ではあるものの、我が国においては、パナソニック株式会社(旧松下電器産業株式会社)の代表的な出所識別標識として、広く知られている著名な商標であることからすれば、「パナソニック株式会社」の観念を生じるというのが相当である。 してみれば、本願商標と引用商標は、外観において差異があるとしても、「ナショナル」の称呼及び「パナソニック株式会社」の観念を共通にするものである。 よって、本願商標と引用商標は、称呼及び観念において相紛らわしい類似の商標であるというのが相当である。 エ 商品・役務の関連性及び取引者・需要者の共通性について 本願商標の指定役務は、上記(1)のとおり、百貨店、総合スーパーの提供する役務であるところ、その役務で取り扱う商品には、家庭用電気製品も含まれており、その需要者は、一般的な消費者であるということができる。 他方、引用商標は、主として電気冷蔵庫、電気洗濯機、電気掃除機及びエアコン等の家庭用電気製品に使用されてきたものであるところ、その家庭用電気製品の需要者は、一般的な消費者であるということができる。 そうとすると、本願商標の指定役務と引用商標が使用される商品との関係は、百貨店、総合スーパーの提供する小売役務と当該役務において品揃えの対象となる商品との関係があることから、それらの関連性は極めて高いというべきである上に、それらの需要者も一般的な消費者という点で共通するものである。 オ 小括 以上のとおり、イないしエを総合考慮するならば、本願商標を請求人がその指定役務について使用するときは、これに接する取引者、需要者が、著名である引用商標を想起、連想し、その商品が、あたかもパナソニック株式会社又は同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 (3)請求人の主張について 請求人は、「NATIONAL」の文字を含む商標が、引用商標や引用商標に係る商標権者の商標「ナショナル」とは、類似しないと判断された審決例、登録例が存在すると主張し、証拠(甲25ないし108)を提出する。 しかしながら、過去の審決、商標登録の事例は、事案を異にする本件においては適切ではないばかりか、商標の類否判断は、対比する商標ごとに、個別具体的に判断されるべきであって、過去の審決や商標登録の事例に左右されるものではないし、本願商標については、上記(2)ウのとおり判断するのが相当である。 また、請求人は、松下電器産業株式会社が、2008年10月1日付けで社名を変更し、ナショナルのブランドを廃止等するから、引用商標に化体していた信用は失われ、登録されていた商標も不使用により商標法50条第1項に規定する審判の対象となるものであるから、近い将来において、出所の混同を生ずるおそれはなくなると主張し、証拠(甲109、甲110)を提出する。 しかしながら、引用商標の使用が廃止されるとしても、引用商標に化体した業務上の信用が一時に失われてしまうとは言い難い、すなわち、著名な商標は、たとえ、その使用を止めても、その商標に化体された信用が残存しており、他人がその商標の使用をすれば役務の出所の混同を招くおそれがあるものと言わざるをえない。また、引用商標を付した家庭用電気製品は、例えば、電気冷蔵庫などのように、長期間にわたる使用に耐えるものであるから、引用商標を付した商品の製造、販売が廃止されたとしても、一般的な消費者は、引用商標を付された電気製品を、家庭において、しばしば、目にする機会があるものというのが相当である。 さらに、上記(2)イのとおり、パナソニック株式会社が、引用商標に係る商標登録を管理していることからすれば、同社が、今後、引用商標を使用することは全くないと断ずることはできない。 また、請求人は、永年にわたる取引の実際においても、出所の混同を生じていない旨を主張する。 しかしながら、請求人は、主張するのみで、証明をなしていない上に、請求人の提供する役務は、上記(1)のとおり、飲食料品の小売の役務とは認められるが、本願商標の指定役務とは異なるものであるから、本願商標がその指定役務について使用されたときに、出所の混同を生ずるおそれがないと言うことはできない。 したがって、上記の請求人の主張は、いずれも採用することができない。 (4)まとめ 以上からすれば、本願商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとし、本願商標が同法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(本願商標) (色彩については原本参照) |
審理終結日 | 2010-10-14 |
結審通知日 | 2010-10-22 |
審決日 | 2010-11-04 |
出願番号 | 商願2007-30718(T2007-30718) |
審決分類 |
T
1
8・
271-
Z
(X35)
T 1 8・ 18- Z (X35) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 蛭川 一治 |
特許庁審判長 |
芦葉 松美 |
特許庁審判官 |
内田 直樹 井出 英一郎 |
商標の称呼 | ナショナルアザブ、ナショナル |
代理人 | 名越 秀夫 |
代理人 | 特許業務法人青莪 |