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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない Y12
管理番号 1225153 
審判番号 不服2008-650099 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-13 
確定日 2010-08-10 
事件の表示 国際登録第892584号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「GREAT WALL」の欧文字を横書きしてなり、第12類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2006年(平成18年)5月11日に国際商標登録出願されたものである。
そして、指定商品については、原審における平成19年12月20日付けの手続補正書により、第12類「Motor buses;trucks;automobiles;motor homes;sports cars;vans(vehicles);motors for land vehicles;automobile bodies;automobiles chassis.」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、世界遺産として登録されている『中国の万里の長城』を認識する「GREAT WALL」の文字からなるものであるから、これを出願人が商標として独占して採択、使用することは、中華人民共和国の権威と尊厳を損ねるおそれがあり、国際信義に反するものである。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号において、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
そして、知的財産高等裁判所平成17年(行ヶ)第10349号(判決日 平成18年9月20日)において、「商標法4条1項7号は、『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』は、商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には、1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」旨判示されている。
そこで、以上の観点から本件について検討する。
(2)本願商標の商標法第4条第1項第7号の該当性について
ア 本願商標は、前記1のとおり「GREAT WALL」の文字を書してなるところ、その構成文字全体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快を与えるような文字又は図形に該当するものではなく、その構成自体は、何ら公の秩序又は善良の風俗に反するものとは認められないものである。
イ しかしながら、本願商標を構成する「GREAT WALL」は、1987年に人類の英知と人間活動の所産を様々な形で語り続ける、顕著な普遍的価値を有する遺跡、建造物群、モニュメントなどの文化遺産としてユネスコの世界遺産に登録された「THE GREAT WALL」(万里の長城)と、その文字構成において「THE」の文字の有無の相違のみという外観上酷似したものであるから、本願商標「GREAT WALL」は、容易に「THE GREAT WALL」(万里の長城)を想起、認識させるものである。
そして、「THE GREAT WALL」(万里の長城)は、紀元前7世紀に楚の国が「方城」を築造することから始まり、秦の始皇帝が北方の遊牧民族の侵入を防ぐための防衛線とするなど、二千年以上にわたり、外敵や異民族の侵入を防御するために築き続けた城壁であり、中国文明の象徴そのものといえる。
また、「THE GREAT WALL」は、我が国をはじめ世界中から多数の観光客が集まる、世界的に著名な観光地である「万里の長城」の英語表記でもある。
そうとすると、「THE GREAT WALL」と酷似し、容易に該文字を想起させる本願商標を商標として登録し、これを個人に独占して使用させることは、世界遺産の名声及び権威を損ねるおそれがあり、我が国と中華人民共和国の国際信義に反し、両国の公益を損なうおそれが高いこと等を総合的に考慮すると、本願商標は、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当し、商標登録を受けることができないというべきである。
(3)請求人(出願人)の主張について
請求人(出願人)は、「万里の長城」の英文表記は、「(The) Great Wall of China」(甲第14号証及び第15号証)であり、また、「Great Wall」が「宇宙に存在する巨大なシート状の銀河集団の壁」等の意味の語として紹介されていること(甲第8号証ないし12号証)、及び「Wall」の語が「壁」の意味で一般に親しまれており、本来的に「城」という意味は有しないから、本願商標は、「巨大な壁」程の意味を看取するとみるのが自然であり、「万里の長城」を連想するものでない旨主張する。
しかしながら、「万里の長城」は、以下のとおり、英語で「The Great Wall」とも表記され、かつ、該英語表記が一般に用いられているものである。
ア「世界遺産事典-878全物件プロフィール-2009改訂版」(発行 シンクタンクせとうち総合研究機構 ISBN978-4-86300-135-1)において、47頁に「万里の長城」が紹介されているところ、英文の表記として「The Great Wall」との記載がある。
イ ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)のホームページにおいて、世界遺産リストのウェブページで「万里の長城」が「The Great Wall」と表記されている。
(http://whc.unesco.org/en/list/438)
ウ「NHK」のホームページにおいて、「NHK世界遺産」のウェブページで「万里の長城」が紹介されているところ、「遺産名(英語):The Great Wall」との記載がある。(http://www.nhk.or.jp/sekaiisan/card/cards193b.html)
エ「JTB」のホームページにおいて、「世界遺産を訪ねる旅 万里の長城」のウェブページで「万里の長城」が紹介されているところ、「英名 The Great Wall」の記載がある。
(http://www.jtb.co.jp/kaigai/theme/heritage/detail.asp?no=4)
しかして、「The Great Wall」の表記中、「The」の部分は、定冠詞として、ある種の固有名詞の前に付けるものであり、例えば「the Far East(極東)」「the United States of America(アメリカ合衆国)」「the Sea of Japan(日本海)」等のように用いられるところ、これらの英文表記が「the」の有無によって、その意味が相違するとして明確に区別されているとはいい難いものである。
そして、「Great Wall」の文字からは、これらと同様に、「万里の長城」の意味を把握、認識する場合が十分にあるとみるのが相当である。
このことは、例えば、以下のインターネット情報等において、「万里の長城」を、定冠詞「The(ザ)」を用いずに、単に「グレートウォール」と称していることからしても、「Great Wall」の欧文字から「万里の長城」を容易に理解、認識するとみて差し支えないものといえる。
オ「阪急交通社」のホームページにおいて、「世界遺産 ? The World Heritage?」のウェブページにおいて「第16回 万里の長城 ・・・行ってみたい世界遺産のアンケートをとると、必ず上位にランキングされる万里の長城。・・・・グレートウォールとはよくぞいったもので、島国日本では到底考えられぬスケールの壮大さ・・・。」との記載がある。
(http://www.hankyu-travel.com/heritage/china/greatwall.php)
カ「Alan1.net」のホームページにおいて、「北京三大世界遺産巡り(万里の長城・明の十三陵・頤和園)」のウェブページで、「<ツアーの見所>◆万里の長城 月から見える唯一の建築構造物と言われる万里の長城。グレートウォールとしてユネスコの世界遺産の筆頭級にあげられ、中国を代表する観光スポットです。・・・」との記載がある。(http://www/alan1.net/jp/asia/beijing/sg/2408/ag/11622/)
キ「livedoorニュース」において、「万里の長城はやはり『グレート』、邪馬台長城に登った=『北京五輪』脱カルポ(16)」の見出しの下、「・・・ともあれ、万里の長城は予想していた以上に『グレート』でした。・・・英語で『グレートウォール』という意味が分かりました。・・・」との記載がある。
(http://news.livedoor.com/article/detail/3774921/?p=2)
以上のとおりであるから、前記の請求人の主張は採用できない。
また、請求人(出願人)は、過去の登録例を挙げて、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当しない旨述べているが、登録出願に係る商標が公序良俗を害するおそれがあるか否かについては、査定時又は審決時における社会通念に基づき認定、判断すべきものである。
そして、社会通念は、時代と共に変化するものでもあるから、それに伴って、従来公序良俗を害するおそれがなかったものがあるようになったり、またその逆もあり得ることであり、過去に登録されたものが常に公序良俗を害するおそれがないとは言い得ないものであるから、それらをもって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かの基準とするのは、必ずしも適切でないから、請求人のこの主張も採用できない。
(4)まとめ
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定を覆すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-03-11 
結審通知日 2010-03-18 
審決日 2010-03-30 
国際登録番号 0892584 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (Y12)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 旦 克昌 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 佐藤 淳
岩崎 良子
商標の称呼 グレートウオール、グレート、ウオール 
代理人 成合 清 
代理人 為谷 博 

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