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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 128 |
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管理番号 | 1225099 |
審判番号 | 取消2008-300294 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2008-03-07 |
確定日 | 2010-10-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2365147号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成21年3月24日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10104号平成22年2月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2365147号商標(以下「本件商標」という。)は、「堤」の文字を書してなり、昭和56年3月2日に登録出願、第24類「土人形」を指定商品として、平成3年12月25日に設定登録され、その後、同14年3月26日に、商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同16年5月12日に、指定商品を第28類「土人形」とする指定商品の書換登録がされ、その商標権は、現に有効に存続している。 そして、平成20年3月28日に本件審判の請求の登録がなされた。 第2 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、継続して3年以上日本国内において使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきである。 2 弁駁の理由 (1)乙各号証について ア 乙第1号証の【写真[1]】(審決注:[1]は、丸付き数字の「1」。以下、丸付き数字を[]で表す。)ないし【写真[7]】及び案内図に記載の「堤人形」の文字は、自他商品識別機能を発揮しておらず、また、指定商品に使用されるものでもない。 イ 乙第2号証の1ないし4、乙第3号証の1及び2、乙第5号証の会員名簿、乙第9号証並びに乙第11号証に記載の「堤人形」の文字は、普通名称であり、自他商品識別機能を発揮していない。 ウ 乙第2号証の2、乙第4号証、乙第5号証、乙第7号証及び乙第8号証に記載の「堤人形製造所」の文字は、被請求人の屋号であり、自他商品識別機能を発揮していない。 エ 乙第6号証に記載の「堤人形山芳園」の文字は、自他商品識別機能を発揮しておらず、また、指定商品に使用されるものでもない。 オ 乙第10号証に記載の「堤人形」の文字及び「つゝみ人形」の文字は、普通名称であり、自他商品識別機能を発揮していない。 カ 乙第12号証に記載の「堤土人形」及び「堤人形」の文字は、普通名称であり、自他商品識別機能を発揮していない。乙第12号証には、「『東の堤』、『西の伏見』と言われ、全国土人形の二大源流といわれる伝統の堤人形。」と記載されるように、「堤」の文字は、「堤人形」の普通名称の略称又は仙台市の堤町の地名表示として用いられる。このため、乙第12号証で、「堤人形」の文字のうち、「堤」の文字が「人形」の文字に比べて大きく表示されていても、「堤」の文字と「人形」の文字とに分離して看取されるものではなく、「堤人形」の文字が普通名称であることに変わりはない。これらの「堤人形」の文字は、自他商品識別機能を発揮していない。また、「堤人形製造所」の文字は、被請求人の屋号であり、自他商品識別機能を発揮していない。 キ 乙第13号証に記載の[1]「堤人形製造所長之印」の印影、[2]「堤人形製造所」の文字、[4]「堤人形製作所」の文字は、自他商品識別機能を発揮しておらず、また、指定商品に使用されるものでもない。[3]及び[5]の「堤人形」の文字は、普通名称であり、自他商品識別機能を発揮していない。 ク 以上のとおり、乙第1号証ないし乙第13号証は、本件商標の使用を証明するものではない。 (2)甲第1号証ないし甲第9号証に示すとおり、「堤人形」の表示は、仙台市の堤町で生産された土人形を表す普通名称であり、「堤」、「つつみ」、「つゝみ」の表示は、「堤人形」の普通名称の略称又は仙台市の堤町を意味するにすぎない。 したがって、「堤人形」の表示又は「堤」、「つつみ」、「つゝみ」の表示を使用しても、自他商品識別機能を発揮することはないから、乙第1号証ないし乙第13号証は、本件商標の使用を証明するものではない。 なお、甲第8号証及び甲第9号証に示すように、請求人の父、佐藤吉夫は、本件商標の出願前から長年にわたり、「堤人形」の製作、販売を行っており、所有する堤人形土型は仙台市指定有形文化財に指定されている。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する第2答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第50号証(枝番を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 (1)商標法第50条第1項事由の不存在 被請求人は、先代芳賀佐五郎が昭和初期に本件商標の使用を開始し、被請求人も、これを過去数十年来伝承して現在に至るまで一貫して本件商標を使用しており、本件審判の請求は成り立たないものである。このことは、多数の文献にも被請求人が堤人形ただ一軒の制作家として明記され、被請求人の作品が2度も年賀郵便切手に採用され、新聞テレビにも折に触れて何度も被請求人の本件商標とその商品制作が報道されていることからも明らかである。このように、被請求人は、堤人形の広告看板を表示し、その工房と展示用の店舗も構え、広く全国の好事家の注文に応じて切れ目なく本件商標を用いて制作販売を続けているのである。 本件審判の請求は、被請求人の近隣に居住し、以上の事実を十分に知りながら、敢えて事実無根の請求をするものであり、到底成り立たないものである。 (2)請求人の不正競業と無効審判請求等 請求人の父と請求人は、本件商標と登録商標「つゝみ」を侵害する不正競業を続けたので、被請求人は、その差止請求訴訟を提起し、これが双方控訴により仙台高等裁判所に係属中である。他方、請求人は、本件審判に先立ち、平成19年3月5日、特許庁に対し、被請求人が所有する登録商標「つゝみ」に対する商標登録の無効審判の請求(無効2007-890027)をしたが、特許庁は、平成20年1月29日に、その請求は成り立たないとの審決をし、これが確定した。請求人の本件審判の請求は、これに続くものであり、本件商標の継続使用を知りながら、不正競業正当化のあがきとして悪意をもって事実無根の請求をしたものであり、請求自体不当なものである。 2 第2答弁の理由 (1)乙第1号証ないし乙第13号証は、年月日が明記された新聞等の証拠を総合すれば、指定商品に関する本件商標の3年以上の使用継続が明白であり、請求人の主張は詭弁にすぎない。 (2)本件商標は、商標法第3条第2項により、普通名称の例外としての自他商品識別力と周知性の確立による登録が認められたのであるから、無効ではなく、また、請求人の無効審判請求の排斥が確定しているから、依然として無効を主張することができず、この請求とその主張自体の不法と信義則違背が明らかである。 第4 当審の判断 1 商標法第50条第1項事由の不存在 被請求人は、本件審判の請求は本件商標の継続使用を知りながら、不正競業正当化のあがきとして悪意をもって事実無根の請求をしたものであり、請求自体不当なものである旨主張する。 しかし、商標法第50条第1項の規定による審判は、「何人も請求することができる」ものであるから、当該審判の請求が、専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り、当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当である。 そして、請求人よる本件審判の請求が被請求人を害することのみを目的としてされたものであると客観的に認めるに足る証拠は見いだせない。 したがって、上記被請求人の主張は理由がない。 そこで、本案に入って審理する。 2 本件商標の使用の有無について (1)乙第43号証ないし乙第49号証(枝番を含む。)によれば、以下の事実を認めることができる。 ア 被請求人は、江戸時代から続く伝統的工芸品である土人形(堤人形)の製作を家業としており、仙台市青葉区堤町において「堤人形製造所」の名称で同人形を製作・販売している。 イ 被請求人の製作する土人形は、歌舞伎や狂言をモチーフにしたもののほか、干支をモチーフにすることが多く、毎年、翌年の干支にちなんだ土人形を前年の8月から年末にかけて製作しており、その様子は師走の風物として新聞に紹介されている(平成17年12月29日付け朝日新聞宮城版〔乙第47号証の3〕、平成18年12月10日付け読売新聞〔乙第47号証の2〕)。 また、その年の干支にちなんだ土人形の写真が宮城基金通報(宮城県社会保険診療報酬支払基金の会報)の正月号の表紙を飾ることもあった(乙第45号証の2及び乙第46号証の2)。 ウ 被請求人は、平成17年から同18年にかけて「瓢箪乗狆」(乙第47号証の1の下段)と題する土人形を、平成18年から同19年にかけて「座花魁」・「猪乗金太郎」(以上乙第44号証の1 )・「猪」(乙第47号証の1の上段)と題する土人形を、平成19年から同20年にかけて「獅子舞」・「木槌乗り子」(以上乙第46号証の1)・「三番叟」・「ねずみ乗り大黒」(以上乙第48号証の1)と題する土人形を、平成20年から同21年にかけて「宝牛」と題する土人形(乙第45号証の1)を、それぞれ製作・販売しているところ、被請求人は、これらの土人形を収納する包装箱の蓋の裏側に、下記要領のとおり、縦書き3行で、1行目の最上段に「堤」の文字を表示し、2行目に1行目とほぼ同等の大きさの文字で上記各人形名を表示し、3行目の下段に1、2行目の文字よりは比較的小さな文字で製作者(職人名である「左四郎」)等を表示した説明書きを貼付して販売していた。 記 (色彩は、原本参照) (色彩は、原本参照) (色彩は、原本参照) (色彩は、原本参照) (色彩は、原本参照) (色彩は、原本参照) (色彩は、原本参照) (色彩は、原本参照) エ また被請求人は、「堤」の文字を約1cm四方の四角で囲んだ角印と、縦6cm弱、横2.5cm弱の縦長の四角形を縦に3つに区切り、右側の区切りの上部に「つゝみ人形」の文字、中央の区切りに1字下げて被請求人の氏名、左側の区切りに小さな文字で被請求人方の郵便番号、住所、電話番号を表示して成るゴム印を有しており、遅くとも上記角印を製作した平成18年8月24日以降現在に至るまで、下記のとおり、これらを押捺した包装紙(乙第43号証の1、2)に土人形を包装して販売していた。 記 (2)上記認定事実によれば、被請求人は、平成17年から同20年にかけて、包装箱に「堤」との標章を付して、取消請求に係る指定商品である土人形を販売したこと、また、遅くとも平成18年8月以降は、上記土人形の包装紙に、「堤」の文字を四角で囲んだ角印を押捺して成した標章を付して販売していたことが認められる。 そして、上記包装箱に付された「堤」との標章及び包装紙に押捺された「堤」の文字を四角で囲んだ標章は、いずれも社会通念上本件商標と同一のものと認めることができる。 そうすると、これらは商標法第2条第3項第1号の定める「商品の包装に標章を付する行為」及び同2号の定める「商品の包装に標章を付したものを譲渡…する行為」に該当するから、被請求人は、取消審判予告登録日である平成20年3月28日より3年前以内の時期に本件商標を使用したと認められる。 (3)これに対し請求人は、本件商標に係る「堤」の表示は仙台市の「堤町」を表す産地表示又は「堤人形」の普通名称の略称を意味するにすぎず「堤」、の文字を堤人形に使用しても、これらの「堤」の文字は商品の産地表示であって、自他商品識別機能又は商品の出所表示機能を発揮するものではなく、商標的使用に当たらないと主張する。 しかし、前記(1)のとおり、包装箱に貼付された説明書きにおける「堤」の文字や、包装紙に押捺された四角で囲んだ「堤」の文字は、その配置、文字の大きさに照らして、容易に目につく部分に顕著に表示されているのであって、単なる産地の表示や堤人形であることの表示としての機能を超えて、被請求人の製作する土人形を他の土人形と識別し、その出所を示すという格別の意図及び機能をもって表示していることは明らかであるから、かかる使用は商標としての使用に当たるというべきである。 したがって、請求人の主張は採用することができない。 3 結論 以上のとおり、被請求人は、商標権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件商標の指定商品である「土人形」に使用していることを証明したということができる。 したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-09 |
結審通知日 | 2009-03-12 |
審決日 | 2009-03-24 |
出願番号 | 商願昭56-15484 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(128)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
大森 友子 酒井 福造 |
登録日 | 1991-12-25 |
登録番号 | 商標登録第2365147号(T2365147) |
商標の称呼 | ツツミ |
代理人 | 須田 篤 |
代理人 | 佐藤興治郎 |