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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X16
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X16
管理番号 1216397 
審判番号 不服2009-13286 
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-24 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 商願2008- 42339拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおり、「シャワートイレ」、「のためにつくった」、「吸水力が2倍の」及び「トイレットペーパー」の各文字を4段に横書きしてなり、第16類「トイレットペーパー」を指定商品として、平成20年6月2日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『シャワートイレ』、『のためにつくった』、『吸水力が2倍の』及び『トイレットペーパー』の各文字を4段に横書きしてなるところ、その指定商品である『トイレットペーパー』の需要者であれば、これは『シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー』という記述的な文章を4段に分けて表示したものと理解するのが通常であって、かつ、その構成中の『シャワートイレ』の文字は、『温水洗浄式便座(トイレ)』を指称したものであると直ちに理解するから、本願商標の全体からは、『温水洗浄式便座(トイレ)用に作られ、吸水力が従来の2倍あるトイレットペーパー』ほどの意味合いを極めて容易に認識させるものである。そうすると、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に商品の品質(特長)を誇示する記述的な表示と理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至ったものとは認めることができないから、同法第3条第2項の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号の該当性について
本願商標は、別掲のとおり、「シャワートイレ」、「のためにつくった」、「吸水力が2倍の」及び「トイレットペーパー」の文字を4段に横書きしてなるところ、その指定商品「トイレットペーパー」との関係においては、「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」というまとまった記述的な文章として理解されるものである。
そして、その構成中の「シャワートイレ」の文字は、「温水シャワー・温風乾燥式便座」(コンサイスカタカナ語辞典第3版:株式会社三省堂)の意味を有するものであって、本願商標の全体からは、「シャワートイレ用に作られ、吸水力が従来の2倍あるトイレットペーパー」という程の意味合いを容易に認識させるものである。
そうとすれば、本願商標は、トイレットペーパーがシャワートイレ用であるという用途及び従来の商品と比べて吸水力が2倍であるという効果を理解、認識させるための記述的な文章を表示したにすぎない標章であるから、これをその指定商品である「トイレットペーパー」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品が「シャワートイレ用に作られ、吸水力が従来の2倍あるトイレットペーパー」であると、すなわち、商品の品質、用途及び効果を表示したものであると理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項の該当性について
(1)上記1に対し、請求人は、仮に、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるとしても、本願商標を2001年の販売開始より現在に至るまで一貫して使用しており、提出した証拠をもって、本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものであるから、同法第3条第2項の規定に該当し、商標登録されるべきものである旨主張しているので、以下この点について検討する。
(2)登録出願に係る商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったものであるか否かを検討するに当たっては、知財高裁平成18年(行ケ)第10054号判決(平成18年6月12日判決言渡)において、次のように判示されている。すなわち、
商標法第3条第2項は、商標法第3条第1項第3号等に対する例外として、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」は商標登録を受けることができる旨規定している。その趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから、当該商標の登録を認めようというものであると解される。
上記のような商標法第3条第2項の趣旨に照らすと、同条項によって商標登録が認められるためには、以下のような要件を具備することが必要であると解される。
ア 使用により自他商品識別力を有すること
商標登録出願された商標(以下「出願商標」という。)が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、実際に使用している商標(以下「使用商標」という。)及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる「自他商品識別力(特別顕著性)」の獲得の有無)によって決すべきものである。
イ 出願商標と使用商標の同一性が認められること
商標法第3条第2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願商標と同一であることを要し、出願商標と類似のもの(例えば、文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。
なぜなら、同条項は、本来的には自他商品識別力がなく、特定人の独占にもなじまない商標について、特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり、実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして、登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると、同条項は、厳格に解釈し適用されるべきものである。
(3)そこで、上記観点を踏まえて、本願商標について検討するに、請求人の提出に係る甲各号証(例えば、「甲第1号証」を「甲1」、「甲第2号証の1」を「甲2の1」のようにいう。)によれば、以下のことが認められる。
ア 甲1は、2009年1月6日にプリントアウトされた日清紡のウェブサイトの一頁であって、日清紡の新製品についてのニュースリリース記事である。
これには、2001年9月10日の日付、「日清紡の新製品『シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー』のタイトル及びその製品についての記事及び商品規格の記載がされるとともに新製品の写真が掲載されている。
イ 甲2は、東京放送のテレビ番組「はなまるマーケット」の番組について、2005年3月25日及び2004年11月30日の2回分の放送の紹介例及び日本テレビのテレビ番組「トナリの悩みの解決人」の番組について、2003年11月27日の1回分の放送の紹介例の資料である。これには本件商標の付されたトイレットペーパーが番組の中で話題として取り上げられている。
ウ 甲3は、2009年1月6日にプリントアウトされたインターネット検索エンジンのGoogle及びYahoo!の検索結果であって、「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」の文字についてのものであって、検索結果は約651件から約1,170件である。
エ 甲5は、2005年8月12日の朝日新聞(東京版、名古屋版、大阪版、北海道版、西部福岡版)に掲載した広告である。これには、「Q2 シャワートイレっておしりがぬれて困らない?」「A2 『シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー』におまかせ下さい!」(『 』の部分は、本願商標をやや太めの線で囲んでいる。)と表示され、「独自の技術で吸水力2倍!」の文字とともに本願商標の付された商品の写真が掲載されている。その他「日清紡 お客様相談係 TEL・・・」の記載がある。
オ 甲6は、日経BP社の2005年12月26日発行の雑誌「日経ビジネス」に掲載した広告である。その日清紡の広告頁には、「トイレでは、何が何でも、さっぱりしたい。」、「『シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー』、開発しました。」と記載がある。その下には、赤塚不二夫氏の警官のキャラクターが水鉄砲でトイレットペーパーに向けて水を当てている絵が掲載されている。
カ 甲7は、2009年1月7日にプリントアウトされた日清紡のウェブサイトであって、「日清紡 家庭紙商品 総合案内」の項目のもと、商品情報として、本願商標の付されたトイレットペーパーが掲載されている。
キ 甲9は、株式会社ワールドフォトプレスの平成17年10月16日発行の雑誌「mono」(モノ・マガジン)に掲載された本願商標の付されたトイレットペーパー及び多数の他社製品のトイレットペーパーの写真入りの商品紹介である。
ク 甲10は、2005年7月の株式会社日本能率協会総合研究所及びマーケティング・データ・バンクによる「『生活用品』に関する調査/?紙製品編?」のレポートである。その3頁には、「(5)知っているトイレットペーパーの銘柄」の項目があり、14銘柄について回答者322人中、上位3銘柄は、「エリエール(大王製紙)」が95.3%、「ネピアトイレットロール(王子ネピア)」が87.0%、「スコッティ(クレシア)」が79.5%である。一方、日清紡については、「ポプラ(日清紡績)」が20.8%、「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー(日清紡績)」が32.6%、「コットンフィール(日清紡績)」が11.5%、「ニュービーチ(日清紡績)」が18.3%、「すずらん(日清紡績)」が14.9%である。
また、同頁には、「(6)普段よく買うトイレットペーパーの銘柄」の項目があり、16銘柄について回答者322人中、上位3銘柄は、「エリエール(大王製紙)」が49.1%、「ネピアトイレットロール(王子ネピア)」が23.3%、「クリネックス(クレシア)」が22.7%である。一方、日清紡については、「ポプラ(日清紡績)」が5.3%、「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー(日清紡績)」が5.0%、「コットンフィール(日清紡績)」が0.9%、「ニュービーチ(日清紡績)」が2.2%、「すずらん(日清紡績)」が2.8%である。
ケ 甲11は、2008年12月29日、同年12月15日、同年11月19日、同年8月6日及び同年7月31日にプリントアウトされた「楽天市場」のウェブサイトであって、「ランキング市場」の項目のもと、「トイレットペーパー」の今週のランキングに「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」が、それぞれ「2位、11位、30位」、「2位、9位、30位」、「3位、10位、29位」、「3位、13位、17位」、「3位、13位」に紹介されている。
コ 甲12は、2009年7月22日にプリントアウトされた日清紡ペーパープロダクツ株式会社のウェブサイトであって、「家庭紙」及び「日清紡 家庭紙商品 総合案内」の項目のもと、商品情報として、本願商標の付されたトイレットペーパーについての説明及び商品写真の掲載がされている。
サ 甲13は、関東財務局長に提出した日清紡ホールディングス株式会社の平成21年4月1日(提出日)の「臨時報告書」である。これによれば、日清紡ホールディングス株式会社の紙製品事業は、平成21年4月1日から日清紡ペーパープロダクツ株式会社に承継された。
シ 甲15は、「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」に関する化学工業日報(2001.9.12)、日経流通新聞(2001.9.25)、日本経済新聞(2007.9.24)の記事である。
ス 甲16は、日清紡の家庭紙商品の総合カタログである。そして、本願商標の付されたトイレットペーパーについての説明及び商品写真の掲載がされている。
セ 甲17は、平成19年8月23日付けのサンケイ総合印刷株式会社から日清紡株式会社へ宛てた「’07ホームペーパー 総合カタログ(7,000部)」についての見積書である。
ソ 甲18は、株式会社日刊紙業通信社の平成18年度版「紙業興信大鑑」及び同社の平成20年7月31日の新聞に掲載した本願商標に係るトイレットペーパーの広告である。
(4)以上の証拠に基づき、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものであるか否かを検討する。
ア 上記(3)ア(甲1)、エ(甲5)、オ(甲6)ないしク(甲10)、コ(甲12)、シ(甲15)、ス(甲16)及びソ(甲18)を総合すると、請求人の製造・販売に係る本願商標の付された商品「トイレットペーパー」自体は、テレビ、雑誌、新聞、インターネット等で取り上げられ、紹介されることのある商品といえるものである。
しかし、上記ク(甲10)「『生活用品』に関する調査/?紙製品編?」のレポートによれば、その3頁には、「(5)知っているトイレットペーパーの銘柄」の項目があり、14銘柄について回答者322人中、上位3銘柄は、「エリエール(大王製紙)」が95.3%、「ネピアトイレットロール(王子ネピア)」が87.0%、「スコッティ(クレシア)」が79.5%である。一方、日清紡の「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー(日清紡績)」は、32.6%とまだまだその知名度は低いといわざるを得ない。
また、同頁には、「(6)普段よく買うトイレットペーパーの銘柄」の項目があり、16銘柄について回答者322人中、上位3銘柄は、「エリエール(大王製紙)」が49.1%、「ネピアトイレットロール(王子ネピア)」が23.3%、「クリネックス(クレシア)」が22.7%である。一方、日清紡の「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー(日清紡績)」は、5.0%ほどである。
そして、雑誌、新聞、インターネットにおいて使用されている標章「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」は、各種広告等媒体等において請求人の企業名である「日清紡(日清紡績)」等の文字や、請求人の名称をデザイン化した「NiSSHiNBO」のロゴマークとともに用いられているものがほとんどであり、これらの文字等が商品の出所表示として強く印象付けられるものである。
イ また、甲7及び甲12の請求人のウェブサイト(日清紡)においては、「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」の標章は、例えば、「シャワートイレを快適に」、「水分をたっぷり吸収/スーパーWエンボス加工により従来の2倍の吸水力を実現しました。(当社従来品比)/水分をたっぷり吸収するので、シャワートイレに最適です。」、「厚手でしっかりした使い心地/スーパーWエンボス加工だから、厚みが従来品の1.3倍。(当社従来品比)/ふんわり厚手でしっかりした使い心地なので、肌に貼り付いたり、破れたりしません。」、「一回の使用量が少なくてOK/水分をたっぷり吸収するので、紙の使用量が少なくても大丈夫です。紙のむだ使いを減らすことができます。」などの商品説明とともに使用されており、その商品の記載内容との関係で相対的にみれば、標章「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」は、自他商品の識別標識である商標というよりは、むしろ、商品の内容を記述的に表示したものとして需要者に理解されるというのが相当である。よって、識別力のある要部といえる部分のない記述的な「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」の標章それ自体が需要者に強い印象を与えるものとは考え難い。
(5)以上のとおりであるから、請求人の提出に係る各証拠を総合しても、請求人の製造・販売に係る本願商標の付された商品「トイレットペーパー」自体が、ある程度に知られているものとなっていることは認めることができるとしても、その商品について使用されている標章「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」は、請求人の企業名である「日清紡(日清紡績)」等の文字や、請求人の名称をデザイン化した「NiSSHiNBO」のロゴマークとともに使用されてきたものというべきであって、これらの文字等がその商品の出所表示として強く印象付けられるものというべきであるから、本願商標の文字自体が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているとまで認めることはできない。
してみれば、本願商標「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」がその指定商品「トイレットペーパー」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできないから、本願商標は、その指定商品について商標法第3条第2項の要件を具備しないものといわざるを得ない。
3 結語
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるから、これを理由に本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)




審理終結日 2010-03-05 
結審通知日 2010-03-08 
審決日 2010-03-19 
出願番号 商願2008-42339(T2008-42339) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X16)
T 1 8・ 17- Z (X16)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩谷 禎枝大渕 敏雄 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 高橋 謙司
井出 英一郎
商標の称呼 シャワートイレノタメニツクッタキュースイリョクガニバイノトイレットペーパー、シャワートイレノタメニツクッタキュースイリョクガニバイノ、シャワートイレノタメニツクッタ、キュースイリョクガニバイノトイレットペーパー 

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