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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない X3642
管理番号 1228496 
審判番号 不服2009-5375 
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-12 
確定日 2010-12-08 
事件の表示 商願2008-4131拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「CO2市場」(「2」は他の文字に比してやや小さい)の文字を横書きしてなり、第36類「CO2排出権取引の仲介,省エネルギー関連技術に関する投資,省エネルギー関連技術に関する投資の媒介・取次ぎ又は代理,省エネルギー関連技術に関する投資に係る調査・診断・助言又は指導,省エネルギー関連技術に関する投資に係る保険契約の締結の媒介・引受け,省エネルギー関連技術に関する投資に係る損害の査定,省エネルギー関連技術に関する投資に係る保険料率の算出」及び第42類「省エネルギー関連技術に関するコンサルティング・情報の提供」を指定役務として、平成20年1月23日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、『CO2市場』の文字よりなるが、これは『二酸化炭素(CO2)の取引の場』を意味する語として認識されるものである。ところで、地球温暖化防止のため、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスに関して、企業などに排出量の上限を設定し、売買を認める排出量取引市場が欧州等で運営されているものであるから、これを本願指定役務中『二酸化炭素の取引等に関連する役務』に使用しても自他識別標識としての機能を果たし得ず、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)本願商標は、前記1のとおり、「CO2市場」の文字よりなるところ、その構成中の「CO2」は、「二酸化炭素」を意味する元素記号として、また、「市場」は「毎日または定期的に商人が集まって、商品売買を行う場所。マーケット。」等を意味するものとしてよく知られている語であるところ、その指定役務中「CO2排出権取引の仲介」との関係では、商標全体として、「二酸化炭素を売買する市場」程の意味合いを認識させるにすぎないものである。

(2)ところで、「CO2市場」の語が、前記意味合いで実際に使用されていることは、原審における拒絶査定において示した証拠のほか、例えば以下の、新聞あるいはインターネット情報からもうかがうことができる。

「CO2市場」の使用例について(なお、下線は当合議体で付与。)
ア 新聞情報について
(ア)「CO2市場を創設 排出量売買-東証と東工取、来年にも」を表題とする、2009.10.21 共同 静岡新聞の「東京証券取引所と東京工業品取引所が、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を売買する市場を創設する方向で検討していることが20日明らかになった。共同で準備会社を設立し、早ければ来年にも、国内初となる排出権市場の立ち上げを目指す。・・・」との記事。
(イ)「環境 2050年目標に『ビジョン』提示/自然エネルギー政策プラットフォーム」を表題とする、2008.7.11 建設通信新聞の「・・・その第1弾として、50年を目標とする自然エネルギービジョン(中間報告)をまとめた。・・・透明で安定した自然エネルギー市場を構築するためには、▽自然エネルギーに対する長期的に安定した経済支援策を導入する▽CO2排出削減分の価値を証書化し、CO2市場の創設と調和させる・・・」との記事。
(ウ)「脱温暖化社会へ CO2大幅削減はできるか 3、排出量取引 日本型、世界で孤立も」を表題とする、2008.7.3 京都新聞の「地球温暖化防止に関する国際会議で近年、存在感を増しているメディアがある。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの『市場』の動向を追う記者たちだ。ノルウェーに拠点がある『ポイントカーボン』は炭素市場の情報を扱う先駆け。同社のブェン・ビョルンさんは『日本にもCO2市場ができれば、その影響は大きい』と日本の動向に注目する。」との記事。
(エ)「企業省エネへ新事業 エネサーブ 電力設備監視+CO2排出量計測」を表題とする、2008.6.10 京都新聞の「エネサーブは、電力設備の監視と二酸化炭素(CO2)排出量計測を合わせた新事業に本年度から本格的に乗り出した。・・・同社は、取引先の工場などに販売する方針で、『将来、日本のCO2市場ができたら、システムを利用して顧客間の排出枠売買ビジネスも手がけたい』(松尾昌明専務管理本部長兼経営戦略室長)と説明している。」との記事。 (オ)「[特集]電力中央研究所 エネルギー未来技術フォーラム」を表題とする、2007.11.1 電気新聞の「◇ポスト京都へ最新知見集め 電力中央研究所は10月4日、『第26回エネルギー未来技術フォーラム』を東京都千代田区のイイノホールで開催した。・・・◇第3部 ポスト京都への対応戦略 《社会経済研究所上席研究員・杉山大志氏》・・・ ◇省エネが重要 ・・・国内の温暖化対策をみていく際に、排出権取引は実績が乏しく、あまり効果がある施策とはいえない。米国のSOx(硫黄酸化物)、EUのCO2市場の事例を分析しても、価格は乱高下、あるいは暴落する傾向にあり、技術開発の動機付けとならないどころか、企業は価格変動リスクから設備改造にも及び腰となってしまうだろう。」との記事。
(カ)「中国の炭素排出基準、香港が制定に協力を[資源]」を表題とする、2007.7.24 NNAアジア経済情報 香港の「欧州で二酸化炭素(CO2)排出枠取引を最も多く取り扱っているフォーティス・バンク(富通銀行)のシェイン・スパーウェイ・アジア地区CO2市場担当はこのほど、『香港もシンガポールや日本に習って、中国の温室効果ガス削減に関する規定の立案や標準化に協力するべき』との見方を明らかにした。シンガポールでは既に、CO2排出枠取引市場の設立に動き出しており、・・・」との記事。
(キ)「『CO2市場』民間攻勢 温暖化防止会議の場利用 新技術売り込み」を表題とする、2006.11.25 京都新聞の「地球温暖化防止に向けた国連の国際交渉は年々『ビジネス会議』の色合いを強めている。京都議定書の下で、二酸化炭素(CO2)排出枠の取引市場や途上国支援のための民間資金の流れができたためだ。ケニア・ナイロビで十七日まで開かれた会議の決議にも『国際的なCO2市場はこれからも継続する』という経済界向けのメッセージが盛り込まれた。・・・ドイツ人記者マーティン・フェラーさんは『CO2市場の投資家に議定書をめぐる正確な情報を伝えるのがわれわれの使命』と話す。」との記事。
(ク)「温暖化防止『削減6%』の課題 (1)EU先行 CO2市場の主導権狙う」を表題とする、2005.2.11 京都新聞の「『目に見えないCO2(二酸化炭素)が商品だが取引は順調だ。KYOTO(京都議定書)の下、欧州には新しい経済が生まれつつある』。今年一月、EU(欧州連合)とノルウェーが参加し、CO2の排出量取引が始まった。・・・」との記事。
(ケ)「温暖化防止 期待の切り札 欧州CO2市場 来月発足 企業同士で『排出枠』売買」を表題とする、2004.12.30 中日新聞の「【ブリュッセル=共同】欧州連合(EU、二十五カ国)は二〇〇五年一月一日、二酸化炭素(CO2)の排出量取引制度を発足させる。域内の工場などにCO2排出上限を割り当て、上限を超えた企業と余裕のある会社が『排出枠』を売買する仕組みで、多国間の『炭素市場」としては世界最大。京都議定書の発効を同二月に控え、地球温暖化防止の『切り札』として期待される。・・・」との記事。
(コ)「米・シカゴにCO2市場 10月、北米で初、排出量を売買」を表題とする、2003.8.3 毎日新聞の「【ワシントン共同】米国のシカゴ市や企業が参加し、二酸化炭素などの排出量を売買する『シカゴ気候取引市場(CCX)』が10月10日から取引を始めることになった。・・・」との記事。
イ インターネット情報について
(ア)「米CFTC:シカゴ気候取引所のCO2排出権市場を規制へ-委員長」を表題とする「ゲンスラー委員長は『市場を相場操縦や不正行為から保護するため規制当局が監督を行うことは、これらの市場や将来のCO2市場にとって有益だ』と述べた。」との記載。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=adQmxqzdyd_I
(イ)マイコミジャーナルの「マカフィーがCO2排出権ビジネスを狙う攻撃を警告、被害は50億ユーロに」を表題とする「・・・認証情報を入手すれば、製造業者・政府機関・排出権ブローカーになりすまして排出量を売買することが容易に行えるようになる。CO2市場関連の詐欺により、この約1年半で50億ユーロの損失が税収入に発生しているという。・・・」との記載。
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/04/20/047/index.html
(ウ)株式会社共同通信社の「ASIANET Japan Business News Center」において、「◎CO2取引市場に乗り出す ロスチャイルドとE3」を表題とする「【シドニー2日メディアネット=共同JBN】ロスチャイルド・オーストラリア、E3インターナショナル両社は、2012年までには1500億ドル規模にもなり得ると推定されている新興商品市場の二酸化炭素(CO2)取引の国際市場で中心プレーヤーになる方向に踏み出した。生まれたばかりの温室効果ガス排出量取引市場を再編するため、両社は2日、新しいCO2市場について学び、・・・カーボンリング・コンソーシアムを設立する意図を発表した。・・・ロスチャイルド・オーストラリアのリチャード・マーティン最高経営責任者(CEO)は『国際的な環境変化対策の最近の発展に伴い、この問題はもはや世界的なCO2市場が出現するかどうかではなく、いつ出現するかになっている。・・・』と語った。・・・ 同コンソーシアムは一連の法体系下で、一連の購入源から一連のCO2信用を購入する方針である。この過程でコンソーシアムは、企業がCO2市場に参加する場合に対応しなければならない最も緊急の問題の多くに投資家を直面させることになる。・・・ 同氏はさらに『CO2市場について実務的な理解を持っている企業は少ない。売り手、買い手のどちらの側の企業にも、コンソーシアムは実行しながら学ぶ機会を提供する。・・・』と述べた。・・・」との記載。
http://prw.kyodonews.jp/prwfile/prdata/0010/release/200209024174/index.html
(エ)「CO2排出140%削減の事例も?国内外の先進自治体での温暖化対策を報告」を表題とする「2008年7月27日、東京都・日本橋で、『低炭素社会に向けた社会的実験』と題されたセミナーが開催され、・・・■飯田市、横浜市の低炭素社会への取り組み \日本からは、2008年7月に『環境モデル都市』に選ばれた長野県飯田市の牧野光朗市長と、神奈川県横浜市の阿部守一副市長が発言。牧野飯田市長は・・・『(太陽光発電や木質バイオマスなどの事業を進める)『おひさま進歩エネルギー株式会社』と協力、関連した様々なプロジェクトを進行させており、市民から出資を集めている他、国内CO2市場からも資金を調達する計画だ』と民間企業や市民の活動を軸にしたと取り組みを報告しました。・・・」との記載。
http://goodnews-japan.net/news/team-80/?p=163

(3)以上のとおり、新聞記事あるいはインターネット情報からすれば、「二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を売買する市場」である「CO2市場」が、欧州や米国では既に創設され、また、我が国においても市場創設のための検討が相当程度進められていることが認められるものである。
そうとすれば、本願商標をその指定役務中「CO2排出権取引の仲介」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、仲介に係る「CO2排出権」が取引される場所であることを認識するにすぎず、自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものであり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標といわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものである。

(4)請求人の主張
請求人は、審判請求の理由において、(i)公知公用を拒絶理由としない商標制度にあって、出願前ないし登録前の使用の事実を拒絶理由とするのは商標法に違反する、(ii)判決、審決及び過去の登録例を挙げ、本願商標は登録すべきものである、旨主張している。
(i)について
登録出願に係る商標が、商標法第3条第1項各号の規定に該当するか否かの判断は、当該商標の構成態様と指定商品(役務)とを考慮し、その出願の査定時及び審決時において、個別具体的に判断されるべきものであるから、拒絶の根拠等として採用した使用事実が、出願前ないし登録前のものであったとしても、何ら問題はない。
(ii)について
請求人の提示する登録例等は、商標の構成等において本願とは事案を異にするものであり、それらの登録例をもって、本願商標の登録の適否を判断する基準とするのは必ずしも適切とはいえない。
さらに、請求人が登録すべき理由の根拠として提出した判決(知財高裁平成17年(行ケ)10651号)あるいは審決(2005-20055)は、商標全体として特定の熟語的観念が生じないと判断したことを誤りとし、かつ、共に、「請求人の業務に係る商品(役務)を示すものとして、取引者、需要者の間に広く知られるに至っていた」、「請求人の業務に係る役務であることを十分認識させるにいたっていた」として登録が認められたものであるところ、本願商標については、前記のとおり商標全体として「二酸化炭素(CO2)などの排出量を売買する市場」の意味合いを認識させるとした上で、その意味合い及び実際の使用状況からして、自他役務識別標識としての機能を果たし得ないと判断したものであるから、前記案件とは明らかに事例を異にするものであり、請求人の主張は採用することができない。

(5)まとめ
したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-09-15 
結審通知日 2010-10-01 
審決日 2010-10-15 
出願番号 商願2008-4131(T2008-4131) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (X3642)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 田中 亨子
野口 美代子
商標の称呼 シイオオツーイチバ、シイオオニイチバ、シイオオツーシジョー、シイオオニシジョー 
代理人 中畑 孝 

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