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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 128 |
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管理番号 | 1224885 |
審判番号 | 取消2009-300474 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2009-04-21 |
確定日 | 2010-09-28 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2354191号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2354191号商標(以下、「本件商標」という。)は、「つゝみ」の平仮名文字を横書してなり、昭和56年3月2日に登録出願、第24類「土人形」を指定商品として、平成3年11月29日に設定登録され、その後、同13年12月4日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同16年4月28日に第28類「土人形」を指定商品とする書換登録がなされたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出している。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について、本件審判請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について本件商標の使用をしているものではなく、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。 2 弁駁の理由(要旨) (1)被請求人は、乙各号証を提出し、本件商標を使用している旨主張しているが、前記乙各号証及び理由書によっては、指定商品に本件商標の使用をしていることが認められず、また、その使用をしていないことについての正当な理由も認められない。 ア 乙第1号証ないし乙第4号証は、本件商標の使用を証明するものではない。 イ 乙第5号証の1及び2に示される被請求人の住所氏名等と「つゝみ人形」の文字が縦書で表記された印影及び「仙台銘産」の文字と「つゝみ人形」の文字と電話番号が3行に横書で表記されたシールは、「つゝみ」の文字が「人形」の文字と一連?体で「つゝみ人形」と表示されており、ともに仙台市堤町で生産される堤焼の土人形に付されるものであるから、商品の普通名称を表示したものである。 乙第5号証の1及び2に示される縦書で枠内に表示の「つゝみ」の文字は、商品の産地表示である。 乙第5号証の3に示される縦書で枠内に表示の「つゝみ」の文字は、単なる押印であり、また、指定商品に使用されるものでもない。 乙第5号証の4に示される縦書で枠内に表示の「つゝみ」の文字は、単なる押印であり、また、指定商品に使用されるものでもない。 ウ 乙第6号証の1は、干支人形を製作中の被請求人の新聞記事であり、また、指定商品に使用されるものでもない。 乙第6号証の2の1では、「つゝみ」の文字を確認できない。 乙第6号証の2の2に表示される「つゝみ」の文字は、商品の産地表示である。 乙第6号証の3に表示される「堤人形」の文字は、商品の普通名称を表示したものである。 エ 乙第7号証の1に表示される「堤人形」の文字は、商品の普通名称を表示したものである。 乙第7号証の2に表示される「つゝみ」の文字は、商品の産地表示である。 オ 乙第8号証の1は、干支人形を製作中の被請求人の新聞記事であり、また、指定商品に使用されるものでもない。 乙第8号証の2の1に表示される「つゝみ」の文字は、商品の産地表示である。 乙第8号証の2の2及び乙第8号証の2の3は、不鮮明な写真であって「つゝみ」の文字を確認できない。 カ 乙第9号証の1は、干支人形を製作中の被請求人の新聞記事であり、また、指定商品に使用されるものでもない。 乙第9号証の2の1は、不鮮明な写真であって「つゝみ」の文字を確認できない。 乙第9号証の2の2には、「つゝみ」の文字が表示されているが、堤人形に表示された「つゝみ」の文字は、商品の産地表示である。 キ 乙第10号証の1は、干支人形を製作中の被請求人の新聞記事であり、また、指定商品に使用されるものでもない。 乙第10号証の2の1は、不鮮明な写真であって「つゝみ」の文字を確認できない。 乙第10号証の2の2及び乙第10号証の2の3に表示される「つゝみ」の文字は、商品の産地表示である。 ク 乙第11号証の1ないし乙第14号証の2では、「つゝみ」の文字を確認できない。 (2)甲第1号証ないし甲第7号証に示すとおり「堤人形」は、仙台市の堤町で生産された土人形であり、「つゝみ」の表示は仙台市の堤町または「堤人形」の普通名称の略称を意味するにすぎない。 (3)仙台地方裁判所の平成15年(ワ)第683号不正競業行為差止等請求事件の判決でも、「『堤』,『つつみ』,『つゝみ』の使用について 被告商品は,仙台市の堤町で制作された土人形であるところ,『堤人形』という表示そのものは,前記認定のとおり,同表示に接した需要者をして,仙台市の堤町で制作された土人形であることを理解させる表示にすぎず,結局,『堤』,『つつみ』,『つゝみ』という表示も,仙台市の堤町を意味するにすぎない。したがって,被告商品を『堤人形』との名称で販売し,また,被告佐藤の店の看板に『堤』,『つつみ』,『つゝみ』という表示を用いたとしても,それは,他の地域で制作された人形と区別させるための認識手段にとどまり,堤人形の制作者を特定する等商品の出所を表示し,自他商品を識別する機能を果たす態様で用いられているとはいえないから,被告らの行為は誤認混同惹起行為に該当しない。」とされている。 なお、この判決に対する仙台高等裁判所の平成20年(ネ)第101号不正競業行為差止等請求控訴事件では、請求人の実父、佐藤吉夫の主張が全面的に認められている。 (4)請求人の商標登録第4798358号「つつみのおひなっこや」に対する無効2006-89030号事件に関する平成19年(行ヒ)第223号最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決では、「つつみ」の文字について、「引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構成中の『つつみ』の文字部分から地名,人名としての『堤』ないし堤人形の『堤』の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記『つつみ』の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず、他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。」として、自他商品識別機能を否定している。 (5)小括 このように、「つゝみ」の文字は堤人形の産地表示であり、「つゝみ人形」の文字は普通名称であるから、これらの文字を堤人形に使用しても、自他商品識別機能または商品の出所表示機能を発揮することはない。 (6)乙第6号証ないし乙第10号証の堤人形には、枠内に「つゝみ」の文字を表示した印がみられるが、そのような産地表示は、甲第8号証ないし甲第10号証に示すように、土人形にはごく普通に用いられている。甲第10号証及び甲第11号証に示すように、地名をひらがなで表示することも一般的に行われている。 なお、甲第5号証ないし甲第7号証に示すように、本件請求人の父、佐藤吉夫氏は、本件商標の出願前から長年にわたり、「堤人形」の製作、販売を行っており、所有する堤人形土型は仙台市指定有形文化財に指定されている。 また、本件商標の連合商標として登録された登録第2365147号商標「堤」は、取消2008-300294によりその商標登録が取り消されている。 3 結論 以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについての本件商標の使用をしているものではなく、商標法第50条第1項の規定により商標登録を取り消されるべきものである。 第3 被請求人の主張(要旨) 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由の要旨を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証(枝番を含む。)を提出している。 1 商標法第3条第2項による登録とその使用 (1)被請求人は、商標登録の前後から現在まで一貫して本件商標を使用している。 (2)本件商標は、商標法第3条第2項による登録が認められたものであり、本件商標の使用は、この観点から観察しなければならない。 (3)請求人は、平成19年3月5日に本件商標の無効審判請求をしたが(審判番号2007-890027)、特許庁は、同20年1月29日に不成立の審決をなし、同審決は、同年3月26日確定した。 その理由は、本件商標の平成2年5月16日出願公告後異議申立がなく、また同3年11月29日の設定登録後約15年もの間、商標登録の無効審判請求もなく、まして商標法第47条所定の期間内の無効審判請求もなく経過し、既存の法律状態を尊重維持のためにも無効理由たる瑕疵が治癒したものとし、これを無効とすることができないとするものである。 2 本件商標の継続的使用とその証明 本件商標は、被請求人の先代以来の長期間の使用により広く需要家の間に認識することができるに至った上に、長期間を経た現在まで、広く全国の好事家の注文に切れ目なく応じて、自己の商品とその包装に本件商標を付して展示販売譲渡しているのであり、商標法第2条第3項第1号及び同第2号に定める使用をしていることは明白である。 (1)被請求人は、自己の全ての指定商品の人形につき、乙第5号証の1及びその拡大写真の乙第5号証の2のとおり、その包装に本件商標の「つゝみ」と被請求人の氏名等を印字し、かつ本件商標のラベルを張り、またその包装の商品収納箱内に、乙第5号証の3のとおり、被請求人名と本件商標の「つゝみ」を印字した商品説明書を添えており、さらに指定商品の土人形自体の底などにも、乙第5号証の4のとおり、本件商標の刻印を押して販売譲渡している。 (2)使用時期は、乙第6号証の1(2008年11月27日付け朝日新聞宮城版の2009年の丑年の干支土人形作りに励む被請求人の写真入り記事)と、その商品自体の写真である乙第6号証の2の丑の底に刻印された本件商標の「つゝみ」の使用により証明する。そして、乙第6号証の3(健康保険の宮城基金通報541号・平成21年元旦発行)の冒頭写真も同じ人形を示しており、その刻印等も総合すれば、同時期の本件商標の使用が証明される。 (3)乙第7号証の1(同じ宮城基金通報529号・平成20年元旦発行)は、干支の子年の人形の写真と、乙第7号証の2の同じ商品の写真の「つゝみ」の商標の刻印とから、平成20年(2008年)の使用を証明する。 (4)乙第8号証の1(2006年・平成18年12月10日付読売新聞全国版冒頭写真入記事)及び乙第8号証の2の写真から、平成19年の亥年の干支の猪の制作販売と、その人形の底に本件商標の「つゝみ」を刻印して販売する継続使用を証明する。 (5)乙第9号証の1の2005年12月29日付朝日新聞の写真入記事は、平成18年の戌年の干支の土人形制作販売を示し、この人形自体が、乙第9号証の2の写真の人形の底に本件商標の「つゝみ」の刻印等があるから、本件商標の継続使用を証明している。 (6)乙第10号証の1の平成16年(2004年)11月20日付河北新報の写真入り記事による平成17年の酉年の干支の人形制作販売と乙10の2の酉の写真とその人形の底の「つゝみ」の本件商標の使用より、3年以上の使用実態が明らかである。 (7)乙第11号証ないし14の各1と2は、平成20年と19年における被請求人の顧客先への商品販売メモ(顧客先名の個人情報は抹消)とその各商品写真及び同人形の底への本件商標の「つゝみ」の刻印を示す写真であり、本件商標の3年以上の継続的使用を証明する。 第4 当審の判断 1 乙各号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)乙第5号証の1は、商品の包装状態を示す写真であり、乙第5号証の2は、その標章部分の拡大写真であるが、これらの写真によれば、該商品の包装には縦長長方形の枠内に「つゝみ」の平仮名文字を縦書した印影、縦長長方形を三つの枠に分け右から順にその枠内に「つゝみ人形」の文字、被請求人氏名及び住所・郵便番号・電話番号を書した印影並びに、横長長方形の枠内に「仙台銘産」の文字、「つゝみ人形」の文字に続けて○に「R」の図形、及び電話番号を三段に横書したシールが表されている。 (2)乙第6号証の1は、2008(平成20)年11月27日付け「朝日新聞」宮城版であり、「鞍あでやか 新年待つ牛の列/仙台 干支人形づくり 最盛期」の見出しの下に、被請求人が丑の人形づくりに小筆をとる写真とともに、「09年の干支(えと)は丑(うし)。新年に向けて干支人形づくりが仙台市の製造所で最盛期を迎えている。堤人形は仙台藩時代に作られ始めた県の伝統工芸品。」との記事が掲載されていること、乙第6号証の2の1の上段は丑の干支人形の写真であり、乙第6号証の2の2下段はその底の写真であるが、底には縦長長方形の枠内に「つゝみ」の平仮名文字が縦書で表されている。 (3)乙第8号証の1は、2006(平成18)年12月10日付け「讀賣新聞」全国版であり、被請求人が亥の人形作りに小筆をとる写真とともに、「亥 着々」の見出しの下に、「仙台市の伝統工芸『堤人形』の製造元で、来年のえとの亥(いのしし)人形作りが、最盛期を迎えた。堤人形は、仙台藩主の伊達政宗が、侍の内職で作らせたのが始まりとされる土人形。同市青葉区の『つつみ人形製造元』には全国から約1000個の注文があり、8月から制作を開始。12月は仕上げの色付けで一番忙しい時期だ。」との記事が掲載されており、乙第8号証の2の1の上段は亥の堤人形の写真、下段はその底の写真であるが、底には縦長長方形の枠内に「つゝみ」の平仮名文字が縦書で表されている。 以上を総合すると、被請求人は、本件審判の請求の登録前三年以内に仙台市において、商品「土人形」の底及び同商品の包装に縦長長方形の枠内に「つゝみ」の平仮名文字を書した標章を付する行為(商標法第2条第3項第1号)をしたことが認められる。 2 「つゝみ」の文字からなる標章の使用について 本件商標は、「つゝみ」の平仮名文字を横書してなるものである。 被請求人の使用標章は、上述したとおり、商品「土人形」の底及び同商品の包装に縦長長方形の枠内に「つゝみ」の平仮名文字を縦書したもの(乙第5号証の1及び2、乙第6号証の2の2並びに乙第8号証の2の1)であって、本件商標とは、「つゝみ」の文字が縦書していること及び長方形の枠を有することにおいて相違する。 しかし、この差異(縦書と横書及びありふれた輪郭形状である長方形の枠の有無)は、商品の出所識別力に影響を及ぼすとはいえないから、同標章の使用は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用というのが相当である。 ところで、請求人は、被請求人の「つゝみ」の標章の使用について、商品の産地表示であって、自他商品識別機能又は商品の出所表示機能を発揮していないから、登録商標の使用を証明するものではない旨を主張している。 しかしながら、商標法第50条の規定に基づく審判は、継続して3年以上日本国内において商標権者等が指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないか否かを判断すべきものであって、本件においては、提出された証拠によれば、「つゝみ」の文字が自他商品の識別機能を果たし得る態様により使用されていると認め得るものであるから、「つゝみ」の語の自他商品の識別機能等の有無をいう請求人の主張は採用することができない。 3 まとめ したがって、本件商標は、被請求人である商標権者が本件審判の請求の登録前三年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品「土人形」に使用をしていたものと認められる。 4 結論 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-23 |
結審通知日 | 2009-10-28 |
審決日 | 2009-11-11 |
出願番号 | 商願昭56-15483 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(128)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
石田 清 |
特許庁審判官 |
久我 敬史 小林 由美子 |
登録日 | 1991-11-29 |
登録番号 | 商標登録第2354191号(T2354191) |
商標の称呼 | ツツミ |
代理人 | 佐藤 興治郎 |
代理人 | 須田 篤 |