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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X18
審判 全部申立て  登録を維持 X18
審判 全部申立て  登録を維持 X18
管理番号 1223174 
異議申立番号 異議2010-900063 
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2010-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-03-12 
確定日 2010-09-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第5285457号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5285457号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5285457号商標(以下「本件商標」という。)は,「モンブランヤマグチ株式会社」の文字と「MONTBLANC YAMAGUCHI」の文字とを二段に横書きしてなり,平成21年5月13日に登録出願,第18類「傘,洋傘袋」を指定商品として,平成21年12月4日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由
(1)商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は,申立人の著名な略称である「モンブラン」,「MONTBLANC」をその構成中に含むものである。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は,その要部である「モンブラン」,「MONTBLANC」から「モンブラン」の称呼を生ずるから,以下アないしエに示す引用登録商標(いずれもその商標権は現に有効に存続しているものである。)と「モンブラン」の称呼を同じくする類似の商標であって,その指定商品は,引用登録商標の指定商品と抵触する。
ア 登録第3299334号商標(以下「引用商標1」という。)は,「MONTBLANC」の文字を横書きしてなり,平成5年8月24日に登録出願,第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成9年5月2日に設定登録され,その後,平成19年6月26日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
イ 登録第4922171号商標(以下「引用商標2」という。)は,「モンブラン」の文字を横書きしてなり,平成15年9月22日に登録出願,第3類,第6類,第8類,第9類,第14類,第16類,第18類及び第34類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成18年1月20日に設定登録されたものである。
ウ 登録第5289686号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲のとおり構成からなり,平成19年6月29日に登録出願,第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として,平成21年12月25日に設定登録されたものである。
エ 国際登録第937992号商標(以下「引用商標4」という。)は,「MONTBLANC 4810」の文字を横書きしてなり,2007年1月11日にドイツ国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,2007年6月21日に国際登録され,第14類,第16類及び第18類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成21年3月27日に日本国において設定登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標の要部は,「モンブラン」,「MONTBLANC」である。しかるに,「モンブラン」,「MONTBLANC」は,申立人の商標として世界的によく知られている商標であるから,申立人の著名な商標を含む本件商標をその指定商品について使用した場合,その商品と申立人の業務に係る商品との間で出所の混同を生ずるおそれがある。
(4)むすび
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号,同第11号及び同第15号に違反してされたものであるから,取り消されるべきものである。

4 当審の判断
(1)「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示の著名性について
ア 甲第3号証の1ないし甲第9号証の1,甲第10号証ないし甲第12号証及び甲第15号証(枝番を有するもので,枝番のすべてを引用する場合は,枝番の記載を省略する。)によれば,以下の事実を認めることができる。
(ア)申立人は,1900年代初頭(甲第3号証の1には「1907年」とあり,甲第4号証には「1908年」とある。)にドイツのハンブルグでシンプロ・フィラー・ペン社(Simplo Filler Pen Co.)の名称で創業し,当初は,万年筆のキャップと軸のみを製作し,ペン先は米国から輸入して,万年筆の製造を行っていたが,その後ペン先の生産も始め,一貫生産を行うようになった。これを機に,1934年,ヨーロッパの最高峰のモンブラン(MontBlanc)にあやかって,社名をモンブラン・ジンプロ(Montblanc Simplo GmbH)に変更した。万年筆のキャップの頭に冠した白い星のマーク(ホワイトスター)は,モンブランの万年雪にちなんだものである。申立人は,1977年ころから,ダンヒル(Danhill)社に買収され,現在は,ダンヒル社を買収したリシュモン・グループに属している。また,申立人は,1996年に男性用アクセサリーの製造,販売を開始し,1997年に腕時計,2001年に男性用フレグランス,女性用バッグの製造,販売を,それぞれ開始した(甲第3,4号証)。
(イ)「英和商品名辞典」(株式会社研究社,1991年発行),「新聞カタカナ語辞典/人名,商品名収録」(中央公論新社,2002年5月25日発行),「新世紀ビジュアル大辞典」(株式会社学習研究社,2004年12月1日発行),「用例でわかる/カタカナ新語辞典」(株式会社学習研究社,2003年3月24日発行),「講談社パックス和英辞典 第2版」(株式会社講談社,1995年10月20日発行),「講談社カラーパックス英和・和英辞典」(株式会社講談社,1995年12月10日発行),「カラーパックス英和・和英辞典 第2版」(株式会社講談社,2001年2月8日発行),「コンサイスカタカナ語辞典 第3版」(株式会社三省堂,2005年1月20日発行),「図解外来語辞典」(角川書店,昭和54年10月30日発行),「カタカナ・外来語/略語 辞典」(株式会社自由国民社,1999年10月1日発行),「日本語になった外国語辞典」(株式会社集英社,昭和58年7月10日発行),「エクシード英和/和英辞典 初版」(株式会社三省堂,1999年7月1日発行)及び同「第2版」(2004年3月15日発行),「グランドコンサイス英和辞典」(株式会社三省堂,2001年4月8日発行),「研究社 新英和大辞典 第6版」(株式会社研究社,2002年3月発行),「小学館 ランダムハウス英和大辞典」(株式会社小学館,1994年3月10日発行),「新グローバル英和辞典 机上版」(株式会社三省堂,1994年3月10日発行)及び「リーダーズ・プラス」(株式会社研究社,1994年8月発行)の「MontBlanc(MONTBLANC)/モンブラン」の項目には,「フランスとイタリアの国境にあるアルプスの最高峰(4810m又は4807m)」との記載のほか,ほとんどの辞典には,「ドイツ製の万年筆の商標」と記載されているが,「ドイツの筆記具メーカーの略」(甲第3号証の1),「ドイツの万年筆メーカー,また,その製品」(甲第3号証の4・9・15・16・18)などと記載されているものもある(甲第3号証)。
(ウ)申立人の業務に係る万年筆の我が国での販売は,1965年に,ダイヤ産業株式会社が販売代理店となって行っていたが,1993年に,ダイヤ産業株式会社からダンヒルグループジャパンに移行された。1994年には,申立人の直営店第1号が三越百貨店日本橋本店に出店し,1998年には,モンブランジャパン株式会社が設立され,日本における申立人の業務に係る商品の総輸入販売元となった(甲第5,6号証)。日本における申立人の業務に係る商品を販売する店舗は,2005年12月1日現在,有名百貨店の店舗内での出店を中心に全国に16店舗存在する(甲第7号証)。
(エ)「世界の一流品大図鑑’84」,同誌「’93」には,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示と共に申立人の業務に係る万年筆が掲載された。また,同誌「’94」には,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示と共に万年筆及びこれを収納できる財布等が掲載され,さらに,同誌「’98」には,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示と共にビジネスバッグ,タイピン等の男性用アクセサリー,腕時計,万年筆が掲載され,同誌「2000年版」には,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示と共にビジネスバッグ,名刺入れ,男性用アクセサリー,手帳,万年筆が掲載された(甲第8号証)。
また,日本国内外の空港の免税店に「MONTBLANC」の表示のもと,2004年から2005年にかけて申立人の店舗が開店した(甲第9号証の1)。
さらに,申立人は,2002年及び2003年に発行されたと推認されるカタログに,引用商標3を表示して,その業務に係る商品を掲載した(甲第11号証)。その他,申立人は,2005年12月及び2006年1月に発行される雑誌に,引用商標3を表示して,アクセサリー,腕時計の広告をしたと推認することができる(甲第12号証)。
イ 前記アで認定した事実によれば,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示は,申立人の業務に係る筆記具,特に万年筆を表示するものとして,本件商標の登録出願前より,我が国において相当程度紹介されており,本件商標の登録出願時には既に,我が国の需要者の間に広く認識されていた商標といえる。
しかし,申立人の提出した証拠における「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示は,そのほとんどが申立人の業務に係る商品,特に,万年筆の商標として使用されているものである。加えて,「MONTBLANC」,「モンブラン」の語は,前記ア(ア)及び(イ)認定のとおり,一義的には,フランスとイタリアの国境にあるアルプスの最高峰を指称する固有名詞であり,このことは,我が国の一般の需要者の間に広く知られているものといえる。そうすると,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示に接する需要者が,これから直ちに申立人の略称,あるいは,申立人の業務に係る万年筆以外のアクセサリーや腕時計等を表示する商標を想起するという程度には,提出された証拠を検討しても,未だ達していないとみるのが相当である。
したがって,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示は,本件商標の登録出願時に,申立人の略称,あるいは,申立人の業務に係る万年筆以外の商品を表すものとして,需要者の間に広く認識されていたものではない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
前記(1)認定のとおり,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示は,本件商標の登録出願時に,申立人の略称を表すものとして,需要者の間に広く認識されていたものではない。
また,本件商標は,前記1のとおり,「モンブランヤマグチ株式会社」の文字と「MONTBLANC YAMAGUCHI」の文字を二段に横書きしてなるものであるところ,上段に書された「モンブランヤマグチ株式会社」の文字部分は,同一の書体をもって,外観上軽重の差なく一体的に表されているばかりでなく,構成全体として商号を表したと認識されるものである。そして,下段の「MONTBLANC YAMAGUCHI」の文字部分は,上段の会社組織を表す「株式会社」の部分を除いた文字部分の欧文字表記と理解されるものであり,「MONTBLANC」の文字部分と「YAMAGUCHI」の文字部分は,外観上軽重の差なく表されているものである。そうすると,本件商標は,その構成中の「モンブラン」,「MONTBLANC」のみに格別印象づけられるものではなく,構成全体として,商号からなる商標を表したものと認識されるとみるのが相当であるから,これから「モンブラン」,「MONTBLANC」の文字部分のみを抽出して観察すべきものではない。
したがって,本件商標は,他人の著名な略称を含む商標ということはできないから,商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は,前記(2)認定のとおり,構成全体をもって,商号からなる商標を表したものと認識されるとみるのが相当であるから,これから「モンブランヤマグチカブシキガイシャ」又は会社組織を表す「株式会社」の文字部分を省略した場合の「モンブランヤマグチ」の称呼を生ずるものである。
イ 引用商標
引用商標1及び2は,前記2(2)のとおり,「MONTBLANC」又は「モンブラン」の文字からなるものであるから,これから「モンブラン」の称呼及び「フランスとイタリアの国境にあるアルプスの最高峰」の観念を生ずるものである。
また,引用商標3は,別掲のとおり,「MONT」の文字と「BLAC」の文字を二段に横書きしてなり,これらの文字の右上に,黒塗り円図形内に丸みを帯びた星状の図形を白抜きで表した図形を配してなるものであるところ,該図形は,特定の称呼,観念を生じないものであり,全体として「MONTBLANC」の文字を表した文字部分とは,常に一体のものとして把握しなければならない特段の理由は存しない。そうすると,引用商標3に接する需要者は,称呼しやすい文字部分を捉えて,これから生ずる称呼のみをもって商品の取引に当たる場合が多いというのが相当であるから,引用商標3は,該文字部分から「モンブラン」の称呼及び「フランスとイタリアの国境にあるアルプスの最高峰」の観念を生ずるものである。
さらに,引用商標4は,前記2(2)のとおり,「MONTBLANC 4810」の文字を横書きしてなるものであるところ,その構成中の「4810」の文字部分は,「MONTBLANC」の文字との関係からすれば,モンブラン(山)の高さを表した数字と理解される場合もあるが,引用商標4をその指定商品について使用するときは,商品の品番等を表したと理解される場合も決して少なくないものとみるのが相当であって,いずれにしろ,引用商標4の要部は,「MONTBLANC」の文字部分にあるといえる。してみると,引用商標4は,「MONTBLANC」の文字に相応して,「モンブラン」の称呼及び「フランスとイタリアの国境にあるアルプスの最高峰」の観念を生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標との対比
本件商標と引用商標1ないし4とは,前記の構成からみて,外観上明らかに区別し得るものである。
本件商標から生ずる「モンブランヤマグチカブシキガイシャ」又は「モンブランヤマグチ」の称呼と引用商標1ないし4から生ずる「モンブラン」の称呼は,構成する音数の著しい相違により,それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても,明瞭に聴別し得るものである。
本件商標は,構成全体をもって,商号商標を表したものであるのに対し,引用商標1ないし4は,「フランスとイタリアの国境にあるアルプスの最高峰」の観念を生ずるものであるから,両者は,観念上互いに紛れるおそれはない。
エ 以上によれば,本件商標と引用商標1ないし4は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
前記(1)認定のとおり,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示は,申立人の業務に係る筆記具,特に万年筆を表示するものとして,本件商標の登録出願前から,我が国の需要者の間に広く認識されていた商標といえるとしても,万年筆以外の申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願前から,我が国の需要者の間に広く認識されていた商標ということはできないし,また,「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示が傘及びその付属品について,広く認識されていたと認めるに足りる証拠の提出はない。そして,万年筆と本件商標の指定商品である「傘,洋傘用袋」とは,商品の品質,用途,原材料等を異にするばかりでなく,生産者,販売場所等も異にする商品といえる。加えて,本件商標と「MONTBLANC」,「モンブラン」の表示とは,前記(3)認定のとおり,商標それ自体相違するものである。
してみれば,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,該商品が申立人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号,同第11号及び同第15号のいずれの規定にも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 (別掲)
引用商標3


異議決定日 2010-08-24 
出願番号 商願2009-35471(T2009-35471) 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (X18)
T 1 651・ 271- Y (X18)
T 1 651・ 26- Y (X18)
最終処分 維持  
前審関与審査官 手塚 義明 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小川 きみえ
小林 由美子
登録日 2009-12-04 
登録番号 商標登録第5285457号(T5285457) 
権利者 モンブランヤマグチ株式会社
商標の称呼 モンブランヤマグチ、モンブラン、ヤマグチ 
代理人 村木 清司 
代理人 高部 育子 
代理人 塚田 美佳子 
代理人 松原 伸之 
代理人 橋本 千賀子 
代理人 松嶋 さやか 
代理人 関口 一秀 

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