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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1218323 
審判番号 無効2009-890116 
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-10-27 
確定日 2010-05-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第4762835号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4762835号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4762835号商標(以下「本件商標」という。)は、「USBear」の文字を横書きしてなり、平成15年1月15日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同16年2月26日に登録査定、同年4月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(6)に掲げるとおりである。
(1)登録第2667318号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:BeaR
登録出願日:平成3年10月16日
設定登録日:平成6年5月31日
更新登録日:平成15年12月24日
書換登録日:平成16年5月12日
指定商品 :第5類、第9類、第10類、第16類、第17類、第20類ないし第22類、第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び第25類「被服」
(2)登録第4345512号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲(1)のとおり
登録出願日:平成7年5月2日
設定登録日:平成11年12月17日
指定商品 :第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット」ほか
(3)登録第4376738号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲(2)のとおり
登録出願日:平成7年7月24日
設定登録日:平成12年4月14日
指定商品 :第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット」ほか
(4)登録第4419411号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成8年3月6日
設定登録日:平成12年9月22日
指定商品 :第25類「アメリカ製のパーカ,アメリカ製のジャケット」ほか
(5)登録第4419412号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲(4)のとおり
登録出願日:平成8年3月6日
設定登録日:平成12年9月22日
指定商品 :第25類「パーカ,ジャケット」ほか
(6)登録第4985520号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲(5)のとおり
登録出願日:平成12年12月27日
設定登録日:平成18年9月8日
指定商品 :第25類「被服」ほか
上記引用商標1ないし6は、いずれも現に有効に存続しているものであり、以下、これらをまとめて単に「引用商標」ということがある。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第76号証を提出している。
1 理由の要点
本件商標は、その構成中の「Bear」の文字部分より「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるとともに、全体より「アメリカの熊」の観念を生じるものであり、他人(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的)をもって使用するものであり、公正な取引秩序を害するおそれがある商標というべきものである。
2 具体的理由
(1)本件商標と引用商標との類似について
本件商標は、その構成上「ユーエスベアー」の称呼を生じ、「アメリカの熊」の観念を生じるものである。
また、本件商標の構成中の「US」の文字部分は、「アメリカ」を意味し、指定商品との関係においては、アメリカで製造されたもの或いはアメリカでデザイン、企画されたもの等の意を想起させるもので、自他商品識別標識としての機能がないか極めて弱いものであることから、「Bear」の文字部分が自他商品識別標識としての機能を果たす部分と認識され、これより「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生じるものである。
これに対して、引用商標は、いずれも「ベアー」の称呼及び「熊」の観念を生じるものであり、引用商標2、4及び6は、その構成上「ベアーユーエスエー」の称呼を生じるほか、「ユーエスエーベアー」の称呼をも生じる余地があり、「アメリカの熊」の観念を生じるものである。
そして、本件商標より生じる「ユーエスベアー」の称呼と引用商標2、4及び6より生じる「ユーエスエーベアー」の称呼とは、中間において「エー」の音の有無に差異を有するにすぎず、それぞれより生じる観念上の共通点もあって、彼此相紛らわしい称呼上類似の商標といわざるを得ないものである。
してみると、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念上類似の商標というべきものである。
(2)請求人の商標の著名性について
請求人は、「Bear U.S.A.Inc.」の商号にて、その商号に由来する黒の輪郭線で描いた熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用して、1994年(平成6年)より、アメリカ、日本においてジャケット、パーカ、靴等の製造、販売をしてきたところであり、その品質、デザインが若者を中心にしたストリートファッションのアイテムとして大いにヒットし、これがアメリカの人気音楽番組「MTV」に取り上げられたことから、爆発的な人気を博した(甲第8号証及び甲第9号証)。
そして、その人気の余波は、日本、イギリスにも及び当業者のみならず需要者間に広く知られるに至った。
請求人の黒の輪郭線で描いた熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品が人気を博すにつれ、その商品そのものが「THE SOURCE MAGAZINE」(ヒップホップミュージック誌)等の各種雑誌でも掲載され、あるいは記事として取り上げられて益々その人気が高まってきた(甲第9号証ないし甲第18号証)。
請求人は、その商品を普及するために、商品パンフレットを作成してアメリカ国内はもとより、日本、イギリスの商社、バイヤー等を通じて広く配布すると共に、「VIBE」、「ASAYAN」、「繊研新聞」等の雑誌、新聞に積極的に広告をしてきたことから、黒の輪郭線で描いた熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、本件商標の登録出願前には取引者、需要者間に著名となっていたものである(甲第8号証ないし甲第40号証)。
請求人の黒の輪郭線で描いた熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品があまりに人気を博したことから、我が国において大量の偽物が出回ったため、一時日本への出荷を停止せざるを得ない状況に追い込まれた(甲第41号証)。
そして、1996年(平成8年)4月25日には、偽商品を販売していた業者が摘発されたという新聞記事が掲載されたのである(甲第42号証)。
このような状況を打開するため、請求人は1996年4月以来、新聞、雑誌に偽商品についての「警告広告」あるいは「注意広告」を何度も掲載してきたところである(甲第28号証ないし甲第39号証及び甲第43号証ないし甲第52号証)。
上述したとおり、請求人の黒の輪郭線で描いた熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、著名となり、それを取り上げた新聞、雑誌等の記事において「ベアユーエスエー」あるいは単に「ベアー」として紹介されるほどになっているものである。
請求人は、我が国において大量の偽物が出回ったことから、それまで使用していた商標が希釈化されつつあったため、商標をより商品に適した構成とすべく、また偽物対策をも含め、1996年(平成8年)より、黒の輪郭線をもって熊の図を描き、その輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「Bear」の文字を書し、輪郭線の外側に「USA」の文字を書した構成よりなる引用商標4及び6(甲第5号証及び甲第7号証)に変更し、以来これを使用してきており、引用商標は、取引者、需要者間に周知、著名となっているものである。
(3)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類似性について
本件商標の指定商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。
(4)被請求人の商標の出願、登録の経過について
被請求人の出願、登録商標は、いずれも請求人の「Bear」「USA」の商標を付した商品がヒットし、日本において偽商品が氾濫したため、請求人が偽商品対策として日本への出荷停止措置を執ったこと、偽商品が摘発されたことが新聞で報道され(甲第41号証及び甲第42号証)、偽商品についての警告広告(甲第28号証ないし甲第39号証及び甲第43号証ないし甲第52号証)が掲載された後に出願され、登録されたものである。
そして、被請求人のこれらの商標の出願の経緯をみるに、被請求人は、平成7年から同15年にかけて以下のアないしコに掲げる商標を出願しているように、被請求人は、請求人の使用する著名な商標に段階的に似せた商標を出願し、登録を受けているという経緯をたどっているところであり、本件商標も被請求人の登録第3340430号商標とほぼ同一の構成からなり、平成15年1月15日に登録出願されたものである。
ア 「USBEAR」の文字からなる登録第3340430号商標(以下「被請求人商標1」という。甲第53号証)。
イ 別掲(6)のとおりの構成からなる登録第4137882号商標(以下「被請求人商標2」という。甲第54号証)。
ウ 「USABEAR」及び「アズエーベー」の各文字を上下二段に書してなる登録第4345622号商標(以下「被請求人商標3」という。甲第55号証)。
エ 別掲(7)のとおりの構成からなる商願2000-43142号商標(以下「被請求人商標4」という。甲第56号証)。
オ 別掲(8)のとおりの構成からなる登録第4507125号商標(以下「被請求人商標5」という。甲第57号証)。
カ 別掲(9)のとおりの構成からなる登録第4536505号商標(以下「被請求人商標6」という。甲第58号証)。
キ 別掲(10)のとおりの構成からなる登録第4646915号商標(以下「被請求人商標7」という。甲第59号証)。
ク 別掲(11)のとおりの構成からなる登録第4762834号商標(以下「被請求人商標8」という。甲第60号証)。
ケ 別掲(12)のとおりの構成からなる登録第4762838号商標(以下「被請求人商標9」という。甲第61号証)。
コ 別掲(13)のとおりの構成からなる登録第4768545号商標(以下「被請求人商標10」という。甲第62号証)。
また、被請求人は、被請求人商標5ないし7等の無効審判事件において、本件商標と同じ構成の商標を組み合わせた構成からなる商標の登録をしたとの主張の根拠とした被請求人商標2(使用権者による不正使用と認定され、商標法第53条第1項により、登録が取り消されている。)と同一の構成からなる商標を、本件商標の指定商品と同じ商品を指定して商標登録第4776351号(甲第63号証)として保有している。
(5)被請求人の商標の模倣性等について
これらの商標中、とりわけ被請求人商標5ないし7は、請求人の使用に係る著名な引用商標4ないし6とは、輪郭線で描いた熊の図とその輪郭線を延長した輪郭内に「Bear」の文字を含む文字を書してなる点において構成の軌を一にするものである。
また、被請求人の「USABEAR」と「アズエーベー」の各文字からなる被請求人商標3は、その構成中の「USABEAR」の文字が請求人の商号の主要部である「BEAR USA」の文字の「BEAR」と「USA」の前後を入れ替えて表示したというべきもので、かつ、そのライセンス契約においては、「アズエーベー」の片仮名文字を取り去って表示した態様で示して契約し、片仮名文字を取り去った欧文字のみの商標登録証を偽造して示す(甲第64号証ないし甲第66号証)というように、請求人の著名な商標に似せてフリーライドしようとする商標の出願、使用をしているといわざるを得ないものである。
さらに、被請求人商標10は、その構成中の「USBeaR」の文字が熊の図との関係において、「アメリカ」を意味する「US」の文字と「熊」を意味する「BeaR」の文字とを結合したものと容易に認識し得るものであるところ、「BeaR」の文字は、語頭部と語尾の「B」と「R」を大文字とし、中間の「ea」の文字を小文字とした極めて特異な構成となっているもので、請求人の「BeaR」の文字からなる引用商標1をそっくり、そのままの構成、態様で取り込んだもので、明らかに請求人の特異な構成、態様の引用商標1の存在を知った上で、その構成、態様を模倣したといわざるを得ないものである。
被請求人が特異な構成からなる請求人の引用商標1の存在を知っていたか否かについては、被請求人が引用商標1に対して不使用取消審判(平成10年審判第30311号及び同第30312号)の請求をし、その審決の取消しを求めた審決取消訴訟(平成11年(行ケ)第361号及び同第362号)を提起している事実があることからみても、明らかに知っていたといい得るところである。
以上述べたように、被請求人の上記商標の登録出願の経緯及びその使用の実情からみれば、明らかに請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図をもって商標を登録出願し、登録し、使用しているものと断ぜざるを得ないものであり、本件商標も、請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図のもとに登録出願し登録を受けた一連の商標出願・登録の一環として、登録出願し、登録されたといわざるを得ないものである。
(6)被請求人の商標の登録後の経過等について
ア 被請求人商標1については、不正の目的をもって使用するために登録したことを理由とする無効審判(無効2006-89085号)により、「登録無効」の審決がなされ、この審決に対する平成19年(行ケ)第10370号審決取消請求事件の判決により審決が確定し、その商標登録が抹消された。
イ 被請求人商標2については、不正使用をしたことを理由とする取消審判(取消2005-31237号)により、「請求不成立」の審決がなされ、この審決に対する平成19年(行ケ)第10341号審決取消請求事件において、「審決を取り消す。」との判決がなされた。
その判決を不服とする上告事件(平成20年(行サ)第10010号及び同年(行ツ)第204号)において、上告棄却の決定がなされた結果、「登録を取り消す。」との審決がなされ、被請求人商標2の商標登録が抹消された。
ウ 被請求人商標3については、不正使用をしたことを理由とする取消審判(取消2001-31307号)により、「登録は取り消す。」との審決がなされ、平成15年(行ケ)第375号審決取消請求事件の判決、平成16年(行ツ)第96号及び同年(行サ)第6号の最高裁判決により審決が確定し、商標登録が抹消された。
エ 被請求人商標4については、請求人の引用商標4等と類似する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するとして拒絶査定され、査定不服審判事件(不服2004-22100号)において、「請求不成立」との審決がなされ、その拒絶査定の処分が確定した。
オ 被請求人商標5及び6については、いずれも無効審判(無効2004-35107号及び同第35108号)により、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決がなされ、平成17年(行ケ)第10362号及び同第10361号審決取消請求事件の高裁判決、平成18年(行ツ)第23号及び同第22号、同年(行ヒ)第34号及び同第33号の最高裁の判決により審決が確定し、商標登録が抹消された。
カ 被請求人商標7及び8については、いずれも無効審判(無効2005-89076号及び同第89030号)により、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決が確定し、商標登録が抹消された。
キ 被請求人商標9及び10については、いずれも無効審判(無効2005-89025号及び同第89039号)により、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決がなされ、平成17年(行ケ)第10833号及び同第10829号審決取消請求事件の高裁判決により審決が確定し、商標登録が抹消された。
(7)被請求人は、上記審判事件及び訴訟事件において、一貫して、「USBEAR」の文字からなる被請求人商標1と「黒塗りの熊の図形」からなる被請求人商標2を組み合わせた形で登録されたものであるなどと主張している(甲第67号証)。
また、「USABEAR」と「アズエーベー」の各文字を上下二段に書してなる被請求人商標3に係る「商標使用許諾契約」により、商標を使用していた株式会社岐阜武(以下「岐阜武」という。)に対する商標権侵害差止等請求事件「岐阜地方裁判所平成15年(ワ)第62号」において、証拠として提出された被請求人商標3の商標使用許諾契約に係る「見解書」においては、被請求人商標2と3を組み合わせた形状である旨見解を述べている(甲第66号証)。
なお、上記商標権侵害差止等請求事件は、平成18年4月27日に使用差止、損害賠償を認めた判決(甲第68号証)がなされ、この判決は確定した。
さらに、岐阜武に対する商標権侵害差止め及び損害賠償を請求する訴訟「岐阜地方裁判所 平成17年(ワ)第85号商標権侵害差止等請求事件(本訴)、同第280号不正競争差止等請求事件(反訴)」においても、被請求人が許諾し、使用している商標は、被請求人商標2と3とを結合して使用していると述べている。
(8)被請求人は、主として被服、靴等のファッションに関する商品のブランドライセンスを業としている会社であることから、日本を含む世界各国の著名ブランドには精通していると推測されるところであり、前述した請求人の著名商標も当然のこととして知っていたといい得るところである。
そして、その業務に係るブランドライセンスリスト(甲第69号証)には、著名な商標をその一部に取り込み、著名な商標にフリーライドする目的とみられるような商標が多く掲載されている。
その一例を挙げれば、「DUNHILL」の前後に「I」を付した「IDUNHILLI」の文字からなる登録第4101020号商標を取得し、ライセンスリスト上では、前後の「I」の上下に掛かるかのような輪郭線を配して、中の「DUNHILL」の文字が浮き出て見えるような商標を掲載しているところであり、これと同様の意図をもって採択して掲載したとみられる「LANCEL」の前後に「I」を付した「ILANCELI」(登録第4101024号)、「ARMANI」の前に「I」を付した「IARMANI」の文字を有する商標も掲載されているところである(甲第70号証及び甲第71号証)。また、我が国において著名な「スマートな犬」をモチーフとした登録第3152982号商標に類似する構成からなる登録第4137881号商標及び著名な「adabat」の商標の前後に「i」を付した登録第4217829号商標をも取得し、これもライセンスの対象としていた(甲第72号証ないし甲第74号証)。
これらの商標中、「ILANCELI」の文字からなる登録第4101024号商標は、平成10年異議第91010号において、「明らかに『LANCEL』の著名性にただ乗りする社会一般道徳に反する商標といえるものであって、かつ、国際信義に反する商標といわざるを得ない」と認定され、その登録の取消決定がなされ、その決定の取消しを求めた、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第217号決定取消訴訟事件においても請求が棄却された結果、登録が抹消されている。
「IDUNHILLI」の文字からなる登録第4101020号商標は、平成11年審判第35700号の無効審判事件において、「DUNHILL」と出所の混同を生じるおそれがあるとして、登録を無効とされている。
「犬の図」からなる登録第4137881号商標は、平成10年異議第91373号事件の異議決定において、登録第3152982号商標と類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するとして登録が取り消され、「iadabati」の文字からなる登録第4217829号商標は、平成11年異議第90362号事件の異議決定において、異議申立人の業務に係るものであるかの如くその商品の出所について混同を生じるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるとして登録が取り消されている。
また、被請求人は、被請求人商標3のライセンスにおいても、「アズエーベー」の文字部分を取り去って「USABEAR」の文字部分についての使用許諾契約をし、かつ、これについての被許諾人に対する平成12年4月21日付けの見解書に添付した商標登録証(写)において、「アズエーベー」の文字部分を取り去った「USABEAR」の文字のみからなる商標を表示しているというように、極めて欺瞞的なライセンス事業を展開している(甲第64号証ないし甲第66号証)。
この被請求人商標3については、本件審判の請求人が取消2001-31307号の審判請求をした結果、「通常使用権者による商品ジャケットについての通常使用権者使用商標の使用は、通常使用権者が指定商品についての本件商標に類似する商標の使用であって、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるものをしたというべきであり、また、請求人はその事実を知っていたものと認められる。したがって、本件商標は、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきものである。」との審決がなされ、その審決の取消しを求めた東京高等裁判所平成15年(行ケ)第375号審決取消請求事件においてもその請求が棄却されているものである。
(9)前記(2)ないし(8)及び「不正の目的」をもって登録されたとの審決、判決(甲第76号証)がなされ、登録無効とされた被請求人商標1と本件商標とは、同一のつづりの構成からなることを総合してみると、被請求人は、日常的に著名な商標にフリーライドするライセンス業をしていたものであり、本件商標は、請求人の著名な商標にフリーライドするという不正の目的をもって、類似する商標を使用するために登録出願し、登録を受けたといわざるを得ない。
本件商標が請求人の著名な商標にフリーライドするという目的をもって、類似する商標を使用するために登録出願し、登録を受けたものであるとする請求人の主張に関しては、被請求人商標9の無効審判事件(無効2005-89025号)の審決の取消しを求めた平成17年(行ケ)第10833号審決取消請求事件の判決(甲第75号証)及び被請求人商標1の無効審判事件(無効2006-89085号)の審決の取消しを求めた平成19年(行ケ)第10370号審決取消請求事件の判決(甲第76号証)からみても、極めて妥当な主張といえるものである。
(10)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人の国別売上げ及び広告・トレードショーの費用の一覧表の写し(甲第8号証)によれば、請求人による引用商標を付した商品の売上高、広告宣伝費用、売上数量は、次のとおりであると認められる。
(ア)日本とアメリカ合衆国における総売上高
1994年(平成6年) 86万1206ドル
1995年(平成7年) 904万9490ドル
1996年(平成8年) 2550万2784ドル
1997年(平成9年) 2022万3754ドル
1998年(平成10年)1092万7683ドル
1999年(平成11年) 944万495ドル
2000年(平成12年) 729万1615ドル
2001年(平成13年) 314万5087ドル
(イ)広告宣伝費用
1995年(平成7年) 6918ドル
1996年(平成8年) 2万7058ドル
1997年(平成9年) 52万2536ドル
1998年(平成10年) 10万2353ドル
1999年(平成11年) 62万7677ドル
2000年(平成12年) 83万3717ドル
2001年(平成13年) 27万9203ドル
(ウ)売上数量
1994年(平成6年) ダウンジャケット 20,000
1995年(平成7年) ダウンジャケット 110,497
パーカ、靴、アクセサリー 54,314
1996年(平成8年) ダウンジャケット 296,973
ジャケット、パッドジャケット 59,637
パーカ、靴 56,054
1997年(平成9年) ダウンジャケット 270,183
ジャケット、パッドジャケット100,623
靴、アクセサリー等 42,998
1998年(平成10年)ダウンジャケット 175,386
ジャケット、パッドジャケット 8,853
靴、アクセサリー等 72,559
1999年(平成11年)ダウンジャケット 99,587
ジャケット、パッドジャケット 70,930
靴、アクセサリー等 138,460
2000年(平成12年)ダウンジャケット 113,309
ジャケット、パッドジャケット109,791
靴、アクセサリー等 585,257
イ 外国で発行された雑誌には、次のような記事がある。
(ア)米国雑誌「SPORTSWEAR INTERNATIONAL」の「WHO’S WHO」102頁(甲第11号証)の1枚目左側には、「Bear USA,INC.」(請求人)について次のように記載されている(訳文は、甲第76号証19頁下4行?20頁13行)。
「『Bear』はニューヨーク市の『the Hong family and Urban Sales and Marketing Inc.』によって4年前に設立され、それ以来、5大陸10カ国500社からなる選りすぐった小売業者との間で取引を拡大してきた。1996年(平成8年)の対外売上高は10ミリオンドル。『Bear USA』は2000年(平成12年)までに100ミリオンドルの売上高を達成するため、積極的な市場戦略を展開している。商品の取引先はデパートやアウトドア店に止まらず、先進ファッションの小規模ブティックにまで至っている。都会での広告だけに止まらず、同社は、1996年(平成8年)に、TVの連続コメディーやコンサートツアー用品などが置かれているニューヨーク市の『Macy’s and Paragon Outdoor Store.』の店舗内にも『Bear shops』を立ち上げた。ファッションやアウトドア用品の広告には、アパレルや靴の会社がよく使用するような販売促進用の広告宣伝カーが用いられる。1997年(平成9年)秋までに『Bear』は、その商品を様々な種類の革製品にまで拡大し、都会風のスタイルと合致するように技術面を磨いていくことだろう。」
(イ)米国雑誌「SPORTSWEAR[NORTH AMERICA]INTERNATIONAL」の「WHO’S WHO IN THE AMERICAN SPORTSWEAR MARKET 2000」106頁(甲第16号証)には、「Bear U.S.A.」(請求人)について次のように記載されている(訳文は、甲第76号証20頁下7行?21頁6行)。
「6年目の『Bear』は若者向けカジュアルや活動的な外着市場で安定している。会社をアピールするために、スポーツウェア、デニム、靴、帽子、バッグ、下着に35ミリオンドルを注ぎ込んでいる。米国中に特別な取引先やチェーンを有するほか、スポーツ店やデパートといった取引先も有する。『Bear』は世界的規模のレベルで販売を行っている。男・女性用外着の製造会社であることは印刷物や屋外広告によって需要者に知られている。将来的な商品展開としては『ダウン(ジャケット)』の増強と新規の『防水着』への拡大が挙げられる。『Bear』の従来からの方向性の商品であるアウトドアスポーツ、テクノスポーツ及びストリートスポーツ用外着は男女、ジュニア、青年、子供用サイズが揃っている。同社は都会の外着用品の会社として『Albert, Robert and Thomas Hong』のファミリーメンバーによって設立された。」
(ウ)また、外国で発行された次の各雑誌には、引用商標3、4又は6が使用された商品が掲載されている。
(a)「seventeen」1997年(平成9年)9月号(甲第12号証)の左側の抜粋頁
(b)「Details」1997年(平成9年)9月号(甲第14号証)の3枚目
(c)「THE SOURCE」1995年(平成7年)11月号(甲第20号証)の5枚目
(d)「DNR」1999年(平成11年)11月号(甲第25号証)の11枚目
ウ 一方、日本国内で発行された雑誌には、次のような記事がある。
(ア)「Boon」1996年(平成8年)2月号(甲第9号証)の2枚目には、胸元や襟首あるいは襟元に引用商標3が付された黒・白・青の色違いの「ダウンジャケット」の写真が掲載されると共に、「昨年、ニューヨークのブラック達の間で大流行したのがブラック・ダウンジャケット。ノースフェイス、マーモットなどアウトドア系のビッグブランドと肩を並べるほど、広く認知されたのが、この『Bear』だ。ブラックダウン大流行のきっかけとなったのは、アメリカの人気音楽番組『MTV』でストリートファッションのマストアイテムとして取り上げられたのが大きな要因。大ヒットしたのは『Bear』のモデル『9100M』。」と記載されている
(イ)「asayan」1996年(平成8年)1月号(甲第21号証の2枚目)には、「ニューヨークで超話題のストリートブランド『Bear』のダウンジャケット」の記載と共に胸元や襟首に引用商標3が付された「ダウンジャケット」の写真が掲載されているほか、「NYの黒人の間で火がつきだしたストリートブランド『ベアー』が日本に緊急上陸。この冬絶対に目の離せないダウンJKになるでしょう。」と記載されている。
(ウ)同誌1996年(平成8年)2月号(甲第21号証の5枚目)には、青色の横長矩形内に引用商標3及び「NEW YORK U.S.A.」の文字が白抜きされており、該矩形の右側には「ベアー」の文字が記載されているほか、それらの下には、胸元に引用商標3が付された「ダウンジャケット」の写真が掲載され、「N.Y.生まれの本格アウトドアブランド」の見出しの下に、「ニューヨーク・ハーレムの『KP』というアウター専門ショップのオリジナルブランドでもあるベアー。昨年ぐらいからN.Y.のブラック達の間で異常に支持され出し、あまりの人気にMTVでも取り上げられるほど。一番人気のダウンウエアの他に、パーカやトレッキングシューズもある本格アウトドアブランドである。」と記載されている。
また、甲第21号証の6枚目には、「NYで超話題のストリートブランド『Bear』ダウンJK&ヘアバンド」の記載と共に引用商標3が付された「ダウンジャケット」及び「ヘアバンド」の写真が掲載されているほか、「NYの黒人の間で火がつきだしたストリートブランド『ベアー』が緊急上陸。前号で好評だったため、今回はヘアバンド4つを追加して大放出。」と記載されている。
(エ)また、日本国内で発行された次の各雑誌には、引用商標5又は6が使用された商品の広告が掲載されている。
(a)「Boon」1996年(平成8年)10月号(甲第26号証)
(b)「COOL TRANS」1998年(平成10年)11月号、同年12月号、1999年(平成11年)1月号及び同年12月号(甲第28号証及び甲第30号証ないし甲32号証)
(c)「streetJack」1998年(平成10年)11月号、同年12月号、1999年(平成11年)1月号及び同年2月号(甲第33号証及び甲第50号証ないし甲第52号証)
(d)「BOYS RUSH」2000年(平成12年)11月号(甲第34号証)
エ さらに、「繊研新聞」には、次のような記事及び広告がある。
(ア)1996年(平成8年)4月8日発行の記事(甲第41号証)
「ベアー・U・S・A社偽物排除へ強硬手段」の小見出しの下に、「米国のベアー・U・S・A社(本社ニュージャージー州)は日本における知的財産権保護の活動を強める。同社のカジュアルブランド『ベアー・U・S・A』の偽物が日本で大量に出回っている事態に対処するため、真正品の対日輸出を今春夏物の期間中はいったん停止する。また広報活動を強めるとともに、偽物業者に対しては法的手段を準備中である。・・・ベアー・U・S・Aは一昨年から販売して以来、米国や日本などで人気を集めているカジュアルウエア。ファッション性と高い品質をそなえ、マーケティング戦略に基づいて各市場に合った商品を販売しているのが好調の理由である。昨秋冬商戦では日本でもダウンジャケットやアウターウエアがヒットした。」と記載されている。
(イ)1996年(平成8年)4月11日発行の全面広告(甲第43号証)
「Bear U.S.A.からの警告」及び引用商標2の表示の下に、「現在日本市場で売られているBear U.S.A.のロゴが付いている商品は全て偽物です。Bear U.S.A.は日本で偽物が氾濫することが予測されましたので、昨年1995年の暮から日本へは一切出荷を停止し、並行輸出に関しても細心の注意を払ってまいりました。依って現在日本市場に出ているBear U.S.A.のラベル及びロゴが付いている商品は全て偽物と言ってもよいかと思います。」と記載されている。
(ウ)1996年(平成8年)4月25日発行の記事(甲第42号証)
「・・・アメリカの『ベアー』など海外人気ブランドの偽物を販売していた業者が摘発された。・・・ベアーの場合は米国のベアーU・S・A社が偽物対策のため、昨年末から日本への出荷を停止し、『現在日本市場に出ている商品はすべて偽物』と警告していた。」と記載されている。
(エ)1997年(平成9年)10月17日発行の広告(甲第40号証)
「この冬、Bearで差をつけろ!!」、「表面5色切替のニューモデル。アメリカで一押のアイテム登場。」の見出しの下に、胸元や襟元に引用商標4及び6を付した「ダウンジャケット」の写真が掲載され、その下にも引用商標6が大きく表示されている。
(オ)1998年(平成10年)8月31日発行の広告(甲第35号証)
「ニセモノにご注意!」の見出しの下に、引用商標6が大きく表示され、さらに、その下に、「今年のBEAR U.S.A.,INC.は、正規品であるという証明を全商品に付けています。」と記載されている。
同旨の広告は、1998年(平成10年)9月8日、同年10月14日発行の同新聞にも掲載されている(甲第36号証及び甲第37号証)。
(カ)1999年(平成11年)8月30日、同年9月6日,同月27日、同年10月5日、同月13日発行の広告(甲第38号証、甲第39号証、甲第44号証ないし甲第46号証)
「BEAR USA社からのお知らせ」の見出しの下に、引用商標6等が表示され、「これら知的所有権を侵害する類似品、偽物については断固たる法的処置を取ります。発注に際しては真正品である証明として下げ札についている3Dホログラムシールを必ずご確認ください。」と記載されると共に、引用商標6を表示したシールの写真が掲載されている。
同旨の広告は、2000年(平成12年)9月25日及び同年10月23日発行の同新聞にも掲載されている(甲第47号証及び甲第48号証)。
(キ)2002年(平成14年)4月2日発行の6頁及び7頁の全面広告(甲第29号証)
6頁には、引用商標6を付したパーカの写真が掲載され、7頁には、引用商標6等を表示して「Bear USA」ブランドの歴史等が紹介されると共に、「“Bear USA”ブランドの模倣品にご注意下さい。」との謹告も掲載されている。
(2)前記(1)アないしエの事実によれば、請求人は、1994年(平成6年)からアメリカ合衆国において引用商標を使用したダウンジャケット等の販売をしてきており、1995年(平成7年)2月にはアメリカ合衆国の人気音楽番組であるMTVにおいて請求人のダウンジャケットが取り上げられ脚光を浴び、引用商標を使用したダウンジャケットは1994年(平成6年)から1995年(平成7年)にかけての秋冬のシーズンにアメリカ合衆国においてヒットし広く知られるようになったこと、日本でも1995年(平成7年)の秋冬物で、引用商標を使用したダウンジャケットやアウターウェアが雑誌等において紹介され、請求人の商品の偽物、類似品が出回るに至るほどの人気を博していたこと、請求人は、1996年(平成8年)ころまでは引用商標3等を使用していたが、1997年(平成9年)ころ以降は、引用商標6を主として使用していること、2002年(平成14年)ころにおいても引用商標6等を使用した宣伝広告が引き続き展開されており、偽物や模倣品が出回っている状況に変化がないことなどが認められる。
以上の事実によれば、引用商標6は、本件商標の登録出願時(平成15年1月15日)において、請求人の業務に係るダウンジャケット等の商品に使用される商標として、アメリカ合衆国はもとより我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものということができる。
2 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記第1のとおり、「USBear」の文字からなるところ、その構成中の「US」の文字が「アメリカ合衆国」の略称として広く知られており、「Bear」の文字も「熊」を意味する平易な英語であることに照らせば、アメリカ合衆国を意味する「US」の文字と「熊」を意味する「Bear」の文字とを組み合わせたものとして容易に認識することができるものであり、構成文字全体に相応して「アメリカ合衆国の熊」の観念を生ずるものである。
他方、引用商標6は、「熊」を意味する「Bear」の文字及び「熊」の図形とアメリカ合衆国を意味する「USA」の文字とを組み合わせたものであるから、構成全体からは「アメリカ合衆国の熊」の観念を生ずるものである。
そうすると、本件商標と引用商標6とは、「熊」を意味する「Bear」の文字とアメリカ合衆国を意味する「US」又は「USA」の文字とを組み合わせた点において極めて類似し、「アメリカ合衆国の熊」の観念を同じくする類似の商標というべきである。
3 被請求人の不正の目的について
(1)本件商標は、前記1及び2のとおり、引用商標6と極めて類似すること、引用商標6は、本件商標の登録出願時にアメリカ合衆国及び我が国における取引者、需要者の間に広く認識されていたこと、被請求人は、昭和62年1月5日に設立された「紳士服・婦人服・子供服の製造販売」、「キャラクター商品の企画、著作権、商標権、意匠権の管理業務」等を目的とする会社(甲第76号証34頁下7行?下3行)であって、請求人と同業者であったことをも総合考慮すると、被請求人が引用商標を知ることなく本件商標を登録出願したとは考え難いものである。
(2)請求人は、前記第2のとおりの引用商標の商標権者である(甲第2号証ないし甲第7号証)。
(3)請求人の提出に係る証拠(甲第53号証ないし甲第62号証及び甲第76号証)及び同人の主張によれば、被請求人は、「被服」等の商品を指定商品とする以下のアないしケの商標を登録出願し、また、コの商標権を譲り受けている。
ア 登録第3340430号商標(被請求人商標1)
商標の構成:USBEAR
登録出願日:平成7年7月17日
設定登録日:平成9年8月15日
更新登録日:平成19年8月21日
指定商品 :第25類「被服」ほか
上記商標登録に対しては、平成18年6月27日に無効審判請求(無効2006-89085号)がされたところ、平成19年9月26日に、この登録商標は商標法第4条第1項第19号に違反してされたから無効である旨の審決がされた。被請求人は、同審決に対して審決取消訴訟を提起したが、同取消訴訟事件(平成19年(行ケ)第10370号:甲第76号証)において請求棄却の判決がされ、同判決は確定したので、上記商標登録は抹消された。
イ 登録第4345622号商標(被請求人商標3)
商標の構成:「USABEAR」の文字と「アズエーベー」の文字を上 下二段に横書きしてなる商標
登録出願日:平成11年2月15日
設定登録日:平成11年12月17日
指定商品 :第25類「被服」ほか
上記商標登録に対して、請求人が、平成13年11月19日に不正使用(商標法第53条第1項違反)を理由とする取消し審判(取消2001-31307号)を請求したところ、その登録を取り消す旨の審決がされた。被請求人は、同審決に対して審決取消訴訟を提起したが、同取消訴訟事件(平成15年(行ケ)第375号)において請求棄却の判決がされ、さらに、その判決に対する上告及び上告受理申立事件において上告が棄却され、上告受理申立てが不受理となったので、取消審決が確定し、上記商標登録は抹消された。
ウ 商願2000-43142号商標(被請求人商標4)
商標の構成:別掲(7)のとおり
登録出願日:平成12年4月21日
指定商品 :第25類「アメリカ製の被服」
上記登録出願に対して、拒絶査定がされ、それに対する不服審判請求(不服2004-22100号)をしたが、不成立審決がされ、拒絶査定が確定した。
エ 登録第4507125号商標(被請求人商標5)
商標の構成:別掲(8)のとおり
登録出願日:平成12年12月1日
設定登録日:平成13年9月14日
指定商品 :第25類「被服」ほか
オ 登録第4536505号商標(被請求人商標6)
商標の構成:別掲(9)のとおり
登録出願日:平成13年2月8日
設定登録日:平成14年1月18日
指定商品 :第25類「被服」ほか
上記エ及びオの商標登録に対しては、平成16年2月24日に無効審判請求(無効2004-35107号及び同第35108号)がされ、平成16年11月30日に、これらの登録商標は、請求人の引用商標6と類似しており、これらの商標登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたから無効である旨の審決がされた。被請求人は、同審決に対して審決取消訴訟を提起したが、同取消訴訟事件(平成17年(行ケ)第10361号及び同第10362号)において請求棄却の判決がされた。さらに、これらの判決に対する上告及び上告受理申立事件において上告が棄却され、上告受理申立てが不受理となったので、無効審決が確定し、上記各商標登録は抹消された。
カ 登録第4646915号商標(被請求人商標7)
商標の構成:別掲(10)のとおり
登録出願日:平成14年2月22日
設定登録日:平成15年2月21日
指定商品 :第25類「アメリカ製の被服」ほか
上記商標登録に対しては、平成17年5月27日に無効審判請求(無効2005-89076号)がされたところ、平成18年5月11日に、この商標登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたから無効である旨の審決がされ、同審決は確定した。その結果、上記商標登録は抹消された。
キ 登録第4762834号商標(被請求人商標8)
商標の構成:別掲(11)のとおり
登録出願日:平成15年1月15日
設定登録日:平成16年4月9日
指定商品 :第25類「被服」ほか
上記商標登録に対しては、平成17年3月2日に無効審判請求(無効2005-89030号)がされたところ、平成17年11月9日に、この商標登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたから無効である旨の審決がされ、同審決は確定した。その結果、上記商標登録は抹消された。
ク 登録第4762838号商標(被請求人商標9)
商標の構成:別掲(12)のとおり
登録出願日:平成15年2月13日
設定登録日:平成16年4月9日
指定商品 :第25類「アメリカ製の被服」ほか
上記商標登録に対しては、平成17年2月24日に無効審判請求(無効2005-89025号)がされたところ、平成17年11月9日に、この登録商標は、引用商標6と類似しており、この商標登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたから無効である旨の審決がされた。被請求人は、同審決に対して審決取消訴訟を提起したが、同取消訴訟事件(平成17年(行ケ)第10833号)において請求棄却の判決がされ、同判決は確定したので、上記商標登録は抹消された。
ケ 登録第4768545号商標(被請求人商標10)
商標の構成:別掲(13)のとおり
登録出願日:平成15年6月27日
設定登録日:平成16年4月30日
指定商品 :第25類「被服」ほか
上記商標登録に対しては、平成17年3月16日に無効審判請求(無効2005-89039号)がされたところ、平成17年10月31日に、この商標登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたから無効である旨の審決がされた。被請求人は、同審決に対して審決取消訴訟を提起したが、同取消訴訟事件(平成17年(行ケ)第10829号)において請求棄却の判決がされ、同判決は確定したので、上記商標登録は抹消された。
コ 登録第4137882号商標(被請求人商標2)
商標の構成:別掲(6)のとおり
登録出願日:平成9年1月21日
設定登録日:平成10年4月17日
指定商品 :第25類「被服」ほか
被請求人は、上記商標登録に係る商標権を平成12年5月17日に譲り受けた。上記商標登録に対して、請求人が、平成17年10月7日に不正使用(商標法第53条第1項違反)を理由とする取消し審判(取消2005-31237号)を請求したところ、平成20年9月25日に、その登録を取り消す旨の審決がされ、同審決が確定した。その結果、上記商標登録は抹消された。
(4)被請求人商標1及び3ないし10は、前記1(1)、3(2)及び(3)の認定事実によれば、引用商標を使用した商品がアメリカ合衆国でヒットし、我が国でも広く知られ、その偽物が氾濫したために、請求人が模倣品対策として日本への出荷停止措置を執ったこと(甲第41号証)、偽物が摘発されたこと(甲第42号証)が新聞で報道され、偽物についての警告広告が新聞に掲載(甲第29号証、甲第35号証ないし甲第39号証及び甲第43号証ないし甲第48号証)された前後である平成7年7月から平成15年6月にかけて、順次、登録出願し、拒絶査定が確定している被請求人商標4を除き登録を受け、さらに、平成12年5月に、被請求人商標2に係る商標権を譲り受けたことが認められる。
また、被請求人は、最初に、「USBEAR」の文字のみからなる被請求人商標1を出願し、次いで、別掲(6)のとおりの黒塗りの熊の図形からなる被請求人商標2に係る商標権を譲り受け、さらに、「熊」の図形と「USABEAR」、「USBEAR」、「USBear」、「USBeaR」又は「USA」の文字とを組み合わせた別掲(7)ないし(13)のとおりの構成からなる被請求人商標4ないし10を登録出願しており、しかも、これら被請求人商標は、「熊」の図形と文字の配置及び輪郭線を引用商標とほぼ同様にするなど、引用商標の構成、態様を模倣し、徐々に引用商標に似せたものといわざるを得ない。
(4)被請求人は、平成7年ころ、被請求人商標1をTシャツやポロシャツに付して販売していたが、平成8年ころから広く知られたブランドに類似する標章の使用を他社に許諾して、その代金を得ることを業とするようになり、自ら商品を製造販売することはなくなった(甲第76号証35頁6行?11行)。
そして、被請求人は、被請求人商標3に関する岐阜武との平成12年1月24日付け「商標使用許諾契約書」(甲第64号証)において、使用許諾の対象である商標の態様として被請求人商標3の構成中の「アズエーベー」の文字を削除し「USABEAR」と表示していたほか、岐阜武に対する商標権侵害差止等請求事件「岐阜地方裁判所平成15年(ワ)第62号」において提出された平成12年4月21日付けの「見解書」に添付された登録第4345622号に係る「商標登録証」(甲第66号証)には、被請求人商標3の構成中、「アズエーベー」の文字が削除された「USABEAR」の文字のみが表示されていることが認められ、かかる「商標登録証」は、偽造したものといわざるを得ない。
また、甲第69号証(「新ブランドのご案内」と題する書面)に添付された「ブランドライセンスリスト」には、商標の構成の一部に著名な商標を取り込み、著名商標にフリーライドする目的とみられるような商標が多く掲載されており、これらの商標の中には、商標法第4条第1項第7号該当等を理由として、取消決定や無効審決によってその登録が抹消されたものが複数ある(商標登録第4101024号「ILANCELI」、商標登録第4101020号「IDUNHILI」など)。なお、上記「ブランドライセンスリスト」には、本件商標と類似すると認められる商標も複数掲載されており、被請求人は、本件商標についても使用許諾の対象としていたことがうかがわれる。
(5)本件商標とつづり字を同じくする「USBEAR」の文字からなり、本件商標の指定商品とほぼ同一の商品を指定商品とする登録第3340430号商標(被請求人商標1)について、本件と同一の当事者間で争われた無効審判(無効2006-89085号)において、請求人から本件とほぼ同様の主張及び立証がされた結果、前記(3)アのとおり、上記登録商標の登録を無効とする審決がされ、同審決の取消しを求めた審決取消訴訟(平成19年(行ケ)第10370号)において、「原告(審決注:本件被請求人)には『不正の目的』があったということができる。」旨を判示して原告の請求を棄却した判決が確定している(甲第76号証)。
(6)以上を総合すると、被請求人は、本件商標と類似する引用商標6の著名性にただ乗り(フリーライド)し、引用商標に化体した請求人の信用を利用して利益を得るために、本件商標の登録出願をしたものと優に推認することができるから、被請求人には「不正の目的」があったものというべきである。
4 むすび
以上によれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用商標2


(2)引用商標3


(3)引用商標4


(4)引用商標5


(5)引用商標6


(6)被請求人商標2


(7)被請求人商標4


(8)被請求人商標5


(9)被請求人商標6


(10)被請求人商標7


(11)被請求人商標8


(12)被請求人商標9


(13)被請求人商標10


審理終結日 2010-03-25 
結審通知日 2010-03-30 
審決日 2010-04-12 
出願番号 商願2003-2092(T2003-2092) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 浩子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
酒井 福造
登録日 2004-04-09 
登録番号 商標登録第4762835号(T4762835) 
商標の称呼 ユウエスベア、ベア 
代理人 宮嶋 学 
代理人 宮城 和浩 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 塩谷 信 
代理人 高田 泰彦 
代理人 小泉 勝義 
代理人 吉武 賢次 

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