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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 129
管理番号 1223046 
審判番号 取消2009-300990 
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-09-02 
確定日 2010-08-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第2649939号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2649939号商標の指定商品中、第29類「油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2649939号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成3年4月3日に登録出願され、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年4月28日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、平成17年5月6日に「油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆」を含む第29類及び第30類ないし第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号及び第12号証(枝番を含む。)を提出した。

1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第29類「油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁
(1)乙各号証について
被請求人の提出に係る乙各号証によっては、本件商標が請求に係る指定商品について、現実に使用されていたと認めることはできない。
ア 乙第1号証の1頁左上は、別掲2のとおりの構成よりなる「商品の全体写真(表面)」(以下、その構成中のラベル部分を「使用商標」という。)、右上は「商品の全体写真(裏面)」、下段は「裏面の商品表示部の拡大写真」(なお、商品名表示として「納豆」とあり、以下「本件商品」という場合がある。)、2頁は「社内における展示を示す写真である」と称するものである。
しかしながら、被請求人の取扱商品は、同社サイト「丸美屋ごはんくらぶ」によれば、「商品紹介」(甲第4号証の1)でパッケージ見本175品目(甲第4号証の2)、同「新商品」(甲第5号証)で同14品目、同「おすすめ商品」(甲第6号証)で同18品目、同「CM紹介」(甲第7号証)で数品目が、各々存在すると認められるが、現在も製造・販売されていると推認される本件商品は、全く見当たらない。なお、乙第1号証の写真は、平成21年11月5日付け撮影で、要証期間内のものではないから、これ自体証拠価値がないことは明らかである。
イ 乙第2号証の写真は、被請求人の業務用製品総代理店として全国販売を行っている株式会社丸美屋フーズでの展示、販売の事実を示すものと主張している。
しかしながら、この写真2葉は、撮影日が平成21年11月2日で、本件審判の請求の登録日である平成21年9月14日に対し、要証期間経過後のものであり、それ自体証拠価値を有しない。
ウ なお、1年以上も継続販売されている商品について、「業務用」であれば大箱で取引されるのが自然と考えられるが、専用の大箱がなく「のりたま」の箱を借用して展示されていることは不自然である。
エ 乙第3号ないし第5号証は、全て被請求人から関連会社の株式会社丸美屋フーズ宛の、各枝番1は「納品書」、2は「物品受領書」、3は「請求書」の3種類である。
しかしながら、株式会社丸美屋フーズが、被請求人の業務用製品総代理店として全国販売を行っている会社であるならば、外食産業を営む者、小売店又は個別の消費者に販売したものと考えられるところ、そのような、明快な外部の一般取引者・需要者と取引された痕跡は何ら証明されていない。更に、このような場合の立証資料としては、多量に取引があった月を選ぶのが自然と思われるが、たった30g・100円程度の商品であって、1ヶ月単位で締めても180袋程度の取引では、製造販売はもとより、総代理店としても少量に過ぎる点も不自然といわざるを得ない。
(2)本件商標と使用商標の同一性
ア 被請求人は、本件商標と使用商標が、商標法第50条第1項括弧書の社会通念上同一の商標である旨を主張する。
しかしながら、使用商標は、出所表示機能を有する同一性の部分を一部しか使用しておらず、全体として識別機能を同一とする社会通念上同一の商標を使用していたとは認められない。
確かに「便利なチャック付」や「塩分ひかえめ/おいしさアップ!!」の用語が、付随的構成要素との主張は理解できるが、本件商標の要部は、少なく見ても、「丸美屋」のハウスマークや「味道楽」の表示の外、番頭のような人物の「屈み込んだ図形」、左下から右半分まで斜めに「円弧で描かれた図形」、この円弧で区切られた右下隅のふりかけ残量が見えるよう工夫された「透明部分と思われる形状」も、全形の包装袋の識別標識として十分に機能する部分であり、その全形を一体として権利化した、いわゆる「全形商標(ラベル商標)」を構成している。
イ 被請求人は、「商標法50条第1項かっこ書きの社会通念上同一の範囲」につき、連合商標制度の廃止を根拠とする。
しかしながら、前記かっこ書は、前段は「書体」に限定して記載されており、後段の「図形」については「外観において同視される図形」となっている。文字商標であっても他の要部と一体化されたものや、結合商標の他の要部を省略したものまで、社会通念上同一と認めているものではない。本件商標の如く、全体を有機的に結合して権利範囲を要求した商標について、その要部の欠落は、もはや「商標法50条第1項かっこ書きの範囲」の「外観において同視される図形」を超え、異なる独自の識別力・出所表記機能を形成していると考えるべきである。
したがって、使用商標は商標の同一性においても明らかに相違している。
(3)まとめ
以上、乙第1号及び第2号証の写真では、その撮影年月日からも現実に使用されたものであるとの信憑性は無く、また、乙第3号ないし第5号証の取引書類も、取引者・需要者との現実の取引の実情を確信できる内容のものではなく、更に、使用商標と主張する商標も、本件商標と社会通念上同一性が認められない構成であるため、現実の使用が全く確認できない。
したがって、本件商標が現実に使用されていたと認めることはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、証拠方法として乙第1号ないし第8号証(枝番を含む。)を提出した。

1 第1答弁
被請求人は、本件審判請求の登録日である平成21年9月16日前3年以内に、本件審判請求において取消の対象とされた「油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆」中に含まれる「納豆」について、本件商標と同一性を有する商標を付し、また、これを付した商品を販売し、販売のために展示している。さらに、当該商品に関する広告、価格表に本件商標を付して展示、頒布している。その使用の一例について、以下、具体的に主張、立証する。
(1)乙各号証について
ア 乙第1号証は、被請求人である丸美屋食品工業株式会社銀座オフィスで撮影した商品の写真である。第1頁、上段左側は商品の全体写真(表面)、上段右側は商品の全体写真(裏面)、下段は、裏面の商品表示部の拡大写真、第2頁は社内における展示を示す写真である。撮影日:平成21年11月5日、撮影場所:東京都中央区銀座1-19-13丸美屋ビルで撮影されたものである。被請求人の製造販売にかかる当該ドライ納豆は、飲食業者、調理業者などの業者を対象とする業務用の商品として提供されている。
乙第1号証に示すとおり、商品の包装表面に本件商標「丸美屋/味道楽(図形)」が表わされ、裏面に、これが納豆であること、本件商標権者により製造されたことが示されている。
イ 乙第2号証は、本件商品を販売している株式会社丸美屋フーズの本社・関東支店で撮影した商品の写真である。平成21年11月2日に撮影されたものである。
ウ 乙第3号証の1は、本件商標「丸美屋/味道楽(図形)」が付された当該商品「ドライ納豆」の納品書であって、被請求人が平成20年(2008年)11月6日付で、上記株式会社丸美屋フーズに納品した事実を示している。同号証の2は、株式会社丸美屋フーズの受領書であって、各々、丸美屋食品工業株式会社が保管する資料の写しである。同号証の3は、当該取引に関する請求書の写しで、丸美屋食品工業株式会社が作成し、株式会社丸美屋フーズに送付し、同社が保管していたものの写しである。
上記各証拠により、平成20年(2008年)11月6日に被請求人が本件商標を付した商品、納豆を販売した事実が示されている。
エ 乙第4号証の1は、本件商標「丸美屋/味道楽(図形)」が付された当該商品「ドライ納豆」の平成21年(2009年)4月20日付納品書であって、被請求人が保管する資料の写しである。同号証の2は、株式会社丸美屋フーズの同日付受領書である。同号証の3は、当該取引に関する平成21年(2009年)4月30日付請求書の写しで、株式会社丸美屋フーズが保管していたものの写しである。
上記各証拠により、平成21年(2009年)4月20日に被請求人が本件商標を付した商品、納豆を販売した事実が示されている。
オ 乙第5号証の1は、本件商標「丸美屋/味道楽(図形)」が付された当該商品「ドライ納豆」の平成21年(2009年)7月10日付納品書であって、被請求人が保管する資料の写しである。同号証の2は、株式会社丸美屋フーズの同日付受領書である。同号証の3は、当該取引に関する平成21年(2009年)7月31日付請求書の写しで、株式会社丸美屋フーズが保管しているものの写しである。
(2)本件商標と同一性ある商標の使用
ア 乙第1号及び第2号証に示される商標と本件商標とは、その構成外観が完全な同一というものではないが、本件商標について、自他商品・役務識別力を有する要素は、もっぱら「丸美屋」「味道楽」にあるところ、これと同一構成にしてなる「丸美屋」「味道楽」を含んでおり、両者は、基本的構成要素を共通にしてなる同一商標である。
イ 本件商標中には、これ以外の要素として、「塩分ひかえめ/おいしさアップ!!」などの用語、模様をも含んだ構成となっているが、これらは単なる説明、あるいは単なる模様、付随的構成要素であるにすぎない。
ウ 従来、連合商標の使用によっても使用要件を充足しうるとしていたところ、連合商標制度の廃止により、狭小にすぎる商標の同一性の認定による問題点を解決すべく、カタカナ文字、欧文字相互間の使用をも同一商標の使用と認定すべく、商標法第50条第1項かっこ書きを加えた法改正の趣旨よりしても、登録商標の使用は、形式的にも完璧な同一、物理的な同一に限られるものではない。商標の表示については、自ずから変更、変遷がなされるものであって、わずかな改変がなされる度に商標出願を強いられるものではない。自他商品・役務識別標識としての機能よりみれば、乙第1号及び第2号証に示される商標と本件商標について、基本的な構成要素は共通し、これらが同一性を有することは明らかであり、乙各号証に示される商標の使用は、本件商標と同一性を有する商標の使用にほかならない。
エ むすび
被請求人の提出に係る乙各号証に示すとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録日である平成21年9月16日前3年以内に、本件審判請求において取消の対象とされた「油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆」に含まれる「納豆」について、本件商標「丸美屋/味道楽(図形)」を使用している。
以上により、本件商標は商標法第50条の規定に該当するものではないから、本件商標は、その登録が維持されるべきものである。

2 第2答弁
被請求人は、平成22年2月24日付け第2答弁書を提出し、「審尋の趣旨に沿って、証拠資料を追加提出する」旨述べ、「被請求人が製造、販売するドライ納豆の実物」(乙第6号証)、「前記ドライ納豆の外箱」(乙第7号証)及び「株式会社丸美屋フーズ発行にかかる受領書10枚」(第8号証)を提出した。

3 第3答弁
被請求人は、平成22年3月11日付け第3答弁書を提出し、要旨以下のように述べている。
(1)乙第1号及び第2号証に示す商品は、被請求人と株式会社丸美屋フーズとの、関連会社間における商品の提供であって、比較的少量の商品の供給に関するものであり包装が簡易なものであることは認める。しかしながら、被請求人の取り扱う一般消費者向けの商品でないからといって、商品でないというものではない。
(2)請求人は、甲各号証として、被請求人のサイトより入手した大量の資料を提出しているが、これが被請求人が提供するホームページの一部であること及び同資料に被請求人の各種商品が掲載されていることは認める。しかしながら、ここに示される商品は、被請求人が全国的に展開している主力商品のみであって、専ら一般消費者向けのものであるが、被請求人商品には、これ以外にも一般消費者向けではない業務用の商品、沿革的理由により商品提供を細々と継続しているような商品、関連各社との関係で内部的に扱っている商品などもある。後者の場合は、積極的な広告宣伝活動、一般消費者向け広報活動、販売促進活動などを行うこともなく、販促物はなく、その包装も簡易なものである。
(3)請求人は、ラベルの添付が不自然であるというが、上記理由による簡易なものであって問題となるものではない。ふりかけに使用する「味道楽」との関係についても、全く対象を異にするものであって、何等の混乱を生じるおそれはなく、業務上の問題はありえない。そもそも、同じ商標をある種商品に使用していることをもって、他種商品への使用はないといわれるが、その種の用例も多く、かかる理由による反論は認められない。
(4)乙第2号証の写真については、本件不使用取消審判請求の予告登録前の使用を示すものではないことは認める。しかし、主力商品でない場合に、この種の写真を事前に撮影しておくものではない。社内関係者がその場で並べて撮影したものであって、この時点での撮影は、やむを得ないといわざるをえない。
(5)請求人は、乙各号証に示されるラベルの商標は、本件商標と同一性を有するものではなく、本件商標の使用は証明されていないと主張するが、被請求人も、本件商標が図形を伴ったラベルであって、乙各号証に示される商標と完全な同一、形式的同一ではないことは認める。しかしながら、両者は「味道楽」「丸美屋」「3色の曲線図形」を要部とするものであって、要部を共通にしてなり、社会通念上、同一性を有するものである。
従来、図形商標の同一性に関してはその同一性の幅を狭く解される傾向もあることはこれを認めるが、単なる付随的部分の相違であるにすぎず、乙各号証に示されるラベルの商標の使用と本件商標について、同一性を否定されるものではない。
(6)被請求人は、第2答弁書において、乙第6号ないし第8号証を提出しているところ、(1) ドライ納豆の現物及び(2) これを収納する外箱の現物は提出している。ただし、(3) 実際に販売されていた写真については、現在、店頭での販売はないので提出できない。また、(4) 広告、価格表などについては社内で調べたが見あたらないので提出しないが、(5) 取引書類については販売先の株式会社丸美屋フーズが保管する受領書写しを追加提出する。
なお、納品書は同時に作成され交付しているが、相手方に送付済のため入手していない。また、被請求人と同社との取引に関する書類には、他の商品と同時に作成されているが、提出を適当としないので提出しない。
以上により、乙第6号ないし第8号証を提出し、これ以外の資料の提出はしないし、その用意も特にない。
(7)以上のとおり、乙第1号ないし第8号証により、本件審判請求の予告登録日前3年以内に、本件審判請求において取消の対象とされた商品について、本件商標「丸美屋/味道楽(図形)」を使用していることが示されており、本件審判請求は理由がない。

第4 当審の判断
1 使用商品について
乙第1号及び第2号証並びに第6号及び第7号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証の1頁は、商品「ドライ納豆」が入っている包装袋の写真であるが、左上部の包装袋(表面)には、別掲2の構成よりなる使用商標が表示されている。また、右上部の包装袋(裏面)及び下段の拡大写真には、四角枠内に「品名:納豆」「原材料名:大豆、納豆菌」等の記載がある。
なお、上記3葉の写真には、いずれも撮影日がないところ、被請求人は、平成21年11月5日に撮影したと述べているが、本件審判の予告登録日(平成21年9月16日)前3年以内のものではない。
(2)乙第2号証は、各商品が三段に分けて並べられている上下2葉の写真であるが、背景の壁が異なるものの、上段には使用商標が表示された本件商品が展示され、中段には左右に「のりたま」と表示された商品が展示され、その中央部の空いたスペースに手書きで「ドライ納豆」「味道楽」「特価 100円」と表記された用紙が配され、その下段には「しっとりやわらか/3つの味の/ソフトふりかけ」の表示のある商品の包装箱が写っている。
なお、上記2葉の写真には、いずれも撮影日がないところ、被請求人は、平成21年11月2日に撮影したと述べているが、本件審判の予告登録日前3年以内のものではない。
(3)乙第6号証は、使用商標が付された本件商品の実物であるが、その包装袋の表面及び裏面は、乙第1号証の包装袋の表面及び裏面と同一であることが認められる。
(4)乙第7号証は、乙第6号証の商品を入れる紙製の包装用箱であるが、その包装用箱には、乙第1号証の包装袋の表面と同一の使用商標が表示されていることが認められる。

2 本件商標と使用商標との社会通念上の同一性について
(1)本件商標は、別掲1のとおり、最上段ほぼ中央に「丸美屋」の文字、その横に「便利なチャック付」の文字、前記文字の下に「味道楽」の文字、その下に「塩分ひかえめ」及び「おいしさアップ!!」の文字を併記し、その斜め下の左側に「番頭の如き人物の図形」、その下に「中央右から左下にかけて三色の濃淡の円弧で描かれた図形」、右下隅の四角形内に「丸美屋」の文字を配した構成からなるものである。
他方、使用商標は、前記1(1)のとおり、上段やや左側に黒色で「丸美屋」の文字、その下に赤色で「味道楽」の文字、その下に橙色で「ドライ納豆」の文字、さらにその下に「橙色、黄色、緑色(以下「三色」という。)の帯状の波線図形」を配した構成からなるものである。
(2)そこで、本件商標と使用商標とを比較するに、本件商標は、その一部に「便利なチャック付」「塩分ひかえめ」及び「おいしさアップ!!」等、商品の品質、機能、誇称等を表示したと理解される自他商品の識別力を有しない文字を含んでいるが、「丸美屋」及び「味道楽」の文字や「番頭の如き人物の図形」や「三色の濃淡の円弧を描いた図形」等を含め、その構成全体をもって一つの商標として自他商品の識別標識としての機能を果たしているものと看取される、いわゆる全形商標である。
これに対し、使用商標も「丸美屋」及び「味道楽」等の文字と「三色の帯状の波線図形」を含め、その構成全体をもって一つの商標として自他商品の識別標識としての機能を果たしているものと看取されるものであるから、本件商標と同様、一種のラベル商標(全形商標)とみるのが相当である。
ところで、商標法第50条第1項の括弧書きは、「(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)」を登録商標の使用に当たると規定している。
そうすると、本件商標中の「丸美屋」及び「味道楽」の文字部分のみを使用し、本件商標におけるもう一つの必須的な構成要素である「番頭の如き人物の図形」が欠落し、かつ、本件商標中の「円弧で描かれた図形」とは異なる「三色の帯状の波線図形」を配した構成からなる使用商標は、別掲1のとおり、いわゆる全形商標である本件商標とは、外観において明らかに異なる商標というべきである。
してみれば、本件商標と使用商標とは、上記の構成の差異が、これらの商標に接する取引者・需要者に対して明瞭なる視覚的印象の違いを感じさせるものであって、たとえ、文字部分に共通する部分があるとしても、外観において同視される商標とは認め難いものであるから、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一の商標とは認められない。
他に、上記乙各号証において、本件商標と社会通念上同一の商標は見当たらない。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件商標と使用商標との同一性について、完全な同一、形式的な同一でないことは認めるとしても、両者は、「味道楽」「丸美屋」「3色の曲線図形」を要部とするものであって、要部を共通にしてなり、社会通念上、同一性を有するものである旨主張している。
しかしながら、本件商標の要部は、少なくとも「丸美屋」や「味道楽」の文字表示の外、「番頭の如き人物の図形」や「円弧で描かれた図形」も、全形の包装袋の識別標識として十分に機能する部分であり、その構成全体を一体の商標として権利化した、いわゆる全形商標であるから、その本件商標中から「丸美屋」と「味道楽」の文字部分のみを抽出し、それを商標として使用したとしても、その使用は、もはや本件商標の使用であるということはできないというべきである。

4 まとめ
以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標が、本件審判の請求の登録日前3年以内に、本件審判の請求に係る指定商品中、第29類「油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆」について、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが上記指定商品について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明し得なかったのみならず、使用していないことについて正当な理由があるとも認められないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中「結論掲記の指定商品」について、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(使用商標)

(色彩については原本参照のこと。)



審理終結日 2010-06-25 
結審通知日 2010-06-29 
審決日 2010-07-14 
出願番号 商願平3-33950 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (129)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 忠司 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 野口 美代子
小川 きみえ
登録日 1994-04-28 
登録番号 商標登録第2649939号(T2649939) 
商標の称呼 マルミヤ、アジドーラク 
代理人 高橋 康夫 

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