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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
管理番号 1216463 
審判番号 無効2008-680003 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-07-04 
確定日 2010-01-22 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第896763号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 国際登録第896763号商標の指定商品中、第5類「Pharmaceutical preparations for reducing skin temperature,relieving hot flushes,treating prickly heat,treating itchy,irritated skin and skin rashes,treating burns,all by cooling the skin;all supplied in aerosol form,all included in this class.」については、その登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第896763号商標(以下「本件商標」という。)は、「COOLEVE」の欧文字を書してなり、2005年10月7日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して2006年(平成18年)3月30日に国際商標登録出願、第3類に属する「Cosmetic preparations for cooling the body;preparations for sun tanning,sun screening,ultraviolet absorption;deodorants,antiperspirants,fragant preparations;all supplied in aerosol form,included in this class.」及び第5類に属する「Pharmaceutical preparations for reducing skin temperature,relieving hot flushes,treating prickly heat,treating itchy,irritated skin and skin rashes,treating burns,all by cooling the skin;all supplied in aerosol form,all included in this class.」を指定商品として、平成19年11月22日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証(枝番号を含む。)を提出している。
請求の理由
1 商標法第4条第1項第11号の該当性について
本件商標は、第5類「薬剤」に属する商品を指定商品として登録されたものである。
本件商標をその構成どおりに発音するときは「クールイブ」の称呼が生じる。
しかしながら、「COOL/クール」の語は「冷たい、涼しい」といった意味のすでに日本語化した言葉であり、物の性質、状態等を修飾する語として用いられるものである。本件商標において、「COOL」と「EVE」との結合には何らの必然性はなく、その結合によって特別の観念が生じるものではない。
そして、「薬剤」の分野には、すでに「EVE/イブ」、「イブ」、「EVE」(甲第2号証ないし甲第4号証)が著名商標として存在しているのであるから、かかる商標が著名商標「EVE」が使用されるのと同種の商品に使用されるときは、取引者、需要者はすでに著名な「EVE」との関係で、「COOLEVE」は請求人の製造販売にかかる「EVE」の一種であり、その効果に「冷たい、涼しい」といったような涼感効果を伴うものを指すかのごとく認識する可能性が高い。
事実、本件商標の指定商品の表示を見てみると「皮膚温を下げる・・・」といったような表示が為されており、「COOL」の部分はその商品の持つ効能説として用いられていることが分かる。
してみれば、本件商標のような商標が、請求人の著名商標が用いられているのと同種の「鎮痛・解熱剤」及び「総合感冒薬」について使用されるときは勿論として、その他の「薬剤」について使用されるときも、取引者、需要者に対し上述の認識を与えるおそれが極めて高い。
したがって、本件商標は、請求人の著名商標と要部において同じであり、商標法第4条第1項第11号に該当するものと言わねばならない。
2 商標法第4条第1項第15号の該当性について
審判請求人の著名商標「EVE」、「イブ」は、昭和60(1985)年に「鎮痛・解熱剤」に使用されて以来、22年以上もの長きにわたり「鎮痛・解熱剤」に使用されてきたものである。特に、「鎮痛・解熱剤」と「総合感冒薬」については、請求人の著名登録商標となっている。
この事実は後述の特許庁の異議決定及び無効審判の審決(甲第14号ないし甲第17号証)等においても認定されており、客観的事実である。
よって、本件商標のごとく、「EVE」を主要部として成る商標は、需要者に対し請求人の著名商標との関連性、共通性をアピールするものであり、「薬剤」関係に使用されるときは、請求人の著名商標、著名商品との関連性を想起せしめるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号の「出所の混同」を生じるおそれのある商標にも該当する。
3 請求人が引用する著名登録商標
(1)請求人が引用する著名商標の詳細は以下のとおりである。
ア 商標登録第1598640号「イブ/EVE」第1類(甲第2号証)
イ 商標登録第3065022号「イブ」 第5類(甲第3号証)
ウ 商標登録第3065023号「EVE」 第5類(甲第4号証)
(2)請求人の上記登録商標「イブ」、「イブ/EVE」、「EVE」は、「鎮痛・解熱剤」について、昭和60年(1985年)12月に販売開始(甲第9号証の1及2)されて以来、今日まで継続して使用され、需要者より好評を得た人気商品となっており、その商品形態は請求人製品目録抜粋(甲第11号証の1及び2)に示すとおりであり、今日においては多数販売されている同業他社の「鎮痛・解熱剤」の中でも日本のトップ商品の第2位に入る商品となっており、2003年現在におけるシェアは11.9%で、かかる商品の年商は2003年度で約59億円(小売価格ベース)に上っている(甲第10号証)。
なお、2005年度のシェアは第3位(甲第26号証)で、市場で500種を超える「鎮痛・解熱剤」の中にあってトップ商品の第3位にランクされる商品となっている。請求人の「EVE」、「イブ」が如何に著名であるかを客観的に裏付けるものである。
4 引用商標の使用実績と宣伝広告
請求人は、「EVE」、「イブ」を用いて「鎮痛・解熱剤」の販売開始直後の昭和61年1月より、週刊誌、テレビ、新聞等で大々的宣伝広告を行った(甲第28号証ないし甲第31号証)。以後、様々な形態による宣伝広告が今日まで継続して行なわれてきている。
販売開始以来、「鎮痛・解熱剤」の宣伝広告に費やしてきた費用については、次に示すとおりである。すなわち、昭和61年(1986年)は、「EVE」、「イブ」の販売開始の事実上の初年度であるが、この年に費やした宣伝広告費だけでも6億7900万円に上っている。そして、平成7年(1995年)までの10年間に費やした費用は、実に、30億5200万円に上る(甲第32号証)。
なお、平成10年度から平成15年度までの宣伝広告費は、以下のとおりである(甲第12号証)。
平成10年度……1億円
平成11年度……7300万円
平成12年度……1億2500万円
平成13年度……1億100万円
平成14年度……5500万円
平成15年度……5400万円
以上のように、請求人は、「EVE」、「イブ」の販売及びその宣伝広告に関しては販売開始とともに、並々ならぬ営業努力を注ぎ、販売開始から平成7年までの10年間で30億5200万円、平成10年から平成15年の6年間では5億円超の宣伝広告費を費やしており、販売開始以来の宣伝広告費は数十億円に上り、今日に至るまで「EVE」、「イブ」の著名性を維持してきた。
5 特許庁における「イブ」の著名性の認定
請求人の使用する登録商標「EVE」、「イブ」が「薬剤」について著名となっていることから、「薬剤」に関して、「イブ」の発音を含む商標が数多く出願される状況にある。これは「EVE」、「イブ」が発音上は2音と短いため、他の語と組み合わせることにより、一見「EVE」、「イブ」と非類似の商標ように見えるからである。しかしながら、一旦登録され、実際の使用の段になると、そのほとんどが「鎮痛・解熱剤」か「総合感冒薬」について使用されるのが実情である。
そして、特許庁において請求人からの異議申立あるいは無効審判により、請求人の著名商標と混同のおそれがあるとして登録が取り消され、あるいは無効とされた事案が複数ある。
6「総合感冒薬」への使用について
請求人は、「エスタックイブ/S.TAC EVE」(商標登録第1598641号、甲第8号証)を所有し、平成4年より販売している。請求人の総合感冒薬の商品形態は、請求人製品目録抜粋の甲第13号証の1及び2に示されるとおりであるが、特に、「イブ」の部分を強調した使用態様を行なっている。
当該総合感冒薬も、需要者に対し最も人気ある商品の一つとして知られていることは上記「鎮痛・解熱剤」の場合と同様である。
したがって、「総合感冒薬」について単に「EVE」、「イブ」といえば、請求人の上記総合感冒薬を指すものとして認識されている。
以上のことから、本件商標のように請求人の著名商標「EVE」をそっくり含む商標が「鎮痛・解熱剤」、「総合感冒薬」その他の薬剤に使用されるときは、需要者に対し、すでに著名となっている請求人の著名商標、著名商品との間で関連性を想起せしめるものである。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標は、請求人の著名商標「EVE」をその要部に含むものであり、これと混同を生ずるおそれがある商標であって、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものといわなければならないから、少なくとも第5類の指定商品「薬剤」については、その登録を無効とされるべきものである。
第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第249号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
請求人は、請求人所有の登録商標「イブ/EVE」、「イブ」、「EVE」(以下、「引用各商標」という。甲第2号証ないし甲第4号証)を引用し、本件商標が本号に該当する旨主張する。
しかしながら、請求書には、なぜ本件商標が引用各商標と類似するのかについて、請求人の明確な主張はない。
唯一、審判請求書4頁の上から2行目において「本件商標は請求人の著名商標と要部において同じであり…」との記載があることから、請求人は本件商標の要部は「EVE」にあり、当該部分が引用各商標と類似する旨主張していると推察される。
しかしながら、本件商標の要部は「EVE」ではなく、あくまでも「COOLEVE」全体として出所識別機能を発揮するものであるから、本件商標は引用各商標と類似するものではない。
(1)本件商標の一体不可分性
本件商標は、横書きの欧文字で「COOLEVE」と同一の書体で等間隔にまとまりよく表されている一体不可分の商標であり、「EVE」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているものではない。
すなわち、本件商標「COOLEVE」は、「COOL」と「EVE」の間に両者を分断するような間隔はなく、また「COOL」及び「EVE」の文字の字体が異なる等の事情や、「COOL」の文字が「EVE」の文字より小さいなどの事情も存在しないことから、本件商標を構成する文字のうち「EVE」の文字部分のみを抜き出す格別の理由はなく、また本件商標「COOLEVE」に接した需要者が「EVE」の文字のみを認識することもないから、本件商標は、その構成全体が一体不可分の造語として把握、認識される商標である。
また仮に、本件商標が「COOL」と「EVE」の文字から構成されるものと把握されたとしても、本件商標を構成する文字のうち、「COOL」の文字は請求人が主張するとおり、「冷たい、涼しい」といった意味を有するほか、「涼しい顔の」「格好いい」「冷静な」「クールな」等の意味も有する日本でも良く知られた英語の形容詞である(乙第1号証の1及び2)。また「EVE」の文字も同様に「クリスマスイブ」のようにして日本でも一般的に「前夜祭」といった意味として使用されるほか、「アダムとイブ」のようにして「(神が創造した最初の女)イブ」を表す名詞として日本でも良く知られている(乙第2号証)。このような共に良く知られた欧文字から構成される本件商標は、その英文法上の構成も「形容詞+名詞」という自然な構成からなっているものであるから、本件商標「COOLEVE」全体としては、「涼しい前夜祭」、「涼しい顔のイブ(女性名)」又は「格好いいイブ(女性名)」といった全体として一つの観念を有する商標として認識されるものであると言うべきである。
したがって、本件商標「COOLEVE」はその英文法上の結合の自然さから、「涼しい前夜祭」、「涼しい顔のイブ(女性名)」又は「格好いいイブ(女性名)」等の観念が全体として生ずる一体不可分の商標と言うべきである。
そして、かかる一体不可分の本件商標からは、全体として「クールイブ」の称呼がよどみなく自然に生じ、かかる長音を含めた5音の称呼も格別冗長ではなく、一連に一気に称呼できるものであって、殊更に「イブ」のみを抜き出して称呼する格別の理由はない。
請求人は、本件商標から「EVE」のみを抽出したうえで「本件商標は請求人の著名商標と要部において同じ」旨主張し、その部分が引用各商標と類似する旨主張していると推察されるが、上述のとおり、一体不可分の本件商標のうち「EVE」の文字部分のみを抜き出し、またその部分のみを称呼するのは極めて不自然であるから、本件商標の要部は「EVE」にあるということはできない。
なお、請求人は、「EVE」が著名であるから要部となる旨主張しているものとも推察されるが、上述のとおり「EVE」の文字は「クリスマスイブ」や「アダムとイブ」のようにもともと日本でも良く知られている一般的な言葉であって、造語商標に比べて本来的な出所識別力はそもそも弱いものであるだけでなく、後述するとおり、仮に著名であったとしても、本件商標のように一体不可分な構成となっている場合には、それを要部として抽出して類否判断を行うことは妥当ではない。
(2)「COOL」の文字部分の出所識別機能
上述したとおり、本件商標「COOLEVE」は全体として「涼しい前夜祭」、「涼しい顔のイブ(女性名)」又は「格好いいイブ(女性名)」等の観念が生ずる一体不可分の商標と言うべきであるから、引用各商標との類否判断においては、本件商標「COOLEVE」全体としてその類否を判断すべきであり、その一部にすぎない「EVE」のみを抽出して引用各商標と比較して類否判断を行うべきではない。
この点につき、請求人は、「本件商標『COOLEVE』の場合も『COOL』の文字自体は・・・物の性質、状態等を表すもので顕著性が弱く『EVE』の部分に圧倒的顕著性が宿るものである」と主張する(審判請求書8頁12行目)。
しかし、本件商標を構成する文字のうち、「EVE」の文字部分以外、すなわち、「COOL」の文字部分には、類否判断の際にそれを除外して類否判断をしなければならないほどに、取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識としての称呼、観念が生じない部分であるとは言えず、この点においても「EVE」を要部として抽出して類否判断を行うべきではない。
以下のとおり、本件商標及び引用各商標と同一又は類似の商品をその指定商品とする「COOL」又は「クール」と他の文字が結合した「COOLoo」又は「クール□□」といった構成からなる商標と、その他の文字部分のみからなる「oo」又は「□□」といった商標が、併存して登録されているか、又は過去において登録されていた例が極めて多数存在する(乙第3号証ないし乙第118号証)。
極めて多数の「COOLoo」又は「クール□□」と「oo」又は「□□」の併存登録の事実は、本件商標の指定商品の取引業界において、「COOL」又は「クール」の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識としての称呼、観念を十分に生じさせていることの何よりの証左である。すなわち、「COOL」又は「クール」の文字部分と他の文字部分とから構成される商標は、「COOL」又は「クール」の文字部分が出所識別標識として機能している結果、主に名詞からなる他の文字部分と一体的に結合して、全体として「涼しいoo」や「格好いいoo」といった観念を生じさせる結果、その他の文字部分のみからなる商標と非類似であるとして併存登録されているのである。
特に、本件商標と同様に一体不可分に構成された「COOLMAGIC」(乙第3号証)と「MAGIC」(乙第4号証及び乙第5号証)が併存登録されているのみならず、「COOL」とそれに続く文字の間に間隔を有する商標、例えば「COOL GUARD」(乙第6号証)や「Cool Start」(乙第9号証)といった商標が、それぞれ「GUARD」(乙第8号証)や「START/スタート」(乙第11号証)といった商標と併存登録されており、「COOL」又は「クール」を付加することで、全体として全く別異の商標として認識されていることは明白である。
以上のとおり、「EVE」以外の部分である「COOL」部分からも出所識別標識としての称呼、観念が生ずると認められる以上、本件商標中「COOL」の文字部分を安易に除外して類否判断を行う格別の理由はないから、請求人が主張するように、本件商標の要部は「EVE」の文字部分にあると言うことはできない。
(3)「EVE」の文字部分の出所識別機能
請求人は「EVE」が著名であるから本件商標の要部となる旨主張しているものとも推察される。
しかしながら、そもそも「EVE」の文字は「イブ」と称呼される部分であるところ、この称呼「イブ」については、非ステロイド性の消炎、沈静、解熱薬で、アスピリンの16?32倍の作用を有するイブプロフェン(ibuprofen)という成分(乙第119号証)を想起させるものとして、「ibuprofen」の語頭の英文字「ib」又は「ibu」、又は同様に「イブ」の称呼が生ずる英文字「EV」とともに、かかるイブプロフェンをその成分に含む医薬品について、医薬品業界では一般的に採択されているものである。
すなわち、上述のとおり「EVE」の文字は、「クリスマスイブ」や「アダムとイブ」のようにもともと日本でも良く知られている一般的な言葉であるところ、さらに医薬品業界においては、「イブ」「EV」「IBU」「IB」「アイビー」といった文字とともに、イブプロフェンをその成分に含む医薬品の名称として以下のとおり多数採択され、その出所識別機能が弱い部分であると言えるから、請求人の引用各商標が仮に著名だとしても、そもそも本来的に出所識別力が弱い商標である以上、本件商標のような構成からなる商標において、「EVE」の文字がその要部となることはあり得ない。本件商標は「COOL」及び「EVE」のいずれもが要部となることはなく、あくまでも「COOL」の文字部分と結合した「COOLEVE」全体が一体不可分の商標として認識されるべきものであり、現に本件商標と同様に、「ooEVE」という構成からなる商標のほか、「ooイブ」、「ooIB」、「ooIBU」といった商標が引用各商標の存在にもかかわらず、併存して登録されている(乙第120号証ないし乙第151号証)。
さらに、イブプロフェン(ibuprofen)を想起させる「EVE」「EV」「IBU」「イブ」「IB」といった文字を語頭に含む商標が、引用各商標の存在にもかかわらず、極めて多数出願・登録されている(乙第152号証ないし乙第248号証)。
このように、イブプロフェン(ibuprofen)を想起させる「EVE」「EV」「IBU」「イブ」「IB」「アイビー」といった文字を語頭に含む商標が請求人以外の者によって、極めて多数採択されている事実は、医薬品業界において「EVE」を含むこれらの部分の出所識別機能が弱いことを表しており、かかる部分が本件商標のような構成からなる商標において要部になることはないとい言うべきである。
また実際にも、請求人が使用するものを含め、イブプロフェンがその成分に含まれるものについて、「EVE」「EV」「イブ」「IB」「アイビー」「IP」といった文字がその名称として使用されている(乙第249号証)。
したがって、イブプロフェンをその成分に含む商品について多数採択されている「EVE」「EV」「イブ」「IB」「IBU」「アイビー」「IP」といった文字は、そもそも出所識別機能が弱く、イブプロフェンをその成分に含む商品についてこれらの文字を使用したいと考える第三者を排除できるほどの強い出所識別機能を有することはないと言うべきである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標を構成する文字部分である「COOL」部分は十分に出所識別標識としての称呼、観念が生ずると認められる部分である一方、「EVE」の部分はイブプロフェンをその成分に含む商品については、出所識別機能が弱く、単独で要部とはなり得ない部分であると言える。
したがって、本件商標と他の商標との類否を検討する際には、どちらかの部分を要部として抽出した上で判断すべきではなく、その一体不可分の構成どおり「COOLEVE」全体として把握されるべきであり、本件商標中「COOL」の文字部分を安易に除外して引用各商標と類否判断を行うべきではないから、請求人が主張するように、本件商標の要部が「EVE」の文字部分にあると言うことはできない。
よって、本件商標の要部は「EVE」の文字部分にあるというべきではなく、本件商標は、「COOLEVE」全体としてその類否を判断すべき一体不可分の商標である以上、「イブ/EVE」「イブ」「EVE」からなる引用各商標のいずれとも、外観上類似するものではない。
また、本件商標はその構成より「クールイブ」の一連の称呼のみが生ずる商標であるから、単に「イブ」のみの称呼が生ずる請求人の引用各商標のいずれとも、称呼上類似するものではない。
さらに、「涼しい前夜祭」、「涼しい顔のイブ(女性名)」又は「格好いいイブ(女性名)」といった全体として一つの観念を生ずる本件商標は、引用各商標とその観念を共通にするものでもない。
以上のとおり、本件商標は引用各商標と類似するものではなく、4条第1項第11号には該当しないというべきである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人は、請求人の使用する「EVE」、「イブ」は「鎮痛・解熱剤」及び「総合感冒薬」については著名である旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号の判断基準時はいわゆる両時判断であるところ、本件商標の国際登録時である2006年3月30日以前に著名に至っていたかについて、明確な主張はない。
この点、請求人が提出した証拠を総合すると、2003(平成15)年ごろまでには著名に至っていたと主張されていると推測されるが、その2003年以降であっても、極めて多数の「EVE」「EV」「IBU」「イブ」「IB」といった文字を含む商標(乙第135号証ないし乙第151号証、乙第201号証ないし乙第214号証、乙第216号証ないし乙第225号証)が、請求人の使用する「EVE」「イブ」と非類似であり、また、出所混同も生じないものとして、併存登録されていることからも、2003年時点において、請求人の使用する「EVE」「イブ」が著名であったと言うことはできないだけでなく、上述したとおり、本件商標は引用各商標及び請求人が著名であると主張する「EVE」「イブ」と全体として全くの非類似の商標である以上、出所混同のおそれはない。
また、仮に請求人の使用する「EVE」「イブ」が著名であったとしても、本件商標と「EVE」「イブ」との非類似の程度は極めて高いのであるから、本件商標に接した需要者が請求人の業務に係る商品かのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないと言うべきである。
3 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び第15号のいずれの規定にも該当しないものであるから、本件審判請求は、成り立たないものである。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)請求人の提出に係る証拠及びその主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、引用商標を使用した「鎮痛・解熱剤」(以下「請求人商品」という。)を昭和60年(1985年)12月に販売開始して以来、22年以上にわたり継続して販売している。そして、請求人商品「イブ(EVE)」は、2003年度においては、店頭向医薬品市場の解熱鎮痛剤の販売において第4位にランクされ、その販売金額は約59億円、シェアは11.9%を占めている(甲第9号証の1及び2並びに第10号証)。また、2005年度においては、第3位にランクされ、その販売金額は約62億円、シェアは13.4%となっている(甲第26号証)。
イ 請求人商品の発売については、昭和60年12月に新聞報道された(甲第9号証の1)。そして、請求人商品は、その販売開始から週刊誌、テレビ、新聞等で大々的に宣伝広告され(一例として甲第9号証の2、甲第28ないし第31号証)、その宣伝広告費は、販売開始の事実上の初年度である昭和61年だけで6億7900万円に達し、平成7年までの10年間で30億5200万円、平成8年及び平成9年の2年間で4億円となっている(甲第32号証)。
また、請求人は、請求人商品と同系列の商品として「イブ(EVE)A錠」の商標を使用した鎮痛・解熱剤を販売しており、その広告宣伝費は平成10年度から平成15年度までに5億円を超えている(甲第12号証)。
ウ 上記新聞広告においては、請求人商品のパッケージ写真が掲載され、そのパッケージには「EVE」の文字を大きく書しており、その右側に「イブ」の文字が小さく表示されている。
上記写真の上部には「今日からの鎮痛薬・・・イブ 新発売」と大きく表示され、同写真の右側には「<イブ>はイブプロフェン製剤。痛みのもと・・・鎮痛薬です。」等の説明文が記載され、さらに最下段に「EVE」の文字を大書し、その下に小さな「イブ」の文字を併記した態様の標章が掲載されている(甲第9号証の2、甲第28ないし第31号証)。
また、請求人商品は、甲第9号証の1の新聞報道の記事においては、「解熱鎮痛剤”イブ”」との見出しのもとに紹介されており、写真にある商品のパッケージには「EVE」の文字が大きく表示されている。
さらに、2003年度・2005年度「SDIアニュアルレポート」における薬効別上位銘柄の販売状況の解熱鎮痛剤の項、及び2006年版の「医療用医薬品集」における薬効分類:解熱鎮痛剤の項には、「イブ」として掲載されている(甲第10号証、甲第26号証及び甲第27号証)。
エ さらに、請求人は、登録商標「エスタックイブ/S.TAC EVE」に係る総合感冒薬を平成4年より販売しており、その商品パッケージには「エスタックイブ」又は「エスタックイブエース」(いずれも「イブ」の文字を「エスタック」の文字より大きく表示)の標章が顕著に表示されている(甲第13号証の1及び2)。
(2)以上の事実によれば、引用商標「EVE」(イブ)は、鎮痛・解熱剤及び総合感冒薬について申立人が使用する商標として、本件商標の登録出願時には既に取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録時においても継続していたものというのが相当である。
2 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるところ、その構成中の「COOL」の文字は、「冷たい、涼しい」等の意味を有する英語及び外来語として親しまれた語であること、また、本件商標は、それが構成全体として特定の観念を生ずる成語とはいえないことからすると、本件商標に接する取引者、需要者は本件商標を「COOL」の文字と「EVE」の文字からなるものとして認識し把握する場合も決して少なくないものといわざるを得ない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
以上の事情の下に、本件商標をその指定商品中の「薬剤」に属する商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「EVE」の文字部分に注目して、周知著名となっている引用商標を連想・想起し、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
してみれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標というべきものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものと認められる。
4 被請求人の主張について
(1)被請求人は、「本件商標を構成する文字部分である『COOL』部分は十分に出所識別標識としての称呼、観念が生ずると認められる部分である一方、『EVE』の部分はイブプロフェンをその成分に含む商品については、出所識別機能が弱く、単独で要部とはなり得ない部分であると言える。したがって、本件商標と他の商標との類否を検討する際には、どちらかの部分を要部として抽出した上で判断すべきではなく、その一体不可分の構成どおり『COOLEVE』全体として把握されるべきであり、本件商標中『COOL』の文字部分を安易に除外して引用各商標と類否判断を行うべきではない」旨主張している。
しかしながら、上記1(1)のとおり、請求人商品の発売当初より新聞等の宣伝広告には、「EVE」及び「イブ」の文字が付された商品パッケージの写真が使用されると共に、新聞報道記事や書籍での紹介においても請求人商品を「イブ(EVE)」として特定されていたことから、引用商標「EVE」は、取引者、需要者の間に広く認識されていたものというのが相当である。
また、仮に本件商標を構成する「COOL」の文字部分に出所識別標識としての称呼、観念が生ずるとしても、本件商標は、その構成中に「EVE」の文字が含まれていることは明らかであり、一連一体の成語として一般に広く認識されていると認めるに足る証左もなく、むしろ、前示のように、本件商標がその指定商品中「鎮痛・解熱剤及び総合感冒薬」について使用された場合には、これに接する取引者、需要者は、周知・著名となっている引用商標の「EVE」が連想・想起されるというべきであるから、被請求人の主張は採用することができない。
(2)被請求人は、「イブ」又は「EVE」を有する商標が引用商標とは類似しないものとして多数登録されているとして証拠を提出している。
しかしながら、被請求人の掲げる登録例は、本件とは商標の構成態様等が相違し事案を異にするものであるほか、商標の類否は、対比する商標について個別具体的に判断されるべきであるし、また、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるか否かについては、商標の周知・著名性の程度、商標・商品の類似性、使用状況、需要者層等の具体的な事情を総合的に考察して判断されるべきであるから、上記登録例をもって本件の判断が左右されるものでもない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の指定商品中、請求に係る商品第5類「Pharmaceutical preparations for reducing skin temperature,relieving hot flushes,treating prickly heat,treating itchy,irritated skin and skin rashes,treating burns,all by cooling the skin;all supplied in aerosol form,all included in this class.」についての登録は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-08-27 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-14 
国際登録番号 0896763 
審決分類 T 1 12・ 271- Z (Y05)
最終処分 成立  
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 野口 美代子
井出 英一郎
商標の称呼 クールイブ、クーレブ、イブ、イイブイイイ 
代理人 石田 昌彦 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 小出 俊實 
代理人 田中 克郎 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 石川 義雄 
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