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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y18
管理番号 1224863 
審判番号 取消2009-301089 
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-09-28 
確定日 2010-09-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4983865号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4983865号商標の指定商品中、第18類「全指定商品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4983865商標(以下「本件商標」という。)は、「BRANIFF」の文字と「ブラニフ」の文字を二段に横書きしてなり、平成18年3月28日に登録出願、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年9月1日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成21年10月16日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第18類「全指定商品」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)乙各号証について
ア 乙第2号証
乙第2号証の納品・請求書(写)に記載された「有限会社 興亜通商」(以下「興亜通商」という。)の住所は、「京都市左京区八瀬秋元町539番2号」であるところ、この住所を管轄する京都地方法務局に、興亜通商の登記簿謄本を申請したが、この住所での興亜通商の登記は存在しなかった(甲第3号証)。また、有限会社法の改正を考慮し上記住所で「株式会社 興亜通商」でも調査したが、この名称での登記も発見されない。
したがって、興亜通商が実在するのか不明であり、乙第2号証の書証としての信ぴょう性は疑わしい。
また、一般的に、納品・請求書の発行者欄には、発行者の電話番号やFAX番号が表示されるべきところ、乙第2号証には、発行者の電話番号やFAX番号は全く表示されていない。
さらに、乙第2号証は、ほとんど印字文字で作成されており、したがって、発行者の興亜通商の表示も印字されるのが一般的であると考えられるところ、「有限会社 興亜通商」はゴム印での表示であり、不自然である。
したがって、乙第2号証は、書証としての信ぴょう性が極めて乏しく、取引の事実を立証する証拠力はないか、あるとしても極めて乏しいものである。
なお、乙第2号証は、株式会社テイー・アイ(以下「テイー・アイ社」という。)がバッグ等を興亜通商から購入したことを示すものであり、この乙第2号証が真正なものであったとしても、テイー・アイ社が本件商標を使用したことを示すものではない。
イ 乙第3号証及び乙第4号証
乙第3号証及び乙第4号証は、通常使用権者たるテイー・アイ社が第三者であるワイズコーポレーション(以下「ワイズ社」という。)に商品を転売したことを証明するためのものであるところ、これらには、ワイズ社自体の名称のみであり、会社名称を示す「株式会社」等が記載されておらず、具体的に特定されていない。
また、ワイズ社の住所、電話番号の記載が全くないため、実在するかも不明である。さらに、乙第3号証及び乙第4号証とも、テイー・アイ社の内部書類であり、テイー・アイ社とワイズ社との間に取引があったことを立証できていない。
次に、乙第3号証の「品番」、「品名及種別」の欄には、「B0609 ブラニフ バック」、「B0610 ブラニフ バック」、「W0008 ブラニフ サイフ」、「B0009 ブラニフ サイフ」と、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されているが、「ブラニフ」という文字は、品名の欄に記載されているだけであり、商標として機能するように記載されているとは認められない。
しかも、乙第3号証は、取引書類に該当すると考えられるが、納品書は展示する性質の書類とは考えられず、1回の取引書類への記載のみでは、取引書類を頒布したといえない。
したがって、乙第3号証は、本件商標が使用されたことを立証するものではない。
ウ 乙第5号証
被請求人は、乙第5号証は、ボストンバッグ及びトートバッグの形状確認書(写)であり、乙第2号証及び乙第3号証に記載の「ブラニフ バックB0609」の商品が上段のボストンバッグ、「ブラニフ バックB0610」が下段のトートバッグであると主張する。
しかし、乙第5号証には、中央に品番らしき「ART.B0609」の文字が表示され、上左側にボストンバッグの写真、上右側に「Braniff International」の文字が記載されているが、商品に本件商標が表示された写真は掲載されていない。また、下段の「ART.B0610」についても同様である。
さらに、乙第2号証及び乙第3号証で取引されたとされる財布についての表示は全く存在しない。
なお、被請求人は、「BRANIFF INTERNATIONAL」及び「ブラニフインターナショナル」の各文字からなる登録第4941922号商標に対する取消審判(取消2009-301087)においても、乙第5号証と同一の証拠を提出しており、当該審判における答弁の理由において、形状確認書の品番「ART.B0609」には、「内ポケ前面型押」のメモがあり、余白部分に「Braniff International」が記載されており、これは、内ポケットの前面の革の部分に、型押(焼き印)があり、この型押(焼き印)の文字が「Braniff International」であることを示している旨を述べ、これら商品に、「Braniff International」が付されていると主張していることを付言する。
よって、乙第5号証は、本件商標がボストンバッグ及びトートバッグに付されていることを立証していない。
さらに、乙第5号証には、作成者、日付が全く記載されておらず、書証としての信ぴょう性も乏しい。
エ 乙第2号証ないし乙第5号証による取引の事実
被請求人は、乙第2号証ないし乙第5号証により、テイー・アイ社が興亜通商に製造させた「かばん及び財布」を、商標「ブラニフ」を表示して仕入れ、ワイズ社に販売したと主張する。
しかし、上述のように、興亜通商、ワイズ社の存在が確認できず、これらの取引があったことが立証されていない。また、乙第5号証により、本件商標が付された「かばん及び財布」が存在することは立証できていない。したがって、本件商標を付した商品がテイー・アイ社に納入されたことが立証できていない。そして、乙第3号証ないし乙第5号証から、テイー・アイ社が、本件商標を付した商品を第三者に販売したことが立証されていない。
したがって、請求に係る指定商品についての本件商標の使用は立証されていない。
(2)他の不使用取消審判の答弁書との関連
請求人は、被請求人が有する登録第4941922号及び登録第4983865号(本件商標)の商標登録に対して4件の不使用取消審判(取消2009-301087、取消2009-301088、取消2009-3010879、取消2009-301090)を請求した。取消2009-301088を除き、いずれも答弁書が提出され、これに添付された証拠は、商標の使用態様を証明する商品の表示を除き、同一のものである。取消2009-301088以外の3つの審判において、このように共通して証拠書類が存在するとは考えられず、極めて不自然である。
また、取消2009-301087は、前記(1)ウのとおり、商標「BRANIFF INTERNATIONAL」、「ブラニフインターナショナル」に関するものであり、取消2009-301089及び取消2009-301090は、本件商標に関するものである。すなわち、被請求人は、同一のバッグについて、上記2つの登録商標の使用を主張しており、矛盾がある。
さらに、乙第2号証では、バッグ、サイフ、Tシャツが興亜通商に発注されているが、これら商品は、材料も異なることから、別々の製造者で製造されるのが一般的であると考えられ、同一の会社に発注するのも、不自然である。
このように、乙第2号証ないし乙第5号証には、不備及び不自然な点が多く、本件商標の指定商品についての使用を立証できていない。
以上のように、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標を使用していなかったことは明白である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出した。
1 使用の事実
以下のとおり、本件商標は、通常使用権者により、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中の「かばん類及び財布」について使用されていた。
(1)乙第1号証は、テイー・アイ社の履歴事項全部証明書(写)であり、これには、テイー・アイ社の取締役として、商標権者が記載されているから、テイー・アイ社が本件商標の通常使用権者であることを推認できる。
(2)乙第2号証は、興亜通商がテイー・アイ社に宛てた納品・請求書(写)である。乙第2号証から、テイー・アイ社が、興亜通商に指示して製造させたかばん及び財布に商標「ブラニフ」(以下「使用商標」という。)を表示して、代金を支払って興亜通商から仕入れたことが明らかである。
(3)乙第3号証は、テイー・アイ社がワイズ社に宛てた納品書控(写)である。乙第3号証から、テイー・アイ社が、興亜通商に発注したかばん及び財布に使用商標を表示して、ワイズコーポレーション(以下「ワイズ社」という。)に納品したことが明らかである。
(4)乙第4号証は、テイー・アイ社がワイズ社に宛てた請求書(写)である。この発行日、請求先及び請求代金が乙第3号証と同一であるところから、乙第3号証によって納品した商品について、テイー・アイ社が納品先のワイズ社に代金の支払いを請求したことが明らかである。
(5)乙第5号証は、ボストンバッグ及びトートバッグの形状確認書(写)である。乙第5号証から、乙第2号証及び乙第3号証に記載のとおり、使用商標の表示の下に仕入れ、販売した商品「ブラニフ バックB0609」の商品が、上段のボストンバッグであり、商品「ブラニフ バックB0610」の商品が下段のトートバッグであることを示している。
(6)乙第2号証ないし乙第4号証は、商品の取引書類であり、これらは、2009(平成21)年4月15日及び同月17日が発行日となっているから、本件審判の請求の登録前3年以内に、商品の取引がされたことが明らかである。
また、本件商標と乙第2号証及び乙第3号証に表示されている使用商標とは、社会通念上同一である。
(7)乙第6号証の1は、神戸税務署に提出された「法人事業概況説明書」であり、ここには、「法人名 株式会社ティーアイ」、「事業年度 自 平成17年4月1日 至 平成18年3月31日」、「買掛金 8398」と記載されている。
「第39期 勘定科目内訳明細書(表紙)」(乙第6号証の2)は、上記乙第6号証の1に添付した書面であり、「平成17年4月1日から平成18年3月31日まで」及び「6.買掛金(未払金・未払費用)の内訳書」と記載されている。
「買掛金(未払金・未払費用)の内訳書」(乙第6号証の3)には、「買掛金」の項目中「国内買掛金 計 8,398,405」と記載されており、これは、乙第6号証の1の「買掛金 8398」と一致している。
乙第6号証の3において、「買掛金」の欄に「興亜通商 京都市左京区八瀬秋元町539-2 1,511,825」と記載されていることから、興亜通商は、真に存在した業者であることが明らかであり、かつ、被請求人は、従前より引き続いて興亜通商から商品購入の取引があったことが明らかである。
(8)興亜通商は、零細企業であり、同社が発行する取引伝票は、大企業が発行する取引書類のように体裁が整っていない。
乙第2号証は、名あて人の「株式会社テイー・アイ 井上昌也」の表示及び文面は、納品毎に異なる表示をしてそれを保存する必要があることから、印字したもので、そこへ、手元にある自己の名称と住所を表示した印を押捺して、納品伝票兼請求書としたものである。
上記のとおり、乙第2号証は、真に存在した興亜通商の発行にかかる正当な取引書類であるから、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標が使用されていたことが明らかである。
2 むすび
以上のとおり、乙第1号証ないし乙第5号証を総合してみれば、本件商標が請求に係る指定商品について本件審判の請求の登録前3年以内に使用されていたことが明らかである。
したがって、本件審判の請求は、理由がないものである。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について
被請求人は、本件審判の請求の登録(平成21年10月16日)前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者であるテイー・アイ社が商品「かばん類及び財布」について、使用商標を使用していた旨主張し、乙第1号証ないし乙第6号証を提出するので、以下検討する。
なお、テイー・アイ社が本件商標の通常使用権者であること及び被請求人が本件商標を使用したと主張する商品「かばん及び財布」は、請求に係る指定商品に含まれることについては、当事者間に争いがない。
(1)認定事実
乙第1号証ないし乙第6号証によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第1号証は、平成21年12月9日に、大阪法務局(神戸地方法務局管轄)が証明したテイー・アイ社の履歴事項全部証明書(写)であるところ、「役員に関する事項」の欄において、本件商標の商標権者である「井上昌也」が取締役として平成18年5月26日に登記されている。
これによれば、テイー・アイ社は、本件商標の通常使用権者とみることができる。
イ 乙第2号証は、2009(平成21)年4月15日付け納品・請求書の写しであるところ、右上に、「有限会社興亜通商」、「京都市左京区八瀬秋元町539番2号」及び「代表取締役 岡田真一」の表示がゴム印で押印されている。
また、あて名の欄には、「株式会社テイー・アイ 井上昌也」と記載され、「品名」の欄には、「ブラニフ バック B0609」、「ブラニフ バック B0610」、「ブラニフ サイフ W0008」、「ブラニフ サイフ W0009」などと記載され、各「バック」の数量は、いずれも150であり、各「サイフ」の数量は、いずれも200である。
乙第2号証は、前記のとおり、右上に記載された「有限会社興亜通商」の文字、その住所及び代表取締役の氏名がゴム印で押印されたものと認められるが、それ以外の年月日、あて名、請求金額、品名等の文字は、いずれも印字されたものと認められる。
ウ 乙第3号証は、平成21(2009)年4月17日付け納品書控の写しであるところ、その作成者の欄には、「株式会社ティー・アィ」、「神戸市中央区磯上通5丁目1-26 門屋ビル本館203号室」ほか、電話番号及びFAX番号が記載されており、あて名の欄には、「ワイズコーポレーション」と記載されている。
そして、その「品番」の欄の「B0609」、「B0610」と記載された各項目の「品名及種別」欄には、いずれも「ブラニフ バック」と記載され、それぞれの数量は、いずれも150であり、同じく「品番」の欄の「W0008」、「W0009」と記載された各項目の「品名及び種別」欄には、いずれも「ブラニフ サイフ」と記載され、それぞれの数量は、いずれも200であって、その余の商品を含めた合計金額は、4,067,910円である。
エ 乙第4号証は、平成21(2009)年4月17日付け請求書の写しであるところ、その作成者の欄には、「株式会社ティー・アイ」、「神戸市中央区磯上通5丁目1-26 門屋ビル本館202号室」ほか、電話番号及びFAX番号が記載されており、あて名の欄には、「ワイズコーポレーション」と記載されている。また、その金額の欄には、「4,067,910」と記載され、「備考」の欄の最下段には、「C.O.D.」の文字が記載されている。
上記「C.O.D.」の文字は、「cash on delivery:現品着払い」(「コンサイスカタカナ語辞典第2版」2000年9月10日 株式会社三省堂発行)を意味するものと推認されるところ、被請求人は、該「C.O.D.」の文字の意味について何ら釈明するところがない。
オ 乙第5号証は、被請求人の主張によれば、ボストンバッグ及びトートバッグの形状確認書(写)とするものである。その上段部の左側には、ボストンバッグと認められる白黒の写真が掲載されているところ、該ボストンバッグは、ファスナーが閉じられた状態の外観のみを写したものである。そして、写真のボストンバッグには、その3箇所に、手書きで特定の箇所を示す線が引かれ、そのうちの一つの線の脇に、「内ポケ前面型押」の文字が手書きで表示されている。また、上段部の右側の余白部には、ダブルクォーテーションマーク内に「Braniff International」の文字が表示され、さらに、上記写真の下には、「ART.B0609」の文字が記載されている。
また、同下段部の左側には、トートバッグと認められる白黒の写真が掲載されているところ、該トートバッグは、立てかけた状態の外観のみを写したものである。そして、写真のトートバッグには、その3箇所に、手書きで特定の箇所を示す線が引かれ、そのうちの一つの線の脇に、「内側ポケット前面型押」の文字が手書きで表示されている。また、下段部の右側の余白部には、上段のボストンバッグと同様に、ダブルクォーテーションマーク内に「Braniff International」の文字が表示され、さらに、上記写真の下には、「ART.B0610」の文字が記載されている。
なお、乙第5号証には、作成者、名あて人、作成年月日等を示す記載がない。
カ 乙第6号証の1ないし3は、それぞれ法人事業概況説明書、勘定科目内訳明細書及び買掛金(未払金・未払費用)の内訳書の各写しと認められるところ、いずれも平成17年4月1日から同18年3月31日までの期間に係るものである。
法人事業概況説明書(乙第6号証の1)には、法人名の欄に「株式会社 ティーアイ」と記載され、「7 主要科目(単位・千円)」の欄に、「買掛金 8398」と記載されている。
勘定科目内訳明細書(乙第6号証の2)には、「6.買掛金(未払金・未払費用)の内訳書」のほか、「株式会社 ティーアイ」と記載されている。
「買掛金(未払金・未払費用)の内訳書」(乙第6号証の3)には、「商号:株式会社 ティーアイ」のほか、「国内買掛金」の欄に「興亜通商」及び「京都市左京区八瀬秋元町539-2」と記載され、「国内買掛金 計」として「8,398,405」と記載されており、かかる金額は、乙第6号証の1に記載された「買掛金 8398」と符合するものである。
(2)判断
前記(1)で認定した事実によれば、以下のとおり、判断するのが相当である。
ア 乙第2号証について
乙第2号証は、年月日、あて名、請求金額、品名等文面のほぼ全体が印字されたものであるにもかかわらず、その発行者である「有限会社興亜通商」の文字、その住所及び代表取締役の氏名のみは、ゴム印で押印したものであること及び納品した事実を示したり、事後にトラブルが発生したときなどの連絡のために、通常記載される納品者(興亜通商)の電話番号やFAX番号等の記載がないことからすると、一般的な取引書類に照らして、極めて不自然なものというべきである。
この点について、被請求人は、興亜通商は、納品毎に異なる表示をしてそれを保存する必要があることから、印字したものに、自己の名称と住所を表示した印を押捺して、納品伝票兼請求書とした旨主張する。
しかし、発行者たる自らの名称、住所、電話番号等は、取引相手によって適宜変更するものではなく、年月日、あて名、請求金額、品名等を印字して納品・請求書を作成することができるのであれば、取引毎に変更する必要のない発行者に係る名称、住所、電話番号等の情報も当然に印字するのが通常というべきであるから、被請求人の上記主張は、不自然であり、採用することができない。
なお、仮に、乙第2号証が真実のものであるとしても、当該取引書類は、興亜通商の作成に係るものであるから、テイー・アイ社による本件商標の使用を証明するものではない。
また、請求人は、京都市左京区八瀬秋元町539番2号在の興亜通商について、京都地方法務局に履歴事項証明書ないし閉鎖事項証明書の申請をしたが「有限会社 興亜通商」の登記は存在せず(甲第3号証)、興亜通商が実在するのか不明であり、乙第3号証は、書証としての信ぴょう性が疑わしいと主張するのに対して、被請求人は、神戸税務署に提出された「法人事業概況説明書」に添付の「買掛金(未払金・未払費用)の内訳書」(乙第6号証の3)の「買掛金」の欄に「興亜通商 京都市左京区八瀬秋元町539-2」と記載されていることから、興亜通商は、真に存在した業者であることが明らかと主張する。
請求人の提出した甲第3号証によれば、「京都市左京区八瀬秋元町539番2号」に「有限会社興亜通商」ないし「株式会社興亜通商」のいずれも存在しないことが認められる一方、被請求人が神戸税務署に提出した乙第6号証の3には、「興亜通商 京都市左京区八瀬秋元町539-2」と記載されていることが認められることからすると、乙第2号証に記載された興亜通商の住所「京都市左京区八瀬秋元町539番2号」は、必ずしも同社の本店の住所ではなく、商業登記簿に登記されていない営業所等の住所とも解されるものであるから、甲第3号証をもって、直ちに興亜通商が実在しないということはできない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
イ 乙第3号証及び乙第4号証について
乙第3号証及び乙第4号証によっては、以下のとおり、本件商標がかばん及び財布について使用されたものとは認められない。
乙第3号証の「品名及種別」の欄には、「ブラニフ バック」及び「ブラニフ サイフ」の各記載がされているところ、それぞれの「バック」、「サイフ」の文字部分は、請求に係る指定商品に含まれる商品「かばん」、「財布」の一般的な名称を表すものと認められるから、「ブラニフ」の文字(使用商標)が自他商品の出所識別標識として認識されるものである。
本件商標は、前記第1のとおり、「BRANIFF」の欧文字と「ブラニフ」の片仮名を横書きしてなるものであり、該片仮名は、欧文字部分から生ずる読みを無理なく特定したものであるから、本件商標は、「ブラニフ」の称呼を生ずるものである。
そうすると、使用商標は、本件商標と社会通念上同一ということができる。
しかし、乙第3号証及び乙第4号証は、いずれもテイー・アイ社に係るものであるところ、これらが作成されたとされる「平成21年4月17日」に、テイー・アイ社とワイズ社との商取引が真実存在したのであれば、ワイズ社においては注文書控、納品書、領収書等の取引書類が存在し、テイー・アイ社においては、受注書、領収書控等の取引書類が存在しているのが通常であり、これらの取引書類を提出することにさほどの支障があるとは考えられない。
この点について、当審は、平成22年4月30日付けで、商品の配送を請け負った事業者の引受書、領収書控、ワイズ社からの発注書、受領書等の取引書類の提出がない旨を指摘し、乙第1号証ないし乙第5号証のほかに本件商標の使用を証明する証拠の提出を求める審尋をしたところ、被請求人は、これらの取引書類の提出をしておらず、かつ、これらの取引書類を提出しないことについての釈明を一切していない。
加えて、乙第3号証及び乙第4号証における取引の合計金額は、4,067,910円という極めて高額であるにもかかわらず、乙第4号証の備考の欄には、「現品着払い」を意味すると推認される「C.O.D.」の文字が記載されていることからすると、テイー・アイ社とワイズ社との取引は、現品着払いで取引したものと理解されるものであるが、約400万円もの商品を現品着払いで取引するというのは、一般的な商取引に照らしてみると、極めて不自然なものというべきである。
したがって、本件商標を付したかばん及び財布が本件審判の請求の登録前3年以内にテイー・アイ社とワイズ社との間で取引された事実を乙第3号証及び乙第4号証によって証明する被請求人の対応は、不自然なものといわなければならず、結局、テイー・アイ社とワイズ社との間に本件商標を付したかばん及び財布に係る商取引が存在したと認めることはできない。
ウ 乙第5号証について
乙第5号証には、ボストンバッグ及びトートバッグの写真が掲載されているとしても、その作成年月日、作成者等の記載が全くなく、これがいつ、だれによって作成されたのか一切不明であるから、たとえ、ここに示す記号「B0609」及び「B0610」が乙第3号証及び乙第4号証に表示された品番と一致するとしても、乙第5号証によっては、これがテイー・アイ社によって作成され、かつ、そこに記載された仕様をもって興亜通商に発注した事実を認めることができず、ほかに、乙第5号証をもって、テイー・アイ社が興亜通商にボストンバッグ及びトートバッグの発注をした事実を認めるに足る証拠は見いだせない。
したがって、乙第5号証に表示されたボストンバッグ及びトートバッグは、乙第2号証ないし乙第4号証によって、平成21年4月17日にテイー・アイ社により市場において取引に資されたものということができず、また、乙第5号証は、本件審判の請求の登録前3年以内に請求に係る指定商品中の「かばん」について本件商標の使用を証明するものでもない。
エ 小括
以上アないしウによれば、かばん及び財布についての取引を示す乙第2号証ないし乙第5号証(但し、財布については、乙第5号証には記載がない。)は、いずれもその証明力に疑問を抱かざるを得ず、テイー・アイ社とワイズ社との取引に係る取引書類の提出について、被請求人は追加の取引書類を証拠として提出してないことを考慮すると、かばん及び財布の取引は、架空ないし名目的な取引であり、乙第2号証ないし乙第5号証は、本件商標の登録の取消しを免れる目的をもって作成されたものと推認せざるを得ない。
したがって、被請求人が本件商標の使用の事実を証明するために提出した証拠によっては、通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、かばん及び財布について本件商標の使用をしたということはできない。
ほかに、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標の使用の事実を認めるに足る証拠の提出はない。
2 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標の使用をした事実を証明し得なかったものといわなければならない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品に使用していなかったことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第18類「全指定商品」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-07-12 
結審通知日 2010-07-14 
審決日 2010-07-29 
出願番号 商願2006-27250(T2006-27250) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y18)
最終処分 成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 酒井 福造
末武 久佳
登録日 2006-09-01 
登録番号 商標登録第4983865号(T4983865) 
商標の称呼 ブラニフ 
代理人 藤田 隆 
代理人 吉田 研二 
代理人 石田 純 

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