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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2009890133 審決 商標
不服200222255 審決 商標
無効2009890004 審決 商標
無効2008890132 審決 商標
無効200335431 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない X25
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X25
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X25
審判 全部無効 外観類似 無効としない X25
管理番号 1228451 
審判番号 無効2009-890134 
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-10 
確定日 2010-11-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第5245528号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5245528号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成20年12月18日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品として、同21年7月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第5140730号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成19年4月16日に登録出願、第18類「キャリーバッグ,ショルダーバッグ,ボストンバッグ,トートバッグ,ハンドバッグ,ドラムバッグ,ポーチ,ポシェット,セカンドバッグ,ウエストバッグ,リュックサック,財布,かばん用・袋物用のストラップ」、第25類「ポロシャツ,タンクトップ,ティーシャツ,シャツ,ジャケット,セーター,パンツ,ショーツ,コート,キャミソール,ニッカーボッカー,スカート,帽子,靴下,サスペンダー,水泳着,水泳帽,ネクタイ,リストバンド,ベルト」及び第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として同20年6月13日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第36号証を提出した。
1 請求の理由
(1)利害関係について
「FRED PERRY(フレッドペリー)」の名称及びそのシンボルである月桂樹のマークは、我が国においても長年にわたり適法に使用されてきたことから、取引者及び需要者間に広く知られる程に著名性を得るに至っていること、また、甲第2号証に示すように、請求人は、平成19年4月16日付で、第18類及び第25類に属する商品及び第35類に属する役務を指定して、月桂樹の図形からなる商標を商標登録出願(商願2007ー37520)し、その後登録5140730号として設定の登録を得ているものであるから、本件審判を請求するについて重大な利害関係を有するものである。
(2)FRED PERRY(フレッドペリー)と月桂樹ブランドの伝統
ア 月桂樹(ローレル)の刺繍で知られる「フレッドペリー」(FRED PERRY)ブランドの創始者フレデリック・ジョン・ペリー(Frederick John Perry:1909年5月18日?1995年2月2日)は、1930年代に全米選手権、全豪選手権、ウィンブルドン選手権、全仏選手権で優勝を飾り、テニス界で初めてグランドスラム(世界四大大会優勝)を達成し、一躍名をとどろかせた。
イ 引退後の1940年代後半、彼はスウェットバンド(リストバンド)の開発を自身の愛称「FRED PERRY」の名称を入れてスタートさせ、フレッドペリースポーツウェアを事業として開始させ、その後シャツの製造を開始、このとき初めて正式にウィンブルドンから許可を得て、今日にも承継される月桂樹のマークを使用した。そして、1952年に英国ロンドンでフレッドペリースポーツウェア社(FRED PERRY SPORTSWEAR LIMITED)を設立、「月桂樹=世界最高のテニストーナメント・プレーヤー」のイメージが確立されたといえる。
ウ 日本に初めて月桂樹のマークの「FRED PERRY(フレッドペリー)」が上陸したのは、1970年であるが、1972年にはデビスカップ日本チームの公式ユニホームとして採用され、1976年からは、フレッドペリージャパンオープンとして国際テニス大会を開催する(甲第3号証)などして、テニスブランドとして確固たる地位を築いた。
また、1980年代から1990年代前半にかけてのポロシャツブームにおいては、若者を中心に月桂樹のワンポイントマークが付されたポロシャツがブームとなり、1990年代後半からは、スポーツカジュアルウェアとして、「FRED PERRY(フレッドペリー)」に係る商品は、テニスだけではなくより幅の広いスポーツファッション製品の開発を目指すに至った。
エ 2002年、「FRED PERRY(フレッドペリー)」は、事業開始から幾多の変遷を経て、記念すべき50周年を迎え、この頃からポロシャツやジャージといったスポーツウェアだけではなく、ニットやシャツなどバリエーションも豊富に、ファッション性の高い製品の製造及び販売を本格的に開始した。直営店のオープンが本格化するのもこの頃であり、日本では、この年初めて原宿に出展、ファッションブランドとしての注目をさらに高めている。
オ さらに、2004年からは、コム・デ・ギャルソンやラフ・シモンズを始めとする、さまざまなファッションブランドデザイナーとのコラボレーションを開始し、ハイファッションの世界にも進出するなど、「FRED PERRY(フレッドペリー)」の名称及びそのシンボルである月桂樹のマークは、より高い名声、信用、そして評判を保持し、さらなる著名性を構築するに至っている(甲第4号証及び甲第5号証)。
カ 1995年、フレッドペリースポーツウェア社は、その名称をフレッドペリー(ホールディングス)リミテッド(FRED PERRY (HOLDINGS) LIMITED)と変更したが、「FRED PERRY(フレッドペリー)」の愛称と当該FRED PERRY(フレッドペリー)を代表するブランドとしての月桂樹の図形は、葉の枚数等のデザインにおいて幾つかのバリエーションを伴いつつも、その著名性を保ちながら継続して使用されており、我が国においても、当該月桂樹のブランドが、「FRED PERRY(フレッドペリー)」に係る商品であると需要者及び取引者の間において広く知られる(甲第6号証)。
(3)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標とを比較すると、両者は、いずれも一対の月桂樹の小枝の図形を基本的な構成としており、仔細に観察すると両者の間において、(a)本件商標は、円輪郭と一対の月桂樹の小枝の図形の上端部にハートの図が配されていること、(b)月桂樹の葉の枚数が若干異なること、(c)本件商標の月桂樹は白抜き図形であるのに対して、引用商標のそれは黒く塗られていることに相違が認められる。
しかしながら、商標の類否は、対比される両商標又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決定すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的取引状況に基づいて判断すべきであり(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)、そして、一般に、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際においては、商品の購買者は二個の商標を現実に見比べて商品の出所を識別するのではなく、その商標を構成する文字、図形の各部分又はその総括した全体を通じて最も印象の強いものによって商品の出所を識別するのが普通であり、かように商標は、その製作者の意図如何にかかわらず、常に必ずしもその構成部分の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部分だけによって簡略に称呼、観念され、一個の商標から二つ以上の称呼、観念が生ずるものと認めることが許されるかどうかは、当該商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどに不可分的に結合しているか否かによって決すべきである。(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁)
上記判示を本件について当てはめ考察するに、本件商標の構成中のハートの図形は、その大きさを月桂樹の小枝の図と比較すると、全体的な商標の構成において小さく配置されたものであり、またハートの図形そのものは、格別特徴的なデザイン化等が施されているわけではなく、商標として極めて広く採択されている形状のハートの図形である。
また、当該ハートの図形は、月桂樹の小枝の図との関係において何らの結びつきが認められるものではなく、これを常に月桂樹の図と一体のものとして認めなければならない格別の理由も見いだせない。
そうとすると、本件商標中のハートの図形部分からは、独自の観念及び称呼は生じないものとみるべきであり、またハートの図形と月桂樹の図形との組み合せにおいても格別の観念及び称呼は生じないものである。
そもそもこのようなハートの図形は、本件商標の指定商品でもある「洋服」や「セーター類」などの商品については、「かわいらしさ、キュートさを想起させる図形として、女性用の衣料品・装身具等のアクセントとしてしばしば用いられるデザインであり(甲第33号証)、月桂樹の図形と比較した場合、商品の出所表示機能としては、格別特徴的なものとは認め難いことから、本件商標に接する需要者及び取引者は、一対の月桂樹の小枝の図形部分に着目して、これより生ずる「月桂樹」の観念及び「ゲッケイジュ」の称呼をもって取引に資するものである。
一方、引用商標は、一対の月桂樹の葉を組み合わせた構成からなるものであり、この種の商標より「月桂樹」の観念及び「ゲッケイジュ」の称呼が生ずることは明らかである(甲第7号証)。
そして、本件商標をその指定商品の取引の実情に照らして考察すると、ポロシャツ等のワンポイントマークとして使用される場合が決して少なくないと推認し得るところ、ワンポイントマークは、比較的小さいものであり、マーク自体に詳細な模様や図柄を表現することは、実際上容易ではないから、例えば、ポロシャツに刺しゅうするときには、月桂樹の葉の枚数や小さな図柄模様等についてまで明確に描くことは困難であり、むしろ図形の全体をイメージとして見る者の注意を引き、細かい差異が目立たなくなることが十分に予想されることである。
加えて、本件商標がその指定商品との関係において、ワンポイントマークとして使用される可能性が高いことを考慮すると、指定商品(セーター類、ワイシャツ類等を含む)の主たる需要者が、「商標やブランドについて詳細な知識を持たない者を含む一般の消費者であり、商品の購入に際し、メーカー名などを常に注意深く確認するとは限らない。」といえる(甲第8号証)。
そうとすると、本件商標がその指定商品についてワンポイントマークとして使用された場合、これに接した需要者は、それが一対の月桂樹の図からなるという基本的な構成に着目し、本件商標と引用商標のありふれた円形輪郭やハートの図形が付されている相違点には気付かずに、月桂樹のデザインの特徴あるいはイメージに引き付けられるとみるべきであり、時と所を異にして本件商標と引用商標に接した場合には、外観上も相紛れるおそれがあるものといえる。
イ 月桂樹の図形は、多種多様の構成が可能であり、その枚数、形状及び小枝等の表示方法のいかんによって区別し得るものであるとしても、本件商標と引用商標のように、その葉の枚数が比較的多い場合には、前者が26枚、後者が30枚と相違はするものの、その差異は、全体の基本的構成の特徴と比較すれば、それぞれを商品の出所表示としての機能に差異が生ずるほどの相違とは認められず、時と処を異にして両商標に接した場合、需要者及び取引者は混同を生ずるおそれがある程度に近似したものと認められる(甲第6号証)。
してみると、本件商標が、例えば、ワンポイントマークとして使用された場合には、一般の消費者が商品の購入に際し、メーカー名などを常に注意深く確認するとは限らない実情が認められること、また、引用商標が我が国において「FRED PERRY(フレッドペリー)」ブランドとして著名性を有している事実を考慮すると、本件商標に接する消費者は、容易に請求人に係る引用商標を連想あるいは想起するものであって、本件商標の月桂樹の葉の枚数が異なるなどの相違点が、本件商標から引用商標を連想あるいは想起させることを否定する理由とはならないことは明らかである。
ウ 本件商標の月桂樹の図形が白抜きで描かれているのに対して、引用商標は、黒塗りで描かれていることから、月桂樹の色彩に関する相違点が認められる。
しかしながら、取引の実情をみると、登録商標が使用される場合には、登録商標とは色彩を異にして使用される場合も少なくなく、商標法も第70条第1項において「商標法第25条等における『登録商標』には、その登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとする。」と規定し、色彩の点を除外してみたときには、その基本的な構成が極めて近似した構成からなる商標は、登録商標の商標権の効力の範囲に含まれるものといえる。
そこで、本件商標と引用商標との関係においてみた場合、両商標を同時に並べて比較した場合には、色彩が異なるからその印象が異なる場合があるとしても、権利範囲において各種の色彩がその図形部分に付された場合には、両者のイメージは、登録された商標のそれとは異なり、限りなく近似したものとなる可能性が否定できない。
実際の取引における商標の使用例をみても、甲第9号証として提出するFRED PERRY(フレッドペリー)の月桂樹の葉の商標に各種の色彩が施されている実例を示したインターネットにおける商品情報、あるいは前掲甲第4号証(e-MOOK 「FRED PERRY THE CENTENARY BOOK-フレデリック・ジョン・ペリー生誕100周年記念ブック」)の第30ページないし第35ページ、第50ページないし第59ページにもみられるように、請求人は、引用商標と同じ構成ないしは近似した構成からなる一対の月桂樹の図形に各種の色彩を施したワンポイントマークが各種の商品に付して使用されていることは明らかであり、その中には、本件商標と同様に白色の月桂樹の葉のマークも多数使用されていることが認められる。
そして、この種の色彩の変更使用は、「FRED PERRY(フレッドペリー)」に係る商標のみならず、少なくとも本件商標に係る指定商品を取り扱う業界においては、普通に行われていることであり、商品のイメージや商品の地色との関係等の理由から、登録商標の文字や図形の色彩とは異なる色彩への変更使用が広く行われているのが実情である(甲第10号証及び甲第11号証)。
なお、仮に、このような色彩変更の使用が認められないとするならば、実際に使用される色彩と同一の色彩からなる商標の全てを商標登録することが必要になるという不都合が生ずることは明らかである。
そうとすると、基本的な構成が極めて近似する月桂樹の図形を含む本件商標と引用商標とは、その色彩を異にするが、その外観上の構成は、極めて類似するものであるといえることから、当該相違点が両商標の外観上の類似性を否定する理由とすることはできない。
上記アないしウにおいて述べたとおり、本件商標と引用商標との類否を先に示した最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決及び最高裁昭和38年12月5日第一少法廷判決の判示事項に照らし考察した場合、両商標は、それぞれの指定商品との関係から、ワンポイントマークとして使用されることが多いであろう実情も相まって、両商標の間での円輪郭図及びハートの図形の有無、並びに、月桂樹の葉の枚数及び色彩において相違は認められるものの、全体として「一対の月桂樹の葉」から構成されるという外観上の特徴を共通にし、当該部分が商標中の最も強い印象を与え印象に残る部分であることから、両商標は、月桂樹の葉の図形から生ずる「月桂樹」の観念及び「ゲッケイジュ」の称呼を共通にするものである。
そして更に、引用商標の著名性を考慮するならば、本件商標に接する消費者は、これより容易に請求人に係る月桂樹の葉のデザインからなる引用商標を連想あるいは想起するものといえる。
エ 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その構成から生ずる「月桂樹」の観念及び「ゲッケイジュ」の称呼を共通にするものであって、また、両商標は、相互に外観上も相紛れるおそれのある類似の商標である。
また、本件商標の指定商品である「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」は,引用商標の指定商品又は指定役務中に含まれる商品「ポロシャツ,タンクトップ,テイーシャツ,シャツ,セーター,パンツ,ショーツ,コート,キャミソール,ニッカーボッカー,スカート,帽子,靴下,サスペンダー,水泳着,水泳帽,ネクタイ,リストバンド,ベルト」及び「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは、同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(4) 商標法第4条第1項第15号について
ア 上述したように、請求人に係る一対の月桂樹の葉から構成からなる商標が付された商品は、日本においても1970年頃から紹介され、特に1980年代から1990年代にかけて起こったポロシャツブームなどを経て、スポーツウェアを中心とした多くの種類のファッション商品について使用され需要者間において注目されたことによって、当該商標には幾つかのバリエーションを伴うものの、いずれも「FRED PERRY(フレッドペリー)」に通ずるものとして、需要者及び取引者間において広く知られるに至っている。なお、前記のとおり月桂樹の葉の構成は、そのデザインに変化が加えられ幾つかの種類のものが使用されてきているが、本件商標と近似する30枚の月桂樹の葉のデザインから構成される引用商標は、甲第21号証に示すように、英国では1967年に既に商標登録され、スポーツウェアのカタログ等において使用されている(甲第22号証)。
そして、引用商標は、本件商標が出願される以前から、我が国においてもスポーツウェアのほか、多くの種類の衣料品等の商品について使用されている(甲第23号証)。
なお、上記のとおり、引用商標の月桂樹の葉の枚数は異にするものの、全体の構成において本件商標に近似したこの種の月桂樹の葉から構成される商標もテニス関連の商品のカタログ(一部のみ抜粋)に多数使用され頒布されている(甲第24号証)。
イ 請求人は、引用商標のみならず、月桂樹の葉と「FRED PERRY」の文字とを組み合わせてなる商標登録(第4209130号、第4209131号、第4263747号、第5116413号、及び第5116415号)を有しており(第25号証ないし甲第28号証)、また甲第4号証の第36ページからも実際に使用されている「FRED PERRY(フレッドペリー)のブランドのバリエーションが認められるところであって、これらが「FREDPERRY(フレッドペリー)」の象徴的なブランドとして実際に多くの商品について使用されていることは、上記の各証拠からも容易に認められることである。そして、これらの証拠からも月桂樹の葉からなる商標が、「FRED PERRY(フレッドペリー)」のシンボルマークとして、日本国内において長期にわたり広く使用され、需要者及び取引者の間において広く認識されるに至っていることは、容易に看取される。
さらに、上記(2)で述べたとおり、本件商標と引用商標の類似性をも併せて考慮するならば、本件商標に接する消費者は、その構成中に円輪郭図やハートの図形が付記されていたとしても、これが衣服等のワンポイントマークとして使用された場合などは、ワンポイントマークが比較的小さく表示されること、また商標やブランドについて詳しい知識を有しない一般消費者がその需要者に含まれていることからも、本件商標からは、容易に「FRED PERRY(フレッドペリー)」に係る月桂樹の葉のブランドを連想あるいは想起するものといえる。
ウ 近年においては、「FRED PERRY(フレッドペリー)」の商品を取り扱う販売店が2002年に東京・原宿に直営店がオープンし、その後、2007年には、東京・青山及び大阪の南船場にも店舗を開店しており、「FRED PERRY(フレッドペリー)」の象徴としての30枚の月桂樹の葉で構成される商標がこれらの店舗において表示されるととともに、当該商標が付された各種の商品の展示及び販売が行われている(甲第4号証の第62ページ並びに甲第29号証ないし甲第32号証)。
なお、「FRED PERRY(フレッドペリー)」の販売店は、上記のみならず、札幌、仙台、原宿、銀座、有楽町、渋谷、新宿、池袋、北千住、町田、横浜千葉、名古屋、南船場、難波、京都、広島等に店舗を有し(甲第4号証の第62ページ及び第63ページ)、その他にもアウトレットショップやオンラインショップも経営している。
このように、スポーツウェアのみならず、よりファッション性の高い各種商品についても、常に引用に係る月桂樹の商標がワンポイントマークとして使用されてきたことから、月桂樹のブランドが「FRED PERRY(フレッドペリー)」を代表する象徴的なシンボルマークとして認められるに至っている事実は、当該月桂樹のブランドの著名性が需要者及び取引者の間において広く認められていることを証明するにほかならない。
そして、当該月桂樹の葉で構成されるこの種の商標が、「FRED PERRY(フレッドペリー)」を代表する象徴的なブランドとして、本件商標が出願される以前から、その著名性を獲得してきたことは、これらの証拠からも明らかであり、また、その事実は、甲第6号証として示した異議の決定においても顕著な事実とされているところである。
エ 本件商標の指定商品と引用商標に係る商品の関連性についてみると、本件商標は、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品として登録出願されたものであるところ、当該指定商品は、引用商標の著名性が取引者、需要者に認識されている分野である衣料品や靴等のファッション関連の商品と同一あるいは非常に強い関連性が認められる流通・販売経路に置かれるものであって、一般消費者という共通の需要者を対象とするものでもある。
オ 上記のとおり、請求人の使用に係る月桂樹の葉から構成される商標は、ファッション性の高い多くの種類の衣料品や靴等について使用されており、当該月桂樹の図が「FRED PERRY(フレッドペリー)」を代表するシンボルとして需要者及び取引者の間において広く知られている事実を考え合わせれば、請求人以外の者が引用商標と酷似する本件商標をファッション関連の商品を含むその指定商品について使用した場合、特にワンポイントマークのように商品の一部に小さく付されるような場合にあっては、これに接する世人をしてその相違点について注意深く観察するとは限らないこと、あるいは、ハートの図形が具備されている相違点に気付いたとしても、請求人の使用に係る「FRED PERRY(フレッペリー)」の月桂樹の葉の商標の著名性あるいはブランドイメージに惹き付けられ、その印象あるいは記憶から、当該「FRED PERRY(フレッドペリー)」に係る商標のバリエーション的あるいはシリーズ的な商標と誤認する場合も多いと考えられる。
そうとすると、本件商標が使用された商品に接した需要者は、当該商品を請求人の業務に係るものであるとの認識するか、あるいは同人と密接な営業上の関係又は同人の商品化事業等を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると認識する可能性、すなわち商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれが極めて大きいものである。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することは明白である。
(5)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 被請求人は、本件商標は「外観上極めてまとまりよく一体的に表示されており、月桂冠の図形部分のみをもって、需要者等が商品識別のための標識として理解・認識するとは、到底考えられない。」と述べ、その理由として「本件指定商品を始めとするいわゆるアパレル商品について、一対の植物の枝葉の図形の構成要素として採択することは、特段珍しいことではなく、むしろ当該植物の枝葉の図形とその他の図形ないしは文字とが結合した構成全体をもって一つの出所識別標識として認識される。」と主張し、その根拠として乙第1号証ないし乙第22号証を提出している。
しかし、被請求人の主張を裏付けるこれら乙第1号証ないし乙第22号証に係る商標は、いずれも「一対の月桂樹の図」の間に、デザイン化若しくは装飾を施してなる欧文字又は図形若しくはこれらの組み合わせからなる要素を商標の中央部に大きく配してなるものである。(ただし、乙第22号証に係る商標のみ、月桂樹の葉の下部に他の図形が配されている。)
一方、本件商標は、その構成中に圧倒的な大きさで「一対の月桂樹の図」が表示されているものであって、「ハートの図」は、これら乙各号証中に表示された欧文字又は図形等の要素と比較して、はるかに小さくアクセント的に表示されているにすぎない。
そうとすると、これら乙各号証に表示された欧文字又は図形等は、その商標構成中に占める割合及び表示された部位において、本件商標に表示された「ハートの図」とは、明らかに相違するものであって、全体として両者を比較した場合においても、いずれの商標もその構成中に「一対の月桂樹の図」を有する共通点は認められるものの、両商標の構成全体から受ける印象あるいはイメージは、全く異にするものである。
よって、これら乙各号証に係る商標に接する需要者が「一対の月桂樹」のみの印象あるいはそのイメージを看取して、当該図形部分から生ずる名称によって観念及び称呼することは、不自然とみるべきである。
してみると、乙第1号証ないし乙第22号証に係る商標が登録されている事実をもって、本件商標が引用商標とは類似しないことの理由あるいは根拠とはなり得ないことから、上記被請求人の答弁の理由は、成り立たない。
イ 被請求人は、「本件商標は、植物の枝葉の上端にハートの図形を配しこれにより全体として一つの円を連想させ、さらに、当該図形の外側に円図形を配することにより、構成全体の不可分性が高められており、この点で、乙第10号証に係る商標に比して一体性が劣るとは決していえず、むしろ、本件商標にこそ、より強固な一体不可分性が認められてしかるべきである。」と主張し、乙第10号証との関係について述べている。
しかしながら、乙第10号証に係る商標も、「円輪郭中にローマ文字『F』の筆記体文字を配し、当該図を「一対の月桂樹」が下から支えるような構図からなるものであるから、本件商標とは、明らかにその基本的構成を異にするものであって、本件商標が乙第10号証よりも一体不可分性が認められる商標であるとする明確な理由が示されていないばかりか、上記アと同様の理由において、乙第10号証に係る商標が登録されていることを理由に本件商標と引用商標とが非類似であるとする答弁は、成り立たない。
ウ 被請求人は、乙第23号証ないし乙第32号証を提出しているが、これらの使用に係る商標も、「一対の月桂樹の図」と併せて、大きく表示され、デザイン化が施されたローマ文字あるいは図形を商標の構成中に大きく配してなるものであって、両要素がまとまりよく組み合わさった構成からなることを特徴とするものであることから、これらの商標に接する需要者が「一対の月桂樹」のみの印象あるいはそのイメージを看取して、当該図形部分から生ずる名称によって観念及び称呼することは、乙第1号証ないし乙第22号証同様に不自然とみるべきである。
しかして、乙第23号証ないし乙第32号証に示される、「一対の月桂樹の葉」の中に大きく表示された欧文字又は図形等が配された構成を特徴とする商標と本件商標とは、その外観上の特徴の相違が明らかに認められるものであって、本件商標と引用商標との類否を判断するに際して、これら乙各号証を考慮すべき理由は、認められない。
一方、本件商標に接する一般消費者を含む需要者は、商標中の「ハートの図」の有無よりも、商標の構成上圧倒的にその大部分を占める「一対の月桂樹の葉」の印象あるいはイメージに着目するであろうことは、容易に推認し得るところである。
してみると、本件商標と引用商標とは、「一対の月桂樹の葉」の構成を共通にする外観上相紛れるおそれのある商標であって、また、本件商標の構成中最も印象の強い「一対の月桂樹の葉」の部分に着目し、当該部分から生ずる名称によって観念及び称呼されることも不自然ではない。むしろ、本件商標がたとえ外観上まとまりのよい構成からなるものであるとしても、被請求人が提出する乙第24号証、同28、同32号証からも認められるように、本件商標が使用される商品は、専らアパレル関連の商品であり、ポロシャツ等にいわゆる「ワンポイントマーク」として使用されることが非常に多いという、市場における商標の使用の実態を考慮すべきである。
すなわち、本件審判請求書においても述べたように、本件商標の指定商品の主たる需要者は、商標やブランドについて詳細な知識を持たない者を含む一般の消費者であり、商品の購入に際して、メーカー名などを常に注意深く確認するとは限らないことに留意すべきであって、当該需要者である一般消費者の普通に払われる注意力をもって「ワンポイントマーク」に接した場合には、構成上の大きさやその表示方法に格別顕著な特徴を具備するものではない本件商標中の「ハートの図」の有無といった細部についてまで正確に観察するとは限らず、この点においても、商標の構成上圧倒的にその大部分を占める「一対の月桂樹の葉」の印象あるいはイメージに着目するであろうことは、容易に推認し得るところである。
ちなみに、請求人は、商標中の円輪郭の有無についても触れているが、本件商標中の円輪郭図は、極めてありふれた輪郭図であって、当該輪郭によって本件商標の構成上の一体性を強固にするものではなく、本件商標の識別力が高まるわけでもない。
エ 被請求人は、甲第33号証における「ハートの図」について、「ハートの図形がアクセントとして用いられるのは、当該部分が需要者等の注意を引く目立つ部分だからこそのことであり、かかる需要者の注意を引くハートの図形部分を捨象して本件商標の要部を認定することはできない。」と述べている。
しかし、同判決は、文字と「ハートの図」から構成される商標において、「ハートの図形の有無をもって『チェチェ』以外の称呼及び新たな観念は生じない」と判断しているのであって、本件商標のように図形のみで構成される商標においては、なおさら「ハートの図」がより看者に特別の印象や強いイメージを与えるものとは認められず、当該図形の構成上の占める割合やその表示方法に格別顕著な特徴を具備しないことから、「ハートの図」の有無が両商標の類否判断に与える影響は、極めて小さいものというべきであり、よって被請求人の上記主張を認めることはできない。
オ 被請求人は、「引用商標から『ゲッケイジュ;月桂樹』との称呼、観念が生ずるとしても、本件商標の構成において、特定の称呼、観念は生じないとするのが相当である。」と述べているが、上記のとおり、商標に接する一般消費者を含む需要者は、商標の構成全体から受ける印象によって商品の出所を識別するものとみるのが自然であり、本件商標に接する需要者は、その構成上圧倒的な部分を占める「一対の月桂樹の葉」の印象あるいはイメージに着目するであろうことは、容易に推認し得るところである。
してみると、本件商標からは「月桂樹」の観念及び「ゲッケイジュ」の称呼が生ずること明らかであり、同観念及び称呼が生ずる引用商標とは、外観上の特徴、印象あるいはイメージのみならず、上記観念及び称呼を共通にする点においても類似するものであるから、被請求人の上記答弁は、成り立たない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 被請求人は、請求人の「一対の月桂樹の葉」の図形からなるシンボルマークが需要者において広く知られていることを認めつつも、「本件商標と引用商標との間に類似性が認められないこと」を前提として、「アパレル商品に関しては、植物の枝葉からなる図形を構成に含む商標が不特定多数の者によって採択されることは、珍しいことではない。」として、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないと述べている。
しかし、本件商標と引用商標とは、既に上記(1)において述べたとおり、外観上「一対の月桂樹の葉」の構成を共通にする相紛れるおそれのある商標であり、いずれの商標からも「月桂樹」の観念及び「ゲッケイジュ」の称呼が生ずる類似の商標であることから、上記被請求人の答弁は、成り立たない。
イ 被請求人は「月桂樹の葉が他の図形要素と結合して構成されたバリエーション的あるいはシリーズ的なマークは、一切使用されていない。」と述べ、更に「アパレル業界において、植物の枝葉の図形と他の図形又は文字とを結合させた標章を、アパレル商品の商標として採択することが普通に行われていることは、乙第23号証ないし乙第33号証が示しているところである。」と主張している。
この点ついては、確かに請求人は、現在は「一対の月桂樹の葉」のバリエーションを図るために「ハートの図」といったアクセント的な図柄を具体的に付した商標は、使用していないとしても、バリエーション的あるいはバリエーション化とは、必ずしも基礎となる商標に新たな構成上の要素を付加する場合だけではなく、例えば、使用商品との関係、あるいは需要者の相違や商標の使用部位等の観点から、「月桂樹」の葉の枚数あるいは葉の形に変更を加えるといった、シリーズ化あるいはバリエーション化を施した図が採用されており、また、色彩の変更も商標のバリエーション化の一種と認められる。
そして、以上の事実は、甲第4号証に掲載された各商標の使用例等からも認めることができる。
ウ アパレル関連の商品についてみた場合、基本となる商標に「ハートの図」等の表示を付加することによって、当該商標のバリエーションとして採択されることは、決して珍しいことではない事実として、請求人は、その一例を甲第34号証として提出する。当該甲第34号証は、スポーツウェアを中心とした商品について使用され広く知られている「フィラ リュクサンブール エス ア エール エル」(ルクセンブルグ国在)が、そのシンボルマークである図をハートの図柄の中に配した使用例であり、特に子供用、女性用の商品には、「ハートの図」がアクセント的に採択することによって、商標のバリエーション化を図ることが、当該商品の取引市場においては、一般的に行われている事実を示すものである。
また、アパレル商品ではないが、需要者及び販売経路等において非常に強い関連を有する商品である「靴」や「バッグ」においても、商標のバリエーションとして、商標に「ハートの図」を付して使用されている例を甲第35号証及び甲第36号証として提出する。
これらの事実からも、商標中に「ハートの図」等を付して商標のバリエーション化を図ることは、アパレル関連業界においては、けっして珍しくはなく、しばしば行われていることが認められる。
したがって、この点においても、被請求人の主張は、当該商品の取引市場における商標の使用の実態に関する誤った認識に基づくものであることから、上記答弁は、成り立たない。
エ 商標の構成中に「月桂樹の図」を含んでなる紋章的な商標が多数登録されていることは否定し得ないが、乙第23号証ないし乙第32号証に係る商標は、何れも本件商標とは、その基本的な構成を異にするものであり、これらの商標は、「一対の月桂樹の図」とデザイン化を施された欧文字あるいは図形を商標の構成中に大きく配してなる構成からなるものであって、両構成要素がまとまりよく組み合わされた構成からなることを特徴とするものである。よって、これらの商標は、商標の構成全体から受ける印象によって商品の出所を識別することが自然であって、これらの商標が「一対の月桂樹の葉」の印象あるいはイメージのみをもって看取され、当該部分から生ずる名称によって観念及び称呼されることは、不自然とみるべきである。
してみると、乙第23号証ないし乙第32号証に係る商標が使用されている事実を理由とした上記答弁は、無効であり成り立たない。
オ 乙第26号証、乙第27号証、乙第29号証及び乙第33号証に係るTシャツの胸部又は背面部にプリントされた図柄、文字等は、「商標としてその機能を強力に発揮せしめるためではなく、需要者が右表示の図柄が嗜好ないし趣味感に合うことを期待しその商品の購買意欲を喚起させることを目的とするものと解すべき」であって、これら商標の「使用行為はこれを客観的にみても商標の本質的機能である自他商品の識別標識及び商品の品質保証機能を有せず、また、主観的意図からしても商品の出所を表示する目的をもって表示されたものではないというべきである」(大阪地方昭和49年(ワ)第393号昭和51年2月24日判決)、ことから、これら乙各号証をもって、月桂樹等のデザインがアパレル商品に多数使用されている旨の被請求人の主張を認めることはできない。
(3)以上のとおり、本件商標は、請求人が使用する商標と外観、観念及び称呼において類似する商標であり、本件商標の指定商品は、当該使用に係る商標の著名性が需要者、取引者間において認識されているファッション関連の商品を含むものであるから、本件商標がその指定商品に使用されるとき、特にワンポイントマークのように商品の一部に小さく付されるような場合には、これに接する世人をして、当該商品は、請求人又は同人との間に密接な営業上の関係若しくは同人の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であるかのごとく誤るおそれがあるものというべきである。
よって、「本件商標に接する需要者等は、これを何人かの商品に関する商標であると認識することはあっても、これから請求人を想起し、これが付された商品が請求人の業務に係るものであるとか、あるいは同人と密接な営業上の関係又は同人の商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であるとして、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれは皆無である。」との被請求人の答弁は、無効であり成り立たない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第33号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)請求人は、本件商標について、構成中のハートの図形が小さく配置されており、また、ハートの図形自体が格別特徴的なデザイン化等が施されているわけではなく、該ハートの図形と月桂樹の図形とを常に一体のものとして認識すべき格別の理由もないことから、本件商標の構成中、一対の枝葉の図形をその要部であると主張する。
しかしながら、本件商標は、一対の植物の枝葉の上端部に挟まるようにハートの図形が表示され、枝葉の図形とハートの図形とが円を構成するように結合して表示されている。
しかも該枝葉の図形及びハートの図形によって構成される円形デザインの外側に円輪郭を配するという、外観上極めてまとまりよく一体的に表示されており、月桂冠の図形部分のみをもって需要者等が商品識別のための標識として理解・認識するとは、到底考えられない。
そもそも、乙第1号証ないし乙第22号証が示すとおり、本件指定商品を始めとするいわゆるアパレル商品について、一対の植物の枝葉を商標の構成要素として採択することは、特段珍しいことではなく、むしろ当該植物の枝葉の図形とその他の図形ないしは文字とが結合した構成全体をもってーつの出所識別標識として認識されるといえる。
請求人は、本件商標中、ハートの図形部分は、「商標として極めて広く採択されている形状」の図形としているが、例えば、乙第1号証ないし乙第9号証は、一対の枝葉の図形が、商品の種別、型式、規格等を表示する記号、符号として、類型的に取引上採択、使用されているアルファベット1文字又は2文字と結合してなる商標であるが、これらを請求人の主張に倣って要部を判断するとすれば、アルファベットの部分を除いた植物の枝葉の図形で構成される部分が、各商標の要部ということになる。そうすると、植物の枝葉を要部とする各商標は、互いに類似することになるが、類似と判断されず、それぞれ一体不可分のものとして引用商標と併存して登録されている。これは、すなわち、植物の枝葉からなる図形を構成に有する商標について、当該植物の枝葉図形部分が無条件に商標の要部であるとは、把握・認識されないことを示している。
また、乙第10号証は、植物の枝葉と円図形を構成に有する点で本件商標と構成の軌を共通にするが、該商標においては、植物の枝葉図形が円図形の外側に表示され、ややもすれば円図形(及びこれが内包する「F」の文字)と枝葉の図形とが分離され易い態様からなるものの、その構成の一体性が認められ、引用商標との併存登録されている。上述のとおり、本件商標は、植物の枝葉の上端にハートの図形を配しこれにより全体で一つの円を連想させ、さらに、当該図形の外側に円図形を配することにより、構成全体の不可分性が高められており、この点で、乙第10号証に係る商標に比して一体性が劣るとは、決していえず、むしろ、本件商標にこそ、より強固な一体不可分性が認められてしかるべきである。
(2)なお、請求人は、本件商標に含まれるハート図形の出所識別標識を否定する理由として甲第33号証を提出しているが、これはハートの図形を含んだ「CHε○(ハート)CHε」が、登録商標「チェチェ/CHECHE」と同様、「チェチェ」と称呼されることを判断した事例であって、図形のみで構成される本件商標において、ハートの図形が出所識別標識として機能するかどうかの判断の基礎となるべきものではない。むしろ、ハートの図形がアクセントとしてしばしば用いられるのは、当該部分が需要者等の注意を引く目立つ部分だからこそであり、かかる需要者の注意を引くハートの図形部分を捨象して本件商標の要部を認定することはできない。
(3)本件商標と引用商標とは、請求人も認めるとおり、本件商標において、引用商標には存在しない円図形及びハートの図形が存在する点で相違し、かつ、これらの図形が植物の枝葉からなる図形と一体不可分的に結合して表示されている点に本件商標の特徴が認められるのであるから、かかる構成において、植物の枝葉部分が独立して認識されるとは、決していえない。
また、仮に引用商標から「ゲッケイジュ;月桂樹」との称呼、観念が生ずるとしても、本件商標の構成において、特定の称呼、観念は生じないとするのが相当である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において顕著な差異を有する別異の商標とするのが相当であり、よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、月桂樹の葉からなる引用商標が、「FRED PERRY(フレッドペリー)」のシンボルマークとして、日本国内において需要者等の間で広く認識されるに至っており、本件商標と引用商標の類似性を併せて考慮すると、本件商標に接する消費者は、本件商標から容易に「FRED PERRY(フレッドペリー)」に係る月桂樹の葉のブランドを連想あるいは想起するから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当すると主張する。
しかしながら、本件商標は、植物の枝葉からなる図形と、ハートの図形及び円図形とが一体不可分に結合してなる商標であって、かかる態様において、植物の枝葉部分のみが独立して出所識別標識として把握・認識されることは決してなく、本件商標と引用商標との間に類似性が認められないことは、上述のとおりである。
(2)被請求人は、請求人のシンボルマークについて、需要者間で一定程度広く知られていることを認めるにやぶさかではない。
しかしながら、月桂樹の葉やその他の植物の枝葉からなる図形を構成要素の一部とする商標についてまで、需要者等が、請求人のシンボルマークのバリエーション的あるいはシリーズ的な商標であると認識するほどまでに需要者間で当該シンボルマークが浸透しているとは、決していえない。
そもそも、本件指定商品のようなアパレル商品に関しては、植物の枝葉からなる図形を構成に含む商標が不特定多数の者によって採択されることは、珍しいことではない。
実際にも、植物の枝葉からなる図形を、他の図形ないしは文字要素と組み合わせてアパレル商品に使用する例は、数多く見られる(乙第23号証ないし乙第33号証)。
(3)請求人は、引用商標が付された商品が1970年ごろから日本でも紹介されるようになり、1980年代から1990年代にかけて起こったポロシャツブームなどを経て、スポーツウェアを中心とした多くの種類のファッション商品について使用され、需要者間において注目されたことによって、当該商標には、いくつかのバリエーションを伴うものの、いずれも「FRED PERRY(フレッドペリー)」に通ずるものとして、需要者及び取引者間において広く知られるに至った旨主張する。
しかしながら、提出された証拠に表示されている標章は、大小の違いはあれ、いずれも月桂樹の葉で構成された標章(又はこれと「FRED PERRY」という文字との結合)のみであって、月桂樹の葉が他の図形要素と結合して構成されたバリエーション的あるいはシリーズ的なマークは、一切使用されていない。そうすると、請求人のシンボルマークとして需要者等の間で広く認識されている商標は、あくまでも月桂樹の葉のみを構成要素とするシンプルな図形商標ないし、このシンプルな図形商標と「FRED PERRY」という文字とが結合した商標のみと考えるのが相当である。
他方、アパレル業界において、植物の枝葉の図形と他の図形又は文字とを結合させた標章をアパレル商品の商標として採択することが普通に行われていることは、乙第23号証ないし乙第33号証が示すところである。
このような取引実情の下で、本件商標に接する需要者等は、これを何人かの商品に関する商標であると認識することはあっても、これから請求人を想起し、これが付された商品が請求人の業務に係るものであるとか、あるいは同人と密接な営業上の関係又は同人の商品化事業等を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であるとして、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれは皆無である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判についての請求人適格を有するか否かについては、当事者間に争いはないので、本案に入って判断する。
1 引用商標の著名性について
フレデリック・ジョン・ペリー(Frederick John Perry)は、1952年に英国においてフレッドペリースポーツウェア社(FRED PERRY SPORTSWEAR LIMITED)を設立し、今日にも継承されている月桂樹のマークを付したポロシャツの製造を開始した(甲第4号証及び甲第5号証)。
我が国には、1970年代に「FRED PERRY JAPAN OPEN」の開催を契機として月桂樹のマークを使用した商品が上陸した(甲第3号証)。そして、引用商標は、少なくとも1996年頃からスポーツウェアを初め、シャツ、セーター等の被服、靴等の商品に、単独で又は「FRED PERRY」の文字と共に付され、それら商品は、本件商標の出願日前に発行された各種の雑誌で広告されている(甲第23号証)。また、請求人は、かかる商品を取り扱う店舗を、2002年に東京・原宿に直営の1号店をオープンし、その後、2006年には15店舗、2009年には札幌、横浜、名古屋、大阪等全国主要都市に20店舗有しており、その店舗には引用商標が、単独で又は「FRED PERRY」の文字と共に表示され、当該店舗は、新店舗のオープンを機に新聞やインターネットで紹介されている(甲第4号証及び第29号証ないし甲第32号証)。
そうとすれば、引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時には既に、申立人又は申立人と関係する者の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。
2 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲(1)のとおり、円輪郭内に、一対の月桂樹の枝葉の図形を該円輪郭に沿うように描き、さらに、当該枝葉の上部両端に挟まれるように太い線で表したハートの図形を配した構成からなるものである。そして、枝葉の図形とハート図形とは、両者で円形を描くように、まとまりよく一体的に構成されていることから、看者をして、両者はその全体をもって一個の図形として認識し把握されるものであって、特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。
これに対し、引用商標は、別掲(2)のとおり、円形に湾曲させた一対の月桂樹の枝葉を黒塗りで表してなるものであり、当該枝葉は上端部が離れており、上部において開放感のある印象を与えるものであって、その構成から「ゲッケイジュ」(月桂樹)の称呼及び観念を生ずるものといえる。
さらに、引用商標は、上記1のとおり周知、著名な商標であることから、「フレッドペリーの月桂樹」として認識し把握されるものである。
ところで、被請求人の提出にかかる乙第1号証ないし乙第25号証、乙第28号証、乙第31号証及び乙第32号証によれば、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、円形に湾曲させた一対の植物(その多くが月桂樹と認められる。)の枝葉の図形と他の文字又は図形とを組み合わせた構成からなる商標が多数採択、使用され、それらの商標は、それぞれ別異の商標として認識され、取引に資されていると推認できる。
そうとすれば、それら一対の枝葉図形と他の文字又は図形とからなる商標は、その構成全体をもって、一体不可分の一つの商標として認識されるもの、すなわち、自他商品識別標識としての機能を果たすものというべきである。
そうすると、たとえ、引用商標が周知、著名な商標であるとしても、本件商標は、その構成中の一対の月桂樹の枝葉の図形とハートの図形とが、不可分一体のものであって、一対の月桂樹の枝葉の図形部分のみが独立して認識、把握されるものではないといわなければならない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において、両者を時と処を異にして観察しても、全体の印象が大きく異なり相紛れるおそれはなく、また、本件商標が特定の称呼及び観念を生じないものであるから、両者は称呼及び観念においても相紛れるおそれはない。
以上のとおりであるから、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
3 商標法第4条第1項第15号について
上記1のとおり、引用商標は申立人の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められるものであるが、上記2のとおり本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、全く別異の商標であるから、商標権者(被請求人)が本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標又は申立人若しくは申立人と関係する者を想起することはないというべきであり、当該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわざるをえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、2つの最高裁小法廷判決の判示事項に照らし、本件商標と引用商標とは、それぞれの指定商品との関係から、ワンポイントマークとして使用されることが多いであろう実情とも相俟って、「一対の月桂樹の葉」から構成されるという外観上の特徴を共通にし、「ゲッケイジュ」(月桂樹)の称呼及び観念も共通にする類似の商標である旨主張している。
しかしながら、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、商標がワンポイントマークとして使用され小さく表示されることがあること、需要者が一般の消費者であり商品の購入に際しメーカー名などを注意深く確認するとは限らないことといった取引の実情を考慮しても、本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれはない非類似の商標といわざるをえないから、請求人の主張は採用することができない。
(2)請求人は、「アパレル商品について、一対の植物の枝葉の図形とその他の図形ないしは文字とが結合した構成全体をもって一つの出所識別標識として認識される商標が多数存在(乙第1号証ないし乙第32号証)するとしても、本件商標は、これらの商標と同様に一つの出所識別標識として認識される商標とはいえない。そうとすると、本件商標は、その構成よりすれば、一対の植物の枝葉の図形を要部とするものであって、これを前提に、本件商標と引用商標とは、類似の商標である」旨主張している。
しかしながら、本件商標は、その構成中「ハートの図」が「一対の植物の枝葉の図形」に比べ小さく表示されているとしても、アクセント的に表示されているとはいえず、上記2のとおり、これら両図形はまとまりよく一体的に構成されているものであって、また、一対の植物の枝葉の図形とその他の図形ないしは文字とが結合した商標が多数存在し、それらの商標がそれぞれ別異の商標として認識され、取引に資されていることが推認できるところからすれば、本願商標から、「一対の植物の枝葉の図形」のみが分離・抽出されて要部となることはないというべきである。
そうとすると、本件商標から「一対の植物の枝葉の図形」を要部であることを前提に、本件商標と引用商標とが類似の商標である旨の請求人の主張も採用することはできない。
(3)請求人は、本件商標をその指定商品に使用した場合には、引用商標の著名性やブランドイメージ、取引の実情等からして、本件商標を引用商標のバリエーション的又はシリーズ的な商標と誤認される場合が多く、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれが極めて大きい旨主張している。
しかしながら、本件商標は、上記2のとおり本件商標と引用商標とは全く別異の商標であること、また、基本の商標に「ハートの図」等を付した商標が、「スポーツウエア」や「靴」や「バッグ」の一部の商品について使用されている事実は認められる(甲第34号証ないし甲第36号証)としても、実際に、引用商標がこれと他の図形や文字と結合してシリーズ商標的に使用されている事実もないことなどからすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標及び申立人等を想起させるものとは認められず、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当であるから、上記請求人の主張も採用することができない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


別掲
(2)引用商標


審理終結日 2010-07-06 
結審通知日 2010-07-08 
審決日 2010-07-22 
出願番号 商願2008-102018(T2008-102018) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X25)
T 1 11・ 261- Y (X25)
T 1 11・ 263- Y (X25)
T 1 11・ 262- Y (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 忠司竹内 耕平 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
小川 きみえ
登録日 2009-07-03 
登録番号 商標登録第5245528号(T5245528) 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 浅村 肇 
代理人 城山 康文 
代理人 高原 千鶴子 
代理人 岡野 光男 
代理人 浅村 皓 
代理人 北口 貴大 
代理人 土屋 良弘 
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