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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z03
管理番号 1219914 
審判番号 取消2008-301306 
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-10-09 
確定日 2010-06-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4483399号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4483399号商標(以下「本件商標」という。)は、「アマン」の片仮名文字を横書きしてなり、平成11年5月14日に登録出願され、第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品として平成13年6月22日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし第9号証を提出した。
なお、以下、「甲第○号証」及び「乙第○号証」の表示は、「甲○」及び「乙○」と簡略する場合がある。
(1)請求の理由
被請求人は、本件審判請求前に継続して3年以上日本国内において本件商標をその指定商品について使用していない。よって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取消を免れないものである。
(2)答弁に対する弁駁
本件商標は、取消請求に係る「化粧品,せっけん類」について、本件審判請求登録前3年以内に使用されていない。
ア 乙第1号証ないし第9号証の妥当性について
(ア)被請求人は、本件商標の使用証拠として、被請求人が販売する「シャンプー」等の画像、これに関する化粧品製造製品届出書、商品に表示されたロット番号の設定方法に関する説明書等を提出するが、当該商品が第三者に販売されたことを示す納品書等の取引書類は一切提出されていない。
もし、実際に被請求人が該商品を販売しているならば、化粧品製造製品届出書や陳述書等の書類を提出せずとも、取引書類を提出することにより、商品を販売していることは容易に証明可能であるのに、わざわざこのような書類で使用の証明を試みている点は不自然と言わざるを得ない。
(イ)乙第1号証及び第2号証について
乙第1号証及び第2号証は、厚生大臣に提出された化粧品製造製品届出書であるが、これらの書類は商標権者である株式会社アマン(以下「アマン」という。)によるものではなく、株式会社アリエ(以下「アリエ」という。)なる法人から提出されているものであるが、被請求人は、審判外アリエとの資本関係、商標権の使用許諾契約の有無等の詳細な情報については触れていないため、本件商標に関する両者の関係についてどのように捉えるべきかが不明である。
被請求人は、アリエから「化粧品製造製品届書」及び「化粧品製造販売届書」が提出されている理由について、被請求人の販売する商品の多くは製造販売元がアリエであるため該社から官庁に提出されていると述べているが、このような書類の記載要領には、製品に「他社が商標権を有することが明白な名称を用いないこと」等が規定されており、被請求人の主張によれば、該製品に表示される商標は、被請求人所有の商標とのことであるため、この点についてどのような取り決めがなされていたか、製品に付された商標が本来どちらに属するものであるかが判然としない。
また、乙第2号証の「化粧品製造販売届書」には「販売名」、アリエの住所等以外の部分が空欄となっているが、なぜこれら他の項目への記載事項が消去されているのか不明であり、消去すべき理由がある場合はその理由が明らかにされることを求める。
さらに、通常、こういった書類は主たる事務所のある官庁に提出されるものと思われるが、同書は、住所を「神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町3丁目32番地14」に有するアリエから、東京都知事に向けて提出されているようである。一方、乙第8号証及び第9号証の裏面画像には、アリエの住所は「東京都千代田区一番町22-20」と記載されているようであり、同社の正式な所在地が不明である。
以上のとおり、アリエと商標権者の関係、使用証拠としての妥当性を検討するには情報が不十分であるが、そもそも「化粧品製造製品届書」等の書類は、単に製造予定の製品の申請を行うものに過ぎないため、本件商標の使用の事実を証明するものとしては適切でないと思料される。
(ウ)乙第3号証ないし第9号証について
乙第3号証及び第6号証ないし第9号証のシャンプー及び化粧品が、被請求人の主張しているように、乙第3号証は「2008年8月」、乙第6号証は「2006年3月」、乙第7号証は「2008年1月」、乙第8号証は「2006年7月」、乙第9号証は「2007年8月」に製造されたものといえるのかもしれない。しかしながら、被請求人は、アリエのー事業部であったことからも、両者には親子的な関係があるとも考えられ、このような関係性において製造委託契約に基づき、製造が行われていたとしても、これがそのまま市場において商品が実際に取引されたことを示すものとはなり得ない。
たとえ、商品が上記のとおり製造されていたとしても、取引者、需要者の目に触れることなく在庫として倉庫に保管されている場合もあり得ることであるから、実際に商品が市場において流通し、取引されているならば、納品書、請求書などの書類が提出されてしかるべきであるが、そのような証拠は一切提出されていない。
イ 本件商標と使用に係る商標との社会通念上の同一性について
不使用取消審判事件において、登録商標と使用に係る商標が異なった文字で表わされていたときは、これらが社会通念上同一の商標と認められるためには、商標法第50条に規定されているとおり、「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」であること、すなわち、各商標から生ずる称呼及び観念がそれぞれ一対一の関係で対応していることが求められる。
しかしながら、本件商標「アマン」は、そのまま「アマン」の称呼が生じる一方、使用に係る商標を構成する「aman」(語頭の「a」の文字は他の文字より大きく表示されている。以下「使用商標」という。)の欧文字からは、「アマン」、「エイマン」、「ア マン」、「エイエムエイエヌ」などの称呼が生じるため、両者の称呼は一対一の関係にはならない。
また、本件商標「アマン」は、看者によって英語で「A MAN(男性、人間)」、サンスクリット語で「AMAN(平和)」、フランス語で「AMANT(愛人)」、ドイツ語で「AMANN(ドイツ人の姓)」、造語など様々な意味合いで理解され得るものである一方、使用商標を構成する「aman」の文字からは、上記のうち、英語の「AMAN(男性、人間)」、サンスクリット語の「AMAN(平和)」の意味で理解されたり、造語と捉えられたりすることはあっても、綴りの異なるフランス語の「AMANT(愛人)」、ドイツ語の「AMANN(ドイツ人の姓)」の観念は生じないため、両者は観念上一対一の関係とはならない。
また、使用商標は、「a」の文字が「man」に比して大きな文字で表され、全体的に可愛らしく丸みを帯びたデザイン性の高いロゴで表わされていることから、本件商標とは外観においても著しく相違している。
したがって、本件商標「アマン」と、提出された証拠に表示された商標「aman」とは、これらより生ずる複数の観念及び称呼が一対一の対応関係、すなわち表裏一体の関係になく、外観上も相違するものであるから、両者は社会通念上同一と認められるものでない。
ウ 結語
以上のように、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に請求に係る指定商品「化粧品、せっけん類」について、被請求人により我が国において使用されている事実は無く、いずれの証拠も、商標法第2条第3項各号に定める使用に該当しない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし第114号証(枝番号を含む。)及び検乙第1号証ないし第6号証を提出している。
(1)被請求人について
被請求人会社は、平成5年4月30日、化粧品の製造及び販売、医薬部外品の製造及び販売等を目的として設立されたものである。被請求人会社の設立以前は、被請求人の商品の製造販売元であり、化粧等の受託メーカーである審判外アリエの事業部門であったが、同社から独立する形で被請求人会社が設立されたものである。
被請求人は、会社設立後、自社ブランド商品である液体せっけん、シャンプー、種々の化粧品の販売活動を展開して今日に至っており、被請求人の商品の多くは、アリエに製造委託を行っている。
同社がそれらを製造する際には、被請求人が業者に製造させて、アリエに渡した容器が用いられる。その容器に商品の中身を入れて完成された商品が被請求人側に納品される。アリエに渡される容器は、商標の表示部分を含めて、被請求人がデザインし、外注にて被請求人の指示通りに製造されたものである。
なお、被請求人の販売している商品の多くの製造販売元がアリエであることは、後記の各検証物に製造販売元としてアリエの社名が記載されていることから明らかである。
被請求人が販売する石鹸類及び化粧品の多くは、アリエにおいて製造されることから、その製造届は同社から官庁に提出されている。被請求人が販売する商品名「クリスバン ヘアソープ」というシャンプーについては、平成6年7月28日に化粧品製造製品届書がアリエから厚生大臣に提出にされている(乙第1号証)。また、被請求人が販売する商品名「クリスバン ヘアエッセンス」という頭髪用化粧品については、平成17年12月21日に化粧品製造販売届書が前記アリエから東京都知事に提出されている(乙第2号証)。
(2)本件商標の使用について
本件商標は、片仮名で「アマン」と横書きしてなるものであるが、被請求人は、本件商標の「アマン」の片仮名文字からなる表示をローマ字に変更した「aman」商標を、本件商標の指定商品に使用してきている。
「アマン」商標と「aman」商標は、同一の称呼及び観念を有し、不使用取消審判においては登録商標の使用と認められるものである。
被請求人は、この「aman」商標を本件不使用取消審判請求の登録日よりも3年以上前から今日まで、被請求人の業務に係る商品であることを表し、他人の商品と識別するために種々の指定商品に(いわゆるハウスマークとして)使用してきている。
(3)「aman」商標の具体的な使用例
ア 乙第3号証として提出した写真のシャンプー(商品名:クリスバンヘアソープ モイスト)についての使用
乙第3号証の上段に写されているように、同商品には、被請求人の商品であることを識別させるための「aman」の商標が付されている。同号証の下段には、ロット番号が示されており、同ロット番号は「881」である。
乙第4号証の陳述書に記載されているように、ロット番号における3桁の文字の左の数字は、製作年である西暦の末尾の数字を表しており、真ん中の数字は製造月を表しており、右側の数字は仕込み回数(製造数量の単位)を示している。
よって、そこに示されているロット番号「881」は、2008年8月に製造されたことを表し、この事実は、乙第5号証の「クリスバンヘアソープモイスト製造一覧」の右欄下から4行目の2008年8月2日との仕込み日の記載から明らかとなる。乙第3号証の写真が真実であることを示すため、その現物を検乙第1号証の検証物として提出する。
イ 乙第6号証ないし第9号証として提出した写真のシャンプー(商品名:クリスバンヘアソープ クール)、シャンプー(商品名:クリスバンヘアソープ アロマ)、頭髪用化粧品(商品名:クリスバンヘアエッセンス)及び化粧水(商品名:モイスチャージェル)についての使用
乙第6号証ないし第9号証の上段にも写されているように、これら商品にも被請求人の商品であることを識別させるための「aman」の商標が付されている。また、同各号証の下段には、ロット番号が写されており、これは、乙第4号証の陳述書に記載されているように、それぞれ、乙第6号証のロット番号は「631」であるから、2006年3月に製造されたものであり、乙第7号証のロット番号は「811」であるから、2008年1月に製造されたものであり、乙第8号証のロット番号は「671」であるから、2006年7月に製造されたものであり、乙第9号証のロット番号は「781」であるから、2007年8月に製造されたことが示されている。乙第6号証ないし第9号証の写真が真実であることを示すため、現物を検乙第2号証ないし検乙第5号証の検証物として提出する。
(4)商標の使用の態様
被請求人の商品は、全てアリエが商品の中身を入れて完成したものであるが、その容器に記載されている商標については、全て被請求人によって表示されている。したがって、上述の「aman」商標の表示は、被請求人によって付したものである。また、商品の製造後は直ちに被請求人に納品され、被請求人において販売のための展示及び販売がなされている。
(5)結び
以上のとおり、本件商標と社会通念上同一性のある「aman」商標は、本件商標の指定商品である「せっけん及び化粧品」について、本件不使用取消審判請求の予告登録日前、過去3年以内に被請求人によって付され、同商標の付された商品は、同3年の期間内に展示され、販売されていたことが証明される。

4 当審における審尋(要約)
(1)被請求人は、答弁書において「会社設立後自社ブランド商品である液体せっけん、シャンプー、種々の化粧品・・・。被請求人の商品の多くは前記アリエに製造委託をおこなっている。・・・完成された商品が被請求人側に納品される。」と述べている。
ついては、アリエから被請求人に、前記の商品が納品されたことを示す納品書、請求書及びそれらに対応する領収書等を提出又は釈明されたい。
(2)被請求人は、乙第4号証において「容器は当社が業者に製造させてアリエに渡したもの・・」と述べている。
ついては、その(容器製造)業者へ製造を委託した際の(ボトルのデザイン等の)指示書、注文書、容器の代金を支払ったことがわかる領収書等を提出又は釈明されたい。 また、その業者が、アリエに渡した(納品した)ことを証明する納品書、受取証並びに被請求人がその業者に代金を支払った際の領収書等を提出又は釈明されたい。
(3)被請求人が、前記の商品を、一般の取引者、需要者へ販売したことを証明する納品書、請求書、領収書等を提出又は釈明されたい。

5 被請求人の回答(要約)
(1)平成21年8月7日付けの審尋において、提出を求められた書類
ア 被請求人は、自社ブランド商品である液体せっけん、ジャンプー、種々の化粧品の多くをアリエに製造委託を行っているところ、前記商品が納品されたことを示す納品書、請求書及びこれらに対応する領収証等。
イ 被請求人は、容器を業者に製造させてアリエに渡したものであるが、その容器製造業者へ製造を委託した際の指示書、注文書、容器の代金を支払ったことが分かる領収証等。その業者がアリエに渡し納品したことを証明する納品書、受領証等。
ウ 被談求人が、これらの商品を一般の取引者、需要者へ販売したことを証明する納品書、請求書、領収証等。
(2)前記(1)アの書類について
被請求人の商品として、乙第3号証のクリスバンヘアソープモイスト400ml、乙第6号証のクリスバンヘアソープクール400ml、乙第7号証のクリスバンヘアソープアロマ400ml、乙第8号証のクリスバンヘアエッセンスSP60ml、乙第9号証のモイスチャージェルの写真を書証として提出すると共に、これらの商品の現物を検証物として提出し、さらに、被請求人の商品プログロシヤンプーを追加提出し、かつ、これらの各商品ごとの書類を以下のとおり、証拠として提出する。
ア 乙第3号証「クリスバンヘアソープモイスト400ml」に係る書類(発注書、納品書、請求書)等(乙10ないし乙28。ただし、枝番は省略した。)
イ 乙第6号証「クリスバンヘアソープクール400ml」に係る書類(発注書、納品書、請求書)等(乙25ないし乙32)
ウ 乙第7号証「クリスバンヘアソープアロマ400ml」に係る書類(発注書、納品書、請求書)等(乙33ないし乙43。ただし、枝番は省略した。)
エ 乙第8号証「クリスバンヘアエッセンスSP600ml」に係る書類(発注書、納品書、請求書)等(乙44ないし乙51。ただし、枝番は省略した。)
オ 乙第9号証「モイスチャージェル」に係る書類(発注書、納品書、請求書)等(乙52ないし乙55。ただし、枝番は省略した。)
カ 検乙第6号証及び乙第114号証「プログロシャンプー」に係る書類(発注書、納品書、請求書)等(乙56ないし乙67。ただし、枝番は省略した。)
(3)前記(1)イの書類について
ア 被請求人は、容器製造業者に対し製造依頼をする容器のデータを送り、そのとおりの容器を製造させているが、残っているデータを乙第68号証ないし第72号証として提出する。
イ クリスバンヘアーソープのうちのモイスト(乙3)、クール(乙6)、アロマ(乙7)及びモイスチャージェル(乙9)の容器は、竹本容器株式会社に製造を依頼し、クリスバンヘアエッセンス(乙8)の容器は、ジュテック株式会社に製造を依頼している。各商品容器ごとの発注書、納品書、請求書、振込控えの書類を証拠として提出する(乙73ないし乙100)。
なお、商品の受取証は発行していない。
(4)前記(1)ウの書類について
ア 被請求人の商品は、被請求人の代理店に販売し、代理店が消費者に対し販売する。被請求人が代理店に対し販売する商品は、被請求人の物流センター(静岡県富士宮市小泉338-1富士宮通運株式会社の自動倉庫内に所在)に出荷依頼書と納品書が一体になった書面を送り、同物流センターは、商品と同書面の納品書の部分だけを代理店に送る。この書面がデー夕として残っているのでその一例を乙101ないし乙105として提出する。
イ 代理店に対する請求書の控えが書面として無数に残してあるので、例示のため、その一部を乙106ないし乙109として提出する。
ウ 代理店からの支払いは、銀行送金なので領収書は発行していない。

6 被請求人の第2答弁
(1)弁駁に対する反論
ア 被請求人が商品を販売していた事実は、「回答書」に添付して提出した証拠から明らかである(そもそも商品を製造しながら倉庫に保管して販売しないことなどあり得ない。)。
イ 乙第1号証及び第2号証について
(ア)請求人は、これらの書類がアリエから提出されていることを問題としているが、化粧品の製品製造届書や製造販売届書は、化粧品の製造販売元が届けるべきもので、被請求人の問題の製品は、既に主張したとおり、アリエが製造している以上、同社が届出人となるものである。
また、同社はアマンの製造依頼に基づき、被請求人の製品に「aman」の商標を付して製造しているものであり、商標の使用については、被請求人の指示に基づき使用しているのである(いわば被請求人の手足として商標を商品に表示しているもので、被請求人から独立して使用しているものではない。)。よって、商標の使用に関する取り決めや商標の帰属については問題とすること自体、失当である。
(イ)さらに、乙第2号証の届出書には、販売名等の記載があるが、空白部分が多々あることを問題としているが、次に述べるように空白欄があって当然なのである。
すなわち、乙第2号証の届出書は、東京都が指定した様式のデータに必要事項を入力し、入力済みのデー夕そのものを東京都に提出するものである。但し、データに受付印を押すことはできないので、データに届出書の紙を添付し、同紙上に受付印をもらうシステムとなっている。そして、入力後のデータをプリントアウトした場合、入力した多くのデータはプリントされないシステムとなっている(そもそも、東京都がこのような形でデータを利用していることに基づく。)。よって、乙第2号証に空欄があって当然なのである。この点は東京都の担当部署に問い合わせれば直ぐに明らかになることである。
ウ 請求人は、アリエの住所及び届出書の提出先を問題としている。
アリエの本店所在地は、神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町3丁目32番地14であるが、薬事法に基づく製造者の届出に際しては、統括製造販売責任者がその事業を行う事務所所在地を記載することになっている(乙110、乙111、乙112)。アリエの統括製造責任者が所在する場所は、東京都千代田区一番町22-20であり、よって、東京都に届出を行い、製造販売元としては同住所を製品に記載することになる。
エ 請求人は、乙8及び乙9の内容を確認できないと主張しているが、これらの現物については、検証物として提出済みであるので、検証物をもって確認すれば直ちに明らかになることである。
オ 本件商標「アマン」と、使用商標「aman」とは、称呼及び観念において同一である。
商標の称呼は、商標より自然に流れ出る発音によるべきものであるが、「aman」から生ずる発音は「アマン」であり、請求人の主張するような「エイマン」などの称呼は生ずる余地がない。請求人の主張によれば、例えば、「kaeru」の表示も「カエル」だけでなく、「ケイアエル」という称呼が生ずるという非常識な結論となる。請求人は「aman」を「a」と「man」とに自分の勝手に分解し、男性という観念を生じるなどとも主張しているが、このような主張は我田引水というべき勝手な主張にすぎない。
また、サンスクリット語やフランス語及びドイツ語の意味を持ち出して「aman」から種々の観念が存在すると主張しているが、日本語で「アマン」は英語表示による「aman」としてしか表示変更が出来ないし、両者は観念も同一である。
カ 請求人は、「本件商標『アマン』も造語商標と受け止められるため、文字の変更が認められないことになるであろう」と主張しているが、造語商標で観念が生じないケースについては、片仮名表記と英語表記とは称呼の同一性が考慮され、社会通念上同一の商標であると判断されている。「パーレックス」商標についての取消2003-30184(乙113)
キ 請求人は、次の審決を本件取消審判事件に引用しているが、これらの審決が、本件事件には当てはまらないことは、以下のとおりである。
・LIFECENTERXライフセンクー(平成9年審判第工5182号)
この事件は、日本における指定商品についての商標の使用でないこと及び記述的使用であることを主たる理由として、商標の使用と認められなかったケースである。
・アセックXASEC(平成10年審判第30641号)
この審決は、「アセック」から直ちに「ASEC」のローマ字が想起され、常に該ローマ字をもって置き換えられるものではないと判断したものである。
・ユースXUSE(平成11年審判第30987号)
この審決は、「USE」の称呼としては「ユーズ」などという称呼も生ずるというもので、そもそも称呼が異なるという判断である。
・COMPATHXコンパス(平成11年審判第31349号)
この審決は、「コンパス」の称呼からは製図道具の「COMPASS」の語を想起するというのが相当であり、「COMPATH」の文字を想起するとはいいがたいと判断したものである。
・サーパス/SERPASXサーパス又はSURPASS(取消2005-30543)
この審決は、「サーパス」からは「SERPAS」よりも超えるの意味を有する英語「SURPASS」を想起しうるとして「サーパス」と「SERPAS」との同一性を否定したものである。
(2)被請求人の主張
ア 被請求人は、新たに乙114(検乙第6号証)の商品における「アマン」の商標の使用の事実を追加主張する。
同商品において、発売元の欄に「株式会社」の文字と離れてかつ字体を異にし、しかも文字の大きさを極端に大きくして「アマン」と表示している。これは「アマン」それ自体を商標として使用したものである。
この事実は、下段の製造販売元の欄には「株式会社アリエ」と一連に、かつ、字体及び文字の大きさを同じくして記載されている表示と比較すれば明らかなところである。この「アマン」の表示は、単に発売元を表示しただけでなく、商標としての意味をもたせた表示である。
イ このプログロシヤンプーは、底部にロット番号として「691」と表示されており、これは乙4の陳述書に記載されているように、2006年9月に製造されたことを表している。
また、プログロシヤンプーが本件不使用取消審判の予告登録前3年の間に製造され、かつ販売されたことは既に提出した乙56ないし乙67及び乙108の「伝票No」「3-72」等の記載から明らかなところである。

7 当審の判断
(1)被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第3号証及び検乙第1号証は、「クリスバンヘアソープ モイスト400ml」の製品容器の写真及びその実物であるが、容器の下側には「CRISVENTE」の商標が大きく表され、その上部やや右寄りには使用商標「aman」が赤字で表示されている。そして、裏面の中央部には、発売元として「株式会社 アマン」及び製造販売元として「株式会社 アリエ」の各表示が印刷されている。また、容器の底部には「881」の数字が表示されているところ、乙第4号証によれば、この数字は製品のロット番号であって、3桁の文字の左の数字が製作年である西暦の末尾の数字を表し、中央の数字が製造月を、右側の数字が仕込み回数(製造数量の単位)を示している旨述べているが、この主張に従えば、「881」の数字は、2008年8月に製造されたことを表しているものということができる。
イ 乙第5号証は、「クリスバンヘアソープ モイスト製造一覧」と題する書面であるが、「仕込み日」と「ロット」の表示があり、右欄の下から4行目に「仕込み日」として「2008/08/02」、「ロット」として「881」と記載されている箇所があり、被請求人が述べているとおり、乙第3号証における製品のロット番号に対応しているものということができる。
ウ 乙第6号証及び検乙第2号証は、「クリスバンヘアソープ クール400ml」の製品容器の写真及びその実物であり、また、乙第7号証及び検乙第3号証は「クリスバンヘアソープ アロマ400ml」の製品容器の写真及びその実物であるが、いずれも、容器の下側には「CRISVENTE」の商標が大きく表されており、その上部やや右寄りには使用商標が表示されている。
そして、裏面の下部(検乙第2号証)及び中央部(検乙第3号証)には、発売元として「株式会社 アマン」及び製造販売元として「株式会社アリエ」の各表示が印刷されている。また、各容器の底部には、製造月を表すと認められる、乙第6号証については「631」の数字が、また、乙第7号証については「811」の数字が表示されている。
エ 乙第8号証及び検乙第4号証は、「クリスバンヘアエッセンスSP 60ml」の製品外箱の写真であるが、正面部分には「CRISVENTE」の商標が大きく表され、その下に「HAIR ESSENCE」の文字及び使用商標が二段で表示されている。そして、裏面の中央やや下寄りに、発売元として「株式会社アマン」及び製造販売元として「株式会社アリエ」の各表示が印刷されている。また、最下段には、製造月を表すと認められる「671」の数字が表示されている。
オ 乙第9号証及び検乙第5号証は、「モイスチャージェル<化粧水>」の製品容器の写真であるが、正面部分の下側の右端には使用商標が表示され、裏面の中央やや上寄りに、発売元として「株式会社アマン」及び製造販売元として「株式会社アリエ」の各表示が印刷されている。また、最下段には「781」の数字が表示されている。
カ 上記において認定した乙第3号証ないし第9号証及び被請求人の主張をも併せみれば、被請求人からシャンプーや種々の化粧品の製造委託を受けたアリエが、乙第3号証の「クリスバンヘアソープ モイスト400ml」を2008年8月に、乙第6号証の「クリスバンヘアソープ クール400ml」を2006年3月に、乙第7号証の「クリスバンヘアソープ アロマ400ml」を2008年1月に、乙第8号証の「クリスバンヘアエッセンスSP 60ml」を2006年7月に、乙第9号証の「モイスチャージェル<化粧水>」を2007年8月に、それぞれ、被請求人から渡された容器に化粧品等を充填し、製品の状態にして被請求人に納品していたものと推認することができる。
キ そして、上記各製品の容器や外箱には、使用商標「aman」が付されているところ、商品又は商品の包装に商標を付する行為も、商標についての「使用」にあたるものということができる(商標法第2条第3項第1号)。
(2)被請求人は、平成21年8月21日付け回答書において、追加の証拠を提出しているので、以下、追加の提出に係る証拠「発注書、納品書、請求書」等について検討する。
ア 乙第10号証ないし乙第67号証は、いずれも、アマンからアリエ宛の「発注書」、アリエからアマン宛の「納品書、請求明細書及び請求書」及びアマンからアリエ宛の「銀行振り込み控」であるが、例えば、乙第10号証は、平成20年7月4日付けの発注書(NO.3737)であるが、品名欄には「クリスバンヘアソープモイスト」の他、内容量「400ml」、納期「8/11」、発注数量「3,165本」の記載、また、下段の「<備考>」欄には納品場所として「(株)アマン物流センター」の記載がある。
そして、例えば、乙第20号証の 銀行振り込み控には、区分「お引出し」、日付「19-09-13」他、お振込先・お振替先明細・ご案内の欄には「カ)アリエ 様」及び「カ)アマン 様」の記載があることから、平成19年(2007年)9月13日に引き出され、9月14日に「¥3,285,171」円がアマンからアリエ宛に振り込まれたことが認められるから、両社の間で発注に係る商品「前記の化粧品等」の取引が、本件審判請求の登録前3年以内の時期に、現に行われたと推認することができる。
イ 乙第73号証は、平成19年2月2日付けの株式会社アマンから竹本容器株式会社宛の「発注書」(NO.3208)であるが、乙第74号証の2007年4月2日付け竹本容器株式会社作成の「納品書」には、納品先として(株)アマン物流センターの名称及び同住所が記載され、得意先項目欄には発注書の番号と同一の「NO.3208」の記載がある。また、乙第75号証は、2007年4月20日締の「請求書」であるが、日付欄には「2007/04/02」の記載、及び品名/摘要欄中には「NO.3208」の記載が認められるから、発注書の品名欄「クリスバンヘアソープ モイスト400用ボトル SH-400(白)印刷」に係る取引が、本件審判請求の登録前3年以内の時期に、現に行われたと推認することができる。
ウ 乙第101号証ないし第105号証は、「アマン 注文請書兼出荷依頼書(1)」であるところ、例えば、乙第102号証には、出荷日欄に「2008/8/25」、着日「2008/8/26」、製品名欄の1行目には製品コード「40400」、「プログローシャンプー1L(R)*5」他、入数「5*3」、数量「9」等の記載、上段左側には、赤字の「*取引先コード」の下に「617」及び「(有)ふくだ商会」等の記載がある。
また、乙第106号証ないし第109号証は、株式会社アマン発行の「請求書」であるところ、例えば、乙第106号証には、請求先として「BCワールド株式会社」の記載、発行年月日が「2007/8/20」、商品名として「クリスバン ヘアソープ 400ml モイスト」や数量「60」等の記載がみられることから、これらの「発注書」と「請求書」との間には、取引先の関連性がないとしても、被請求人と被請求人の代理店との間で、商品の取引が本件審判請求の登録前3年以内の期間に、現にあったものと十分に推認できるものである。
(3)本件商標と使用商標との社会通念上の同一性について
商標法第50条第1項の規定によれば、登録商標の使用にあっては、その使用の範囲を当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含むものとし、その同一の範囲には「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって、同一の称呼及び観念を生ずる商標」も含むものとして、単に物理的同一の範囲に止まらず、取引社会の通念に照らして同一の商標と認識されるものについても当該登録商標の使用と認めるものとされている。
これを本件についてみると、本件商標は、「アマン」の片仮名文字を書してなるものであるから、該構成文字に相応して「アマン」の称呼を生ずるものである。
他方、使用商標は、ローマ字で「aman」と書してなるところ、該「aman」の文字からは、「アマン」の自然な称呼を生ずるものである。
そうすると、本件商標と使用商標とは、片仮名文字とローマ字の相互間の使用というべきであるから、使用商標は、本件商標と称呼を共通にするものであって、また、観念における変動もないものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認め得るものである。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断すれば、本件商標は、これと社会通念上同一といえる態様をもって、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者によって、その指定商品について使用されていたものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-01-29 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-16 
出願番号 商願平11-41566 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 野口 美代子
小川 きみえ
登録日 2001-06-22 
登録番号 商標登録第4483399号(T4483399) 
商標の称呼 アマン 
代理人 小谷 武 
代理人 木村 吉宏 
代理人 奥村 陽子 
代理人 会田 恒司 

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