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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X05
管理番号 1218491 
異議申立番号 異議2010-900002 
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2010-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-01-04 
確定日 2010-05-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第5268010号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5268010号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5268010号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成21年2月6日に登録出願、第5類「薬剤(蚊取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。)」を指定商品として、同年10月2日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも申立人が商標権者である。
(1)登録2562988号商標(以下「引用商標1」という。)
引用商標1は、「アミノトリパ」の片仮名文字と「AMINOTRIPA」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成3年5月27日に登録出願、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、同5年7月30日に設定登録され、その後、同15年2月18日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、同年6月18日に第5類「薬剤」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(2)登録3051090号商標(以下「引用商標2」という。)
引用商標2は、「アミノトリパ」の片仮名文字を横書きしてなり、平成4年11月18日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同7年6月30日に設定登録され、その後、同17年1月18日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(3)登録3051091号商標(以下「引用商標3」という。)
引用商標3は、「AMINOTRIPA」の欧文字を横書きしてなり、平成4年11月18日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同7年6月30日に設定登録され、その後、同17年1月18日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
(4)登録1730999商標(以下「引用商標4」という。)
引用商標4は、「トリパレン」の片仮名文字と「TRIPAREN」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、昭和57年5月7日に登録出願、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、同59年11月27日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに平成16年8月18日に第5類「薬剤」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

3 登録異議申立ての理由
(1)本件商標と引用商標1ないし3との類否について
本件商標は、欧文字「TORIPA」を二段、片仮名文字「トリパ」を三段の計五段に書してなるものであるから、これにより「トリパ」の称呼を生ずることは明らかである。
他方、引用商標1は、「アミノトリパ」の片仮名文字と「AMINOTRIPA」の欧文字の二段からなるものであり、引用商標2は、片仮名文字「アミノトリパ」、引用商標3は、欧文字「AMINOTRIPA」からそれぞれなるものである。
引用商標中「アミノ」「AMINO」の語は、生体のタンパク質を構成する「アミノ酸」に通じるものであることから、本件商標の指定商品である第5類の「薬剤」等の関係で多用される語である。この点については、IPDLで「AMINO」「アミノ」を接頭語とする商標を商品「薬剤」について検索したところ、164件も検出されたことからも明らかである(甲第6号証)。また、実際に、申立人の「AMINOTRIPA/アミノトリパ」商品にもアミノ酸が含まれている。
したがって、「AMINO」「アミノ」の語は、識別力が比較的弱いと言えるので、引用商標の要部は、「トリパ」「TRIPA」にあることになり、これに相応する「トリパ」の称呼をも生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標1ないし3は、共に「トリパ」の称呼を生ずること明らかであるから、両商標はその称呼において類似の商標である。
そして、本件商標と申立人の引用商標1ないし3の指定商品は、前述したとおりであるから、同一又は類似のものである。
(2)本件商標と引用商標4との類否について
上述したように、本件商標より「トリパ」の称呼を生ずることは明らかである。
他方、引用商標4は、「トリパレン」の片仮名文字と「TRIPAREN」の欧文字の二段からなるものである。
その構成中の「REN」の語は、ラテン語で「腎臓」を意味する(甲第7号証)ことから、本件商標の指定商品である第5類の「薬剤」等の関係で多用される語である。この点について、IPDLで「REN」「レン」を接尾語とする商標を商品「薬剤」について検索したところ、340件も検出されたことからも明らかである(甲第8号証)。ただし、申立人の「トリパレン/TRIPAREN」商品は腎臓用ではない。
したがって、指定商品との関係において、「REN」「レン」の語は識別力が比較的弱い語と言えるので、引用商標の要部は「トリパ」「TRIPA」にあることになり、これに相応する「トリパ」の称呼をも生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標4は、共に「トリパ」の称呼を生ずること明らかであるから、両商標はその称呼において類似の商標である。
そして、本件商標と引用商標4の指定商品は、前述したとおりであるから、同一又は類似のものである。
(3)さらに、申立人は「AMINOTRIPA/アミノトリパ」を本件商標の出願日前である平成6年から、「TRIPAREN/トリパレン」商標を同前昭和61年から我が国において申立人の商品「輸液」について積極的に使用しており、最近過去5年間の売上高は次のとおり膨大なものとなっている(ただし、販売数量の単位は記載が無く不明)。また、引用商標の使用を示す資料としてチラシ、カタログ、能書及び医薬品インタビューフォーム表紙を甲第9号証ないし甲第13号証として添付する。
ア 「AMINOTRIPA/アミノトリパ」の販売実績
年 度 販 売 数 量 販 売 額
2004年 5,596,000 7,433,000,000円
2005年 3,745,000 5,034,000,000円
2006年 3,102,000 3,928,000,000円
2007年 2,643,000 3,327,000,000円
2008年 2,003,000 2,395,000,000円
合 計 17,089,000 22,117,000,000円
イ 「TRIPAREN/トリパレン」の販売実績
年 度 販 売 数 量 販 売 額
2004年 618,000 337,000,000円
2005年 482,000 265,000,000円
2006年 471,000 241,000,000円
2007年 456,000 234,000,000円
2008年 381,000 187,000,000円
合 計 2,408,000 1,264,000,000円
なお、引用商標4「TRIPAREN/トリパレン」の称呼は、「トリパレン」の5音からなるものであるが、例えば世間一般で「ポカリスエット」が「ポカリ」と略称されているように、迅速を尊ぶ取引の実際においてはフルネームではなく略称が用いられるケースが多く、申立人の「トリパレン」についても長年の継続使用の結果、需要者・取引者間でこれを短く「トリパ」と称呼して取引されることが多々ある。
よって、実際の取引において引用商標4の略称である「トリパ」とこれと同じ称呼が生じる本件商標とが混同を生じるおそれがある。このような混同のおそれは本件の指定商品のように人命に関わる商品である「薬剤」については、実際の医療現場において両商品名が聞き間違われ、重大な医療過誤を引き起すことに繋がるものである。
したがって、「薬剤」等人体に関わる商品については、通常の類否判断よりも慎重な判断がなされるべきものであり、上記のような混同のおそれのある本件商標はその登録を認められるべきではない。
以上の次第につき、本件商標は上記引用商標の略称と同じ「トリパ」の称呼が生じるおそれがあることから、本件商標と引用商標とが誤認・混同を生じ易く、その登録は認められるべきではない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、引用商標1ないし4と類似のものであり、またその指定商品も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものであ
る。

4 当審の判断
本件商標と引用各商標との類否について検討する。
(1)本件商標と引用商標1ないし3との類否について
本件商標は、別掲のとおりの構成からなりるところ、上二段が「TRIPA」の欧文字を書してなり、下三段が「トリパ」の片仮名文字を書してなるものであるが、いずれの文字部分も我が国において意味を有する語として知られていないから、該構成文字に相応し、構成全体として「トリパ」の称呼を生ずるが、観念は生じないものである。
引用商標1は、「アミノトリパ」の片仮名文字と「AMINOTRIPA」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、各文字はいずれも意味を有する語として知られていないから、該構成文字に相応し、構成全体として「アミノトリパ」の称呼を生ずるが、観念は生じないものである。引用商標2は、「アミノトリパ」の片仮名文字を横書きしてなり、該構成文字に相応して「アミノトリパ」の称呼を生ずるが、観念は生じないものである。引用商標3は、「AMINOTRIPA」の欧文字を横書きしてなり、該構成文字に相応して「アミノトリパ」の称呼を生ずるが、観念は生じないものである。
申立人は、引用商標1ないし3の称呼について、引用各商標構成中の「アミノ」「AMINO」の語は「アミノ酸」に通じるものであり、本件商標の指定商品「薬剤」との関係で識別力が比較的弱いので、引用各商標の要部は「トリパ」「TRIPA」にあり、これに相応する「トリパ」の称呼をも生ずる旨主張している。
しかしながら、引用商標1ないし3の構成は、「アミノトリパ」の片仮名文字又は「AMINOTRIPA」の欧文字を同書、同大、同間隔に書してなり、各文字の構成全体から生ずる「アミノトリパ」の称呼は、一気一連に容易に称呼し得るものであり、語頭の「アミノ」「AMINO」の文字部分が間接的に「アミノ酸」を暗示するところがあるとしても、商品の出所識別力を有しないために称呼されないと認定すべき証左も存在しないから、一体不可分のものとして認識されるというのが相当であり、この点に関する申立人の主張は採用することができない。
そこで、本件商標より生ずる称呼「トリパ」と引用商標1ないし3より生ずる称呼「アミノトリパ」を対比すると、両者は、語頭音「アミノ」の有無において相違するので、互いに相紛れるおそれのない称呼上非類似の商標である。
本件商標と引用商標1ないし3の外観とを対比すると、両者は、構成文字が明らかに相違するので十分区別することができ、互いに相紛れるおそれのない外観上非類似の商標である。
本件商標は、引用商標1ないし3とは、観念において比較することができない。
したがって、本件商標は、引用商標1ないし3とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からしても、相紛れるおそれのない非類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)本件商標と引用商標4との類否について
本件商標は、上述したとおり、「トリパ」の称呼を生ずるが、観念は生じないものである。
引用商標4は、「トリパレン」の片仮名文字と「TRIPAREN」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、各文字はいずれも意味を有する語として知られていないから、該構成文字に相応し、構成全体として「トリパレン」の称呼を生ずるが、観念は生じないものである。
申立人は、引用商標4はその構成中の「REN」の語は「腎臓」を意味するラテン語であることから、「REN」「レン」の語が本件商標の指定商品「薬剤」の関係で識別力が比較的弱いので、引用商標4の要部は「トリパ」「TRIPA」にあり、これに相応する「トリパ」の称呼をも生ずる旨主張している。
しかしながら、引用商標4の構成は、「トリパレン」の片仮名文字及び「TRIPAREN」の欧文字を同書、同大、同間隔に書してなり、各文字の構成全体から生ずる「トリパレン」の称呼は一気一連に容易に称呼し得るものであり、語尾の「レン」「REN」の各文字部分が「腎臓」を意味するラテン語及びその発音表記であるとしても、指定商品である「薬剤」を取り扱う業界において「レン」「REN」が「腎臓」を意味する語として広く知られていること及び「腎臓用の薬剤」を意味する用途表示として一般的に使用されていることの事実は認められず、引用商標4の指定商品は「薬剤」であって「腎臓用の薬剤」に限定されていないところからも商品の用途を認識させるものとして扱われておらず、商品の出所識別力を有しないと認定すべき証左は存在しないから、一体不可分のものとして認識されるというのが相当であり、この点に関する申立人の主張は採用の限りでない。
また、申立人は、引用商標4は長年の継続使用の結果、需要者・取引者間でこれを短く「トリパ」と称呼して取引されることが多々ある旨主張するが、その事実を立証していないので、この主張も採用できない。
さらに、申立人は、「薬剤」等人体に関わる商品については、通常の類否判断よりも慎重な判断がなされるべきである旨主張するが、「薬剤」等人体に関わる商品について通常の類否判断とは異なる基準に基づき判断しなければならない合理的根拠はなく、この主張も採用できない(東京高裁平成2年(行ケ)第72号 同年9月10日判決、知財高裁平成19年(行ケ)第10090号 同年8月30日判決参照)。
そこで、本件商標より生ずる称呼「トリパ」と引用商標4より生ずる称呼「トリパレン」を対比すると、両者は、語尾音「レン」の有無において相違するので、互いに相紛れるおそれのない称呼上非類似の商標である。
本件商標と引用商標4の外観とを対比すると、両者は、構成文字が明らかに相違するので十分区別することができ、互いに相紛れるおそれのない外観上非類似の商標である。
本件商標は、引用商標4とは観念において比較することができない。
したがって、本件商標は、引用商標4とは外観、称呼及び観念のいずれの点からしても、相紛れるおそれのない非類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
本件商標(登録第5268010号商標)


異議決定日 2010-05-11 
出願番号 商願2009-12050(T2009-12050) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (X05)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前山 るり子 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 井出 英一郎
内山 進
登録日 2009-10-02 
登録番号 商標登録第5268010号(T5268010) 
権利者 日発化工株式会社
商標の称呼 トリパ 
代理人 特許業務法人 清水・醍醐特許商標事務所 

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