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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 042
管理番号 1229960 
審判番号 取消2010-300174 
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-02-15 
確定日 2010-12-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4096763号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4096763号商標(以下「本件商標」という。)は、「LIFE CARE」の欧文字を横書きしてなり、平成4年9月1日に登録出願され、第42類「医業,健康診断,歯科医業,調剤,医療情報の提供」のほか商標登録原簿記載の役務を指定役務として、同9年12月26日に設定登録され、その後、指定役務中、「葬儀の執行,墓地又納骨堂の提供,祭壇の貸与」については、商標登録の取消し審判により、その登録を取り消すべき旨の審決がされ、その確定審決の登録が同15年3月5日にされ、同19年11月27日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成22年3月2日になされている。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中、「医業,健康診断,歯科医業,調剤,医療情報の提供」についての登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び弁駁の理由を要旨次のように述べている。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、前記取消請求に係る役務について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって使用された事実がない。
2 弁駁の理由
答弁書によれば、被請求人は本件商標を自らは使用している主張は無く、医療法人社団慈生会(以下「慈生会」という。)との間で使用許諾契約が存在し、同会が使用しているとの主張がなされている。今更述べるまでもなく、契約は申込みと承諾により発生し、商標の使用許諾契約の場合、許諾する対象商標、使用する商品又は役務、地域的・期間的範囲、対価、第三者による権利侵害発生の場合の対応等、詳細が定められる。
ところが、本件の場合、商標使用許諾契約の存在そのもののみならず、当事者間でどのような定めがなされたのか、その内容も全く開示されていない。わずかに、本件審判請求後の作成に係る確認書と題する書面(乙第18号証)の写しの中で、過去に合意書(乙第14号証)が作成されていたことが記載されているのみである。
しかし、その合意書には上記のような具体的な契約の内容に触れるところは全くない。
このようなことで、被請求人と慈生会との間で、本件商標に関して使用許諾契約が締結され、その契約に基づいて同会が使用してきたとの事実を、客観的に認めることはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第23号証を提出している。
1 本件商標の使用について
本件商標は、被請求人から慈生会に、少なくとも黙示により使用許諾され、慈生会は、使用許諾に基づき中銀ケアホテル内の診療所で、医業について「ライフケア診療所」商標を使用している。
(1)中銀ケアホテルの事業について
有料老人ホームである中銀ケアホテルは、従前から中銀グループ内の企業である株式会社中銀ライフケア(以下「中銀ライフケア社」という。)が事業を行っていた。
平成18年4月1日(登記上は、平成18年4月3日)、被請求人中銀インテグレーション株式会社と中銀ライフケア社は合併し、中銀ライフケア社は解散した(乙第1号証、乙第3号証)。
そのため、平成18年4月1日からは、被請求人が事業主体として中銀ケアホテル事業を行っている(乙第6号証1ページ、2ページ)。
(2)ライフケア診療所の事業について
中銀ケアホテル内のB棟5階テナントとして、平成15年2月10日より、医業を行うう「ライフケア診療所」が開設され現在に至っている(乙第6号証5ページ)。
「ライフケア診療所」は、中銀ケアホテルの協力医療機関の1つとなり、日常の健康管理、定期健康診断を行っている(乙第4号証5ページ、乙第6号証5ページ、乙第7号証ないし乙第10号証、乙第11号証66及び67ページ、乙第12号証、乙第14号証、乙第15号証)。
(3)慈生会と中銀ライフケア社との合意
平成17年10月8日に、慈生会と中銀ライフケア社との間で、中銀ケアホテル内に設けられているライフケア診療所の事業は、平成18年1月を目途に承継することが合意され(乙第14号証)、被請求人においても当該合意の承継については異議の無いことが確認されている(乙第18号証)。
(4)慈生会による「ライフケア診療所」の使用
慈生会は、医業をあらわす商標として、平成18年1月以来現在に至るまで「ライフケア診療所」を使用している(乙第8号証、乙第9号証3ページ、乙第10号証3ページ、乙第11号証、乙第12号証、乙第17号証)。
(5)被請求人(本件商標権者)と慈生会との本件商標についての許諾関係
ア 慈生会は、中銀ケアホテル内のB棟5階で、被請求人の許諾の下、「ライフケア診療所」を開設している(乙第14号証、乙第18号証)。
イ また、確認書(乙第18号証)において、「『合意書』(審決注:乙第14号証)に記載される『ライフケア診療所』の事業承継及び開設の合意には、平成17年3月31日株式会社中銀ライフケアが中銀マンシオン株式会社から買受けた、登録商標『ライフケア』(商標登録第4096762号)および『LIFE CARE』(商標登録第4096763号)について、株式会社中銀ライフケアは甲に使用許諾し、甲は使用許諾に基づき『ライフケア診療所』の名称を使用する趣旨を含むこと。」が被請求人と慈生会の間で確認されている。
ウ さらに、被請求人の事業を説明するパンフレット、広告、重要事項説明書、表示等でも、「ライフケア診療所」について紹介がなされている(乙第6号証ないし乙第11号証、乙第23号証)。
これらの事実から、中銀ライフケア社及び被請求人と慈生会との間では本件商標の使用につき、少なくも黙示の許諾があったことは明らかである。
(6)慈生会により使用される「ライフケア診療所」と本件商標との同一性
本件商標は、欧文字「LIFE CARE」からなるところ、慈生会により使用される商標は、片仮名「ライフケア」と漢字「診療所」との組み合わせからなる「ライフケア診療所」である。そのため、本件商標と使用される「ライフケア診療所」とでは、「診療所」の有無及び「LIFE CARE」と「ライフケア」につき差異を有する。
医療法によれば、「この法律において、「診療所」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であって、患者を入院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。」とされ(医療法第1条の5第2項)、また、「疾病の治療(助産を含む。)をなす場所であって、病院又は診療所でないものは、これに病院、病院分院、産院、療養所、診療所、診察所、医院その他病院又は診療所に紛らわしい名称を附けてはならない。」とされる(医療法第3条第1項)。
したがって、慈生会により使用される「ライフケア診療所」中、「診療所」の部分は、医療法にしたがって記載されなければならないものであり、取引者、需要者からみても、役務との関係では医療機関の種類を表す部分にすぎないと認識されるものである。
「LIFE CARE」と「ライフケア」との違いは、商標法第50条第1項括弧書に例示されるように社会通念上同一にすぎない。
よって、慈生会により使用される「ライフケア診療所」は、本件商標と社会通念上同一の使用といえる。
2 結語
したがって、本件商標は、医業をあらわす商標として、通常使用権者、慈生会によって平成18年1月以来使用されているので、審判請求の理由は無く、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。

第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人は、平成18年4月3日に中銀ライフケア社を吸収合併し、中銀ライフケア社は解散した(乙第1号証、乙第3号証)。
(2)乙第14号証は、平成17年10月8日付け慈生会(甲)と中銀ライフケア社(乙)との合意書(写し)であり、両者の合意事項として、「1 甲は乙の運営する中銀ケアホテル内に平成18年1月を目途に診療所を開設し、現在のライフケア診療所の事業を承継する。」、「3 甲及び乙は、本合意書締結以降、目的遂行の為に互いに協力し、具体的内容の協議を十分に行うものとする。」などと記載されている。
(3)乙第18号証は、平成22年4月2日付け慈生会(甲)と被請求人(乙)との確認書であり、両者の確認事項として以下の記載がある。
1 甲と、乙が平成18年4月3日吸収合併した株式会社中銀ライフケア
との間で、既存の「ライフケア診療所」の事業の承継及び開設に関する平
成17年10月8日付「合意書」(以下「合意書」という)を締結したこ
と。
2 甲と乙との合意以前は、株式会社中銀ライフケアは、下記住所(審決
注:静岡県熱海市咲見町6-5)に所在し乙が運営する中銀ケアホテル内
で他の個人開業医に「ライフケア診療所」の運営を認めていたこと。
3 甲は、「合意書」に基づき従前の診療所「ライフケア診療所」の事業
を承継するとともに、平成18年1月「ライフケア診療所」を開設し、以
来継続して運営していること。
4 「合意書」に記載される「ライフケア診療所」の事業承継及び開設の
合意には、平成17年3月31日株式会社中銀ライフケアが中銀マンシオ
ン株式会社から買い受けた、登録商標「ライフケア」(商標登録第409
6762号)及び「LIFECARE」(商標登録第4096763号)
について、株式会社中銀ライフケアは甲に使用許諾し、甲は使用許諾に基
づき「ライフケア診療所」の名称を使用する趣旨を含むこと。
5 乙は、甲と株式会社中銀ライフケアとの合意を承継することに異議が
ないこと。
(4)乙第9号証は、「介護付有料老人ホーム【入居時要支援・要介護】中銀ケアホテル」と題するパンフレットの写しであり、4枚目には、「ライフケア診療所」の見出しの下、「B棟5階テナント 中銀ケアホテルの館内にある内科の診療所です。・・・また、年2回の健康診断(有料)を行います。」及び「【医療法人社団 慈生会 ライフケア診療所】診療科目 内科」と記載され、9枚目には、「月額利用料に含まれない有料サービス」として「3.医療費(診療費、薬代、入院費等)」と記載され、12枚目には、「所在地・・・熱海市咲見町6-5」、「事業運営主体 中銀インテグレーション株式会社」及び「2009年10月作成」と記載されている。
(5)乙第10号証は、「中銀ケアホテル【熱海】特別会員 ご案内パンフレット」と題するパンフレットの写しであり、3枚目には、「特別会員のメリット 特徴5」として、「館内の協力医療機関ライフケア診療所(テナント)で健康診断を受診できます。協力医が診断結果を把握し、万一に備えます。(初回無料、以降は有料となります。)」と記載され、4枚目には、「協力医療機関 ライフケア診療所(B棟5階テナント)」、「介護付有料老人ホーム【入居時要支援・要介護】中銀ケアホテル【熱海】静岡県熱海市咲見町6-5」及び「制作年月日:平成21年11月1日」などと記載されている。
2 判断
前記1の認定事実によれば、慈生会は、中銀ライフケア社との平成17年10月8日付け合意により、同社の運営する静岡県熱海市咲見町6-5在の中銀ケアホテル内に名称を「ライフケア診療所」とする診療所を平成18年1月に開設し、少なくても同22年4月まで同診療所の事業を継続しており、また、上記合意には、本件商標について中銀ライフケア社が慈生会に使用許諾をし、慈生会は、その使用許諾により「ライフケア診療所」の名称を使用することも含まれており、両者の合意は、中銀ライフケア社を吸収合併した被請求人に承継されていることが認められる(乙第1号証、乙第14号証、乙第18号証)。
そして、被請求人は、同人の運営に係る静岡県熱海市咲見町6-5在の中銀ケアホテルの平成21年11月1日に制作されたパンフレットにおいて、中銀ケアホテル内の医療機関である「ライフケア診療所」で健康診断を受診でき、2回目以降は有料であることを記載したこと、また、同年10月作成のパンフレットでは、「ライフケア診療所」を内科の診療所と紹介するほか、年2回の健康診断(有料)を行うことなどを記載したことが認められる。
以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に慈生会に対し本件商標の使用について黙示の許諾をしていたというのが相当であるから、慈生会は本件商標の通常使用権者というべきである。
そして、慈生会が開設したライフケア診療所は、診療科目を内科とし、健康診断も行うのであるから、これらは、取消請求に係る指定役務中、「医業,健康診断」に該当するものである。
次に、かかる診療所の名称「ライフケア診療所」において、その構成中「診療所」の文字部分は、医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所(医療法第1条の5第2項)を表すものであり、診療所においては、健康診断も行われていることから、役務「医業,健康診断」との関係において自他役務の識別力を有しないものである。
そうすると、「ライフケア診療所」の名称においては、自他役務の識別力を有する部分は「ライフケア」の文字部分にあるというべきであり、かかる「ライフケア」の文字は、本件商標とは、欧文字と片仮名の文字の表示を変更するものであって「ライフケア」の同一の称呼を生ずるものであり、異なる観念が生ずるものでもないから、本件商標と社会通念上同一の商標といって差し支えないものである。
したがって、通常使用権者・慈生会は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者が取消請求に係る指定役務中、「医業,健康診断」について本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたものと認めることができる。
3 請求人の主張について
請求人は、被請求人の提出した確認書(乙第18号証)及び合意書(乙第14号証)は、具体的な契約の内容に触れていないから、被請求人と慈生会との間で、本件商標に関して使用許諾契約が締結された事実を客観的に認めることはできない旨主張する。
しかし、被請求人と慈生会との確認書には、中銀ライフケア社が慈生会に対して本件商標の使用許諾をし、慈生会は、その使用許諾に基づき「ライフケア診療所」の名称を使用する趣旨を含むと明記されているばかりでなく、中銀ライフケア社と慈生会の合意を承継したと認められる被請求人は、同人の作成に係るパンフレットにおいて、中銀ケアホテル内の協力医療機関として、慈生会の運営に係る「ライフケア診療所」を紹介した事実を総合すれば、たとえ、合意書(乙第14号証)に本件商標の使用許諾について具体的な記載がないとしても、被請求人は、前記2のとおり、慈生会に対して本件商標の使用について黙示の許諾をしていたというべきである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定役務中、「医業,健康診断」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を通常使用権者が使用していたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-10-14 
結審通知日 2010-10-18 
審決日 2010-10-29 
出願番号 商願平4-169226 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (042)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧本 佐代子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
井出 英一郎
登録日 1997-12-26 
登録番号 商標登録第4096763号(T4096763) 
商標の称呼 ライフケア 
代理人 大西 育子 
代理人 安原 正義 
代理人 新垣 盛克 

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