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審決分類 審判 一部取消 商標の同一性 無効としない Y41
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y41
管理番号 1218207 
審判番号 取消2008-300872 
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-07-14 
確定日 2010-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4859399号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4859399号商標(以下「本件商標」という。)は、「BLUE NOTE」及び「ブルーノート」の各文字を上下2段に横書きしてなり、平成15年12月26日に登録出願され、別掲に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成17年4月22日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成20年7月31日にされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標に係る指定役務中「第41類 映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,及びこれらに類似する娯楽の提供」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、第41類の指定役務「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,及びこれらに類似する娯楽の提供」につき継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって使用された事実が存しないものであるから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。また、本件商標の商標登録原簿謄本(甲第1号証)によれば、専用使用権者、通常使用権者の設定登録はなされていない。
(2)答弁に対する弁駁
下記のアないしカに述べる理由により、被請求人提出の使用証拠は、本件商標の使用の証明足り得ない。
また、被請求人が答弁書中で「使用に係る商標(使用商標)」と称している表示中「BLUE NOTE(ブルーノート)」の語は商標的に使用されているものではなく(この点を考慮して、以下では被請求人が言及する「使用商標」を「使用表示」という。)、さらに、本件商標と使用表示は社会通念上同一とはいえない。この点については、下記キ及びクで詳述する。
ア 乙第1号証について
被請求人は、乙第1号証において、2007年12月開催の音楽イベント「BLUE NOTE STREET Festival」に係る宣材物の写しを提出している。
被請求人は「BLUE NOTE STREET Festival」を「音楽ツアー」と呼んでいるが、どのようなイベントなのか明らかでない。仮に「音楽に関するイベント」であったとしても、乙第1号証からは上記イベントに関する宣材物のようなものが作成されたことはうかがえても、それが実際に頒布された事実は何ら立証されていない。実際に頒布されていなければ、商標法上の「商標の使用」があったとはいえない。
また、乙第1号証では、上記イベントが実際に開催された事実も何ら立証されていない。
さらに、乙第1号証には主催者の記載がないので、株式会社EMIミュージック・ジャパンが「BLUE NOTE STREET Festival」なるイベントを行っている事実が証明されていない。
また、株式会社EMIミュージック・ジャパンが本件商標の通常使用権者であることの立証もなされていない。
よって、乙第1号証は、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の通常使用権者により、「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」について使用されていることの証明にはならない。
イ 乙第2号証について
被請求人は、乙第2号証において、乙第1号証で述べられている「BLUE NOTE STREET Festival」のライブ会場の模様を撮影した写真を提出している。
しかし、撮影年月日が示されておらず、また、ほかに乙第2号証の写真が2007年12月に行われた上記イベントのライブ会場の模様を表していることを証明する要素は何もない。
よって、乙第2号証は、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標が使用されていることの証明にはならない。
ウ 乙第3号証について
被請求人は、乙第3号証において、「BLUE NOTE STREET Festival」のウェブサイトのプリントアウトを提出している。
しかし、主催者の記載がないので、株式会社EMIミュージック・ジャパンが行ったイベントかどうか明らかでない。そもそも株式会社EMIミュージック・ジャパンが本件商標の通常使用権者であることの立証もなされていない。
さらに、乙第3号証は、本件審判請求後の2008年10月22日にプリントアウトされたものであり、本件審判の請求の登録前3年以内に上記イベントの広告として同ウェブサイトが存在していたこと及び上記イベントが実際に開催されたことの客観的証拠性に欠ける。
よって、乙第3号証は、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の通常使用権者により、「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」について使用されていることの証明にはならない。
エ 乙第4号証について
被請求人は、乙第4号証において、音楽イベント「BAR BLUE NOTE RVG」に係る宣材物の写しを提出し、「BAR BLUE NOTE RVG」との名称のもと、2008年6月20日より、東京において、JAZZレーベル「BLUE NOTE」を視覚的に、また聴覚的にも楽しめる興行の企画・運営を行っている旨主張している。
しかし、乙第1号証と同様に、上記興行に関する宣材物のようなものが作成されたことはうかがえても、それが実際に頒布された事実及び同興行が実際に開催された事実も何ら立証されていない。
また、以下に述べるとおり、上記「興行」は「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」には該当しない。
(ア)答弁書中の「JAZZレーベル『BLUE NOTE』を視覚的に、また聴覚的にも楽しめる興行」なる被請求人の記述からは、視覚的に楽しむことを主目的とする興行であることがうかがえる。
(イ)乙第4号証の写真には「ビールやワインなどを飲みながら展示されているレコードジャケットを見ている複数の人」が写っているが、音楽が演奏されている様子はない。また、乙第4号証の2頁目には、「?史上最強のJAZZレーベル“BLUE NOTE”の名盤の数々を目と音で楽しむ大人の空間?」なる記述がある。
(ウ)乙第4号証の2頁目には、「秘蔵映像・音源(期間限定)・週代わりのリスニング・プログラムなどをストリームで展開します。」との記述があることから、実際に音楽の演奏がなされていないことがうかがえる。
(エ)興行の名称に「酒場」「飲み屋」を意味する「BAR」の文字が含まれており、アルコールなどの飲食物の提供を行う興行であることが推測される。ちなみに、丸の内ハウスのウェブサイトを調べたところ、同様に「BAR」が入っている興行「CAMPARI red passion Bar」が開催されているが(甲第2号証)、同興行は明らかに「アルコール飲料を含む飲食物の提供」を行っていることが分かる。
(オ)開催場所が「新丸ビル7F 丸の内ハウス アトリエルーム」とあるが、「アトリエ」とは「工房。画家・美術家・工芸家・建築家などの芸術家が仕事を行うための専用の作業場のこと。」を指すフランス語であり、美術品・工芸品などの展示に用いられるものである。
上記(ア)ないし(オ)にかんがみれば、「BAR BLUE NOTE RVG」なる興行は、アルコールなどを飲食しながら展示されているJAZZレーベル「BLUE NOTE」の名盤を観て、流れている「BLUE NOTE」の音楽を聴いて楽しむことを目的とする興行であり、主たる目的は「観ること」と「飲食すること」にあると推測される。
また、上記興行はBLUE NOTEのRVG(ルディ・ヴァン・ゲルダー)のコレクションの発売記念・キャンペーンとして行われたものと推測される。これは「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」なる役務を提供するものではなく、「レコードやCD」という商品の販売促進のための宣伝・広告活動にすぎない。
よって、乙第4号証は、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の通常使用権者により、「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」について使用されていることの証明にはならない。
オ 乙第5号証について
乙第5号証は、被請求人が平成20年9月22日に開催されたと主張する音楽フェスティバルに関する宣材物の写しであるところ、同宣材物が実際に頒布された事実及び同フェスティバルが実際に開催された事実も何ら立証されておらず、さらに、本件審判請求後に関するものであるので、本件審判の審理に斟酌されるべきではない。
カ 乙第6号証ないし乙第8号証について
被請求人は、乙第6号証ないし乙第8号証を提出し、イギリスのEMIグループの一部であり、日本においては、やはり同グループ所属のレコード会社である「株式会社EMIミュージック・ジャパン」が「BLUE NOTE」レーベルについての通常使用権者となっていると主張している。
しかし、被請求人と株式会社EMIミュージック・ジャパンが同グループに所属しているからといって直ちに株式会社EMIミュージック・ジャパンが通常使用権者となるというのは根拠に欠ける主張である。乙第6号証ないし乙第8号証からは、被請求人が株式会社EMIミュージック・ジャパンに本件商標の使用を許諾していることを示すような事情は何ら見いだせない。
したがって、株式会社EMIミュージック・ジャパンが本件商標の通常使用権者であるとの被請求人の主張は失当である。
キ 商標的に使用されていないこと
使用表示に「BLUE NOTE(ブルーノート)」の語が含まれていることは認める。しかし、使用表示中の「BLUE NOTE(ブルーノート)」の語は商標的に使用されているものではない。
(ア)被請求人の答弁書には「著名な音楽レーベルである『ブルーノート』の楽曲を演奏する・・・」「JAZZレーベル『BLUE NOTE』を・・・」などの記載がある。
(イ)乙第4号証には、「?史上最強のJAZZレーベル“BLUE NOTE”の名盤の数々を目と音で楽しむ大人の空間?」、「1939年に創立され、ジャズの代名詞ともなっている世界最高のジャズ・レーベル『ブルーノート』」などの記載がある。
(ウ)乙第6号証には、「ジャズ最大手レーベルブルーノート・・・」なる記載がある。
(エ)乙第8号証には、「ブルーノートレーベル70周年記念企画スタート!<あなたの好きなブルーノートの楽曲リクエスト募集>・・・」なる記載がある。
上記被請求人提出の証拠及び主張から、「BLUE NOTE(ブルーノート)」はアルフレッド・ライオン氏が創った著名なジャズのレーベルであることが明らかである(甲第3号証)。
したがって、たとえ、被請求人が乙第1号証ないし乙第4号証を提出して言及する「BLUE NOTE STREET Festival」及び「BAR BLUE NOTE RVG」なる興行が音楽の演奏を含むものであって、それらの興行が実際に開催されていたとしても、「BLUE NOTE」なる語は、そこで演奏/紹介されている楽曲が著名なジャズレーベル「BLUE NOTE(ブルーノート)」であること、すなわち役務の内容・質を記述するものにすぎない。
とすれば、使用表示中の「BLUE NOTE(ブルーノート)」の語は、自己の役務と他人の役務を区別させる識別標識として使用されているとはいえない。さらに、「BLUE NOTE(ブルーノート)」は、その役務の出所(提供者)を特定する機能(出所表示機能)を発揮するものでもない。
かかる自他役務識別機能及び出所表示機能を有さないような態様での使用は、商標的使用といえないことが明らかである。
したがって、使用表示中に「BLUE NOTE(ブルーノート)」の語が含まれているとしても、これをもって本件商標が「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」について使用されていることの証明にはならない。
ク 本件商標と使用表示は同一とはいえないこと
本件商標は、「BLUE NOTE」と「ブルーノート」を上下2段に書してなるものである。一方、被請求人の答弁書からは、乙第1号証ないし乙第4号証(乙第5号証は上述のように本件審判の審理に斟酌されるべきではないから除外する。)の表示のいずれを使用に係る商標と称しているのか明らかではないが、少なくとも「BLUE NOTE」と「ブルーノート」を二段併記で使用されている例はない。また、乙第1号証の使用表示「BLUE NOTE STREET Festival」は「ジャズレーベルBLUE NOTEの音楽祭」、乙第3号証の使用表示「BLUE NOTE STREET Release Tour」は「ジャズレーベルBLUE NOTEのアルバム等のリリースのためのツアー」、乙第4号証の使用表示「BAR BLUE NOTE RVG」は「ルディ・ヴァン・ゲルダーが手掛けたジャズレーベルBLUE NOTEの音楽を楽しむ酒場」といったように全体として特定の意味を有するものであり、いずれも本件商標とは社会通念上同一とはいえない。
被請求人は、使用商標の要部は「BLUE NOTE」ないしは「ブルーノート」の文字部分である旨を主張しているが、審判請求対象の指定役務中「音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」との関係において「BLUE NOTE」は役務の内容を表すものであり、自他役務識別力及び出所表示機能を有しないことは前述のとおりであって、使用表示中の「BLUE NOTE」ないしは「ブルーノート」のみが要部とはなり得ない。
また、被請求人は、「使用商標は、当該文字部分に相応して『ブルーノート』の称呼を生じるものである。一方、本件商標も、『BLUE NOTE』の文字と『ブルーノート』とを上下2段に書してなるものであるから、使用商標と同様に『ブルーノート』の称呼を生じるものである。したがって、本件商標と使用商標とは、特許庁のガイドラインに従えば、社会通念上同一と認められるものである。」と主張している。
しかし、上記のように「BLUE NOTE」が使用表示の要部ではないこと、及び、2段書きの登録商標とその上段又は下段の文字単独の使用商標が、称呼が同一であるからといって社会通念上同一と認められるべきとはいえないこと等にかんがみれば、かかる主張は認められない。また、被請求人の主張する特許庁のガイドラインとは具体的に何を指すのか、また、どのようなガイドラインであるのかの説明もない。したがって、本件商標と使用表示は、商標法第50条第1項に規定する社会通念上同一の商標とはいえない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
(1)本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の通常使用権者である株式会社EMIミュージック・ジャパン(以下「本件通常使用権者」ということがある。)により、本件審判に係る指定役務中の「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」について使用されている。
本件商標の使用に関しては、乙第1号証として提出した宣材物の写しからも明らかなとおり、本件通常使用権者によって、少なくとも2007年12月9日、21日、29日の3回にわたり、それぞれ福岡、東京、大阪において、“BLUE NOTE STREET Festival”とのツアー名称のもと、音楽ツアーが行われている。
同ツアーについては、乙第2号証として提出するライブ会場の模様、乙第3号証として示すコンサート・ツアーのウェブ広告にも見られるように、日本のアーティストが、著名な音楽レーベルである『ブルーノート』の楽曲を演奏するということで非常に話題になったツアーである。
2008年においても、乙第4号証として示す宣材物の写しのとおり、本件通常使用権者は、「BAR BLUE NOTE RVG」との名称のもと、6月20日より、東京において、JAZZレーベル「BLUE NOTE」を、視覚的に、また聴覚的にも楽しめる興行の企画・運営を行っている。
さらに、本件審判の請求の登録後になるが、平成20年9月22日にも、本件通常使用権者は、「BLUE NOTE JAZZ FESTIVAL」との名称のもと、音楽フェスティバルを開催しており(乙第5号証)、これらの事実は、通常使用権者が、本件審判請求に係る指定役務について、継続的に本件商標を使用していることの証左である。
また、使用に係る商標(以下「使用商標」という)は、英語表記の「BLUE NOTE」の文字又は「ブルーノート」の文字であり、それらに付随して「FESTIVAL」等の文字が付されている場合もあるが、例えば「FESTIVAL」、「フェスティバル」の語は、役務「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」との関係において、一連の音楽祭を表すものとして普通に用いられていること、また、「JAZZ」の語が音楽の一ジャンルを表すものとして普通に用いられていることなどから、それらの語自体は、上記役務との関係において自他役務識別力を有しないものであり、その結果、使用商標の要部は前記「BLUE NOTE」ないしは「ブルーノート」の文字部分であるといえる。したがって、使用商標は、当該文字部分に相応して、「ブルーノート」の称呼を生じるものである。一方、本件商標も、「BLUE NOTE」の文字と「ブルーノート」とを上下2段に書してなるものであるから、使用商標と同様に「ブルーノート」の称呼を生じるものである。したがって、本件商標と使用商標とは、特許庁のガイドラインに従えば、社会通念上同一と認められるものである。
最後に、被請求人「キャピトル レコーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー」は、イギリスのEMIグループの一部であり、日本においては、やはり同グループ所属のレコード会社である「株式会社EMIミュージック・ジャパン」が「BLUE NOTE」レーベルについての通常使用権者となっている(乙第6号証ないし乙第8号証)。
よって、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件通常使用権者が、本件審判に係る指定役務中の「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏及びこれらに類似する娯楽の提供」について、本件商標を使用していたことは明らかである。

4 当審の判断
(1)本件商標権一部取消審判の請求に係る指定役務について
審判長は、平成21年4月27日付けで「本件審判請求書の『請求の趣旨』に記載された取消請求に係る指定役務中『・・・及びこれらに類似する娯楽の提供』とは、どのような指定役務を意味するのか(「これら」とは何を指すのか。「類似する娯楽の提供」とは何を意味するのか。)、その内容・範囲が不明確なものであって、審理の対象となる指定役務を特定できないものといわざるを得ない。したがって、当該『(及び)これらに類似する娯楽の提供』とは、どのような指定役務であるのか釈明されたい。」との審尋を行ったところ、請求人は、同年5月20日付けの回答書により「請求人は、『映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏』について、本件商標に類似する商標の出願を検討している。特許庁商標課編『類似商品・役務審査基準〔国際分類第9版対応〕』によれば、該役務は、類似群コード[41E01,41E03]に属する役務である。したがって、請求人は、本件商標登録の類似群コード[41E01,41E03]に属する全ての指定役務について取り消すことを希求している。本件登録に係る指定役務中には『映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏』の他に『娯楽の提供』が含まれている。『娯楽の提供』には[41E01,41E03]を含む多数の類似群コードが付与されており、該役務は、第41類の様々な役務を包含する表現である。仮に、『娯楽の提供』を取消の対象にするならば、請求人が望んでいない[41E01,41E03]以外の類似群コードに属する役務についての本件商標の使用証拠を被請求人に提出されるおそれがある。また、『娯楽の提供』自体第41類の様々な役務を包含する役務であり、この中に[41E01,41E03]に属する役務としてどのような具体的な役務が含まれているか特定するのは非常に困難である。かかる状況下、請求人はやむを得なく『(及び)これらに類似する娯楽の提供』と記載したものであり、該表示は、『娯楽の提供』の中でも類似群コード[41E01,41E03]に属する役務に限定する趣旨で記載したものである。」旨の釈明を行った。
これについて、当審判体は、請求人の上記釈明のとおり、「娯楽の提供」の役務中における「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」と類似する役務を具体的に過不足なく正確に表示することは困難であり、一方、取消請求に係る指定役務の表示で、指定役務の内容を理解、把握し得ると判断して、本件の請求に係る指定役務を、審判請求書の「請求の趣旨」に記載のとおり、「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,及びこれらに類似する娯楽の提供」として、審理を進めることとした。
(2)被請求人の提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第1号証には、上部に、地球を模したと思しき図の中央の円形内にやや図案化された「BLUE」、「NOTE」及び「STREET」の文字を三段に表したものを配し、また、その右側上方に、楕円及び横長四角形と共に「BLUE NOTE」の文字が表示されている。また、その中央部に「BLUE NOTE STREET Festival」「2007.12.21.FRI@AIR」との表示があり、下部に、「BLUE NOTE STREET Release Tour」の表示があり、その下に、「FUKUOKA」「2007.12.9.SUN@CROSSING HALL」及び「OSAKA」「2007.12.29.SUN@NOON」と表示されている。なお、他の表示中には、ディスクジョッキーを示すと認められる「DJ」の文字と人名が記載されているが、その他の記載の内容は必ずしも定かではない。
イ 乙第2号証として3葉の写真が示されており、その1枚目には、ディスクジョッキーが操作をし、観客がそれを聴いている風景が写っている。2枚目には、操作をしているディスクジョッキーが写し出されており、背景壁面に「ブルーノート・ストリート」の文字が表されたポスターが貼られているのが認められる。3枚目には、無人のステージ風の場面が写されており、その中央に、楕円及び横長四角形と共に「BLUE NOTE」の文字が表示されているのが認められる。なお、写真には、撮影時期を示す記載等は見いだせない。
ウ 乙第3号証は、ウエブ画面の打ち出しと認められるところ、そこには、「[News]30 Nov 2007」として、「『Blue Note Street Release Tour』が来週より」との記載があり、「■Party Imformation」の項には「Blue Note Street Release Tour」として、「2007/12/09(Sun)@クロッシングホール(福岡)」、「2007/12/21(Fri)@AIR(代官山)」及び「2007/12/29(Sat)@NOON(大阪)」などの記載がされている。そして、下部には、地球を模したと思しき図の中央の円形内にやや図案化された「BLUE」、「NOTE」及び「STREET」の文字を三段に表したものが示されており、これの説明と認められる「■Disc Imformation」として、「V.A.『Blue Note Street』」「2007.11.21 On Sale」との記載がある。
エ 乙第4号証は、請求人が、本件通常使用権者の行った興行の企画・運営の宣材物を示すとするものであり、その1葉目には、左側上部から順に「BAR BLUE NOTE RVG」、「2008年6月20日(金)?7月4日(金)17:00?24:00」、「丸の内ハウス アトリエルーム」、「東京都千代田区1-5-1 新丸ビル7F」及び「エントランスフリー」と記載され、その下方に、黒塗りの楕円、「エントランスフリー」の文字の右側に黒塗りの横長四角形を配し、そして、横長四角形の下部に「BLUE NOTE」の文字が大きく表されている。さらに、それらの下方には、「主催:株式会社EMIミュージック・ジャパン」、「特別協力:三菱地所株式会社 ソニーマーケティング株式会社、金沢工業大学PMC 日本ヒューレッド・パッカード株式会社 東京リスマチック株式会社」及び「INFORMATION - Marunouchi House 03-3211-9311 コンシェルジュカウンター www.marunouchi-house.com」との表示がある。
そして、同号証2葉目には、「BAR BLUE NOTE RVG」のタイトルの下、「?史上最強のJASSレーベル“BLUE NOTE”の名盤の数々を目と音で楽しむ大人の空間?」との記載が認められ、下部に、「【BLUE NOTE J@ZZ FESTIVAL】」、「6月25日からEMIでは『BLUE NOTE J@ZZ FESTIVAL』を開催。」及び「秘蔵映像・音源(期間限定)・週がわりのリスニング・プログラムなどをストリームで展開します。」との記載がされている。さらに、中央部には、演奏者らと思しき人物の写真4枚とともに、黒塗りの楕円及び黒塗りの横長四角形を左方と上方に配した「BLUE NOTE」の文字が表示されている。
また、同号証3葉目には、壁面に多数のジャズのレコードジャケットが貼り付けられ、飲み物を飲みながらそれらを鑑賞する人達が写された写真が示されている。
オ 乙第5号証は、請求人が、平成20年9月22日に本件通常使用権者が音楽フェスティバルを開催していることを示し、継続的に本件商標を使用していることの証左であるとするものであるが、本件審判の請求の登録後の事実を示すものと認められる。
カ 乙第6号証は、「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」における「キャピトル・レコード」に係る記載(抜粋)であり、「キャピトル・レコード(Capitol Records)は、アメリカのロス・アンジェルスに本社を置く大手レコードレーベルの一つで、1942年に設立された。現在はイギリスのEMIグループの一部である。・・・ジャズ最大手レーベル、ブルーノートの親会社である他、ユナイテッド・アーティスツ、リバティ、インペリアルといったかつての有名レーベルの音源を保有している。」との記載がある。
キ 乙第7号証及び乙第8号証は、「株式会社EMIミュージック・ジャパン」のウェブサイトの抜粋と認められ、乙第7号証には、「Capitol RECORDS」のタイトルの下、「・・・55年にEMI傘下に入る。」など記載されている。また、乙第8号証には、「BLUE NOTE」に係る紹介の記載がされている。
(3)上記(2)において認定した事実によれば、乙第4号証に表示のイベントの開催日が2008年6月20日ないし同年7月4日であることから、少なくとも、これは、本件審判の請求の登録前3年以内の期間内に該当すると認められるものである。
そして、乙第4号証の1葉目及び2葉目は、「BAR BLUE NOTE RVG」の名称で「2008年6月20日?7月4日 17:00?24:00」の日程により「丸の内ハウス アトリエルーム(東京都千代田区1-5-1 新丸ビル7F」において、「株式会社EMIミュージック・ジャパン」の主催で開催される音楽イベントの宣材物(ちらしの類)の写しであると認められる。
以上によれば、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において「株式会社EMIミュージック・ジャパン」が主催する音楽イベントが開催され、その宣材物が作成、頒布されていたことが推認し得るところである。
(4)使用に係る商標について
本件商標は、「BLUE NOTE」及び「ブルーノート」の文字を上下2段に横書きしてなるものであり、構成文字に相応して、「ブルーノート」の称呼及び「青いノート」の観念が生じるものと認められる。
これに対して、前記(2)エにおいて認定した乙第4号証における使用に係る商標についてみると、楕円を左側に配し、また、横長四角形を上部に配して、「BLUE NOTE」の文字を表してなるものと認められる。そして、当該図形と文字とは一体不可分に結合したとみなければならないものではなく、むしろ図形部分は付記付飾として受けとめられるものといえるから、「BLUE NOTE」の文字が独立して自他役務の識別機能を果たし得るものというべきである。
しかして、上記使用に係る商標は、「BLUE NOTE」を要部とするものであり、当該文字は、本件商標とその構成中の欧文字部分を共通にし、「ブルーノート」の称呼及び「青いノート」の観念を同一にするものといえる。
したがって、上記使用に係る商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができるものである。
この点に関して、請求人は、「BLUE NOTE」が役務の質や内容を表す文字であるから、使用表示中の「BLUE NOTE」の語は商標的に使用されているものではない旨主張するが、「BLUE NOTE」は元来レコード・レーベルとして通用したものであるうえ、これが特定の役務の質や内容を表わすものであると断じ得る証左はない。
(5)使用に係る役務について
本件において取消請求に係る指定役務は「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,及びこれらに類似する娯楽の提供」であるところ、前記(2)における本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用に係る役務をみると、前記(2)エは、会場でレコードから流れる音楽を聴取させ、会場に展示掲載されたジャズのレコードジャケットを鑑賞させ、併せて飲み物をも提供する役務と認められる。該役務は、主目的が「レコードを聴かせること」、「レコードジャケットを見せること」及び「飲食をさせること」のいずれかであるかは明らかではないが、ジャズ・レーベルを「視覚的に、また聴覚的にも楽しめる興行」であるといい得るものであり、楽器を奏で楽曲を演奏する「音楽の演奏」そのものの提供や「音楽の演奏の興行の企画又は運営」としてみることもできないとしても、「音楽の演奏の興行の企画若しくは運営又は音楽の演奏に類似する娯楽の提供」の範ちゅうに含まれる役務ということができる。
(6)「株式会社EMIミュージック・ジャパン」が本件の通常使用権者であることについて
被請求人と株式会社EMIミュージック・ジャパンとの関係については、証拠(乙第6号証ないし乙第8号証)によれば、被請求人はイギリスのEMIグループの構成法人であることが認められ、また、株式会社EMIミュージック・ジャパンもEMIグループの構成法人であると推認し得るところである。そして、通常使用権の許諾は、口頭ないしは黙示の意思表示でも足りるものと解されており、被請求人の答弁書における主張等を併せみれば、被請求人は、株式会社EMIミュージック・ジャパンに本件商標権についての通常使用権を許諾していたものとみるのが相当である。
(7)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者と認められる者によって、本件審判の請求に係る指定役務に含まれる「音楽の演奏の興行の企画若しくは運営又は音楽の演奏に類似する娯楽の提供」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標の登録は、その取消請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
【本件商標に係る指定商品及び指定役務】
第9類「双方向型のコンピュータソフトウェア,未記録のカセットテープ,DVD-ROM,ダウンロード可能なデジタル音楽,MP3プレーヤー,MP3インターネットウェブサイトから提供されるダウンロード可能な音楽,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ,業務用テレビゲーム機,レコード,録音済みコンパクトディスク,録音済みカセットテープ,録画済みDVD,電子出版物」
第35類「広告,市場調査,経営の診断又は指導,経営に関する助言,商品の販売に関する情報の提供,自動販売機の貸与」
第41類「娯楽の提供,録音用スタジオの提供,オンラインによる電子出版物(ダウンロードできないもの)の提供,コンピュータデータベース・インターネット又は無線・ケーブル・衛星その他の通信網を介した電子ゲームの提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」
第42類「ウェブサイトの作成又は保守,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」

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審理終結日 2010-03-16 
結審通知日 2010-03-19 
審決日 2010-03-30 
出願番号 商願2003-116130(T2003-116130) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y41)
T 1 32・ 11- Y (Y41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 孝 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
酒井 福造
登録日 2005-04-22 
登録番号 商標登録第4859399号(T4859399) 
商標の称呼 ブルーノート 
代理人 青木 篤 
代理人 竹内 耕三 
代理人 森田 俊雄 
代理人 田島 壽 
代理人 野田 久登 
代理人 深見 久郎 
代理人 山崎 行造 
代理人 原 隆 
代理人 杉山 直人 

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