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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 106
管理番号 1218329 
審判番号 取消2009-300172 
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-02-02 
確定日 2010-05-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第2654058号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2654058号商標(以下「本件商標」という。)は、「PFP」の欧文字を横書きしてなり、平成4年3月31日に登録出願、商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成6年4月28日に設定登録され、その後、平成16年5月11日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、また、指定商品については、平成16年6月2日に第6類「鉄及び鋼,非鉄金属及びその合金,金属鉱石」とする書換登録がなされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
1 請求の理由
請求人が調査したところ、本件商標の商標権者、JFEスチール株式会社は、過去3年間以内に本件商標を日本国内においてその指定商品のいずれにも使用していないことが判明した。また、本件商標の登録原簿による限り、現在までのところ、専用使用権又は通常使用権の設定登録がなされた事実もない。
してみると、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標を日本国内において継続して3年以上、その指定商品について使用していないと判断されるものであり、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に該当し、登録を取り消されるべきである。

2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、乙第1号証として3枚の商品写真を提出し、これらの写真は、商標権者が製造した鋼管の写真であると述べている。撮影された管の表面は、青白色、鉛色あるいは鈍い銀色をしているが、管の内面は青色であり、これは明らかに管の内面側には、外面側とは異なる素材、すなわち、内面側に樹脂などのライナーが被覆されているか、あるいは樹脂製の管の外面に鉛色等の塗装が施されていることを示しており、管全体が鋼製あるいは金属製でないことが明らかである。これは、乙第2号証として提出された3枚の写真に写っている管にもいえることである。また、乙第3号証として提出された「FAX送信表」の件名には「パイプ納入の件」とのみ記載されており、このパイプの材質を想起させる記述はない。さらに、乙第4号証として提出された「運送状(副)」には、規格の略号等は記載されているが、商品名がどこにも記載されていない。したがって、乙第1号証ないし乙第4号証によっては、商標権者により製造された商品が「鋼管」であることを証明しているとはいえない。
次に、被請求人は、乙第1号証の写真に写された商品には「50A×4000」、「2008.4」、「PFP-PB」、「PFP」等の文字が付されていると述べているが、これらの写真は、不鮮明であり、文字を判読することができない。なお、乙第2号証として提出された写真からは、商品に「JFE」、「PFP」、「SGP-PB」、「2009.2」等の文字が付されているのを読み取ることができる。被請求人は、これらの中「2009.2」は、商品が製造された2009年2月を意味していると述べているが、この数字が製造年月を表示していることを証明する証拠は、提出されていない。また、これらの写真は、2009年3月に撮影されたものであると述べているが、撮影年月についても何ら証明する証拠は、提出されていない。
さらに、被請求人は、乙第3号証から、商標「PFP」の使用に係る鋼管のうち、商品記号「SBG-PB」に該当するタイプの商品について注文があったことが明らかであると述べているが、答弁書中には、「PFP」と「SBG-PB」の関連が何ら記載されておらず、また、乙第3号証には、「SBG-PB」の記号すら記載されていない。
被請求人は、乙第4号証に記載された「PFP-PB」の表示から、出荷した商品が商標「PFP」の使用に係る鋼管であり、「SGP-PB」の商品記号に該当するタイプのものであることが理解できると述べているが、「PFP-PB」と「SGP-PB」の関連について何ら客観的な証明がなされていないため、乙第4号証に記載されている「PFP-PB」の表示が商標「PFP」の使用に係る鋼管に係るものであると認めることはできない。
以上を総合すると、乙第1号証ないし乙第4号証からは、本件商標がその請求に係る指定商品中「鋼管」について、審判請求の予告登録前3年以内に商標権者により使用されたことが証明されているとはいえない。
(2)被請求人である「JFEスチール株式会社」のインターネット上のホームページにおける「製品カタログ一覧」と「PFP水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管のカタログ」のハードコピーを甲第2号証及び甲第3号証として添付する。
「製品カタログ一覧」(甲第2号証)の第3ページ目の上から2段目の左から2番目に「PFP水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」のカタログが添付されている。また、「PFP水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」のカタログ(甲第3号証)の2枚目には、「目次」と併せて、被請求人が、内面にポリエチレン粉体をライニングした水道用の鋼管を開発して、1978年からPFPとして製造販売していることが記載されている。また、PFPの外面は、用途により異なった処理がなされており、「PFP-PA」は、防錆塗装、「PFP-PB」は、亜鉛めっき、「PFP-PD」は、ポリエチレンで被覆されていると記載されており、カタログ第1ページ目の各製品の断面図にもその点が明記されている。
以上のとおり、被請求人は、自ら発行している製品カタログにおいて、本件商標は、「水道用の鋼管」に使用されていることを明記している。そこで、答弁書において本件商標が使用されていると主張されている「鋼管」と被請求人の製品カタログに掲載されている「水道用の鋼管」との関係について検討する。
まず、乙第1号証及び乙第4号証の説明において、本件商標が使用されている商品に「PFP-PB」の表示が付されていると記載されているが、当該製品カタログにも同一表示の「PFP-PB」の商品が記載されている。また、乙第2号証の商品写真には、「SGP-PB」の表示が付されており、また、乙第4号証の説明において「『PFP-PB』の表示から、『SGP-PB』の商品記号に該当するタイプのものであることが理解できる」と記載されているが、当該製品カタログ第1ページ目の「PFP-PB」の断面図には、「SGP-PB」の表示が併記されており、被請求人が提出した証拠写真及び説明中の表示と製品カタログ中の表示が完全に一致している。
さらに、製品カタログによると、「PFP-PB」は、内面がポリエチレンで被覆され、外面は、亜鉛めっきされていると記載されており、その製品の写真がカタログ第3ページ目の下部に掲載されている。そこには、3種類の管が並べられているが、その中真ん中の製品が「PFP-PB」である。これに対し、乙第1号証及び乙第4号証に現されている管は、上述のとおり内面が青色で、外面が鈍い金属色であることから、この商品は、カタログに記載の「PFP-PB」と同様の外観を呈している。その上、乙第2号証の第1枚目の写真によると、管に表示された「JFE」の表示の左側に2種類の記号が表示されている。これらの表示は、製品カタログ第7ページ目上段の「表示例」に記載されている「水協検査証印」及び「水のマーク」と同一の表示である。「水協」とは、「社団法人日本水道協会」の略称であり、同協会の品質認証センターにおいて「給水管、給水器具」等の品質の認証が行われており、検査証印は、同センターの品質認証を受けていることを示している。甲第4号証として、「社団法人日本水道協会」のホームページから、同協会の品質認証センターの業務内容及び品質認証マーク等を表示したページを提出する。
また、「日本水道協会」による「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」の規格(甲第5号証)によると、鋼管の内面にライニングされるポリエチレン粉体の色は、平成15年3月に灰色から青色に変更されている。また、甲第5号証の第2ページ目の「表1」に記載されているように、ライニング管の種類は、外面の処理方法により3種類あり、外面に亜鉛めっきを施した製品には、記号「SGP-PB」が付されている。これらの記述は、被請求人の製品カタログに記載されている内容と一致するものであり、被請求人の製品は、この規格にそって表示が付されていることが分かる。したがって、答弁書において本件商標が使用されていると主張されている「鋼管」は、上記規格に従って製造販売されている「水道専用の鋼管」であり、この鋼管が他の用途のために使用・販売されることは、通常考えられない。
以上の証拠資料から、被請求人が本件商標を使用していると主張する「鋼管」は、被請求人の製品カタログに掲載されている「水道用の鋼管」と同一の商品であると容易に判断することができる。また、製品カタログに掲載されている商品は、長尺物であり、ねじ山も切られていない状態で販売されるが、カタログ第9ページ目に記載されているように、通常水道管は、配管時に現場で切断し、ねじ切り機によりねじ山を切るものであるため、この状態で完成品であるといえる。
次に、製品カタログに掲載されている「水道用の鋼管」が、本件商標の指定商品である第6類の「鉄及び鋼、非鉄金属及びその合金、金属鉱石」に含まれるかどうかについて検討する。
まず、「鉄及び鋼、非鉄金属及びその合金、金属鉱石」には、各種金属の地金及びその合金並びにそれらの二次製品であって、加工前の素材として製造販売される商品が含まれている。汎用の「鋼管」であれば、この指定商品に含まれる。これに対し、カタログに掲載されている「水道用の鋼管」は、給水管としての特定の品質を得るために、管の内面及び外面に被覆するなど特殊な加工が施されている。両商品は、たとえ製造業者が同一であったとしても、用途が異なり、需要者が相違しているため、販売経路は、原則として異なっている。したがって、両商品に同一若しくは類似の商標が付されたとしても、出所の混同を生ずるおそれはない。よって、カタログに掲載された「水道用の鋼管」は、本件商標の指定商品のいずれとも同一若しくは類似していないものと判断する。
なお、参考までに、特許庁により作成された「類似商品・役務審査基準」によると、「水道管」は、同じ第6類の「建築用又は構築用の金属製専用材料」(類似群コード:07A01)に含まれるとされており、本件商標が出願された平成4年3月31日当時の日本分類によると、「金属製水道管」は、第7類に属する商品とされていた。したがって、カタログに掲載されている「水道用の鋼管」は、本件商標の指定商品には、含まれていない。
以上要するに、被請求人が答弁書において本件商標の使用を証明しようとした商品は、製品カタログに掲載された「水道用の鋼管」と同一のものであり、本件商標の指定商品には含まれていない商品である。また、「水道用の鋼管」について使用されている商標が、汎用あるいは他の用途の鋼管等にも使用されているとは、到底考えられない。
(3)以上のとおり、本件商標が、本件審判の予告登録日前3年以内に、日本国内において、その指定商品について使用されていないことは、明らかである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。なお、枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 第1答弁
(1)本件商標の使用に係る商品
本件商標は、第6類「鉄及び鋼、非鉄金属及びその合金、金属鉱石」を指定商品とするところ、請求人は、本件商標の指定商品の全てについて本件商標の登録取消を請求している。しかしながら、本件商標は、少なくとも、上記指定商品中「鋼管」について使用されている。商標権者は、鉄鋼メーカーとして、様々な鉄鋼製品を製造販売しており、この中に鋼管も含まれる。
添付の商品写真(乙第1号証)は、商標権者が製造した鋼管の写真である。この写真から、同商品に「50A×4000」「2008.4」「PFP-PB」「PFP」「PFP」の文字が付されていることが明らかである。このうち、「50A×4000」は、この鋼管が呼び径「50A」・長さ「4000ミリ」(すなわち、4メートル)のサイズであることを表している。「2008.4」は、この鋼管が製造された年月を意味する(すなわち、乙第1号証の写真は、2008年4月に製造され、建築資材を取り扱う商社(後述)からの注文に基づき、工場出荷される商品を検品する際に撮影されたものである。)。「PFP-PB」は、商標「PFP」と商品記号「SGP-PB」を省略した文字「PB」の結合であり、この商品が商標「PFP」の使用に係る商品であり、かつ、同商標の使用に係る鋼管中「SGP-PB」の商品記号に該当する商品であることを簡潔に表示している。「PFP」は、商標権者が製造販売する鋼管の商標であり、本件商標と同一の構成態様であり、二度繰り返して表示されている。上記の商品写真は、全長4メートルの長尺な商品の中央部あたりから右方向を撮影したものである。
次に、添付の商品写真(乙第2号証)は、商標権者が製造した呼び径の異なる2束の鋼管を山積みにして工場保管している状態を撮影したものである。この写真から、下段の鋼管に「JFE」「PFP」「SGP-PB」「32A×4000」「2009.2」の文字が付されていることが分かる。同様に、上段の鋼管に「JFE」「PFP」「SGP-PB」「15A×4000」「2009.2」の文字が付されていることが分かる。「JFE」は、商標権者の略称であり、同商品を商標権者が製造したことを表している。「PFP」は、同商品の商標であり、本件商標と同一の構成態様である。「SGP-PB」は、商標「PFP」の使用に係る鋼管の商品記号である。このほか、商標「PFP」の使用に係る鋼管には、「SGP-PA」「SGP-PD」の商品記号の付された商品もある。「32A×4000」ないし「15A×4000」は、呼び径が「32A」あるいは「15A」、長さが「4000ミリ」のサイズの鋼管であることを表している。「2009.2」は、同商品が製造された年月を意味している(すなわち、乙第2号証の写真は、2009年2月に製造され、倉庫に保管されていた鋼管を、出荷前の同年3月に撮影したものである。)。上記の商品写真は、全長4メートルの長尺な商品の左端から中央部あたりを撮影したものである。
以上、商標「PFP」の使用に係る商品・鋼管は、全長4メートルの長さを有するところ、同商品の左側から右側へと、順に、製造業者の表示「JFE」、商標「PFP」、商品記号(「SGP-PB」等)、商品の呼び径と全長(「50A×4000」等)、製造された年月(「2008.4」等)、商標と商品記号の結合(「PFP-PB」等)、商標「PFP」(2度繰り返し)が表示されているのであり、このことが上記の商品写真(乙第1号証、乙第2号証)から理解できる。
(2)商品の譲渡
上記の鋼管は、商標権者から、建築資材を取り扱う商社や建築業者等に販売される。添付の書面(乙第3号証)は、鋼管その他の建築資材を取り扱う商社「斎長物産株式会社」(本社:東京都中央区日本橋富沢町3番6号 Z-S東京ビル)の新潟営業所(所在地:新潟県新潟市西区緒立流通2丁目3番7号)から、本件商標の権利者「JFEスチール株式会社」の関連子会社である「JFE物流株式会社」(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番2号)に宛てられた、平成20年5月8日付けの商品納入指示書である。この書面から、商標「PFP」の使用に係る鋼管のうち、商品記号「SBG-PB」に該当するタイプの商品について、様々な口径のものを、それぞれ、所定の本数ずつ、注文があったことが明らかである。
ちなみに、「JFE物流株式会社」は、運輸業務を営んでおり、親会社である「JFEスチール株式会社」が製造販売する商品を購買者に搬送する業務も担当している。その営業所、物流センターは、全国各地に所在する。また、「JFEスチール株式会社」と「斎長物産株式会社」は、長年にわたって相当量の商品取引を行っており、互いに重要な顧客・商品仕入れ先といった間柄にある。上記書面(乙第3号証)に示されているように、「JFEスチール株式会社」の商品を頻繁に購入する固定客である「斎長物産株式会社」のような会社は、「JFE物流株式会社」に対して商品発送依頼を出す。これを受け、「JFE物流株式会社」は、直ちに商品搬送作業を行い、別途、商標権者「JFEスチール株式会社」と「斎長物産株式会社」は、一定期間になされた個々の注文を集計のうえ、まとめて代金の請求・支払いを行う。
次に、添付の書面(乙第4号証)は、上記の指示書面(乙第3号証)に表示された商品のうち、下段の5商品(すなわち、呼び径「20A」が240本、呼び径「25A」が120本、呼び径「32A」が80本、呼び径「40A」が80本、呼び径「50A」が60本、合計580本の鋼管)が、商標権者である「JFEスチール株式会社」の東日本製鉄所(京浜地区)(所在地:神奈川県川崎市川崎区粟島1番地1)から、「斎長物産株式会社」の新潟営業所へと搬送されたことを示す運送状である。
同書面から、商品の出荷場所が「JFEスチール株式会社の東日本製鉄所(京浜地区)」であり、出荷先が「斎長物産株式会社の新潟営業所」であることのほか、出荷年月日が「2008年5月14日」、輸送担当が「JFE物流株式会社」、輸送手段が「トラック」、納品形態が「トラック載り渡し」であることが示されている。さらに、同書面中「PFP-PB」の表示から、出荷した商品が商標「PFP」の使用に係る鋼管であり、「SGP-PB」の商品記号に該当するタイプのものであることが理解できる。また、出荷された鋼管が、呼び径「20A」が240本、呼び径「25A」が120本、呼び径「32A」が80本、呼び径「40A」が80本、呼び径「50A」が60本(長さは、すべて4000ミリ)合計580本であることが確認できる。そして、上記商品写真(乙第1号証)に撮影された鋼管は、斎長物産株式会社・新潟営業所の平成20年5月8日付け商品納入指示書(乙第3号証)に基づき、JFEスチール株式会社の東日本製鉄所(京浜地区)から2008年5月14日付出荷された鋼管のうち、呼び径「50A」のもの(乙第4号証)を、工場出荷前の商品点検の際に撮影したものである。
(3)まとめ
以上、本件商標が審判請求に係る指定商品である「鋼管」について使用され、かつ、その使用態様が本件商標と同一のものであることが、商品写真(乙第1号証、乙第2号証)から明らかである。そして、上記商品が、「斎長物産株式会社」(新潟営業所)の平成20年5月8日付け注文に基づき、2008年5月14日に、商標権者の東日本製鉄所(京浜地区)から、「斎長物産株式会社」(新潟営業所)へと出荷されたことが、上記書面(乙第3号証、乙第4号証)から明らかである。

2 第2答弁(弁駁に対する答弁)
(1)第6類「鉄及び鋼」「建築用及び構築用の金属製専用材料」の概念について
第6類「鉄及び鋼」(類似群コード06A01)の範躊には、「鉄,鋼,鋼半製品,圧延鋼材,鉄鋼二次製品,鉄くず」が含まれる(乙第5号証)。この概念には、地金、半加工品及びくずが含まれ、完成品となったものは、この概念には属しないとされている(乙第6号証)。
他方、第6類「建築用及び構築用の金属製専用材料」(類似群コード07A01)の範躊には、「煙突,階段踏み板鋼,回転窓用へいそく装置,ガードレール,壁板,くい,格子,坑道用材料,さく,シャッター,水道管,タイル,建物の鉄鋼枠,棚板,ちょうつがい,手すり,鉄線じゃかご,天井板,天井装飾品,電柱用住,ドアノッカー」等の各種商品が含まれる(乙第5号証)。いずれも、完成品であり、金属を素材とし専ら建築用及び構築用に用いられるものである(乙第6号証)。
建築用及び構築用に用いられるものであっても、完成品となっていない半加工品は、「鉄及び鋼」の概念に属し、「建築用及び構築用の金属製専用材料」の概念には属さない。
例えば、薄板鋼板の中には、用途を限定しない汎用品ばかりでなく、自動車用薄板鋼板、家電製品用の薄板鋼板、建物の壁材用薄板鋼板のように、専ら特定の用途に限定し、これに適した強度や厚み、これに適したコーティング等を有した商品が存在する。このように特定の用途にのみ利用される薄板鋼板であっても、第6類「鉄及び鋼」の範躊に属するのであり、これを加工し自動車の車体、冷蔵庫のボディ、建物の壁板として、裁断・プレスし完成品とすることにより別概念(すなわち、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」、第11類「家庭用電熱用品類」、第6類「建築用及び構築用の金属製専用材料」)に属する商品になる。
鋼管は、熱延コイル・丸鋼片・厚板鋼板等を素材として作成され、防食処理(亜鉛めっき、塩化ビニルやポリエチレンによるライニングあるいはコーティング等)がなされる。薄板鋼板と同様に、用途を限定しない汎用品ばかりでなく、「配管用」「構築用」「材料用」等の特定の用途に適した、様々なタイプの鋼管が存在する。これらは完成品ではないので、第6類「鉄及び鋼」の範躊に属する。例えば、水道用に用いられることを念頭に企画・製造された鋼管は、鋼管内部に水を通しても腐食しないようにライニング処理が施されるが、第6類「鉄及び鋼」の範躊に属し、第6類「建築用及び構築用の金属製専用材料」)には該当しないというべきである。
「特許庁商標課編・商品区分解説」(乙第6号証の1)は、昭和34年法の商品区分を解説しており、また、「特許庁商標課編・商品及び役務の区分解説」(乙第6号証の2)は、現行の商品及び役務の区分を解説している。いずれも、第6類「鉄及び鋼」について、「・・・完成品となったものは、それぞれの用途に従って他の類に属し、この概念には含まれない。ただし、半加工品と同程度の加工を施したものは、用途が限定され、かつその後にほとんど加工を必要とせず、それ自体のみで使用できるものであっても、この概念に属する。」と説明し、その例として、「軌道」「ガス管」「水道管」を挙げている。
この説明から、上記「水道管」(すなわち、「鋼管内部のライニング処理等、半加工品と同程度の加工を施し、用途が水道用に限定され、ほとんどその後の加工を必要とせず、それ自体のみで使用できるもの」)は、第6類「鉄及び鋼」の属する商品であり、第6類「建築用及び構築用の金属製専用材料」には属しないことが理解できる。そして、第6類「建築用及び構築用の金属製専用材料」に例示された「水道管」は、第6類「鉄及び鋼」の範躊に属する「水道管」を、例えば、所定の長さに切断・ねじ切りを施す等の処理を行い、完成品として販売されるもののみを意味する。
(2)被請求人の商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」について
被請求人は、第6類「鉄及び鋼」の範躊に属する多種多様な商品を製造販売している(乙第7号証)。この中には、「配管用」「構築用」「材料用」等の様々な用途に使用される各種の鋼管が含まれている(乙第7号証)。
さらに、配管用の鋼管にも各種の商品がある(乙第8号証)。このうち、特に防食性に優れた鋼管を「防食鋼管」と称している(乙第11号証)。
被請求人の商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、この防食鋼管に位置づけられている。この商品は、鋼管の内面にポリエチレンのライニングを行うことにより耐水処理を施した配管用鋼管である。すなわち、同商品は、給水配管(冷水配管を含む。)として、水道用や空調用の配管として用いられることを目的に企画・製造された商品であり、水道用配管として利用するのに必要な第三者認証又は日本水道協会による検査手続を経ている。同鋼管の外面には、設置場所の環境に応じて、「一次防錆塗装」「亜鉛めっき」あるいは「ポリエチレン及びモディファイドポリエチレンのコーティング」が施される。長さは、何れも、4メートル。呼び径は、15A・20A・32A・40A・50A・65A・80A・100Aの各種商品がラインアップされている。ねじ切りはされていない。(乙第9号証)
この商品は、通常、月300トン販売される。被請求人から一次商社・問屋へすべてP/E(ブレンエンド)(すなわち、ねじ無し)(通称、ボウズという。)の状態で販売される。第二次店・第三次店でも、基本的にはねじ切りされず、設備工事会社や水道工事会社に販売される。そして、設備工事会社や水道工事会社にて所定の長さへの切断・ねじ切り加工を実施するか、あるいは、現場において所定の長さへの切断・ねじ切り加工を実施することにより完成品としての「水道管」として利用される。被請求人がその製品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」を販売する際には、所定の長さに切断・ねじ切り処理をし直ちに完成品としての「水道管」として利用可能な状態で販売するのではなく、水道用の配管として利用可能な「水道用鋼管」(あるいは、空調用の冷水配管として利用可能な空調用鋼管)として販売するのであるから、上記「特許庁商標課編・商品区分解説」(乙第6号証の1)及び「特許庁商標課編・商品及び役務の区分解説」(乙第6号証の2)において、第6類「鉄及び鋼」の範躊に属すると解説されている商品(すなわち、「半加工品と同程度の加工を施してあり、用途が限定され、かつその後にほとんど加工を必要とせず、それ自体のみで使用できるもの)に該当するというべきである。
請求人は、弁駁書において、被請求人の上記商品は第6類「鉄及び鋼」の範躊に属さず、第6類「建築用及び構築用の金属製専用材料」に属する「金属製水道管」)であると結論付けているが、上記(1)に記載の「鉄及び鋼」及び「建築用及び構築用の金属製専用材料」の概念、並びに、被請求品に商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」に対する誤った認識に基づくとしか理解できない。
(3)被請求人商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」の紹介・商品カタログについて
被請求人は、その商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」に関する商品カタログ(乙第9号証)を作成し、これを販促用ツールとして活用、資材4業者等に配布している。
商品カタログの印刷日:2007年12月
商品カタログの印刷所:
住所:東京都台東区上野5丁目10番3号
名称:株式会社信行社
上記カタログは、既に存在したカタログの改訂版であり、被請求人会社鋼管営業部の申請に基づいて、カタログの調達その他の事項について被請求人から業務委託を受けている被請求人の完全子会社「JFEテクノリサーチ株式会社」(東京都中央区日本橋二丁目1番10号所在)から「株式会社信行社」に発注し、「株式会社信行社」が2007年12月に2000部を印刷、2008年1月24日に請求書(乙第10号証)を発行したものである。同カタログの裏表紙には、印刷年月を記す記号「0712」及び印刷発注者を示す記号「JTR」(注:JFEテクノリサーチの頭文字)が付記されている。
被請求人のホームページでは、「製品情報」欄において被請求人の各種製品を紹介するとともに、これらの商品の商品カタログをpdfフォーマットにて掲載し、いつでも印刷あるいはダウンロードできるようにしている(乙第7号証)。「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」も、同様に、被請求人のホームページ「製品情報」欄に掲載されており、この商品の商品カタログが自由に印刷あるいはダウンロードできる(乙第7号証)。
そして、「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」の商品カタログでは、その表紙に、被請求人の社章と同一の図形商標及び披読求人の略称に相当する商標「JFE」ばかりでなく、「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」の文字の上に、この商品の商品商標「PFP」が表示されている。また、同商品カタログ第9頁「PFP-PDの配管施工例」中「ねじ切り加工」欄の写真には、この商品が表示されており、この写真から、同商品の外面に商標「JFE」や商標「PFP」が付されていることが認められる。
このように、同商品カタログから、本件商標「PFP」が「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」について現に使用されていることが明らかである。そして、「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、上記のように、本件商標の指定商品(第6類「鉄及び鋼」)に属する。
したがって、本件商標は、現に、その指定商品について使用されている。
さらに、同商品カタログ第1頁には、商標「PFP-PA」「PFP-PB」「PFP-PD」が表示されている。被請求人の「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、異なる設置場所(すなわち、「室内」「一般(室内・屋外)」あるいは「地下埋設」)に応じて、鋼管外面の耐食強度に変化を持たせ、「一次防錆塗装」「亜鉛めっき」あるいは「ポリエチレン及びモディファイドポリエチレンのコーティング」がなされる。そして、室内用には「SGP-PA」、一般用(室内・屋外用)には「SGP-PB」、埋設用には「SGP-PD」の商品記号が用いられる。そして、商品カタログ第1頁に表示された商標「PFP-PA」「PFP-PB」「PFP-PD」中「PA」「PB」「PD」の各文字は、それぞれ、上記商品記号「SGP-PA」「SGP-PB」「SGP-PD」の「PA」「PB」「PD」に相当する。
すなわち、商標「PFP-PA」「PFP-PB」「PFP-PD」は、いずれも、「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」の商品商標「PFP」と、同商品の種類を表す商品記号「SGP-PA」「SGP-PB」「SGP-PD」の省略記号「PA」「PB」「PD」によって、構成されている。
このように、商標「PFP-PA」「PFP-PB」「PFP-PD」は、本件商標「PFP」と社会通念上同一の商標である。
したがって、商品力タログ第1頁に表示された商標「PFP-PA」「PFP-PB」「PFP-PD」の表示からも、本件商標が、現に、その指定商品についで使用されていることが明らかである。
(4)被請求人商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」の販売及び本件商標の使用
被請求人は、平成21年4月14日付差出しの答弁書において、本件商標が鋼管について使用されていること、同商品が過去3年以内に販売されたことを陳述し、乙第1号証ないし同第4号証を提出した。
乙第1号証及び同第2号証は、鋼管の写真である。これらの証拠書類から、鋼管の内面に青色のライニングが施され、また、その外面には亜鉛めっきがなされていること、さらに、同鋼管の外面に、商標「JFE」、商標「PFP」、商品記号「SGP-PB」、商標及び省略した商品記号の結合「PFP-PB」等が付されていることが明らかである。そして、乙第9号証(すなわち、被請求人商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」の商品力タログ)から、上記写真に示された商品が、「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」中「一般用(室内・屋外用)」に相当する商品であることが明らかである。
そして、乙第9号証の商品カタログ第7頁「表示例」を参照するに、写真に示された鋼管に付された文字「50AX4000」「32AX4000」「15AX4000」が鋼管のサイズ(呼び径と長さ)を表すこと、また、これら各サイズの鋼管に付された文字「2008.4」「2009.2」「2009.2」が商品の製造年月を意味し、これらの鋼管が、それぞれ、「2008年4月」「2009年2月」「2009年2月」に製造されたことが理解できる。すなわち、これらの鋼管は、上記年月に製造され、その際に、同鋼管に商標「JFE」、商標「PFP」、商品記号「SGP-PB」、商標及び省略した商品記号の結合「PFP-PB」等が付されたものである。
乙第3号証は、資材業者である斎長物産株式会社の新潟営業所が、平成20年5月8日に、「PFP-PB」なる商品を注文したことを示しているが、乙第9号証の商品カタログと照らし合わせると、この商品が「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」中「一般用(室内・屋外用)」であることが明らかである。同商品の長さは、一律4メートルであり、このことは、商品の発注者「斎長物産株式会社」も知っているので、呼び径「100A」「25A」「65A」等のみを記載することで、注文商品のサイズを特定するのに十分である。
(注:被請求人提出の答弁書第4頁第7行目に記載の「SBG-PB」は「SGP-PB」の誤記であり、同頁の最終行には、正しく「SGP-PB」と記載されている。)
乙第4号証「運送状」は、乙第3号証の書類に示された注文品の一部が2008年5月14日に注文者に対して出荷されたことを示している。同伝票に商標「PFP-PB」が記載されており、また、この記載からいかなる商品が出荷されたか明白である。
以上、乙第1号証ないし乙第4号証により、本件商標「PFP」あるいはこれと社会通念上同一と認められる商標「PFP-PB」が、「2008年4月」「2009年2月」あるいは「2009年2月」に製造された「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」中「一般用(室内・屋外用)」に付されたこと、また、同商品に関する注文が「平成20年5月8日」にあり、これを受けて、注文品の一部が「2008年5月14日」に出荷されたことが、十分に理解できる。
したがって、本件商標が、過去3年以内に、その指定商品に属する商品に付されたこと、及び、この商品が、過去3年以内に、販売されたことが明らかである。
(5)まとめ
本件商標の指定商品中第6類「鉄及び鋼」には、半加工品と同程度の加工を施したものであって、用途が限定され、かつその後にほとんど加工を必要とせず、それ自体のみで使用できるもの(例えば、「水道管」)を含む。そして、被請求人の製品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、かかる概念に該当する商品である。同商品の商品カタログは、現在有効に利用されており、資材業者等の顧客に配布されている。また、被請求人のホームページにおいて同商品を紹介するとともに、この商品カタログをホームページに掲載し、いつでも印刷やダウンロードできる状態にしている。
本件商標「PFP」及びこれと社会通念上同一と認められる商標「PFP-PB」は、同商品の商品カタログに表示されることによって、使用されている。
また、本件商標「PFP」及びこれと社会通念上同一と認められる商標「PFP-PB」は、被請求人の製品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」に付されることによって使用され、さらに、同商品が販売されることによって使用されている。
したがって、本願商標は、審判請求に係る指定商品について、日本国内において、商標権者により、現に使用されており、また、本件審判の予告登録目前3年以内に使用されたものであるから、本件審判の請求は理由がない。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の証拠について
(1)乙各号証について
乙第1号証は、「商品写真」であり、そこには、三枚の写真が示されているところ、写真に写された管の表面には、「4000 2008.4 T PFP-PB」「PFP」等の文字が確認できる。そして、管とともに写された商品ラベルには、商品コード等が記載されており、「BW PFP-PB(PF)WG」「50A×4000」「J3634 8T006N1 005 J36340002 0002」「JFEスチール東日本(京浜)」等の記載がある。
乙第2号証は、同じく「商品写真」であり、そこには、三枚の写真が示されているところ、これらの写真に写された管の表面には、品質認証マーク(社団法人日本水道協会 品質認証センター)及び「JFE PFP SGP-PB 32A×4000 2009.2」の文字が確認できる。
なお、被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証の「2008.4」及び「2009.2」の表示に関して、それぞれの写真の管が製造された年月を意味している旨述べている。
乙第3号証は、平成20年5月8日付けの「FAX送信票」であって、「斎長物産株式会社」の新潟営業所から、本件商標権者の関連子会社とする「JFE物流」へ宛てたものである。これには、件名に「パイプ納入の件」、罫線のある記載欄に、「通常品」、「8T00C4J 002 PFP-PB 100A 30本」、「生産品(転造ねじ対応品)」、「8T006N1 001 PFP-PB 20A 240本」等の記載がある。
乙第4号証は、出荷日が2008年5月14日の「運送状(副)」あって、「JFEスチール株式会社 東日本製鉄所(京浜)」から「斎長物産株式会社」の新潟営業所へ宛てたものである。これには、「注文番号」として「8T006N1」等、「規格略号/製品寸法」として「BW PFP-PB(PF)WG/20A×4000」等及び「本数」として「240」等の記載がある。
乙第7号証(枝番号を含む。)は、JFEスチール株式会社のホームページを印刷したものである。同号証の3には、「品名/JEF商品名」として、「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管/PFP」の記載がある。同号証の4には、「JEF防食管の種類と特徴」の項に、「品名/特徴」として、「PFP(水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管)/新しいタイプの給水用管。品質面、衛生面で優れた特性を発揮。」の記載がある。
同号証の6は、同社の商品である「PFP 水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」についてのPDFによる製品カタログである。その目次の頁には「キープ・クリーン鋼管/内面にポリエチレンをライニング。それぞれの用途に信頼で応えるPFP。」の表題のもと商品紹介がされており、随所に「PFP」の表示が認められるいる。
乙第8号証は、同社の商品「配管用鋼管」についての製品カタログである。その6頁及び7頁には、「JFE配管用鋼管の種類と特徴(その2)」の項目において、品名「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」、JEF商品名「PFP」、原管「SGP」、主な特徴と用途「1)管の内面にポリエチレン粉体を融着ライニングしたものです。2)40℃以下で、給水配管(冷水配管を含む)に使用されます。排水管にはお勧めできません。3)管外面防食の違いによりPB(亜鉛めっき)、PD(1層タイプポリエチレン被覆)の2種類があります。用途は主として、PBが屋内外、PDが埋設用です。・・・」と商品の紹介がされている。
乙第9号証は、同社の商品「PFP 水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」についての製品カタログである。その内容は、乙第7号証の6の「PFP 水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」についてのPDFと同じである。裏表紙の右上には「Cat.No.E1J-016-03」の記載がある。
乙第10号証は、平成20年1月24日付けの請求書の写しであって、株式会社信行社からJFEテクノリサーチ株式会社に宛てたものである。そこには、品名「E1J-016-03/PFPカタログ」、数量「2,000部」の記載がある。
乙第11号証は、同社の商品「防食鋼管」についての製品カタログである。その4頁及び5頁には、「PFP(水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管)」の項目があり、「新しいタイプの給水用鋼管として開発されたもので、品質面、衛生面で優れた性能を発揮します。」と記載され、「種類と用途」の項において、商品名「PFP-PA」「PFP-PB」「PFP-PD」について、被膜の構成等の図表が掲載されている。
以上によれば、乙第1号証及び乙第2号証の写真に写された管には、「PFP-PB」及び「PFP」の表示が認められ、この商品は、「JFEスチール東日本(京浜)」の商品として取り扱われているものである。そして、乙第3号証によると、平成20年5月8日に「斎長物産株式会社」新潟営業所から本件商標権者の関連子会社の「JFE物流」に対して上記「PFP-BP」の商品注文がなされたことが認められる。さらに、乙第4号証のJFEスチール株式会社(商標権者)の東日本製鉄所(京浜)から斎長物産株式会社新潟営業所に宛てた「運送状(副)」によれば、「注文番号 8T006N1」、「規格略号/製品寸法」及び「本数」等の記載から、搬送された商品は、乙第3号証に記載された商品のうち、「8T006N1 001 PFP-PB 20A 240本」ないし「8T006N1 005 PFP-PB 50A 60本」の5商品であって、商標権者の取り扱いに係る商品「PFP-PB」が本件審判の請求の登録前3年以内に取引されていることが認められる。
また、乙第7号証(枝番号を含む。)のJFEスチール株式会社(商標権者)のホームページにおける記載によれば、同社は、種々の分野における配管用鋼管を製造販売していることが認められる。そして、同号証の6(乙第9号証)は、商品「PFP 水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」についての製品カタログであって、これによると、「PFP 水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、「小口径の給水用鋼管として化学的に安定で極めて衛生的な水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管として開発され、1978年よりPFPとして製造販売されており、PFPは内面にポリエチレン粉体をライニングした給水用鋼管であり、外面の処理法によって用途が異なる。防錆塗装をしたPFP-PAは屋内用、亜鉛めっきを施したPFP-PBは屋内屋外用、そして、ポリエチレンを被覆したPFP-PDは埋設用である。」旨の記載が認められる。そして、この商品の「特徴」(1頁)及び「製造方法」(2及び3頁)によると、原管である鋼管の内側にポリエチレンを被覆し、外側に防錆塗装、亜鉛めっき、ポリエチレンのいずれかが被覆されて製造、製品化されている給水用鋼管であることが認められる。
乙第8号証の「配管用鋼管」の製品カタログによれば、「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」のJFE商品名「PFP」について、主な特徴と用途に「2)40℃以下で、給水配管(冷水配管を含む)に使用されます。排水管にはお勧めできません。」と記載があることから、この商品の用途が給水配管であることが認められる。
乙第10号証は、株式会社信行社から被請求人の子会社とするJFEテクノリサーチ株式会社に宛てた平成20年1月24日付けの請求書の写しであって、そこには、品名「E1J-016-03/PFPカタログ」の記載があることから、乙第9号証のカタログに係る請求書であることが確認できる。
以上を総合すれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に本願商標「PFP」を給水用鋼管としての「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」に使用していることが認められる。
(2)本件商標の使用について
乙第1号証及び乙第2号証の写真に撮影された管は、乙第7号証ないし乙第9号証、乙第11号証及び甲第5号証からすれば、被請求人の製造、販売に係る「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」であると認められるものである。
さらに、上記写真及び被請求人の製品カタログに掲載されている当該商品に本件商標「PFP」、あるいは「PFP-PB」が使用されていることが認められる。
そして、「PFP-PB」は、その構成中の「-PB」の部分が商品の品番等を表示する記号として認識される。そうすると、自他商品の識別標識としての機能を発揮する部分は「PFP」であるから、「PFP-PB」は、本件商標と社会通念上同一の商標といい得るものである。

2 本件商標の使用に係る商品について
請求人は、本件商標が使用されている「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、その指定商品中に含まれない商品である旨主張しているが、これに対し、被請求人は、当該商品は本件商標の指定商品中第6類「鉄及び鋼」の範躊に属する商品である旨述べているので、この点について検討する。
指定商品については、特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準〔国際分類第8版対応〕」(平成13年12月改訂)によれば、第6類の「鉄及び鋼」の例示商品には、「4 圧延鋼材」として「外輪 鋼板 再生鋼材 条鋼 山形鋼」などの商品と共に「鋼管」が記載されている。
一方、「建築用又は構築用の金属製専用材料」の例示商品には、「壁板 格子 建物の鉄鋼枠 天井版 床板」などの商品と共に「水道管」が記載されている。
そして、特許庁商標課編「商品及び役務区分解説〔国際分類第8版対応〕」(平成13年12月)によれば、その24頁には「鉄及び鋼」の項があり、「この概念及び次の概念には、主として鉄及び鋼、非鉄金属及びその合金の地金、半加工品及び“くず”が含まれる。完成品となったものは、それぞれの用途に従って他の類に属し、この概念には含まれない。ただし、半加工品と同程度の加工を施したものは、用途が限定され、かつその後にほとんど加工を必要とせず、それ自体のみで使用できるもの(例えば「軌条」「ガス管」「水道管」)であっても、この概念に属する。」と記載されている。
また、その25頁及び26頁には「建築用又は構築用の金属製専用材料」の項があり、「専ら建築又は構築に使用される材料のうち、金属製のものがこの概念に属する。“専用材料”という意味は、専ら建築及び構築に用途を限定されたものとして取引される材料のことである。」と記載されている。
これを、本件の使用商品である「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」についてみるに、被請求人の製品カタログにおける当該商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、製造方法、特徴などからすれば、「原管である鋼管の内側にポリエチレンを被覆し、外側に防錆塗装、亜鉛めっき、ポリエチレンのいずれかが被覆されて製造、製品化されている。」ものであり、本件使用商品は、原管に加工を施し、水道用としての用途をもち、かつ、その後にほとんど加工を必要とせず、それ自体のみで使用できる給水用鋼管であるから、第6類「鉄及び鋼」に属する商品ということができる。
ところで、被請求人のホームページ資料やカタログ資料によれば、JFEスチール株式会社は、薄版、厚版、形鋼、鋼管、電磁鋼板、ステンレス、棒線、鉄粉、チタン、スラグ製品などの鉄鋼製品を製造する企業であって、鋼管に関しては、多種類の鋼管を製造する鋼管の製造メーカーである。
そして、このような鋼管を製造するメーカーは、多種類の鋼管を製造するのが一般的であって、汎用の鋼管のみを製造するのではなく、それぞれの特徴と用途に応じた鋼管を製造しているものである。
このような実情からすれば、たとえ、本件の使用商品である「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」が水道用の給水配管としての完成品であるとしても、鋼管製造メーカーが製造している鋼管であるとみてさしつかえない。
したがって、本件の使用商品である「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、「建築用又は構築用の金属製専用材料」に含まれる例示商品の「水道管」に限定されるものでなく、その上位概念の商品というべき「鋼管」というべきものである。
なお、請求人は、乙第2号証の「商品写真」に写された管の表面には、品質認証マーク(社団法人日本水道協会 品質認証センター)が確認できるものであって、本件の使用商品である「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、「水道管」である旨主張しているが、たとえ品質認証マークが表示されているとしても、本件使用商品「水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管」は、上記認定のとおり「鋼管」であるから、かかる請求人の主張は採用できない。

3 まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した証拠を総合勘案すれば、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その取消し請求に係る指定商品中の第6類「鉄及び鋼」に属する「鋼管」について、被請求人によって使用されていたものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-10-28 
結審通知日 2009-11-02 
審決日 2010-01-18 
出願番号 商願平4-42226 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (106)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 岩崎 良子
井出 英一郎
登録日 1994-04-28 
登録番号 商標登録第2654058号(T2654058) 
商標の称呼 ピイエフピイ 
代理人 高梨 範夫 
代理人 木村 三朗 
代理人 安島 清 
代理人 特許業務法人 清水・醍醐特許商標事務所 
代理人 村上 健次 
代理人 小林 久夫 
代理人 大村 昇 

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