• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y10
管理番号 1225145 
審判番号 取消2008-300373 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-03-24 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第0466554号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第466554号商標(以下「本件商標」という。)は、筆記体で書された「Bio」の文字と活字体で書された「バイオ」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和28年6月15日に登録出願、第18類「義歯」を指定商品として、同30年5月30日に設定登録され、その後、4回にわたる商標権の存続期間の更新登録を経て、平成18年3月1日に指定商品を第10類「義歯」とする指定商品の書換登録がされたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
また、本件審判の請求の登録日は、平成20年4月14日である。
2 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 乙第2号証、乙第3号証及び乙第4号証について
乙第2号証及び乙第3号証は、いずれも2008年6月7日に撮影されたものであるから、本件審判の請求の登録前3年以内のものではなく、証拠価値はない。乙第4号証は、単に「義歯」についての説明であるので、商標の使用を証するための証拠とはならない。
イ 乙第1号証について
被請求人は、乙第1号証の9頁の下段右の商品(以下「使用商品1」という。)及び同10頁の最上段右の商品(以下「使用商品2」という。)に表示された商標「Bio」(以下「使用商標」という。)は、本件商標と社会通念上同一の商標であるとし、その根拠として、(a)クォーテーションマークで区別しているので「“Bio”」の文字部分が商標である、(b)「“Bio”」以外の各表示は商品の品質、原材料、形状数量を表示しているものである、ことを挙げる。
しかし、使用商品1及び2のそれぞれに表示された文字は「“Bio”Form」であり、本件商標とは構成を全く異にするものであるから、両者が社会通念上同一の商標であるということはできない。なお、被請求人が述べる根拠である上記(a)及び(b)については下記に述べるとおり理由がない。
(a)について
使用商品1及び2に表示された使用商標に付されたクォーテーションマークは、「Bio」の文字部分が商標であることを強調するための符号というよりは、むしろ、当該商品が「バイオ形態」という人工歯の形態であることを強調して示すものである。
このことは、被請求人のホームページに、「バイオ形態」とは「1937年に完成された、日本で初めて開発された理論的解剖学的な根拠に基づいた形態」であると説明されており、さらに、「このバイオ形態は、誕生以来、今日に至るまで広く臨床家に愛用され、日本の標準的な人工歯として、その514番は歯科医師国家試験や技工士国家試験に採用されてきました。」と記載されていることからも明らかである(甲第2号証及び甲第3号証)。
また、使用商品1及び2の商品についての詳細説明欄には、「・・・の基本型よりなるバイオ形態のレジン歯で、色調は自然感があり、・・・」(使用商品1)、「解剖学的なバイオ形態を基本形とし・・・」(使用商品2)との記載がある。これらの記載からしても、使用商品1及び2は、被請求人本人が、「バイオ形態」という人工歯の形態(スタイル)を採用した商品であり、かつ、「Bio Form」がバイオ形態の英文表記であることを説明している。
さらに、仮に「“Bio”」の文字部分が登録商標であることを強調したいのであれば、クォーテーションマークを付すよりは、通常は「Bio」の文字に、登録商標を示す○の中に「R」のマークやTMマークなどを併記するから、この点に関する被請求人の主張は信憑性を欠く。
以上から、使用商品1及び2に表示された「“Bio”Form」は、「“Bio”」の文字部分が商標であることを示すというよりは、数ある人ロ歯の形態のうちの、「バイオ形態」の人ロ歯であることを強調するものであると理解するのが自然である。
(b)について
乙各号証及び被請求人のホームページ掲載事項などから総合的に判断すれば、使用商品1及び2に表示された「“Bio”」の文字は、「Form」の文字とあいまって、レギュラーな形態でもなく、数ある人工歯の形態の中の「バイオ形態」に係る人工歯であることを示す表示と考えられる。したがって、「Bio Form」の文字部分も、商品の品質などを示すものである。
ウ「Bio」の文字の識別力について
「Bio」の文字は、バイオテクノロジーを用いた分野(義歯の分野を含む)における商品や役務を表す語として広く用いられている(甲第4号証)。
このように「Bio」の文字単独では、これらの分野における商品・役務との関係において自他商品等識別機能が弱いか極めて弱い語であると考えるのが自然である。とすると、使用商品1及び2に表示された「“Bio”Form」の文字は、「Bio」の文字部分にクォーテーションマークが付されているとしても、「Bio」の文字部分と「Form」の文字部分とを分断して把握するのではなく、「生命の、生物の」などの意味合いを持つ一連の複合語として一体的に需要者・取引者に把握されるものである。
また、「Bio」の文字部分と「Form」の文字部分とが同一のフォントでまとまりよく書されていることともあいまって、「Bio Form」の文字に接する需要者・取引者が、これをわざわざ「Bio」の文字部分と「Form」の文字部分とに分断して理解・把握することはない(甲第5号証参照)。
エ まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを証明していない。
3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
(1)使用の事実
被請求人は、以下のとおり、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定商品に使用している。
ア 乙第1号証は、「2007-2008 松風総合カタログ SHOFU DENTAL PRODUCTS CATALOG」(株式会社松風、2007年3月発行)である。その9頁の下段右には、使用商品1(義歯)とその包装箱の写真が掲載されている。また、同10頁の最上段右には、使用商品2(義歯)とその包装箱の写真が掲載されている。当該各包装箱の中央部には、それぞれ「“Bio”」が表示されている。
イ 乙第2号証は、使用商品1とその包装箱の実物を、当該包装箱の蓋体を開けた状態にて斜め上方から撮影した写真(写真A)であり、写真Aのとおり、蓋体の天面中央部には「“Bio”」が表示されている。なお、写真Aが、使用商品1とその包装箱の実物を撮影したものであることは、蓋体の側面における「レジン前歯」、「24組入」及び「発売元 株式会社松風」の各表示によって確認できる。
ウ 乙第3号証は、使用商品2とその包装箱の実物を、当該包装箱の蓋体を開けた状態にて斜め上方から撮影した写真(写真B)であり、写真Bのとおり、蓋体の天面中央部には「“Bio”」が表示されている。なお、写真Bが、使用商品2とその包装箱の実物を撮影したものであることは、蓋体の側面における「レジン臼歯」、「16組入」及び「発売元 株式会社松風」なる各表示によって確認できる。
エ 使用商品1の包装箱に表示された「“Bio”」の表示以外の、「ACRYLIC RESIN TEETH」、「ANTERIORS」、「Form」及び「24sets」の各表示は、商品「義歯」の品質、原材料、形状、数量を表示しているものであり、また、使用商品2の包装箱に表示された「“Bio”」の表示以外の、「ACRYLIC RESIN TEETH」、「POSTERIORS」、「Form」及び「16sets」の各表示も、商品「義歯」の品質、原材料、形状、数量を表示しているものであるから、当該各包装箱の各中央部に表示されている使用商標が商品「義歯」の商標(ブランド)であることは明白である。
そして、使用商品1及び2が「義歯」であることは、乙第4号証(広辞苑第六版)の「義歯」及び「入れ歯」の各項目の記載から明らかである。
したがって、被請求人は、被請求人が使用商標を使用した商品「義歯」を、遅くとも平成19年(2007年)3月から現在に到るまで日本国内において継続して販売している事実を立証できたものと確信する。
(2)本件商標と使用商標について
本件商標は、上段に欧文字「Bio」を筆記体で横書きすると共に、下段に片仮名文字「バイオ」を角ゴチック体にて横書きしてなる二段併記の構成からなるものである。そして、下段の文字は、上段の欧文字を片仮名で発音表記したものであり、上段の文字の有する語意以外の観念を生じさせないものであるから、その一方の文字による使用は、社会通念上同一と認められる商標の使用である。したがって、使用商品1及び2の各包装箱に表示されている使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であることは明白である。
なお、前記のとおり、使用商標は、クォーテーションマーク(“”)によって他の文字と明確に区別した態様で表示しているものである。
(3)むすび
以上のように、被請求人は、乙第1号証ないし乙第4号証により、被請求人が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定商品「義歯」に使用している事実を立証した。
4 当審の判断
(1)乙第1号証ないし乙第3号証によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第1号証は、被請求人の取扱いに係る商品を掲載したカタログ「SHOFU DENTAL PRODUCTS CATALOG/SHOFU 2007-2008 松風総合カタログ」(2007年3月発行)である。
(ア)同カタログ9頁下段右には、「アクリル系レジン歯」として、使用商品1及びその包装箱の写真が掲載され、その下に、「バイオ形態(6歯1組)」、「レジン前歯」、「方型(400番台)・・・の基本型よりなるバイオ形態のレジン歯で、・・」、「■総義歯、局部義歯、前装シェル用」及び「●包装・価格/1箱24組(144歯)…¥7,920」などと記載されており、包装箱の上面中央部には、「“Bio”Form」との表記がある。
(イ)同カタログ10頁最上段右には、「アクリル系レジン歯」として、使用商品2及びその包装箱の写真が掲載され、その下に、「バイオ形態(8歯1組)」、「レジン臼歯」、「解剖学的なバイオ形態を基本型とし、・・」、「■総義歯、局部義歯、前装シェル用」及び「●包装・価格/1箱16組(128歯)…¥6,240」などと記載されており、包装箱の上面中央部には、「“Bio”Form」との表記がある。
イ 乙第2号証は、使用商品1の包装箱を開け、その中の商品が見えるように撮影した写真(写真A)であり、また、乙第3号証は、使用商品2の包装箱を開け、その中の商品が見えるように撮影した写真(写真B)であって、撮影年月日は、いずれも2008年(平成20年)6月7日である。
(2)本件商標の使用に係る商品が「義歯」であること、また、その使用に係る者が商標権者であることについては、当事者間に争いがない。
そこで、使用商品1及び2に表示された「“Bio”Form」の文字が本件商標の使用に当たるものであるか否かについて検討する。
ア「“Bio”Form」の文字は、全体として「“バイオ”式」、「“バイオ”型」又は「“バイオ”形態」といった意味合いを理解させるものといえる。
イ ところで、甲第3号証(被請求人のホームページの「人工歯」の項目)によれば、人工歯の形態には、(a)昭和初期の欧米において広く用いられた人工歯形態である「レギュラー形態」、(b)「バイオ形態」、(c)1956年に完成された天然歯を忠実に模した前歯形態である「リアル形態」、(d)生体への調和をテーマに開発された人工歯形態である「ハーモニー形態」、(e)様々な形態との組合せが可能な「NC ベラシア形態」があり、そのうちの(b)「バイオ形態」については、「1937年に完成された、日本で初めて開発された理論的解剖学的な根拠に基づいた形態です。レオン・ウイリアムの学説を基礎に、・・・当時の補綴研究会の諸先生方の協力を得て、7年の歳月と100回以上の会合を重ねて完成されました。このバイオ形態は、誕生以来、今日に至るまで広く臨床家に愛用され、日本に標準的な人工歯として、その514番は歯科医師国家試験や技工士国家試験に採用されてきました。」との記載がある。
当該記載内容によれば、人工歯には各種形態があることが認められ、「バイオ形態」とは、被請求人が研究開発した人工歯の一形態を表したものと推認することができる。
ウ 以上ア及びイによれば、使用商品1及び2に表示された「“Bio”Form」の文字は、そのうちの「Form」の文字部分が「式、型、形態」などの意味を有し、人工歯の分野においては、自他商品の識別機能が極めて弱い語であるといえるものであり、かつ、本件において、「Bio」の文字部分がクォーテーションマークで囲まれていることもあいまって、これに接する需要者は、「Bio」の文字部分に着目し、これを自他商品の識別標識ととらえて、商品の取引に当たるものとみるのが相当である。
してみると、使用商品1及び2に表示された「“Bio”Form」は、その要部たる「Bio」の文字部分より「バイオ」の称呼及び「生体・生物体・生物などを意味する接頭語」の観念を生ずるものであって、これと同一の称呼及び観念を生ずる本件商標とは社会通念上同一の商標と認めることができる。
したがって、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内である2007年(平成19年)3月発行に係る自社のカタログに、請求に係る指定商品である「義歯」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示して、これを頒布したものと推認することができる。そして、被請求人の上記行為は、商標法第2条第3項第8号所定の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布する行為」に該当するものと認められる。
なお、請求人は、「Bio」の文字は、バイオテクノロジーを用いた分野(義歯の分野を含む)における商品や役務を表す語として広く用いられているから、「Bio」の文字単独ではこれらの分野における商品・役務との関係において自他商品等識別機能が弱いか極めて弱い語であると考えるのが自然である旨主張するが、商標法第50条の規定に基づく審判は、登録商標が当該審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者等によって請求に係る指定商品に使用されているか否かを判断すべきものであって、本件においては、提出された証拠を総合して判断すれば、「Bio」の文字が自他商品の識別機能を果たし得る態様により使用されていると認めることができるから、「Bio」の語の自他商品の識別力の有無を問題視する請求人の主張は理由がない。
(3)むすび
以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-07-17 
結審通知日 2009-07-23 
審決日 2009-08-04 
出願番号 商願昭28-15711 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y10)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
田村 正明
登録日 1955-05-30 
登録番号 商標登録第466554号(T466554) 
商標の称呼 バイオ、ビオ 
代理人 加藤 和詳 
代理人 中島 淳 
代理人 西元 勝一 
代理人 安藤 順一 
代理人 上村 喜永 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ