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審判番号(事件番号) データベース 権利
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取消2009301023 審決 商標
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取消2009301094 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41
管理番号 1223001 
審判番号 取消2009-301289 
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-11-24 
確定日 2010-08-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4920202号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4920202号商標の指定役務中、第41類「映画の上映・制作又は配給」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4920202号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成17年4月1日に登録出願、第41類「当選金付証票の発売,技芸・スポーツ又は知識の教授,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学器械器具の貸与,フリーマーケットの企画・運営」並びに第1類、第4類、第31類、第37類、第40類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成18年1月13日に設定登録され、その後、指定役務中の「第37類 時計の修理又は保守」についての登録は、平成19年1月31日付けの異議決定により、さらに、「第41類 運動施設の提供,娯楽施設の提供」についての登録は、平成21年11月12日付けの審決により、それぞれ取り消され、前者は平成19年4月18日に、また、後者は平成21年12月7日に確定の登録がされたものであり、その余の指定商品及び指定役務の商標権については、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定役務中の「第41類 映画の上映・制作又は配給」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 使用に係る商標について
被請求人は、「オメガプロジェクト」と「ωプロジェクト」の各文字を上下二段に配してなる本件商標については、その上段又は下段のいずれか一方での使用をもって、本件商標の使用に該当する旨主張する。
しかし、「オメガ」との文字について、これを記号として表示する場合には、中学校程度の学校教育でも登場する「Ω」の記号が親しまれており、「ω」の記号は極めて認知が薄いものであるから、本件商標の構成中の「ωプロジェクト」の文字を直ちに「オメガプロジェクト」と同一の称呼・観念を生ずるものと理解し得ない者も相当程度存在すると考えられる。
してみれば、本件商標については、多くの需要者・取引者にとっては、上段と下段とが直ちに同一の称呼・観念を生じさせるものとはいい得ないから、いずれか一方について使用していれば本件商標の使用となるとする被請求人の主張は失当である。
なお、仮に被請求人が主張するように、上下二段で記載された商標について、どちらか一方の文字のみの使用をもって「登録商標の使用」に該当すると安易に認めれば、商標管理に関する社会の公平性が大きく損なわれ、第三者が不足の損害を被ることとなるものであるあるから、厳格に判断すべきものと思料する。
イ 本件商標の使用状況について
本件請求に係る指定役務は、「第41類 映画の上映・制作又は配給」であるところ、被請求人の主張及び乙第1号証ないし乙第19号証(なお、枝番を有する乙号証において、枝番のすべてを引用する場合は、以下、枝番の記載を省略する。)に鑑みても、本件請求に係る指定役務について本件商標を使用しているものとは到底認められない。以下、詳述する。
(ア)被請求人は、本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)は、その子会社である株式会社きなり(以下「きなり社」という。)に本件商標の使用の許諾をした旨主張し、さらに、乙第3号証ないし乙第5号証により、大型スクリーンを設置した旨主張する。
しかし、乙号証から看取し得る事実は、例えば、乙第6号証に「広告会員募集」との標記がされていることからも明らかなように、他人の広告用素材を放映する業務に供しているという事実にとどまるものであり、「第35類 広告」について使用していることを証するものとはいい得ても、本件請求に係る指定役務について使用していることを証明するものとはいえない。このことは、乙第3号証の3における紹介記事でも、「・・広告は格安料金を設定。これまでにない手軽で注目度の高い広告塔とする。こうした郊外型の大型スクリーンによるメディア発信は全国内でも例がないようだ。」と紹介されていることからも明白である。
(イ)乙第5号証、乙第6号証、乙第8号証は、いずれも、商標権者代表者自身、又は、その子会社であるきなり社の代表者の証明にすぎず、客観性に欠けるものであって、そもそも証拠力が認められない。さらに、乙第7号証(契約書)に関しても、商標権者ときなり社との間で締結されたものにすぎず、そもそも証拠としての信頼性が担保されていない。
(ウ)仮に前掲各書証を信頼するとしても、本件商標と社会通念上同一と評価し得る商標が記載されているものは1つとしてなく、わずかに乙第6号証、乙第8号証の1及び2について、「ωプロジェクト」の文字が記載されているものが存在するにすぎない。本件商標については、単に「ωプロジェクト」の文字を使用しているのみで、本件商標の使用に該当するものと評価し得ないことは前述のとおりであるから、結局のところ、本件商標の使用を示す証拠は何一つ提出されていない。
(エ)被請求人は、乙第12号証を提出し、堀田建設株式会社(以下「堀田建設」という。)との間で契約を締結し、大型プロジェクターで映画を放送した旨主張し、乙第13号証において、その上映状況を示す写真を添付している。
しかし、上記大型プロジェクターの画面上に「謹賀新年」の表示があること、下段に堀田建設の電話番号と見られる数字が記載されていること等より、これは単なる「企業広告」であって映画ではないことは明らかであるから、これをもって、本件請求に係る指定役務について本件商標を使用していると認められない。このことは、乙第16号証(契約書)に示される財団法人もみのき森林公園協会(以下「もみのき森林公園協会」という。)との関係に関しても同様である。すなわち、被請求人は、乙第17号証において使用状況に関する写真を掲載しているが、これについても広告用の映像を表示しているにすぎず、映画を上映しているものとは到底認められない。
(オ)被請求人は、乙第10号証、乙第14号証及び乙第18号証(いずれも請求書)を示し、「ωプロジェクト」の文字を記載していると述べ、当該事実をもって本件商標を使用していると主張する。
しかし、以下の事情に照らせば、これらの請求書をもって、本件商標を本件請求に係る指定役務について使用しているものとは到底認めることができない。
a.これら請求書は、商標権者の100%子会社であるきなり社が発行したものにすぎないから、そもそも証拠力が乏しく、信憑性に欠けること。
b.記載態様についても、通常こうした請求書にブランド名を標記する場合には書類の上端ないしは下端のバランスの良い部分に標記するのが通常と考えられるところ、郵便番号の上側に商標を記載するという一般的にはあまり見られない方法で標記されていることから、本件審判が請求された後に書き加えられた可能性も否定し切れないこと。
c.仮に、これら各請求書が真正なものであるとしても、広告目的の映像素材を放送する「広告又は広告の代理」の対価を請求しているものであるから、本件請求に係る指定役務について本件商標を使用している事実を証明するものとは評価できないこと。
ウ むすび
以上のとおり、被請求人の主張及び乙各号証に照しても、本件商標が、本件請求に係る指定役務について使用されているものとは認められない。

3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)使用の事実
ア 商標権者は、その100%出資の子会社であるきなり社(広島県廿日市市宮内字野稲原3116番地1、代表取締役 古本裕之:乙第1、2号証)に、本件請求に係る指定役務について、本件商標の使用の許諾をした。
イ 商標権者は、動画又は静止画の映像を上映する大型スクリーン装置を2008年10月からの本格稼動に向けて設置した(乙第3号証)。また、大型スクリーンは、県道廿日市佐伯線の長い坂道の直線道路を上りきったカーブになっている所の道路沿いに設置されているため、往来する人や車に乗車している人から大型スクリーンに映し出された映像がよく見える(乙第5号証)。大型スクリーンの設置場所には、大型の音響設備が設置され、また、動画や静止画の映像をみる人のために椅子が備えられている(乙第6号証)。
ウ きなり社は、指定役務である「映画の上映」を会員からの会費を募って行うため、2009年10月より大型スクリーンの画面に商標「ωプロジェクト」(以下「使用商標」という。)を付して広告放映会員の募集案内映像を上映している。きなり社の上記行為は、商標法第2条第3項第8号に規定する「役務に関する広告に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当し、指定役務を実施するために使用商標を付して広告映像の上映は使用に該当する。
乙第6号証は、きなり社が広告放映会員を募集するために上映されている映像の写真である。この映像には使用商標が付されていることが確認でき、この映像を2009年10月から使用していることをきなり社が証明している。
なお、本件商標を構成する「オメガプロジェクト」と「ωプロジェクト」とが社会通念上同一の観念を有するため、上段の「オメガプロジェクト」又は下段の「ωプロジェクト」の一方を使用することは、本件商標の使用となるから、使用商標は、本件商標の使用となる。
エ きなり社は、取引先であり同族企業である商標権者と「Kinari Live Studio(大型スクリーン放映)に関する契約」(以下「本件契約」という。)を締結し、指定役務である「映画の上映」に使用商標を付して提供し、使用商標を付した請求書を発行した(乙第7?10号証)。
乙第7号証は、平成20年9年10日に行った本件契約の契約書であり、乙第8号証の1及び2は、本件契約に基づいて上映された商標権者に関する映像の一部を撮影した写真であり、乙第8号証の3は、本件契約に基づいて上映されたインターネットからダウンロードした映像の一部を撮影した写真である。また、乙第9号証(コンパクトディスク)に記録された「MVI0597」(録画時間13秒)は、本件契約に基づいて上映された商標権者に関する映像の一部のコピーであり、ここに記録された「MVI0599」(録画時間30秒)は、本件契約に基づいて上映されたインターネットからダウンロードした映像の一部のコピーである。
さらに、乙第10号証は本件契約に基づいて、平成20年9月29日に発行された請求書である。また、乙第11号証は、きなり社の銀行通帳の写しであり、このうち乙第11号証の3は、請求書に基づいて平成20年9月30日に、商標権者からきなり社の口座に1,260,000円が振り込まれたことを記録したものである。ここで、通帳の平成20年9月30日の振込金額が3,044,475円となっているが、その内訳は、きなり村ホームページ作成費用1,050,000円、PDA設定費用105,000円、報告書作成費用105,000円、Kinari Live Studio放映料525,000円、年会費1,260,000円の合計金額から振込手数料525円を差し引いた金額である。
上記きなり社の行為は、商標法第2条第3項第7号により「映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」にあたり、使用に該当し、また、商標法第2条第3項第8号により「役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布する行為」にあたり、使用に該当する。
オ きなり社は、取引先である堀田建設(広島市南区出汐二丁目3番7号)との間で、平成20年12月16日に、本件契約を締結し、指定役務である「映画の上映」を実施し、使用商標を付した請求書を発行した(乙第12?15号証)。
乙第12号証は、平成20年12月16日に締結された本件契約の契約書であり、乙第13号証は、本件契約に基づいて上映された映像の一部の写真である。乙第9号証に記録された「MVI0598」(録画時間14秒)は、本件契約に基づいて堀田建設に関して上映された映像の一部のコピーであり、乙第14号証は、本件契約に基づいて平成20年12月24日に発行された請求書である。また、乙第15号証は、きなり社の銀行通帳の写しであり、このうち乙15号証の3は、請求書に基づいて平成21年2月5日に堀田建設からきなり社の口座に52,500円振り込まれたことを示すものである。
さらに、本件契約に基づいて、インターネットからダウンロードした映像も上映している。
カ きなり社は、取引先であるもみのき森林公園協会(広島県廿日市市吉和1593-75)との間で、平成21年1月27日に、本件契約を締結し、指定役務である「映画の上映」を実施し、使用商標を付した請求書を発行した(乙第16?19号証)。
乙第16号証は、平成21年1月27日に締結された本件契約の契約書であり、乙第17号証は、本件契約に基づいて上映された映像の一部の写真である。乙第9号証に記録された「MVI0604」(録画時間14秒)は、本件契約に基づいて上映された映像の一部のコピーであり、乙第18号証は、本件契約に基づいて平成21年4月1日に発行された請求書である。また、乙第19号証は、請求書に基づいて平成21年5月29日にもみのき森林公園協会からきなり社の口座に52、500円振り込まれたことを示す銀行通帳の写しである。さらに、もみのき森林公園協会との契約に基づいてインターネットからダウンロードした映像も上映している。
(2)むすび
以上により、きなり社によって、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件請求に係る指定役務について、本件商標の使用がされたことが証明された。このため、本件商標は取り消されるべきではない。

4 当審の判断
(1)被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者の子会社であるきなり社が本件商標を本件請求に係る指定役務中の「第41類 映画の上映」に使用しているとして、乙第1号証ないし乙第19号証を提出している。
そこで、本件商標が本件請求に係る指定役務中の「第41類 映画の上映」について使用されていたか否かについて検討する。
ア 乙第1号証ないし乙第19号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)商標権者の100%出資の子会社であるきなり社(乙第2号証、当事者間に争いのない事実)は、履歴事項全部証明書によれば、平成18年7月19日に設立された会社であり、その設立目的(項目1?28)及びそれに附帯する一切の業務(項目1?38)には、様々な業務が記載されているが、少なくとも「映画の上映・制作又は配給」についての記載はない(乙第1号証)。
(イ)2008年(平成20年)8月31日発行の「月刊環境ジャーナル9月号」には、概ね以下を内容とする記事が掲載された(乙第3号証)。
株式会社カンサイは、廿日市市の宮内から佐伯町に越える県道廿日市佐伯線の明石峠の所有地に常設型では国内最大の大型プロジェクターで発信する『きなりスタジオ』を10月中にも本格オープンする。きなり社が運営する。・・廿日市方面からの登坂車が峠の分岐点に約100メートルあたり左前方からスクリーン映像が迫ってくる。ドライバーが速度をやや緩めるという立地的にも好位置にある。スタジオからは、環境チャンネルを主体に一般の広告や地域情報、沿線の観光ガイド、また体感型ゲーム機Wiiの動画をITを駆使して発信する。広告は格安料金を設定。これまでにない手軽で注目度の高い広告塔とする。
(ウ)平成21年8月25日発行の「経済レポート」には、概ね以下を内容とする記事が掲載された(乙第4号証)。
300インチの大画面で高画質なフルハイビジョンの映像や情報などを発信し、好評を博しているのが郊外型大型ビジョン「きなりライブスタジオ」。昨年9月に県道30号廿日市佐伯線の道路沿いにオープンしたもので、常設型の大画面施設では国内最大規模。企業広告やイベント情報、シアターなど映像を使って多様な用途に利用できるが、同社(審決注:株式会社カンサイ)が運営する新しい農園施設『きなり村』で栽培したアーティチョークなどに関連した商品も販売しており相乗効果も狙っている。
(エ)乙第5号証は、上記(イ)及び(ウ)の記事から、県道廿日市佐伯線の道路側から撮影した商標権者の設置に係る大型スクリーン(以下「本件スクリーン」という。)の写真と推認し得るところ、本件スクリーンは、運転中のドライバーや他の同乗者から見える位置に設置されている。また、乙第5号証には、「この写真の大型スクリーンは、平成20年10月より本格稼働したことに相違ありません」との文言が記載され、商標権者の代表取締役の氏名及び印鑑が押されている。
さらに、乙第6号証は、上段より「ωプロジェクト」、「広告会員募集」、「kinari.com」、「info@kinari.com」、「0829-37-0521」の各文字が表示され本件スクリーンの写真と認められる。そして、同号証には、「上記の画像は平成20年10月より使用していることに相違ありません」との文言が記載され、きなり社の代表取締役の氏名及び印鑑が押されている。
(オ)きなり社と商標権者は、商標権者を会員として、平成20年9月10日に、「Kinari Live Studio(大型スクリーン放映)に関する契約」(本件契約)を締結した(乙第7号証)。契約書の内容を抜粋すれば、以下のとおりである。
a 第2条(提供するサービスの内容)きなり社は会員に対し以下のKinari Live Studio(大型スクリーン放映)を提供するものとする。
放映枠の種類/静止画、動画(会員の編集素材) ホームページ放映 個人メッセージ、地域情報 コンサートイベント
b 第3条(放映枠)スポット放映、スポンサー放映の放映枠は、原則として1枠15秒とするが、必要に応じ30秒、60秒、120秒での放映も可能とする。
c 第5条(放映形態)300インチ大型スクリーンプロジェクター方式にて放映するものとする。
d 第6条(素材の納入)会員は放映素材を放映希望日の前日までにきなり社の指定のサーバーにアップロード又は放映素材がメモリー、DVD、CD、MD、DVテープ等の場合はきなり社の指定の場所に納入するものとする。
e 第8条(会員年会費)会員は、年間費として下記の料金(省略)を納めて頂きます。
f 第9条(放映料、施設利用料)放映枠料金は別表のとおりにする。・・また放映とは別に会員が自主映画、小規模コンサート、催し物等でスタジオを利用したいと申し出がある時は別途協議の上利用料金を決定するものとする。
g 第10条(年間会員契約期間、年間会員契約解除)本契約は1年とし、3ヶ月前までに会員から契約解除の申し出がない場合は自動的に更新することが出来る。
(カ)商標権者は、本件契約に基づき、本件スクリーン上で、「『循環型社会』をテーマに3つのゾーンで自然を体験」、「きなり村」等の文字を表示し、「きなり村」の広告をした。なお、当該「きなり村」の広告中の「きなり村」の文字の下に「ωプロジェクト」の商標が表示された(乙第8、9号証)。そして、乙第8号証には、「この写真の画像は平成20年10月より使用していることに相違ありません」との文言が記載され、きなり社の代表取締役の氏名及び印鑑が押されている。
一方、きなり社は、商標権者に対し、本件契約に基づく特別会員の年会費を請求する旨の平成20年9月29日付け請求書を発行し(乙第10号証)、商標権者は、その費用を同年同月30日にきなり社の銀行口座に振り込んだものと推認される(乙第11号証、当事者間に争いのない事実)。
(キ)きなり社と堀田建設は、堀田建設を会員として、平成20年12月16日に、本件契約を締結した(乙第12号証)。契約書の内容は、乙第7号証に示す契約書と同一である。
(ク)堀田建設は、本件契約に基づき、本件スクリーン上で、「謹賀新年」、「夢を・・・かたちに」、「堀田建設の住まい」、「0120-280-289」等の文字を表示し、自社の広告をした(乙第13、9号証)。そして、乙第13号証には、「この写真は平成22年1月度の画像ですが2009年1月?2009年12月に堀田建設の映像を上映したことに相違ありません」との文言が記載され、きなり社の代表取締役の氏名及び印鑑が押されている。
一方、きなり社は、堀田建設に対し、本件契約に基づく法人会員の年会費を請求する旨の平成20年12月24日付け請求書を発行し(乙第14号証)、堀田建設は、その費用を平成21年2月5日にきなり社の銀行口座に振り込んだものと推認される(乙第15号証、当事者間に争いのない事実)。
(ケ)きなり社ともみのき森林公園協会は、もみのき森林公園協会を会員として、平成21年1月27日に、本件契約を締結した(乙第16号証)。契約書の内容は、乙第7号証に示す契約書と同一である。
(コ)もみのき森林公園協会は、本件契約に基づき、本件スクリーン上で、「泊まって遊んで森を満喫しようよ」、「県立もみのき森林公園」の文字などを表示し、自己の管理、運営する公園の広告をした(乙第17、9号証)。そして、乙第17号証には、「この写真の映像を2009年4月?2010年3月に上映したことに相違ありません」との文言が記載され、きなり社の代表取締役の氏名及び印鑑が押されている。
一方、きなり社は、もみのき森林公園協会に対し、本件契約に基づく法人会員の年会費を請求する旨の平成21年4月1日付け請求書を発行し(乙第18号証)、もみのき森林公園協会は、その費用を平成21年5月29日にきなり社の銀行口座に振り込んだものと推認される(乙第19号証、当事者間に争いのない事実)。
イ 前記アで認定した事実を総合すると、商標権者は、平成20年10月ころに、県道廿日市佐伯線の道路沿いの、運転中のドライバー等から見える位置に本件スクリーンを設置した施設をオープンしたこと、該施設の運営は、商標権者の子会社であるきなり社が行っていること、本件スクリーンの利用に関しては、きなり社と本件契約を締結し、会員となった者が利用でき、具体的には、本件契約によれば、きなり社が、本件契約を締結した会員に対し、「静止画、動画(会員の編集素材) ホームページ放映 個人メッセージ、地域情報 コンサートイベント」について、会員の納入した放映素材を放映するために本件スクリーンを提供すること(本件契約第2、6条)や、会員は会員年間費とは別に、放映料等を支払うこと(本件契約第8、9条)などが定められていること、本件契約を締結した商標権者、堀田建設及びもみのき森林公園協会は、自己の運営・管理する事業の宣伝、広告のために本件スクリーンを利用したことが認められるものの、それ以外に、きなり社が本件契約を締結した会員の編集した放映素材を本件スクリーンを用いて、映画の上映を行った事実を明らかにする証拠は一切存在しないこと、さらに、被請求人は、きなり社が本件契約を締結した商標権者、堀田建設及びもみのき森林公園協会に対し、会員年間費を請求した事実を証明するのみで、会員年間費とは別個に支払わなければならない放映料等などを請求した事実を明らかにする証拠を提出していないこと(なお、被請求人は、答弁の理由で、乙第11号証の3に記載された商標権者からの振込金額3,044,475円の内訳について述べ、そのうちの525,500円が放映料である旨主張するが、これを裏付ける証拠の提出はない。)、などを認めることができる。
以上によれば、きなり社は、本件契約を締結した会員ために、会員が行う事業の広告を無償で行っていたものといわざるを得ない。仮にきなり社が、会員年間費という形で、上記広告を行ったことについての報酬を得ていたとしても、その行為は、いわば広告主たる会員のためにその事業に係る商品や役務の情報を本件スクリーン上に表示することにより対価を得ていたものであるから、役務の区分第35類「広告」の概念に属する役務の提供といわなければならない。このことは、本件スクリーンが、運転中のドライバー等であれば、だれでも無償で見ることが可能な道路沿いに設置されており、いわば広告塔の役目を果たしていることからも首肯し得るところである。
一方、「映画の上映」なる役務の提供は、一般的には、映画館など映画を上映する設備のある施設において行われ、役務提供の対価として、映画鑑賞をする需要者から報酬を受け取る行為であるところ、本件においては、映画の上映のための入場料(上映料)など、「映画の上映」なる役務の提供を行ったと認め得る証拠の提出は一切ない。
したがって、きなり社は、その運営に係る本件スクリーン上に使用商標を表示したことは認めることができるが、その提供に係る役務は、本件請求に係る指定役務中の「映画の上映」であると認めることはできない。
(2)むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録(平成21年12月11日)前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標を使用した事実を証明し得なかったものといわなければならない。また、被請求人は、本件商標を本件請求に係る指定役務について使用していなかったことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定役務中「第41類 映画の上映・制作又は配給」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


審理終結日 2010-06-22 
結審通知日 2010-06-24 
審決日 2010-07-06 
出願番号 商願2005-28706(T2005-28706) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 忠司 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 井出 英一郎
内山 進
登録日 2006-01-13 
登録番号 商標登録第4920202号(T4920202) 
商標の称呼 オメガプロジェクト 
代理人 仲 晃一 
代理人 古田 剛啓 
代理人 田村 善光 

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